説明

存在監視部を備える運転者支援システム

本発明は、運転席(18)における運転者の存在を監視し運転者が不在の際には自己停止機能(14)を起動するために構成されている監視装置(16)を特徴とする、自己停止機能(14)を持つ制御装置(12)、を備えた運転者支援システム、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己停止機能を持つ制御装置、を備えた運転者支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のためのこのような運転者支援システムの例として、例えば、速度制御システムまたはクルーズ・コントロール・システム、すなわち、レーダセンサによって車両の前方領域を監視し先行車両との間の距離を自動的に制御するACCシステム(Adaptive Cruise Control)、ならびに、自動車線維持システム、および、ACCシステムと車線維持システムとの組み合わせが挙げられる。
【0003】
公知のACCシステムの場合、自己停止機能は、例えば、レーダセンサが故障しているまたは盲目になる場合に起動される。運転者は、システムがもはや利用出来ないという聴覚的な警報を獲得する。
【0004】
運転者のマイクロ睡眠を検出し、この場合自動的に、停止するための、車両の制御された緊急ブレーキを開始することが可能な、車両のための支援システムも公知である。
【0005】
さらに、シートベルトシステム、および/または、エアバックシステムと関連して、座席利用検出器が公知である。座席利用検出器は、検出信号に従いエアバックシステムを起動する、または、シートベルト着用の警報を出力することが可能であるために、同乗者席等が一人の人間によって利用されていることを検出する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、誤用予防が改善された運転者支援システムを創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本課題は、本発明に基づいて、運転席における運転者の存在を監視し運転者が不在の際に自己停止機能を起動するために構成されている監視装置、によって解決される。
【0008】
その際、運転者の「不在」として一般的に、運転者が車両の操作装置(ステアリングホイールおよびペダル等)に関連して走行状態に対し調整した姿勢を取っていない状況も理解されうる。
【0009】
上述のACCシステムおよび車線維持システム等の半自動の運転者支援システムの場合、および、これらシステムの組み合わせの場合はなおさら、比較的長い間ステアリングホイールから手を離し交通状況から注意がそれる、または、足がペダルから遠く離れている、または、例えば下に落ちたものを拾うために完全または部分的に運転席から離れる、または、キャンピングカーの場合車両の奥に入る、といった誤った行動を運転者がとる危険性がある。完全な自動車両操縦のために必要な機能信頼性が備わっていない半自動の運転者支援システムの、このような誤用は、事故のリスクが大きい。
【0010】
本発明によって、運転者のこのような危険な行動形態を検出し、運転者に対して、自身の注意を再び交通状況に向けるように強制することが許容される。
【0011】
本発明の好適な発展形態〔Ausgestaltung〕および実施形態は、特許請求の範囲に記載の独立請求項に示されている。
【0012】
監視装置は、例えば、運転席のための座席利用検出器を有することが可能である。座席利用検出器によって、運転者が通常の座位を取っているか、または、座席から体を起しているかどうかについて検出される。択一的に、背もたれの内部に触覚マットが設けられることも可能である。触覚マットによって、運転者は背中で背もたれに寄り掛かっており、従って危険な状況に即時にブレーキペダルに対して十分な制動圧力を加えられるかどうか、について検出される。同様に、運転者が前または横に体を曲げているかどうかについて確認するために、シートベルトの長さの監視が構想可能である。
【0013】
代替的または追加的に、監視装置はステアリングホイール・センサを有することも可能である。ステアリングホイール・センサによって、運転者の手がステアリングホイールにあるかどうかが検出される。このステアリングホイール・センサは、例えば、触覚センサの配列によって、または、モーメントまたは力センサ〔Drehmoment− oder Kraftsensor〕によっても形成可能である。モーメントまたは力センサは、運転者の手がステアリングホイールにある場合に運転者がステアリングホイールまたはステアリングコラムに対して任意に、または無意識に加える非常に小さなモーメントまたは力を検出することが可能である。運転者は極短い間ステアリングホイールから両手を離すことが完全に許容されうるので、ステアリングホイールの監視の際には、運転者が比較的長い間ステアリングホイールを離した場合に初めて運転者の不在が検出される。ステアリングホイール・センサの代わりに、または、ステアリングホイール・センサに追加して、付属する画像評価部を有する車内カメラ等の車内監視システムも、運転者の腕の位置を検出するために設けることが可能である。
【0014】
補足的に、足の位置を監視することが可能なので、足がペダルから非常に離れていることを検出することが可能である。このために、例えば、運転者の足元の空間に光電子センサを配置する、または、足元の空間に、触覚床マット、もしくは、誘導センサまたは容量センサを配置することが可能である。従って、少なくとも1つの足、または両足がもはやペダルの近くに存在しない場合に、確実に検出可能である。これにより、例えば、足を組んだ状態での非常に危険な走行を検出することが可能である。
【0015】
監視装置が運転者の不在を確認した場合、かつ、この状態がある一定の時間続く場合に、警戒信号、特に(vorzugsweise)、聴覚的な警戒信号を最初に出力することは有利である。聴覚的な警戒信号は、交通状況に対して適切に対応できる通常の座位を再び取るように運転者に要請する。その際、運転者がステアリングホイールのみ離している場合には、待機時間がより長く、運転者が座席から体を起こしている場合には、待機時間がより短い。
【0016】
運転者が適切な時間内に警報に対して反応しない場合には、自己停止機能が起動される。自己停止機能は、支援機能が停止され運転者自身が再び車両を制御する必要があることを運転者に明らかにするアナウンス等の形態による、更なる別の強い警告通知と特に(vorzugsweise)接続されている。
【0017】
特に有利な実施形態において、自己停止機能は、本発明に基づいて監視装置により起動される場合に、停止するための、車両の制御された緊急ブレーキを開始するように、構成されている。その際、自動車線維持システムが作動しているか否かに従って、車両が適時に停止される一方、後続の交通車両が可能な限り危険な状況に置かれないように、ブレーキ減速が選択される必要がある。いずれにせよ、自己停止機能は、車両の緊急警告灯の自動作動も引き起こすことが可能である。
【0018】
典型的に、車道の車線区分線を検出するためのビデオカメラと接続された、自動車線維持システムが設けられている場合には、自己停止機能は、(右側通行の際に)車両が最も右の車線に存在する限りにおいて、車両が緊急ブレーキの間に自動的に道路の路肩の方に向けられるように、構成されることも可能である。
【0019】
車両が複数車線の追い抜き車線に存在する場合、このことは、通常、車線維持機能が付いていないACCシステムの場合にもレーダセンサの位置測定信号により検出可能であるが、停止するための緊急ブレーキは、安全面の観点から問題がある可能性がある。この場合、運転者支援システムを完全に停止させるのではなく、例えば車両の速度を特定の最大速度に制限するという形態において、機能の範囲を制限することがより有利でありうる。本願で利用されているような「自己停止機能」という概念は、この機能も含むものである。
【0020】
運転席から離れていない場合にも、例えば上記の車内監視システムによって、適切な運転姿勢に相当しない姿勢が検出されうる。この場合、ACCの最大目標速度が低減される。すなわち、この(適切な運転姿勢に相当しない)姿勢ではこの速い速度(最大目標速度)のために必要な制動力が加えられないからである。従って、速度が速い場合に、運転者が適切にブレーキを掛けられる着席姿勢を取ることが達成される。
【0021】
同様に、運転者がナビゲーション目標の入力、座席の調整等の操作に集中して従事する場合、運転者の注意が限られている際に速い速度または最高速度で車両を運転するべきではないため、最大に調整可能な目標速度が低減されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態は図に示されており、以下の明細書においてより詳細に解説される。
【0023】
図1に示される運転者支援システム10は、支援機能または機能、すなわち、示される例では、間隔および速度制御機能ACC(Adaptive Cruise Control)および車線維持機能LKS(Lane Keeping Support)を制御し、内部に自己停止機能14が実現されている電子制御装置12と、運転席18における運転者の存在を監視するための監視装置16と、を含んでいる。
【0024】
監視装置16には、運転席18の座席クッション内部に組み込まれた座席利用センサ〔Sitzbelegungssensor〕20と、運転席18の背もたれ内部に組み込まれた接触センサ21と、が含まれる。座席利用センサ20は、監視装置16に座席利用信号を報知し、接触センサ21は、運転者が背中で背もたれに寄り掛かっているかどうかについて示す。さらに、図1では、シートベルトの引き出された長さを測定するためのベルト長センサ〔Gurtlaengensensor〕23、が組み込まれたベルト巻取り装置が示されている。示された例では、追加的に車両のステアリングホイール22に、ステアリングホイール・センサ24が設けられている。ステアリングホイール・センサ24は、運転者が数秒等のある程度の時間の間ステアリングホイール22から手を離し従ってステアリングホイールに対して力またはトルクを全く加えない場合に、監視装置16に不在信号を伝達する。同じように、足元空間センサ〔Fussraumsensor〕25は、運転者がブレーキを掛けられる位置に足を置いているかどうかについて検出する。
【0025】
択一的に、監視装置16は、運転者の着席姿勢を検出する車内監視システム(16a)、および、車両の他の操作装置へのインタフェース16bも有することが可能である。このインタフェースによって、運転者の注意がナビゲーションシステム等での何らかの操作のために要求されているかについて検出される。従って、この状況では、例えば車両の目標速度を制限することにより対応することが可能である。
【0026】
制御装置12には、スピーカ26が接続されている。スピーカ26を介して、自己停止機能14に基づいて、例えば言葉で話す聴覚的な警報が出力可能である。
【0027】
図2は、監視装置16及び自己停止機能14の作動形態を解説するフローチャートである。フローチャートは、運転者支援システム10が作動する際に工程S1で開始され、運転者支援システムの全作動時間を通して周期的に駆動されるプログラム・ルーティンを表している。
【0028】
工程S2では、監視装置16は、座席利用センサ20、ステアリングホイール・センサ24および足元空間センサ25の信号を用いて、運転者が運転席18に存在し、ステアリングホイールに手を置き、かつ、ペダルの近くに足を置いているかどうか、または、運転者は「不在」であるかどうか、について検査する。この場合、「不在」とは、運転者が運転席に対して、もはや自身の全体重では負荷を掛けていない、および/または、ある程度の時間の間完全にステアリングホイールから手を離している、および/または、反応に対する準備態勢が整っていない位置に足が置かれている、ということを意味している。運転者が通常の座位を取り、従って、交通状況での予期せぬ事態に対して適時に反応する(工程S2におけるN)準備が整っている場合に、工程S2へと戻る。それに対して、運転者が上述の意味(Y)において不在である場合には、工程S3で、数秒等のある程度の時間の間待機する。この待機時間の間、座席利用センサ20、ステアリングホイール・センサ24、および足元空間センサ25の信号が引き続き監視される。運転者の存在が再び確認される場合には、工程S4を介して工程S2へと戻る。しかし、運転者が待機時間の経過後にも、工程S4で未だに不在の場合には、工程S5において、スピーカ26を介する警戒信号の出力が行なわれ、運転者が再び通常の座位を取っているかどうか、さらに待機する。
【0029】
運転者がこの待機時間内に再び通常の座位を取る場合には、工程S6で、工程S2へと戻る。それ以外の場合、運転者は工程S7において、支援機能が停止されるという強い聴覚的な指示を再び獲得する。自己停止機能14は、例えば、停止するための、車両の制御された緊急ブレーキ等の、フェールセーフ状態への車両の移行を起動する。車両が停止した際には運転者支援システム10は停止されるので、車両を再び始動するために、運転者自身が制御する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかる運転者支援システムの構成図を示す。
【図2】システムの機能形態を解説するためのフローチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己停止機能(14)を持つ制御装置(12)、を備えた運転者支援システムにおいて、運転席(18)における運転者の存在を監視し運転者が不在の際には前記自己停止機能(14)を起動するために構成されている監視装置(16)、を特徴とする、自己停止機能(14)を持つ制御装置(12)、を備えた運転者支援システム。
【請求項2】
前記監視装置(16)は、前記運転席(18)のための座席利用センサ(20)を有することを特徴とする、請求項1に記載の運転者支援システム。
【請求項3】
前記監視装置(16)は、運転者が車両の操作装置に関連して走行状態に対し調整した姿勢を取っていない状況を、運転者の不在として検出するために構成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の運転者支援システム。
【請求項4】
前記監視装置(16)は、前記運転席(18)の背もたれの内部にセンサ(21)を有することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の運転者支援システム。
【請求項5】
前記監視装置(16)は、ステアリングホイール・センサ(24)を有し、前記ステアリングホイール・センサ(24)は、運転者が所定時間の間連続してステアリングホイール(22)から手を離している状況を検出できることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の運転者支援システム。
【請求項6】
前記監視装置(16)は、足元空間センサ(25)を有し、前記足元空間センサ(25)は、運転者が所定時間の間連続して、即時のペダル操作が不可能な位置に足を置いている状況を検出できることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の運転者支援システム。
【請求項7】
前記監視装置(16)は、運転者の姿勢を監視するための車内監視装置(16a)を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の運転者支援システム。
【請求項8】
前記監視装置(16)は、前記運転席(18)のシートベルトの引き出された長さを監視するためのベルト長センサ(23)を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の運転者支援システム。
【請求項9】
前記監視装置(16)は、操作によって運転者の注意がそれているかどうかについて確認するために、車両の操作装置(16)へのインタフェース(16b)を有することを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の運転者支援システム。
【請求項10】
前記自己停止機能(14)は、運転者の不在が検出された際に所定の待機時間が経過した後に最初に、運転者への警報のタスクを促すために構成されており、その後、更なる別の所定の待機時間が経過した後に運転者が引き続き不在の場合に前記運転者支援システムの機能が完全または部分的に停止されることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の運転者支援システム。
【請求項11】
前記自己停止機能(14)は、運転者支援機能が完全または部分的に停止される場合に、運転者に対して更なる別の警報を出力するために構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の運転者支援システム。
【請求項12】
前記自己停止機能(14)は、車両の制御された緊急ブレーキを起動するために構成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項10に記載の運転者支援システム。
【請求項13】
前記自己停止機能(14)は、車両に停止ブレーキを掛け、かつ、車両がほぼ停止、または完全に停止した際に初めて運転者支援機能を停止するために構成されていることを特徴とする、請求項11に記載の運転者支援システム。
【請求項14】
自車両の速度を制御するための支援機能(ACC)を持つことを特徴とする、請求項1〜請求項12に記載の運転者支援システム。
【請求項15】
自車両と先行車両との間の間隔を制御するための支援機能(ACC)を持つことを特徴とする、請求項13に記載の運転者支援システム。
【請求項16】
前記自己停止機能(14)は、車両の上限の目標速度を制限する、および/または、先行車両までの下限の間隔を制限するために構成されていることを特徴とする、請求項13または請求項14に記載の運転者支援システム。
【請求項17】
支援機能として自動車線維持機能(LKS)を有することを特徴とする、請求項1〜請求項15のいずれかに記載の運転者支援システム。



【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−541888(P2009−541888A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517293(P2009−517293)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060391
【国際公開番号】WO2008/064943
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】