説明

安全弁

【課題】部品点数の増加を抑えて部品組み付け工数の増加を抑制し且つシール性能を低下させることもなく、異常な圧力上昇を防止する機能と共に負圧破壊の機能を具備する安全弁を提供する。
【解決手段】安全弁1は、弁箱内を一次室と二次室とに区画するダイヤフラム2、ダイヤフラムと結合するダイヤフラム押さえ3、ダイヤフラムを一次室側へ付勢する作動バネ4、一次室と二次室とを連通する連通孔30、一次室側に配置されて連通孔を開閉自在とする弁体5、弁体から延設されてガイド孔35に挿通して二次室側へ突出された弁棒50、弁棒に外挿されて弁体を連通孔を閉じる閉弁方向に付勢する弁バネ53、弁棒の端部との間隔を調節自在に配設された調圧軸60を備え、弁体5と弁棒50とを一体成形により形成した一部品で構成し、この弁体5に突設する筒状の周壁52をダイヤフラムを弁座21としてダイヤフラムに着離自在に当接させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水機器の流体配管等に取り付けられる安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の安全弁として、図8に示すように、弁箱101にバネ保護筒102を接合した筐体100と、筐体100内を一次室114と二次室116とに区画するダイヤフラム110と、ダイヤフラム110に取り付けたダイヤフラム押さえ109と、ダイヤフラム押さえ109に受けられてダイヤフラム110を一次室114側へ付勢する作動バネ105と、ダイヤフラム110に応動して一次室114に形成した弁座部101aに着離自在とする弁体104とを備え、弁体104とダイヤフラム110と補強金具104aとをゴム状弾性体により一体物として構成し、この一体物にダイヤフラム押さえ109を同芯的に嵌着し、ダイヤフラム押さえ109をバネ保護筒102により案内するようにしたものがある(特許文献1)。なお、一次室114側には温水機器の流体配管や流体容器等に連通する接続口101bが設けられ、二次室116側には吹き出し口102aが設けられている。この安全弁によれば、配管等の内部圧力が異常に上昇すると、作動バネ105の付勢力に抗してダイヤフラム110が応動することで弁体104が弁座部101aから離されて開弁し、超過圧力相当分の流体が一次室114側から二次室116側へ流動し吹き出し口102aから吹き出されることにより、配管内等の圧力の異常上昇を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭61−28929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記安全弁は、配管内等に負圧が生じた場合に配管内に大気を導入して負圧破壊する機能を有しないため、配管内の負圧化を解消させることができない。しかるに、安全弁に更に負圧破壊機能を設ける場合、構造部品点数が多くなり構成も複雑化する。しかも、部品の組み付け工数が増えて生産性が悪化し、また、コストも高くなってしまう。更には、組み付け数の増加によって組み付け部品間のシール性能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、部品点数の増加を抑えて部品組み付け工数の増加を抑制し且つシール性能を低下させることもなく、異常な圧力上昇を防止する機能と共に負圧破壊の機能を具備する安全弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る安全弁は、
二つの口部を備えた弁箱と、
弁箱内を第1の口部と通じる一次室と第2の口部と通じる二次室とに区画するダイヤフラムと、
ダイヤフラムと結合するダイヤフラム押さえと、
ダイヤフラム押さえに受けられてダイヤフラムを一次室側へ付勢する作動バネと、
ダイヤフラム押さえに設けられて一次室と二次室とを連通する連通孔と、
一次室側に配置されて連通孔を開閉自在とする弁体と、
弁体から延設されてダイヤフラム押さえの中央にてダイヤフラムを貫通して形成したガイド孔に挿通して二次室側へ突出された弁棒と、
弁棒の二次室側の配置部分に外挿されて弁体を連通孔を閉じる閉弁方向に付勢する弁バネと、
弁棒の二次室側の端部に対向されてこの弁棒の端部との間隔を調節自在に配設された調圧軸とを備え、
上記弁体と上記弁棒とを一体成形により形成した一部品で構成し、この弁体に突設する筒状の周壁を上記ダイヤフラムを弁座としてダイヤフラムに着離自在に当接させる構成としたものである。
【0007】
上記構成より、一次室側に接続する配管等の内圧が設定圧力以上に上昇した場合、一次室内の圧力上昇により、作動バネの弾性力に抗してダイヤフラムが二次室側へ変位する。ダイヤフラムが変位すると、弁バネにより弁体が弁座となるダイヤフラムに着座した状態で同方向に変位する。弁体と一体の弁棒が調圧軸に当接すると、これよりも更に二次室側へ変位するダイヤフラムによって弁体がダイヤフラムより離脱して開弁し、連通孔を介して一次室側の超過圧力相当分の流体を二次室側へ逃がす。これにより、一次室内の圧力が設定値まで降下すると、作動バネの弾性力により、ダイヤフラムが一次室側へ変位し、弁体が弁座となるダイヤフラムに着座し閉弁する。以上により、配管内等の圧力の異常上昇が防止される。
【0008】
一方、一次室側に接続する配管内等が負圧化した場合、外部に連通している二次室内の大気圧よりも一次室内の圧力が降下(負圧)する。すると、連通孔を通じて二次室の圧力(大気圧)により弁バネの弾性力に抗して弁体を一次室側へ押圧し、弁体が弁座となるダイヤフラムから離脱して開弁し、連通孔を介して二次室から一次室内に大気圧が吸引される。これにより、配管内等の負圧化が解消され一次室内の圧力が設定値まで上昇すると、弁バネの弾性力により、弁体が弁座となるダイヤフラムに着座し閉弁する。以上により、配管内等の負圧化が防止される。このように、一次側の配管内等の圧力が異常上昇した場合のみならず負圧化した場合でも、素早く設定圧力に復帰させることができる。
【0009】
そして、上記弁体と上記弁棒とを一体成形により形成した一部品で構成することにより、部品点数が削減されるので、構成も簡素化することができ、しかも弁体と弁棒の部品組み付け工数が削減されるので、生産性を向上することができ、コスト高となることも抑制することができる。また、弁体、弁棒の各部品を組み付けたものに比べて、これら部品間のシール性能を向上することができる。
【0010】
上記弁体の周壁端を先細りに形成してダイヤフラムに当接させる構成とするのが望ましい。
この場合は、弁体の周壁を弁座となるダイヤフラムに強く圧接させることができ、弁体とダイヤフラム間のシール性能を向上することができる。
【0011】
上記ダイヤフラムと上記ダイヤフラム押さえとを一体成形により形成した一部品で構成するのが望ましい。
この場合は、部品点数が更に削減されるので、構成も更に簡素化することができ、しかもこれら部品の組み付け工数が更に削減されるので、生産性を向上することができ、コスト高となることも抑制することができる。また、ダイヤフラムとダイヤフラム押さえの各部品を組み付けたものに比べて、これら部品間のシール性能を向上することができる。
【0012】
上記ダイヤフラム押さえは、ダイヤフラムの二次室側を向く面上に形成され、
上記ガイド孔は、二次室側に突出して弁バネを受けると共に弁棒を挿通支持するガイド筒と、一次室側へ延びてダイヤフラムの中心孔の内壁に内装される筒部とを備え、
上記筒部には、その先端から外側に延びてダイヤフラムの中心孔周囲を抱き込むフランジ部が形成され、このフランジ部より外側に露出するダイヤフラムの一次室側の面を弁体が当接する弁座とするのが望ましい。
【0013】
これによれば、ガイド筒により弁棒をガイド孔の軸線方向に真っ直ぐに安定して挿通支持することができる。従って、弁棒に形成する弁体の姿勢が弁座をなすダイヤフラム面に対して傾くことなく平行に保持され、弁体によるシール性能が安定して発揮される。また、上記の筒部及びフランジ部によりダイヤフラム押さえをダイヤフラムに強固に結合させると共に、シール面となる弁座をダイヤフラムによって形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る安全弁によれば、一次側の圧力の異常上昇を防止する機能と共に負圧破壊の機能を具備させるにあたって、部品点数の増加を抑制でき、構成を簡素化でき、生産性も向上され、且つシール性能も向上でき、またコスト高となることもない。また、本発明に係る安全弁は、逃し弁と負圧破壊弁の両機能を兼ね備えるので、温水機器等に対して逃し弁と負圧破壊弁とをそれぞれ設置する場合に比べて、温水機器等への据付作業も容易であり、温水機器等の構成も簡素化でき、且つ温水機器等のコストも軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態による安全弁の閉弁状態を示す断面図である。
【図2】実施形態による安全弁の外観を示す側面図である。
【図3】実施形態による安全弁の外観を示す平面図である。
【図4】作動レバーを起立保持した強制開弁状態を示す断面図である。
【図5】一次側の圧力上昇時における開弁状態を示す断面図である。
【図6】一次側の負圧時における開弁状態を示す断面図である。
【図7】他の実施形態の安全弁の閉弁状態を示す断面図である。
【図8】従来の安全弁の閉弁状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、実施形態による安全弁1は、二つの口部13,15を形成した弁箱10と、弁箱10を第1の口部13と通じる一次室14と第2の口部15と通じる二次室16とに区画形成するダイヤフラム2とを備える。第1の口部13と第2の口部15とは直角に形成されており、第1の口部13には温水機器の流体配管や流体容器等に接続され、第2の口部15は大気開放されている。そして、弁箱10は、樹脂製であり、第1の口部13を下部に設けた下箱11と、第2の口部15を側部に設けた上箱12とからなり、これら両箱はダイヤフラム2を挟持して接合されている。下箱11には、ダイヤフラム2の配置側の開口が大径部11aとなっており、この大径部11aに連設される段部11bにはダイヤフラム2の一次室14側への移動を所定位置で停止させるための凸部17が環状に突設されている。上箱12には、第1の口部13と接続する流体配管等(一次側)における超過圧力を開放するときの圧力設定値を調節するための調圧部6が上面に設けられている。
【0017】
ダイヤフラム2には、二次室16に対面する上面にダイヤフラム押さえ3が形成されている。ダイヤフラム2はゴム製のシートからなり、ダイヤフラム押さえ3は樹脂製である。これらダイヤフラム2とダイヤフラム押さえ3とは、射出成形の二色成形法等で一体形成した一部品で構成されている。ダイヤフラム押さえ3と上箱12の天井面との間に作動バネ4が圧縮状態に配設され、この作動バネ4の弾性力によりダイヤフラム2が一次室14側に付勢されている。ダイヤフラム押さえ3は、その上面の外周部に筒形の凸条31,32が内外二重に突設されている。作動バネ4は、このダイヤフラム押さえ3の内外の凸条31,32間の凹所33に一端が受け止められ、他端が上箱12の天井面に形成する凹所18に受け止められている。また、ダイヤフラム押さえ3の下面には、作動バネ4の受け止め位置と対応する箇所にダイヤフラム2を貫通して一次室14側へ突出する複数の突起34が形成されている。これら突起34は、下箱11の段部11bに突設する凸部17と対向されており、この凸部17に当接されることによりダイヤフラム2の一次室14側への移動が所定位置で停止される。なお、突起34は、環状に突設しているのではなく、周上に複数個突設させているので、一次室14内の圧力が凸部17の外側へも伝わってダイヤフラム2の下面全体に作用するようにしている。
【0018】
ダイヤフラム押さえ3の中央には、ダイヤフラム2を貫通して形成したガイド孔35と、ガイド孔35の周囲に一次室14と二次室16とを連通する複数の連通孔30とが設けられている。これら連通孔30を開閉自在とする弁体5が一次室14側に配置され、この弁体5から延設された弁棒50がガイド孔35を挿通して二次室16内へ突出されている。弁体5と弁棒50とは、射出成形等で一体成形により形成した樹脂製の一部品で構成されている。
【0019】
ガイド孔35は、二次室16側へ突出するガイド筒36と、一次室14側へ延設する筒部37とを有している。弁棒50には、作動バネ4よりも弾性力の弱い弁バネ53が外装されており、弁バネ53の一端がガイド筒36の外周に受け止められ、他端が弁棒50の上端付近に外嵌されたスナップリング54に受け止められている。このようにして、弁バネ53がスナップリング54とダイヤフラム押さえ3との間に圧縮状態に配設され、この弁バネ53の弾性力により弁棒50を二次室16側へ引き込んで弁体5が連通孔30を閉じる閉弁方向に付勢されている。
【0020】
また、ガイド孔35の筒部37には、その先端から外側に延びるフランジ部38が形成されている。筒部37がダイヤフラム2の中心孔20の内壁に内装され、フランジ部38がダイヤフラム2の下面(一次室14側を向く面)における中心孔20周囲を抱き込むように形成されている。これにより、ダイヤフラム押さえ3をダイヤフラム2に強固に結合させている。
【0021】
弁体5は、弁棒50の軸線に対し垂直方向に延びた円盤部51と、円盤部51の外周端からダイヤフラム2との対向側に突出する筒状の周壁部52とを有する。この弁体5の周壁部52の先端52aは、先細りに形成されており、この周壁部52の先端52aがダイヤフラム2の下面においてフランジ部38より外側のダイヤフラム2の露出部分を弁座21(シール面)として着離自在に当接される。すなわち、フランジ部38は、シール面となる弁座21をダイヤフラム2によって形成するように設けられている。弁体5の周壁部52先端52aが先細り形状となっているので、ダイヤフラム2に強く圧接させることができ、その結果、弁体5とダイヤフラム2間のシール性能が向上される。
【0022】
また、ガイド孔35におけるダイヤフラム押さえ3の略板厚部分とガイド筒36とは、内径が弁棒50の外径と略同径(弁棒50の外径と同じか少し大径)に設定されている。これにより、弁棒50をガイド孔35の軸線方向に真っ直ぐに安定して挿通支持することができ、従って、弁棒50に形成する弁体5の姿勢が弁座21をなすダイヤフラム面に対して傾くことなく平行に保持され、弁体5によるシール性能が一層安定して発揮される。
【0023】
調圧部6は、弁棒50の二次室16側の端部に対向されてこの弁棒50の端部との間隔を調節自在に配設された調圧軸60からなる。調圧軸60は、上箱12の上部壁に設ける貫通孔19に摺動自在に挿通され、シール材68により貫通孔19の水密性を確保した状態で二次室16内に突出させている。調圧軸60の上部にはネジ溝60aが形成されており、このネジ溝60aに調圧ナット61が螺合されている。この調圧ナット61は、貫通孔19を囲んで上箱12の上面に立設する筒状のスリーブ62内に摺動自在に収容されている。スリーブ62内の底部にはリング状の押え板63が取り付けられ、この押え板63と調圧ナット61の下面に形成した環状凹部61aとの間に調圧バネ67を圧縮状態に配設している。
【0024】
また、図2、図3をも参照して、スリーブ62の基端部の外面にスナップリング64を外嵌し、このスナップリング64と調圧ナット61の上部に形成した鍔部65の上面との間に断面コ字状の一対のアーム66を取り付け、調圧軸60及び調圧ナット61を抜け止め状態に保持している。一対のアーム66の上端部は、上方に屈曲形成された舌片66aを有し、これら舌片66a間に手動レバー7が割りピン70によって上下回動自在に取り付けられている。
【0025】
手動レバー7は、常時は調圧軸60に直交する横向き姿勢に配置されており、この手動レバー7を上方又は下方へ回動させると、手動レバー7の前部に垂下形成した操作片71により調圧ナット61の鍔部65上面が下方へ押し込まれる。これにより、調圧ナット61とともに調圧軸60が下方に移動して弁棒50を一次室14側へ移動させることにより、強制的に弁体5を開弁することができる。そして、手動レバー7による調圧ナット61への押圧力を解除することにより、調圧バネ67の弾性力により調圧軸60が後退し、弁バネ53の弾性力により、弁体5がダイヤフラム2に接触して閉弁状態に復帰する。
【0026】
また、上記強制開弁状態を維持するには、図4に示すように、手動レバー7を押し上げて調圧ナット61上に起立させ、調圧ナット61を押し下げ状態に保持すれば、上記同様に、弁体5がダイヤフラム2から離脱した強制開弁状態に保持される。この強制開弁状態を解除するには、手動レバー7を押し倒して元の横向き姿勢に戻すことで弁体5は閉弁状態に復帰する。
【0027】
手動レバー7が横向き姿勢にあるときに、手動レバー7の先端近傍に形成された開口部72からドライバー等の工具を差し込んで調圧軸60の上端に設けた溝部66bに係合させ、調圧軸60を回動させて調圧軸60の調圧ナット61への螺入量を調節することにより、調圧軸60と弁棒50との間の間隔を調節することができる。配管内等の超過圧力を逃すときの圧力の設定値は、作動バネ4のバネ定数と、調圧軸60と弁棒50との間の間隔とにより決定されるので、調圧軸60の下端と弁棒50の上端との間の間隔を調節することで超過圧力を逃すときの圧力設定値を調節することができる。
【0028】
次に、上記構成の安全弁1の動作を説明する。
一次室14側に接続する配管等の内圧が設定圧力以上に上昇した場合、図1とともに図5を参照して、一次室14内の圧力上昇により、作動バネ4の弾性力に抗してダイヤフラム2が二次室16側へ変位する。ダイヤフラム2が変位すると、弁バネ53により弁体5が弁座21となるダイヤフラム2に着座した状態で同方向に変位する。弁体5と一体の弁棒50が調圧軸60に当接すると、これよりも更に二次室16側へ変位するダイヤフラム2によって弁体5がダイヤフラム2より離脱して開弁し(図5参照)、連通孔30を介して一次室14側の超過圧力相当分の流体を二次室16側へ逃がす。これにより、一次室14内の圧力が設定値まで降下すると、作動バネ4の弾性力により、ダイヤフラム2が一次室14側へ変位し、弁体5が弁座21となるダイヤフラム2に着座し閉弁する。以上により、配管内等の圧力の異常上昇が防止される。
【0029】
一方、一次室14側に接続する配管内等が負圧化した場合、図1とともに図6を参照して、外部に連通している二次室16内の大気圧よりも一次室14内の圧力が降下(負圧)する。すると、連通孔30を通じて二次室16の圧力(大気圧)により弁バネ53の弾性力に抗して弁体5を一次室14側へ押圧し、弁体5が弁座21となるダイヤフラム2から離脱して開弁し(図6参照)、連通孔30を介して二次室16から一次室14内に大気圧が吸引される。これにより、配管内等の負圧化が解消され一次室14内の圧力が設定値まで上昇すると、弁バネ53の弾性力により、弁体5が弁座21となるダイヤフラム2に着座し閉弁する。以上により、配管内等の負圧化が防止される。このように、一次側の配管内等の圧力が異常上昇した場合のみならず負圧化した場合でも、素早く設定圧力に復帰させることができる。
【0030】
以上のように、この安全弁1は、逃がし弁と負圧破壊弁との機能を備える。そして、弁体5と弁棒50とは一体成形により形成した一部品で構成されており、また、ダイヤフラム2とダイヤフラム押さえ3も一体成形により形成した一部品で構成されている。従って、安全弁1を構成する部品点数が削減されるので、安全弁1の構成も簡素化することができる。しかも、これらの部品同士の組み付け工数が削減されるので、生産性を向上することができ、またコスト高となることも抑制することができる。さらには、弁体5、弁棒50の各部品を組み付けたものに比べて、これら部品間のシール性能を向上することができ、同様に、ダイヤフラム2とダイヤフラム押さえ3の各部品を組み付けたものに比べて、これら部品間のシール性能を向上することができる。
【0031】
このように、本実施形態に係る安全弁1によれば、一次側の圧力の異常上昇を防止する機能と共に負圧破壊の機能を具備させるにあたって、部品点数の増加を抑制でき、構成を簡素化でき、生産性も向上され、且つシール性能も向上でき、またコスト高となることもない。また、この安全弁1は、逃し弁と負圧破壊弁の両機能を兼ね備えるので、温水機器等に対して逃し弁と負圧破壊弁とをそれぞれ設置する場合に比べて、温水機器等への据付作業も容易であり、温水機器等の構成も簡素化でき、且つ温水機器等のコストも軽減することができる。
【0032】
(他の実施形態)
図7に示すように、他の実施形態の安全弁1Aは、作動バネ4の受け止め位置と対応するダイヤフラム2の下面位置には、金属製の環状の座金8を配設するようにして、この座金8でもって下箱11の段部11bに突設する凸部17Aに当接させるようにしている。この場合、ダイヤフラム2には、図1に示す実施形態の安全弁1のような複数の突起34を配設させる貫通部分が形成されることがないので、ダイヤフラム2のシール性能を高く保持することができる。なお、座金8は、インサート成形法等による一体成形により形成することで、ダイヤフラム2及びダイヤフラム押さえ3と共に一部品として構成される。また、凸部17Aは、環状に突設しているのではなく、周上に複数個突設させているので、一次室14内の圧力が凸部17Aの外側へも伝わってダイヤフラム2の下面全体に作用するようにしている。その他の構成は図1の実施形態と同様である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 安全弁
2 ダイヤフラム
3 ダイヤフラム押さえ
4 作動バネ
5 弁体
6 調圧部
10 弁箱
13,15 口部
14 一次室
16 二次室
20 ダイヤフラムの中心孔
21 弁座
30 連通孔
35 ガイド孔
36 ガイド筒
37 筒部
38 フランジ部
50 弁棒
53 弁バネ
60 調圧軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの口部を備えた弁箱と、
弁箱内を第1の口部と通じる一次室と第2の口部と通じる二次室とに区画するダイヤフラムと、
ダイヤフラムと結合するダイヤフラム押さえと、
ダイヤフラム押さえに受けられてダイヤフラムを一次室側へ付勢する作動バネと、
ダイヤフラム押さえに設けられて一次室と二次室とを連通する連通孔と、
一次室側に配置されて連通孔を開閉自在とする弁体と、
弁体から延設されてダイヤフラム押さえの中央にてダイヤフラムを貫通して形成したガイド孔に挿通して二次室側へ突出された弁棒と、
弁棒の二次室側の配置部分に外挿されて弁体を連通孔を閉じる閉弁方向に付勢する弁バネと、
弁棒の二次室側の端部に対向されてこの弁棒の端部との間隔を調節自在に配設された調圧軸とを備え、
上記弁体と上記弁棒とを一体成形により形成した一部品で構成し、この弁体に突設する筒状の周壁を上記ダイヤフラムを弁座としてダイヤフラムに着離自在に当接させる構成とした安全弁。
【請求項2】
請求項1に記載の安全弁において、
上記弁体の周壁端を先細りに形成してダイヤフラムに当接させる構成とした安全弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の安全弁において、
上記ダイヤフラムと上記ダイヤフラム押さえとを一体成形により形成した一部品で構成した安全弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の安全弁において、
上記ダイヤフラム押さえは、ダイヤフラムの二次室側を向く面上に形成され、
上記ガイド孔は、二次室側に突出して弁バネを受けると共に弁棒を挿通支持するガイド筒と、一次室側へ延びてダイヤフラムの中心孔の内壁に内装される筒部とを備え、
上記筒部には、その先端から外側に延びてダイヤフラムの中心孔周囲を抱き込むフランジ部が形成され、このフランジ部より外側に露出するダイヤフラムの一次室側の面を弁体が当接する弁座とした安全弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−220471(P2011−220471A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91433(P2010−91433)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】