説明

安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置

【課題】保守点検作業中に医用診断装置の状態が保守点検作業前の状況から変化した場合に、その状況変化を作業者に報知することのできる安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置を提供する。
【解決手段】保守点検を行うにあたって予め確認された医用診断装置の状況が保守点検中に変化したことを検知する装置状況検知手段2cと、装置状況検知手段によって検知された医用診断装置の状況変化を報知する装置状況表示制御手段2dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用診断装置の保守点検を行うにあたって、保守点検作業が正常に行われ医用診断装置の使用が安全に行われるようその安全の確保支援を行う安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関にある医用診断装置を保守点検する際には、原則として保守点検の対象となる医用診断装置を止めた状態で行う。そのため、通常は保守点検を行う前に点検保守を行う保守センタから医療機関に保守点検を行う旨の連絡を入れて作業予定を調整するとともに、保守点検中に医用診断装置を操作しないで欲しい旨、医療機関に依頼を行い、その後に保守点検を開始するという運用を行っている。
【0003】
さらにこのような保守点検を行う際には、現場で作業中の安全を確保するために、例えば、作業者が保守点検の対象となる医用診断装置の周囲にパイロンを置いたり、或いは医用診断装置を紐等で囲うことで関係者でない者が近づかないようにしている。また、医用診断装置の表示手段にスクリーンセイバーやスクリーンロックをかけることで操作者が保守点検中に誤って医用診断装置を操作することがないようにしている。
【0004】
さらに、近年医療機関にある医用診断装置に対して、インターネット等ネットワークを介して遠隔からその医用装置の操作指導を行ったり、或いは、医用装置の保守点検を行うシステムが開発されており、例えば、以下の特許文献1に開示されるような発明が知られている。この特許文献1においては、医用装置から離れている場所から、その医用装置の操作者に操作方法を指導する場合に、操作者が選択した複数の指導モードに基づいて指導を行うことで操作方法をより正確に、かつ、効率よく伝えることができるとされる。
【特許文献1】特開2002−306451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、保守点検の作業現場では、上述のように医用診断装置の周囲にパイロンを置く等によってこの医用診断装置に関係者以外を近づけさせないことはできるが、スクリーンセーバー等は解除することができるため、操作者がその医用診断装置から離れた場所から操作を行ってしまうと、保守点検を行っている作業者が思わぬ危険にさらされることも考えられる。例えば、CT(computed tomography:コンピュータ断層撮影)装置における放射線の曝射量の点検を行っている際にCT装置が操作されてしまうと、作業者が被爆する可能性が生ずる。
【0006】
また、ソフトウエアの更新においては、ネットワークによるデータ送受信時に操作者が医用診断装置を動かしてしまう、或いは、医用診断装置をシャットダウンしてしまう等の操作が行われデータの改変や喪失等の不備が生ずる可能性がある。このようなことが生ずると、正しいデータが医用診断装置に与えられず、ひいては患者の取り違いや診療情報の損失等、医療事故の原因となり得る。これでは、保守点検の作業を行ったとしても医用診断装置を安全に使用することはできない。
【0007】
また、遠隔操作により医療情報システム内のデータの修正や回復等の保守点検を行う場合には、上述のように保守点検予定を予め医療機関に知らせてはいる。但し、例えば、保守点検予定の連絡を受けた者から他の者に連絡がされていなかった等、何らかの理由により上述したような操作が行われてしまうことが考えられる。
【0008】
さらに、緊急の患者等が搬送された場合には、保守点検作業中であっても医用診断装置を使用しなければならない場合も出てくる。
【0009】
操作者による以上のような操作が作業者が知らない間に行われると、保守点検作業を行う前提となる医用診断装置の状態が変化してしまうことになり、保守点検後の医用診断装置の安全を確保するためには現在行っている保守点検作業を中断して改めて作業を行わなければならなくなる。
【0010】
上記特許文献1において開示される発明は、指導する操作内容が指導者からその指導を受ける操作者に正確に伝わらないことに起因する操作上のトラブルをなくすことを主眼に置いている。そのため、指導者と操作者が互いに遠隔にいてやり取りを行うが、例えば、指導する操作内容が正しくても誤って伝わり、その誤った内容に基づいて医用診断装置が操作された場合の医用診断装置及び、その医用診断装置を使用して診断を受ける患者等の安全確保については考慮されていない。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、保守点検作業中に医用診断装置の状況が保守点検作業前の状況から変化した場合に、その状況変化を作業者に報知することのできる安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の実施の形態に係る特徴は、安全確保支援システムにおいて、保守点検を行うにあたって予め確認された医用診断装置の状況が保守点検中に変化したことを検知する装置状況検知手段と、装置状況検知手段によって検知された医用診断装置の状況変化を報知する装置状況表示制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保守点検作業中に医用診断装置の状況が保守点検作業前の状況から変化した場合に、その状況変化を作業者に報知することのできる安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
医用診断装置1は、医療機関内に設置されており、例えば、X線診断装置やCT装置、超音波診断装置、磁気共鳴診断装置(MR(magnetic resonance)装置)、ガンマカメラやPET(positron-emission tomography:ポジトロン放出断層撮影)、及び診断用ワークステーション等が該当する。また、医療機関に据え置き型の医用診断装置だけではなく、移動可能な医用診断装置も含まれる。以下、本発明の実施の形態について、後述する安全確保支援システムをこれらの医用診断装置1に組み込んだ場合を例に挙げて説明を行う。
【0015】
図1は医用診断装置1の内部構成を示すブロック図である。医用診断装置1は、CPU(Central Processing Unit)1aと、ROM(Read Only Memory)1bと、RAM(Random Access Memory)1c及び入出力インターフェイス1dがバス1eを介して接続されている。入出力インターフェイス1dには、入力手段1fと、表示手段1gと、通信制御手段1hと、記憶手段1iと、リムーバブルディスク1jと、駆動部制御手段1kとが接続されており、駆動部制御手段1kによって医用診断装置1の各駆動部1lが制御される。
【0016】
CPU1aは、入力手段1fからの入力信号に基づいてROM1bから医用診断装置1を起動するためのブートプログラムを読み出して実行し、記憶手段1iに格納されている各種オペレーティングシステムを読み出す。またCPU1aは、入力手段1fや入出力インターフェイス1dを介して、例えば、遠隔保守が行われる場合には図示しない保守端末からの入力信号や図示していないその他の外部機器からの入力信号に基づいて各種装置の制御を行う。さらにCPU1aは、RAM1cや記憶手段1i等に記憶されたプログラム及びデータを読み出してRAM1cにロードするとともに、RAM1cから読み出されたプログラムのコマンドに基づいて、データの計算または加工等、一連の処理を実現する処理装置である。
【0017】
入力手段1fは、医用診断装置1の操作者が各種の操作を入力するキーボード、ダイヤル等の入力デバイスにより構成されており、操作者の操作に基づいて入力信号を作成しバス1eを介してCPU1aに送信される。また、医用診断装置1には、キーボード等だけでなく専用の操作パネルが設けられている場合もあり、その操作パネル上の入力デバイスを介して操作画面に対する操作を行うこともできる。表示手段1gは、例えば液晶ディスプレイであり、例えばCPU1aからバス1eを介して出力信号を受信し、保守点検中に変化した医用診断装置1の状況やCPU1aの処理結果等を表示する手段である。
【0018】
通信制御手段1hは、LANカードやモデム等の手段であり、医用診断装置1をインターネットやLAN等の通信ネットワークに接続することを可能とする手段である。通信制御手段1hを介して通信ネットワークと送受信したデータは入力信号または出力信号として、入出力インターフェイス1d及びバス1eを介してCPU1aに送受信される。
【0019】
記憶手段1iは、半導体や磁気ディスクで構成されており、CPU1aで実行されるプログラムやデータが記憶されている。
【0020】
リムーバブルディスク1jは、光ディスクやフレキシブルディスクのことであり、ディスクドライブによって読み書きされた信号は、入出力インターフェイス1d及びバス1eを介してCPU1aに送受信される。
【0021】
なお、本発明の実施の形態における医用診断装置1では、安全確保支援プログラムが記憶手段1i、或いはリムーバブルディスク1jに格納されており、CPU1aに読み込まれ実行されることにより、安全確保支援システム2が医用診断装置1に実装されることになる。
【0022】
図2は、安全確保支援システム2が医用診断装置1に実装された場合の構成を示すブロック図である。安全確保支援システム2は、受信手段2aと、判断手段2bと、装置状況検知手段2cと、装置状況表示制御手段2dと、送信手段2eとから構成される。
【0023】
判断手段2bは、医用診断装置1が保守点検作業の開始或いは終了の判断及びその他の各種判断を行う。この判断は、現場の作業者が直接対象となる医用診断装置1に保守点検に関する保守情報を入力することにより、或いは、ネットワークを介した遠隔保守の場合は保守センタから送信された保守情報を受信することにより判断される。医用診断装置1は、この保守情報に基づいて保守点検の開始或いは終了の態勢に入る。
【0024】
装置状況検知手段2cは、医用診断装置1の選択された各部の状況を検知する。医用診断装置1が検査等で使用される場合(通常対応)には、安全確保支援システム2は働かず、この装置状況検知手段2cも機能しないようにされている。一方、判断手段2bから保守点検を行うための保守情報を受信したときに機能するようにされている。そこで、装置状況検知手段2cは判断手段2bから保守情報を受信すると、医用診断装置1の状態を「通常対応」から「保守点検対応」に移行させ、医用診断装置1の各部がその時点でどのような状況にあるかを確認する。
【0025】
すなわち、装置状況検知手段2cは、保守点検を行うにあたって予め確認された医用診断装置1の各部の状況が保守点検中に変化したときにその変化を検知する。例えば、保守点検の対象の医用診断装置がX線CT装置である場合、「寝台のロック」の状況(寝台が動いたか否か)、「X線管の通電」が遮断されているか否か、等の検知対象項目として挙げられている各部の状況を検知する。なお、装置状況検知手段2cによって検知される各部の状況は、保守点検の対象となる医用診断装置によって異なり、また、任意にその検知対象項目を設定することができる。
【0026】
装置状況表示制御手段2dは、装置状況検知手段2cが検知した医用診断装置1の各部の状況に基づいて、作業者或いは操作者に医用診断装置1の各部の状況を報知する際の制御を行う。すなわち、医用診断装置1の状況が変化した場合にはその変化を報知する。この報知の方法については、例えば、表示手段1gに変更点を表示する、或いは音声で注意を促す等、視覚に訴える、聴覚に訴える等、いずれの方法であっても良い。
【0027】
次に、医用診断装置1の保守点検作業の開始から終了までの手順を図3に示すフローチャート等を使用しつつ説明する。
【0028】
まず、医用診断装置1が保守点検作業の開始を示す情報(保守情報)を受信する(ST1)。この保守情報の送信は、作業者が現場で直接保守点検の対象となる医用診断装置の入力手段1fを操作することで行っても良いし、遠隔操作によって保守を行う場合には、保守センタから通信ネットワークを介して送信されても良い。この保守情報は安全確保支援システム2内の判断手段2bに入り、判断手段2bはこれから保守点検作業が開始されると判断する。そこで、判断手段2bは、装置状況検知手段2cに受信した保守情報を送信する。
【0029】
保守情報を受信した装置状況検知手段2cは、医用診断装置1の状態を「通常対応」から「保守点検対応」に移行させるとともに(ST2)、医用診断装置1の各部がその時点でどのような状況にあるかを把握する(ST3)。この状況把握は、予め記憶手段1iに記憶されている検知対象項目に挙げられている医用診断装置1の各部の状況を把握するものである。通常、医用診断装置の保守点検は、医用診断装置の各駆動部等を使用している状態から所定の位置に戻して、その医用診断装置のホームポジションともいうべき位置で行われる。装置状況検知手段2cは、保守点検対象となる医用診断装置の各部がそのような位置にあるかどうかを確認する(その状態を把握する)。
【0030】
その上で、装置状況表示制御手段2dは医用診断装置1の各部が保守点検を受けうる状態にあることを記憶するとともに表示手段2gを介して表示させる(ST4)。医用診断装置1の状況を記憶しておく場所は装置状況表示制御手段2d内であっても医用診断装置1の記憶手段1iであってもよい。図4は、表示手段1gに表示される医用診断装置1の動作状況を示す画面例である。この表示手段1gに表示される画面例はあくまでも一例に過ぎず、このレイアウトや表示項目等については任意に定めることができる。
【0031】
この画面例では、最上段に現在行われている保守点検作業のメニューが表示されている(図4に示す画面例では「ソフトウエア更新中」と表示)。その下に保守点検の対象となっている医用診断装置の、保守点検作業の開始時点における「装置状況」が表示されている。この項目は、X線CT装置について保守点検を行う場合にそのX線CT装置の表示手段1gに表示される例を示している。ここでは、「寝台のロック」、「X線管の通電遮断」、「データベースアクセス拒否」、「通信拒否」と4つの項目が挙げられている。なお、ここでは上記4つの項目を挙げているが、その他の項目を挙げることもできる。
【0032】
「寝台のロック」は、寝台がホームポジションにあり、かつ保守点検中に移動しないようにロックされているかを示すものである。また、「データベースアクセス拒否」、「通信拒否」は、通信制御手段1hを介して通信ネットワークに接続されているデータベースへのアクセスや通信が行われているか否かを示す項目である。図4に示す画面例ではいずれも「OK」と表示されている。すべての項目について「OK」の表示が出されていればその医用診断装置1は保守点検作業を受け付けることが可能な状態にあることを示している。判断手段2bがこのような状態にあることを確認した後、保守点検作業が開始される(ST5)。このように表示手段1g等に医用診断装置1が保守点検を受けていることが明示されれば、操作者が保守点検作業中に誤って医用診断装置1を操作する可能性を低減させることができる。このことは、いきなり医用診断装置1が動くといった作業者にとって予想外の操作がなされることを回避させることができるので、作業中の作業者に対する安全性の確保を支援することにつながる。
【0033】
装置状況検知手段2cは、医用診断装置1が保守点検作業を受けている間、各部の装置状況が保守点検作業の開始時から変化がないかどうかを監視している。その監視の仕組みについてはどのような仕組みを採用することも可能であるが、例えば、「寝台のロック」については図5に示すような装置構成とすることができる。
【0034】
図5はX線CT装置10を横から見た図であり、架台11は切断されてその断面が示されており、架台11中央に患者が検査のために入るトンネル部12が見えている。寝台13上には天板14が設けられており、矢印の方向に移動可能とされている。患者は天板14の上に横たわり、この天板14が矢印の方向に動くことで患者の体各部のX線写真が撮影される。図5に示すような位置に天板14がある状態がこの天板14のホームポジションであるとした場合に、天板14がトンネル部12に挿入されるその寝台13の先端部にスイッチ15が設けられている。天板がトンネル部12に向けてスライドするとこのスイッチ15がONの状態になる。従って、保守点検作業の開始時には天板14が図5のような状態にあったものが、スイッチ15がONの状態になったことが装置状況検知手段2cにおいて検知されると、天板14が移動したと判断することができる。
【0035】
図6は液体ヘリウムを用いる磁気共鳴診断装置(MR(magnetic resonance)装置)におけるヘリウムバルブのみを抜き出して示す模式図である。MR装置によっては超伝導磁石を用いて静磁界を発生させる機種もあり、そのようなMR装置においては超電導磁石の冷却に液体ヘリウムが用いられる。MR装置を保守点検する場合には、このヘリウムバルブを閉めてヘリウムの遮断を行ってから作業を開始する。このヘリウムバルブ20は、ノブ21を矢印に示す方向に回転させることでヘリウムをMR装置に流入させたり遮断することができる。このノブ21には磁石22が取り付けられており、ノブ21の軸と同軸上であって磁石22に対向する位置に検出回路23が設けられている。この検出回路23は、電磁力を検出する回路であり、ノブ21を回転させることで磁石22も同時に回転し、磁石22が回転することによって磁場が変化し電磁力が発生する。検出回路23はこの発生した電磁力を検出して装置状況検知手段2cにヘリウムバルブ20が回転し、保守点検作業の開始時は閉められていたノブ21が開放されたことを送信する。このMR装置の場合は、表示手段1gに表示される項目は、図4に示すX線CT装置の項目とは異なり、例えば、「ヘリウムバルブ遮断」といった項目が設けられる。
【0036】
さらに、保守点検作業の対象とされている医用診断装置1において、例えば、記憶手段1iや同じ通信ネットワークに接続されるデータサーバ等にアクセスした履歴を監視し、アクセスがあったことを装置状況検知手段2cによって検知するようにしても良い。
【0037】
このように保守点検作業の開始時から医用診断装置1の状況が変化した場合には(ST6のYES)、装置状況検知手段2cで検知され医用診断装置の装置状況が確認されるとともに装置状況表示制御手段2dによって記憶される(ST7)。そして、その情報が表示手段1gに表示される(ST8)。
【0038】
図7は、図4同様表示手段1gに表示される医用診断装置1の動作状況を示す画面例である。図7の画面例では、図5に示す天板14が移動してスイッチ15がONとなったことが装置状況検知手段2cによって検知され、その情報が装置状況表示制御手段2dによって画面上「NG」と表示されている。また、この画面例では示していないが、「NG」となった項目の色を例えば、赤色で表示させる、或いは状況の変化があった項目のみを抜き出して表示する等すればより確実に作業者、操作者に報知することができる。また、保守点検作業の開始時とその状況が変化した項目が発生した場合には、音声をもって報知することとしても良く、操作者の注意を喚起する方法であれば特に問わない。
【0039】
表示手段1gにこのような表示がなされることにより、作業者は対象となる医用診断装置が保守点検作業の開始の時とはその状況が変化したことを知ることができるので、状況の変化による保守点検作業への影響を考慮することができる。そのため、保守点検を中止して再度最初から保守点検を行う、或いは、そのまま保守点検作業を続行する等の判断を下すことができ、保守点検についてより安全性を確保することができる。
【0040】
医用診断装置1の状況に変化がない場合(ST6のNO)には、判断手段2bによってさらに保守点検作業の終了を示す情報を受信したか否かしたが判断される(ST9)。終了情報を受信していない場合には(ST9のNO)、医用診断装置1に対する保守点検作業が継続されていることになるため、ステップ6に戻って再度医用診断装置1の状況に変化がないか否かが判断される。
【0041】
終了情報を受信した場合には(ST9のYES)、保守点検は終了となり(ST10)、その医用診断装置1の状況について「保守点検対応」を解除して「通常対応」に移行させる(ST11)。この状態になれば医用診断装置1を通常通り検査等に使用することができる。
【0042】
このように、保守点検作業中であることを報知することにより、操作者による誤操作を防ぐことができ、保守点検作業中の作業者の安全を図ることのできる安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置を提供することができる。
【0043】
また、保守点検作業中に医用診断装置の状況が保守点検作業前の状況から変化した場合には、その状況変化を作業者に報知することで操作者によって作業者の関知しない操作がされたことが明示されることになるため、作業者はその後保守点検作業を続行するか中止するかの判断を行うことができるため、操作されたことを知らずに保守点検を行う危険性及び、そのような危険性の元で保守点検がなされた医用診断装置を使用することに起因する操作者、患者への様々な危険性をも回避することのできる安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置を提供することができる。
【0044】
なお、これまでは医用診断装置1の装置状況を装置状況表示制御手段2dが記憶するように説明をしてきたが、この装置状況の記憶については装置状況検知手段2cによって記憶されても良い。この場合の装置状況の記憶場所は装置状況表示制御手段2dと同様、自らの中に記憶しても、記憶手段1iに記憶しても良い。
【0045】
この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上述した実施の形態においては安全確保支援システムを医用診断装置に搭載した場合を例に挙げて説明したが、その他に、例えば、病院情報管理システム(HIS:Hospital Information System)、放射線部門情報管理システム(RIS:Radiological Information System)、医用画像管理システム(PACS:Picture Archiving Communication System)といった医療機関内に構築された各種管理システムと組み合わせて用いても良い。また、これら各種管理システムの保守点検において上述した安全確保支援システムを用いても良い。上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態における医用診断装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】安全確保支援システムの内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態における安全確保支援システムにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】表示手段に示される表示例を表わす画面例である。
【図5】X線CT装置において装置の状況を検知する仕組みを示す説明図である。
【図6】MR装置において装置の状況を検知する仕組みを示す説明図である。
【図7】表示手段に示される表示例を表わす画面例である。
【符号の説明】
【0047】
1 医用診断装置
2 安全確保支援システム
2a 受信手段
2b 判断手段
2c 装置状況検知手段
2d 装置状況表示制御手段
2e 送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保守点検を行うにあたって予め確認された医用診断装置の状況が保守点検中に変化したことを検知する装置状況検知手段と、
前記装置状況検知手段によって検知された前記医用診断装置の状況変化を報知する装置状況表示制御手段と、
を備えることを特徴とする安全確保支援システム。
【請求項2】
前記装置状況表示制御手段は、保守点検中、表示手段に前記医用診断装置の保守点検開始時における状況を表示させることを特徴とする請求項1記載の安全確保支援システム。
【請求項3】
前記装置状況表示制御手段は、表示手段に前記医用診断装置の保守点検開始時における状況の表示に替えて前記医用診断装置の状況変化を報知することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の安全確保支援システム。
【請求項4】
前記装置状況表示制御手段は、前記医用診断装置の状況変化を音声によって報知することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の安全確保支援システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の安全確保支援システムを備えることを特徴とする医用診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−264126(P2008−264126A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109601(P2007−109601)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】