説明

安定した非水性薬学的組成物

本発明は、保存安定した非水性薬学的組成物、及び糖尿病及び高血糖症を処置する方法におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水性薬学的組成物、及び糖尿病及び高血糖症を処置する方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリペプチドは、典型的には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドのようなある種の非プロトン溶媒を除くほとんどの非水性溶媒中において低い溶解度を有する。しかしながら、これらの非プロトン溶媒は毒性のため、かなりの度合いで薬学的製剤に使用するには不適切である。
【0003】
Klibanovら(J. T. Chin, S. L. Wheeler, 及びA. M. Klibanov. Communication to the editor: On protein solubility in organic solvents. BIOTECHNOL.BIOENG. 44 (1):140-145, 1994)には、プロトン性で非常に親水性の極性溶媒が、10mg/ml以上のリゾチーム(pH6.0の水溶液から凍結乾燥させたもの)を溶解させることが記載されている。個々の溶媒(1,5ペンタンジオール)における溶解度は、リボゾームが水溶液からペンタンジオールに溶解される前に凍結乾燥され、pH値がリボゾームの等電点以下に動いた場合、際だって増加した。溶媒の特徴とリボゾームの溶解度との間に、強い相関関係を確立させることはできなかった。
【0004】
国際公開第00/42993号には、高分子のデリバリーのための製剤が開示されており、ここで高分子は、吸入により患者の肺に送達させるためにエアロゾル化可能な低毒性の有機溶媒に溶解又は分散される。
【0005】
多くの有機極性プロトン溶媒は、ポリペプチドの部分的なアンフォールディングのために、ポリペプチド、例えばインスリン分泌性ペプチドを不安定にさせ、これが高次構造の柔軟性のために、凝集及び化学的分解プロセスをしばしば高める傾向にある。エタノール等のある種の有機極性プロトン溶媒はポリペプチドに対して変性剤としてすら作用するかもしれない。さらに、有機極性プロトン溶媒は、多くの場合、ポリペプチドの安定性を損なう高度に反応性の不純物、例えばアルデヒド類及びケトン類を少量含有する。よって、十分な有効期間安定性を有するインスリン分泌性ペプチドの非水溶液を調製することは困難である。
【0006】
インスリン分泌性ペプチドの非水溶液は、さらに溶液加圧定量吸入器(pMDI)にプロセシング可能であり、そこではインスリン分泌性ペプチドをヒドロフルオロアルカンに溶解せしめるために極性の非水溶液が共溶媒として作用するため、それらは有利には肺投与に使用されうる。
また、インスリン分泌性ペプチドの非水溶液は、洗浄剤及び無極性の疎水性溶媒、例えば油を添加することにより、経口投与用のマイクロエマルジョンにプロセシング可能である。マイクロエマルジョンは、タンパク質分解からインスリン分泌性ペプチドを保護し、消化管からのインスリン分泌性ペプチドの全身的吸収を高める。さらに、インスリン分泌性ペプチドの加水分解は、水分活性が低いために、非水性製剤においては最小化されることが予測される。
【0007】
種々の処理及び賦形剤の添加を、それらの溶解度及びそれらの安定性を改善するために、治療用ペプチドの非水性薬学的組成物にしばしば適用しなければならない。
ペプチドの液状非経口製剤の保存期間は、少なくとも1年、好ましくはそれ以上でなくてはならない。製品が輸送され、周囲温度で毎日振揺されうる使用中の期間は、好ましくは数週間であるべきである。
よって、安定性が改善された、治療用ペプチドの非水性薬学的組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様では、脱水されたインスリン分泌性ペプチドと、少なくとも一の半極性プロトン性有機溶媒を含有し、該インスリン分泌性ペプチドが、水溶液中のインスリン分泌性ペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水されている非水性薬学的組成物が提供される。
本発明の一態様では、脱水されたインスリン分泌性ペプチドと、少なくとも一の半極性プロトン性有機溶媒を含有し、該インスリン分泌性ペプチドが、水溶液中のインスリン分泌性ペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水されており、標的pHが約6.0〜約9.0の範囲にある非水性薬学的組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
我々は、インスリン分泌性ペプチド、例えば固体状態(脱水された)のGLP-1が、脱水前に水溶液中における該インスリン分泌性ペプチドのpHを最適にすることで、半極性かつプロトン性の非水性媒体に非常に高度に溶解するようになり、保存安定性のある製薬用製剤の製剤化が可能になることを見出した。例えば、経口、肺及び鼻に使用されるこのような薬学的組成物は、高い化学的/物理的安定性を示す。本発明の組成物、例えば半極性プロトン性有機溶媒としてプロピレングリコールを使用する経口用の薬学的組成物は、さらに有意に改善された生物学的利用能をもまた示しうる。
【0010】
本発明の一態様では、脱水されたインスリン分泌性ペプチドと、少なくとも一の半極性プロトン性有機溶媒を含有し、該インスリン分泌性ペプチドが、水溶液中のインスリン分泌性ペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水されている非水性薬学的組成物が提供される。
【0011】
本発明のさらなる態様では、
a)脱水された治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドと、
b)少なくとも一の半極性プロトン性有機溶媒、
を含有し、該インスリン分泌性ペプチドが、水溶液中のインスリン分泌性ペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水されており、該標的pHが約6.0〜約9.0の範囲にある非水性薬学的組成物が提供される。
【0012】
本発明のまたさらなる態様では、
a)脱水された治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドと、
b)少なくとも一の半極性プロトン性有機溶媒、
の混合物を含有し、該インスリン分泌性ペプチドが、水溶液中のインスリン分泌性ペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水されており、該標的pHが約6.0〜約9.0の範囲にある非水性薬学的組成物が提供される。
【0013】
ここで使用される「非水性」なる用語は、10%w/w未満の水分を含有する組成物を意味する。本発明の組成物は、より好ましい実施態様では8%w/w未満の水分、さらに好ましい実施態様では5%w/w未満の水分、またさらに好ましい実施態様では3%w/w未満の水分、特に好ましい実施態様では2%w/w未満の水分を含有する。
【0014】
インスリン分泌性ペプチドに関連してここで使用される「脱水(された)」なる用語は、水溶液から乾燥させられたインスリン分泌性ペプチドを意味する。ここで使用される「標的pH」なる用語は、脱水されたインスリン分泌性ペプチドが、約40mg/ml又はそれ以上の濃度で、純水中で再水和される場合に確立される水溶液のpHを意味する。標的pHは、乾燥によりインスリン分泌性ペプチドが回収されるインスリン分泌性ペプチド水溶液のpHと典型的には同一である。しかしながら、インスリン分泌性ペプチド溶液が揮発性の酸又は塩基を含んでいるならば、インスリン分泌性ペプチド溶液のpHは標的pHと同一ではない。インスリン分泌性ペプチドのpH履歴は、半極性プロトン有機溶媒に溶解可能なインスリン分泌性ペプチドの量に対する決定因子となるであろうことが見出された。
【0015】
本発明において、インスリン分泌性ペプチドは、水溶液中のインスリン分泌性ペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水されている。よって、本発明の一態様では、標的pHは、インスリン分泌性ペプチドの等電点より1pH単位以上、上である。本発明の別の態様では、標的pHは、インスリン分泌性ペプチドの等電点より1pH単位以上、下である。好ましい態様では、標的pHは、インスリン分泌性ペプチドのpIより、1.5pH以上、上又は下である。さらに好ましい態様では、標的pHは、インスリン分泌性ペプチドのpIより、2.0pH以上、上又は下である。さらなる態様では、標的pHは、インスリン分泌性ペプチドのpIより、2.5pH単位、上又は下である。さらなる態様では、標的pHは、インスリン分泌性ペプチドのpIより上である。
【0016】
「揮発性塩基」とは、室温で65Pa以上の蒸気圧を有する塩基、又は室温で65Pa以上の蒸気圧を有する塩基を含む水性共沸混合物等、加熱及び/又は減圧時に、ある程度蒸発するであろう塩基を意味する。揮発性塩基の例は、水酸化アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、第2級アミン類、第3級アミン類、アリールアミン類、脂肪族アミン類又は重炭酸アンモニウム又は組合せである。例えば、揮発性塩基は、重炭酸塩、炭酸塩、アンモニア、ヒドラジン、又は有機塩基、例えば低級脂肪族アミン類、特にトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン類、トリエタノールアミン、及びそれらの塩であってよい。さらに、揮発性塩基は、水酸化アンモニウム、エチルアミン又はメチルアミン又はそれらの組合せであってもよい。
「揮発性酸」とは、室温で65Pa以上の蒸気圧を有する酸、又は室温で65Pa以上の蒸気圧を有する酸を含む水性共沸混合物等、加熱及び/又は減圧時に、ある程度蒸発するであろう酸を意味する。揮発性酸の例は、炭酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸である。
【0017】
ここに記載する「非揮発性塩基」とは、室温で65Pa以下の蒸気圧を有する塩基等、加熱時に蒸発しない又は一部のみが蒸発する塩基を意味する。非揮発性塩基は、アルカリ金属塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属塩、アルカリ土類金属の水酸化物、及びアミノ酸、又はその組合せからなる群から選択可能である。非揮発性塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及び酸化カルシウムである。
ここに記載する「非揮発性酸」とは、室温で65Pa以下の蒸気圧を有する酸等、加熱時に蒸発しない又は一部のみが蒸発する酸を意味する。非揮発性酸の例は、塩酸、リン酸及び硫酸である。
【0018】
ここで使用される「インスリン分泌性ペプチドのpI」なる用語は、インスリン分泌性ペプチドの等電点を意味する。
ここで使用される場合「等電点」なる用語は、ペプチド等の高分子の全体的な正味荷電が0となるpH値を意味する。ペプチドにはいくつかの荷電群が存在してよく、等電点においては、これら全ての荷電の合計が0になる。等電点を超えたpHでは、ペプチドの全体的な正味荷電は負であるのに対し、等電点以下のpH値では、ペプチドの全体的な正味荷電は正となるであろう。
【0019】
タンパク質のpIは、等電点電気泳動等、電気泳動技術により実験的に決定することができる:
pH勾配は、非対流培地、例えばポリアクリルアミドゲルにおいて確立される。タンパク質がシステムに導入されると、適用される電場の影響下、ゲルを通過して移動する。正に荷電したタンパク質は陰極に移動するであろう。最終的に、移動したタンパク質は、正味電荷が0であり、焦点が合ったと言われるpH勾配の所定の点に到達する。これがタンパク質の等電点(pI)である。ついで、タンパク質はゲルに固定され、染色される。ついで、公知のpI値を有するマーカー分子に対して、ゲル上のタンパク質の位置を比較することにより、タンパク質のpIを決定することができる。
【0020】
与えられたpH値におけるタンパク質の正味荷電は、従来からの方法により、当業者により理論的に推定されるであろう。本質的に、タンパク質の正味荷電は、タンパク質中の荷電アミノ酸:アスパラタート(β-カルボキシル基)、グルタマート(δ-カルボキシル基)、システイン(チオール基)、チロシン(フェノール基)、ヒスチジン(イミダゾール側鎖)、リジン(ε-アンモニウム基)及びアルギニン(グアニジニウム基)の分数電荷の合計に等価である。さらに、タンパク質末端基(α-NH及びα-COOH)の電荷も考慮すべきである。イオン化基の分数電荷は固有のpKa値から算出することができる。
【0021】
インスリン分泌性ペプチドの乾燥、すなわち脱水は、任意の従来からの乾燥方法、例えば噴霧-、凍結-、真空-、オープン(open)-及び接触乾燥により実施することができる。本発明の一態様では、インスリン分泌性ペプチド溶液は噴霧乾燥されて、約10%以下の水分含有量となる。水分含有量は、実験部分に記載されているような乾燥試験における損失(重量)により算出/測定されて、約8%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、又は約1%以下であってよい。
本発明の一態様では、インスリン分泌性ペプチドは噴霧乾燥される。本発明のさらなる態様では、インスリン分泌性ペプチドは凍結乾燥される。
【0022】
本発明の一態様では、有機溶媒での選択された標的pHで脱水することによる、インスリン分泌性ペプチドの事前処理で得られる溶解度は、少なくとも20mg/mlである。さらなる態様では、脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度は少なくとも30mg/mlである。またさらなる態様では、脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度は少なくとも40mg/mlである。またさらなる態様では、脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度は少なくとも50mg/mlである。またさらなる態様では、脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度は少なくとも60mg/mlである。またさらなる態様では、脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度は少なくとも70mg/mlである。またさらなる態様では、脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度は少なくとも80mg/mlである。またさらなる態様では、脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度は少なくとも100mg/mlである。
【0023】
ここで使用される「半極性プロトン性有機溶媒」なる用語は、O-H又はN-H結合を有する親水性で水混和性の炭素含有溶媒、又はその混合物を意味する。極性は溶媒の誘電率又は双極子モーメントに反映される。溶媒の極性は、溶解可能な化合物の種類、混和している他の溶媒又は液状化合物に応じて決定される。典型的には、極性溶媒は極性化合物を溶解させ、無極性溶媒は無極性化合物を溶解させ:「同類のものが同類のものを溶解する」。無機塩(例えば塩化ナトリウム)等、強い極性の化合物は、超極性溶媒にのみ溶解する。
【0024】
半極性溶媒は、20−50の範囲の誘電率を有する溶媒として定義され、これに対し、極性及び無極性溶媒は、それぞれ50以上、20以下の誘電率により定義される。半極性かつプロトン性の例は、参照としての水と共に表1に列挙している。
表1.選択された半極性プロトン性有機溶媒及び参照としての水の誘電率(静的誘電率)(Handbook of Chemistry and Physics, CMC Press, 誘電率は静電場又は緩和が生じない比較的低周波数で測定)

【0025】
本文脈中、1,2-プロパンジオールとプロピレングリコールは交換可能に使用される。本文脈中、プロパントリオールとグリセロールは交換可能に使用される。本文脈中、エタンジオールとエチレングリコールは交換可能に使用される。
本発明の一態様では、溶媒は、ポリオール類からなる群から選択される。ここで使用される場合「ポリオール」なる用語は、複数のヒドロキシル基を有する化学化合物を意味する。
本発明のさらなる態様では、溶媒は、ジオール類及びトリオール類からなる群から選択される。ここで使用される場合「ジオール」なる用語は、2つのヒドロキシル基を有する化学化合物を意味する。ここで使用される場合「トリオール」なる用語は、3つのヒドロキシル基を有する化学化合物を意味する。
【0026】
本発明のさらなる態様では、溶媒は、グリセロール(プロパントリオール)、エタンジオール(エチレングリコール)、1,3-プロパンジオール、メタノール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、エタノール、及びイソプロパノール、又はそれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらなる態様では、溶媒はプロピレングリコール及びグリセロールからなる群から選択される。本発明の好ましい態様では、溶媒はグリセロールである。この溶媒は高用量であっても生体融合性があり、例えばGLP-1化合物等に対して高い溶媒キャパシティを有する。本発明の他の好ましい態様では、溶媒はプロピレングリコール及びエチレングリコールからなる群から選択される。これらの溶媒は低粘度であり、中程度の用量で生体融合性があり、GLP-1化合物等に対して非常に高い溶媒キャパシティを有する。
【0027】
溶媒は、メイラード反応等、溶解したインスリン分泌性ペプチドの化学的劣化を最小にするために、例えばアルデヒド類、ケトン類及び他の還元不純物が低含有量である高純度のものであることが好ましい。インスリン分泌性ペプチドの劣化を低下させるために、ポリオール等の半極性プロトン性有機溶媒(類)を含有する製剤に、グリシルグリシン及びエチレンジアミン等のスカベンジャー分子を添加してもよく、さらなる還元不純物の形成率を低下させるために、酸化防止剤を添加することもできる。
【0028】
本発明の一態様では、有機溶媒は、少なくとも20%w/wの量で、薬学的組成物に存在している。本発明のさらなる態様では、有機溶媒は、少なくとも30%w/wの量で存在している。本発明のさらなる態様では、有機溶媒は、少なくとも40%w/wの量で存在している。本発明のさらなる態様では、有機溶媒は、少なくとも50%w/wの量で存在している。本発明のさらなる態様では、有機溶媒は、少なくとも80%w/wの量で存在している。
【0029】
薬学的組成物の保存安定性を増加させるために、有利には、標的pHを約6.0〜約9.0に調節することが見出されている。本発明の一態様では、標的pHは、約6.0〜約9.0、例えば約6.2〜約8.4、約6.4〜約8.7、約6.5〜約8.5、約7.0〜約8.5、又は約7.2〜約8.3である。一態様では、標的pHは、約7.4以上、約7.6以上、約7.8以上、約8.0以上、約8.2以上、約8.4以上、又は約8.6以上である。上述したような脱水の後は、インスリン分泌性ペプチドがフィブリル化する傾向が少なくなるため、保存安定性が増加すると考えられる。
【0030】
ここで使用される場合、「保存安定性のある薬学的組成物」なる用語は、治療用タンパク質に関連して、少なくとも規制当局により要求されている期間、安定している薬学的組成物を意味する。好ましくは、保存安定性のある薬学的組成物は、5℃で少なくとも1年安定している。保存安定性は、化学的安定性並びに物理的安定性を含む。化学的不安定性は、加水分解、ラセミ化、酸化又は架橋等、共有結合の分解に関与している。製剤の化学的安定性は、逆相(RP-HPLC)及びサイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)により評価される。本発明の一態様では、保存期間中のペプチド関連不純物の形成は、全ペプチド含有量の10%未満である。本発明のさらなる態様では、保存期間中のペプチド関連不純物の形成は5%未満である。RP-HPLC分析は、典型的には、水-アセトニトリル又は水-エタノール混合物において実施される。一実施態様では、RP-HPLC工程における溶媒は、塩、例えばNaSO、(NH)SO、NaCI、KCI、及びバッファー系、例えばホスファート、及びシトラート、及びマレイン酸を含有しているであろう。溶媒中に必要とされる塩の濃度は、約0.1M〜約1M、好ましくは0.2M〜0.5M、最も好ましくは0.3〜0.4Mであってよい。適切な時間内にカラムから溶出させるために、塩濃度を増加するには、有機溶媒の濃度を増加させる必要がある。
【0031】
物理的不安定性は、高次構造の損失、凝集、フィブリル化、沈殿、又は表面への吸着を含む、天然構造に関連した立体構造変化に関与している。例えば、GLP-1化合物は、フィブリル化により不安定になる傾向があることが知られている。製剤の物理的安定性は、種々の期間、異なる温度で製剤を保存した後の、例えば目視検査、比濁分析、及びチオフラビンTアッセイ等の従来からの手段により評価されうる。
立体構造安定性は、例えばHudson及びAndersen, Peptide Science, vol 76 (4), pp. 298-308 (2004)に記載されているようなNMR、及び円偏光二色性により評価することができる。
【0032】
ここで使用される場合「治療的に活性なインスリン分泌性ペプチド」又は「治療用インスリン分泌性ペプチド」なる用語は、与えられた疾患及びその合併症の臨床症状を治癒、軽減又は部分的に停止させることができるインスリン分泌性ペプチドを意味する。
本発明のさらなる態様では、ここで使用される場合「治療的に活性なインスリン分泌性ペプチド」又は「治療用インスリン分泌性ペプチド」なる用語は、治療用途用に開発されている、又は治療用途用に開発されたインスリン分泌性ペプチドを意味する。
【0033】
このことを達成するのに適切な量が、「治療的有効量」として定義される。
それぞれの目的に有効な量は、疾患又は損傷の重症度、並びに被験者の体重及び一般的状態に依存するであろう。適切な用量を決定するには、全て熟練した医師又は獣医の通常の技量の範囲内である、値のマトリックスを構築し、マトリックスにおける種々の点を試験することにより、常套的な実験を使用して達成することができることが理解されるであろう。
【0034】
「ポリペプチド」又は「ペプチド」なる用語は、ここでは交換可能に使用され、ペプチド結合により結合した少なくとも5つの構成アミノ酸からなる化合物を意味する。構成アミノ酸は遺伝暗号によりコードされたアミノ酸の群からのものであってよく、それらは、遺伝暗号によりコードされない天然アミノ酸、並びに合成アミノ酸であってもよい。遺伝暗号によりコードされない天然アミノ酸は、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタマート、オルニチン、ホスホセリン、D-アラニン、及びD-グルタミンである。合成アミノ酸は、化学合成により製造されたアミノ酸、すなわち遺伝暗号によりコードされたアミノ酸のD-異性体、例えばD-アラニン及びD-ロイシン、Aib(α-アミノイソ酪酸)、Abu(α-アミノ酪酸)、Tle(tert-ブチルグリシン)、β-アラニン、3-アミノメチル安息香酸、アントラニル酸を含む。
【0035】
ポリペプチド及びペプチドの生産は当該分野でよく知られている。ポリペプチド又はペプチドは、例えば古典的なペプチド合成、例えばt-Boc又はFmoc化学を使用する固相ペプチド合成、又は他の十分に確立された技術により生成されてもよい。Green及びWuts, 「Protective Groups in Organic Synthesis」, John Wiley & Sons, 1999を参照。またポリペプチド又はペプチドは、(ポリ)ペプチドをコードし、(ポリ)ペプチドを発現可能なDNA配列を含有する宿主細胞を、ペプチドの発現を可能にする条件下、適切な栄養培地で培養することを含む方法により生成されてよい。非天然アミノ酸を含有する(ポリ)ペプチドにおいて、組換え細胞は、例えばtRNA変異体の使用によって非天然アミノ酸が(ポリ)ペプチド内に導入されるように修飾されるべきである。
【0036】
ここで使用される「薬学的組成物」なる用語は、製薬用賦形剤、例えば界面活性剤、バッファー、保存料、及び浸透圧調節剤と共に、治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドを含有する生成物を意味し、該薬学的組成物は、ヒトに投与されることにより、重度の疾患又は疾病を処置、予防又は低減させるのに有用である。よって、薬学的組成物は、製薬用製剤としても、当該分野で公知である。再構成される薬学的組成物のpHは、室温で所定の再構成液中における再構成によって生産される再構成組成物について測定されるpH値であることが理解されなければならない。
ここで使用される場合「製薬的に許容可能な」なる用語は、通常の製薬適用に適している、すなわち患者に重大な有害事象を生じせしめないことを意味する。
【0037】
ここで使用される「バッファー」なる用語は、化学反応のために生じるような組成物のpHが経時的に変化する傾向を低減させる薬学的組成物中の化学的化合物を意味する。バッファーには、化学物質、例えばリン酸ナトリウム、トリス、グリシン、及びクエン酸ナトリウムが含まれる。
ここで使用される「保存料」なる用語は、微生物活性(増殖及び代謝)を防止又は遅延化させるために薬学的組成物に添加される化学的化合物を意味する。製薬的に許容可能な保存料の例は、フェノール、m-クレゾール、及びフェノールとm-クレゾールの混合物である。
ここで使用される「安定剤」なる用語は、ペプチドを安定するために、すなわちこのような組成物の保存期間及び/又は使用中期間を増加させるために、ペプチドを含有する薬学的組成物に添加される化学物質を意味する。製薬用製剤に使用される安定剤の例は、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、グリシルグリシン、エチレンジアミン、シトラート、EDTA、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、及び界面活性剤及び酸化防止剤、特にα-トコフェロール及びl-アスコルビン酸である。
【0038】
ここで使用される「界面活性剤」なる用語は、表面及び界面、例えば液体-空気、液体-液体、液体-容器、又は液体-任意の固体に吸着可能な任意の物質、特に洗浄剤を意味する。界面活性剤は、洗浄剤、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタンの脂肪酸エステル、ポリソルバート、例えばポリソルバート20、ポロキサマー、例えばポロキサマー188及びポロキサマー407、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、例えばアルキル化及びアルコキシル化された誘導体(トゥイーン類(tweens)、例えばトゥイーン-20又はトゥイーン80)、モノグリセリド類又はそのエトキシル化誘導体、ジグリセリド類又はそのポリオキシエチレン誘導体、グリセロール、コール酸又はその誘導体、レシチン類、アルコール類及びリン脂質、グリセロリン脂質(レシチン類、ケファリン類、ホスファチジルセリン)、グリセロ糖脂質(ガラクトピラノシド)、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン)、及びスフィンゴ糖脂質(セラミド類、ガングリオシド類)、DSS(ドキュセートナトリウム、CAS登録番号[577-11-7])、ドキュセートカルシウム、CAS登録番号[128-49-4])、ドキュセートカリウム、CAS登録番号[7491-09-0])、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウム)、ホスファチジン酸ジパルミトイル、カプリル酸ナトリウム、胆汁酸及びその塩、及びグリシン又はタウリンコンジュゲート、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホナート、アニオン性(アルキル-アリール-スルホナート類)の一価の界面活性剤、パルミトイル-リゾホスファチジル-L-セリン、リゾリン脂質(例えば、エタノールアミン、コリン、セリン又はスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-ホスファートエステル)、リゾホスファチジル及びホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)-誘導体、例えばリゾホスファチジルコリンのラウロイル及びミリストイル誘導体、ジパルミトイルホスファチジルコリン及び極性頭部基の修飾体、コリン類、エタノールアミン類、ホスファチジン酸、セリン類、スレオニン類、グリセロール、イノシトール、及び正に帯電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリン、及びリゾホスファチジルスレオニン、双性イオン性界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、3-コールアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、ドデシルホスホコリン、ミリストイルリゾホスファチジルコリン、鶏卵リゾレシチン)、カチオン性界面活性剤(第4級アンモニウム塩基)(例えばセチル-トリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド)、非イオン性界面活性剤(例えば、アルキルグルコシド類、例えばドデシル-β-D-グルコピラノシド、ドデシル-β-D-マルトシド、テトラデシル-β-D-グルコピラノシド、デシル-β-D-マルトシド、ドデシル-β-D-マルトシド、テトラデシル-β-D-マルトシド、ヘキサデシル-β-D-マルトシド、デシル-β-D-マルトトリオシド、ドデシル-β-D-マルトトリオシド、テトラデシル-β-D-マルトトリオシド、ヘキサデシル-β-D-マルトトリオシド、n-ドデシル-スクロース、n-デシル-スクロース、脂肪アルコールエトキシラート(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、特にオクタエチレングリコールモノトリデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノテトラデシルエーテル)、ブロックコポリマー、例えばポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドのブロックコポリマー(プルロニクス(Pluronics)/テトロニクス(Tetronics)、トリトン(Triton)X-100)、エトキシル化ソルビタンアルカノアート類の界面活性剤(例えば、トゥイーン-40、トゥイーン80、ビリジ(Brij)-35)、フシジン酸誘導体(例えばタウロ-ジヒドロフジシン酸ナトリウム等)、長鎖脂肪酸及びそれらのC-C12塩(例えばオレイン酸及びカプリル酸)、アシルカルニチン類及び誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンのNα-アシル化誘導体、リジン又はアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニン又はヒスチジンと中性又は酸性アミノ酸の任意の組合せを含有するジペプチドのNα-アシル化誘導体、中性アミノ酸と2つの帯電したアミノ酸の任意の組合せを含有するトリペプチドのNα-アシル化誘導体から選択されてよく、又は界面活性剤は、イミダゾリン誘導体又はそれらの混合物の群から選択されてもよい。
【0039】
ここで使用される「疾患の処置」なる用語は、疾患、病状又は疾病が発症した患者の管理及び世話を意味する。処置の目的は、疾患、病状又は疾病に抗することである。処置は、疾患、病状又は疾病をなくす又はコントロールするための、並びに疾患、病状又は疾病に関連する兆候又は合併症を軽減するための活性化合物の投与、及び疾患、病状又は疾病の予防を含む。
ここで使用される「疾患の予防」なる用語は、疾患の臨床的発症の前に、疾患が発症する危険性を個々に管理及び世話することと定義される。予防の目的は、疾患、病状又は疾病の発症に抗することであり、兆候又は合併症発症を予防又は遅延化するため、関連する疾患、病状又は疾病の発症を予防又は遅延化するための、活性化合物の投与を含む。
【0040】
ペプチドに言及してここで使用される「アナログ」なる用語は、ペプチドの一又は複数のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されている、及び/又は一又は複数のアミノ酸残基がペプチドから欠失している、及び/又は一又は複数のアミノ酸残基がペプチドに付加されている、修飾ペプチドを意味する。アミノ酸残基のこのような付加又は欠失は、ペプチドのN末端及び/又はペプチドのC末端で生じる可能性がある。一実施態様では、アナログは天然のペプチドに対して6未満の修飾(置換、欠失、付加)を有する。他の実施態様では、アナログは天然のペプチドに対して5未満の修飾(置換、欠失、付加)を有する。他の実施態様では、アナログは天然のペプチドに対して4未満の修飾(置換、欠失、付加)を有する。他の実施態様では、アナログは天然のペプチドに対して3未満の修飾(置換、欠失、付加)を有する。他の実施態様では、アナログは天然のペプチドに対して2未満の修飾(置換、欠失、付加)を有する。他の実施態様では、アナログは天然のペプチドに対して唯一の修飾(置換、欠失、付加)を有する。付加及び/又は交換されたアミノ酸残基は、コード化可能なアミノ酸残基、又は他の天然に生じる残基、又は純粋に合成されたアミノ酸残基のいずれであってもよい。
【0041】
親ペプチドに関してここで使用される「誘導体」なる用語は、化学的に修飾された親タンパク質又はそのアナログを意味し、ここで少なくとも一の置換も親タンパク質又はそのアナログには存在せず、すなわち親タンパク質は共有的に修飾されている。典型的な修飾は、アミド類、炭水化物、アルキル基、アシル基、エステル、ペグ化等である。
【0042】
GLP-1、GLP-2、エキセンディン-3及びエキセンディン-4なる用語は、当業者に知られている。例えばここで使用される「GLP-1化合物」又は「GLP-1ペプチド」なる用語は、GLP-1(7-37)(配列番号:1)、そのインスリン分泌性アナログ、及びそのインスリン分泌性誘導体を意味する。GLP-1アナログの非限定的例は、GLP-1(7-36)アミド、Arg34-GLP-1(7-37)、Gly-GLP-1(7-37)、Val-GLP-1(7-36)-アミド、及びValAsp22-GLP-1(7-37)である。GLP-1誘導体の非限定的例は、デスアミノ-His,Arg26,Lys34(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)、デスアミノ-His,Arg26,Lys34(Nε-オクタノイル)-GLP-1(7-37)、Arg26,34,Lys38(Nε-(ω-カルボキシペンタデカノイル))-GLP-1(7-38)、Arg26,34,Lys36(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-36)、及びArg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Nα-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)である。
【0043】
ここで使用される「ジペプチジルアミノペプチダーゼIV保護された」なる用語は、天然化合物、例えばGLP-1(7-37)よりも、ジペプチジルアミノペプチダーゼIV(DPP-IV)に対して耐性がある化合物、例えばGLP-1アナログを意味する。ジペプチジルアミノペプチダーゼIVによる分解に対するGLP-1化合物の耐性は、次の分解アッセイにより測定される:
0.1Mのトリエチルアミン-HClバッファー100μL、pH7.4において、GLP-1化合物のアリコート(5nmol)を、5mU酵素活性に相当する1μLの精製されたジペプチジルアミノペプチダーゼIVと共に、37℃で10−180分インキュベートする。10%のトリフルオロ酢酸5μLを添加することにより、酵素反応を終結させ、ペプチド分解産物を分離し、HPLC分析を使用して定量する。この分析を実施するための一方法は次の通りである:Siegelら, Regul. Pept. 1999;79;93-103及びMentleinら, Eur. J. Biochem. 1993;214:829-35に従って、混合物をVydac C18ワイドポア(30nm細孔、5μmの粒子)250×4.6mmのカラムに加え、0.1%のトリフルオロ酢酸に線形段階的勾配をつけてアセトニトリルが入ったもの(3分間は0%のアセトニトリル、17分間は0−24%のアセトニトリル、1分間は24−48%のアセトニトリル)を、1ml/分の流量で溶離させる。ペプチドとその分解産物は、220nm(ペプチド結合)又は280nm(芳香族アミノ酸)の吸光度をモニターし、標準体に対するそれらのピーク領域を積分することにより定量する。ジペプチジルアミノペプチダーゼIVによるGLP-1化合物の加水分解速度はインキュベーション時間で推定され、加水分解されるGLP-1化合物の10%未満になる。
【0044】
ペプチド又は化合物に言及してここで使用される「インスリン分泌性」なる用語は増加した血糖値に応答して、インスリンの分泌を刺激する能力を意味する。インスリン分泌性ペプチド及び化合物は、GLP-1レセプターのアゴニストである。化合物のインスリン分泌特性は、当該分野で知られているインビトロ又はインビボアッセイによって決定することができる。ペプチド等の化合物のインスリン分泌性を測定するために、以下のインビトロアッセイを使用してもよい。好ましくは、インスリン分泌性化合物は、以下のアッセイで5nM未満のEC50値、さらに好ましくは500pM未満のEC50値を示す。
クローン化ヒトGLP-1レセプター(BHK467-12A)を発現するベビーハムスター腎臓(BHK)細胞を、100IU/mLのペニシリン、100μL/mLのストレプトマイシン、10%の仔ウシ血清及び1mg/mLのジェネテシンG-418(Life Technologies)が添加されたDMEM培地で増殖させる。さらに5mg/mLのロイペプチン(Sigma)、5mg/Lのペプスタチン(Sigma)、100mg/Lのバシトラシン(Sigma)、及び16mg/Lのアプロチニンを含有する、バッファー(10mMのトリス-HCl、30mMのNaCl、及び1mMのジチオスレイトール、pH7.4においてホモジナイズすることにより、細胞膜を調製する(Calbiochem-Novabiochem, La Jolla, CA))。ホモジネートを41% W7vスクロースの層の上で遠心分離した。2層間の白色の帯状部をバッファーに希釈し、遠心分離した。 使用するまで、細胞膜を−80℃で保存した。
機能的レセプターアッセイを、インスリン分泌性ペプチド又はインスリン分泌性化合物による刺激に対する応答として、cAMPを測定することにより実施する。全容量140mLの96-ウェルマイクロタイタープレートにおいて、次の最終濃度:50mMのトリス-HCl、1mMのEGTA、1.5mMのMgSO、1.7mMのATP、20mMのGTP、2mMの3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、0.01%w/vのトゥイーン-20、pH7.4と共に、インキュベートを実施する。化合物を溶解させ、バッファーで希釈する。各実験用に、GTPを新たに調製する:2.5μgの膜を各ウェルに添加し、暗所で振揺しつつ、混合物を室温で90分インキュベートする。25mLの0.5M HClを添加することにより、反応を停止させる。形成されたcAMPをシンチレーション近接アッセイにより測定する(RPA 542, Amersham, UK)。化合物について用量応答曲線をプロットし、GraphPad Prismソフトウェアを使用し、EC50値を算出する。
【0045】
ここで使用される「インスリン分泌性化合物のプロドラッグ」なる用語は、患者への投与後に、インスリン分泌性化合物に転換する、化学的に修飾された化合物を意味する。このようなプロドラッグは、典型的にはアミノ酸が伸長した変形体、又はインスリン分泌性化合物のエステルである。
【0046】
ここで使用される「エキセンディン-4化合物」なる用語は、エキセンディン-4(1-39)(配列番号:2)、そのインスリン分泌性フラグメント、そのインスリン分泌性アナログ、及びそのインスリン分泌性誘導体と定義される。エキセンディン-4のインスリン分泌性フラグメントはインスリン分泌性ペプチドであり、全配列は、エキセンディン-4(配列番号:2)の配列に見出すことができ、少なくとも一の末端アミノ酸が欠失している。エキセンディン-4(1−39)にインスリン分泌性フラグメントの例は、エキセンディン-4(1-38)及びエキセンディン-4(1-31)である。化合物のインスリン分泌性は当該技術でよく知られているインビボ又はインビトロアッセイにより測定されてもよい。例えば、化合物を動物に投与し、インスリン濃度を経時的にモニターしてもよい。エキセンディン-4(1-39)にインスリン分泌性アナログは、一又は複数のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置き換えられている、及び/又は一又は複数のアミノ酸残基が欠失している、一又は複数のアミノ酸残基が付加されている、それぞれの分子を称し、但し、該アナログは、インスリン分泌性であるか、インスリン分泌性化合物のプロドラッグである。エキセンディン-4(1-39)のインスリン分泌性アナログの例は、SerAsp-エキセンディン-4(1-39)であり、ここで2及び3位のアミノ酸残基は、それぞれセリン及びアスパラギン酸で置き換えられている(この特定のアナログは、エキセンディン-3として、当該技術で公知である)。エキセンディン-4(1-39)のインスリン分泌性誘導体及びそのアナログは、当業者がこれらのペプチドのアナログであることを認めたもの、すなわち、親ペプチドに存在しない少なくとも一の置換を有するものであり、但し、該誘導体は、インスリン分泌性であるか、インスリン分泌性化合物のプロドラッグである。置換基の例は、アミド類、炭水化物、アルキル基、エステル、及び脂質親和性置換基である。エキセンディン-4(1-39)のインスリン分泌性誘導体及びそのアナログの例は、Tyr31-エキセンディン-4(1-31)-アミドである。
【0047】
ここで使用される「安定したエキセンディン-4化合物」なる用語は、化学的に修飾されたエキセンディン-4(1-39)、つまり一般的な方法によって定量して、ヒトにおいて少なくとも10時間のインビボ血漿排出半減期を示すアナログ又は誘導体を意味する。
【0048】
ここで使用される場合「ジペプチジルアミノペプチダーゼインビボ保護されたエキセンディン-4化合物」なる用語は、ジペプチジルアミノペプチダーゼIV保護されたGLP-1化合物の定義下において、記載されたアッセイにより測定した場合に、エキセンディン-4(配列番号:2)よりも血漿ペプチダーゼ、ジペプチジルアミノペプチダーゼIV(DPP-IV)に対する耐性があるエキセンディン-4化合物を意味する。
【0049】
GLP-1アナログは、GLP-1(7-37)の34位にある自然に生じたLysが、Argで置換されているようなものでありうる。光学異性体が記載されていない全てのアミノ酸は、L-異性体を意味すると理解される。
【0050】
本発明の態様においては、最大17のアミノ酸が、未修飾のインスリン分泌性ペプチドに対して修飾されている、インスリン分泌性ペプチドのアナログが得られる。本発明の態様においては、最大15のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大10のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大8のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大7のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大6のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大5のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大4のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大3のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大2のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、1のアミノ酸が修飾される。
【0051】
また、インスリン分泌性ペプチドの前駆体又は中間体の誘導体も、本発明でカバーされる。
本発明の一態様では、治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドは、インスリン分泌性ペプチド、GLP-1(7-37)又はそのアナログ又は誘導体、エキセンディン又はそのアナログ又は誘導体、及びGLP-2又はそのアナログ又は誘導体からなる群から選択される。
本発明の一態様では、インスリン分泌性ポリペプチドはグルカゴン様ペプチドである。さらなる態様では、インスリン分泌性ポリペプチドは、GLP-1、GLP-2、エキセンディン-4、エキセンディン-3、及びそのアナログ及び誘導体からなる群から選択される。一態様では、グルカゴン様ペプチドはインスリン分泌性剤である。
【0052】
立体構造が安定しているタンパク質をベースにした薬剤は、変性及びフィブリル化による構造の不可逆的損失を最小にするため、また生物活性を維持するために重要である。特に大きなポリペプチド及びタンパク質は、複雑な折り畳みパターンの故に、立体構造の変化に関して不安定である。また、既知のフィブリル化の経緯を持つインスリン分泌性ペプチド、例えばGLP-1は、三次構造の不安定化(つまり、溶融球状状態の形成)に対して特に感受性である。
【0053】
それぞれの目的に有効な量は、疾患又は損傷の重症度、並びに被験者の体重及び一般的状態に依存するであろう。
本発明の一態様では、製薬用製剤は0.1%w/w〜50%w/wの濃度で、治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドを含有する。
それぞれの目的に有効な量は、疾患又は損傷の重症度、並びに被験者の体重及び一般的状態に依存するであろう。
ここで使用される場合「約」なる用語は、記載された数値にほぼ近接している、例えばプラス又はマイナス10%であることを意味している。
【0054】
本発明は、
a)場合によっては賦形剤を含有する治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドの水溶液を提供し、
b)pH値を、インスリン分泌性ペプチドのpIより、1単位、好ましくは2単位、より好ましくは2.5pH単位以上、上又は下の標的pH値に調節し、
c)従来からの乾燥技術、例えば凍結-及び噴霧乾燥により、インスリン分泌性ペプチドから水分を除去(脱水)し、
d)例えば攪拌、回転又は他の混合方法により、半極性かつプロトン性の非水性媒体に、インスリン分泌性ペプチドを混合及び溶解させ、
e)場合によっては、インスリン分泌性ペプチドの非水性溶液を濾過又は遠心分離し、溶解していない無機塩を除去し、
f)場合によっては、例えば固体状乾燥剤の添加又は真空乾燥により、残留していた水分を除去し、
g)場合によっては、溶液用には、加圧された定量吸入器に、賦形剤、例えばヒドロフルオロアルカン噴霧剤及び共溶媒を添加、又は経口投与形態用には、洗浄剤、ポリマー、脂質及び共溶媒を添加する;
ことによる、製薬用溶液を調製する方法をさらに提供する。
【0055】
本発明は、
a)場合によっては安定剤、例えば亜鉛及びグリシルグリシンを含有する、治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドの水溶液を提供し、
b)例えば、非揮発性塩基又は酸、特に塩酸又は水酸化ナトリウムを溶液に添加することにより、インスリン分泌性ペプチドのpIより、1単位、好ましくは2単位、より好ましくは2.5pH単位以上、上又は下のpH値に調節し、
c)従来からの乾燥技術、例えば凍結-及び噴霧乾燥により、インスリン分泌性ペプチドから水分を除去(脱水)し、
d)例えば攪拌、回転又は他の混合方法により、半極性かつプロトン性の非水性媒体に、インスリン分泌性ペプチドを混合及び溶解させ、
e)場合によっては、インスリン分泌性ペプチドの非水性溶液を濾過又は遠心分離し、溶解していない無機塩を除去し、
f)場合によっては、例えば固体状乾燥剤の添加又は真空乾燥により、残留していた水分を除去し、
g)場合によっては、溶液用には、加圧された定量吸入器に、賦形剤、例えばヒドロフルオロアルカン噴霧剤及び共溶媒を添加、又は経口投与形態用には、洗浄剤、ポリマー、脂質及び共溶媒を添加する;
ことによる、薬学的組成物を調製する方法をさらに提供する。
【0056】
本発明の一態様では、インスリン分泌性ペプチドは水溶液に添加される。水溶液は純水であってもよく、又は賦形剤もしくはアルカリ性溶液を含有していてもよい。
本発明の一態様では、インスリン分泌性ペプチド溶液のpHは、非揮発性塩基を含有するアルカリ性溶液を用いて調節される。非揮発性塩基は、アルカリ金属塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属塩、アルカリ土類金属の水酸化物、及びアミノ酸、又はそれらの組合せからなる群から選択することができる。例えば、pHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、又はそれらの任意の組合せを用いて調節することができる。本発明の他の態様では、インスリン分泌性ペプチド溶液のpHは、塩酸、リン酸及び硫酸から選択される非揮発性酸を用いて調節される。
【0057】
本発明の一態様では、インスリン分泌性ペプチドの非水性溶液はグリシルグリシンを含有する。グリシルグリシンは、グリセルアルデヒド等、溶媒中の還元不純物のスカベンジャーとして作用する可能性がある。一態様では、グリシルグリシンは、例えば溶液中、約4mM〜200mMのグリシルグリシン濃度で、インスリンを含有するプロピレングリコール溶液に添加される。
【0058】
本発明の一態様では、インスリン分泌性ペプチドの非水性溶液は、トゥイーン80とオレイン酸を含有する。トゥイーン80とオレイン酸がインスリン分泌性ペプチドの非水性媒体に添加される場合、インスリン分泌性ペプチド溶液は、水性液体での希釈時にマイクロエマルジョンを形成し、その後経口投与される。マイクロエマルジョンは吸収促進剤として作用する可能性があり、さらなる再現可能な吸収動態を生じせしめる。溶液中のトゥイーン80の濃度は例えば約30〜70%w/wであり、オレイン酸の濃度は例えば10〜30%w/wであろう。
【0059】
一態様では、本発明は、このような処置を必要とする患者において、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態を処置するための、薬学的組成物に関連している。
一態様では、本発明は、製薬的に許容可能な担体及び/又は製薬的に許容可能な添加剤を有する、本発明の薬学的組成物で、このような処置を必要とする患者において、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態を処置するために提供可能な組成物に関する。
【0060】
本発明の一態様では、治療的有効量の本発明の薬学的組成物を患者に投与することを含む、このような処置を必要とする患者において、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態を処置する方法を提供する。
本発明の一態様では、場合によっては製薬的に許容可能な担体及び/又は製薬的に許容可能な添加剤と共に、治療的有効量の本発明の薬学的組成物を患者に投与することを含む、このような処置を必要とする患者において、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態を処置する方法を提供する。
【0061】
本発明の一態様では、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態の処置に使用される、本発明の薬学的組成物を製造する方法を提供する。
本発明の一態様では、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態の処置に使用される、薬学的組成物を製造する方法を提供する。
【0062】
薬学的組成物
本発明の組成物は、例えば皮下、経口、経鼻又は肺に投与することができる。
皮下投与用として、本発明の組成物は、公知の治療的に活性なインスリン分泌性ペプチド製剤と同じように処方される。さらに、皮下投与用として、本発明の組成物は、公知の治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドと同じように投与され、一般的に、医者はこの手順に通じている。
【0063】
本発明の一態様では、本発明の組成物は、循環インスリンペプチドレベルを増加させ、及び/又は循環グルコースレベルを低下させるための用量効果的方式で、吸入により投与されてよい。このような投与は、糖尿病又は高血糖症等の疾患を処置するのに効果的である。例えばインスリン分泌性ペプチドの効果的な投与を達成するには、約0.5μg/kg〜約50μg/kg以上のインスリン分泌性ペプチドを含有する本発明の組成物を、吸入量で投与することが必要である。治療的有効量は、インスリンレベル、血糖値、患者の身体コンディション、患者の肺の状態等を含む要因を考慮し、博識な実施者により決定することができる。
【0064】
本発明の組成物は、インスリン等、治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドの素早い吸収を達成するために、吸入により送達されてもよい。吸入による投与は、インスリン分泌性ペプチドの皮下投与に匹敵する薬物動態をもたらすことができる。同様の粒子径及び同様の肺沈着レベルで比較される場合、典型的には、種々の吸入装置により、同様の薬物動態が提供される。
【0065】
本発明において、組成物は、吸入による治療剤の投与において、当該技術で公知の任意の様々な吸入装置により送達され得る。これらの装置には、定量吸入器、ネブライザー、乾燥パウダー発生器、スプレー等が含まれる。一態様では、この発明の組成物は、加圧された定量吸入器又はスプレーにより送達される。本発明の組成物を投与するための吸入装置には、いくつかの所望される特徴がある。例えば、吸入装置による送達には、有利には信頼性、再現性及び正確性がある。良好な呼吸性のためには、吸入装置は、小粒子、例えば約10μm未満、例えば約1−5μm未満の粒子を送達すべきである。この発明の実施に適した商業的に入手可能な吸入装置のいくつかの特定の例は、TurbohalerTM(Astra)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo)、Diskus(登録商標)(Glaxo)、SpirosTM吸入器(Dura)、Nektarより販売されている装置、3M Drug Delivery Systems and Bespak、AERxTM(Aradigm)、Ultravent(登録商標)ネブライザー(Mallinckrodt)、Acorn II(登録商標)ネブライザー(Marquest Medical Products)、Ventolin(登録商標)定量吸入器(Glaxo)、Spinhaler(登録商標)パウダー吸入器(Fisons)等である。
【0066】
加圧された定量吸入器(pMDIs)は、吸入による気道への製薬用生成物の投与については、よく知られている装置である。pMDIsは、典型的には生成物、例えば液化噴霧剤に溶解した薬剤(液状製剤)、又は液化噴霧剤に懸濁したマイクロ化粒子(懸濁製剤)が充填された圧力抵抗性のエアゾールキャニスターを具備しており、該キャニスターには絞り弁が固定されている。液状製剤により、噴霧ビヒクル、又は適切な共溶媒、例えばエタノールとの混合物に、活性成分又は賦形剤が完全に溶解して均質であるという利点が提供される。また液状製剤により、懸濁製剤に関連した物理的安定性の問題が未然に防止され、より一貫した均一な投与形態が保証される。
【0067】
ヒドロフルオロアルカン類、特に1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA134a)及び1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA227)及びそれらの混合物は、非-CFC噴霧剤の最も好ましい候補であると認識されている。絞り弁を作動させることにより、少量のスプレー生成物が放出され、それによって、液状の噴霧剤の圧力で、溶解した又はマイクロ化した薬剤粒子が、容器の外、患者に運ばれる。弁アクチュエーターは、患者の中咽頭にエアゾールスプレーを向けるのに使用される。キャニスターは、不活性有機コーティングで被覆された内部表面を有する、アルミニウム又はステンレススチールからなり、国際公開第03/078538号に記載されているような、ブチルゴムガスケットを有する、63マイクロリットルと計測されたチャンバーを有する絞り弁を具備する。
【0068】
当業者が認識しているように、本発明の製剤、送達される製剤の量、及び単一用量の投与の持続時間は、使用される吸入装置の種類に依存している。ネブライザー等、いくつかのエアゾール送達システムにとって、投与頻度及びシステムが稼働している時間の長さは、主として、エアゾール中の治療用インスリン分泌性ペプチドの濃度に依存するであろう。
例えば、投与時間が短いと、ネブライザー溶液においては、より高い濃度の治療用インスリン分泌性ペプチドを使用することができる。定量吸入器等の装置は、高濃度のエアゾールを生成することができ、所望の量のインスリン分泌性ペプチドの送達を、より短い時間で作動させることができる。パウダー吸入器等の装置は、付与された充填量の薬剤が装置から排出されるまで、活性剤を送達させる。この種の吸入器において、付与されたパウダー量における、この発明の組成物の量は、一回の投与で送達される用量を決定する。
【0069】
吸入装置で送達される製剤におけるインスリン分泌性ペプチドの粒子径は、肺、気道下部及び肺胞内においてなされる、ペプチドの能力に関して重要である。この発明の組成物中のインスリン分泌性ペプチドは、送達されるインスリン分泌性ペプチドの少なくとも約10%、例えば約10%〜20%、又はそれ以上が肺に沈着するように処方される。口呼吸するヒトにとって、肺沈着の最大効率は、約2μm〜約3μmの粒子径で得られることが知られている。粒子径が約5μm以上になると、肺沈着はかなり低減する。粒子径が約1μm以下であると、肺沈着の低下が引き起こされ、治療に有効な十分な量の粒子を送達することが困難になる。よって、吸入器により送達されるインスリン分泌性ペプチドの粒子は、約10μm未満、例えば約1μm〜5μmの範囲の粒子径を有する。インスリン分泌性ペプチドの処方は、選択された吸入装置において所望される粒子径が生じるように選択される。
【0070】
インスリン分泌性ペプチド溶液は、場合によっては、呼吸器官及び肺投与に適した製薬用の担体又は賦形剤と組合せてもよい。このような担体は、患者に送達される液体中の治療用インスリン分泌性ペプチド、例えばインスリンの濃度を低下させることが所望されている場合は、単に増量剤として供給されてもよいが、組成物の安定性を高めるように供給されてもよい。
適切な物質には、炭水化物、例えば(a)単糖類、特にフルクトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース等;二糖類、例えばラクトース、トレハロース、セロビオース等;シクロデキストリン類、例えば2-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリン;及び多糖類、例えばラフィノース、マルトデキストリン類、デキストラン類等;(b)アミノ酸、例えばグリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、リジン、ヒスチジン、アルギニン等;(c)有機酸と塩基から調製される有機塩、例えばクエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、塩酸トロメタミン等;(d)ペプチド及びタンパク質、例えばアスパルテーム、ヒト血清アルブミン、ゼラチン等;(e)アルジトール類、例えばマンニトール、キシリトール等が含まれる。担体の好ましい群には、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、グリシン、クエン酸ナトリウム、塩酸トロメタミン、ヒト血清アルブミン、及びマンニトールが含まれる。
【0071】
このような担体物質は、脱水、例えば噴霧乾燥前に、すなわち噴霧乾燥用に調製されるインスリン分泌性ペプチド溶液に担体物質を添加することにより、治療用インスリン分泌性ペプチド、例えばインスリンペプチドと組合せられてもよい。そのように、担体物質はタンパク質粒子の一部として、同時に形成されるであろう。
典型的には、担体がインスリン分泌性ペプチドと共に噴霧乾燥により形成される場合、インスリン分泌性ペプチドは5%〜95%、好ましくは20%〜80%の範囲の重量パーセントで、個々の粒子に存在しているであろう。粒子の残りは、主として担体物質(典型的には、重量で5%〜95%、通常は20%〜80%)であるが、上述した他の成分を含み得る、バッファー(類)を含有していてもよい。
【0072】
非水性インスリン分泌性ペプチド製剤は、他の活性成分と組合せられてもよい。例えば、糖尿病の処置性を改善するために、インスリン製剤に、少量のアミリン又は活性アミリンアナログを組合せることが望ましい場合もある。アミリンは、正常な(糖尿病ではない)個人において、膵臓0-細胞からインスリンと共に分泌されるホルモンである。アミリンはインビボにおいてインスリン活性を調節すると考えられており、インスリンとアミリンの同時投与により、血糖の制御を改善することが提案されている。本発明の組成物において、インスリンとアミリンとを組合せることにより、このような同時投与を達成するための、特に簡便な生成物が提供されるであろう。アミリンは、0.1重量%〜10重量%(一服中のインスリンの全重量に基づく)、好ましくは0.5重量%〜2.5重量%でインスリンと組合せてよい。アミリンは商業的供給者、例えばAmylin Corporation, San Diego, Californiaから入手され、本発明の組成物に容易に処方することができる。例えば、アミリンは、インスリン、場合によっては担体、パウダー状生成物を生成するために乾燥された溶液スプレーと共に、水溶液又は他の適切な溶液に溶解されていてもよい。
【0073】
噴霧乾燥されたインスリン分泌性ペプチドを含むスプレーは、インスリン分泌性ペプチドの懸濁液又は溶液を、加圧下にて、強いてノズルを通過させることにより製造することができる。ノズルサイズ及び構造、適用圧力、及び液体供給速度は、所望する出量及び粒子径が達成されるように選択することができる。例えば、キャピラリー又はノズルフィード部に接続した電場により、電気スプレーを製造することができる。
有利には、スプレーにより送達される例えばインスリンの粒子は、約10μm未満、例えば約1μm〜約5μmの範囲の粒子径を有する。
【0074】
ポリオール等の半極性プロトン性有機溶媒に溶解し、脱水された、例えば噴霧乾燥されたインスリン分泌性ペプチドを含有する本発明の薬学的組成物は、このような処置を必要とする患者に、非経口的に投与されてもよい。
非経口投与は、シリンジ、場合によってはペン様シリンジにより、皮下、筋肉内又は静脈内注射で実施されてよい。また非経口投与は、注入ポンプにより実施することもできる。
【0075】
本発明の調製物は、ポンプ、例えばインスリンポンプに関連して使用されてよい。インスリンポンプはプレフィックスされ、使い捨てのものであってよく、又はインスリン調製物は、取り外し可能な容器から供給されてもよい。インスリンポンプは皮膚に搭載、移植又は持ち運び去れてもよく、ポンプの保存区画から患者へのインスリン調製物の経路は、多少曲がっていてもよい。インスリンポンプの非限定的例は、米国特許第5957895号、米国特許第5858001号、米国特許第468221号、米国特許第4468221号、米国特許第5957895号、米国特許第5858001号、米国特許第6074号、米国特許第5858,001号、米国特許第5527288号、及び米国特許第6074369号に開示されている。
【0076】
脱水、例えば噴霧乾燥されたインスリン分泌性ペプチドの、本発明の注射用組成物は、所望する最終生成物が付与されるのに適切なように、半極性プロトン性有機溶媒、例えばポリオールに成分を溶解及び混合することを含む、製薬工業の従来からの技術を使用して調製することができる。
【0077】
近年、注射は、体循環のために、生物学的に活性なタンパク質を投与する典型的な方法である。受容者は、注射により不快感や痛みを被るおそれがある。この理由等のため、投与方法として、注射を使用するには、患者のコンプライアンスに関して問題がある場合がある。注射の代替法の一つは、生物学的に活性なインスリン分泌性ペプチドの経口投与である。インスリンのケースにおいて、経口送達は、簡便性及びコンプライアンスの問題を越える利点を有する。胃腸管に吸収されるインスリンは、門脈に放出され、直接肝臓に運ばれるために、膵臓から分泌されるインスリンの生理機能を模倣している。門脈循環への吸収により、インスリン分泌を調節する末梢-門脈のインスリン勾配が維持される。肝臓へのその第1経路で、約60%のインスリンが保持され、代謝され、よって末梢性高インスリン血症の発生率、糖尿病関連性の全身合併症の要因が低下する。インスリン処置及び他の経口用抗糖尿病剤の心配される珍しくはない合併症は、低血糖症である。
【0078】
しかしながら、インスリン分泌性ペプチドの経口生物学的利用能は、胃腸管での広範囲にわたるタンパク質分解、及び上皮透過性の低さのため、極めて低い。よって、タンパク質工学、例えばペグ化又はホットスポットの変異による、タンパク質分解に対するインスリン分泌性ペプチドの安定化は、経口生物学的利用能を改善するために、一般的に使用される方法である。タンパク質分解を低減させる他の方法は、ナノ粒子、マイクロ粒子、マイクロエマルジョン、マイクロエマルジョンプレ濃縮物(プレコンセントレイト)、リポソーム等に、インスリン分泌性ペプチドを導入することである。薬剤は胃及び胃腸管の不適な環境から保護されるばかりでなく、これらの粒子は、経腸経路から、バイエル板を介して、体循環に取り込まれ得る。
【0079】
一実施態様では、非水性薬学的組成物は、マイクロエマルジョンプレ濃縮物である。これは、例えば水中油型(o/w)マイクロエマルジョン中、水性媒体、例えば水又は胃腸液での希釈時に自発的自己乳化した組成物である。マイクロエマルジョンは、低nm範囲、例えば20-400nmでの乳化相の平均ドメインサイズを有する、熱力学的に安定した系であると理解される。
【0080】
一般的に、マイクロエマルジョンプレ濃縮物は、一又は複数の親水性成分、一又は複数の脂質親和性成分、一又は複数の非イオン性界面活性剤及び/又は共界面活性剤、及び活性成分、例えば治療用ペプチド又はタンパク質で、プレ濃縮混合物に完全に溶解するものを含有する。さらに、マイクロエマルジョンプレ濃縮物は、適切であるならば、従来からのアジュバント及び添加剤を含有してよい。これらの自己(マイクロ)-乳化プレ濃縮物は、胃腸管でマイクロエマルジョンを形成するとの見込みで、摂取することができる。マイクロエマルジョンプレ濃縮物は、腸溶コーティングされたソフトゼラチンカプセルにカプセル化されて投与されてよい。多くのマイクロエマルジョンが、経口投与後に、いくつかの治療用化合物の生物学的利用能を高めると報告されている。
【0081】
マイクロエマルジョンプレ濃縮物の組成例は以下の通りである:
a)少なくとも一の半極性プロトン性有機溶媒、例えばポリオール(例えば、プロピレングリコール及び/又はグリセロール)
b)一又は複数の親水性成分、例えばグリセロール及び/又はプロピレングリコール
b)一又は複数の脂質親和性成分、例えば油(例えば、モノ-ジグリセリド類及び/又はトリグリセリド類)
c)一又は複数の非イオン性界面活性剤、例えばポロキサマー及び/又はポリソルバート類
d)一又は複数の共界面活性剤、例えばエタノール
e)脱水された治療的に活性なインスリン分泌性ペプチド(例えばGLP1)
f)一又は複数の添加剤、例えば酸化防止剤及び/又は安定剤
【0082】
半極性プロトン性有機溶媒、例えばポリオールに溶解し、脱水された、例えば噴霧乾燥された治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドを含有する本発明の薬学的組成物は、このような処置を必要とする患者に、エアゾールスプレーの形態で、口腔又は舌下に投与されてもよい。Generex Biotechnology Corporationにより開発されたOral-IynTM製剤は、加圧された定量吸入器(pMDI)を介して投与される、口腔用エアゾール製剤の一例である。ヒドロフルオロアルカン類(HFA)、例えばHFA134a及び227は、典型的には噴霧剤として使用される。インスリン分泌性ペプチドは、典型的には、pIより1単位以上、上又は下のpH値で、水に高度に溶解する。水はHFA噴霧剤と極めて乏しい混和性しかないため、タンパク質用に、プロピレングリコール及びエタノール等の溶媒を使用するのが有利である。前記溶媒はHFA噴霧剤との混和性を有する。溶液型の定量吸入器は、一般的に、粒子のクリーム化又は沈殿のために、用量均一性がかなり変動する傾向のある懸濁型のpMDIよりも好ましい。
溶液型のpMDIは、インスリン分泌性ペプチドに加えて、安定剤及び他の添加剤、例えば透過促進剤と共に処方されてよい。
【0083】
また加圧システムの代わりに、インスリン分泌性ペプチドは、例えばニトログリセリンの舌下投与用のCoro Nitro Pump Spray(登録商標)のようにポンプ移送可能な(pumpable)ものとして口腔又は舌下に投与されてもよい。
肺沈着を回避するために、経口スプレー用エアゾールは、好ましくは10μm以上の大きさの液滴直径を有するべきである。
粘膜付着性の薬剤送達系は、非湿潤性タンパク質/ペプチド送達において、かなりの興味をもたれている。それらにより、粘膜組織における送達系の滞留時間が増加する。いくつかの生体付着性送達系が、例えば経口投与後のタンパク質及びペプチドの生物学的利用能を向上させることが報告されている。
【0084】
好ましい実施態様では、非水性でフリーの生体付着性組成物は、活性タンパク質又はペプチド、少なくとも一の生体付着性ポリマー、一又は複数の半極性プロトン性有機溶媒、例えばポリオール(類)を含有する。さらに組成物は、適切であるならば、従来からのアジュバント及び添加剤を含有してもよい。生体付着性ポリマーは、例えばポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)ブロックコポリマー(例えばポロキサマー類)、ポリビニルピロリドン(例えばポビドン又はPVP)、ポリアクリル酸、ポリカルボフィル(例えばカルボポール(Carbopol)又はカーボマー(Carbomer))、キトサン、全種類のチオラート化ポリマー(例えばチオマー類(Thiomers))、セルロース、アルギナート類、ヒドロキシエチルセルロース、又は他の生体付着性ポリマーであってよい。
【0085】
組成物は、液体、半固体又は固体状の投与形態とすることができる。
これらの新規の組成物は、これらの製剤に必要とされる水性媒体が回避でき、その保存安定性の増加、並びに生物学的利用能の増大(ポリオールにより誘発)が達成されるといった、例えば従来の生体付着性ヒドロゲルと比較して利点を有する。
生体付着性組成物の一例は以下の通りである。
a)脱水された治療的に活性なインスリン分泌性ペプチド(例えばGLP1)
b)少なくとも一の半極性プロトン性有機溶媒、例えばポリオール(例えばプロピレングリコール及び/又はグリセロール)
c)生体付着性ポリマー(例えばポビドン及び/又はポロキサマー)
d)添加剤
【0086】
一実施態様では、非水性の組成物は、脱水された治療的に活性なインスリン分泌性ペプチド、少なくとも一の半極性プロトン性有機溶媒、例えばポリオール、及び一又は複数の従来からの透過促進剤の組合せを含有する。透過促進剤の例は、限定されるものではないが、脂肪酸、パルミトイルカルニチンクロリド、エチレングリコール-ビス(ベータ-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、EDTA、胆汁酸塩、イオン性-並びに非イオン性界面活性剤、例えばリン脂質及びアルキルグリコシド類、ポリマー、キトサン、クエン酸、及びサリチル酸ナトリウムである。さらに組成物は、適切であるならば、従来からのアジュバント及び添加剤を含有していてよい。
【0087】
本発明の組成物は、例えば錠剤、カプセル、坐薬、液体、スプレー又はエアゾールから選択される形態で、口腔及び経口投与することができる。
好ましい実施態様では、半極性プロトン性有機溶媒、例えばポリオールをベースにした固体状の投与形態は、少なくとも一のポリオール、及び一又は複数の室温で固体状の賦形剤、例えばポロキサマー、PEG又はPEGステアラートを含有する。
【0088】
他の実施態様では、組成物は、脱水された治療的に活性なインスリン分泌性ペプチド、少なくとも一の半極性プロトン性有機溶媒、例えば少なくとも一のポリオール、及び少なくとも一の室温で固体状の非イオン性賦形剤、例えばポリキサマー類又はポリオキシエチレングリコール、又は固体状賦形剤の混合物を含有する。固体状ポロキサマー類の例は、プルロニック(Pluronic)F-127、プルロニックF-68である。固体状PEGの例はPEG3350、PEG4000、 PEG8000である。さらに、固体状組成物は、適切であるならば、従来からのアジュバント及び添加剤、例えば十分な錠剤化を確実にするためのバインダー、流動促進剤及び滑剤;及び錠剤が消化管で確実に破壊されるための錠剤分解剤を含有していてもよい。
【0089】
錠剤及びカプセルは、腸用コーティングで被覆されていてもよく、特定の領域について適切なpH-溶解ポリマーを選択することにより、定められたpHの水性環境との接触時に破裂又は透過して、投与形態の内容物が、胃腸管(例えば、小腸及び大腸)の所望の部位で選択的に放出可能となる。適切な腸溶ポリマーの例には、限定されるものではないが、セルロースアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ポリビニルアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、メタクリル酸コポリマー、セラック、メチルセルロースフタラート、セルロースアセタートトリメリタート(mellitate)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートフタラート、セルロースアセタートスクシナート、セルロースアセタートマラート、セルロースベンゾアートフタラート、セルロースプロピオナートフタラート、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースフタラート、セラック、スチレン-アクリル酸のコポリマー、アクリル酸メチル-アクリル酸のコポリマー、アクリル酸メチル-メタクリル酸のコポリマー、アクリル酸ブチル-スチレン-アクリル酸のコポリマー、メタクリル酸-メタクリル酸メチルのコポリマー、メタクリル酸-アクリル酸エチルのコポリマー、アクリル酸メチル-メタクリル酸-アクリル酸オクチルのコポリマー、アクリル酸ビニル-無水マレイン酸のコポリマー、スチレン-無水マレイン酸のコポリマー、スチレン-マレイン酸モノエステルのコポリマー、ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸のコポリマー、エチレン-無水マレイン酸のコポリマー、ビニルブチルエーテル-無水マレイン酸のコポリマー、アクリロニトリル-アクリル酸メチル-無水マレイン酸のコポリマー、アクリル酸ブチル-スチレン-無水マレイン酸のコポリマー、ポリビニルアルコールフタラート、ポリビニルアセタールフタラート、ポリビニルブチラートフタラート、及びポリビニルアセトアセタールフタラート、又はそれらの組合せが含まれる。
好ましい実施態様では、投与形態は液体を含有するソフトゼラチンカプセルである。
【0090】
また本発明は、以下の実施態様に関する。
1.a)脱水された治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドと、
b)少なくとも一の半極性プロトン性有機溶媒
の混合物を含有し、
該インスリン分泌性ペプチドが、水溶液中のインスリン分泌性ペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水され、該標的pHが、好ましくは約6.0〜約9.0の範囲にある非水性薬学的組成物。
2.有機溶媒がポリオール類からなる群から選択される、実施態様1の薬学的組成物。
3.有機溶媒がジオール類及びトリオール類からなる群から選択される、実施態様2の薬学的組成物。
4.有機溶媒がプロピレングリコール及びグリセロールからなる群から選択される、実施態様3の薬学的組成物。
5.有機溶媒がプロピレングリコールである、実施態様4の薬学的組成物。
6.有機溶媒がグリセロールである、実施態様4の薬学的組成物。
【0091】
7.インスリン分泌性ペプチドが噴霧乾燥される、実施態様1ないし6のいずれか一つの薬学的組成物。
8.インスリン分泌性ペプチドが凍結乾燥させる、実施態様1ないし6のいずれか一つの薬学的組成物。
【0092】
9.インスリン分泌性ペプチドが、インスリン分泌性ペプチドのpIから少なくとも1.5pH単位であるpHで脱水される、実施態様1ないし8のいずれか一つの薬学的組成物。
10.インスリン分泌性ペプチドが、インスリン分泌性ペプチドのpIから少なくとも2pH単位であるpHで脱水される、実施態様1ないし9のいずれか一つの薬学的組成物。
11.インスリン分泌性ペプチドが、インスリン分泌性ペプチドのpIから少なくとも2.5pH単位以上であるpHで脱水される、実施態様1ないし10のいずれか一つの薬学的組成物。
【0093】
12.脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度が少なくとも20mg/mlである、実施態様1ないし11のいずれか一つの薬学的組成物。
13.脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度が少なくとも30mg/mlである、実施態様1ないし11のいずれか一つの薬学的組成物。
14.脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度が少なくとも40mg/mlである、実施態様1ないし11のいずれか一つの薬学的組成物。
15.脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度が少なくとも50mg/mlである、実施態様1ないし11のいずれか一つの薬学的組成物。
16.脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度が少なくとも60mg/mlである、実施態様1ないし11のいずれか一つの薬学的組成物。
【0094】
17.標的pHが約8.5〜約11.0の範囲にある、実施態様1ないし16のいずれか一つの薬学的組成物。
18.標的pHが約9.0〜約10.5の範囲にある、実施態様1ないし16のいずれか一つの薬学的組成物。
19.標的pHが約7.0〜約8.5の範囲にある、実施態様1ないし16のいずれか一つの薬学的組成物。
【0095】
20.有機溶媒が少なくとも20%w/wの量で存在している、実施態様1ないし19のいずれか一つの薬学的組成物。
21.有機溶媒が少なくとも30%w/wの量で存在している、実施態様1ないし19のいずれか一つの薬学的組成物。
22.有機溶媒が少なくとも40%w/wの量で存在している、実施態様1ないし19のいずれか一つの薬学的組成物。
23.有機溶媒が少なくとも50%w/wの量で存在している、実施態様1ないし19のいずれか一つの薬学的組成物。
24.有機溶媒が少なくとも80%w/wの量で存在している、実施態様1ないし19のいずれか一つの薬学的組成物。
【0096】
25.10%w/w未満の水分を含有する、実施態様1ないし24のいずれか一つの薬学的組成物。
26.5%w/w未満の水分を含有する、実施態様1ないし24のいずれか一つの薬学的組成物。
27.2%w/w未満の水分を含有する、実施態様1ないし24のいずれか一つの薬学的組成物。
【0097】
28.組成物が、糖尿病又は高血糖症の、肺、非経口、鼻又は経口処置用である、実施態様1ないし27のいずれか一つの薬学的組成物。
29.組成物が、糖尿病又は高血糖症の肺処置用である、実施態様1ないし27のいずれか一つの薬学的組成物。
30.組成物が、糖尿病又は高血糖症の経口処置用である、実施態様1ないし27のいずれか一つの薬学的組成物。
【0098】
31.インスリン分泌性ペプチドが、GLP-1、GLP-2、エキセンディン-3、エキセンディン-4、及びそのアナログ及び誘導体からなる群から選択される、実施態様1ないし30のいずれか一つの薬学的組成物。
32.インスリン分泌性ペプチドがDPP-IV保護されたペプチドである、実施態様1ないし31のいずれか一つの薬学的組成物。
33.インスリン分泌性ペプチドが、nが4〜38であるCH(CH)CO-、及びmが4〜38であるHOOC(CH)CO-からなる群から選択される脂質親和性置換基を有している、実施態様1ないし32のいずれか一つの薬学的組成物。
34.前記インスリン分泌性ペプチドが、アシル化されたGLP-1、又はアシル化されたGLP-1アナログである、実施態様1ないし33のいずれか一つの薬学的組成物。
【0099】
35.GLP-1アナログが:GLP-1(7-37);Arg34-GLP-1(7-37);Aib8,Arg34-GLP-1(7-37);Aib8,Aib22,Arg34-GLP-1(7-37);Arg34-GLP-1(7-37);[3-(4-イミダゾリル)プロピオニル7,Arg34]GLP-1-(7-37);Gly8,Arg34-GLP-1(7-37);Aib8,Arg34,Pro37-GLP-1(7-37);Aib8,Aib22,Aib27,Aib30,Arg34,Aib35,Pro37-GLP-1(7-37)アミド;Arg26,Lys38-GLP-1(7-38);Arg26,Arg34,Lys38-GLP-1(7-38);Arg26,Arg34,Lys36,Lys38-GLP-1(7-38);Gly8,Arg26,Lys38-GLP-1(7-38);Gly8,Arg26,Arg34,Lys36,Lys38-GLP-1(7-38);デスアミノHis7Glu22Arg26Arg34Lys37-GLP-1(7-37);デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37-GLP-1(7-37)アミド;Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37-GLP-1-(7-37)アミド;デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Phe(m-CF3)28-GLP-1-(7-37)アミド;Aib8,Glu22,Arg26,Lys30-GLP-1-(7-37);Aib8,Glu22,Arg26,Lys31-GLP-1-(7-37);Aib8,Glu22,Arg26,Lys31,Arg34-GLP-1-(7-37);Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37-GLP-1-(7-37)アミド;デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37-GLP-1-(7-37)アミド;デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Glu30,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37);Aib8,Lys20,Glu22,Arg26,Glu30,Pro37]GLP-1-(7-37)アミド;Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)アミド;デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)アミド;Aib8,Glu22,Arg26,Glu30,Pro37, Lys38-GLP-1-(7-38);デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)アミド;デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)-アミド;デスアミノHis7,Glu22,Arg26, Glu30,Arg34,Lys37](GLP-1-(7-37)アミド;デスアミノHis7,Glu22, Arg26,Arg34,Lys37](GLP-1-(7-37)アミド;デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)アミド;Aib8,Glu22,Arg26,Glu30,Lys36]GLP-1-(7-37)Glu-アミド;デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)アミド;デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37);Aib8,Glu22,Arg26,Lys31]GLP-1-(7-37);Aib8,Lys20,Glu22,Arg26,Glu30,Pro37]GLP-1-(7-37)アミド;及びデスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)からなる群から選択される、実施態様34の薬学的組成物。
【0100】
36.前記インスリン分泌性ペプチドが:
N-イプシロン26--(17-カルボキシヘプタデカノイル)-[Aib8,Arg34]GLP-1-(7-37)-ペプチド、
N-イプシロン26-(19-カルボキシノナデカノイル)-[Aib8,Arg34]GLP-1-(7-37)-ペプチド、
N-イプシロン26-(4-{[N-(2-カルボキシエチル)-N-(15-カルボキシペンタデカノイル)アミノ]メチル}ベンゾイル)[Arg34]GLP-1-(7-37)、
N-イプシロン26-[2-(2-[2-(2-[2-(2-[4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)-4(S)-カルボキシブチリルアミノ]エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1-(7-37)ペプチド、
N-イプシロン37{2-[2-(2-{2-[2-((R)-3-カルボキシ-3-{[1-(19-カルボキシノナデカノイル)ピペリジン-4-カルボニル]アミノ}プロピオニルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル[デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)アミド、
N-イプシロン37{2-[2-(2-{2-[2-((S)-3-カルボキシ-3-{[1-(19-カルボキシノナデカノイル)ピペリジン-4-カルボニル]アミノ}プロピオニルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)アミド、
N-イプシロン37-[2-(2-[2-(2-[2-(2-((R)-3-[1-(17-カルボキシヘプタデカノイル)ピペリジン-4-イルカルボニルアミノ]3-カルボキシプロピオニルアミノ)エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ)アセチル][デスアミノHis7, Glu22 Arg26, Arg34, Phe(m-CF3)28]GLP-1-(7-37)アミド、
N-イプシロン30{2-[2-(2-{2-[2-((S)-3-カルボキシ-3-{[1-(19-カルボキシノナデカノイル)ピペリジン-4-カルボニル]アミノ}プロピオニルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル[Aib8,Glu22,Arg26,Lys30]GLP-1-(7-37)、
N-イプシロン31{2-[2-(2-{2-[2-((S)-3-カルボキシ-3-{[1-(19-カルボキシノナデカノイル)ピペリジン-4-カルボニル]アミノ}プロピオニルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル[Aib8, Glu22, Arg26,Lys31]GLP-1-(7-37)、
N-イプシロン31-(2-{2-[2-(2-{2-[2-((S)-3-カルボキシ-3-{[1-(19-カルボキシ-ノナデカノイル)ピペリジン-4-カルボニル]アミノ}プロピオニルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチルアミノ)エトキシ]エトキシ}アセチル)[Aib8,Glu22,Arg26,Lys31,Arg34]GLP-1-(7-37)、
N-イプシロン37-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-({トランス-4-[(19-カルボキシ-ノナデカノイル-アミノ)メチル]シクロヘキサンカルボニル}アミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)アミド、
N-イプシロン37-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-({トランス-4-[(19-カルボキシ-ノナデカノイルアミノ)メチル]シクロヘキサンカルボニル}アミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)アミド、
N-イプシロン37-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-({トランス-4-[(19-カルボキシ-ノナデカノイル-アミノ)メチル]シクロヘキサンカルボニル}アミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)、
N-イプシロン37-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-({トランス-4-[(19-カルボキシ-ノナデカノイルアミノ)メチル]シクロヘキサンカルボニル}アミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Glu30,Arg34, Lys37]GLP-1-(7-37)、
N-イプシロン20-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-((S)-4-カルボキシ-4-{12-[4-(16-(1H-テトラゾール-5-イル)ヘキサデカノイルスルファモイル)ブチリルアミノ]ドデカノイルアミノ}ブチリルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][Aib8,Lys20,Glu22,Arg26,Glu30,Pro37]GLP-1-(7-37)アミド、
N-イプシロン37-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-((S)-4-カルボキシ-4-{12-[4-(16-(1H-テトラゾール-5-イル)ヘキサデカノイルスルファモイル)ブチリルアミノ]ドデカノイルアミノ}ブチリルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][Aib8,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)アミド、
N-イプシロン37-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-((S)-4-カルボキシ-4-{12-[4-(16-(1H-テトラゾール-5-イル)ヘキサデカノイルスルファモイル)ブチリルアミノ]ドデカノイルアミノ}ブチリルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)アミド、
[Aib8,Glu22,Arg26,Glu30,Pro37]GLP-1-(7-37)Lys[2-(2-{2-[4-カルボキシ-4-(4-カルボキシ-4-{4-[4-(16-1H-テトラゾール-5-イル-ヘキサデカノイルスルファモイル)ブチリルアミノ]ブチリルアミノ}ブチリルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル]、
N-イプシロン37(ポリエチレングリコール2000)[デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)アミド、
N-イプシロン37(3-((2-(2-(2-(2-(2-ヘキサデシルオキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシ))プロピオニル)[デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)-アミド、
N-イプシロン37-{2-(2-(2-(2-[2-(2-(4-(ヘキサデカノイルアミノ)-4-カルボキシブチリルアミノ)エトキシ)エトキシ]アセチル)エトキシ)エトキシ)アセチル)}-[デスアミノHis7,Glu22,Arg26, Glu30,Arg34,Lys37](GLP-1-(7-37)アミド、
N-イプシロン37-{2-(2-(2-(2-[2-(2-(4-(ヘキサデカノイルアミノ)-4-カルボキシブチリルアミノ)エトキシ)エトキシ]アセチル)エトキシ)エトキシ)アセチル)}-[デスアミノHis7,Glu22, Arg26,Arg34,Lys37](GLP-1-(7-37)アミド、
N-イプシロン37-(2-(2-(2-(2-(2-(2-(2-(2-(2-オクタデカノイルアミノ)エトキシ)エトキシ)アセチルアミノ)エトキシ)エトキシ)アセチルアミノ)エトキシ)エトキシ)アセチル)[デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1(7-37)アミド、
N-イプシロン36-(2-(2-(2-((2-[2-(2-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ)エトキシ)アセチル)[Aib8,Glu22,Arg26,Glu30,Lys36]GLP-1-(7-37)Glu-アミド、
N-イプシロン37-[4-(16-(1H-テトラゾール-5-イル)ヘキサデカノイルスルファモイル)ブチリル][デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)アミド、
N-イプシロン37-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][デスアミノHis7,Glu22,Arg26,Arg34,Lys37]GLP-1-(7-37)、及び
N-イプシロン31-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[4-カルボキシ-4-(17-カルボキシ-ヘプタデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][Aib8,Glu22,Arg26,Lys31]GLP-1-(7-37)、
からなる群から選択される、実施態様32の薬学的組成物。
37.前記インスリン分泌性ペプチドが、Arg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Na-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)である、実施態様32の薬学的組成物。
【0101】
38.前記インスリン分泌性ペプチドの濃度が、約0.1mg/ml〜約25mg/mlの範囲、約1mg/ml〜約25mg/mlの範囲、約2mg/ml〜約15mg/mlの範囲、約3mg/ml〜約10mg/mlの範囲、又は約5mg/ml〜約8mg/mlの範囲である、実施態様1ないし37のいずれか一つの薬学的組成物。
【0102】
39.前記インスリン分泌性ペプチドがエキセンディン-4又はZP-10、すなわちHGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPSKKKKKK-NH2である、実施態様32の薬学的組成物。
40.前記インスリン分泌性ペプチドが、アシル化されたエキセンディン-4、又はアシル化されたエキセンディン-4アナログである、実施態様1ないし32のいずれか一つの薬学的組成物。
41.前記インスリン分泌性ペプチドが、次の式:

の[N-イプシロン(17-カルボキシヘプタデカン酸)Lys20エキセンディン-4(1-39)-アミド、又は次の式:

のN-イプシロン32-(17-カルボキシ-ヘプタデカノイル)[Lys32]エキセンディン
-4(1-39)アミド、
である、実施態様32の薬学的組成物。
【0103】
42.薬学的組成物における前記インスリン分泌性ペプチドの濃度が、約5μg/mL〜約10mg/mL、約5μg/mL〜約5mg/mL、約5μg/mL〜約5mg/mL、約0.1mg/mL〜約3mg/mL、又は約0.2mg/mL〜約1mg/mLである、実施態様39ないし41のいずれか一つの薬学的組成物。
【0104】
43.組成物が、肺処置、経口処置、鼻処置又は口腔処置に適している、実施態様1ないし42のいずれか一つの薬学的組成物。
44.組成物が肺使用に適している、実施態様1ないし42のいずれか一つの薬学的組成物。
45.組成物が鼻処置に適している、実施態様1ないし42のいずれか一つの薬学的組成物。
46.組成物が経口使用に適している、実施態様1ないし42のいずれか一つの薬学的組成物。
47.組成物が口腔使用に適している、実施態様1ないし42のいずれか一つの薬学的組成物。
【0105】
48.実施態様1ないし47のいずれか一つの薬学的組成物を治療的有効量、患者に投与することを含む、このような処置を必要とする患者における糖尿病を処置する方法。
49.実施態様1ないし47のいずれか一つの薬学的組成物を治療的有効量、患者に投与することを含む、このような処置を必要とする患者における、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病、肥満症、高血圧、シンドロームX、脂質異常症、認知障害、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、冠動脈心疾患、他の循環器疾患、中枢神経疾患、例えばアルツハイマー、脳卒中、炎症性腸疾患、胃腸障害、及び胃潰瘍を処置又は予防する方法。
50.実施態様1ないし47のいずれか一つの薬学的組成物を治療的有効量、患者に投与することを含む、このような処置を必要とする患者における2型糖尿病の病気進行を遅延化又は予防する方法。
【0106】
51.高血糖症、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病、肥満症、高血圧、シンドロームX、脂質異常症、認知障害、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、冠動脈心疾患、他の循環器疾患、中枢神経疾患、例えばアルツハイマー型脳卒中、炎症性腸疾患、胃腸障害、及び胃潰瘍を処置又は予防する医薬として使用される、実施態様1ないし47のいずれか一つの薬学的組成物。
52.2型糖尿病の病気進行を遅延化又は予防する医薬として使用される、実施態様1ないし47のいずれか一つの薬学的組成物。
【0107】
ここに引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての文献は、各文献が、出典明示により個々にかつ特に援用され、その全内容がここに記載されているかの如く、その全体が出典明示によりここに援用される(法律により許容される最大範囲)。
全ての表題及び副題は、ここでは便宜的に使用され、決して本発明を限定するものと解してはならない。
ここに提供される任意かつ全ての例、又は例示的言語(例えば「等」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、特に請求項に記載がない限り、本発明の範囲に限定をもたらすものではない。明細書中の如何なる語句も請求項に記載していない要素が本発明の実施に必須であることを示しているものと解してはならない。
ここでの特許文献の引用及び援用は単に便宜上なされているもので、そのような特許文献の有効性、特許性、及び/又は権利行使性についての見解を反映させるものではない。
この発明は、適用される法律に容認される場合、ここに付加される請求項に列挙された主題事項の全ての修正点及び等価物を含む。
【実施例】
【0108】
一般的手順
チオフラビンT(ThT)フィブリル化アッセイ:原理及び実施例
ペプチドの物理的安定性が低いと、サンプルにおいて、秩序だったより糸状の高分子構造として観察される、アミロイドのフィブリル形成に至る可能性があり、最終的にはゲル形成に帰する。このことは、伝統的には、サンプルの目視検査により測定される。しかしながら、その種類の測定は非常に主観的で、観察者に依存するものである。よって、小分子指示プローブの適用がより有利である。チオフラビンT(ThT)はこのようなプローブであり、フィブリルに結合した場合は、明確な蛍光的特徴を有する[Naikiら (1989)Anal. Biochem. 177,244-249; LeVine (1999)Methods. Enzymol. 309,274-284]。
【0109】
動的(加速)ThTアッセイ
フィブリル形成の時間経過は、以下の式を用いたS字形曲線により記述することができる[Nielsenら(2001)Biochemistry 40,6036-6046],cn.f 図6:

ここで、Fは時間tにおけるThT 蛍光である。定数t0は最大蛍光の50%に達するのに必要な時間である。フィブリル形成を記述する2つの重要なパラメータは、t0-2τにより算出されるラグタイムと、見かけ速度定数kapp=1/τである。

ペプチドの部分的に折り畳まれた中間体の形成は、フィブリル化の一般的な開始メカニズムとして示唆される。その中間体のほどんとが核とならずに鋳型を形成し、それにさらなる中間体が集まり、フィブリル化が進行する。ラグタイムは、核の臨界質量が累加する間隔に対応し、見かけ速度定数はフィブリル自体が形成される速度である。
【0110】
サンプル調製
サンプルを各アッセイの前に新たに調製した。チオフラビンTを、HO中の保存溶液から、最終濃度1μMまで、サンプルに添加した。200μlのサンプルアリコートを96ウェルマイクロタイタープレート(Packard OptiPlateTM-96、白色ポリスチレン)に配した。通常、各サンプルの8つの複製(一つのテスト条件に相当)を、ウェルの一つのカラムに配した。プレートをスコッチ・パッド(Scotch Pad)(Qiagen)で密封した。
【0111】
インキュベート及び蛍光測定
付与された温度でのインキュベート、振揺、及びThT蛍光発光の測定を、フルオロスキャン・アセントFL蛍光プレートリーダー(Thermo Labsystems)において実施した。温度を37℃に調節した。軌道振揺を、全ての提供されたデータにおいて、1mmの振幅を有する960rpmに調節した。444nmのフィルターを通した励起を使用して、蛍光測定を実施し、発光測定を485nmのフィルターを通して実施した。
各操作を、10分間、アッセイ温度でプレートをインキュベートすることにより開始した。典型的には45時間、20分毎にプレートを測定した。各測定の間、プレートを振揺し、記載したようにして加熱した。
【0112】
静的ThTアッセイ
サンプル調製及び蛍光測定
非水性のプロピレングリコールにインスリンアスパルトを含有せしめたサンプルを、5及び40℃で1ヶ月保存した。脱塩水を使用し、測定前に1mg/mlの予期濃度(フィブリル化した天然タンパク質を含有)に、サンプルを希釈した。パーキン・エルマー・モデル(Perkin-Elmer model)LS 50 B発光分光計を使用し、0.3cmの励起光路を有する半ミクロ的石英キュベット(Hellma Germany)において、蛍光測定を実施した。450nmで励起し、5nmのスリット幅を有する、470〜560nmの発光スペクトルを、196μlの希釈したサンプルに4μlのThT 1mM保存溶液を添加した直後に記録した。反応混合物におけるThTの濃度は20μMol/lであった。結果は、I 482nm/[タンパク質濃度(mg/ml)xキュベット路程(cm)]として報告され、すなわち、結果を、1mg/mlのタンパク質濃度、及び1cmのキュベット路長に対して標準化した。
【0113】
実施例1
Arg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Na-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)のpMDI溶液型製剤
組成は以下の通りである:
ml当たり3.5mgのArg34, Lys26(Nε-(γ-Glu(Na-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)と1,2プロパンジオール(プロピレングリコール) 19%
エタノール96% 30%
HFA134a 50%
水 1%
pI5.6、及び標的pH8.7を有するArg34,Lys26(Nε-(γ-Glu(Na-ヘキサデカノイル)))-GLP-1(7-37)を、極性の共溶媒(プロピレングリコール、エタノール及び水)に溶解させ、14mlのガラス製キャニスターに充填した。キャニスターをスプレーバルブ(Valois, Le Vaudreuil, France)で閉じ、HFA噴霧剤を、パマソール(Pamasol)2005/10充填機を用いて、キャニスターに充填した。
不溶性の無機塩の微量存在しているかもしれないため、製剤は僅かに曇っていた。
粒度分布を、ウィンドックス(Windox)4ソフトウェアを具備するレーザー回折分析(Sympatec GmbH, Germany)により評価した。
【0114】
実施例2
プロピレングリコール又はグリセロールにおける、周囲温度でのインスリン分泌性ペプチドの溶解度
pI4.2、及び標的pH7.4を有する、N-イプシロン20-{2-(2-(2-(2-[2-(2-(4-(ヘキサデカノイルアミノ)-4-カルボキシブチリルアミノ)エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ)エトキシ)アセチル)}-[Leu14,Lys20,Gln28]-エキセンディン-4を増加した量、ぞれぞれ0.5mlのプロピレングリコール及びグリセロールに添加した。溶媒を穏やかに攪拌し、化合物の各添加の透明度を調査した。溶解限界には、0.5mlのプロピレングリコールに211mgの化合物、及びグリセロールに98mgの化合物を添加した後でも到達しなかったが、溶液は非常に粘度のあるものであった。
【0115】
実施例3
インスリン分泌性ペプチドを用いた、非水性溶液型の加圧された定量吸入器の調製
pI4.2、及び標的pH7.4を有する、N-イプシロン20-{2-(2-(2-(2-[2-(2-(4-(ヘキサデカノイルアミノ)-4-カルボキシブチリルアミノ)エトキシ)エトキシ]アセチルアミノ)エトキシ)エトキシ)アセチル)}-[Leu14,Lys20,Gln28]-エキセンディン-4を、溶媒(表2に列挙したような、エタノールとプロパノールの混合物)に溶解させ、エアゾール用ガラス製キャニスターにピペットで入れ、標準的なバルブ(Valois DF10-50)でクリンプし、対応する部分の液状噴霧剤で加圧した。クリンプと充填は、パマソール2005/10充填システムを用いて実施した。バイアルを透明度について調査した。
【0116】
製剤F1-6は、充填直後に何の沈殿も見られなかったが、最終的に、全ての調査用組成物は、保存の数日後、又は機械的ストレス(振揺)の後に、数種類の沈殿が観察された。最も有望な製剤は、17.5%のエタノール、12.5%のプロピレングリコール、及び67.5%のHFA227を含有するF6であることが見出された。この製剤は、製造21後でも、沈殿は見られなかった。しかしながら、3週間の保存後では、容易に再分散可能な、わずかな沈殿が観察された。
【0117】
表2:少なくとも沈殿、及び全く/最小のガラス製キャニスター吸着を示した製剤

粒子スプレーサイズ分析について、製剤F6を新たに調製し、種々のアクチュエーターオリフィス直径を使用し、エアゾール液滴直径のためにスプレーした。
【0118】
製剤6の液滴粒度分布を、レーザー回折(HELOS-laser diffractometer, SympaTEC GmbH, Germany)により測定した。
約12cmの距離で、レーザービームの前にMDIを配した。エアゾールの光学濃度が>0.1になった時に、測定を実施した。R3レンズ(0.5μm〜175μmの範囲を測定)を使用した。粒度分布測定の生データを、フラウンホーファ理論に従い、シンパテック・ウィンドックス(Sympatec Windox)5ソフトウェアにより評価した。
12.5%のプロピレングリコールと17.5%のエタノールを有する製剤F6は、約25μmの平均粒径、及び約40μmのd90%を示した。より小さなアクチュエーターオリフィス径を使用すると、体積平均径がより低下する傾向にあることがわかった。ブデソニド(Budesonide)(Budes N(登録商標), Sandoz)のHFA溶液製剤と、サイズ分布を比較すると、8μmの平均径及び約15μmのd90%で送達されることが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)脱水された治療的に活性なインスリン分泌性ペプチドと、
b)少なくとも一の半極性プロトン性有機溶媒
の混合物を含有し、
該インスリン分泌性ペプチドが、水溶液中のインスリン分泌性ペプチドのpIから少なくとも1pH単位である標的pHで脱水されている非水性薬学的組成物。
【請求項2】
有機溶媒がプロピレングリコール及びグリセロールからなる群から選択される請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
脱水インスリン分泌性ペプチドの有機溶媒中の溶解度が少なくとも20mg/mlである請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
標的pHが約6.0〜約9.0の範囲にある請求項1から3のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
有機溶媒が少なくとも20%w/wの量で存在している請求項1から4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
10%w/w未満の水分を含有する請求項1から5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
組成物が、肺処置、経口処置、鼻処置又は口腔処置に対して適合化されている請求項1から6のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
インスリン分泌性ペプチドが、GLP-1、GLP-2、エキセンディン-3、エキセンディン-4、及びそのアナログ及び誘導体からなる群から選択される請求項1から7のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
インスリン分泌性ペプチドがDPP-IV保護ペプチドである請求項1から8のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
高血糖症、2型糖尿病、耐糖能異常、1型糖尿病、肥満症、高血圧、シンドロームX、脂質異常症、認知障害、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、冠動脈心疾患、他の循環器疾患、アルツハイマー等の中枢神経疾患、脳卒中、炎症性腸疾患、胃腸障害、及び胃潰瘍の処置又は予防のための医薬としての使用のための請求項1から9のいずれか一項に記載の薬学的組成物。

【公表番号】特表2010−529004(P2010−529004A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509835(P2010−509835)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056699
【国際公開番号】WO2008/145732
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】