説明

安定なイマチニブ組成物

【課題】高い多形安定性を有するイマチニブを含む製剤を提供すること。
【解決手段】高い多形安定性を有するイマチニブ、好ましくはメシル酸イマチニブ、及びその調製のための製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い多形安定性を有するイマチニブを含む製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本発明は、2007年9月25日に提出された米国仮出願第60/995,321号;及び2007年9月26日に提出された同60/995,651号の利益を請求する。これらの出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
メシル酸イマチニブ、すなわちメシル酸4−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)−N−[4−メチル−[(4−ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ]フェニル]ベンザミドは、以下の化学構造を有する化合物である。
【0004】
【化1】

【0005】
イマチニブは、タンパク質−チロシンキナーゼ阻害剤である。これは、様々な癌の種類の治療に特に有用であり、そしてアテローム硬化症、血栓症、再狭窄、及び線維症の治療のために使用することもできる。すなわちイマチニブは、非悪性疾患の治療にも使用することができる。通常イマチニブは、好適な塩状態、例えばメシル酸イマチニブの状態で、経口投与される。
【0006】
国際公開第99/03854号、国際公開第2005/077933号、国際公開第2005/095379号、国際公開第2004/106326号、国際公開第2006/054314号、国際公開第2006/024863号、国際公開第2006/048890号、米国特許出願第2006/0030568号、及び国際公開第2007/023182号、及び米国特許第6,894,051号は、主に非結晶イマチニブ、及びH1、α、α2、β、δ、ε、I及びII形と呼ばれる結晶形メシル酸イマチニブについて記載している。
【0007】
国際公開第99/03854号、米国特許出願第2006/0030568号、及び米国特許第6,894,051号は、主にメシル酸イマチニブα及びβ形を開示している。その中でα形は、4.9、10.5、14.9、16.5、17.7、18.1、18.6、19.1、21.3、21.6、22.7、23.2、23.8、24.9、27.4、28.0、及び28.6 ± 0.2°2θのピークを有する粉末X線回折(「PXRD」)パターンにより特徴づけられる。β形はその中で、9.7、13.9、14.7、17.5、18.2、20.0、20.6、21.1、22.1、22.7、23.8、29.8、及び30.8 ± 0.2°2θのピークを有するPXRDパターンにより特徴づけられる。
【0008】
国際公開第2005/077933号は、主にメシルイマチニブ結晶α2形を開示しており、その中で、4.8、10.4、11.2、11.9、12.9、13.8、14.9、16.4、17.0、17.6、18.1、18.6、19.0、19.8、21.2、21.6、22.6、23.1、23.7、24.9、26.3、27.3、28.5、31.9、32.5、及び43.4 ± 0.2°2θのピークを有するPXRDパターンにより規定される。
【0009】
国際公開第2004/106326号は、主にメシル酸イマチニブ結晶H1形を開示しており、その中で9.9、11.1、16.3、17.3、18.1、19.1、19.6、20.3、21.1、21.9、23.2、23.6、24.2、24.9、25.6、26.0、27.3、27.9、28.9、29.4、30.4、及び30.5 ± 0.2°2θのピークを有するPXRDパターンにより規定される。国際公開第2004/106326号はまた、含水量が2.0〜3.2%である非結晶メシル酸イマチニブ水和物を開示する。
【0010】
国際公開第2006/054314号は、主にメシル酸イマチニブ結晶I及びII形について開示しており、それぞれ、9.7、10.0、10.8、12.5、13.0、14.0、15.2、16.0、17.1、17.9、18.9、19.3、20.0、20.9、21.7、22.4、23.0、24.7、25.2、25.8、27.1、28.0、28.7、29.2、30.2、30.9、31.4、33.3、36.4、及び38.3 ± 0.2 °2θのピーク、並びに2.4、2.8、4.4、4.9、5.5、7.9、8.4、8.9、9.6、11.1、11.5、12.1、12.7、14.1、14.7、15.3、16.1、17.0、17.6、18.6、19.4、19.6、20.3、20.7、21.4、22.0、22.7、23.5、24.0、24.6、25.2、25.7、26.9、27.7、28.2、28.6、29.1、28.5、30.130.6、21.8、33.5、34.4、34.9、35.7、35.9、37.1、37.5、37.9、37.2、39.7、40.6、41.3、43.4、43.8、44.6、45.2、45.7、46.5、47.1、及び48.0 ± 0.2 °2θのピークを有するPXRDパターンにより規定される。
【0011】
国際公開第2007/023182号は、主にメシル酸イマチニブ結晶δ及びε形を開示する。δ形はその中で、19.2、19.4、19.8、20.3、20.7、20.9、及び21.1 ± 0.2 °2θのピークを有するPXRDパターンにより規定され、ε形はその中で、13.9、17.0、17.9、18.5、19.6、20.7、及び24.1 ± 0.2 °2θを有するPXRDパターンにより規定される。国際公開第2007/136510号は、V及びX形を含むメシル酸イマチニブのさらなる結晶形を開示しており、これについては以下でさらに詳細に記載する。
【0012】
国際公開第2003/090720号は、約30〜80%(重量/重量)のイマチニブを含有する錠剤に関する。さらに、国際公開第01/47507号には、約22%(重量/重量)のメシル酸イマチニブを含有する医薬組成物/錠剤についての記載がある。米国特許出願第2006/0275372号及び国際公開第2007/119601号の両出願には、メシル酸イマチニブの微粒子組成物についての記載がある。
【発明の概要】
【0013】
ある実施態様によれば、本発明は、イマチニブ、好ましくはメシル酸イマチニブを含有する医薬組成物、好ましくは錠剤を提供し、ここで当該医薬組成物は高い多形安定性を示す。
【0014】
別の実施態様によれば、本発明は、イマチニブ、好ましくはメシル酸イマチニブを含有する医薬組成物、好ましくは錠剤の製造方法であって、ここで当該医薬組成物は高い多形安定性を示し、当該方法は、結晶イマチニブを含む医薬組成物、好ましくは錠剤を、被覆溶液、好ましくは錠剤被覆溶液であって、約20%(重量/容量)未満、好ましくは10%(重量/容量)未満、より好ましくは5%(重量/容量)未満の水を含む有機溶媒を含有する被覆溶液で被覆すること、を含んでなる製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、メシル酸イマチニブV形のPXRDパターンである。
【図2】図2は、メシル酸イマチニブV形の100〜180 ppmの範囲での固体13C NMRスペクトルである。
【図3】図3は、メシル酸イマチニブV形の固体13C NMRスペクトルである。
【図4】図4は、メシル酸イマチニブX形のPXRDパターンである。
【図5】図5は、メシル酸イマチニブX形の100〜180 ppmの範囲での固体13C NMRスペクトルである。
【図6】図6は、メシル酸イマチニブX形の固体13C NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、イマチニブ、好ましくはメシル酸イマチニブを含有する、医薬組成物、好ましくは錠剤を有利に提供し、当該医薬組成物、好ましくは錠剤は、多形安定性を提供する。好ましくは、本発明はメシル酸イマチニブを含んでなる錠剤を提供し、ここで当該錠剤はメシル酸イマチニブについて高い多形安定性を提供する。本明細書で使用される、「高い安定性」なる用語は、多形体アルファ又はベータ形、好ましくはベータ形への変換が、10%以下、より好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下であることを言う。
【0017】
本明細書で使用される「初期の多形体」なる用語は、イマチニブ、好ましくは医薬組成物の保存前の医薬組成物中に製剤化されるイマチニブの多形体のことを言う。初期の多形体の割合は、約100%である。
【0018】
本明細書で使用される「多形安定性」なる用語は、例えば保存中、経時によって多形変換が進行することなく基の多形体に留まるイマチニブの安定性のことを言う。
【0019】
本明細書で使用される「保存」なる用語は、少なくとも約1ヶ月の期間のことを言う。好ましくは、保存は40℃75%RH(相対湿度)で行われる。
【0020】
本明細書で使用される「多形変換」なる用語は、多形体からメシル酸イマチニブの任意の他の多形体への変換のことを言い、例えば、任意のH1、α、α2、β、δ、ε、I及びII形、又は非結晶への変換等がある。本発明の実施態様によれば、「多形変換」なる用語は、多形V形又はX形から、メシル酸イマチニブのα形又はβ形、好ましくはβ形への変換のことを言う。
【0021】
多形変換は、当業界で既知の技術により測定される。特に、イマチニブの各々既知の多形体、例えばH1、α、α2、β、δ、ε、I及びII形、及び非結晶形は、PXRD又は赤外線(「IR」)ピークの特有セットにより特徴づけを行ってもよい。多形の混合物における各々の多形の量は、既知の技術を用い、各々の多形特有の特徴ピークの相対強度を参照して計算することができる。好ましくは、XRPD、13C固体NMR又は赤外線(「IR」)ピークから、多形変換の割合を測定する。PXRDによる測定の場合、α形の含量は、以下に示すピーク、5.0、10.5、12.0、15.0、18.7、19.1、21.4及び28.6 ± 0.2°2θから選択される1又は複数のピークを用いることにより決定でき、ベータ形の含量は、以下の示すピーク、9.7、13.9、14.7、17.5、18.2、21.1、22.1、22.7、29.8及び30.8 ± 0.2°2θから選択される1又は複数のピークを用いることにより決定できる。決定に使用されるXRPDピークの選択は、製剤のために使用される賦形剤に依存する可能性がある。C-13固体NMRによる測定の場合には、アルファ形の含量は、以下に示すピーク、112.2、117.3、122.3、126.2、129.7、130.1、134.7、135.7、137.9、142.0、148.3、151.5、158.0、163.9、164.7及び165.9 ± 0.2 ppmから選択される、100〜180 ppmの範囲内の1又は複数のピークを用いることにより決定され、ベータ形の含量は、以下に示すピーク、104.8、121.5、123.2、124.8、125.9、128.6、131.0、134.9、136.4、139.0、141.7、146.5、150.9、158.9及び168.6 ± 0.2 ppmから選択される、100〜180 ppmの範囲内の1又は複数のピークを用いることにより決定される。決定に使用される13C固体NMRシフトの選択は、製剤のために使用される賦形剤から影響を受ける可能性がある。
【0022】
欧州薬局方5.08第2.9.33章の「XRPDによる結晶固体の特徴付け」の一般章に従ってもよい。XRPDで測定する場合、好適な検出/定量限界、又は他の既知の操作のために、低速スキャンデータ収集が使用できる。C-13固体NMRで測定する場合、長いデータ収集時間又は既知の記述により、バックグラウンドを最小にすることができる。
【0023】
好ましい実施態様によれば、イマチニブはそのメシル酸塩の状態である。より好ましくは、メシル酸イマチニブは、多形V形又はX形の状態である。V形及びX形は、米国特許公開第2008-0090833号(又は国際公開第2007/136510号)として公開された同時係属の米国特許第出願第11/796,573号(参照により本明細書に組み込まれる)に詳細な記載がある。V形は、約9.9、11.7、13.3、16.6、及び22.1 ± 0.2 °2θでピークを有するPXRDパターン;約9.9、11.7、13.3、及び16.6± 0.2 °2θでピークを有するPXRDパターン;約5.6、9.9、11.7、13.3、16.6、及び18.5± 0.2 °2θでピークを有するPXRDパターン;約5.6、9.9、11.7、13.3、16.6、18.5、22.1、24.0、26.2、26.9 ± 0.2 °2θでのピークからなるリストから選択される少なくとも5つのピークを有するPXRDパターン;図1に示すPXRDパターン;約162.8、161.5、及び158.5 ± 0.2 ppmのシグナルを有する固体13C NMRスペクトル;100〜180 ppmのケミカルシフト範囲における最低のケミカルシフトを示すシグナルと、別のシグナルとの間で約53.9、52.6、及び49.6 ± 0.1 ppmのケミカルシフト差を有する固体13C NMRスペクトル;図2に示す固体13C NMRスペクトル;及び図3に示す固体13C NMRスペクトル、からなる群から選択されるデータにより特徴付けられる。
【0024】
X形は、約6.0、8.6、11.4、14.2、18.3± 0.2 °2θでピークを有するPXRDパターン;約6.0、8.6、10.2、11.4、14.2、± 0.2 °2θでピークを有するPXRDパターン;約6.0、8.6、10.2、11.4、14.2、17.8、18.3、21.6、22.4、23.6、及び24.8 ± 0.2 °2θでのピークからなるリストから選択される少なくとも5つのピークを有するPXRDパターン;図4に示すPXRDパターン;約159.9, 158.2、及び153.4 ± 0.2 ppmのシグナルを有する固体13C NMR;100〜180 ppmのケミカルシフト範囲において最低のケミカルシフトを示すシグナルと、別のシグナルとの間で約51.5、49.8、及び45.0 ± 0.1 ppmの差を有する固体13C NMR;図5に示す固体13C NMR;及び図6に示す固体13C NMR、からなる群から選択されるデータにより特徴付けられる。
【0025】
ある実施態様によれば、本発明は、メシル酸イマチニブV形又はX形を含有する、医薬組成物、好ましくは錠剤を包含し、ここで当該医薬組成物、好ましくは錠剤は、多形安定性を提供する。好ましくは、結晶メシル酸イマチニブV形又はX形は、医薬組成物の調製時又は保存時に、任意のメシル酸イマチニブα形又はβ形への多形変換を受けない。より好ましくは、結晶メシルイマチニブは、β形への多形変換を受けない。さらに、本発明の医薬組成物における、結晶メシルイマチニブV形又はX形の、任意の他の多形、好ましくはα又はベータ、より好ましくはβ形への変換は、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、及び最も好ましくは3重量%未満である。
【0026】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、イマチニブ、好ましくはメシル酸イマチニブを、約50 mg〜約500 mg、より好ましくは約100 mg〜約400 mg、さらにより好ましくは100 mg〜400 mg含有する剤型を含んでなる。
【0027】
医薬組成物、好ましくは錠剤における、イマチニブ、好ましくはメシル酸イマチニブの多形安定性の原因が、被覆によるものであってもよい。結晶メシル酸イマチニブを含んでなる医薬組成物、好ましくは錠剤へ適用する被覆溶液は、水含量(重量/容量)が約20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満の有機溶媒を含有する。好ましくは、溶媒は、C1-4アルコール、より好ましくはエタノール又はイソプロピルアルコール(「IPA」)である。
【0028】
好ましくは、本発明の未被覆の医薬組成物、例えば錠剤を、乾式造粒又は直接圧縮により調製する。乾式造粒は、活性成分イマチニブ、好ましくは結晶メシル酸イマチニブ、及び1又は複数の賦形剤を含む組成物を混合すること;スラグ(slug)又はシート中にその混合物を圧密化すること;スラグ又はシートを粉砕して圧密顆粒にすること;及び圧密顆粒を圧縮して錠剤にすること、を含んでもよい。
【0029】
直接圧縮には、活性成分イマチニブ、好ましくは結晶メシル酸イマチニブ、及び1又は複数の賦形剤を含有する組成物を混合すること、及び錠剤に直接圧縮することが含まれてもよい。当該圧縮は、直接圧縮技術を用いて、圧密化剤型に直接組み込まれる。直接圧縮は、簡便で、単純、及び工業スケールへの応用可能性がある。直接圧縮錠剤化に特に良く適する賦形剤には、微結晶セルロース、噴霧乾燥乳糖、スタルラック(Starlac)(乳糖一水和物82〜88%と、トウモロコシデンプン12〜18%)、リン酸二カルシウム二水和物、及び/又はコロイドシリカがある。直接圧縮錠剤化における、当該物及び他の賦形剤の適切な使用は、直接圧縮錠剤化の特定の製剤課題における経験の技能を有する当業者に既知である。
【0030】
本発明はまた、イマチニブ、好ましくはメシル酸イマチニブを含有する、多形安定である医薬組成物、好ましくは錠剤の製造方法を提供し、当該製造方法は、イマチニブ、好ましくはメシル酸イマチニブを含有する医薬組成物、好ましくは錠剤(上記の方法に従って調製してもよい)を用意し、及び含水率(重量/容量)が20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満の水を含む有機溶媒を含む被覆溶液で、当該医薬組成物を被覆すること、を含んでなる。好ましくは、当該溶媒はC1-4アルコール、より好ましくはエタノール又はイソプロピルアルコール(IPA)である。好ましくは、当該被覆医薬組成物はその後乾燥される。
【0031】
希釈剤は、固体医薬組成物の容積を増加させることができるとともに、患者及び介護者がより扱い易い組成物を含有する医薬剤型とすることができる。固体組成物のための希釈剤には、例えば、微結晶セルロース(例えばアビセル(登録商標))、超微粒セルロース、乳糖、デンプン、α化デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、デキストレート(dextrate)、第二リン酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えば、オイドラギット(EUDRAGIT(登録商標)))、塩化カリウム、粉化セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトール及びタルクがある。最も好ましくは、希釈剤が乳糖である。
【0032】
錠剤様の剤型に圧密化される固形医薬組成物に、圧縮後の活性成分と他の賦形剤との結合を補助する等の機能を持つ賦形剤を入れることができる。固体医薬組成物用の結合剤には、少なくとも1つの、アカシア、アルギニン酸、カルボマー(例えば、カルボポール(carbopol))、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、ガーガム、水素化植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、クルーセル(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、メトセル(METHOCEL(登録商標)))、液体グルコース、ケイ酸アルミニウム・マグネウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリメタクリレート、ポビドン(例えば、コリドン(KOLLIDON(登録商標))、プラスドン(PLASDONE(登録商標)))、α化デンプン、アルギン酸ナトリウム、又はデンプンがある。
【0033】
組成物に崩壊剤を添加することにより、患者の胃内での圧密化固体医薬組成物の崩壊速度を増加させることができる。崩壊剤には、限定するものではないが、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、AC−DI−SOL@プリメロース(PRIMELLOSE(登録商標)))、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えば、コリドン(登録商標)、ポリプラスドン(POLYPLASDONE(登録商標)))、ガーガム、ケイ酸アルミニウム・マグネシウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポラクリリン(polacrilin)カリウム、粉化セルロース、α化デンプン、アルギン酸ナトリウム、グリコール酸デンプンナトリウム(例えば、EXPLOT AB(登録商標))又はデンプンがある。最も好ましくは、崩壊剤は、クロスポビドン、微結晶セルロース及びその混合物からなる群から選択される。
【0034】
流動促進剤の添加により、非圧密化固体組成物の流動特性の向上、及び投薬の精度の向上が可能になる。流動促進剤として機能する賦形剤には、コロイド状二酸化シリカ、三ケイ酸マグネシウム、粉化セルロース、デンプン、タルク、及び/又は第三リン酸カルシウムがある。最も好ましくは、流動促進剤はコロイド状二酸化シリカである。
【0035】
錠剤等の剤型が、粉末組成物の圧密化により作製される場合、当該組成物に、穿抗機及び着色機(punch and dye)の圧力をかける。賦形剤及び活性成分には、穿抗機及び着色機の表面に付着する傾向を有するものもあり、これが穴あき製品及び他の表面を凹凸にする原因となる可能性がある。滑剤は、付着の低減及び着色機からの製品の放出を容易にさせるために添加することができる。限定するものではないが、滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素化ヒマシ油、水素化植物油、鉱物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク、及び/又はステアリン酸亜鉛がある。最も好ましい滑剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0036】
香味剤及び香味促進剤は、患者にとって美味な剤型を作製する。本発明の組成物が含むことができる、一般的な香味剤及び香味促進剤には、限定するものではないが、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール、又は酒石酸がある。固形組成物は、その外見の改善のため、及び/又は患者が製品及び単位投薬レベルを識別し易いように、任意の医薬的に許容される着色剤を用いて、着色することもできる。
【0037】
賦形剤及びその使用のための量の選択は、当分野における経験、及び標準的な手法及び参考文献の考慮に基づいて、製剤科学者により容易に決定することができる。
【0038】
好ましい実施態様によれば、本発明による錠剤は、メシル酸イマチニブを約20〜約80%(重量/重量);希釈剤、充填剤又は増量剤、好ましくは乳糖、より好ましくはスタルラック(乳糖一水和物82〜88%と、トウモロコシデンプン12〜18%)を、約10〜約60%(重量/重量)、より好ましくは約25%〜約60%(重量/重量);崩壊剤、より好ましくはクロスポビドンを、約4〜約30%(重量/重量)、より好ましくは約10%〜25%(重量/重量);別の崩壊剤、好ましくは微結晶セルロースを、約0〜約10%(重量/重量)、より好ましくは約1.5〜9%(重量/重量);別の結合剤、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(クルーセル(登録商標))を、約0〜約5%(重量/重量)、好ましくは約1〜約5%(重量/重量);流動促進剤、好ましくはコロイド状二酸化ケイ素、マンニトール又はアエロジル、又はそれらの組み合わせを、約0.2〜約5%(重量/重量);及び滑剤、好ましくはステアリン酸マグネシウム又はステアリルフマル酸ナトリウムを、約0.1〜約4%(重量/重量)、より好ましくは0.5%〜約2%(重量/重量)含んでなる。
【0039】
より好ましくは、各々の錠剤が、
119.5mgのメシル酸イマチニブ;
117.3mgの乳糖;
0〜18.0mgのクロスポビドン;
48.0mgの微結晶セルロース;
18.0mgのクルーセル;
68.0mgのマンニトール;
2.5 mgのアエロジル;
12.7mgのステアリルフマル酸ナトリウム;及び
9.0 mgのオパドライ(被覆剤)、
を含む。
【0040】
特定の好ましい実施態様について言及する発明を記載することにより、当業者にとっては、本明細書を考慮して他の実施態様が明らかになるだろう。本発明は、本発明の組成物の調製及び使用方法を、以下の実施例の参照によりさらに詳細に規定する。当業者は、原料及び方法に対する多くの修正を、本発明の範囲を逸脱することなく実施できることがわかるであろう。
【0041】
以下の実施例は、本発明を説明する目的のために提供され、本発明の範囲又は精神を制限するものと解されるべきではない。
【0042】
実施例
装置
粉末X線回折
XRD回折は、X線粉末回折装置:PanAlytical X'pert Pro粉末回折装置、Cu管、スキャンパラメータ:CuKα照射、λ=1.5418Å、を用いて行った。連続スキャン速度:0.02°2シータ/0.3秒。
【0043】
13C NMR
CP/MAS 13C NMR測定値は、4 mmのZrO2ローター中、Bruker Avance 500 NMR US/WBから得た。マジックアングルスピニング(Magic angle spinning)(MAS)スピードを10 kHzとした。本明細書で使用される、「13C NMRケミカルシフト」なる用語は、上記の特定条件下で測定されたシフトのことを言うが、これらのシフトは装置毎にわずかに異なる可能性があり、装置設定及び使用されるキャリブレーションの違いにより、高磁場又は低磁場にシフトする可能性がある。それでも個々のピークの配列は同じままである。
【0044】
実施例1:エタノール被覆錠剤
メシル酸イマチニブ100 mg錠剤:
【0045】
【表1】

【0046】
上記製剤の被覆:
【0047】
【表2】

【0048】
実施例2:H2O被覆錠剤(比較例)
メシル酸イマチニブ100 mg錠剤:
【0049】
【表3】

【0050】
上記製剤の水性被覆
【0051】
【表4】

【0052】
実施例3:40℃及び75%相対湿度(RH)で保存後の多形安定性の比較
上記の製剤で調製及び被覆した錠剤を、40℃及び75%RHの条件下、様々な量で保存した。以下の表に示す通り、ある錠剤は95%エタノールを用いる被覆剤で被覆し、他のものは上記実施例2の通り水を用いて被覆した。使用したイマチニブは、結晶メシル酸イマチニブX形であった。結果は、エタノールを用いる錠剤被覆剤で被覆した錠剤において、イマチニブの多形体は長期間保持されるが、錠剤被覆剤において水を使用した場合、イマチニブのX形は、製剤中でイマチニブのベータ形に変換することを示している。
【0053】
40℃及び75%相対湿度での安定性
【0054】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メシル酸イマチニブの初期の多形体を含んでなる医薬組成物であって、75%相対湿度40℃で1ヶ月保存後、α形又はβ形に変換するメシル酸イマチニブの多形体が10%未満である、医薬組成物。
【請求項2】
前記メシル酸イマチニブの初期の多形体のうち変換する多形体が5%未満である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記イマチニブの初期の多形体のうち変換する多形体が3%未満である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記メシル酸イマチニブの初期の多形体が、メシル酸イマチニブV形又はメシル酸イマチニブX形である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
イマチニブが、結晶メシル酸イマチニブX形である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
メシル酸イマチニブβ形に変換するメシル酸イマチニブV形又はメシル酸イマチニブX形が10%未満である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
被覆錠剤の形態である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記被覆錠剤が、約10%(重量/容量)未満の水を含む有機溶媒を用いて、錠剤を被覆することにより調製される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記有機溶媒が、C1-4アルコールである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記C1-4アルコールがエタノール又はイソプロピルアルコールである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
メシル酸イマチニブを約20〜約80%(重量/重量);希釈剤を約10〜約60%(重量/重量);崩壊剤を約4〜約30%(重量/重量);別の崩壊剤を約0〜約9%(重量/重量);結合剤を約0〜約5%(重量/重量);流動促進剤を約0.2〜約5%(重量/重量);滑剤を約0.1〜約4%(重量/重量);及び被覆剤を約1.5〜約3%(重量/重量)、含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記希釈剤が乳糖であり、前記崩壊剤がクロスポビドン又は微結晶セルロースであり、前記結合剤がクルーセル(Klucel)であり、前記流動促進剤がアエロジル(Aerosil)又はコロイド状二酸化ケイ素であり、及び前記滑剤がステアリン酸マグネシウム又はステアリルフマル酸ナトリウムである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
メシル酸イマチニブを119.5 mg;乳糖を117.3 mg;微結晶セルロースを48.0 mg;マンニトールを68.0 mg;クルーセルを18.0 mg;アエロジルを2.5 mg;ステアリルフマル酸ナトリウムを12.7 mg;及びオパドライ(Opadry)を9.0 mg含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
結晶メシル酸イマチニブを含んでなる錠剤を用意するステップ、及び約10%(重量/容量)未満の水を含む有機溶媒を用いる錠剤被覆剤で錠剤を被覆するステップを含んでなる、高い多形安定性を有するメシル酸イマチニブを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項15】
前記メシル酸イマチニブが、結晶メシル酸イマチニブV形又はX形である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記錠剤が、メシル酸イマチニブを含む混合物の乾式造粒及び直接圧縮から選択される方法を含んでなる錠剤調製法により用意される、請求項14又は15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記錠剤が、メシル酸イマチニブ、希釈剤、1又は複数の崩壊剤、及び結合剤を混合するステップ;得られる混合物に流動促進剤を添加するステップ;及び得られる混合物に滑剤を添加し、剤型を形成するための最終混合物を得るステップを含む方法で調製される、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記希釈剤が乳糖であり、前記1又は複数の崩壊剤がアビセル(avicel)及びマンニトールであり、前記結合剤がクルーセルであり、前記流動促進剤がアエロジルであり、及び前記滑剤がステアリルフマル酸ナトリウムである、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記有機溶媒がC1-4アルコールである、請求項14〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記C1-4アルコールが、エタノール又はイソプロピルアルコールである、請求項19に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−140508(P2011−140508A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−55998(P2011−55998)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2010−526074(P2010−526074)の分割
【原出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】