説明

安定化されたエラストマー分散体

本発明は、中和シリコーンエラストマー分散体、及び中和シリコーンエラストマー分散体を製造する方法に関する。本発明はまた、中和シリコーンエラストマーと酸反応性化合物とを含む組成物に関する。シリコーンエラストマー分散体は、典型的に、シリコーンエラストマー分散体を重炭酸ナトリウム等の塩基と配合させることによって、又は塩基性中和剤を、シリコーンエラストマー分散体を生成するのに用いられる原料の1つ又は複数に添加すると共に、濾過又は任意の他の好適な手段により塩基性中和剤を除去することによって中和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中和シリコーンエラストマー分散体、及び中和シリコーンエラストマー分散体を製造する方法に関する。本発明はまた、中和シリコーンエラストマーと、酸反応性化合物とを含む組成物に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
該当なし。
【背景技術】
【0003】
シリコーンエラストマー分散体は、化粧組成物及び医薬組成物における広範な用途が知られている。しかしながら、これらの組成物中の多くの美容有効成分及び医薬有効成分は、酸性材料に曝されると分解する。これらの有効成分の多くは、あらゆる酸の存在によりその成分の大部分の分解及び無効性がもたらされるおそれがあるほどの少量で組成物に添加されている。幾らかのシリコーンエラストマー分散体は、低度の略検出不可能なレベルの酸を含有する可能性があることが見出されている。したがって、これらの化粧組成物及び医薬組成物中には中和されたエラストマー分散体を使用することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
シリコーンエラストマー分散体は、典型的に、シリコーンエラストマー分散体を重炭酸ナトリウム等の塩基と配合させることによって、又は塩基性中和剤を、シリコーンエラストマー分散体を生成するのに用いられる原料の1つ又は複数に添加すると共に、濾過又は任意の他の好適な手段により塩基性中和剤を除去することによって中和される。典型的に、中和は、酸反応性化合物を添加する前に行う。この中和により、酸感応性化合物の分解及び減損が防止される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書中で有用な中和シリコーンエラストマー分散体は、塩基性中和剤をシリコーンエラストマー分散体に添加することによって調製される。中和剤は、ゲル形態又はペースト形態のいずれかのエラストマーの形成前又形成後に、エラストマーに添加される。シリコーンエラストマー分散体は当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第5,654,362号明細書、同第5,811,487号明細書、及び同第6,200,581号明細書(シリコーンエラストマー及び製造方法の教示に関しては参照されて本明細書の一部とする)に記載されている。
【0006】
(a)触媒の存在下でポリメチルハイドロジェンシロキサンをα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンと反応させることによって生成されるジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマー組成物であって、シクロメチコン中4%〜10%の濃度で用いられる、ジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマー組成物(即ち、Shin-Etsu Silicones(America, Akron, Ohio)からのKSG−15シリコーンエラストマー分散体);(b)SiH含有ポリシロキサン及び式CH2=CH(CH2XCH=CH2(式中、x=l〜20)のα,ω−ジエンを用いて生成され、α,ω−ジエン中の二重結合へのSiHの架橋及び付加によってゲルを形成するシクロメチコン(及び)ジメチコーンクロスポリマー、典型的にはシクロメチコン(例えば、D4又はD5シクロメチコン(即ち、Dow Corning Corporation(Midland, MI)からのDow Corning(登録商標) 9040 Elastomer Blend))中に8%〜18%の不揮発性成分を有する、シクロメチコン(及び)ジメチコーンクロスポリマー等の多くのこれらのシリコーンエラストマー分散体が市販されており、米国特許第5,654,362号明細書に記載されるような他のタイプのシリコーンエラストマー分散体も参照により本明細書中に援用される。
【0007】
好適なエラストマー分散体の特定の例は、GE Silicones(Waterford, N.Y.)からのSFE 167であるセテアリルジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマー;GE SiliconesからのSFE168であるシクロメチコン及びジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマー;Shin Etsu Silicones(America, Akron, Ohio)から商品名KSG−15(シクロメチコン及びジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマー)として入手可能であるようなビニルジメチコーンクロスポリマー、KSG−16(ジメチコーン及びジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマー)、KSG−17(シクロメチコン及びジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマー)、KSG−18(フェニルジメチコーン(及びジメチコーン/フェニルビニルジメチコーンクロスポリマー);並びにKSG−20(ジメチコーンコポリオールクロスポリマー);Dow Corning Corporation(Midland, MI)からの商品名Dow Corning 9506 Cosmetic Powderのジメチコーン/ビニルジメチコーンクロスポリマー、Dow Corningからのシクロメチコン中のDC−9040、DC−9041、DC−9045エラストマー;並びに、シクロメチコンと、Grant Industries, Inc.(Elmwood Park, NJ)から商品名Gransil SR−CYCとして入手可能なステアリルビニル/ヒドロメチルシロキサンコポリマーとの混合物である。
【0008】
詳細には、シリコーンエラストマー分散体を製造する一方法が、(A)多官能性SiH含有ポリシロキサンと(B)α,ω−ジエン等のC=C含有反応物質との、白金触媒の存在下、(C)溶媒の存在下における架橋反応を含む。エラストマーは溶媒によって膨潤する。
【0009】
シリコーンエラストマー分散体を製造する一方法は、米国特許第5,654,362号明細書に記載されるような、(A)多官能性SiH含有ポリシロキサンと(B)α,ω−ジエンとの、白金触媒の存在下、(C)溶媒の存在下における架橋反応を含む。この方法において、SiH含有ポリシロキサン(A)は、本明細書中でタイプA1と称する式R3SiO(R’2SiO)a(R’’HSiO)bSiR3の化合物、及び本明細書中でタイプA2と称する式HR2SiO(R’2SiO)cSiR2H又は式HR2SiO(R’2SiO)a(R’’HSiO)bSiR2Hの化合物で表される。これらの式中、R、R’及びR’’は、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、aは0〜250であり、bは2〜250であり、且つcは0〜250である。化合物A2:A1のモル比は0〜20、典型的には0〜5である。典型的に、タイプA1及びタイプA2の化合物は両方とも反応に用いられるが、化合物を1つだけ用いた反応の方が首尾良く行うことが可能である。
【0010】
α,ω−ジエン(B)は、式CH2=CH(CH2XCH=CH2(式中、xは1〜20である)の化合物である。本明細書中で用いられる好適なα,ω−ジエンの代表例は、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、及び1,19−エイコサジエンである。
【0011】
付加反応及び架橋反応は、SiH含有ポリシロキサンとα,ω−ジエンとの反応を起こす触媒を必要とする。好適な触媒は、第VIII族遷移金属、即ち貴金属である。かかる貴金属触媒は、白金触媒を示すことが米国特許第3,923,705号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。好ましい一白金触媒は、Karstedtの米国特許第3,715,334号明細書及び同第3,814,730号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載されているKarstedt触媒である。Karstedt触媒は、典型的にトルエン等の溶媒中に約1重量%の白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。別の好ましい白金触媒は、塩化白金酸と、末端脂肪族不飽和を含有する有機ケイ素化合物との反応生成物である。これは米国特許第3,419,593号明細書(参照により本明細書中に援用される)に記載されている。貴金属触媒は、SiH含有ポリシロキサン100重量部当たり0.00001部〜0.5部、好ましくは0.00001部〜0.02部、最も好ましくは0.00001部〜0.002部の量で用いられる。
【0012】
(A)と(B)との反応は、溶媒(C)の存在下で実行される。典型的に、溶媒は低分子量シリコーンである。低分子量シリコーンという語句は、(Ci)低分子量線状及び環状揮発性メチルシロキサン、(Cii)低分子量線状及び環状揮発性及び不揮発性アルキル及びアリールシロキサン、並びに(Ciii)低分子量線状及び環状官能性シロキサンを包含することが意図される。典型的には(Ci)低分子量線形及び環状揮発性メチルシロキサン(「VMS」)が用いられる。
【0013】
VMS化合物は、平均単位式(CH3aSiO(4-a)/2(式中、aは2〜3の平均値を有する)に対応する。化合物は、−Si−O−Si−結合により結合されるシロキサン単位を含有する。代表的な単位は、単官能性「M」単位(CH33SiO1/2及び二官能性「D」単位(CH32SiO2/2である。三官能性「T」単位CH3SiO3/2の存在は、分岐、線状又は環状揮発性メチルシロキサンの形成をもたらす。四官能性「Q」単位SiO4/2の存在は、分岐、線状又は環状揮発性メチルシロキサンの形成をもたらす。
【0014】
線状VMSは、式(CH33SiO{(CH32SiO}ySi(CH33を有する。yの値は0〜5である。環状VMSは式{(CH32SiO}zを有する。zの値は4〜6である。典型的に、これらの揮発性メチルシロキサンは、約250℃未満の沸点及び約0.65センチストークス(mm2/s)〜5.0センチストークス(mm2/s)の粘度を有する。線状VMSの例は、ヘキサメチルジシロキサン(MM)、オクタメチルトリシロキサン(MDM)、デカメチルテトラシロキサン(MD2M)、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン(MD4M)及びヘキサデカメチルヘプタシロキサン(MD5M)である。
【0015】
環状VMSの例は、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)である。
【0016】
分岐VMSの例は、ヘプタメチル−3−{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサン(M3T)、ヘキサメチル−3,3−ビス{(トリメチルシリル)オキシ}トリシロキサン(M4Q)、及びペンタメチル{(トリメチルシリル)オキシ}シクロトリシロキサン(MD3)である。
【0017】
低分子量線状及び環状揮発性及び不揮発性アルキル及びアリールシロキサン(Cii)としては、式R3SiO(R2SiO)ySiR3の化合物である線状ポリシロキサン、及び式(R2SiO)zの環状ポリシロキサン(式中、Rは1個〜6個の炭素原子のアルキル基、又はフェニル等のアリール基であり、yは0〜80、典型的には0〜20の値を有し、且つzは4〜9、典型的には4〜6の値を有する)が挙げられる。これらのポリシロキサンは、一般的に約1センチストークス(mm2/s)〜100センチストークス(mm2/s)の範囲の粘度を有する。(Cii)の例は、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、及びポリジフェニルシロキサンである。
【0018】
低分子量線状及び環状官能性シロキサン(Ciii)は、アクリルアミド官能性シロキサン流体、アクリレート官能性シロキサン流体、カルビノール官能性シロキサン流体、クロロアルキル官能性シロキサン流体、エポキシ官能性シロキサン流体、グリコール官能性シロキサン流体、ケタール官能性シロキサン流体、メチルエステル官能性シロキサン流体、ペルフルオロ官能性シロキサン流体、及びシラノール官能性シロキサンで表すことができる。
【0019】
他のタイプの溶媒はシリコーンエラストマーを膨潤させることができる。このため、単一の溶媒又は混合溶媒を使用してもよい。他の溶媒の例は、他の材料を溶解、懸濁、又は他の材料の物理特性を変化させるように工業規模で使用される材料であり、(Civ)有機化合物、(Cv)ケイ素原子を含有する化合物、(Cvi)有機化合物の混合物、(Cvii)ケイ素原子を含有する化合物の混合物、又は(Cviii)有機化合物とケイ素原子を含有する化合物との混合物が挙げられる。
【0020】
概して、有機化合物は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、アミン、エステル、エーテル、グリコール、グリコールエーテル、アルキルハロゲン化物、又は芳香族ハロゲン化物である。幾つかの一般的な有機溶媒の代表は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、2−オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセロール等のアルコール;ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、VM&P溶媒及びミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素;クロロホルム、四塩化炭素、ペルクロロエチレン、塩化エチル及びクロロベンゼン等のアルキルハロゲン化物;イソプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン及びジエタノールアミン等のアミン;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセト酢酸エチル、酢酸アミル、イソブチルイソブチレート及び酢酸ベンジル等のエステル;エチルエーテル、n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等のエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、メチルアミルケトン及びジイソブチルケトン等のケトン;鉱油、ガソリン、ナフタ、ケロセン、軽油、重油及び原油等の石油炭化水素;スピンドル油及びタービン油等の潤滑油;並びに、トウモロコシ油、ダイズ油、オリーブ油、ナタネ油、綿実油、イワシ油、ニシン油及び鯨油等の脂肪油である。
【0021】
アセトニトリル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、トリオクチルホスフェート、ブチロラクトン、フルフラル、パイン油、テレビン油及びm−クレゾール等の混入物(miscellaneous)を有する「他の」有機溶媒も使用することができる。用いられる溶媒は、用途及びそれが医薬的に許容可能であるか又は化粧用に許容可能であるかに応じて決まる。
【0022】
中和シリコーンエラストマー分散体は、SiH含有ポリシロキサン(複数可)、C=C含有反応物質、溶媒及び触媒を配合すること(combining)、並びにこれらの成分を、ゲルが形成するまで室温で混合することによって生成される。反応混合物に熱を加えて、プロセスを促進させてもよい。
【0023】
シリコーンエラストマー分散体の生成前、生成中、又は生成後に中和を行うことができる。例えば、シリコーンエラストマー分散体の形成前に、全反応物質を塩基性中和剤で処理した濾紙に通過させることにより中和を行ってもよい。もしくは、塩基性中和剤を反応物質(複数可)に直接添加した後に、例えば濾過又は遠心分離によって除去してもよい。シリコーンエラストマー分散体の形成前に中和を行う場合、塩基性中和剤は、いずれの反応物質とも反応又は錯体化しないようなものでなければならない。
【0024】
また、シリコーンエラストマー分散体を生成した後で中和を行ってもよい。例えば、少量の重炭酸ナトリウム又はシステイン等の塩基性中和剤をシリコーンエラストマー分散体に添加することが望ましい。ゲル形態のシリコーンエラストマー分散体を用いて反応後、又はゲルをペーストへとさらに処理した後に中和を行ってもよい。典型的に、シリコーンエラストマー分散体の重量に基づく0.001重量%〜1.0重量%の中和剤を、シリコーンエラストマー分散体に添加する。代替的には0.01重量%〜0.1重量%の中和剤を使用する。
【0025】
典型的には、SiH含有ポリシロキサンとC=C含有反応物質との1:1モル比を用いて中和シリコーンエラストマー分散体を生成する。また、過剰なSiH含有ポリシロキサン又はC=C含有反応物質を用いたプロセスを実行することによっても、有用な材料が調製され得ることが予想されるが、これは、材料の非効率的な使用であると考えられる。組成物の残りは、概して組成物の約65重量%〜98重量%、好ましくは約80重量%〜98重量%の範囲内の量の低分子量シリコーン又は他の溶媒を含む。
【0026】
さらなる量の低分子量シリコーン又は溶媒をゲルに添加してもよく、得られる混合物に剪断力をかけるとペーストが形成される。バッチミキサー、プラネタリーミキサー、一軸スクリュー押出機若しくは多軸スクリュー押出機、ダイナミックミキサー若しくはスタチックミキサー、コロイドミル、ホモジナイザー、ソノレーター、又はそれらの組み合わせ等のあらゆるタイプの混合装置及び剪断装置を用いて、このような工程を実施することが可能である。
【0027】
残留白金を錯体化するもの等の他の成分を、シリコーンエラストマー分散体に添加してもよい。これらの成分は米国特許第5,977,280号明細書及び同第5,929,164号明細書(参照されて本明細書の一部とする)に教示されている。さらに、残留白金を錯体化し、また酸を中和するように作用し得る副生成物をも生成することができる成分を使用することが望ましい。
【0028】
中和シリコーンエラストマー分散体は、酸感応性有効成分が用られる医薬用途及び化粧用途に有用である。典型的に、酸感応性有効成分は、シリコーンエラストマー分散体の重量に基づき0.001重量%〜5重量%の量で添加される。典型的に、酸感応性有効成分は、一般的な混合技法を用いてシリコーンエラストマー分散体と混合する。
【0029】
他の成分を、中和シリコーンエラストマー分散体及び酸感応性有効成分に添加して、用途に適する組成物を製造してもよい。例えば、医薬組成物又は化粧組成物は、液体、ペースト、ゲル、クリーム又はローションの形態であり得るため、適切な成分を添加して、中和シリコーンエラストマー分散体/酸感応性有効成分をその形態に維持することができる。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は本発明の実施形態を実証するように含まれる。続くこれらの実施例に開示される技法は、本発明者らによって開発された技法が本発明の実施において良好に機能することを示し、それゆえ、その実施に際して好ましい実施の形態を構成するとみなすことができることが、当業者により理解されるであろう。しかしながら、当業者は、本開示を鑑みて、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、開示される特定の実施形態において数多くの変更を為し、同様の又は類似の結果を依然として得ることができることを理解するものとする。全ての重量は、組成物中100部当たりの部を示す。安定性は、クロマトグラフィにより測定される有効成分の減損である。
【0031】
[試料の調製]
以下の実施例では、有効成分のための溶媒を反応容器に添加することによって試料を調製した。この溶媒に、有効成分1、有効成分2及び防腐剤を添加した。固体が全て溶解したことが分かるまで混合物を攪拌した。シクロメチコン、エラストマー分散体及び重炭酸ナトリウムを合わせて、この配合物(combination)に有効成分混合物を添加した。システインを混合物に添加する場合には、システインをエタノールに添加してから、エラストマー分散体と適切に混合させた。成分の量は表に示す。
【0032】
[結果の要約]
表1は、中和剤が存在しない場合、重炭酸ナトリウムのみを用いた場合、システインのみを用いた場合、及びシステイン及び重炭酸ナトリウムの配合物(combination)を用いた場合の有効成分の減損%を示す。様々な多くのシリコーンエラストマー分散体を比較例(C2〜C7)に用いた。実施例C1では、有効成分の減損がシリコーンエラストマー分散体の存在に関係しているかを検証するために、シリコーンエラストマー分散体を用いなかった。
【0033】
表2は、有効成分の減損に対する混合時間の結果を示す。
【0034】
表3では、シリコーンエラストマー分散体を調合するのに用いられる構成成分を、有効成分と混合させて、構成成分上の反応基(即ち、SiH残基又はC=C残基)が有効成分の減損をもたらすかを確認した。
【0035】
表4は、有効成分溶液をシリコーンエラストマー分散体に添加する前に塩基性中和剤が平衡時間を要し得ることを実証した。
【0036】
表5は、幾らかの容量の酸残渣が有効成分の分解の原因であることを確認するために行った検討結果を示す。C18では、市販の形態のシリコーンエラストマー分散体を用いた。C19では、使用前にシリコーンエラストマー分散体を濾過した。C20では、シリコーンエラストマー分散体をAlSOP濾過エラストマーとした。C21では、シリコーンエラストマー分散体をAlSOP濾過エラストマーとし、5重量% MgSO4を添加した。C22では、シリコーンエラストマー分散体をAlSOP濾過エラストマーとし、5重量% NaHCO3を添加した。C23では、シリコーンエラストマー分散体をAlSOP濾過エラストマーとし、5重量% MgSO4及び5重量% NaHCO3を添加した。実施例C24では、シクロメチコン5NFをシリコーンエラストマー分散体の代わりに用いた。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.001重量%〜1重量%の塩基性中和剤をシリコーンエラストマー分散体に添加することによって製造される、中和シリコーンエラストマー分散体。
【請求項2】
前記塩基性中和剤が重炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の中和シリコーンエラストマー。
【請求項3】
前記塩基性中和剤がシステインである、請求項1に記載の中和シリコーンエラストマー。
【請求項4】
0.01重量%〜0.1重量%の前記塩基性中和剤が使用される、請求項1に記載の中和シリコーンエラストマー。
【請求項5】
中和シリコーンエラストマー分散体であって、
(A)多官能性SiH含有ポリシロキサンと(B)C=C含有反応物質とを、白金触媒の存在下及び(C)溶媒の存在下において反応させ、シリコーンエラストマー分散体を生成した後、0.001重量%〜1重量%の塩基性中和剤をシリコーンエラストマー分散体に添加することを含む方法により製造される、中和シリコーンエラストマー分散体。
【請求項6】
前記C=C含有反応物質がα,ω−ジエンである、請求項5に記載の中和シリコーンエラストマー分散体。
【請求項7】
前記溶媒が低分子量シリコーンである、請求項5に記載の中和シリコーンエラストマー分散体。
【請求項8】
前記塩基性中和剤が重炭酸ナトリウムである、請求項5に記載の中和シリコーンエラストマー。
【請求項9】
前記塩基性中和剤がシステインである、請求項5に記載の中和シリコーンエラストマー。
【請求項10】
0.01重量%〜0.1重量%の前記塩基性中和剤が用いられる、請求項5に記載の中和シリコーンエラストマー。
【請求項11】
中和シリコーンエラストマー分散体であって、
SiH含有ポリシロキサンを中和剤で処理すること、(A)中和された該SiH含有ポリシロキサンを(B)C=C含有反応物質と、白金触媒の存在下及び(C)溶媒の存在下において反応させて、シリコーンエラストマー分散体を生成することを含む方法によって製造される、中和シリコーンエラストマー分散体。
【請求項12】
前記C=C含有反応物質がα,ω−ジエンである、請求項11に記載の中和シリコーンエラストマー分散体。
【請求項13】
前記溶媒が低分子量シリコーンである、請求項11に記載の中和シリコーンエラストマー分散体。
【請求項14】
前記塩基性中和剤が重炭酸ナトリウムである、請求項11に記載の中和シリコーンエラストマー。
【請求項15】
前記塩基性中和剤がシステインである、請求項11に記載の中和シリコーンエラストマー。
【請求項16】
0.01重量%〜0.1重量%の前記塩基性中和剤が用いられる、請求項11に記載の中和シリコーンエラストマー。

【公表番号】特表2010−518240(P2010−518240A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549581(P2009−549581)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/000313
【国際公開番号】WO2008/100364
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】