説明

安定医薬組成物及びその製造方法

【課題】
医薬組成物中で不安定化する化合物について、化合物の分解が抑制され且つ簡便に製造できる医薬組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
溶融した中性低融点油脂状物質または硬化油に活性化合物を分散し、その分散液を賦形剤に滴下することにより得られる主薬顆粒を用いて医薬品組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物中で不安定化する化合物について、化合物の分解が抑制され且つ簡便に製造できる医薬組成物およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬組成物の製造において、しばしば化合物の分解が促進される現象が観察される。その原因としては、配合剤中に含まれている水分や保存中に吸湿される水分が考えられている。そのため、医薬組成物中に安定化剤として炭酸ナトリウムなどの添加物を加える方法(特許文献1から8)、乾燥条件下で顆粒を製造する方法(特許文献9)、皮膜をコーティングする方法(特許文献10)、油性マトリックスに原薬を分散させる方法(特許文献11から13、16から18)、低融点アジュバンドで薬物を融着させる方法(特許文献14)、あらかじめ造粒した賦形剤にステアリン酸と薬物の混合物を添加する方法(特許文献15)により安定性を向上させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2004/032909パンフレット
【特許文献2】WO99/20276パンフレット
【特許文献3】WO99/20277パンフレット
【特許文献4】特開平11−92369公報
【特許文献5】特開平7−285867公報
【特許文献6】特開平5−221863公報
【特許文献7】特開平6−340530公報
【特許文献8】特開2000−355540公報
【特許文献9】特開2003−128543公報
【特許文献10】特開2006−022039公報
【特許文献11】特開平10−324644公報
【特許文献12】WO00/7831パンフレット
【特許文献13】特開平01−308231公報
【特許文献14】特開平05−192094公報
【特許文献15】特開昭62−252723公報
【特許文献16】特開平5−194218公報
【特許文献17】WO2002/045686パンフレット
【特許文献18】WO2002/547479パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明の解決しようとする課題は、医薬組成物中で不安定化する化合物について、化合物の分解が抑制され且つ簡便に製造できる医薬組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、医薬組成物中で不安定化する化合物について、化合物の分解が抑制され且つ簡便に製造できる医薬組成物製造方法について、鋭意研究した。その結果、溶融した中性低融点油脂状物質または硬化油に化合物を分散し、それを賦形剤に滴下することにより顆粒が生成し、得られた顆粒中では、化合物は安定化することを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、以下の発明を含有する。
[1]溶融した中性低融点油脂状物質または硬化油に活性化合物を分散し、その分散液を賦形剤に滴下することにより得られる主薬顆粒を用いて製造される医薬品組成物。
[2]融点における粘度が5〜5000mPa・Sである中性低融点油脂状物、または硬化油を用いて製造された、[1]に記載の医薬品組成物。
[3]中性低融点油脂状物質として高級アルコールを用いて製造された、[1]から[2]の何れかに記載の医薬品組成物。
[4]中性低融点油脂状物質としてステアリルアルコールまたはセチルアルコールを用いて製造された、[1]から[3]の何れかに記載の医薬品組成物。
[5]賦形剤が乳糖、結晶セルロースまたは糖アルコールである、[1]から[4]の何れかに記載の医薬品組成物。
[6]賦形剤が糖アルコールである、[1]から[5]の何れかに記載の医薬品組成物。
[7]糖アルコールがマンニトール、エリスリトール、キシリトールまたはソルビトールである、[6]記載の医薬品組成物。
[8]活性化合物が、分子内にアミノ基を有するN−アシルピロリジンカルボニトリル誘導体である、[1]から[7]の何れかに記載の医薬品組成物。
[9]活性化合物が一般式(1):
【化1】

(式中、AはCH、CHFまたはCFを示し;
は置換されてもよいC1〜C6のアルキル基、置換されてもよいC3〜C8のシクロアルキル基、置換されてもよいアリールメチル基、置換されてもよいアリールエチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環、または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し;
nは1または2を示す。)
で示されるアミノ−N−アセチルピロリジンカルボキサミド誘導体である、[1]から[8]の何れかに記載の医薬品組成物。
[10]分子内にアミノ基を有するN−アシルピロリジンカルボニトリル誘導体が、vildagliptin、saxagliptin、melogliptin、denagliptin、TS−021、または、(2S,4S)−1−[[N−(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル、である[8]に記載の組成物。
[11]中性低融点油脂状物質として高級アルコールを使用する場合において、高級アルコールと糖アルコールの重量比が2対7から6対3の範囲であることを特徴とする[6]から[7]の何れかに記載の医薬組成物。
[12]溶融した中性低融点油脂状物質または硬化油に活性化合物を分散し、その分散液を賦形剤に滴下することにより製造された主薬顆粒を、さらなる造粒操作を行うことなく、打錠して得られた錠剤。
[13]溶融した中性低融点油脂状物質または硬化油に活性化合物を分散し、その分散液を賦形剤に滴下することにより主薬顆粒を製造し、得られた主薬顆粒を用いて医薬品組成物を得る方法。
[14]溶融した中性低融点油脂状物質または硬化油に活性化合物を分散し、その分散液を賦形剤に滴下することにより主薬顆粒を製造し、得られた主薬顆粒を用いて医薬品組成物を得ることにより、主薬の分解を抑制する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、医薬組成物中で不安定化する化合物について、化合物の分解が抑制され且つ簡便に製造できる医薬組成物製造方法を提供することができる。また、本方法によれば、スプレードライ造粒装置等の特別な装置を使用せず、簡便に安定化製剤を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に示される「中性低融点油脂状物質」とは、油脂状を呈し、その融点が20〜110℃、好ましくは40〜80℃、さらに好ましくは40〜65℃であり、且つ常温で固体の物質を意味する。また、本発明においては、溶融した状態で、滴下することが可能な物質で、融点における粘度が5〜5000mPa・S、好ましくは5〜2500mPa・S、さらに好ましくは5〜50mPa・Sであり、一般式(1)で表される化合物に対して悪影響を及ぼさないものであればいかなるものでもよく、例えば炭化水素、高級アルコール、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの高級アルコールエーテル、などが挙げられ、好ましくは高級アルコールである。
【0009】
本明細書に示される粘度とは、中性低融点油脂状物質を溶融後、その融点において、粘度計(ディジタル粘度計、東機産業、DVH−B型)を用いて、ローターNo.1、回転数4/分、Sampling time120秒の測定条件下で測定して得られた粘度を示す。
【0010】
本発明で使用することができる炭化水素としては、例えばn−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、n−エイコサン、n−ヘンエイコサン、n−ドコサン、n−トリコサン、n−テトラコサン、n−ペンタコサン、n−トリアコンタン、n−ペンタトリアコンタン、n−テトラコンタン、n−ペンタコンタン等の炭素数17〜50のn−アルカンおよびこれらの混合物(ペトロレイタム、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等)などが挙げられる。
【0011】
本発明で使用することができる高級アルコールとは、炭素数14から30のアルコールを意味し、例えばミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、1−エイコサノール、1−ドコサノール、1−テトラコサノール、セリルアルコール、オクタコサン−1−オールおよび1−トリアコンタノールなどが挙げられ、好ましくはセチルアルコール、ステアリルアルコール、1−エイコサノール、1−ドコサノール、1−テトラコサノールまたはセリルアルコールであり、さらに好ましくはセチルアルコールまたはステアリルアルコールである。
【0012】
本発明で使用することができる多価アルコールの脂肪酸エステルとしては、例えば、分子内に2個以上の水酸基を有するアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールあるいはこれらの共重合物などのポリアルキレングリコール、ソルビトール、ショ糖などの糖類、1、5−ソルビタン、1、4−ソルビトール、3、6−ソルビタンなどのソルビトールの分子内脱水化合物、グリセリン、ジエタノールアミン、ペンタエリスリトールなど)と脂肪酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸など)とのエステル、例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノパルミテートなど分子量400〜900のソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリパルミテートなど分子量1000〜1500のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールヘキサオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールトリステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールテトララウレートなどのポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールミツロウ誘導体などのポリオキシエチレンソルビトールミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンラノリン誘導体などのポリオキシエチレンラノリン誘導体などのポリオキシアルキレンラノリン誘導体、プロピレングリコールモノパルミテート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジパルミテート、プロピレングリコールジステアレートなど分子量200〜700のプロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコールモノラウレート、エチレングリコールパルミテート、エチレングリコールマーガレート、エチレングリコールステアレート、エチレングリコールジラウレート、エチレングリコールジミリステート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジマーガレートなど分子量500〜1200のエチレングリコール脂肪酸エステルなどのアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体など分子量3500〜4000のポリオキシアルキレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンパルミテートポリオキシエチレンリノレートなど分子量1900〜2200のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリンモノアセテート、グリセリンモノプロピオネート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノリノレートなど分子量300〜600のグリセリンモノ脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0013】
本発明で使用することができる多価アルコールの高級アルコールエーテルとしては、例えば、多価アルコール(上記多価アルコールの脂肪酸エステルのアルコール成分としてあげたもの)と高級脂肪酸アルコール(例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール)とのエーテル、例えば、ポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンセチルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンデシルアルコールエーテルなどのポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンセチルアルコールエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンステアリルアルコールエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンオクチルアルコールエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテルなどのポリオキシプロピレンポリオキシエチレン高級アルコールエーテルなどが挙げられる。
【0014】
本明細書に示される「硬化油」とは、日本薬局方記載の硬化油を意味し、不飽和脂肪酸成分を含む油脂に水素を添加して得られる酸価2.0%以下の油脂を示す。
【0015】
本明細書に示される「滴下」とは、30g/分〜120g/分の速度でドロップ状または糸状で溶融物を徐々に供給する方法を示す。
【0016】
本明細書中に示される「分子内にアミノ基を有するN−アシルピロリジンカルボニトリル誘導体」の例として、一般式(2):
【化2】

〔式中、AはCH、CHFまたはCFを示し、Rは水素もしくは一級アミノ基を示し、RはRが水素の場合は、置換されていてもよい二級アミノ基を示し、Rが一級アミノ基の場合は、Rは置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基、置換されていてもよいC3〜C10の環状アルキル基を示す〕
【0017】
または一般式(3):
【化3】

〔式中、Rは置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基、置換されていてもよいC3〜C10の環状アルキル基を示す〕
で表される化合物が挙げられる。
【0018】
さらに好ましくは、一般式(1):
【化4】

〔式中、AはCH、CHFまたはCFを示し;
は水素または、置換されてもよいC1〜C6のアルキル基、置換されてもよいC3〜C8のシクロアルキル基、置換されてもよいアリールメチル基、置換されてもよいアリールエチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環、または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し;
nは1または2を示す。〕
【0019】
で表される、N−アシルピロリジンカルボキサミド誘導体が挙げられる。
【0020】
本明細書中に示される「置換されていてもよい二級アミノ基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルコキシカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基、置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールメチル基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい二級アミノ基を意味し;
【0021】
ここで「二級アミノ基」とは、窒素原子に一の水素原子が置換した脂肪族または芳香族アミノ基を意味し、例えばメチルアミノ基、ブチルアミノ基、または2−メチルプロパン−2−イルアミノ基のようなC1〜C6のアルキル基が結合したアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、アダマンチルアミノ基またはビシクロ[2,2,2]オクタニルアミノ基などのようなC3〜C10の環状アルキル基が結合したアミノ基、芳香族アミノ基(例えばアニリル基、ピリジルアミノ基などが挙げられる)を意味する。
【0022】
本明細書中に示される「置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基」とはハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルコキシカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいC1〜C6のアルキル基を意味し;
【0023】
「C1〜C6のアルキル基」とは、直鎖または分岐した低級アルキル基を意味し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−エチルプロピル基、2−エチルプロピル基、2−メチルプロパン−2−イルアミノ基、ブチル基、またはヘキシル基などを挙げることができる。
【0024】
本明細書中に示される「置換されていてもよいC3〜C10の環状アルキル基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルコキシカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい、C3〜C10の環状アルキル基を意味し;
【0025】
「環状アルキル基」とはC3〜C8のシクロアルキル基、C5〜C10のビシクロアルキル基またはアダマンチル基を意味する。
【0026】
「C3〜C8のシクロアルキル基」とは、シクロアルキル環を有するアルキル基を意味し、例えばシクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などを挙げることができ;
【0027】
「C5〜C10のビシクロアルキル基」とは、ビシクロアルキル環を有するアルキル基を意味し、例えばビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロペンチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基またはビシクロデシル基などを挙げることができる。
【0028】
本明細書中に示される「4〜9員の環状アミノ基」とは、環内に一以上の窒素原子を含有し、また環内に酸素原子、硫黄原子が存在していても良い4〜9員の環状アミノ基を意味し、例えば、アジリジル基、ピロリジル基、ピペリジル基、モルホリル基、オキサゾリル基、アザビシクロヘプチル基またはアザビシクロオクチル基などを挙げることができる。
【0029】
本明細書中に示される「置換されていてもよいC3〜C8のシクロアルキル基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルコキシカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいC3〜C8のシクロアルキル基を意味する。
【0030】
本明細書中に示される「置換されていてもよいアリールメチル基」とは、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルコキシカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換の置換されていてもよいC1〜C6のアルキルアミノ基、置換されていてもよいアリールアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいアリールメチル基(例えばフェニルメチル基、ナフチルメチル基、ピリジルメチル基、キノリルメチル基、インドリルメチル基またはトリアゾールメチル基などを挙げることができる)を意味する。
【0031】
本明細書中に示される「置換されていてもよいアリールエチル基」とは、ハロゲン原子、置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC1〜C6のアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C1〜C6のアルキルカルボニル基、C1〜C6のアルコキシカルボニル基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換の置換されていてもよいC1〜C6のアルキルアミノ基、置換されていてもよいアリールアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいアリールエチル基(例えばフェニルエチル基、ナフチルエチル基、ピリジルエチル基、キノリルエチル基またはインドリルエチル基などを挙げることができる)を意味する。
【0032】
本明細書中に示される「置換されていてもよい芳香族炭化水素」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、C1〜C6のアルキルチオ基及びC2〜C6のジアルキルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素(ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環)を意味する。
【0033】
本明細書中に示される「置換されていてもよい芳香族へテロ環」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、C1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基及び、C1〜C6のアルキルチオ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい芳香族へテロ環(窒素原子、酸素原子、硫黄原子の中から任意に選ばれた1〜3個のヘテロ原子を含む5員または6員の芳香族単環式複素環、あるいは9員または10員の芳香族縮合複素環、例えばピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、アクリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソキサゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環またはベンゾオキサゾール環)を意味する。
【0034】
本明細書中に示される「置換されていてもよい脂肪族へテロ環」とは、ハロゲン原子、C1〜C6のアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、C1〜C6のアルコキシ基及びC1〜C6のアルキルチオ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい脂肪族へテロ環(窒素原子、酸素原子、および硫黄原子の中から任意に選ばれた1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員の脂肪族単環式複素環、あるいは9員または10員の脂肪族縮合複素環、例えばアゼチジン環、ピロリジン環、テトラヒドロフラン環、ピペリジン環、モルホリン環またはペラジン環)を意味する。
【0035】
本明細書中に示される「C1〜C6のアルコキシ基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1〜C6アルコキシ基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基、及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基などから選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいC1〜C6のアルコキシ基を意味し:
【0036】
「C1〜C6のアルコキシ基」とは、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、及びヘキシルオキシ基などを挙げることができる。
【0037】
本明細書中に示される「置換されていてもよいアリールオキシ基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基及びC1〜C6のアルキルチオ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいアリールオキシ基を意味し:
「アリールオキシ基」とは、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などを挙げることができる。
【0038】
本明細書中に示される「C1〜C6のアルキルカルボニル基」とは、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基及びイソバレリル基などを挙げることができる。
【0039】
本明細書中に示される「C1〜C6のアルコキシカルボニル基」とは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基及びtert−ブトキシカルボニル基などを挙げることができる。
【0040】
本明細書中に示される「C1〜C6のアルキルチオ基」とは、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基などを挙げることができる。
【0041】
本明細書中に示される「モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C1〜C6アルコキシ基、C1〜C6のアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC1〜C6のアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基、C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基、及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基などから選ばれた1〜2個の置換基を有していてもよいC1〜C6のアルキルアミノ基を意味し:
【0042】
「C1〜C6のアルキルアミノ基」とは、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基などが挙げられる。
【0043】
本明細書中に示される「C1〜C6のアルキルカルボニルアミノ基」とは、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基などが挙げられる。
【0044】
本明細書中に示される「C1〜C6のアルコキシカルボニルアミノ基」とは、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。
【0045】
本明細書中に示される「C1〜C6のアルキルスルホニルアミノ基」とは、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基などが挙げられる。
【0046】
本明細書中に示される「置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基及びC1〜C6のアルキルチオ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいアリールスルホニルアミノ基を意味し:
「アリールスルホニルアミノ基」とは、フェニルスルホニルアミノ基、4ーメチルフェニルスルホニルアミノ基、ナフチルスルホニルアミノ基などを挙げることができる。
【0047】
本明細書中に示される「C2〜C6のジアルキルアミノ基」とは、炭素数2〜6の直鎖または分枝状のジアルキルアミノ基を意味し、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基などを挙げることができる。
【0048】
本明細書中に示される「置換されていてもよいアリールアミノ基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基及びC1〜C6のアルキルチオ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいアリールアミノ基を意味し:
【0049】
例えばフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、ピリジルアミノ基、キノリルアミノ基またはインドリルアミノ基などを挙げることができる。
【0050】
本明細書中に示される、「分子内にアミノ基を有するN−アシルピロリジンカルボニトリル誘導体」のもう一つの例として、vildagliptin、saxagliptin、melogliptin、denagliptin、TS−021、が挙げられる。
【化5】

【0051】
本明細書中に示される賦形剤とは、糖アルコール、セルロース類、二糖類を意味し、より好ましくは、糖アルコールである。また、これらの賦形剤を組み合わせて用いることもできる。
【0052】
本明細書中に示される「糖アルコール」とは、糖分子のカルボキシル基を還元して得られる炭素数4から12の多価アルコールを意味し、例えばエリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、およびラクチトールなどが挙げられ、好ましくはエリスリトール、キシリトール、マンニトールまたはソルビトールである。また、これらの糖アルコールを組み合わせて用いることもできる。
【0053】
本明細書中に示される「セルロース類」とは、セルロースあるいはセルロースを原料としたセルロース誘導体を意味し、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース等があげられる。より好ましくは結晶セルロースである。また、これらの糖アルコールを組み合わせて用いることもできる。
【0054】
本明細書中に示される「二糖類」とは、単糖の2分子が、グリコシド結合により結合して 1分子となったものを意味し、ショ糖(スクロース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)、セロビオース、トレハロース、ゲンチオビオース等があげられる。より好ましくは、ラクトースである。また、これらの二糖類を組み合わせて用いることもできる。
【0055】
本発明の医薬組成物を製造するにあたっては、先に示した、融点が20〜110℃、好ましくは40〜80℃、さらに好ましくは40〜65℃の低融点油脂状物質を公知の方法、例えば低融点油脂状物質を融点以上に加温する等して液体状にし、活性化合物を撹拌等の方法により分散させた後、その分散液を賦形剤に滴下することにより主薬顆粒を製造することにより行われる。得られた主薬顆粒は必要に応じて目開き212 μm(70号)〜1180 μm(14号)、好ましくは、250 μm(60メッシュ)〜1000 μm(16メッシュ)、さらに好ましくは、355 μm(42メッシュ)〜850 μm(18メッシュ)目開きの篩を用いて篩過を行う。
【0056】
この製造法に使用する低融点油脂状物質と賦形剤の配合比率は特に限定されないが、好ましくは、重量比率で、低融点油脂状物質:賦形剤=1:17〜8:1であり、さらに好ましくは、1:8〜7:2であり、特に好ましくは2:7〜6:3である。
【0057】
また、活性化合物の使用量は、特に制限されないが、好ましくは低融点油脂状物質1重量部に対し、1/8〜2倍量、より好ましくは1/7〜低融点油脂状物質と同じ重量、さらに好ましくは1/6〜1/2倍量を用いる。
【0058】
さらに、得られた顆粒を公知の加圧成型手段を用いることにより圧縮成型し、有効成分を含有する錠剤を製造することができる。但し、加圧成型とは、加圧下に圧縮して所望する形態となすことであり、最も一般的にはたとえば打錠などをいう。
【0059】
本製法により得られた錠剤は、通常の方法で製造した錠剤と比較しても、溶出の遅延は起きていない。すなわち、本製法は、錠剤の溶出性に影響を与えない。
【0060】
また、低融点油脂状物質を融点以上に加温する等して液体状にし、活性化合物及び賦形剤の混合物に滴下して得られた主薬顆粒を、必要に応じて篩過することもできる。
【0061】
また、低融点油脂状物質の代替として、硬化油を使用することもできる。
(実施例)
【0062】
次に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。なお、実施例に使用した化合物はWO2005/075421に記載の方法で製造することができる。
【実施例1】
【0063】
表1記載の成分量に従い、75〜85℃にセットしたTHERMO ACE(IT−11C型)を用いてビーカー内でステアリルアルコールを熱溶融させ、粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した(2S、4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル(以下、化合物1)を撹拌しながら添加することで分散させ、熱溶融物を得た。
【0064】
次に、撹拌造粒機(メカノミル、岡田精工、MM−20N型)にマンニトールを投入し、撹拌しながら前工程で得られた熱溶融物を滴下し造粒物を得た。得られた造粒物を篩過し、得られた篩過品を主薬顆粒とした。さらに、得られた主薬顆粒10gと、結晶セルロース90gを乳鉢混合し、顆粒を得た。
【実施例2】
【0065】
表1記載の成分量に従い、マンニトールの代わりにエリスリトールを用い、実施例1と同様の方法により顆粒を作製した。
【実施例3】
【0066】
表1記載の成分量に従い、マンニトールの代わりにキシリトールを用い、実施例1と同様の方法により顆粒を作製した。
【実施例4】
【0067】
表1記載の成分量に従い、マンニトールの代わりにソルビトールを用い、実施例1と同様の方法により顆粒を作製した。
【実施例5】
【0068】
表1記載の成分量に従い、マンニトールの代わりに結晶セルロースを用い、実施例1と同様の方法により顆粒を作製した。
【実施例6】
【0069】
表1記載の成分量に従い、マンニトールの代わりに乳糖を用い、実施例1と同様の方法により顆粒を作製した。
(比較例1)
【0070】
表2記載の成分量に従い、乳鉢中でステアリルアルコール、マンニトール、結晶セルロースと粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した化合物1を乳鉢混合した。
(比較例2)
【0071】
表2記載の成分量に従い、乳鉢中で、ステアリルアルコール、エリスリトール、結晶セルロースと粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した化合物1を乳鉢混合した。
(比較例3)
【0072】
表2記載の成分量に従い、乳鉢中で、ステアリルアルコール、キシリトール、結晶セルロースと粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した化合物1を乳鉢混合した。
(比較例4)
【0073】
表2記載の成分量に従い、乳鉢中で、ステアリルアルコール、ソルビトール、結晶セルロースと粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した化合物1を乳鉢混合した。
(比較例5)
【0074】
表2記載の成分量に従い、乳鉢中で、ステアリルアルコール、結晶セルロースと粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した化合物1を乳鉢混合した。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
(試験例1)
実施例1〜6、比較例1〜5をガラス瓶に充填し、開栓及び密栓した状態で40℃、4週間保存し、化合物1の分解生成物量を液体クロマトグラフィーで測定し、その含量を化合物1の含量に対する百分率で表した。なお、分解物含量の定量限界が0.05%であるため、定量限界未満の分解物については含量に含めなかった。
【0078】
液体クロマトグラフィーによる試験条件
カラム:内径4.6mm、長さ5mm及び内径4.6mm、長さ150mmのそれぞれのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填し、それぞれガードカラム及び分離カラムとした(ジーエルサイエンス、Inertsil ODS−3及びInertsil ODS−3V)。
【0079】
A液:1−オクタンスルホン酸ナトリウム6.48gを薄めたリン酸(1→1000)に溶かし、正確に3000mLとした。もしくは1−オクタンスルホン酸ナトリウム10.80gを薄めたリン酸(1→1000)に溶かし、正確に5000mLとした。
B液:液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
送液:A液及びB液の混合比を変えて濃度勾配を制御した。
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:210nm)
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
表3〜4に示す試験結果から明らかなように、熱溶融させたステアリルアルコールに化合物1を分散させ、分散液を糖アルコール、乳糖または結晶セルロースに滴下して得た主薬顆粒と結晶セルロースを乳鉢混合した顆粒(実施例1〜6)は、単に全成分を乳鉢中で混合することにより得た顆粒(比較例1〜5)に比べ、安定であった。特に糖アルコール(実施例1〜4)と、乳糖(実施例6)に関しては、分解物の生成がほとんどおきておらず、安定化効果が高かった。
【実施例7】
【0083】
表5記載の成分量に従い、85℃にセットしたTHERMO ACE(IT−11C型)を用いてビーカー内でセチルアルコールを熱溶融させ、粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した化合物1を撹拌しながら添加することで分散させ、熱溶融物を得た。
【0084】
次に、撹拌造粒機(メカノミル、岡田精工、MM−20N型)にマンニトールを投入し、撹拌しながら前工程で得られた熱溶融物を滴下し造粒物を得た。得られた造粒物を篩過し、得られた篩過品を主薬顆粒とした。
さらに、得られた主薬顆粒10gと、結晶セルロース90gを、乳鉢中で混合し、顆粒を得た。
【実施例8】
【0085】
表5記載の成分量に従い、80℃にセットしたTHERMO ACE(IT−11C型)を用いてビーカー内で硬化油を熱溶融させ、粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した化合物1を撹拌しながら添加することで分散させ、熱溶融物を得た。
次に、撹拌造粒機(メカノミル、岡田精工、MM−10N型)にマンニトールを投入し、撹拌しながら前工程で得られた熱溶融物を滴下し造粒物を得た。得られた造粒物を篩過し、得られた篩過品を主薬顆粒とした。
さらに、得られた主薬顆粒10gと、結晶セルロース90gを、乳鉢中で混合し、顆粒を得た。
(比較例6)
【0086】
表5記載の成分量に従い、乳鉢中でセチルアルコール、マンニトール、結晶セルロースと粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した化合物1を混合した。
(比較例7)
【0087】
表5記載の成分量に従い、乳鉢中で硬化油、マンニトール、結晶セルロースと粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した化合物1を混合した。
(比較例8)
【0088】
表5記載の成分量に従い、セチルアルコールの代わりにショ糖脂肪酸エステルを用い、実施例7と同様の方法により顆粒の作製を試みた。
(比較例9)
【0089】
表5記載の成分量に従い、セチルアルコールの代わりにステアリン酸を用い、実施例7と同様の方法により顆粒を作製した。ここでは撹拌造粒機(メカノミル、岡田精工、MM−10N型)を使用した。
(比較例10)
【0090】
表5記載の成分量に従い、セチルアルコールの代わりにステアリルアミンを用い、実施例7と同様の方法により顆粒の作製を試みた。
(比較例11)
【0091】
表5記載の成分量に従い、セチルアルコールの代わりにポリエチレングリコール6000Pを用い、実施例7と同様の方法により顆粒を作製した。
(比較例12)
【0092】
表5記載の成分量に従い、乳鉢中でポリエチレングリコール6000P、マンニトール、結晶セルロースと粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した化合物1を混合した。
【0093】
【表5】

【0094】
(試験例2)
実施例7〜8、比較例6〜7、比較例9及び比較例11〜12の顆粒をガラス瓶に充填し、試験例1と同様な方法で安定性試験を行った。安定性試験の結果を表6に示す。液体クロマトグラフィーによる試験条件も、試験例1と同様である。
【0095】
【表6】

【0096】
表6に示す試験結果から明らかなように、セチルアルコールまたは硬化油を用いた場合も、熱溶融させ、化合物1を添加して得た主薬顆粒と結晶セルロースを乳鉢混合した顆粒(実施例7、8)の方が、単に全成分を乳鉢混合した顆粒(比較例6、7)に比べ、安定であった。
【0097】
一方、ポリエチレングリコール6000Pを用いた場合には、熱溶融させ、化合物1を添加して得た主薬顆粒と結晶セルロースを乳鉢混合した顆粒(比較例11)は安定ではなく、単に全成分を乳鉢混合した顆粒(比較例12)と比較しても、安定化作用が得られていないことが分かった。
【0098】
また、セチルアルコールの代わりにステアリン酸を用いた場合には、分解生成物の含量が増え、安定化効果は見られなかった(比較例9)。
【0099】
なお、ショ糖脂肪酸エステルを用いた場合(比較例8)は、その粘度が高いことから、溶融させた状態で賦形剤に滴下すること自体が困難だった。ステアリルアミンを用いた場合(比較例10)は、分散液を滴下したものの、生成物がクリーム状となり、顆粒を製造することはできなかった。
【実施例9】
【0100】
表7記載の成分量に従い、化合物1、ステアリルアルコール及びマンニトールの配合比を1:2:7に変更し、実施例1と同様の方法により顆粒を作製した。
【実施例10】
【0101】
表7記載の成分量に従い、化合物1、ステアリルアルコール及びマンニトールの配合比を1:3:6に変更し、実施例1と同様の方法により顆粒を作製した。
【実施例11】
【0102】
表7記載の成分量に従い、化合物1、ステアリルアルコール及びマンニトールの配合比を1:5:4に変更し、実施例1と同様の方法により顆粒を作製した。
【実施例12】
【0103】
表7記載の成分量に従い、化合物1、ステアリルアルコール及びマンニトールの配合比を1:6:3に変更し、実施例1と同様の方法により顆粒を作製した。
(比較例12)
【0104】
表7記載の成分量に従い、乳鉢中でステアリルアルコール、マンニトール、結晶セルロースと粉砕機(不二パウダル、KIIG−1S)を用いて粉砕した化合物1を乳鉢混合した。
(比較例13)
【0105】
表7記載の成分量に従い、化合物1及びステアリルアルコールを用い、実施例1と同様の方法により顆粒の作製を試みた。
【0106】
【表7】

【0107】
(試験例3)
実施例9〜12及び比較例12の顆粒をガラス瓶に充填し、試験例1と同様な方法で安定性試験を行った。安定性試験の結果を表8に示す。液体クロマトグラフィーによる試験条件も、試験例1と同様である。
【0108】
【表8】

【0109】
表8に示すように、実施例1における化合物1、ステアリルアルコール及びマンニトールの配合比を変更して得た主薬顆粒と結晶セルロースを乳鉢混合した顆粒(実施例9〜12)も乳鉢中でステアリルアルコール、マンニトール、結晶セルロースと化合物1を乳鉢混合した顆粒(比較例12)に比べ、安定であった。
【0110】
なお、比較例13のように、マンニトールを使用しない場合では、分散液を滴下する際に固化せず、撹拌造粒機の円筒槽内部の回転軸部に分散液が侵入し、回転刃の回転を停止させるため、顆粒の製造は困難であった。
【0111】
以上のように、本件発明の製造方法で製造された医薬組成物は、化合物の分解が著しく抑制されており、安定化されていることが分かる。さらに、本発明の製造方法は、特許文献12〜13、16〜18に記載の方法と違い、噴霧乾燥機器や、転動造粒装置など、特別な装置を用いることなく、さらなる造粒操作も行うことなく主薬顆粒が得られることから、より簡便に安定化製剤を製造することが可能な製法である。
【0112】
すなわち、本件発明によれば、医薬組成物中で不安定化する化合物について、化合物の分解が抑制され且つ簡便に製造できる医薬組成物製造方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本件発明により、医薬組成物中で不安定化する化合物について、化合物の分解が抑制され且つ簡便に製造できる医薬組成物およびその製造方法を提供することができ、産業上有用である。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した中性低融点油脂状物質または硬化油に活性化合物を分散し、その分散液を賦形剤に滴下することにより得られる主薬顆粒を用いて製造される医薬品組成物。
【請求項2】
融点における粘度が5〜5000mPa・Sである中性低融点油脂状物、または硬化油を用いて製造された、請求項1に記載の医薬品組成物。
【請求項3】
中性低融点油脂状物質として高級アルコールを用いて製造された、請求項1から2の何れかに記載の医薬品組成物。
【請求項4】
中性低融点油脂状物質としてステアリルアルコールまたはセチルアルコールを用いて製造された、請求項1から3の何れかに記載の医薬品組成物。
【請求項5】
賦形剤が乳糖、結晶セルロースまたは糖アルコールである、請求項1から4の何れかに記載の医薬品組成物。
【請求項6】
賦形剤が糖アルコールである、請求項1から5の何れかに記載の医薬品組成物。
【請求項7】
糖アルコールがマンニトール、エリスリトール、キシリトールまたはソルビトールである、請求項6記載の医薬品組成物。
【請求項8】
活性化合物が、分子内にアミノ基を有するN−アシルピロリジンカルボニトリル誘導体である、請求項1から7の何れかに記載の医薬品組成物。
【請求項9】
活性化合物が一般式(1):
【化1】

(式中、AはCH、CHFまたはCFを示し;
は置換されてもよいC1〜C6のアルキル基、置換されてもよいC3〜C8のシクロアルキル基、置換されてもよいアリールメチル基、置換されてもよいアリールエチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環、または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し;
nは1または2を示す。)
で示されるアミノ−N−アセチルピロリジンカルボキサミド誘導体である、請求項1から8の何れかに記載の医薬品組成物。
【請求項10】
分子内にアミノ基を有するN−アシルピロリジンカルボニトリル誘導体が、vildagliptin、saxagliptin、melogliptin、denagliptin、TS−021、または、(2S,4S)−1−[[N−(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル、である請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
中性低融点油脂状物質として高級アルコールを使用する場合において、高級アルコールと糖アルコールの重量比が2対7から6対3の範囲であることを特徴とする請求項6から7の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
溶融した中性低融点油脂状物質または硬化油に活性化合物を分散し、その分散液を賦形剤に滴下することにより製造された主薬顆粒を、さらなる造粒操作を行うことなく、打錠して得られた錠剤。
【請求項13】
溶融した中性低融点油脂状物質または硬化油に活性化合物を分散し、その分散液を賦形剤に滴下することにより主薬顆粒を製造し、得られた主薬顆粒を用いて医薬品組成物を得る方法。
【請求項14】
溶融した中性低融点油脂状物質または硬化油に活性化合物を分散し、その分散液を賦形剤に滴下することにより主薬顆粒を製造し、得られた主薬顆粒を用いて医薬品組成物を得ることにより、主薬の分解を抑制する方法。




【公開番号】特開2011−157308(P2011−157308A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20907(P2010−20907)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】