説明

安定液剤

本発明は、水分含量10〜80%の溶液中に水溶性セルロース誘導体を含む被覆剤で被覆された有効成分を配合してなる液剤に関する。 当該液剤は、水に不安定な有効成分を液剤中で安定に保持でき、併せて不快な味や臭いをマスキングすることができ、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等として用いられる安定な液剤及び液剤中の有効成分の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液剤は、医療・食品分野において服用時のコンプライアンスを上げ、吸収が早い剤形として使用されている。
【0003】
内服用液剤は、通常、生薬類、水溶性薬物等を有効成分とし、必要に応じて、矯味剤、着色剤、着香剤等の水溶性添加物を水に溶解して調製される。斯かる内服用液剤は、一般的に、糖を高濃度含有し濃稠なシロップ剤と、糖濃度が低いいわゆるドリンク剤等の内服液剤に分類されるが、いずれの場合も約30%〜90%程度の水分を含んでおり、水に不安定な成分では保存安定性を確保できないものがある。また水溶液中に溶解している成分は分子状態で分散しており、他の成分分子の影響を受けて変化し、液剤の品質低下の原因となっている。さらに、液剤の場合、固形剤に比べより味を強く感じるため、苦みや辛みを持つ成分を液剤にするには、矯味剤や甘味剤等の多くの添加剤が必要になったり、服用には適さないため液剤化が不可能なこともある。
【0004】
従来、水に不安定な成分や、不快な風味を持つ成分を液剤に添加するには、例えば、生薬エキス含有液剤のpHを2.2〜3.8に調整して安定化を図る技術(例えば、特許文献1参照)やイオン強度を調整したり、シクロデキストリンを安定化剤としてビタミンB1含有液剤に配合する技術(例えば、特許文献2参照)が知られている。また、有効成分をW/O/Wエマルジョンとし、安定性を確保する方法(例えば、非特許文献1参照)も検討されているが、液剤としての物理化学的安定性や調製条件が非常に煩雑であるなどの問題があった。
【0005】
一方、水溶性セルロース誘導体は、錠剤を製造する場合のコーティング剤や結合剤として汎用されているが、高温下にて水に不溶なゲルを形成するため、食品中において変化しやすい香料等の保護剤としても用いられている。例えば、缶入りスープにおいて、加熱殺菌中に変化又は消失する性質を有する香料等の保護(例えば、特許文献3参照)や、あるいは可食性の水溶性添加物または可食性の高分子物質とともに香料を被覆してコーティング粉末とし、加熱調理食品、焼き菓子等の製造中の加熱処理に対して、香料の消失を保護する(例えば、特許文献4参照)等に用いられている。
【0006】
しかしながら、これらの技術では、有効成分の安定性や不快な味を解消するのには十分でなく、有効成分の安定性、特に水分が存在する状態における長期間の保存安定性に優れ、かつ不快な味や臭い等をマスキングすることができ、さらには、服用後に消化管内で速やかに吸収可能な液剤の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2000−38345号公報
【特許文献2】特開2003−146880号公報
【特許文献3】米国特許第6056992号明細書
【特許文献4】特開2002−320454号公報
【非特許文献1】M.Gallarate、他3名、「On the stability of ascorbic acid in emulsified systems for topical and cosmetic use」International Journal of Pharmaceutics、(1999)、188、p.233−241
【発明の開示】
【0007】
本発明は、液剤中における有効成分の保存安定性が向上し、不快な味や臭い等がマスキングされた液剤組成物を提供すること、また水溶液中における有効成分の安定化方法を提供することをその目的とする。
【0008】
本発明者らは、斯かる実情に鑑み、液剤中の有効成分と水溶液との接触を抑制させる方法について鋭意研究を重ねた結果、有効成分を水溶性セルロース誘導体で被覆し、これを水分含量10〜80%の溶液中に配合した場合に、有効成分が安定に保持でき、併せて不快な味や臭いがマスキングできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、水分含量10〜80%の溶液中に水溶性セルロース誘導体を含む被覆剤で被覆された有効成分を配合してなる液剤を提供するものである。
【0010】
また本発明は、該液剤が充填されたカプセル剤を提供するものである。
【0011】
更に本発明は、水分含量10〜80%の溶液中に水溶性セルロース誘導体を含む被覆剤で被覆された有効成分を配合することを特徴とする液剤中における有効成分の安定化方法を提供するものである。
【0012】
本発明によれば、水に不安定な有効成分を液剤中で安定に保持でき、併せて不快な味や臭いをマスキングすることができ、服用後は有効成分が消化管内において速やかに溶解する液剤を提供することができる。また、本発明の液剤は、カプセルに充填することも可能であり、これによりさらにコンプライアンスを上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[図1]実施例および比較例にて調製した液剤中の被覆された組成物中の有効成分の溶出率を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の液剤は、水分含量10〜80%の溶液中に水溶性セルロース誘導体を含む被覆剤で被覆された有効成分を配合してなるものであり、本発明の溶液中での有効成分の安定化方法は、水分含量10〜80%の溶液中に水溶性セルロース誘導体を含む被覆剤で被覆された有効成分を配合することを特徴とするものである。
本発明液剤における水分含量は、10〜80%であるが、有効成分の安定性の点から10〜40%が好ましく、さらに10〜30%であるのが好ましい。
水分含量が80%を超えた場合、被覆が溶解して安定性が損なわれることから好ましくない。一方、水分含量が10%を下回るものは粘度が著しく上昇し、液性としての流動性を持たないため、服用が困難となり、好ましくない。
本発明の液剤は、さらに水分活性値を0.50〜0.90、好ましくは0.65〜0.90に調整することでより流動性の高い液剤とすることができる。
【0015】
被覆剤によって被覆される有効成分は、特に限定されるものではなく、例えば薬物、天然物、食品、生薬エキス、発酵物等の任意の化合物又は組成物のいずれか1種又は2種以上を含有するものである。好ましくは、有効成分が水に不安定な物質や他の成分と相互作用を起こす物質あるいは苦味、辛味、渋み等の不快な味や不快な臭いを有する物質を含有するものである。更に好ましくは、有効成分が水に不安定な物質を含むものである。
【0016】
有効成分の具体例としては、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ナイアシン、ビタミンB6類、ビタミンB12類、ビタミンC類、ビタミンE類、パントテン酸、ビオチン、葉酸類、パントテニールアルコール等のビタミン類、薬用ニンジン、ニンニク、カンゾウ、シャクヤク、イカリソウ等の生薬類、ブルーベリー、緑茶、胡椒、唐辛子、薄荷等のハーブ類、アスピリン、プロカイン、アミノ安息香酸エチル、アトロピン等のカルボン酸エステル類、ペニシリン類、セファロスポリン類、スルフィド類等が挙げられるが、好ましくは水に不安定なビタミンB1類、ビタミンE類、ビタミンB12類、ビタミンC類、アスピリン、スルピリン、プロカイン、クロラムフェニコール、スルピリン、ベンジルペニシリン、ニトロフラントイン、シタラビン等である。また有効成分が他の成分と相互作用を起こすものについては、相互作用を起こす成分のどちらか、又はそれぞれを別々に被覆することができる。
【0017】
また、上記有効成分と共に、必要に応じて他の成分、例えば食品、医薬品に一般的に用いることができる甘味剤、酸味剤、安定化剤、着色剤、着香剤等を被覆することができる。
【0018】
上記の有効成分を被覆する被覆剤は、水溶性セルロース誘導体を含むものであるが、これは、水溶性セルロース誘導体を水、アルコール又は含水アルコール等に溶解して調製することができる。この場合、水溶性セルロース誘導体の添加量は、例えば、被覆する有効成分(顆粒状、錠剤状、粉末状)に対して、8〜30重量%であり、被覆剤には、製剤技術において一般的に用いられる添加剤、例えば可塑剤、着色剤、ゲル化剤、ゲル化補助剤、乳化剤、分散剤、保存剤等を加えることができる。
【0019】
本発明おいて用いられる水溶性セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の胃溶性セルロース誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース等の腸溶性セルロース誘導体が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができるが、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースである。
【0020】
可塑剤としてポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、クエン酸トリエチル、トリアセチン、グリセリン、D−ソルビトール、ポリエチレングリコール、アセチル化モノグリセライド、有機酸(例えばクエン酸、リンゴ酸、乳酸など)、炭酸カルシウムや界面活性剤が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、好ましくはクエン酸トリエチル、クエン酸、炭酸カルシウムのいずれか1種又は2種以上である。
【0021】
着色剤としては、カラメル、銅クロロフィリンナトリウム、リン酸リボフラビンナトリウム、インジゴカルミン、ブリリアントブルー、タートラジン、サンセットイエロー、ニューコクシン、アマランス、エリスロシン、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
ゲル化剤としては、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、アラビアガム、グァーガム、タマリンド種子多糖、ペクチン、カードラン、ゼラチン、ファーセレラン、寒天等が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、好ましくはカラギーナンである。また、ゲル化剤の添加量は、被覆剤の水溶液に対して、0.1〜5.0重量%が好ましい。
【0023】
ゲル化補助剤としては、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸カリウム、クエン酸カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム等のカルシウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、またはマグネシウムイオンを与える水溶性化合物、クエン酸又はクエン酸ナトリウム等の有機酸及びその水溶性塩が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ゲル化補助剤の添加量は、被覆剤の水溶液に対して、0.01〜1.0重量%が好ましい。
【0024】
斯かる被覆剤を用いた有効成分の被覆方法としては、一般的なコーティング方法でよく、例えばスプレードライ、流動層コーティング法、遠心力コーティング法等を用いることができる。斯くして被覆された有効成分は、錠剤状、顆粒状、粉末状のいずれであっても良いが、好ましくは分散性のよい粉末状のものである。また、被覆剤からなるカプセルに有効成分が封入されている状態であっても良い。
【0025】
斯くして調製された有効成分の被覆物を、水分含量10〜80%の溶液に配合することにより本発明の液剤を調製することすることができる。当該液剤においては、有効成分(被覆物)は液剤中に不溶化されてなるが、その状態は、分散状態、懸濁状態、混合状態のいずれであってもよい。
【0026】
本発明の液剤には、被覆された有効成分とは別に、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等に使用できる各種薬効成分を配合することが可能である。このような成分としては、例えば、薬用ニンジン、ニンニク、エゾウコギ、トウキ、ジオウ、チンピ、トシシ、ゴミシ、バクモンドウ等の生薬水性エキス剤、葛根湯、麦門冬湯、小青龍湯、黄連解毒湯、四物湯、芍薬甘草湯等の漢方水性エキス剤、ブルーベリー、緑茶、ハーブ類、キノコ類、マムシ等の動植物の水性エキス、穀物、植物、海産物を麹菌、紅麹菌、乳酸菌、酢酸菌、納豆菌、酵母等で発酵させた発酵物の水性エキス、ビタミン類、臭化水素酸デキストロメトルファン、アセトアミノフェン、マレイン酸クロルフェニラミン、グアヤコールスルホン酸カリウム、カフェイン、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸メチルエフェドリン、水溶性アズレン等の水溶液、アルジオキサ、水酸化マグネシウム、スクラルファート,メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト等の懸濁水溶液等が挙げられる。なお、ここでいう水性エキスには、生薬、動植物、発酵物等を水又は含水アルコール等で抽出した抽出物であって、好ましくは、水溶液として安定に存在し、液体のまま製剤化可能な生薬水性エキスや動植物水性エキスである。
【0027】
また上記液剤には、必要に応じて他の成分、例えば医薬品、食品に一般的に用いることができる甘味剤、酸味剤、安定化剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤、着色剤、着香剤等を配合することができる。
【0028】
ここで甘味剤としては、ショ糖、乳糖、果糖、ブトウ糖等の糖類もしくはソルビトール、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、トレハロース等の糖アルコール若しくはグリチルリチン、アスパルテーム、ステビア等が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
酸味剤としては、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、乳酸等が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
安定化剤としては、アスコルビン酸、エリソルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム等の抗酸化剤、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等の分散剤、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の界面活性剤類、シクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン等のシクロデキストリン類、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の電解質類が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
増粘剤としては、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、トラガント末、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の高分子が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
pH調整剤としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、乳酸等の無機酸及び有機酸又はこれらの塩や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
防腐剤としては、安息香酸類、ソルビン酸類、パラオキシ安息香酸エステル類、サリチル酸類が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
着色剤としては、カラメル、銅クロロフィリンナトリウム、リン酸リボフラビンナトリウム、インジゴカルミン、ブリリアントブルー、タートラジン、サンセットイエロー、ニューコクシン、アマランス、エリスロシン等が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
着香剤としては、ウイキョウ油、オレンジ油、ケイヒ油、トウヒ油、ハッカ油、バニリン、ユーカリ油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を原料として調製された天然香料や調合香料を用いることもできる。
【0036】
本発明の液剤は、適量をカプセルに充填しカプセル剤とすることもできる。この場合には、有効成分を被覆した組成物は、予め液剤に混合された状態でもよく、カプセルに充填された状態でもよい。カプセル剤は、水溶性成分を充填可能な軟カプセル剤や硬カプセル剤として調製することができるが、好ましくは水溶性セルロース誘導体を含む硬カプセル剤である。
【0037】
液剤の包装形態は、一般的に用いられている形態、例えば、ビン充填、アルミ分包、PTP包装等が挙げられる。またカプセル剤は、従来用いられている油状物質用の液状薬物充填機、顆粒充填機を用いて調製することができる。
【0038】
本発明の液剤の好ましい態様としては、例えば、ビタミン類をヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む被覆剤にて被覆して顆粒状又は粉末状とし、これらを生薬エキスを含む水分含量10〜40%、水分活性値0.50〜0.90の液剤に添加したものであり、ビン充填、アルミ分包またはPTP包装されたものが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
塩酸チアミン 1000g
アビセル 1925g
乳糖 1300g
L−HPC 650g
HPC−SL 100g
ステアリン酸マグネシウム 25g
上記の処方により直径6mmの被覆されていない組成物を調製し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース8%水溶液を噴霧乾燥し、該組成物重量の8%に相当する量を被覆させた。本被覆組成物を水分含量31%、水分活性0.670の生薬エキスに添加し、ガラスビンに充填した後、密栓し、40℃で1カ月間保存した。保存サンプル中の塩酸チアミン含量をHPLCで測定した結果、対初期値101.1%であり、低下は全く認められなかった。また被覆は溶解しておらず、液剤の性状に変化は認められなかった。
【0041】
[実施例2]
実施例1の処方の被覆されていない組成物に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース5.6%およびポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート2.4%含有水溶液を噴霧乾燥し、該組成物重量の8%に相当する量を被覆させた。本被覆組成物を水分含量31%、水分活性0.670の生薬エキスに添加し、ガラスビンに充填した後、密栓し、40℃で1カ月間保存した。保存サンプル中の塩酸チアミン含量をHPLCで測定した結果、対初期値100.0%であり、低下は全く認められなかった。また、被覆は溶解しておらず、液剤の性状に変化は認められなかった。
【0042】
[実施例3]
塩酸チアミン 150g
アビセル 600g
乳糖 495g
L−HPC 225g
HPC−SL 30g
上記の処方により混合・練合して、押出し造粒した直径1.2mmの顆粒状の組成物に、10%エタノールに溶解したヒドロキシプロピルメチルセルロース5%液を噴霧乾燥し、該組成物重量の30%に相当する量を被覆させた。該被覆組成物を水分含量31%、水分活性0.670の生薬エキスに添加し、ガラスビンに充填した後、密栓し、40℃で3カ月間保存した。保存サンプル中の塩酸チアミン含量をHPLCで測定した結果、対初期値83.7%であった。また、被覆は溶解しておらず、液剤の性状に変化は認められなかった。
【0043】
[実施例4]
塩酸チアミン 300g
アビセル 585g
乳糖 390g
L−HPC 195g
HPC−SL 30g
上記の処方により混合・練合して、押出し造粒した直径0.5mmの顆粒状の組成物に、10%エタノールに溶解したヒドロキシプロピルメチルセルロース8%及びクエン酸トリエチル1%含有溶液を噴霧乾燥し、該組成物重量の30%に相当する量を被覆させ被覆組成物を得た。該被覆組成物を水分含量31%、水分活性0.670の生薬エキスに添加し、ガラスビンに充填した後、密栓し、40℃で3カ月間保存した。保存サンプル中の塩酸チアミン含量をHPLCで測定した結果、対初期値81.5%であった。また、被覆剤は溶解しておらず、液剤の性状に変化は認められなかった。
【0044】
[実施例5]
実施例4の処方により混合・練合して、押出し造粒した直径0.5mmの顆粒状の組成物に、水に溶解したヒドロキシプロピルメチルセルロース8%、クエン酸1.8%、炭酸カルシウム0.7%含有溶液を噴霧乾燥し、該組成物重量の20%に相当する量を被覆させ被覆組成物を得た。該被覆組成物を水分含量33%、水分活性0.685の生薬エキスに添加し、ガラスビンに充填した後、密栓し、40℃で1カ月間保存した。保存サンプル中の塩酸チアミン含量をHPLCで測定した結果、対初期値96.0%であった。また、被覆剤は溶解しておらず、液剤の性状に変化は認められなかった。
【0045】
[実施例6]
塩酸チアミンをヒドロキシプロピルメチルセルロース製2号カプセルに充填し、接合部をヒドロキシプロピルメチルセルロース50%エタノール溶液でシールした後、水分含量30%、水分活性0.658の生薬エキスに浸漬させ、ガラスビンに充填した後、密栓し、40℃で3カ月間保存した。保存カプセル中の塩酸チアミン含量をHPLCで測定した結果、対初期値98.7%であった。また、カプセル剤は溶解しておらず、液剤の性状に変化は認められなかった。
【0046】
比較例1
実施例1で調製した組成物を被覆しない状態で、水分含量31%、水分活性0.670の生薬エキスに添加し、ガラスビンに充填した後、密栓し、40℃で1カ月間保存した。保存サンプル中の塩酸チアミン含量をHPLCで測定した結果、対初期値64.9%であった。このとき、組成物は崩壊し、形状を維持していなかった。
【0047】
比較例2
実施例3の処方で調製した直径0.5mmの被覆されていない顆粒状の組成物を水分含量31%、水分活性0.670の生薬エキスに添加し、ガラスビンに充填した後、密栓し、40℃で3カ月間保存した。保存サンプル中の塩酸チアミン含量をHPLCで測定した結果、対初期値38.4%であった。このとき、組成物は崩壊し、微粒子となって分散していた。
【0048】
[実施例7]
本発明液剤に配合された水溶性セルロース誘導体で被覆された組成物中の有効成分の溶解性を確認した。すなわち、実施例1、2、3、4、5にて調製した被覆された組成物および比較例1、2で調製した被覆されていない組成物について、溶媒を水、温度37℃の条件下、溶出試験を行った。その結果、図1に示すように被覆された組成物は、ラグタイムを持つものの15分以内に全て溶解した。
このことにより、本発明液剤において、有効成分は摂取時には速やかに溶解することが判明した。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含量10〜80%の溶液中に水溶性セルロース誘導体を含む被覆剤で被覆された有効成分を配合してなる液剤。
【請求項2】
水分活性値が0.50〜0.90である請求項1記載の液剤。
【請求項3】
水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選ばれる1種又は2種以上のものである請求項1又は2記載の液剤。
【請求項4】
有効成分が水に不安定な物質を含むものである請求項1〜3のいずれか1項記載の液剤。
【請求項5】
溶液中に生薬水性エキス及び/又は動植物水性エキスを含むものである請求項1〜4のいずれか1項記載の液剤。
【請求項6】
請求項1〜5記載の液剤が充填されたカプセル剤。
【請求項7】
カプセルが硬カプセルである請求項6記載のカプセル剤。
【請求項8】
水分含量10〜80%の溶液中に水溶性セルロース誘導体を含む被覆剤で被覆された有効成分を配合することを特徴とする液剤中における有効成分の安定化方法。
【請求項9】
液剤の水分活性値が0.50〜0.90である請求項8記載の方法。
【請求項10】
水溶性セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースからなる群から選ばれる1種又は2種以上のものである請求項8又は9記載の方法。

【国際公開番号】WO2005/000358
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511049(P2005−511049)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008990
【国際出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000250100)湧永製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】