完全ヒト抗VEGF抗体および使用方法
血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰発現は、異常な脈管形成を伴うさまざまな状態と関係している。本明細書中で開示されるものは、ヒトVEGFに特異的に結合し、そして、VEGF−R1およびVEGF−R2に結合するVEGFを阻害し、したがって、VEGFシグナル伝達を阻害する、完全ヒト抗体である。VEGFシグナル伝達を阻害するそれらの能力に基づいて、本明細書中で開示される抗体は、生体内および試験管内の両方で、脈管形成および脈管形成を伴う状態を処置するのに用いられうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連分野)
本出願は、2006年10月20日に出願された米国仮出願番号第60/853,260号(出典明示により完全に本明細書の一部とされる)についての優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、特に、網膜増殖疾患および腫瘍形成時における内皮細胞活性化、増殖および生存に関与する、脈管形成蛋白質の主要ファミリーである。VEGFは、VEGF−PDGF(血小板由来増殖因子)超遺伝子ファミリーに属しており、脈管内皮細胞とリンパ内皮細胞上に発現される受容体に結合するスモール糖タンパク質二量体である。VEGFファミリーには、現在、7つの既知リガンド:VEGF−A(VEGF)、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E(ウイルス由来)および胎盤増殖(PIGF)−1と−2がある。これらのVEGFリガンドは、それぞれが受容体チロシンキナーゼ活性を備えている、3つの既知のVEGF受容体(VEGF−R)の1つまたは複数と結合することによって、それらの効果をメディエートする。VEGF−R1(Flt−1)は、内皮細胞と単球上で主に発現され、VEGFとVEGF−Bに結合して、内皮および単球遊走をメディエートするようである。VEGF−R2(すなわち、ヒトKDRまたはネズミFlk−1)は、主に内皮細胞上に発現され、VEGF(および、VEGF−CおよびVEGF−Dの特定の断片)に選択性があり、VEGF誘導性内皮細胞増殖、生存および遊走、ならびに血管透過性をメディエートする。VEGF−R3(Flt−4)は、主にリンパ内皮細胞上に発現され、VEGF−CとVEGF−Dに結合してリンパ管発生を促進する。VEGF−R1、−R2、および−R3は、それぞれ、いくつかの腫瘍細胞上に発現される。VEGFのVEGF受容体への結合は、受容体の二量体化を引き起こし、そして後の受容体活性化およびシグナル伝達を導く。VEGF−R2に結合するVEGFは、脈管形成を促進する際に優性となるシグナル伝達経路を開始する。この経路は、細胞内シグナル伝達の後の誘導を伴う、受容体活性化と関係する。この場合の受容体活性化は、3つの基本的な事象:(i)VEGF−R2に対するVEGFの結合、(ii)受容体の二量体化、そして(iii)受容体チロシンキナーゼによる受容体の自己リン酸化(それによる、活性化)、を必然的に伴う。細胞内メッセンジャー、例えば、ホスホリパーゼCおよびホスファチジルイノシトール−3−キナーゼは、自己リン酸化型のVEGF−R2と直接結合し、そして、その受容体チロシンキナーゼによってリン酸化され、その後、それが、最終的に細胞増殖、遊走および生存(抗−アポトーシス)を促進し、そして血管透過性を増大させる核シグナルに至る、シグナル伝達事象の細胞内カスケードを誘発する。
【0003】
異常脈管形成は、癌を含む、さまざまな疾患状態と関係する(Holash 2002)。VEGF経路は、正常な脈管発生と様々な疾患に付随する異常な脈管形成の両方に役割を果たすことが実証された、唯一のシグナル伝達経路である(Erikkson 1999; Ferrara 1999; Yancopoulos 2000)。VEGFは、脈管血管内皮細胞増殖を促進し、血管透過性を増大させる(Ferrara 2004)。
【0004】
先行研究は、大多数の腫瘍型における高いVEGF発現レベルを明らかにした(Berkman 1993; Brown 1993; Brown 1995; Dvorak 1995; Mattern 1996)。研究は、眼性脈管形成疾患、例えば湿潤型AMDを患う被験者における増大したVEGFレベルも明らかにした。湿潤型AMDは、AMD疾患全体の約10%を占めるだけであるが、AMDに起因する失明の約90%を引き起こす。湿潤型AMDは、脈絡膜新生血管(CNV)、網膜の網膜色素上皮層下の異常な血管の発生によって特徴づけられる。VEGF−Aは、これらの脈管形成において主要な役割を果たすと考えられており、それは、斑の下に滲み出し、レチナール歪曲および視力悪化を引き起こす。
【0005】
VEGFとその受容体との相互作用を阻害する、またはVEGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害するいくつかの分子が開発され、そして臨床開発のさまざまなステージにある。例えば、BAY 43−9006(Sorafenib, Bayer)、SU11248(Sunitinib)およびバタラニブ(Novartis)は、潜在的な癌治療として開発されたVEGF−R2キナーゼ阻害剤である。VEGF−TRAP(Regeneron, Sanofi-Aventis)は、VEGF−R1の細胞外ドメインとVEGFと高い結合能を有するVEGF−R2のハイブリッドである(Holash 2002; Dupont 2005)。VEGF−TRAPは、現在、固形腫瘍の処置に関して臨床試験中である。抗体も、VEGF経路の阻害剤として使用するために広く開発されている。例えば、IMC-1C11(Imclone)は、VEGF−R2と結合するキメラ・モノクローナル抗体である(Hunt 2001)。転移結腸直腸癌腫の処置におけるIMC−1C11の効果を決定するための、臨床研究が、現在行われている。CDP−791(Imclone)は、VEGF−R2に結合するPEG化されたヒト化Fabである。IMC−1121B(Imclone)は、VEGF−R2と高親和性でもって結合し、そしてVEGFとVEGF−R2との相互作用を阻害する、完全ヒト・モノクローナル抗体である(Miao, H. Q.ら、2005. Biochem Biophys Res Commun 345:438-445)。IMC−18F1(Imclone)は、VEGF−R1と高親和性でもって結合し、そしてVEGFとVEGF−R1との相互作用をブロックする、完全ヒト・モノクローナル抗体である。2C3(Peregrine)は、VEGFと結合し、そしてVEGFとVEGF−R2(VEGF−R1ではなく)と結合をブロックする、マウス抗体である。ラニビズマブ(Ranibizumab)(Lucentis(登録商標), Genentech)は、湿潤型の急性黄斑変性(AMD)の処置に関して最近承認された、ベバシズマブから誘導された、ヒト化Fabである(Michels 2004; Rosenfeld 2005)。
【0006】
最も一般に用いられている、VEGFを標的とする生物学的治療は、ヒト化IgGIモノクローナル抗体、ベバシズマブである(別名、アバスチン(Avastin)(登録商標)、Genentech;また、BM−1とも称される)。ベバシズマブは、マウス・モノクローナル抗体A.4.6.1をヒト化することによって開発され、そして、それは、約93%のヒト配列と7%のネズミ配列を含む(Presta 1997; Ferrara 2004)。ベバシズマブは、約500pMの親和性でもってVEGFと結合し、VEGFのVEGF−R1とVEGF−R2に対する結合を阻害する。ヒトにおけるベバシズマブの消失半減期は、17日〜21日である(Ferrara 2004)。ベバシズマブは、転移結腸直腸癌の処置に関して承認されている(Presta 1997; Rosenfeld 2005)。研究は、ベバシズマブが血管新生AMDの処置でも有用でありうることを示唆する(Michels 2005)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Holash, J.ら、2002. Proc Natl Acad Sci USA 99:11393-11398
【非特許文献2】Erikkson, U., Alitalo, K. 1999. Curr Top Microbiol Immunol 237:41-57
【非特許文献3】Ferrara, N. 1999. Curr Top Microbiol Immunol 237:1-30
【非特許文献4】Yancopoulos, G.D.ら、2000. Nature (London)407:242-248
【非特許文献5】Ferrara, N.ら、2004. Nat Rev Drug Discov 3:391-395
【非特許文献6】Berkman, R.A.ら、1993. J Clin Invest 91:153-159
【非特許文献7】Brown, L.F.ら、1993. Cancer Res 53:4727-4735.
【非特許文献8】Brown, L.F.ら、1995. Human Pathol 26:86-91
【非特許文献9】Dvorak, H.F.ら、1995. Am J Pathol 146:1029-1039
【非特許文献10】Mattern, J., Koomaqi, R., Volm, M. 1996. Brit J Cancer 73:931-934
【非特許文献11】Dupont, J.ら、2005. Proc Am Soc Clin Oncol 23:199
【非特許文献12】Hunt, S. 2001. Curr Opin Mol Ther 3:418-424
【非特許文献13】Miao, H. Q.ら、2005. Biochem Biophys Res Commun 345:438-445
【非特許文献14】Michels, S., Rosenfeld, P.J. 2004. Retinal Physician 1:16-22
【非特許文献15】Rosenfeld, P.J., Moshfeghi, A.A., Puliafito, C.A. 2005. Ophthalmic Surg Lasers Imaging 36:331-335
【非特許文献16】Presta, L.G.ら、1997. Cancer Res 57:4593-4599
【非特許文献17】Michels, S.ら、2005. Opthamology 112:1035-1047
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
VEGF経路の阻害のために開発された分子の多様性にもかかわらず、改善された結合特徴および治療プロフィールを有するさらなる分子の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、VEGFに結合してVEGF経路を阻害する、完全ヒト抗体を提供する。これらの抗体は完全ヒト抗体であるため、それらは、以前に開発されたヒト以外の抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体に付随する不都合な免疫原性がなく、治療薬として投与することができる。
【0010】
特定の実施形態において、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体が、提供される。特定の他の実施形態において、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体が、提供される。上記実施形態のいくつかにおいて、抗体は、IgG2定常領域を有する。特定の実施形態において、抗体は、<2.0nM.のKDでもってhVEGF165と結合する。特定の実施形態において、抗体は、ベバシズマブにより結合されるエピトープと重複するhVEGF165上のエピトープと結合する。特定の実施形態において、抗体は、hVEGF165のVEGF−R1およびVEGF−R2に対する結合をブロックする。
【0011】
特定の実施形態において、それを必要とする被検体に、治療上有効量の、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することによって、該被検体における脈管形成を阻害するための方法が、提供される。特定の他の実施形態において、それを必要とする被検体に、治療上有効量の、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することによって、該被検体における脈管形成を阻害するための方法が、提供される。
【0012】
特定の実施形態において、それを必要とする被検体における異常脈管形成を伴う疾患を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。特定の他の実施形態において、それを必要とする被検体における異常脈管形成を伴う疾患を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。
【0013】
特定の実施形態において、それを必要とする被検体におけるVEGFシグナル伝達と関係する炎症性疾患を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。特定の他の実施形態において、それを必要とする被検体におけるVEGFシグナル伝達と関係する炎症性疾患を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。
【0014】
特定の実施形態において、それを必要とする被検体における湿潤型の急性黄斑変性または糖尿病網膜症を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。特定の他の実施形態において、それを必要とする被検体における湿潤型の急性黄斑変性または糖尿病網膜症を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。
【0015】
特定の実施形態において、それを必要とする被検体における増大したVEGFシグナル伝達と関係する癌を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。特定の他の実施形態において、それを必要とする被検体における増大したVEGFシグナル伝達と関係する癌を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。
【0016】
特定の実施形態において、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を含むキットが、提供される。特定の他の実施形態において、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を含むキットが、提供される。
【0017】
特定の実施形態において、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、および/または配列番号:5記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが、提供される。特定の他の実施形態において、これらのポリヌクレオチドを含むベクターが、提供され、そして、特定の他の実施形態において、これらのベクターを含む宿主細胞が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】XPA.10.064およびXPA.10.072の重鎖可変領域(HCDR)および軽鎖可変領域(LCDR)を示す。
【図2】ヒトhVEGF165に対するXPA.10.064IgG2結合のビアコア分析を示す。
【図3】ヒトhVEGF165に対するXPA.10.072IgG2結合のビアコア分析を示す。
【図4】ヒトhVEGF165に対するベバシズマブ結合のビアコア分析を示す。
【図5】ベバシズマブ(BM1)、XPA.10.064およびXPA.10.072による、VEGF−R1に対するhVEGF165の結合阻害を示す。
【図6】ベバシズマブ(BM1)、XPA.10.064およびXPA.10.072による、VEGF−R2に対するhVEGF165の結合阻害を示す。
【図7】ベバシズマブ(BM1)、XPA.10.064およびXPA.10.072により結合される、hVEGF165エピトープ解析を示す。
【図8】XPA.10.064とG153−694の共局在。パネルAは、XPA.10.064での染色を示す。パネルBは、G153−694での染色を示す。パネルCは、核色素での染色を示す。パネルDは、マージした画像を示し、ここで、より強い強度(白)は共存を反映する。
【図9】XPA.10.072とG 153−694の共局在。パネルAは、XPA.10.072での染色を示す。パネルBは、G153−694での染色を示す。パネルCは、核色素での染色を示す。パネルDは、マージした画像を示し、ここで、より強い強度(白)は共存を反映する。
【図10】(A)XPA.10.064IgG2および(B)XPA.10.072IgG2によるHUVEC増殖の阻害を示す。
【図11】hVEGF165の用量滴定によるHUVECの処置は、VEGF−R2のリン酸化の増加となる。
【図12】hVEGF165に加えてベバシズマブの用量滴定によるHUVECの処置は、VEGF−R2のリン酸化の減少となる。
【図13】XPA.10.064(064)およびXPA.10.072(072)IgG2は、VEGF−R2のhVEGF165誘導性リン酸化を阻害する。
【図14】マトリゲル・プラグの視覚によるスコアリングを示す。PH07−VAL−021に関するヘモグロビン・アッセイが、プラグにおいて見られたことを捕らえて記録できなかったので、視覚によるスコアリングが開発された。
【図15】さまざまな投薬量のベバシズマブ(BM−1)、XPA.10.064(064)およびXPA.10.072(072)の存在下で脈管形成阻害のレベルを示す、マトリゲル・プラグ・アッセイ。
【図16】マトリゲル・プラグ・アッセイにより決定された、脈管形成の阻害を示す。数字は、2人の盲検式の記録者からの結果の平均である。(A)細胞なし;(B)DU145+αKLH;(C)ベバシズマブ(0.1mg/kg);(D)ベバシズマブ(1mg/kg);(E)ベバシズマブ(5mg/kg);(F)XPA.10.064(0.1mg/kg);(G)XPA.10.064(1mg/kg);(H)XPA.10.064(5mg/kg);(I)XPA.10.072(0.1mg/kg);(J)XPA.10.072(1mg/kg);(K)XPA.10.072(5mg/kg)。
【図17】XPA.10.064およびXPA.072による生体内A673腫瘍成長の阻害を示す。(1)賦形剤のみ;(2)0.5mg/kgのXPA.10.064IgG2;(3)5mg/kgのXPA.10.064IgG2;(4)0.5mg/kgのXPA.10.072IgG2;(5)5mg/kgのXPA.10.072IgG2;(6)5mg/kgのCHO.KLHIgG2;(7)0.5mg/kgのベバシズマブ;(8)5mg/kgのベバシズマブ(群8)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の以下の説明は、単に本発明のさまざまな実施形態を例示することを目的とするものである。このように、記載の特定のモディフィケーションは、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきでない。当業者であれば、さまざまな均等物、変更およびモディフィケーションが、本発明の範囲から逸脱することなくなしうることは認められよう、さらに、そのような均等な実施形態は、本明細書中に含まれるものと理解される。
【0020】
略語
以下の略語が、本明細書中で用いられる:ADCC、抗体依存性細胞障害活性;AMD、加齢性黄斑変性;CDC、補体依存性細胞毒性;CNV、脈絡膜新生血管;COPD、慢性閉塞性肺疾患;HUVEC、ヒト臍静脈内皮細胞;hVEGF、ヒトVEGF;mVEGF、ネズミVEGF;PD、薬力学;PK、薬物動力学;RA、関節リウマチ;RIA、放射性免疫沈降法;VEGF、血管内皮増殖因子;VEGF−R、血管内皮成長因子受容体;VHL、フォンヒッペル/リンダウ;X−反応性、交差反応性。
【0021】
定義
本明細書中で用いられる用語「抗体」は、特定の抗原と結合する、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または多特異的もしくは二重特異的抗体を含む、いずれかの免疫グロブリンを意味する。完全抗体は、2個の重鎖と2個の軽鎖を含む。各軽鎖は、可変領域と定常領域からなるが、各重鎖は、可変領域と第1、第2および第3の定常領域からなる。抗体は、ジスルフィド結合を介して互いに結合した2個の重鎖の第2および第3の定常領域からなる「Y」字の幹を有する、「Y」字型の形状を有する。「Y」の各腕は、単一の軽鎖の可変部分と定常領域に結合された、単一の重鎖の可変領域と第1の定常領域からなる。軽鎖および重鎖の可変領域が、抗原結合に関与する。両方の鎖の可変領域は、相補性決定領域(CDR)(LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖(L)CDR、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖(H)CDR)と呼ばれる3つの超可変ループを、一般に含む。この3つのCDRは、CDRと比べて高度に保存された、超可変ループを支持する足場を形成する、枠組み構造領域(FR)として知られる、フランキング・ストレッチ(flanking stretch)間に挿入されている。重鎖および軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与しないが、さまざまなエフェクター機能を示す。抗体は、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいて、クラス分けされる。抗体の主要なクラスは、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのクラスのいくつかは、サブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1またはlgA2に分けられる。
【0022】
本明細書中で用いられる用語「抗原結合性断片」は、免疫グロブリン断片またはその抗体断片(すなわち、免疫グロブリン分子の少なくとも1つの免疫活性部分)、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、一本鎖抗体分子、1個または複数のCDRを含む免疫グロブリン分子のいずれかの断片から形成される多特異的な抗体を、さらに意味する。加えて、本明細書中で用いられる「抗原結合性断片」は、1個または複数の異なるヒト免疫グロブリンからの枠組み構造領域に継ぎ足された、特定のヒト免疫グロブリンからの1個または複数のCDRを含んでもよい。抗原結合性断片は、親の免疫グロブリンまたは抗体が結合する標的に結合しうる。
【0023】
抗体に関する「Fab」は、ジスルフィド結合により、単一の重鎖の可変領域と第1の定常領域に結合された単一の軽鎖(可変領域と定常領域の両方)からなる、抗体部分を意味する。
「Fab’」は、ヒンジ領域の一部を含む、Fab断片を意味する。
「F(ab’)2」は、Fabの二量体を意味する。
抗体に関する「Fc」は、ジスルフィド結合を介し、第2の重鎖の第2と第3の定常領域と結合した、第1の重鎖の第2と第3の定常領域からなる、抗体の部分を意味する。抗体のFc部分は、ADCCおよびCDCなどのさまざまなエフェクター機能の要因となるが、抗原結合には機能しない。
【0024】
抗体に関する「Fv」は、完全な抗原結合部位を有する、抗体の最小断片を意味する。Fv断片は、単一の重鎖の可変領域に結合された、単一の軽鎖の可変領域からなる。
「一本鎖Fv抗体」または「scFv」は、互いに直接もしくはペプチドリンカー配列を介して連結された、軽鎖可変領域および重鎖可変領域からなる、改変抗体を意味する(Houston 1988)。
「一本鎖Fv−Fc抗体」または「scFv−Fc」は、抗体のFc領域に連結されたscFvからなる、改変抗体を意味する。
【0025】
本明細書中で用いられる用語「エピトープ」は、抗体が結合する抗原分子上の原子またはアミノ酸群を意味する。本明細書中で用いられるように、それらがある抗原に対して競争的結合を示す場合、その2つの抗体は、その抗原内の同じエピトープに結合する。例えば、本明細書中で開示されるように、抗体が、VEGF結合に対してベバシズマブと競争する場合、その抗体はベバシズマブと同じエピトープに結合すると考えられる。
【0026】
本明細書中で用いられる「VEGF」または「VEGFリガンド」は、現在既知の、7つのVEGFリガンド:VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C1、VEGF−D、VEGF−E(ウイルス誘導体)または胎盤成長因子(PIGF)−1または−2、のうちのいずれかを意味する。VEGF−Aに関して、現在、それぞれ固有の生体機能を示す、4つの既知のスプライシング・アイソフォームがある。165アミノ酸アイソフォーム(VEGF165、配列番号:1)は、ヘパリン結合型および可溶性型の両方に存在する。VEGF165の115残基と159残基間の領域に対応する断片を失っている、121アミノ酸アイソフォーム(VEGF12I)は、可溶性型にのみ存在する。より長い189アミノ酸および206アミノ酸アイソフォーム(それぞれ、VEGF189およびVEGF206)は、ヘパリンに結合する能力を維持している。本明細書中で提供される抗体は、ヒトVEGF165に対して高い結合能を示すが、いくつかの実施形態において、ヒト以外のVEGF蛋白質と、もしくは他のVEGFアイソフォームと、交差反応しうるか、または低レベルの結合能を示しうる。
【0027】
本明細書中で用いられる、ある状態を「処置する」または「処置」は、その状態を予防または緩和すること、その状態の発症または進行速度を低下させること、その状態が進行する危険性を低下させること、その状態を伴う症状の侵攻を予防または遅延させること、その状態の完全もしくは部分的な回復を果たすこと、あるいはそれらのいくつかの組み合わせを意味しうる。腫瘍に関して、「処置する」または「処置」は、腫瘍の全部または一部を根絶すること、腫瘍増殖および転移を阻害または遅延させること、腫瘍の進行を予防または遅延させること、あるいはそれらのいくつかの組み合わせを意味しうる。
【0028】
本明細書中で用いられる用語「特異的に結合する」は、2個の分子間、例えば、抗体とその抗体が産生されたリガンド間の無作為でない結合反応を意味する。本明細書中で用いられるように、第1のリガンドと特異的に結合する抗体は、第2のリガンドと交差反応性または低レベルの結合能を示しうる。特定の実施形態において、リガンドに特異的に結合する抗体は、<10−7M(例えば5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、10−10M)の結合親和性(KD)でもってリガンドと結合する。本明細書中で用いられるKDは、解離速度の結合速度に対する割合(koff/kon)を意味し、当分野で既知の方法を用いて決定されうる。他の実施形態において、抗体は、その抗体が第2のリガンドに結合する結合親和性よりも10倍以上高いもしくは低い(例えば、>15倍、>20倍、>50倍、>102倍、>103倍、または>104倍)結合親和性でもって、第1のリガンドと特異的に結合する。他の実施形態において、特異的にリガンドと結合する抗体は、<10−7の結合親和性でもってそのリガンドと結合するが、第2のリガンドとはほとんど結合親和性を示さない。
【0029】
本明細書中で用いられる用語「単離された」は、天然状態から「ヒトの手により」改変される手段を意味する。「単離された」組成物または基質が天然に生じる場合、それは、変更されまたはその元の環境から取り出されたものであり、または、その両方である。例えば、生きている動物中に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されていない」が、それが、実質的に純粋な状態で存在するよう、その天然状態の並存する材料から十分に分離された場合には、その同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されている」。本明細書中で用いられる「単離された」は、人工物または他の化合物もしくは材料との合成混合物、または活性を妨げない不純物の存在を排除しない。
【0030】
本明細書中で用いられる用語「ベクター」は、ある蛋白質をコードするポリヌクレオチドが、その蛋白質の発現を示すよう、操作可能に挿入されうる、媒体を意味する。ベクターは、ある宿主細胞内に、それが運搬する遺伝因子の発現を示すよう、宿主細胞を形質転換、形質導入またはトランスフェクトするのに用いられうる。ベクターの例は、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体、例えば酵母人工染色体(YAC)、大腸菌人工染色体(BAC)またはP1誘導人工染色体(PAC)、バクテリオファージ、例えばラムダファージまたはM13ファージ、および動物ウイルスを、含む。ベクターとして用いられる動物ウイルスのカテゴリーは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ−付随ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、乳頭腫ウイルス、およびパポーバウイルス(例えばSV40)を含む。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能な因子およびとレポーター遺伝子を含み、発現を制御するための様々な構成部分を含んでいてよい。加えて、ベクターは、複製開始点を含みうる。ベクターは、限定するものではないが、ウイルス粒子、リポソームまたは蛋白質コーティングを含み、細胞へのその侵入を補助するための材料を含んでもよい。
【0031】
本明細書中で用いられる成句「宿主細胞」は、ベクターが導入された細胞を意味する。宿主細胞は、例えば、細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)または古草菌(B. subtilis)細胞、菌類の細胞、例えば酵母細胞またはアスペルギルス細胞、昆虫細胞、例えばショウジョウバエS2またはスポドプテラ(Spodoptera)、Sf9細胞、または動物細胞、例えば繊維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞もしくはヒト細胞を含む様々な細胞型から選択されうる。
【0032】
本明細書中で用いられる「異常脈管形成を伴う疾患」は、VEGFシグナル伝達経路により生じる、増悪される、あるいは増大した脈管形成に関連する、VEGFシグナル伝達経路と関係する脈管形成を特異的に増大する、いずれかの状態を意味する。そのような状態は、増殖が血管新生に依存する癌型、眼疾患、例えば湿潤型AMD、および炎症状態、例えば関節リウマチ、乾癬、強皮症、慢性閉塞性肺疾患または喘息を、含む。
【0033】
本明細書中で用いられる「結合をブロックする」または「結合を競合する」能力は、2個の分子間結合相互作用を、50%もしくはそれ以上まで阻害する抗体の能力を、意味する。特定の実施形態において、この阻害は、60%を超えるでもよく、特定の実施形態においては、70%を超え、特定の実施形態においては、80%を超え、そして特定の実施形態においては、90%を超えてもよい。特定の実施形態において、阻害される結合相互作用は、ベバシズマブのhVEGF165に対する結合相互作用でありうる。特定の他の実施形態において、阻害される相互作用は、hVEGF165のVEGF−R1および/またはVEGF−R2に対する相互作用であってよい。
【0034】
本明細書中で用いられる用語「治療上の有効量」は、疾患または状態を処置するのに有効な薬物の量または濃度を意味する。例えば、癌を処置するための本明細書中で開示される抗体の使用に関しては、抗体の治療上の有効量は、腫瘍の全部または一部を根絶すること、腫瘍成長および転移を抑制または緩徐すること、腫瘍の進行を予防または遅延させること、あるいはそれらの幾つかの組み合わせを可能にする抗体の投薬量または濃度である。別の例について、処置のための投薬量は、約0.01mg/kgから約100mg/kgまでの範囲、例えば、約0.01mg/kg〜約50mg/kgの間(例えば、約0.1mg/kg、1mg/kgまたは10mg/kg)にある。特定の実施形態において、初期の処置用量は、約100mg/kgまたは50mg/kgを上回らない、そして継続処置投薬量は、少なくとも0.01mg/kgである。所定の投薬量が、毎日、隔週、毎週または毎月投与されうる。
【0035】
完全ヒトVEGF抗体
完全ヒト抗体は、安全性と効能に関して、ネズミ、キメラ、ヒト化抗体より、いくつかの潜在的な利点を有する。第1に、ヒト以外の残基がないことは、完全ヒト抗体が、投与後の宿主免疫応答を生じさせないようにする。第2に、完全ヒト抗体は、一般に、他の抗体型よりも低いクリアランス速度を示す。この減少したクリアランス速度は、低投薬量および低頻度の使用を可能にする。
【0036】
本明細書中で提供されるものは、hVEGF165に特異的に結合する、2個の完全ヒト抗体、XPA.10.064とXPA.10.072である。XPA.10.064とXPA.10.072は、ファージディスプレイscFvライブラリをhVEGF165に対してパニングして同定された。XPA.10.072の重鎖および軽鎖可変領域配列は、配列番号:2および3にそれぞれ記載され、XPA.10.064の重鎖および軽鎖可変領域配列は、配列番号:4および5にそれぞれ記載される。配列番号:2に記載されるように、XPA.10.072の重鎖可変領域は、CDRを、31残基〜35残基(CDRH1、配列番号:6)、50残基〜66残基(CDRH2、配列番号:7)、そして99残基〜108残基(CDRH3、配列番号:8)に含む。配列番号:3に記載されるようにXPA.10.072の軽鎖可変領域は、CDRを、26残基〜35残基(072CDRL1、配列番号:9)、51残基〜57残基(072CDRL2、配列番号:10)、そして90残基〜100残基(072CDRL3、配列番号11)に含む。配列番号:4に記載されるように、XPA.10.064の重鎖可変領域は、CDRを、31残基〜35残基(CNRH1、配列番号:6)、50残基〜66残基(CDRH2、配列番号:7)、そして99残基〜108残基(CDRH3、配列番号:8)に含む。配列番号:5に記載されるように、XPA.10.064の軽鎖可変領域は、CDRを、26残基〜35残基(064CDRL1、配列番号:12)、51残基〜57残基(064CDRL2、配列番号:13)、そして90残基〜100残基(064CDRL3、配列番号:14)に含む。
【0037】
ELISAにおいてhVEGF165と高親和性でもって結合し、そしてhVEGF165のVEGF−R1およびVEGF−R2に対する結合を阻害する、XPA.10.064とXPA.10.072scFvsの能力に基づいて、それらの抗体は、さらなる機能的研究のためにscFv−FcおよびIgG2への転換のために選択された。ビアコア(Biacore)分析により決定されたところでは、XPA.10.064およびXPA.10.072IgG2は、hVEGF165に対して類似の高い結合能を示し、その一方で、mVEGF165とは弱い結合を示すのみであった。両方の抗体、hVEGF121とも結合する。XPA.10.064およびXPA.10.072IgG2のhVEGF165に対する結合親和性は、それぞれ1.5nMおよび1.7nMであり、そして、両方の抗体は、ベバシズマブの約二倍の速さの解離速度を示した。ビアコア分析は、XPA.10.064およびXPA.10.072IgG2が、ベバシズマブより高い程度で、hVEGF165のVEGF−R1およびVEGF−R2に対する結合をブロックすることも明らかにした。VEGFシグナル伝達を阻害するXPA.10.064とXPA.10.072の能力は、両方の抗体がhVEGF165誘導性VEGF−R2リン酸化を阻害することを示す、ELISA実験により確認された。
【0038】
エピトープ分析は、XPA.10.064およびXPA.10.072が、hVEGF165のリニア・エピトープと結合すること、ならびに、これらのエピトープが、ベバシズマブにより結合されるエピトープと少なくともある程度重複することを明らかにした。免疫組織化学分析は、ベバシズマブとは異なり、XPA.10.064とXPA.10.072の両方が、広範囲の組織交差反応性を示した。両方の抗体は、HUVEC増殖を阻害し、そして両方とも、生体内で脈管形成および腫瘍成長を阻害する。XPA.10.064とXPA.10.072の特徴の概要は、表1に記載される。
【0039】
従って、本明細書中の特定の実施形態において提供されるものは、配列番号:4および5記載の、XPA.10.064の重鎖および軽鎖を含む、抗体である。他の実施形態において、それぞれ配列番号:2および3に記載の、XPA.10.072の重鎖および軽鎖を含む抗体が、提供される。hVEGF165とhVEGF121に対するそれらの高い結合能、およびVEGF−R1およびVEGF−R2に対するVEGF結合およびVEGF誘導性受容体リン酸化を阻害するそれらの能力に基づいて、本明細書中で提供される抗体は、VEGFシグナル伝達を阻害して、VEGF経路をブロックするために用いられうる。この基礎に則り、本抗体は、VEGF発現に付随する様々な状態を処置するのに用いられうる。
【0040】
本明細書中で提供される抗体は、HUVEC増殖を阻害し、試験管内で脈管形成を阻害することが見出された。したがって、該抗体は、増大した脈管形成を伴うさまざまな状態を処置するために用いられうる。例えば、該抗体は、腫瘍部位からの血管の増殖を妨げて、かくして腫瘍成長を阻害することによって、癌を処置するために用いられうる。同様に、該抗体は、腫瘍部位で血管を破壊し、結果として腫瘍壊死とすることにより、癌を処置するために用いられうる。癌の処置に関する本明細書中で開示される抗体の効能は、生体内で確認された。
【0041】
特定の実施形態において、本明細書中で提供される抗体は、ベバシズマブと類似もしくはより大きなレベルで、脈管形成および/または腫瘍成長を阻害しうる。生体内A673腫瘍成長阻害実験において、XPA.10.064およびXPA.10.072の両方が、試験されたすべての投薬量で、ベバシズマブと類似のレベルで、A673腫瘍成長を阻害した。特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体は、低投薬量または濃度で投与された場合に、ベバシズマブのレベルと類似もしくはそれ以上のレベルで脈管形成および/または腫瘍成長を阻害しうる。本明細書中で提供される抗体は、ベバシズマブと比較して、類似のまたは改善された薬物動力学(PK)特性を示しうる。例えば、抗体は、ベバシズマブと比較して、増加した循環半減期または低下された免疫原性を示しうる。抗体がベバシズマブに対する類似のまたは改善された薬物動力学特性を示す、特定の実施形態において、該抗体は、ベバシズマブ投与の増加した間隔に伴う悪影響を示すことなく、ベバシズマブよりも長期の間隔にわたって投与されうる。
【0042】
本明細書中で開示される抗体は、少なくとも部分的にVEGF経路により制御される異常脈管形成を伴ういずれかの状態の処置に、用いられうる。増加したVEGF発現レベルを一般に伴うこれらの状態は、増加した脈管形成を伴う眼疾患、例えば湿潤型AMDまたは増殖性網膜症、例えば、糖尿病網膜症、糖尿病性腎臓病および他の糖尿病性脈管増殖疾患、嚢胞性線維症およびさまざまな腫瘍型を含む(Amoroso 1997; McColley 2000; Khamaisi 2003)。
【0043】
本明細書中で開示される抗体を用いて処置されうる腫瘍型は、限定するものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、白血病またはリンパ系悪性腫瘍を含む。より詳細には、本明細書中で開示される抗体を用いて処置されうる腫瘍型は、限定するものではないが、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃の癌または胃癌、例えば消化管癌、膵癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌腫、腎臓の癌または腎臓癌、前立腺癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌腫、頭頸部癌、および小児癌(例えば、小児肉腫)を含む。加えて、腫瘍は、悪性(例えば、癌)であっても、良性(例えば、過形成、嚢胞、偽嚢胞、過誤腫および良性新生物)であってもよい。
【0044】
本明細書中で開示される抗体を用いて処置されうる腫瘍型は、特定のバイオマーカを伴う癌も含む。例えば、バイオマーカは、限定されるものではないが、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)癌抑制遺伝子における変異および/または低酸素誘導因子−1a(HIF−1)の過剰発現を含む。特定の実施形態において、抗体は、VHL癌抑制遺伝子における変異を示す癌を処置するために用いられうる。VHL遺伝子における変異は、結果として低酸素誘導性転写因子−1αおよび2αを構成的に安定化し、それがVEGF遺伝子中のエンハンサー因子と結合し、脈管形成を刺激する(Harris 2000)。本明細書中で開示される抗体を用いて処置されうるVHL変異腫瘍型は、例えば、中枢神経系の血管芽腫、レチナール血管芽腫、内リンパ嚢腫瘍、明細胞、腎細胞癌、および/または腎嚢胞、褐色細胞腫、膵嚢胞、神経内分泌腫瘍、ならびに精巣上体および広間膜嚢腺腫を含む。被検体は、既知の方法、例えば、ネステッド(nested)逆転写ポリメーラゼ連鎖反応またはネステッド一本鎖高次構造多型分析を用いた分子検出を通じて、VHL遺伝子変異の存在につて、選択またはスクリーニングされる(Ashidaら、J. Urol. 169:20898-93 (2003))。確認された被検体は、次いで、本発明による抗体を用いた処置を受ける。他の実施形態において、抗体は、被検体のHIF−1αの過剰発現を示す癌を処置するために、用いられてもよい。このHIF−1α過剰発現は、組織(例えば、脳、胸部、頸部、食道、口腔咽頭、卵巣および前立腺組織)の生検を通じて調べることができる。確認された被検体は、抗体による処置、または抗体とHIF−1α阻害剤、例えば2−メトキシエストラジオール、4−O−メチルサルセルネオール(methylsarcerneol)、マナッサチン(manassantin)A、マナサッチンB1、NSC−134754、NSC−643735、トポテカン、SCH66336、PX−478、R115777、セテュキマブ(Cetuximab)、103D5RおよびNSAID(KimbroおよびSimons, Endocrine-Related Cancer, 13:739-749 (2006)を参照のこと)との組み合わせによる処置について、選択およびスクリーニングされる。
【0045】
本明細書中で記載される抗体によって処置されうる他の状態は、炎症性条件、例えば関節リウマチ、乾癬、強皮症、慢性閉塞性肺疾患および喘息を含む。特定の実施形態において、本明細書中で提供される抗体は、ベバシズマブにより処置に対して耐性となる状態を処置するのに用いられうる。
【0046】
本明細書中で提供される抗体は、さまざまな治療目的ではない用途に利用することもできる。特定の実施形態において、該抗体は、hVEGF165、他のVEGFアイソフォームまたはそれらの断片を精製するための結合性精製物質として用いることもできる。これらの実施形態において、抗体は、当分野で既知の方法を用いて、レジンまたは濾紙などの固相上に固定されうる。該抗体は、溶液からhVEGF165、他のVEGFアイソフォームまたはそれらの断片を沈殿させるために用いることもできる。他の治療目的ではない実施形態において、該抗体は、さまざまな試験管内または生体内での診断用途または検出用途に用いられうる。これらの実施形態のいくつかにおいて、該抗体は、検出可能な標識とコンジュゲートされていてもよい。他の実施形態において、該抗体は、検出可能な標識とコンジュテートされていなくてもよく、該抗体と結合する標識化抗体を用いて検出されてもよい。特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体は、hVEGF165発現を検出するために用いることもできる。これらの実施形態のいくつかにおいて、該抗体は、増加したhVEGF165発現に付随する状態を診断するために用いることもできる。例えば、該抗体は、被検体における増大したhVEGF165に付随する状態を診断するために、被検体からの生体試料と接触させうる。同様に、該抗体は、直接被検体に投与されてもよく、そして、hVEGF165に対する結合は、当分野で既知の方法を用いていて検出される。
【0047】
変異体エピトープ結合試験は、本明細書中で開示される抗体が、少なくとも部分的にベバシズマブにより認識されるエピトープと重複するVEGF上のリニア・エピトープに結合することを、示す。従って、特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体は、hVEGF165(配列番号:1)の79残基〜94残基からなるもしくは含むエピトープと結合しうる。同様に、抗体は、完全にもしくは部分的に、配列番号:1記載の79残基〜94残基に相当する配列と重複するエピトープに結合しうる。エピトープの重複に基づき、特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体は、hVEGF165に結合するベバシズマブを競争的に阻害しうる。
【0048】
好ましくは、本明細書中で提供される抗体は、ヒトにおける消失半減期(T1/2)が17日〜21日であるベバシズマブの消失半減期と同等もしくはそれ以上の、ヒトにおける消失半減期を有していてもよい。消失半減期は、投与された抗体の血漿濃度が半分にまで減少するのに要する時間を意味し、それは、当分野で既知の方法を用いて算出することができる。特定の実施形態において、本明細書中で開示された抗体の消失半減期は、少なくとも17日でありうる。特定の他の実施形態において、それは17日〜21日であってもよいし、これらの実施形態のいくつかにおいて、21日を超えてもよい。
【0049】
本明細書中で開示される抗原結合断片は、全長抗体の断片または断片群、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、FvまたはscFv断片を含みうる。これらの断片は、当分野で周知の方法、例えばFab断片を産生するパパインまたはF(ab’)2を産生するペプシンなどの酵素を用いた蛋白分解開裂を用いて、全長の抗体から産生されうる。特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体は、1つまたは複数のヒト枠組み構造領域に継ぎ足された配列番号:2〜5の1つまたは複数のCDRを含んでもよい。
【0050】
さまざまなコンジュゲートが、本明細書にて提供される抗体と、連結されてもよいし、会合されてもよく、または、組み合わせて用いられてもよいことは、当業者には認められよう(例えば、「Conjugate Vaccines」, Contributions to Microbiology and Immunology, J. M. CruseおよびR. E. Lewis, Jr. (編), Carger Press, New York, (1989)を参照のこと)提供した。これらのコンジュゲートは、共有結合、親和結合、相互作用、配位結合、複合体化、会合化、混和または付加、その他の方法により抗体と連結されてもよい。特定の実施形態において、本発明の抗体は、1つまたは複数のコンジュゲートに結合するために利用されうるエピトープ結合部分の外側に特異的な部位を含むよう作製されてもよい。例えば、そのような部位には、コンジュゲートに対する共有結合を容易にするための1つまたは複数の反応性のアミノ酸残基、例えばシステインまたはヒスチジン残基が挙げられる。特定の実施形態において、抗体は、コンジュゲートと間接的に連結されてもよく、または別のコンジュゲートを通じて連結されてもよい。例えば、抗体は、ビオチンに接合され、次いで、アビジンに連結された第2のコンジュゲートと間接的に連結されてもよい。
【0051】
特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体に連結され、または組み合わせて用いられるコンジュゲートは、該抗体の、例えば半減期を増加させる、または該抗体の免疫原性を低下させるポリエチレングリコール(PEG)、1つまたは複数の薬物動力学(PK)特性を改変することを意味する、1つまたは複数の試薬を含んでいてよい(例えば、Katre 1990を参照のこと)。
【0052】
特定の実施形態において、コンジュゲートは、本明細書中で用いられるような細胞間メディエイタとして細胞に作用するいずれかの蛋白質を意味する、1つまたは複数のサイトカインを含んでもよい。サイトカインの例には、限定するものではないが、リンフォカイン、モノカイン、ヒト成長ホルモン、N−メチオニル・ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、サイロキシン、インスリン、プロインスリン、レラキシン、プロレラキシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、肝臓の成長因子、線維芽細胞成長因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、腫瘍壊死因子αおよびβ、ミュラー阻害物質、マウス・ゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、神経成長因子、例えばNGF−β、血小板成長因子、トランスフォーミング成長因子、例えばTGF−αおよびTGF−β、インスリン様成長因子IおよびII、エリスロポイエチン(EPO)、骨誘導因子(osteoinductive factor)、インターフェロン、例えばインターフェロン−α、−βおよび−γ、コロニー刺激因子、例えばマクロファージCSF、顆粒球・マクロファージCSFおよび顆粒球CSF、インターロイキン、例えばIL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11およびIL−12、腫瘍壊死因子、例えばTNF−αおよびTNF−β、そして他のポリペプチド因子が含まれる。本発明の抗体およびその抗原結合断片は、前述のサイトカインのいずれかと組み合わせて提供および/または投与されてよい。
【0053】
特定の実施形態において、本明細書中で開示された抗体と連結され、または組み合わせて用いられるコンジュゲートは、本明細書中で用いられるような癌の処置に有用ないずれかの試薬を意味する、1つまたは複数の化学療法剤を含んでいてもよい。化学療法剤の例には、限定するものではないが、テモゾロマイド、特異的にIGF1受容体と結合する抗体、ロナファーニブ、カルシトリオール、テムシロリムス、イリノテカン、カンプトセシン、ドキスルビシン(doxurubicin)、アドリアマイシン、毒素(例えば、リシン)、ジフテリア(diptheria)毒素または別の細菌の、菌類の、植物のまたは動物起源の毒素、凝血剤、アルキル化剤(例えば、チオテパおよびシクロスフォスミド(CYTOXAN(登録商標))、スルホン酸アルキル類(例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン)、アジリジン(例えば、ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパ(uredopa))、メチレンイミンおよびメチルアメラミン(例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphaoramide)およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine))、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロランブシル、クロルナファジン、クロフォスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド(trofosfamide)およびウラシルマスタードなど)、ニトロソウレア(nitrosurea)(例えば、カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、ホテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン)、
【0054】
抗生物質(例えば、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルノマイシン(carnomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン(olivomycin)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン)、抗代謝剤(例えば、メトトレキサートおよび5‐フルオロウラシル(5−FU))、葉酸類似体(例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート)、プリン類似体(例えば、フルダラビン、6‐メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン)、ピリミジン類似体(例えば、アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6‐アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン、5−FU)、アンドロゲン類(例えば、カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン)、抗副腎(例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン)、葉酸リプレニッシャー(replenisher)(例えば、フロリン酸(frolinic acid))、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン、エダトラキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジクオン、エルフォルニチン(elformithine)、エリプチニウム・アセテート、エトグルシド(etoglucid)、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダミン(Ionidamine)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトキサントロン、モピダモール(mopidamol)、ニトラクリン(nitracrine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジン、プロカルバジン、
【0055】
PSK(登録商標)、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミト・ラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「AraC」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキサン類(例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、プリンストン、ニュージャージー州)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer、アントニー、フランス)、ABRAXANE(登録商標)(約130nmの粒径を有する注射用懸濁剤のためのパクリタキセル・アルブミン結合粒子))、クロランブシル、ゲムシタビン、6−チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、プラチナ類似体(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン)、サトラプラチン、オキサリプラチン、ビンブラスチン、プラチナ、エトポシド(VP−16)、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン(navelbine)、ノバントロン(novantrone)、テニポシド、ダウノマイシン、アミノプテリン、キセローダ(xeloda)、イバンドロナート(ibandronate)、CPT−11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチン酸、エスペラマイシン(esperamicin)、カペシタビン、ゲムシタビン、および上記のいずれかの医薬上許容される塩類、酸類および/または誘導体が、含まれる。化学療法剤には、腫瘍におけるホルモン作用を調節もしくは阻害するよう働く抗ホルモン剤(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)およびトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン、ならびにフルタミド、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、ロイプロリドおよびゴセレリンを含む抗アンドロゲン物質)が、含まれうる。本発明の抗体およびその抗原結合断片は、前述の化学療法剤のいずれかと組み合わせて提供および/または投与されうる。
【0056】
特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体に連結されるコンジュゲートは、1つまたは複数の検出可能な標識を含んでもよい。そのような標識には、限定するものではないが、123I、124I、125I、131I、35S、3H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Biおよび32Pのような放射性同位元素、他のランタニド、発光標識、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリンまたはテキサス・レッド)および酵素−基質標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはβ−D−ガラクトシダーゼ)が、含まれる。
【0057】
高VEGF発現レベルおよび/または増加した新脈管形成を伴う疾患の処置のために、本発明の抗体は、医薬上許容される培地内で製剤として有効量で調製されうる。この製剤は、生理学的に寛容される液剤、ゲル剤、固体担体、希釈剤、アジュバントもしくは賦形剤またはそれらいくつかの組み合わせを含んでもよい。有効な投薬量は、部分的に被検体の体重、年齢および健康状態ならびに投与経路や腫瘍進行の程度に依存するであろう。抗体を含む医薬製剤は、単独で、または、他の既知の治療薬と組み合わせて投与されてよい。例えば、抗体は、VEGF経路を阻害することが知られている、他の抗体または抗体に基づく治療薬を含む、いずれかの治療薬と組み合わせて投与されてよい。同様に、抗体は、VEGF経路を阻害しないが、代わりに、標的疾患に関連する他の経路または徴候を標的とする、治療化合物と組み合わせて投与されてもよい。例えば、本明細書中で開示される抗体は、癌の処置のための化学療法、放射線治療および/または手術と組み合わせて投与されてもよい。他の治療薬と「組み合わせ」て投与される抗体は、その試薬と同時に投与される必要はない。この成句が本明細書中で用いられる場合、他の試薬の前後に投与される抗体は、その試薬と「組み合わせて」投与されると考えられる。抗体は、皮下、腹膜内、血管内、筋肉内、皮内、経皮注射、その他の方法によって投与されてもよい。
【0058】
特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体を発現するための発現系が、提供される。これらの発現系は、抗体をコードするポリヌクレオチド、これらのポリヌクレオチドを含むベクターおよびこれらのベクターを含む宿主細胞を包含する。抗体をコードするポリヌクレオチドは、当分野で既知の方法を用いて、単離もしくは合成され、そして増幅またはクローニングのための複製ベクターに挿入されてよい。抗体の可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)をコードするポリヌクレオチドは、単一のベクターから発現されてもよいし、または、それらは、二個の別々のベクターを用いて発現され、続いて試験管内でアセンブリされてもよい。特定の実施形態において、それらは、同じ細胞およびアッセンブルされた細胞内で二個の別々のベクターから共発現されてもよい(米国特許第5,595,898号を参照のこと)。適切なベクターは、種々の調節配列、例えばプロモーター、エンハンサーまたは転写開始配列、ならびに表現型選択のためのマーカーをコードする遺伝子を含んでもよい。そのようなさらなる配列は当分野で周知である。特定の実施形態において、ベクターは、ヒトIgG2免疫グロブリンの重鎖(CH)および軽鎖(CL)の定常領域をコードするポリヌクレオチド配列を含んでもよい。別には、ベクターは、抗体全体というよりもFv断片を含む発現されたポリペプチドによる、抗体のVH鎖とVL鎖だけ発現してもよい。ベクターは、ポリヌクレオチド配列の増幅または発現のために適切な宿主細胞に挿入されうる。宿主細胞は、当分野で既知のさまざまな培地、例えば最小必須培地(Minimal Essential Medium)(MEM)(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)(DMEM)(Sigma)とハム(Ham's)F10(Sigma)において抗体産生のために培養されうる。培地は、様々な試薬、例えばホルモン類、成長因子、塩類、緩衝剤、ヌクレオチド、抗生物質、微量元素(trace element)、グルコースまたは他のエネルギー源が補充されてもよい。温度およびpHなどの培養条件は、当分野で周知のパラメータを用いて調整されうる。
【0059】
本発明の抗体は、癌細胞に対する特異的な送達のためのコンジュゲートを含んでもよい。加えて、腫瘍細胞に対する抗体の結合は、宿主の免疫応答を集めるために用いられてもよい。この宿主免疫応答は、本明細書中で提供される完全ヒト抗体に対応する1つの結合部位と、細胞障害性T細胞を認識する別の結合部位を有する、二価の抗体を利用することにより増大されうる。
【0060】
特定の実施形態において、本発明の抗体は、高フコース含量のオリゴ糖を含んでもよい。他の実施形態において、本発明の抗体は、低フコース含量であってよく、例えばフコースを含まないFc抗体であってもよい。本発明の低フコース抗体は、低フコシル化活性を有する細胞系、例えばラットYB2/0細胞(Shinkawa 2003)またはCHO変異細胞系統Led3(Shields 2002))を用いて生成することができる。
【0061】
医薬組成物(群)。医薬上許容される担体と共に本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物も、本発明の範囲内にある(例えば、単回組成物またはキットで別々に)。医薬組成物は、医薬当分野で周知のいずれかの方法によって調製されうる:例えば、Gilmanら、(編)(1990), The Pharmacological Bases of Therapeutics, 第8版, Pergamon Press; A. Gennaro(編),Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版,(1990), Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania.; Avisら、(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications Dekker, New York; Liebermanら、(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets Dekker, New York;およびLiebermanら、(編)(1990), Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems Dekker, New Yorkを参照のこと。
【0062】
さらなる化学療法剤を伴ってもよい、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物は、典型的に医薬上許容される賦形剤および添加剤そして通常の技術を用いて調製されうる。そのような医薬上許容される賦形剤および添加剤には、無毒で適合性のある充填剤、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、潤滑剤、調味料、増粘剤、着色剤、乳化剤およびその類似物が含まれる。すべての投与経路が考えられ、限定するものではないが、非経口投与、(例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、局所、腹腔内、吸入、頭蓋内)、および非経口でない投与(例えば、経口、経皮、鼻腔内、眼内、舌下、直腸および局所)が含まれる。
【0063】
注射可能物質は、通常の剤形、溶液剤または懸濁剤、注射前に液体の液剤または懸濁剤に適した固体剤形として、あるいはエマルジョンとしてのいずれかで、調製されてもよい。注射可能薬物質、液剤およびエマルジョンは、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい。賦形剤には、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセリンまたはエタノールが含まれる。加えて、所望により、投与される医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解性増化剤および他のそのような試薬(例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレアートおよびシクロデキストリン)など、少量の無毒な補助剤を含んでもよい。
【0064】
本発明の実施形態において、非経口調製で用いられる医薬上許容される担体には、水性賦形剤、非水性賦形剤、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔薬、懸濁剤および分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート試薬、および医薬上許容される物質が含まれる。
【0065】
水性賦形剤の例には、生食注射、リンゲル注射、等張デキストロース注射、無菌水注射、デキストロースと乳酸加リンゲル注射が含まれる。非水性非経口賦形剤には、植物起源の不揮発性油、綿実油、とうもろこし油、胡麻油および落花生油が含まれる。静菌性または静真菌性濃度での抗菌物質が、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムを含む、多回投与容器にパッケージにされた非経口調製に加えられてもよい。等張剤には、塩化ナトリウムおよびデキストロースが含まれる。緩衝剤には、リン酸塩とクエン酸塩が含まれる。抗酸化剤には、重硫酸ナトリウムが含まれる。局所麻酔薬には、塩酸プロカインが含まれる。懸濁剤および分散剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが含まれる。。乳化剤には、ポリソルベート(Polysorbate)80(TWEEN−80)が含まれる。金属イオン封鎖剤または金属イオンのキレート剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはEGTA(エチレングリコール四酢酸)を含む。医薬担体は、水混和性賦形剤に関するエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコール;そして、pH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸を含んでもよい。
【0066】
本発明の実施形態において、非経口投与のための調剤には、注射に直ぐ使用できる滅菌液剤、
使用直前に溶媒と組み合わせて直ぐ使用できる、皮下注射用錠剤を含む凍結乾燥粉剤などの滅菌乾燥可溶性品、注射に直ぐ使用できる滅菌懸濁剤、使用直前に賦形剤と組み合わせて直ぐに使用できる滅菌乾燥不溶性製品、および滅菌乳剤が含まれる。溶液は、水性でも、または非水系でもよい。
【0067】
さらなる化学療法剤と組み合わされてもよい本発明の抗体またはその抗原結合断片の濃度は、注射が所望の薬理効果を発揮するのに有効な量を提供するよう、調整されうる。当分野で知られていているように、その正確な用量は、特に患者または動物の年齢、体重および状態に依存する。
【0068】
本発明の実施形態において、単位用量の非経口調剤は、アンプル、バイアルまたは針を有する注射器にパーケージされる。非経口投与のための調剤はすべて、当分野で知られている、もしくは熟知されているように、無菌でなければならない
【0069】
本発明の実施形態において、無菌の、凍結乾燥粉剤は、抗体またはその抗原結合性断片を溶解することによって調製され、それは、適切な溶媒中で、さらなる化学療法剤またはその医薬上許容される誘導体と組み合わされていてもよい。溶媒は、粉剤またはその粉剤から調製された再構成された溶剤の安定性または他の医薬成分を改善する賦形剤を含んでもよい。用いられうる賦形剤は、限定するものではないが、デキストロース、ソルビトール(sorbital)、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、シュークロースまたは他の適当な物質が挙げられる。溶媒は、緩衝液、例えば、クエン酸塩、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、または当業者には既知の他の緩衝液を含んでいてもよく、1つの実施例においては、およそ中性のpHである。次に、当業者であれば既知の一般的な条件下での凍結乾燥前の溶液の濾過滅菌法により、所望の製剤が提供される。1つの実施形態において、結果として生じる溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、抗VEGF抗体またはその抗原結合断片あるいはその組み合わせの単回投薬量または複数回分の投薬量を含んでもよい。厳密な試料撤回および厳密な投薬を助けるため、投薬量または投薬量セットに必要とされる量よりも少し多い量(例えば、約10%)で過剰充填したバイアルが許容される。凍結乾燥粉剤は、適当な条件下、例えば4℃〜室温で保存することができる。
【0070】
凍結乾燥粉剤の注射用蒸留水による再構成は、非経口投与に使用するための製剤を提供する。本発明の実施形態において、再構成のために、凍結乾燥粉粉剤は、滅菌水または他の適当な液体担体に加えられる。正確な量は、所定の選択された治療に依存する。その量は、経験的に決定されてもよい。
【0071】
以下の実施例は、特許請求される発明をよりよく例示するために提供されるものであって、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。それは単に例示の目的になされるものであって、特定の材料が言及される範囲に、本発明を制限することを目的とするものでない。当業者であれば、発明の能力を行使することなく、そして、本発明の範囲から逸脱することなく、同等の手段または反応物を創り出すことができる。まだ本発明の範囲内に属しながらも、多くの改変が、本明細書中に記載の手順においてなされ得ることは理解されよう。そのような改変が本発明の範囲内に含まれることは、発明者の意図するところである。
【0072】
実施例
実施例1:hVEGF165に結合する抗体の創出:
hVEGF165に結合する能力を有する抗体断片パネルを同定するために、ヒト一本鎖Fv(scFv)ファージディスプレイ・ライブラリを、固定したhVEGF165に対してパニングした。パニングは、標準的なプロトコルを用いて行った(例えば、Methods in Molecular Biology, vol. 178: Antibody Phage Display: Methods and Protocols: P.M. O'BrienおよびR. Aitken(編), Humana Press;「Panning of Antibody Phage-Display Libraries」、Coomber, D.W.J. , pp. 133-145、および「Selection of Antibodies Against Biotinylated Antigens」、Chames, P.ら、pp. 147-157を参照のこと)。
【0073】
簡単には、NUNC(登録商標)MAXISORPプレートの3個のウェルを、PBS中、濃度10μg/mlの組み換えhVEGF165(R&Dシステムズ、カタログ番号293−VE)50μlを用いて被覆した。4℃で一晩インキュベートした後、結合していない部分を、PBS中の5%ミルクを用いて、室温で1時間ブロックした。次いで、5%ミルク/PBS中の約200μlのファージ・ライブラリーを、そのブロックしたウェルに加え、室温で約1時間〜2時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、結合したファージを標準的な方法(例えば、SambrookおよびRussell, Molecule Cloning:A Laboratory Manual, 第3版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001を参照のこと)を用いて溶出した。溶出されたファージを、対数増殖期の大腸菌TG1宿主細胞への37℃で1時間の感染を介して増幅した。感染TG1細胞を、2,500rpm、5分の遠心分離により回収し、15cm、2YT−アンピシリン2%グルコース・アガー・プレート上に撒き、そして30℃で一晩インキュベートした。次いで、このパニング処理を、増幅したファージを用いて再び行った。
【0074】
この、パニング、溶出および増幅のサイクルは、濃度を低下させながら(例えば、ラウンド1では50μg/mlhVEGF165、ラウンド2では10μg/ml、そしてラウンド3では10μg/ml)、3ラウンド繰り返し、撒かれたTG1細胞からポイント単一コロニーを用いて、96ウェル・プレート中の培地に植菌した。ミクロ培養をOD600で0.6まで生育させ、可溶性のscFvのポイント発現を、1mM IPTGの添加により誘導し、30℃で振盪器にて一晩インキュベートした。細菌をスピンダウンし、ペリプラズム抽出物を使用して、固定したhVEGF165に結合するscFvを標準的なELISAアッセイを用いて試験した。
【0075】
実施例2:XPA.10.064およびXPA.10.072 scFvによる、VEGF受容体に結合するhVEGF165のブロッキング:
hVEGF165結合を示す、実施例1からのファージ・クローンを、マイクロプレート・ベースド・コンペティテブ・スクリーニングDELFIA(登録商標)アッセイ(Perkins Elmer, Waltham, MA)を用いて、VEGF−R1および/またはVEGF−R2に結合するhVEGF165をブロックする、その能力について試験した。
【0076】
簡単には、ビオチン化hVEGF165溶液を、1:1の容量で、終濃度0.5μg/mlとなるよう、実施例1からのペリプラズム抽出物に加えた。この混合物の100μlを、VEGF−R1またはVEGF−R2(R&Dシステムズ:VEGF−R1/Flt−1、カタログ番号321−FL;VEGF−R2/KDR/Flk−1、カタログ番号357−KD)で被覆したプレートに加え、室温で1.5時間インキュベートした。プレートを、PBSTで洗浄し、1:250希釈の、DELIAアッセイ・バッファー中のユーロピュリウム−ストレプトアビジン(Europrium-Streptavidin)を50μl/ウェルで加えた。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いで、DELFIAウォッシュ・バッファーを用いて洗浄した。DELFIAエンハンスメント・バッファーを50μl/ウェルで加え、プレートを室温で5分間インキュベートした。プレートを、タイム−リゾルブド・フルオレセンス・ジェミニ(Time-Resolved Fluorescence Gemini)プレート・リーダーで読み取った。
【0077】
実施例3:scFvのscFv−FcおよびIgGへの転換
60%以上までVEGF−R1またはVEGF−R2に結合するhVEGF165を阻害する、実施例2からの2個のscFv、XPA.10.064およびXPA.10.072を、scFv−Fcおよび/またはIgG転換のために選択した。XPA.10.064およびXPA.10.072の重鎖可変領域(重鎖CDRを含む)および軽鎖可変領域(軽鎖CDRを含む)を、図1に示す。その重鎖CDR(例えば、HCDR1、HCDR2およびHCDR3)と軽鎖CDR(例えば、LCDR1、LCDR2およびLCDR3)は、カバット・ナンバリング・システム(Kabat, E.A.ら、1987, in Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services, NIH, USA)により決定された。XPA.10.064およびXPA.10.072の両方のHCDR1、HCDR2そしてHCDR3は、それぞれ、配列番号:6、7および8記載のアミノ酸配列であると決定された。XPA.10.064のLCDR1、LCDR2およびLCDR3は、それぞれ、配列番号:12、13および14記載のアミノ酸配列と決定された。XPA.10.072のLCDR1、LCDR2およびLCDR3は、それぞれ、配列番号:9、10および11記載のアミノ酸配列であると決定された。
【0078】
XPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−Fc融合蛋白質への転換については、scFvのcDNAを、ガンマ2(γ2)重鎖定常領域遺伝子のCH2およびCH3ドメインをコードするようモディファイされた真核生物用発現ベクター(米国特許第7,192,737;国際特許公報第2004/033683)にクローン化した。
【0079】
XPA.10.064およびXPA.10.072のIgGへの転換については、重鎖および軽鎖の両方の可変領域が、カッパ(κ)、ラムダ(λ)またはガンマ2(γ2)重鎖および軽鎖定常領域をコードする真核生物用発現ベクター(米国第2006/0121604)にクローン化した。
【0080】
XPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−FcおよびIgG抗体を、既報のように(米国特許第2006/0121604)293E細胞に一過性に発現させた。形質転換した細胞からの上清を、培養の6日目に回収し、IgGを、プロテインAクロマトグラフィーにより精製した。
【0081】
実施例4:XPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−FcおよびIgG結合動力学のビアコア分析:
XPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−Fcの結合親和性を、BIACORE2000とプロテインA/G(Piece)を高密度でフローセルに固定化したCM5センサーチップ(Biacore)を用いて、評価した。この試験のための希釈バッファーおよびランニングバッファーは、1:50希釈のChemiblocker(登録商標)(Ckemicon)を含むHBS−EP(Biacore)であった。抗体キャプチャー(捕捉)は、約50RU〜70RUの抗体キャプチャーを達成するため、様々な容量の希釈したXPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−Fcを20μl/分でフローセル2(fc2)に注入して行った。抗体濃度は、約0.5μg/mlであった。sf21細胞により発現されるhVEGF165を、5分かけ、30μg/mlで、fc1およびfc2に対して15分の解離を含むKinjectの態様を用いて注入した。3倍希釈系列のhVEGF165の4個の希釈物、濃度5μg/ml(119nM)、1.667μg/ml(39.7nM)、0.55μg/ml(13.2nM)そして0.185μg/ml(4.4nM)を、調製した。リジェネレーション(再生)は、50μl/分で100mM HClを2回、各12秒で注入することで行った。データは、対照フローセルとブランク注入を二重に参照した後、Scrubber2と1:1ラングミュア・インターラクション・モデル(Langmuir interaction model)で処理した。XPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−Fcは、hVEGF165に対して高親和性で、ほぼ同一の結合親和性を示した。
【0082】
同様のプロトコルを、XPA.10.064およびXPA.10.072のIgG2の結合動力学を評価するために用いた。XPA.10.064およびXPA.10.072のIgG2は両方とも、類似の低い一桁台のナノモーラーの親和性でもってhVEGF165と特異的に結合し(図2〜4)、mVEGF165に対しては弱い結合を示すのみであった。この抗体は両方とも、ベバシズマブのka値と類似するka値を示した(表2)。
【0083】
実施例5:XPA.10.064およびXPA.10.072のIgGによるVEGF受容体に結合するhVEGF165のブロッキング
hVEGF165のVEGF−R1および/またはVEGF−R2への結合をブロックする、XPA.10.064およびXPA.10.072IgG2の能力を、CM5チップを用いたBiacore2000により評価した。
【0084】
VEGF受容体(R&Dシステムズ)を、アミンカップリング(Biacore)を介して約15,000の密度でCM5チップに固定した。VEGF−R2はfc2に固定し、VEGF−R1はfc4に固定した。フローセル1および3は、リファレンスとして用い、受容体を固定化したフローセルと同様に活性化およびブロックした。HBS−EPランニングバッファー中の0.15μg/mlのhVEGF165は、抗体試料またはバッファーを用いて1:1で混合された。最終の抗体濃度は、15μg/ml、5μg/ml、1.667μg/ml、0.556μg/ml、0.185μg/ml、0.0617μg/ml、0.0206μg/ml、および0μg/mlであった。試料は、ビアコア分析試験による阻害前に少なくとも1時間インキュベートされた。すべての試料は2回で注入され、各組みの抗体の重複測定は、それ自身の陽性対照および陰性対照(それぞれ、VEGFを用いるが抗体を用いない、およびVEGFを用いない)を含んだ。試料は、10μl/分で15分間すべてのフローセルに対して注入された。リジェネレーションは、グリセン(Glycene)、pH1.75を50μl/分で12秒間注入することにより行われた。
【0085】
データ解析について、結合相における結合の直線部分の傾き(30秒〜1分)は、直線フィットを用いて決定された。各点からのシグナルは、最も近いブランクを差し引き、次いで、適合する100%シグナル(抗体を用いない)対照で割り付けられ、そのサイクルの阻害パーセントが得られた。データはGraphPad Prismで作図され、S字用量反応曲線を用いてフィットして、EC50を算出した。
【0086】
XPA.10.064とXPA.10.072のIgG2は両方とも、ベバシズマブと同様のレベルで、hVEGF165のVEGF−R1およびVEGF−R2に対する結合を阻害した(図5−6、表3)。
【表1】
【0087】
実施例6:XPA.10.064およびXPA.10.072によって結合されるhVEGF165エピトープの解析:
XPA.10.064およびXPA.10.072により認識されるhVEGF165エピトープがリニアであるか、それとも立体構造依存的であるかを決定するため、非還元または還元の、加熱変性組み換えhVEGF165の200ng試料3つを用い、3つの別々のSDS−PAGEゲルにおいて電気泳動にかけた。電気泳動にかけられた蛋白質は、Immulon−Pメンブレンにトランスファーされ、そして、そのブロットは、XPA.10.064 IgG、XPA.10.072 IgGまたはベバシズマブ抗体を用いてハイブリダイズされ、1μg/mlのヤギ抗ヒトIgG HRP複合二次抗体と共にインキュベートされた。結合は、増強されたケミルミネセンス(ECL)基質(Pierce)で検出された。
XPA.10.064、XPA.10.072およびベバシズマブはすべて、hVEGF165上のリニア・エピトープに結合した(図7)。
【0088】
実施例7:XPA.10.064およびXPA.10.072 hVEGF121エピトープ結合試験:
XPA.10.064およびXPA.10.072が、ベバシズマブと同じhVEGF121エピトープと結合するかどうかを決定するため、3回のELISA競合結合アッセイを、さまざまなhVEGF121変異体を用いて実施した。
これまでの突然変異分析は、VEGF残基M81、G88、Q89およびG92が、hVEGF165に対するベバシズマブ結合に重要であることを明らかにした(Fuh 2006)。これらの残基が、XPA.10.064とXPA.10.072の結合に重要であるかどうかを決定するため、以下のhVEGF121変異体を作製した:hVEGF121−M81A、hVEGF121−Q89A、hVEGF121−G92AおよびhVEGF121−G88S。変異体を、CHO−K1細胞で一過性に発現させ、そして、細胞上清を、ELISAによる結合分析のために回収した。
【0089】
マイクロタイタープレートを、1μg/ml、2μg/mlもしくは5μg/mlの濃度で、XPA.10.064、XPA.10.072、ベバシズマブまたは対照ポリクローナル・ヤギ抗ヒトVEGF(PAB)を用いて被覆し、4℃で一晩インキュベートした。そのプレートを、室温で1時間、PBS中の30% ChemiBlock(登録商標)(Millipore)を用いてブロックし、30μl、60μl、もしくは100μlの、各変異体のCHO−K1培養上清、または1μg/mlの野生型hVEGF121、組み換えhVEGF165、もしくは組み換えmVEGF165を、適当なウェルに加えた。1時間のインキュベーション後に、そのプレートを洗浄し、室温で1時間、ビオチン化ヤギ・ポリクローナル抗VEGF抗体とともにインキュベートした。検出は、製造業者プロトコルを用いて、HRPコンジュゲート・ストレプトアビジン、続いて、TMB色素基質(Calbiochem)を用いて行われた。
【0090】
XPA.10.064とXPA.10.072のhVEGF121変異体に対する結合パターンは、ベバシズマブのそれと類似しており(表4−5)、このことは、これらの抗体が、重複するまたは類似するエピトープと結合することを示す。
【0091】
実施例8:XPA.10.064とXPA.10.072の組織交差反応性:
凍結された正常なヒト組織アレイ(TMA)は、単一色発色技術(single-color chromogenic technique)を用い、XPA.10.064とXPA.10.072の免疫組織化学(IHC)反応を評価するために用いられた。TMAは、32の正常なヒト組織型を含み、各型は、2人〜3人の異なるドナーからの組織からなる。TMAに加えて、正常なヒト肝臓、腎臓、ファローピウス管、膵臓、尿管および副腎のより多数の切片が、TMAでの染色結果を確認するために、あるいはTMAに含まれない組織に代えて用いられた。陽性対照は、UV−樹脂スライド上にスポットされたhVEGF蛋白質、および抗hVEGFウサギ・モノクローナル抗体による強い染色によって評価された、高レベルのhVEGFを発現する腎臓癌腫組織を含んだ。
【0092】
TMAおよび正常なヒト組織、そしてhVEGF蛋白質スポットおよび腎臓癌腫の陽性対照は、ヒト−ヒトIHC染色プロトコルを用いて、20μg/mlのXPA.10.064、XPA.10.072(ヒトIgG2)またはベバシズマブを用いて染色された。ヒト扁桃炎の場合も、染色プロトコルの効果を観察するために含まれた。最終的なプロトコルは、扁桃組織のB細胞領域中の、組織の内在性の免疫グロブリンと反応性を示さなかった。陰性対照抗体は、ヒトIgGIとIgG2(Sigma, St. Louis, MO)およびヒトKLH抗体のCHO.KLHG2.60(IgG2)であった。
【0093】
XPA.10.064、XPA.10.072およびベバシズマブは、すべて、hVEGF蛋白質スポットと、0−4+の尺度で2−3+(ここで、4+は、最も強い染色強度を示す)で反応した。腎癌組織に関して、XPA.10.064とXPA.10.072が、腫瘍細胞の細胞原形質を染色したが、ベバシズマブは不確かな染色を示した。
【0094】
ヒトIgG1とIgG2は、最小のバックグラウンド染色を与えるのみで、いずれの組織因子も染色しなかった。CHO.KLHG2.60は、副腎皮質の細胞と、食道、乳腺、膵臓、前立腺、胃、甲状腺、尿管、子宮頸部およびファローピウス管の上皮細胞と、反応性を示した。この反応性のため、ヒトIgG1およびIgG2は、陰性対照の参照物として用いられた。
【0095】
XPA.10.064は、試験抗体の中で、最も幅広い組織反応性スペクトルを示した。XPA.10.064は、膀胱、GI管、ファローピウス管、乳腺、前立腺、尿管および子宮の平滑筋細胞で、そして、ファローピウス管、前立腺、皮膚、小腸、胃、甲状腺、尿管、子宮の子宮内膜腺および子宮頸部の上皮細胞で、強く染色した。加えて、XPA.10.064は、小脳、大脳皮質および脊髄のニューロンおよび神経線維のいくつか、ならびに心臓筋細胞と骨格筋細胞、下垂体の細胞、腎糸球体、肝臓シヌソイド内皮、胸腺の間質細胞、肺のマクロファージおよび副腎皮質の細胞を染色した。XPA.10.072は、小脳、大脳皮質および脊髄で神経繊維を強く染色した。XPA.10.072は、GI管、ファローピウス管、前立腺、尿管および子宮の平滑筋、食道、ファローピウス管、乳腺、前立腺、胃、小腸、甲状腺および尿管の上皮細胞、肺のマクロファージと胎盤の繊維芽細胞/組織球も染色した。ベバシズマブは、正常なヒト組織を染色しなかった。
【0096】
XPA.10.064とXPA.10.072の免疫組織化学的な反応性が、標的結合のオン−もしくはオフ−に応答するかを決定するため、多色の免疫蛍光法に基づくアプローチを利用した。このアプローチは、抗体を試験するための、既知の「金基準(究極の判断基準)」である抗VEGF抗体の免疫反応性との同時比較に基づく。共局在していないことは、標的なしの反応性を示すが、試験抗体の標的ありの反応性は、「金基準」抗体との共局在として現れる。
【0097】
陽性対照細胞(Du145)および陰性対照細胞(Hek293)からの細胞ペレットの凍結切片を、最初の実験で用いられたものと同じ発色IHC方法論を用いて、商業的なマウス抗ヒト抗VEGF抗体(BD Pharmingen、クローンG153−694)により染色した。この抗体はDu145細胞を染色したが、Hek293細胞を染色しなかった。加えて、この抗体を用いて染色した結腸癌の凍結切片は、良好な内部の陰性対照を含む、上皮および腫瘍関連基質成分の反応性において特徴的パターンを示した。従って、G153−694を、「金基準」ポジコン抗体に指定した。
【0098】
ゼノンIgGラベリング・キット(Molecular Probes)のプロトコルを用い、一次抗体を、蛍光色素コンジュゲートされたFcを標的とする抗ヒトFabと予めインキュベートし、続いて、適当な正常血清のモル過剰量で未反応のFabを中和した。染色試薬として蛍光抗体−Fab複合体を用い、続いてDAPIにより核の対比染色を行った。結腸(組織番号4558)の腺癌からの凍結切片を、この共局在研究の対照VEGF陽性組織として用いた。XPA.10.064およびXPA.10.072抗体は、赤色(Alexa Fluor594)で標識され、そして、「金基準」抗体は、緑色(Alexa Fluor488)で標識された。このアッセイを、逆の色の組合せを用いて繰り返し行ったが、本質的に同じ結果が得られた。画像は、ライカTCS−SP、モデルDM RXEレーザー走査型共焦点顕微鏡、およびライカ・コンフォーカル・ソフトウェア、バージョン2.0(Leica Microsystems、ウェッツラー、ドイツ)を用いて取得した。複数の視野は、400×で画像化され(少なくとも3回)、そして、代表的な視野を、イメージ・プロ・ソフトウェア(Image Pro software)(Media Cybernetics, Silver Spring, MD)を用いて、共局在を分析した。ベバシズマブが、結腸癌と凍結されたペレット切片の両方で最初のIHC研究のすべてで本質的に陰性だったので、それは共局在研究に含めなかった。
最初のIHC実験に基づいて予想されたように、XPA.10.064とXPA.10.072は、似通った高い程度の局在を示し、そしてXPA.10.064は組織染色で最も大きな強度を示した(図8−9)。
【0099】
実施例9:XPA.10.064およびXPA.10.072によるHUVEC増殖の阻害:
XPA.10.064およびXPA.10.072 scFv−FcおよびIgG2は、HUVECの増殖をブロックする、それらの能力用について試験された。
プールされたHUVEC(Clonetics番号CC−2519)は、BulletKit−2(rhEGF、rhFGF、rhVGEF、アスコルビン酸、ヒドロコルチゾン、IGF、ヘパリン、ゲンタマイシン/アンホテリシンおよび2%FBSが補充される)を含むECGM完全培地(Clonetics番号CC−3024)中で、生育された。細胞は、T−75フラスコにて2〜3×105細胞で播種され、3〜4日目にコンフルエントに達した。コンフルエント前の単層を、PBSを用いて洗浄し、トリプシン処理し、PBSを含む完全培地で中和した。
【0100】
hVEGF165の存在下でのHUVEC増殖を測定するため、HEK293細胞から発現されたhVEGF165の16点の用量滴定を、基礎増殖培養液中に希釈することによって設けた(最終的に0−200ng/ml、2×希釈、2×濃度、50μg/ウェル)。HUVEC細胞を、冷基礎培地/0.1% BSA中に2×105細胞/mlで再懸濁し、そして50μlの細胞(1×104c/w)を、最終容量100μl/ウェルのhVEGF165滴定プレートの各ウェルに加えた。外側のウェルをPBSで浸水し、プレートが、脱水するのを防げるため、パラフィルムで密閉した。プレートを、96時間、5%CO2、37℃でインキュベートし、次いで、約15分〜20分、室温に移した。Cell TiterGlo(TTG、Promega)を解凍して、基質温度にし、100μlの基質/バッファー混合液を、各ウェルに加えた。プレートは、1分〜2分間、オービタルプレート撹拌器で攪拌し、各ウェルから150μlを、白底、白壁のプレートに移し、暗所で5分〜10分間インキュベートした。このプレートを、1秒積算の照度計で読み取った。
【0101】
増殖阻害アッセイに関して、XPA.10.064、XPA.10.072およびベバシズマブの滴定が、作られた(最終的に0μg/ml〜50μg/ml、3×希釈、4×濃度、25μg/ウェルの最終容量)。1:1のhVEGF165:抗体を、成長因子と抗体の両方の4×濃度で加え、そして、プレートを、2時間、5%CO2、37℃でインキュベートした。50μl/ウェルのVEGF/抗体複合体を、再懸濁したHUVEC細胞に加え、そのプレートを、96時間インキュベートし、そして上記のように、TiterGloバッファーで処理した。
【0102】
XPA.10.064およびXPA.10.072 scFvsおよびIgG2は、HUVEC増殖を阻害した。IgG2の結果は、図10および表6に記載する。
表6:XPA.10.064、XPA.10.072およびベバシズマブによるHUVEC増殖の阻害
【表2】
【0103】
実施例10:XPA.10.064およびXPA.10.072によるVEGF−R2リン酸化の阻害:
hVEGF165によるVEGF−R2リン酸化を阻害するXPA.10.064およびXPA.10.072の能力は、ELISAにより分析した。
溶菌産物プレートを作製するため、2〜6継代のHUVEC細胞を溶解し、EGM2完全培地(Lonza)のTCフラスコに蒔き、そして、1〜2継代生育させた。コンフルエント前の細胞をトリプシン処理し、完全培地を用いてで中和し、PBSで2回洗浄し、そして計数した。細胞を、24w形式(三重のウェル)において、完全培地中1×105細胞/ウェルで蒔き、24時間37℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞を、室温のPBSで2回洗浄し、5時間0.1%BSAを含むEBM2培地(Lonza)中で枯渇させた。PBSを静かに注ぎ、細胞を、用量滴定のhVEGF165(刺激)または複合体形成前のVPA.10.064+hVEGF165、VPA.10.072+hVEGF165もしくはベバシズマブ+hVEGF165(阻害)とともに5分間インキュベートした。VPA.10.064+hVEGF165およびVPA.10.072+hVEGF165は、2×の用量滴定の抗体と2×のhVEGF165を1:1で混合し(終濃度:20ng/ml)、そして、24時間37℃でインキュベートすることにより、作製された。hVEGF165、VPA.10.064+hVEGF165およびVPA.10.072+hVEGF165を静かに注ぎ、細胞を氷冷PBSで2回洗浄した。65μg/ウェルの溶菌バッファー/ウェル(1% NP−40、20mMトリス、pH 8.0、137mM NaCI、10%グリセリン、2mM EDTA、1mM 活性オルトバナジウム酸ナトリウム、10μg/ml ロイペプチン)を加え、細胞を、必要とされるまで、30分間4℃で揺らした。
【0104】
VEGF−R2に特異的な捕捉抗体(R&D Systems、VEGF−R2/KDR/Flk−1、カタログ番号357−KD)を、PBS中8.0g/mlの実施濃度に希釈し、100μl/ウェルで96ウェル・マイクロプレートに被覆した。VEGF−R2/KDR/Flk−1は、リン酸化および非リン酸化VEGF−R2の両方と結合する。このプレートは、密封され、一晩インキュベートされた。各ウェルを、吸水し、洗浄バッファーで5回洗浄し、そして、プレートを300μg/ウェルのブロックバッファーを加えることによりブロックし、そして室温で1時間〜2時間インキュベートした。各ウェルを、吸水し、洗浄バッファーでさらに5回以上洗浄し、100μlのHUVEC溶菌産物を、各ウェルに加えた。プレートを、2時間室温でインキュベートし、そして、ウェルを吸水し、洗浄バッファーで5回洗浄した。100μlのリン酸化チロシンに特異的なHPRコンジュゲート検出抗体を、各ウェルに加え、プレートを被覆し、2時間室温で直射光を遮ってインキュベートした。ウェルを吸水し、洗浄バッファーで5回洗浄し、そして基質溶液100μlを、各ウェルに加えた。プレートは、20分間室温で直射光を遮ってインキュベートされ、そして、停止液50μlを各ウェルに加えた。各ウェルの光学濃度は、450nmにてマイクロプレート・リーダーで読み取られた。
【0105】
hVEGF165の用量滴定で処置されたHUVECは、リン酸化VEGF−R2において増加を示した(図11)。ベバシズマブ+hVEGF165の用量滴定で処置されたHUVECは、VEGF−Rの2リン酸化で低下を示した(図12)。XPA.10.064+hVEGF165またはXPA.10.072+hVEGF165の用量滴定で処置されたHUVECは、VEGF−R2リン酸化で低下を示した。各抗体の結果は、図13にまとめた。
【0106】
実施例11:XPA.10.064およびXPA.10.072による脈管形成阻害:
マトリゲル・プラグ・アッセイを用いて、生体内で脈管形成を阻害するXPA.10.064とXPA.10.072の能力を測定した。
6〜7週齢の雌のNU/NUマウスは、脈管形成を誘導するためのヒトVEGFを産生する、2×106DU145細胞を含む0.5mlのマトリゲルを腹部にs.c.注射された。マウスは、0日と3日目に賦形剤対照または0.1μg/kg、1μg/kg、または5mg/kgのXPA.10.064、XPA.10.072またはベバシズマブでi.p.注射された。7日目に、マウスは屠殺され、そして、マトリゲル・プラグが取り出され、測量され、撮影された。プラグは、以下のスキーム:0は、着色または明らかな血管がない;1は、着色とわずかな血管をうかがわせる;2は、黄色から赤色ではっきり識別できる血管がある;そして、3は、均一な赤もしくはピンク色の黒ずんだ血管、に基づいて、0〜3の視覚によるスコアが与えられた(図14)。プラグは、プラグの順序はばらばらにされた状態で、写真を受け取った盲検式の記録者により評価された。
【0107】
XPA.10.072の投与が、1mg/kgと5mg/kgで脈管形成に有意な減少をもたらした一方で、XPA.10.064の投与は、試験したすべての投薬量で脈管形成に有意な減少をもたらした(図15および16)。脈管形成阻害のレベルは、ベバシズマブ存在下で観察されたレベルと類似した。
マウス血清中のXPA.10.064、XPA.10.072およびベバシズマブ濃度は、最後の抗体投薬後の4日目に、ELISAにより測定した。試験したいずれの投薬量でも、3つの抗体の間には、抗体レベルに有意な差はなかった。
【0108】
実施例12:XPA.10.064とXPA.10.072による腫瘍成長の阻害:
腫瘍成長を阻害するXPA.10.064とXPA.10.072の能力は、以前に開示されたプロトコル(Liang 2006)を用いた、A673横紋筋肉腫腫瘍増殖モデルにより試験された。培養液中で維持されたA673細胞は、コンフルエントまで生育され、次いで、回収され、そして無菌のマトリゲル(Matrigel)に再懸濁された。異種移植は、マトリゲル中の5×106個の細胞を6週間齢の雌のヌードマウスの横腹に、s.c.注射することにより樹立された。腫瘍サイズが約100mm3に達したときに、マウスを、無作為に10匹の8群にわけ、賦形剤のみ(群1)、0.5mg/kgのXPA.10.064IgG2(群2)、5mg/kgのXPA.10.064IgG2(群3)、0.5mg/kgのXPA.10.072IgG2(群4)、5mg/kgのXPA.10.072IgG2(群5)、5mg/kgのCHO.KLHIgG2(群6)、0.5mg/kgのベバシズマブ(群7)、または5mg/kgのベバシズマブ(群8)のみを用いて、18日間週に2回(総投薬6回)i.p.注射した。血液試料および組織試料は、最後の投薬後24時間、72時間および168時間で採取した。
【0109】
XPA.10.064とXPA.10.072の投与は、試験した両方の投薬量で、有意に生体内の腫瘍成長を阻害する結果となった(図17)。両方の抗体の成長阻害のレベルは、試験した投薬量すべてで、ベバシズマブにより観察されたレベルよりもわずかに高かった。血清レベルは、すべての投与された抗体について、所定の投薬量で類似していた(0.5mg/kgの血清レベルは約5μg/ml〜7μg/mlであり;5mg/kgの血清レベルは約75μg/ml〜100μg/mlであった)。
【0110】
上述のように、これまでの記載は、単に本発明のさまざまな実施形態を例示することを目的とするものである。上述の具体的なモディフィケーションは、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな均等物、変更およびモディフィケーションを行いうることは認められよう、そして、そのように均等な実施形態が本明細書中に含まれることも理解されよう。本明細書中で言及されるすべての引用文献は、あたかも本明細書中に記載されたかのように、完全に出典明示により本明細書の一部とされる。
【0111】
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【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【技術分野】
【0001】
(関連分野)
本出願は、2006年10月20日に出願された米国仮出願番号第60/853,260号(出典明示により完全に本明細書の一部とされる)についての優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、特に、網膜増殖疾患および腫瘍形成時における内皮細胞活性化、増殖および生存に関与する、脈管形成蛋白質の主要ファミリーである。VEGFは、VEGF−PDGF(血小板由来増殖因子)超遺伝子ファミリーに属しており、脈管内皮細胞とリンパ内皮細胞上に発現される受容体に結合するスモール糖タンパク質二量体である。VEGFファミリーには、現在、7つの既知リガンド:VEGF−A(VEGF)、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−E(ウイルス由来)および胎盤増殖(PIGF)−1と−2がある。これらのVEGFリガンドは、それぞれが受容体チロシンキナーゼ活性を備えている、3つの既知のVEGF受容体(VEGF−R)の1つまたは複数と結合することによって、それらの効果をメディエートする。VEGF−R1(Flt−1)は、内皮細胞と単球上で主に発現され、VEGFとVEGF−Bに結合して、内皮および単球遊走をメディエートするようである。VEGF−R2(すなわち、ヒトKDRまたはネズミFlk−1)は、主に内皮細胞上に発現され、VEGF(および、VEGF−CおよびVEGF−Dの特定の断片)に選択性があり、VEGF誘導性内皮細胞増殖、生存および遊走、ならびに血管透過性をメディエートする。VEGF−R3(Flt−4)は、主にリンパ内皮細胞上に発現され、VEGF−CとVEGF−Dに結合してリンパ管発生を促進する。VEGF−R1、−R2、および−R3は、それぞれ、いくつかの腫瘍細胞上に発現される。VEGFのVEGF受容体への結合は、受容体の二量体化を引き起こし、そして後の受容体活性化およびシグナル伝達を導く。VEGF−R2に結合するVEGFは、脈管形成を促進する際に優性となるシグナル伝達経路を開始する。この経路は、細胞内シグナル伝達の後の誘導を伴う、受容体活性化と関係する。この場合の受容体活性化は、3つの基本的な事象:(i)VEGF−R2に対するVEGFの結合、(ii)受容体の二量体化、そして(iii)受容体チロシンキナーゼによる受容体の自己リン酸化(それによる、活性化)、を必然的に伴う。細胞内メッセンジャー、例えば、ホスホリパーゼCおよびホスファチジルイノシトール−3−キナーゼは、自己リン酸化型のVEGF−R2と直接結合し、そして、その受容体チロシンキナーゼによってリン酸化され、その後、それが、最終的に細胞増殖、遊走および生存(抗−アポトーシス)を促進し、そして血管透過性を増大させる核シグナルに至る、シグナル伝達事象の細胞内カスケードを誘発する。
【0003】
異常脈管形成は、癌を含む、さまざまな疾患状態と関係する(Holash 2002)。VEGF経路は、正常な脈管発生と様々な疾患に付随する異常な脈管形成の両方に役割を果たすことが実証された、唯一のシグナル伝達経路である(Erikkson 1999; Ferrara 1999; Yancopoulos 2000)。VEGFは、脈管血管内皮細胞増殖を促進し、血管透過性を増大させる(Ferrara 2004)。
【0004】
先行研究は、大多数の腫瘍型における高いVEGF発現レベルを明らかにした(Berkman 1993; Brown 1993; Brown 1995; Dvorak 1995; Mattern 1996)。研究は、眼性脈管形成疾患、例えば湿潤型AMDを患う被験者における増大したVEGFレベルも明らかにした。湿潤型AMDは、AMD疾患全体の約10%を占めるだけであるが、AMDに起因する失明の約90%を引き起こす。湿潤型AMDは、脈絡膜新生血管(CNV)、網膜の網膜色素上皮層下の異常な血管の発生によって特徴づけられる。VEGF−Aは、これらの脈管形成において主要な役割を果たすと考えられており、それは、斑の下に滲み出し、レチナール歪曲および視力悪化を引き起こす。
【0005】
VEGFとその受容体との相互作用を阻害する、またはVEGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害するいくつかの分子が開発され、そして臨床開発のさまざまなステージにある。例えば、BAY 43−9006(Sorafenib, Bayer)、SU11248(Sunitinib)およびバタラニブ(Novartis)は、潜在的な癌治療として開発されたVEGF−R2キナーゼ阻害剤である。VEGF−TRAP(Regeneron, Sanofi-Aventis)は、VEGF−R1の細胞外ドメインとVEGFと高い結合能を有するVEGF−R2のハイブリッドである(Holash 2002; Dupont 2005)。VEGF−TRAPは、現在、固形腫瘍の処置に関して臨床試験中である。抗体も、VEGF経路の阻害剤として使用するために広く開発されている。例えば、IMC-1C11(Imclone)は、VEGF−R2と結合するキメラ・モノクローナル抗体である(Hunt 2001)。転移結腸直腸癌腫の処置におけるIMC−1C11の効果を決定するための、臨床研究が、現在行われている。CDP−791(Imclone)は、VEGF−R2に結合するPEG化されたヒト化Fabである。IMC−1121B(Imclone)は、VEGF−R2と高親和性でもって結合し、そしてVEGFとVEGF−R2との相互作用を阻害する、完全ヒト・モノクローナル抗体である(Miao, H. Q.ら、2005. Biochem Biophys Res Commun 345:438-445)。IMC−18F1(Imclone)は、VEGF−R1と高親和性でもって結合し、そしてVEGFとVEGF−R1との相互作用をブロックする、完全ヒト・モノクローナル抗体である。2C3(Peregrine)は、VEGFと結合し、そしてVEGFとVEGF−R2(VEGF−R1ではなく)と結合をブロックする、マウス抗体である。ラニビズマブ(Ranibizumab)(Lucentis(登録商標), Genentech)は、湿潤型の急性黄斑変性(AMD)の処置に関して最近承認された、ベバシズマブから誘導された、ヒト化Fabである(Michels 2004; Rosenfeld 2005)。
【0006】
最も一般に用いられている、VEGFを標的とする生物学的治療は、ヒト化IgGIモノクローナル抗体、ベバシズマブである(別名、アバスチン(Avastin)(登録商標)、Genentech;また、BM−1とも称される)。ベバシズマブは、マウス・モノクローナル抗体A.4.6.1をヒト化することによって開発され、そして、それは、約93%のヒト配列と7%のネズミ配列を含む(Presta 1997; Ferrara 2004)。ベバシズマブは、約500pMの親和性でもってVEGFと結合し、VEGFのVEGF−R1とVEGF−R2に対する結合を阻害する。ヒトにおけるベバシズマブの消失半減期は、17日〜21日である(Ferrara 2004)。ベバシズマブは、転移結腸直腸癌の処置に関して承認されている(Presta 1997; Rosenfeld 2005)。研究は、ベバシズマブが血管新生AMDの処置でも有用でありうることを示唆する(Michels 2005)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Holash, J.ら、2002. Proc Natl Acad Sci USA 99:11393-11398
【非特許文献2】Erikkson, U., Alitalo, K. 1999. Curr Top Microbiol Immunol 237:41-57
【非特許文献3】Ferrara, N. 1999. Curr Top Microbiol Immunol 237:1-30
【非特許文献4】Yancopoulos, G.D.ら、2000. Nature (London)407:242-248
【非特許文献5】Ferrara, N.ら、2004. Nat Rev Drug Discov 3:391-395
【非特許文献6】Berkman, R.A.ら、1993. J Clin Invest 91:153-159
【非特許文献7】Brown, L.F.ら、1993. Cancer Res 53:4727-4735.
【非特許文献8】Brown, L.F.ら、1995. Human Pathol 26:86-91
【非特許文献9】Dvorak, H.F.ら、1995. Am J Pathol 146:1029-1039
【非特許文献10】Mattern, J., Koomaqi, R., Volm, M. 1996. Brit J Cancer 73:931-934
【非特許文献11】Dupont, J.ら、2005. Proc Am Soc Clin Oncol 23:199
【非特許文献12】Hunt, S. 2001. Curr Opin Mol Ther 3:418-424
【非特許文献13】Miao, H. Q.ら、2005. Biochem Biophys Res Commun 345:438-445
【非特許文献14】Michels, S., Rosenfeld, P.J. 2004. Retinal Physician 1:16-22
【非特許文献15】Rosenfeld, P.J., Moshfeghi, A.A., Puliafito, C.A. 2005. Ophthalmic Surg Lasers Imaging 36:331-335
【非特許文献16】Presta, L.G.ら、1997. Cancer Res 57:4593-4599
【非特許文献17】Michels, S.ら、2005. Opthamology 112:1035-1047
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
VEGF経路の阻害のために開発された分子の多様性にもかかわらず、改善された結合特徴および治療プロフィールを有するさらなる分子の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、VEGFに結合してVEGF経路を阻害する、完全ヒト抗体を提供する。これらの抗体は完全ヒト抗体であるため、それらは、以前に開発されたヒト以外の抗体、キメラ抗体またはヒト化抗体に付随する不都合な免疫原性がなく、治療薬として投与することができる。
【0010】
特定の実施形態において、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体が、提供される。特定の他の実施形態において、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体が、提供される。上記実施形態のいくつかにおいて、抗体は、IgG2定常領域を有する。特定の実施形態において、抗体は、<2.0nM.のKDでもってhVEGF165と結合する。特定の実施形態において、抗体は、ベバシズマブにより結合されるエピトープと重複するhVEGF165上のエピトープと結合する。特定の実施形態において、抗体は、hVEGF165のVEGF−R1およびVEGF−R2に対する結合をブロックする。
【0011】
特定の実施形態において、それを必要とする被検体に、治療上有効量の、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することによって、該被検体における脈管形成を阻害するための方法が、提供される。特定の他の実施形態において、それを必要とする被検体に、治療上有効量の、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することによって、該被検体における脈管形成を阻害するための方法が、提供される。
【0012】
特定の実施形態において、それを必要とする被検体における異常脈管形成を伴う疾患を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。特定の他の実施形態において、それを必要とする被検体における異常脈管形成を伴う疾患を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。
【0013】
特定の実施形態において、それを必要とする被検体におけるVEGFシグナル伝達と関係する炎症性疾患を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。特定の他の実施形態において、それを必要とする被検体におけるVEGFシグナル伝達と関係する炎症性疾患を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。
【0014】
特定の実施形態において、それを必要とする被検体における湿潤型の急性黄斑変性または糖尿病網膜症を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。特定の他の実施形態において、それを必要とする被検体における湿潤型の急性黄斑変性または糖尿病網膜症を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。
【0015】
特定の実施形態において、それを必要とする被検体における増大したVEGFシグナル伝達と関係する癌を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。特定の他の実施形態において、それを必要とする被検体における増大したVEGFシグナル伝達と関係する癌を処置するための方法であって、該被検体に、治療上有効量の、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を投与することを含む方法が、提供される。
【0016】
特定の実施形態において、配列番号:2記載の重鎖配列と配列番号:3記載の軽鎖配列を有する抗体を含むキットが、提供される。特定の他の実施形態において、配列番号:4記載の重鎖配列と配列番号:5記載の軽鎖配列を有する抗体を含むキットが、提供される。
【0017】
特定の実施形態において、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、および/または配列番号:5記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが、提供される。特定の他の実施形態において、これらのポリヌクレオチドを含むベクターが、提供され、そして、特定の他の実施形態において、これらのベクターを含む宿主細胞が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】XPA.10.064およびXPA.10.072の重鎖可変領域(HCDR)および軽鎖可変領域(LCDR)を示す。
【図2】ヒトhVEGF165に対するXPA.10.064IgG2結合のビアコア分析を示す。
【図3】ヒトhVEGF165に対するXPA.10.072IgG2結合のビアコア分析を示す。
【図4】ヒトhVEGF165に対するベバシズマブ結合のビアコア分析を示す。
【図5】ベバシズマブ(BM1)、XPA.10.064およびXPA.10.072による、VEGF−R1に対するhVEGF165の結合阻害を示す。
【図6】ベバシズマブ(BM1)、XPA.10.064およびXPA.10.072による、VEGF−R2に対するhVEGF165の結合阻害を示す。
【図7】ベバシズマブ(BM1)、XPA.10.064およびXPA.10.072により結合される、hVEGF165エピトープ解析を示す。
【図8】XPA.10.064とG153−694の共局在。パネルAは、XPA.10.064での染色を示す。パネルBは、G153−694での染色を示す。パネルCは、核色素での染色を示す。パネルDは、マージした画像を示し、ここで、より強い強度(白)は共存を反映する。
【図9】XPA.10.072とG 153−694の共局在。パネルAは、XPA.10.072での染色を示す。パネルBは、G153−694での染色を示す。パネルCは、核色素での染色を示す。パネルDは、マージした画像を示し、ここで、より強い強度(白)は共存を反映する。
【図10】(A)XPA.10.064IgG2および(B)XPA.10.072IgG2によるHUVEC増殖の阻害を示す。
【図11】hVEGF165の用量滴定によるHUVECの処置は、VEGF−R2のリン酸化の増加となる。
【図12】hVEGF165に加えてベバシズマブの用量滴定によるHUVECの処置は、VEGF−R2のリン酸化の減少となる。
【図13】XPA.10.064(064)およびXPA.10.072(072)IgG2は、VEGF−R2のhVEGF165誘導性リン酸化を阻害する。
【図14】マトリゲル・プラグの視覚によるスコアリングを示す。PH07−VAL−021に関するヘモグロビン・アッセイが、プラグにおいて見られたことを捕らえて記録できなかったので、視覚によるスコアリングが開発された。
【図15】さまざまな投薬量のベバシズマブ(BM−1)、XPA.10.064(064)およびXPA.10.072(072)の存在下で脈管形成阻害のレベルを示す、マトリゲル・プラグ・アッセイ。
【図16】マトリゲル・プラグ・アッセイにより決定された、脈管形成の阻害を示す。数字は、2人の盲検式の記録者からの結果の平均である。(A)細胞なし;(B)DU145+αKLH;(C)ベバシズマブ(0.1mg/kg);(D)ベバシズマブ(1mg/kg);(E)ベバシズマブ(5mg/kg);(F)XPA.10.064(0.1mg/kg);(G)XPA.10.064(1mg/kg);(H)XPA.10.064(5mg/kg);(I)XPA.10.072(0.1mg/kg);(J)XPA.10.072(1mg/kg);(K)XPA.10.072(5mg/kg)。
【図17】XPA.10.064およびXPA.072による生体内A673腫瘍成長の阻害を示す。(1)賦形剤のみ;(2)0.5mg/kgのXPA.10.064IgG2;(3)5mg/kgのXPA.10.064IgG2;(4)0.5mg/kgのXPA.10.072IgG2;(5)5mg/kgのXPA.10.072IgG2;(6)5mg/kgのCHO.KLHIgG2;(7)0.5mg/kgのベバシズマブ;(8)5mg/kgのベバシズマブ(群8)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の以下の説明は、単に本発明のさまざまな実施形態を例示することを目的とするものである。このように、記載の特定のモディフィケーションは、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきでない。当業者であれば、さまざまな均等物、変更およびモディフィケーションが、本発明の範囲から逸脱することなくなしうることは認められよう、さらに、そのような均等な実施形態は、本明細書中に含まれるものと理解される。
【0020】
略語
以下の略語が、本明細書中で用いられる:ADCC、抗体依存性細胞障害活性;AMD、加齢性黄斑変性;CDC、補体依存性細胞毒性;CNV、脈絡膜新生血管;COPD、慢性閉塞性肺疾患;HUVEC、ヒト臍静脈内皮細胞;hVEGF、ヒトVEGF;mVEGF、ネズミVEGF;PD、薬力学;PK、薬物動力学;RA、関節リウマチ;RIA、放射性免疫沈降法;VEGF、血管内皮増殖因子;VEGF−R、血管内皮成長因子受容体;VHL、フォンヒッペル/リンダウ;X−反応性、交差反応性。
【0021】
定義
本明細書中で用いられる用語「抗体」は、特定の抗原と結合する、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または多特異的もしくは二重特異的抗体を含む、いずれかの免疫グロブリンを意味する。完全抗体は、2個の重鎖と2個の軽鎖を含む。各軽鎖は、可変領域と定常領域からなるが、各重鎖は、可変領域と第1、第2および第3の定常領域からなる。抗体は、ジスルフィド結合を介して互いに結合した2個の重鎖の第2および第3の定常領域からなる「Y」字の幹を有する、「Y」字型の形状を有する。「Y」の各腕は、単一の軽鎖の可変部分と定常領域に結合された、単一の重鎖の可変領域と第1の定常領域からなる。軽鎖および重鎖の可変領域が、抗原結合に関与する。両方の鎖の可変領域は、相補性決定領域(CDR)(LCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む軽鎖(L)CDR、HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む重鎖(H)CDR)と呼ばれる3つの超可変ループを、一般に含む。この3つのCDRは、CDRと比べて高度に保存された、超可変ループを支持する足場を形成する、枠組み構造領域(FR)として知られる、フランキング・ストレッチ(flanking stretch)間に挿入されている。重鎖および軽鎖の定常領域は、抗原結合に関与しないが、さまざまなエフェクター機能を示す。抗体は、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいて、クラス分けされる。抗体の主要なクラスは、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのクラスのいくつかは、サブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1またはlgA2に分けられる。
【0022】
本明細書中で用いられる用語「抗原結合性断片」は、免疫グロブリン断片またはその抗体断片(すなわち、免疫グロブリン分子の少なくとも1つの免疫活性部分)、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、一本鎖抗体分子、1個または複数のCDRを含む免疫グロブリン分子のいずれかの断片から形成される多特異的な抗体を、さらに意味する。加えて、本明細書中で用いられる「抗原結合性断片」は、1個または複数の異なるヒト免疫グロブリンからの枠組み構造領域に継ぎ足された、特定のヒト免疫グロブリンからの1個または複数のCDRを含んでもよい。抗原結合性断片は、親の免疫グロブリンまたは抗体が結合する標的に結合しうる。
【0023】
抗体に関する「Fab」は、ジスルフィド結合により、単一の重鎖の可変領域と第1の定常領域に結合された単一の軽鎖(可変領域と定常領域の両方)からなる、抗体部分を意味する。
「Fab’」は、ヒンジ領域の一部を含む、Fab断片を意味する。
「F(ab’)2」は、Fabの二量体を意味する。
抗体に関する「Fc」は、ジスルフィド結合を介し、第2の重鎖の第2と第3の定常領域と結合した、第1の重鎖の第2と第3の定常領域からなる、抗体の部分を意味する。抗体のFc部分は、ADCCおよびCDCなどのさまざまなエフェクター機能の要因となるが、抗原結合には機能しない。
【0024】
抗体に関する「Fv」は、完全な抗原結合部位を有する、抗体の最小断片を意味する。Fv断片は、単一の重鎖の可変領域に結合された、単一の軽鎖の可変領域からなる。
「一本鎖Fv抗体」または「scFv」は、互いに直接もしくはペプチドリンカー配列を介して連結された、軽鎖可変領域および重鎖可変領域からなる、改変抗体を意味する(Houston 1988)。
「一本鎖Fv−Fc抗体」または「scFv−Fc」は、抗体のFc領域に連結されたscFvからなる、改変抗体を意味する。
【0025】
本明細書中で用いられる用語「エピトープ」は、抗体が結合する抗原分子上の原子またはアミノ酸群を意味する。本明細書中で用いられるように、それらがある抗原に対して競争的結合を示す場合、その2つの抗体は、その抗原内の同じエピトープに結合する。例えば、本明細書中で開示されるように、抗体が、VEGF結合に対してベバシズマブと競争する場合、その抗体はベバシズマブと同じエピトープに結合すると考えられる。
【0026】
本明細書中で用いられる「VEGF」または「VEGFリガンド」は、現在既知の、7つのVEGFリガンド:VEGF−A、VEGF−B、VEGF−C1、VEGF−D、VEGF−E(ウイルス誘導体)または胎盤成長因子(PIGF)−1または−2、のうちのいずれかを意味する。VEGF−Aに関して、現在、それぞれ固有の生体機能を示す、4つの既知のスプライシング・アイソフォームがある。165アミノ酸アイソフォーム(VEGF165、配列番号:1)は、ヘパリン結合型および可溶性型の両方に存在する。VEGF165の115残基と159残基間の領域に対応する断片を失っている、121アミノ酸アイソフォーム(VEGF12I)は、可溶性型にのみ存在する。より長い189アミノ酸および206アミノ酸アイソフォーム(それぞれ、VEGF189およびVEGF206)は、ヘパリンに結合する能力を維持している。本明細書中で提供される抗体は、ヒトVEGF165に対して高い結合能を示すが、いくつかの実施形態において、ヒト以外のVEGF蛋白質と、もしくは他のVEGFアイソフォームと、交差反応しうるか、または低レベルの結合能を示しうる。
【0027】
本明細書中で用いられる、ある状態を「処置する」または「処置」は、その状態を予防または緩和すること、その状態の発症または進行速度を低下させること、その状態が進行する危険性を低下させること、その状態を伴う症状の侵攻を予防または遅延させること、その状態の完全もしくは部分的な回復を果たすこと、あるいはそれらのいくつかの組み合わせを意味しうる。腫瘍に関して、「処置する」または「処置」は、腫瘍の全部または一部を根絶すること、腫瘍増殖および転移を阻害または遅延させること、腫瘍の進行を予防または遅延させること、あるいはそれらのいくつかの組み合わせを意味しうる。
【0028】
本明細書中で用いられる用語「特異的に結合する」は、2個の分子間、例えば、抗体とその抗体が産生されたリガンド間の無作為でない結合反応を意味する。本明細書中で用いられるように、第1のリガンドと特異的に結合する抗体は、第2のリガンドと交差反応性または低レベルの結合能を示しうる。特定の実施形態において、リガンドに特異的に結合する抗体は、<10−7M(例えば5×10−8M、10−8M、5×10−9M、10−9M、10−10M)の結合親和性(KD)でもってリガンドと結合する。本明細書中で用いられるKDは、解離速度の結合速度に対する割合(koff/kon)を意味し、当分野で既知の方法を用いて決定されうる。他の実施形態において、抗体は、その抗体が第2のリガンドに結合する結合親和性よりも10倍以上高いもしくは低い(例えば、>15倍、>20倍、>50倍、>102倍、>103倍、または>104倍)結合親和性でもって、第1のリガンドと特異的に結合する。他の実施形態において、特異的にリガンドと結合する抗体は、<10−7の結合親和性でもってそのリガンドと結合するが、第2のリガンドとはほとんど結合親和性を示さない。
【0029】
本明細書中で用いられる用語「単離された」は、天然状態から「ヒトの手により」改変される手段を意味する。「単離された」組成物または基質が天然に生じる場合、それは、変更されまたはその元の環境から取り出されたものであり、または、その両方である。例えば、生きている動物中に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されていない」が、それが、実質的に純粋な状態で存在するよう、その天然状態の並存する材料から十分に分離された場合には、その同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されている」。本明細書中で用いられる「単離された」は、人工物または他の化合物もしくは材料との合成混合物、または活性を妨げない不純物の存在を排除しない。
【0030】
本明細書中で用いられる用語「ベクター」は、ある蛋白質をコードするポリヌクレオチドが、その蛋白質の発現を示すよう、操作可能に挿入されうる、媒体を意味する。ベクターは、ある宿主細胞内に、それが運搬する遺伝因子の発現を示すよう、宿主細胞を形質転換、形質導入またはトランスフェクトするのに用いられうる。ベクターの例は、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体、例えば酵母人工染色体(YAC)、大腸菌人工染色体(BAC)またはP1誘導人工染色体(PAC)、バクテリオファージ、例えばラムダファージまたはM13ファージ、および動物ウイルスを、含む。ベクターとして用いられる動物ウイルスのカテゴリーは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ−付随ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、乳頭腫ウイルス、およびパポーバウイルス(例えばSV40)を含む。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択可能な因子およびとレポーター遺伝子を含み、発現を制御するための様々な構成部分を含んでいてよい。加えて、ベクターは、複製開始点を含みうる。ベクターは、限定するものではないが、ウイルス粒子、リポソームまたは蛋白質コーティングを含み、細胞へのその侵入を補助するための材料を含んでもよい。
【0031】
本明細書中で用いられる成句「宿主細胞」は、ベクターが導入された細胞を意味する。宿主細胞は、例えば、細菌細胞、例えば大腸菌(E. coli)または古草菌(B. subtilis)細胞、菌類の細胞、例えば酵母細胞またはアスペルギルス細胞、昆虫細胞、例えばショウジョウバエS2またはスポドプテラ(Spodoptera)、Sf9細胞、または動物細胞、例えば繊維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞もしくはヒト細胞を含む様々な細胞型から選択されうる。
【0032】
本明細書中で用いられる「異常脈管形成を伴う疾患」は、VEGFシグナル伝達経路により生じる、増悪される、あるいは増大した脈管形成に関連する、VEGFシグナル伝達経路と関係する脈管形成を特異的に増大する、いずれかの状態を意味する。そのような状態は、増殖が血管新生に依存する癌型、眼疾患、例えば湿潤型AMD、および炎症状態、例えば関節リウマチ、乾癬、強皮症、慢性閉塞性肺疾患または喘息を、含む。
【0033】
本明細書中で用いられる「結合をブロックする」または「結合を競合する」能力は、2個の分子間結合相互作用を、50%もしくはそれ以上まで阻害する抗体の能力を、意味する。特定の実施形態において、この阻害は、60%を超えるでもよく、特定の実施形態においては、70%を超え、特定の実施形態においては、80%を超え、そして特定の実施形態においては、90%を超えてもよい。特定の実施形態において、阻害される結合相互作用は、ベバシズマブのhVEGF165に対する結合相互作用でありうる。特定の他の実施形態において、阻害される相互作用は、hVEGF165のVEGF−R1および/またはVEGF−R2に対する相互作用であってよい。
【0034】
本明細書中で用いられる用語「治療上の有効量」は、疾患または状態を処置するのに有効な薬物の量または濃度を意味する。例えば、癌を処置するための本明細書中で開示される抗体の使用に関しては、抗体の治療上の有効量は、腫瘍の全部または一部を根絶すること、腫瘍成長および転移を抑制または緩徐すること、腫瘍の進行を予防または遅延させること、あるいはそれらの幾つかの組み合わせを可能にする抗体の投薬量または濃度である。別の例について、処置のための投薬量は、約0.01mg/kgから約100mg/kgまでの範囲、例えば、約0.01mg/kg〜約50mg/kgの間(例えば、約0.1mg/kg、1mg/kgまたは10mg/kg)にある。特定の実施形態において、初期の処置用量は、約100mg/kgまたは50mg/kgを上回らない、そして継続処置投薬量は、少なくとも0.01mg/kgである。所定の投薬量が、毎日、隔週、毎週または毎月投与されうる。
【0035】
完全ヒトVEGF抗体
完全ヒト抗体は、安全性と効能に関して、ネズミ、キメラ、ヒト化抗体より、いくつかの潜在的な利点を有する。第1に、ヒト以外の残基がないことは、完全ヒト抗体が、投与後の宿主免疫応答を生じさせないようにする。第2に、完全ヒト抗体は、一般に、他の抗体型よりも低いクリアランス速度を示す。この減少したクリアランス速度は、低投薬量および低頻度の使用を可能にする。
【0036】
本明細書中で提供されるものは、hVEGF165に特異的に結合する、2個の完全ヒト抗体、XPA.10.064とXPA.10.072である。XPA.10.064とXPA.10.072は、ファージディスプレイscFvライブラリをhVEGF165に対してパニングして同定された。XPA.10.072の重鎖および軽鎖可変領域配列は、配列番号:2および3にそれぞれ記載され、XPA.10.064の重鎖および軽鎖可変領域配列は、配列番号:4および5にそれぞれ記載される。配列番号:2に記載されるように、XPA.10.072の重鎖可変領域は、CDRを、31残基〜35残基(CDRH1、配列番号:6)、50残基〜66残基(CDRH2、配列番号:7)、そして99残基〜108残基(CDRH3、配列番号:8)に含む。配列番号:3に記載されるようにXPA.10.072の軽鎖可変領域は、CDRを、26残基〜35残基(072CDRL1、配列番号:9)、51残基〜57残基(072CDRL2、配列番号:10)、そして90残基〜100残基(072CDRL3、配列番号11)に含む。配列番号:4に記載されるように、XPA.10.064の重鎖可変領域は、CDRを、31残基〜35残基(CNRH1、配列番号:6)、50残基〜66残基(CDRH2、配列番号:7)、そして99残基〜108残基(CDRH3、配列番号:8)に含む。配列番号:5に記載されるように、XPA.10.064の軽鎖可変領域は、CDRを、26残基〜35残基(064CDRL1、配列番号:12)、51残基〜57残基(064CDRL2、配列番号:13)、そして90残基〜100残基(064CDRL3、配列番号:14)に含む。
【0037】
ELISAにおいてhVEGF165と高親和性でもって結合し、そしてhVEGF165のVEGF−R1およびVEGF−R2に対する結合を阻害する、XPA.10.064とXPA.10.072scFvsの能力に基づいて、それらの抗体は、さらなる機能的研究のためにscFv−FcおよびIgG2への転換のために選択された。ビアコア(Biacore)分析により決定されたところでは、XPA.10.064およびXPA.10.072IgG2は、hVEGF165に対して類似の高い結合能を示し、その一方で、mVEGF165とは弱い結合を示すのみであった。両方の抗体、hVEGF121とも結合する。XPA.10.064およびXPA.10.072IgG2のhVEGF165に対する結合親和性は、それぞれ1.5nMおよび1.7nMであり、そして、両方の抗体は、ベバシズマブの約二倍の速さの解離速度を示した。ビアコア分析は、XPA.10.064およびXPA.10.072IgG2が、ベバシズマブより高い程度で、hVEGF165のVEGF−R1およびVEGF−R2に対する結合をブロックすることも明らかにした。VEGFシグナル伝達を阻害するXPA.10.064とXPA.10.072の能力は、両方の抗体がhVEGF165誘導性VEGF−R2リン酸化を阻害することを示す、ELISA実験により確認された。
【0038】
エピトープ分析は、XPA.10.064およびXPA.10.072が、hVEGF165のリニア・エピトープと結合すること、ならびに、これらのエピトープが、ベバシズマブにより結合されるエピトープと少なくともある程度重複することを明らかにした。免疫組織化学分析は、ベバシズマブとは異なり、XPA.10.064とXPA.10.072の両方が、広範囲の組織交差反応性を示した。両方の抗体は、HUVEC増殖を阻害し、そして両方とも、生体内で脈管形成および腫瘍成長を阻害する。XPA.10.064とXPA.10.072の特徴の概要は、表1に記載される。
【0039】
従って、本明細書中の特定の実施形態において提供されるものは、配列番号:4および5記載の、XPA.10.064の重鎖および軽鎖を含む、抗体である。他の実施形態において、それぞれ配列番号:2および3に記載の、XPA.10.072の重鎖および軽鎖を含む抗体が、提供される。hVEGF165とhVEGF121に対するそれらの高い結合能、およびVEGF−R1およびVEGF−R2に対するVEGF結合およびVEGF誘導性受容体リン酸化を阻害するそれらの能力に基づいて、本明細書中で提供される抗体は、VEGFシグナル伝達を阻害して、VEGF経路をブロックするために用いられうる。この基礎に則り、本抗体は、VEGF発現に付随する様々な状態を処置するのに用いられうる。
【0040】
本明細書中で提供される抗体は、HUVEC増殖を阻害し、試験管内で脈管形成を阻害することが見出された。したがって、該抗体は、増大した脈管形成を伴うさまざまな状態を処置するために用いられうる。例えば、該抗体は、腫瘍部位からの血管の増殖を妨げて、かくして腫瘍成長を阻害することによって、癌を処置するために用いられうる。同様に、該抗体は、腫瘍部位で血管を破壊し、結果として腫瘍壊死とすることにより、癌を処置するために用いられうる。癌の処置に関する本明細書中で開示される抗体の効能は、生体内で確認された。
【0041】
特定の実施形態において、本明細書中で提供される抗体は、ベバシズマブと類似もしくはより大きなレベルで、脈管形成および/または腫瘍成長を阻害しうる。生体内A673腫瘍成長阻害実験において、XPA.10.064およびXPA.10.072の両方が、試験されたすべての投薬量で、ベバシズマブと類似のレベルで、A673腫瘍成長を阻害した。特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体は、低投薬量または濃度で投与された場合に、ベバシズマブのレベルと類似もしくはそれ以上のレベルで脈管形成および/または腫瘍成長を阻害しうる。本明細書中で提供される抗体は、ベバシズマブと比較して、類似のまたは改善された薬物動力学(PK)特性を示しうる。例えば、抗体は、ベバシズマブと比較して、増加した循環半減期または低下された免疫原性を示しうる。抗体がベバシズマブに対する類似のまたは改善された薬物動力学特性を示す、特定の実施形態において、該抗体は、ベバシズマブ投与の増加した間隔に伴う悪影響を示すことなく、ベバシズマブよりも長期の間隔にわたって投与されうる。
【0042】
本明細書中で開示される抗体は、少なくとも部分的にVEGF経路により制御される異常脈管形成を伴ういずれかの状態の処置に、用いられうる。増加したVEGF発現レベルを一般に伴うこれらの状態は、増加した脈管形成を伴う眼疾患、例えば湿潤型AMDまたは増殖性網膜症、例えば、糖尿病網膜症、糖尿病性腎臓病および他の糖尿病性脈管増殖疾患、嚢胞性線維症およびさまざまな腫瘍型を含む(Amoroso 1997; McColley 2000; Khamaisi 2003)。
【0043】
本明細書中で開示される抗体を用いて処置されうる腫瘍型は、限定するものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、白血病またはリンパ系悪性腫瘍を含む。より詳細には、本明細書中で開示される抗体を用いて処置されうる腫瘍型は、限定するものではないが、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃の癌または胃癌、例えば消化管癌、膵癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌腫、腎臓の癌または腎臓癌、前立腺癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌腫、頭頸部癌、および小児癌(例えば、小児肉腫)を含む。加えて、腫瘍は、悪性(例えば、癌)であっても、良性(例えば、過形成、嚢胞、偽嚢胞、過誤腫および良性新生物)であってもよい。
【0044】
本明細書中で開示される抗体を用いて処置されうる腫瘍型は、特定のバイオマーカを伴う癌も含む。例えば、バイオマーカは、限定されるものではないが、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)癌抑制遺伝子における変異および/または低酸素誘導因子−1a(HIF−1)の過剰発現を含む。特定の実施形態において、抗体は、VHL癌抑制遺伝子における変異を示す癌を処置するために用いられうる。VHL遺伝子における変異は、結果として低酸素誘導性転写因子−1αおよび2αを構成的に安定化し、それがVEGF遺伝子中のエンハンサー因子と結合し、脈管形成を刺激する(Harris 2000)。本明細書中で開示される抗体を用いて処置されうるVHL変異腫瘍型は、例えば、中枢神経系の血管芽腫、レチナール血管芽腫、内リンパ嚢腫瘍、明細胞、腎細胞癌、および/または腎嚢胞、褐色細胞腫、膵嚢胞、神経内分泌腫瘍、ならびに精巣上体および広間膜嚢腺腫を含む。被検体は、既知の方法、例えば、ネステッド(nested)逆転写ポリメーラゼ連鎖反応またはネステッド一本鎖高次構造多型分析を用いた分子検出を通じて、VHL遺伝子変異の存在につて、選択またはスクリーニングされる(Ashidaら、J. Urol. 169:20898-93 (2003))。確認された被検体は、次いで、本発明による抗体を用いた処置を受ける。他の実施形態において、抗体は、被検体のHIF−1αの過剰発現を示す癌を処置するために、用いられてもよい。このHIF−1α過剰発現は、組織(例えば、脳、胸部、頸部、食道、口腔咽頭、卵巣および前立腺組織)の生検を通じて調べることができる。確認された被検体は、抗体による処置、または抗体とHIF−1α阻害剤、例えば2−メトキシエストラジオール、4−O−メチルサルセルネオール(methylsarcerneol)、マナッサチン(manassantin)A、マナサッチンB1、NSC−134754、NSC−643735、トポテカン、SCH66336、PX−478、R115777、セテュキマブ(Cetuximab)、103D5RおよびNSAID(KimbroおよびSimons, Endocrine-Related Cancer, 13:739-749 (2006)を参照のこと)との組み合わせによる処置について、選択およびスクリーニングされる。
【0045】
本明細書中で記載される抗体によって処置されうる他の状態は、炎症性条件、例えば関節リウマチ、乾癬、強皮症、慢性閉塞性肺疾患および喘息を含む。特定の実施形態において、本明細書中で提供される抗体は、ベバシズマブにより処置に対して耐性となる状態を処置するのに用いられうる。
【0046】
本明細書中で提供される抗体は、さまざまな治療目的ではない用途に利用することもできる。特定の実施形態において、該抗体は、hVEGF165、他のVEGFアイソフォームまたはそれらの断片を精製するための結合性精製物質として用いることもできる。これらの実施形態において、抗体は、当分野で既知の方法を用いて、レジンまたは濾紙などの固相上に固定されうる。該抗体は、溶液からhVEGF165、他のVEGFアイソフォームまたはそれらの断片を沈殿させるために用いることもできる。他の治療目的ではない実施形態において、該抗体は、さまざまな試験管内または生体内での診断用途または検出用途に用いられうる。これらの実施形態のいくつかにおいて、該抗体は、検出可能な標識とコンジュゲートされていてもよい。他の実施形態において、該抗体は、検出可能な標識とコンジュテートされていなくてもよく、該抗体と結合する標識化抗体を用いて検出されてもよい。特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体は、hVEGF165発現を検出するために用いることもできる。これらの実施形態のいくつかにおいて、該抗体は、増加したhVEGF165発現に付随する状態を診断するために用いることもできる。例えば、該抗体は、被検体における増大したhVEGF165に付随する状態を診断するために、被検体からの生体試料と接触させうる。同様に、該抗体は、直接被検体に投与されてもよく、そして、hVEGF165に対する結合は、当分野で既知の方法を用いていて検出される。
【0047】
変異体エピトープ結合試験は、本明細書中で開示される抗体が、少なくとも部分的にベバシズマブにより認識されるエピトープと重複するVEGF上のリニア・エピトープに結合することを、示す。従って、特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体は、hVEGF165(配列番号:1)の79残基〜94残基からなるもしくは含むエピトープと結合しうる。同様に、抗体は、完全にもしくは部分的に、配列番号:1記載の79残基〜94残基に相当する配列と重複するエピトープに結合しうる。エピトープの重複に基づき、特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体は、hVEGF165に結合するベバシズマブを競争的に阻害しうる。
【0048】
好ましくは、本明細書中で提供される抗体は、ヒトにおける消失半減期(T1/2)が17日〜21日であるベバシズマブの消失半減期と同等もしくはそれ以上の、ヒトにおける消失半減期を有していてもよい。消失半減期は、投与された抗体の血漿濃度が半分にまで減少するのに要する時間を意味し、それは、当分野で既知の方法を用いて算出することができる。特定の実施形態において、本明細書中で開示された抗体の消失半減期は、少なくとも17日でありうる。特定の他の実施形態において、それは17日〜21日であってもよいし、これらの実施形態のいくつかにおいて、21日を超えてもよい。
【0049】
本明細書中で開示される抗原結合断片は、全長抗体の断片または断片群、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、FvまたはscFv断片を含みうる。これらの断片は、当分野で周知の方法、例えばFab断片を産生するパパインまたはF(ab’)2を産生するペプシンなどの酵素を用いた蛋白分解開裂を用いて、全長の抗体から産生されうる。特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体は、1つまたは複数のヒト枠組み構造領域に継ぎ足された配列番号:2〜5の1つまたは複数のCDRを含んでもよい。
【0050】
さまざまなコンジュゲートが、本明細書にて提供される抗体と、連結されてもよいし、会合されてもよく、または、組み合わせて用いられてもよいことは、当業者には認められよう(例えば、「Conjugate Vaccines」, Contributions to Microbiology and Immunology, J. M. CruseおよびR. E. Lewis, Jr. (編), Carger Press, New York, (1989)を参照のこと)提供した。これらのコンジュゲートは、共有結合、親和結合、相互作用、配位結合、複合体化、会合化、混和または付加、その他の方法により抗体と連結されてもよい。特定の実施形態において、本発明の抗体は、1つまたは複数のコンジュゲートに結合するために利用されうるエピトープ結合部分の外側に特異的な部位を含むよう作製されてもよい。例えば、そのような部位には、コンジュゲートに対する共有結合を容易にするための1つまたは複数の反応性のアミノ酸残基、例えばシステインまたはヒスチジン残基が挙げられる。特定の実施形態において、抗体は、コンジュゲートと間接的に連結されてもよく、または別のコンジュゲートを通じて連結されてもよい。例えば、抗体は、ビオチンに接合され、次いで、アビジンに連結された第2のコンジュゲートと間接的に連結されてもよい。
【0051】
特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体に連結され、または組み合わせて用いられるコンジュゲートは、該抗体の、例えば半減期を増加させる、または該抗体の免疫原性を低下させるポリエチレングリコール(PEG)、1つまたは複数の薬物動力学(PK)特性を改変することを意味する、1つまたは複数の試薬を含んでいてよい(例えば、Katre 1990を参照のこと)。
【0052】
特定の実施形態において、コンジュゲートは、本明細書中で用いられるような細胞間メディエイタとして細胞に作用するいずれかの蛋白質を意味する、1つまたは複数のサイトカインを含んでもよい。サイトカインの例には、限定するものではないが、リンフォカイン、モノカイン、ヒト成長ホルモン、N−メチオニル・ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、サイロキシン、インスリン、プロインスリン、レラキシン、プロレラキシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、肝臓の成長因子、線維芽細胞成長因子、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、腫瘍壊死因子αおよびβ、ミュラー阻害物質、マウス・ゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン、アクチビン、インテグリン、トロンボポエチン(TPO)、神経成長因子、例えばNGF−β、血小板成長因子、トランスフォーミング成長因子、例えばTGF−αおよびTGF−β、インスリン様成長因子IおよびII、エリスロポイエチン(EPO)、骨誘導因子(osteoinductive factor)、インターフェロン、例えばインターフェロン−α、−βおよび−γ、コロニー刺激因子、例えばマクロファージCSF、顆粒球・マクロファージCSFおよび顆粒球CSF、インターロイキン、例えばIL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11およびIL−12、腫瘍壊死因子、例えばTNF−αおよびTNF−β、そして他のポリペプチド因子が含まれる。本発明の抗体およびその抗原結合断片は、前述のサイトカインのいずれかと組み合わせて提供および/または投与されてよい。
【0053】
特定の実施形態において、本明細書中で開示された抗体と連結され、または組み合わせて用いられるコンジュゲートは、本明細書中で用いられるような癌の処置に有用ないずれかの試薬を意味する、1つまたは複数の化学療法剤を含んでいてもよい。化学療法剤の例には、限定するものではないが、テモゾロマイド、特異的にIGF1受容体と結合する抗体、ロナファーニブ、カルシトリオール、テムシロリムス、イリノテカン、カンプトセシン、ドキスルビシン(doxurubicin)、アドリアマイシン、毒素(例えば、リシン)、ジフテリア(diptheria)毒素または別の細菌の、菌類の、植物のまたは動物起源の毒素、凝血剤、アルキル化剤(例えば、チオテパおよびシクロスフォスミド(CYTOXAN(登録商標))、スルホン酸アルキル類(例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン)、アジリジン(例えば、ベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパ(uredopa))、メチレンイミンおよびメチルアメラミン(例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphaoramide)およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine))、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロランブシル、クロルナファジン、クロフォスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド(trofosfamide)およびウラシルマスタードなど)、ニトロソウレア(nitrosurea)(例えば、カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、ホテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン)、
【0054】
抗生物質(例えば、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルノマイシン(carnomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン(olivomycin)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン)、抗代謝剤(例えば、メトトレキサートおよび5‐フルオロウラシル(5−FU))、葉酸類似体(例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート)、プリン類似体(例えば、フルダラビン、6‐メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン)、ピリミジン類似体(例えば、アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6‐アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン、5−FU)、アンドロゲン類(例えば、カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン)、抗副腎(例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン)、葉酸リプレニッシャー(replenisher)(例えば、フロリン酸(frolinic acid))、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、アムサクリン、ベストラブシル(bestrabucil)、ビサントレン、エダトラキセート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジクオン、エルフォルニチン(elformithine)、エリプチニウム・アセテート、エトグルシド(etoglucid)、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダミン(Ionidamine)、ミトグアゾン(mitoguazone)、ミトキサントロン、モピダモール(mopidamol)、ニトラクリン(nitracrine)、ペントスタチン、フェナメット(phenamet)、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジン、プロカルバジン、
【0055】
PSK(登録商標)、ラゾキサン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミト・ラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「AraC」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキサン類(例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、プリンストン、ニュージャージー州)およびドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer、アントニー、フランス)、ABRAXANE(登録商標)(約130nmの粒径を有する注射用懸濁剤のためのパクリタキセル・アルブミン結合粒子))、クロランブシル、ゲムシタビン、6−チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、プラチナ類似体(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン)、サトラプラチン、オキサリプラチン、ビンブラスチン、プラチナ、エトポシド(VP−16)、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ナベルビン(navelbine)、ノバントロン(novantrone)、テニポシド、ダウノマイシン、アミノプテリン、キセローダ(xeloda)、イバンドロナート(ibandronate)、CPT−11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチン酸、エスペラマイシン(esperamicin)、カペシタビン、ゲムシタビン、および上記のいずれかの医薬上許容される塩類、酸類および/または誘導体が、含まれる。化学療法剤には、腫瘍におけるホルモン作用を調節もしくは阻害するよう働く抗ホルモン剤(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)およびトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン、ならびにフルタミド、ニルタミド(nilutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、ロイプロリドおよびゴセレリンを含む抗アンドロゲン物質)が、含まれうる。本発明の抗体およびその抗原結合断片は、前述の化学療法剤のいずれかと組み合わせて提供および/または投与されうる。
【0056】
特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体に連結されるコンジュゲートは、1つまたは複数の検出可能な標識を含んでもよい。そのような標識には、限定するものではないが、123I、124I、125I、131I、35S、3H、111In、112In、14C、64Cu、67Cu、86Y、88Y、90Y、177Lu、211At、186Re、188Re、153Sm、212Biおよび32Pのような放射性同位元素、他のランタニド、発光標識、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリンまたはテキサス・レッド)および酵素−基質標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼまたはβ−D−ガラクトシダーゼ)が、含まれる。
【0057】
高VEGF発現レベルおよび/または増加した新脈管形成を伴う疾患の処置のために、本発明の抗体は、医薬上許容される培地内で製剤として有効量で調製されうる。この製剤は、生理学的に寛容される液剤、ゲル剤、固体担体、希釈剤、アジュバントもしくは賦形剤またはそれらいくつかの組み合わせを含んでもよい。有効な投薬量は、部分的に被検体の体重、年齢および健康状態ならびに投与経路や腫瘍進行の程度に依存するであろう。抗体を含む医薬製剤は、単独で、または、他の既知の治療薬と組み合わせて投与されてよい。例えば、抗体は、VEGF経路を阻害することが知られている、他の抗体または抗体に基づく治療薬を含む、いずれかの治療薬と組み合わせて投与されてよい。同様に、抗体は、VEGF経路を阻害しないが、代わりに、標的疾患に関連する他の経路または徴候を標的とする、治療化合物と組み合わせて投与されてもよい。例えば、本明細書中で開示される抗体は、癌の処置のための化学療法、放射線治療および/または手術と組み合わせて投与されてもよい。他の治療薬と「組み合わせ」て投与される抗体は、その試薬と同時に投与される必要はない。この成句が本明細書中で用いられる場合、他の試薬の前後に投与される抗体は、その試薬と「組み合わせて」投与されると考えられる。抗体は、皮下、腹膜内、血管内、筋肉内、皮内、経皮注射、その他の方法によって投与されてもよい。
【0058】
特定の実施形態において、本明細書中で開示される抗体を発現するための発現系が、提供される。これらの発現系は、抗体をコードするポリヌクレオチド、これらのポリヌクレオチドを含むベクターおよびこれらのベクターを含む宿主細胞を包含する。抗体をコードするポリヌクレオチドは、当分野で既知の方法を用いて、単離もしくは合成され、そして増幅またはクローニングのための複製ベクターに挿入されてよい。抗体の可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)をコードするポリヌクレオチドは、単一のベクターから発現されてもよいし、または、それらは、二個の別々のベクターを用いて発現され、続いて試験管内でアセンブリされてもよい。特定の実施形態において、それらは、同じ細胞およびアッセンブルされた細胞内で二個の別々のベクターから共発現されてもよい(米国特許第5,595,898号を参照のこと)。適切なベクターは、種々の調節配列、例えばプロモーター、エンハンサーまたは転写開始配列、ならびに表現型選択のためのマーカーをコードする遺伝子を含んでもよい。そのようなさらなる配列は当分野で周知である。特定の実施形態において、ベクターは、ヒトIgG2免疫グロブリンの重鎖(CH)および軽鎖(CL)の定常領域をコードするポリヌクレオチド配列を含んでもよい。別には、ベクターは、抗体全体というよりもFv断片を含む発現されたポリペプチドによる、抗体のVH鎖とVL鎖だけ発現してもよい。ベクターは、ポリヌクレオチド配列の増幅または発現のために適切な宿主細胞に挿入されうる。宿主細胞は、当分野で既知のさまざまな培地、例えば最小必須培地(Minimal Essential Medium)(MEM)(Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)(DMEM)(Sigma)とハム(Ham's)F10(Sigma)において抗体産生のために培養されうる。培地は、様々な試薬、例えばホルモン類、成長因子、塩類、緩衝剤、ヌクレオチド、抗生物質、微量元素(trace element)、グルコースまたは他のエネルギー源が補充されてもよい。温度およびpHなどの培養条件は、当分野で周知のパラメータを用いて調整されうる。
【0059】
本発明の抗体は、癌細胞に対する特異的な送達のためのコンジュゲートを含んでもよい。加えて、腫瘍細胞に対する抗体の結合は、宿主の免疫応答を集めるために用いられてもよい。この宿主免疫応答は、本明細書中で提供される完全ヒト抗体に対応する1つの結合部位と、細胞障害性T細胞を認識する別の結合部位を有する、二価の抗体を利用することにより増大されうる。
【0060】
特定の実施形態において、本発明の抗体は、高フコース含量のオリゴ糖を含んでもよい。他の実施形態において、本発明の抗体は、低フコース含量であってよく、例えばフコースを含まないFc抗体であってもよい。本発明の低フコース抗体は、低フコシル化活性を有する細胞系、例えばラットYB2/0細胞(Shinkawa 2003)またはCHO変異細胞系統Led3(Shields 2002))を用いて生成することができる。
【0061】
医薬組成物(群)。医薬上許容される担体と共に本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物も、本発明の範囲内にある(例えば、単回組成物またはキットで別々に)。医薬組成物は、医薬当分野で周知のいずれかの方法によって調製されうる:例えば、Gilmanら、(編)(1990), The Pharmacological Bases of Therapeutics, 第8版, Pergamon Press; A. Gennaro(編),Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版,(1990), Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania.; Avisら、(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications Dekker, New York; Liebermanら、(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets Dekker, New York;およびLiebermanら、(編)(1990), Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems Dekker, New Yorkを参照のこと。
【0062】
さらなる化学療法剤を伴ってもよい、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物は、典型的に医薬上許容される賦形剤および添加剤そして通常の技術を用いて調製されうる。そのような医薬上許容される賦形剤および添加剤には、無毒で適合性のある充填剤、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、潤滑剤、調味料、増粘剤、着色剤、乳化剤およびその類似物が含まれる。すべての投与経路が考えられ、限定するものではないが、非経口投与、(例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、局所、腹腔内、吸入、頭蓋内)、および非経口でない投与(例えば、経口、経皮、鼻腔内、眼内、舌下、直腸および局所)が含まれる。
【0063】
注射可能物質は、通常の剤形、溶液剤または懸濁剤、注射前に液体の液剤または懸濁剤に適した固体剤形として、あるいはエマルジョンとしてのいずれかで、調製されてもよい。注射可能薬物質、液剤およびエマルジョンは、1つまたは複数の賦形剤を含んでもよい。賦形剤には、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセリンまたはエタノールが含まれる。加えて、所望により、投与される医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解性増化剤および他のそのような試薬(例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレアートおよびシクロデキストリン)など、少量の無毒な補助剤を含んでもよい。
【0064】
本発明の実施形態において、非経口調製で用いられる医薬上許容される担体には、水性賦形剤、非水性賦形剤、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔薬、懸濁剤および分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート試薬、および医薬上許容される物質が含まれる。
【0065】
水性賦形剤の例には、生食注射、リンゲル注射、等張デキストロース注射、無菌水注射、デキストロースと乳酸加リンゲル注射が含まれる。非水性非経口賦形剤には、植物起源の不揮発性油、綿実油、とうもろこし油、胡麻油および落花生油が含まれる。静菌性または静真菌性濃度での抗菌物質が、フェノールまたはクレゾール、水銀剤、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムを含む、多回投与容器にパッケージにされた非経口調製に加えられてもよい。等張剤には、塩化ナトリウムおよびデキストロースが含まれる。緩衝剤には、リン酸塩とクエン酸塩が含まれる。抗酸化剤には、重硫酸ナトリウムが含まれる。局所麻酔薬には、塩酸プロカインが含まれる。懸濁剤および分散剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが含まれる。。乳化剤には、ポリソルベート(Polysorbate)80(TWEEN−80)が含まれる。金属イオン封鎖剤または金属イオンのキレート剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはEGTA(エチレングリコール四酢酸)を含む。医薬担体は、水混和性賦形剤に関するエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコール;そして、pH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸を含んでもよい。
【0066】
本発明の実施形態において、非経口投与のための調剤には、注射に直ぐ使用できる滅菌液剤、
使用直前に溶媒と組み合わせて直ぐ使用できる、皮下注射用錠剤を含む凍結乾燥粉剤などの滅菌乾燥可溶性品、注射に直ぐ使用できる滅菌懸濁剤、使用直前に賦形剤と組み合わせて直ぐに使用できる滅菌乾燥不溶性製品、および滅菌乳剤が含まれる。溶液は、水性でも、または非水系でもよい。
【0067】
さらなる化学療法剤と組み合わされてもよい本発明の抗体またはその抗原結合断片の濃度は、注射が所望の薬理効果を発揮するのに有効な量を提供するよう、調整されうる。当分野で知られていているように、その正確な用量は、特に患者または動物の年齢、体重および状態に依存する。
【0068】
本発明の実施形態において、単位用量の非経口調剤は、アンプル、バイアルまたは針を有する注射器にパーケージされる。非経口投与のための調剤はすべて、当分野で知られている、もしくは熟知されているように、無菌でなければならない
【0069】
本発明の実施形態において、無菌の、凍結乾燥粉剤は、抗体またはその抗原結合性断片を溶解することによって調製され、それは、適切な溶媒中で、さらなる化学療法剤またはその医薬上許容される誘導体と組み合わされていてもよい。溶媒は、粉剤またはその粉剤から調製された再構成された溶剤の安定性または他の医薬成分を改善する賦形剤を含んでもよい。用いられうる賦形剤は、限定するものではないが、デキストロース、ソルビトール(sorbital)、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、シュークロースまたは他の適当な物質が挙げられる。溶媒は、緩衝液、例えば、クエン酸塩、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、または当業者には既知の他の緩衝液を含んでいてもよく、1つの実施例においては、およそ中性のpHである。次に、当業者であれば既知の一般的な条件下での凍結乾燥前の溶液の濾過滅菌法により、所望の製剤が提供される。1つの実施形態において、結果として生じる溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、抗VEGF抗体またはその抗原結合断片あるいはその組み合わせの単回投薬量または複数回分の投薬量を含んでもよい。厳密な試料撤回および厳密な投薬を助けるため、投薬量または投薬量セットに必要とされる量よりも少し多い量(例えば、約10%)で過剰充填したバイアルが許容される。凍結乾燥粉剤は、適当な条件下、例えば4℃〜室温で保存することができる。
【0070】
凍結乾燥粉剤の注射用蒸留水による再構成は、非経口投与に使用するための製剤を提供する。本発明の実施形態において、再構成のために、凍結乾燥粉粉剤は、滅菌水または他の適当な液体担体に加えられる。正確な量は、所定の選択された治療に依存する。その量は、経験的に決定されてもよい。
【0071】
以下の実施例は、特許請求される発明をよりよく例示するために提供されるものであって、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。それは単に例示の目的になされるものであって、特定の材料が言及される範囲に、本発明を制限することを目的とするものでない。当業者であれば、発明の能力を行使することなく、そして、本発明の範囲から逸脱することなく、同等の手段または反応物を創り出すことができる。まだ本発明の範囲内に属しながらも、多くの改変が、本明細書中に記載の手順においてなされ得ることは理解されよう。そのような改変が本発明の範囲内に含まれることは、発明者の意図するところである。
【0072】
実施例
実施例1:hVEGF165に結合する抗体の創出:
hVEGF165に結合する能力を有する抗体断片パネルを同定するために、ヒト一本鎖Fv(scFv)ファージディスプレイ・ライブラリを、固定したhVEGF165に対してパニングした。パニングは、標準的なプロトコルを用いて行った(例えば、Methods in Molecular Biology, vol. 178: Antibody Phage Display: Methods and Protocols: P.M. O'BrienおよびR. Aitken(編), Humana Press;「Panning of Antibody Phage-Display Libraries」、Coomber, D.W.J. , pp. 133-145、および「Selection of Antibodies Against Biotinylated Antigens」、Chames, P.ら、pp. 147-157を参照のこと)。
【0073】
簡単には、NUNC(登録商標)MAXISORPプレートの3個のウェルを、PBS中、濃度10μg/mlの組み換えhVEGF165(R&Dシステムズ、カタログ番号293−VE)50μlを用いて被覆した。4℃で一晩インキュベートした後、結合していない部分を、PBS中の5%ミルクを用いて、室温で1時間ブロックした。次いで、5%ミルク/PBS中の約200μlのファージ・ライブラリーを、そのブロックしたウェルに加え、室温で約1時間〜2時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、結合したファージを標準的な方法(例えば、SambrookおよびRussell, Molecule Cloning:A Laboratory Manual, 第3版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001を参照のこと)を用いて溶出した。溶出されたファージを、対数増殖期の大腸菌TG1宿主細胞への37℃で1時間の感染を介して増幅した。感染TG1細胞を、2,500rpm、5分の遠心分離により回収し、15cm、2YT−アンピシリン2%グルコース・アガー・プレート上に撒き、そして30℃で一晩インキュベートした。次いで、このパニング処理を、増幅したファージを用いて再び行った。
【0074】
この、パニング、溶出および増幅のサイクルは、濃度を低下させながら(例えば、ラウンド1では50μg/mlhVEGF165、ラウンド2では10μg/ml、そしてラウンド3では10μg/ml)、3ラウンド繰り返し、撒かれたTG1細胞からポイント単一コロニーを用いて、96ウェル・プレート中の培地に植菌した。ミクロ培養をOD600で0.6まで生育させ、可溶性のscFvのポイント発現を、1mM IPTGの添加により誘導し、30℃で振盪器にて一晩インキュベートした。細菌をスピンダウンし、ペリプラズム抽出物を使用して、固定したhVEGF165に結合するscFvを標準的なELISAアッセイを用いて試験した。
【0075】
実施例2:XPA.10.064およびXPA.10.072 scFvによる、VEGF受容体に結合するhVEGF165のブロッキング:
hVEGF165結合を示す、実施例1からのファージ・クローンを、マイクロプレート・ベースド・コンペティテブ・スクリーニングDELFIA(登録商標)アッセイ(Perkins Elmer, Waltham, MA)を用いて、VEGF−R1および/またはVEGF−R2に結合するhVEGF165をブロックする、その能力について試験した。
【0076】
簡単には、ビオチン化hVEGF165溶液を、1:1の容量で、終濃度0.5μg/mlとなるよう、実施例1からのペリプラズム抽出物に加えた。この混合物の100μlを、VEGF−R1またはVEGF−R2(R&Dシステムズ:VEGF−R1/Flt−1、カタログ番号321−FL;VEGF−R2/KDR/Flk−1、カタログ番号357−KD)で被覆したプレートに加え、室温で1.5時間インキュベートした。プレートを、PBSTで洗浄し、1:250希釈の、DELIAアッセイ・バッファー中のユーロピュリウム−ストレプトアビジン(Europrium-Streptavidin)を50μl/ウェルで加えた。プレートを室温で1時間インキュベートし、次いで、DELFIAウォッシュ・バッファーを用いて洗浄した。DELFIAエンハンスメント・バッファーを50μl/ウェルで加え、プレートを室温で5分間インキュベートした。プレートを、タイム−リゾルブド・フルオレセンス・ジェミニ(Time-Resolved Fluorescence Gemini)プレート・リーダーで読み取った。
【0077】
実施例3:scFvのscFv−FcおよびIgGへの転換
60%以上までVEGF−R1またはVEGF−R2に結合するhVEGF165を阻害する、実施例2からの2個のscFv、XPA.10.064およびXPA.10.072を、scFv−Fcおよび/またはIgG転換のために選択した。XPA.10.064およびXPA.10.072の重鎖可変領域(重鎖CDRを含む)および軽鎖可変領域(軽鎖CDRを含む)を、図1に示す。その重鎖CDR(例えば、HCDR1、HCDR2およびHCDR3)と軽鎖CDR(例えば、LCDR1、LCDR2およびLCDR3)は、カバット・ナンバリング・システム(Kabat, E.A.ら、1987, in Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services, NIH, USA)により決定された。XPA.10.064およびXPA.10.072の両方のHCDR1、HCDR2そしてHCDR3は、それぞれ、配列番号:6、7および8記載のアミノ酸配列であると決定された。XPA.10.064のLCDR1、LCDR2およびLCDR3は、それぞれ、配列番号:12、13および14記載のアミノ酸配列と決定された。XPA.10.072のLCDR1、LCDR2およびLCDR3は、それぞれ、配列番号:9、10および11記載のアミノ酸配列であると決定された。
【0078】
XPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−Fc融合蛋白質への転換については、scFvのcDNAを、ガンマ2(γ2)重鎖定常領域遺伝子のCH2およびCH3ドメインをコードするようモディファイされた真核生物用発現ベクター(米国特許第7,192,737;国際特許公報第2004/033683)にクローン化した。
【0079】
XPA.10.064およびXPA.10.072のIgGへの転換については、重鎖および軽鎖の両方の可変領域が、カッパ(κ)、ラムダ(λ)またはガンマ2(γ2)重鎖および軽鎖定常領域をコードする真核生物用発現ベクター(米国第2006/0121604)にクローン化した。
【0080】
XPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−FcおよびIgG抗体を、既報のように(米国特許第2006/0121604)293E細胞に一過性に発現させた。形質転換した細胞からの上清を、培養の6日目に回収し、IgGを、プロテインAクロマトグラフィーにより精製した。
【0081】
実施例4:XPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−FcおよびIgG結合動力学のビアコア分析:
XPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−Fcの結合親和性を、BIACORE2000とプロテインA/G(Piece)を高密度でフローセルに固定化したCM5センサーチップ(Biacore)を用いて、評価した。この試験のための希釈バッファーおよびランニングバッファーは、1:50希釈のChemiblocker(登録商標)(Ckemicon)を含むHBS−EP(Biacore)であった。抗体キャプチャー(捕捉)は、約50RU〜70RUの抗体キャプチャーを達成するため、様々な容量の希釈したXPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−Fcを20μl/分でフローセル2(fc2)に注入して行った。抗体濃度は、約0.5μg/mlであった。sf21細胞により発現されるhVEGF165を、5分かけ、30μg/mlで、fc1およびfc2に対して15分の解離を含むKinjectの態様を用いて注入した。3倍希釈系列のhVEGF165の4個の希釈物、濃度5μg/ml(119nM)、1.667μg/ml(39.7nM)、0.55μg/ml(13.2nM)そして0.185μg/ml(4.4nM)を、調製した。リジェネレーション(再生)は、50μl/分で100mM HClを2回、各12秒で注入することで行った。データは、対照フローセルとブランク注入を二重に参照した後、Scrubber2と1:1ラングミュア・インターラクション・モデル(Langmuir interaction model)で処理した。XPA.10.064およびXPA.10.072のscFv−Fcは、hVEGF165に対して高親和性で、ほぼ同一の結合親和性を示した。
【0082】
同様のプロトコルを、XPA.10.064およびXPA.10.072のIgG2の結合動力学を評価するために用いた。XPA.10.064およびXPA.10.072のIgG2は両方とも、類似の低い一桁台のナノモーラーの親和性でもってhVEGF165と特異的に結合し(図2〜4)、mVEGF165に対しては弱い結合を示すのみであった。この抗体は両方とも、ベバシズマブのka値と類似するka値を示した(表2)。
【0083】
実施例5:XPA.10.064およびXPA.10.072のIgGによるVEGF受容体に結合するhVEGF165のブロッキング
hVEGF165のVEGF−R1および/またはVEGF−R2への結合をブロックする、XPA.10.064およびXPA.10.072IgG2の能力を、CM5チップを用いたBiacore2000により評価した。
【0084】
VEGF受容体(R&Dシステムズ)を、アミンカップリング(Biacore)を介して約15,000の密度でCM5チップに固定した。VEGF−R2はfc2に固定し、VEGF−R1はfc4に固定した。フローセル1および3は、リファレンスとして用い、受容体を固定化したフローセルと同様に活性化およびブロックした。HBS−EPランニングバッファー中の0.15μg/mlのhVEGF165は、抗体試料またはバッファーを用いて1:1で混合された。最終の抗体濃度は、15μg/ml、5μg/ml、1.667μg/ml、0.556μg/ml、0.185μg/ml、0.0617μg/ml、0.0206μg/ml、および0μg/mlであった。試料は、ビアコア分析試験による阻害前に少なくとも1時間インキュベートされた。すべての試料は2回で注入され、各組みの抗体の重複測定は、それ自身の陽性対照および陰性対照(それぞれ、VEGFを用いるが抗体を用いない、およびVEGFを用いない)を含んだ。試料は、10μl/分で15分間すべてのフローセルに対して注入された。リジェネレーションは、グリセン(Glycene)、pH1.75を50μl/分で12秒間注入することにより行われた。
【0085】
データ解析について、結合相における結合の直線部分の傾き(30秒〜1分)は、直線フィットを用いて決定された。各点からのシグナルは、最も近いブランクを差し引き、次いで、適合する100%シグナル(抗体を用いない)対照で割り付けられ、そのサイクルの阻害パーセントが得られた。データはGraphPad Prismで作図され、S字用量反応曲線を用いてフィットして、EC50を算出した。
【0086】
XPA.10.064とXPA.10.072のIgG2は両方とも、ベバシズマブと同様のレベルで、hVEGF165のVEGF−R1およびVEGF−R2に対する結合を阻害した(図5−6、表3)。
【表1】
【0087】
実施例6:XPA.10.064およびXPA.10.072によって結合されるhVEGF165エピトープの解析:
XPA.10.064およびXPA.10.072により認識されるhVEGF165エピトープがリニアであるか、それとも立体構造依存的であるかを決定するため、非還元または還元の、加熱変性組み換えhVEGF165の200ng試料3つを用い、3つの別々のSDS−PAGEゲルにおいて電気泳動にかけた。電気泳動にかけられた蛋白質は、Immulon−Pメンブレンにトランスファーされ、そして、そのブロットは、XPA.10.064 IgG、XPA.10.072 IgGまたはベバシズマブ抗体を用いてハイブリダイズされ、1μg/mlのヤギ抗ヒトIgG HRP複合二次抗体と共にインキュベートされた。結合は、増強されたケミルミネセンス(ECL)基質(Pierce)で検出された。
XPA.10.064、XPA.10.072およびベバシズマブはすべて、hVEGF165上のリニア・エピトープに結合した(図7)。
【0088】
実施例7:XPA.10.064およびXPA.10.072 hVEGF121エピトープ結合試験:
XPA.10.064およびXPA.10.072が、ベバシズマブと同じhVEGF121エピトープと結合するかどうかを決定するため、3回のELISA競合結合アッセイを、さまざまなhVEGF121変異体を用いて実施した。
これまでの突然変異分析は、VEGF残基M81、G88、Q89およびG92が、hVEGF165に対するベバシズマブ結合に重要であることを明らかにした(Fuh 2006)。これらの残基が、XPA.10.064とXPA.10.072の結合に重要であるかどうかを決定するため、以下のhVEGF121変異体を作製した:hVEGF121−M81A、hVEGF121−Q89A、hVEGF121−G92AおよびhVEGF121−G88S。変異体を、CHO−K1細胞で一過性に発現させ、そして、細胞上清を、ELISAによる結合分析のために回収した。
【0089】
マイクロタイタープレートを、1μg/ml、2μg/mlもしくは5μg/mlの濃度で、XPA.10.064、XPA.10.072、ベバシズマブまたは対照ポリクローナル・ヤギ抗ヒトVEGF(PAB)を用いて被覆し、4℃で一晩インキュベートした。そのプレートを、室温で1時間、PBS中の30% ChemiBlock(登録商標)(Millipore)を用いてブロックし、30μl、60μl、もしくは100μlの、各変異体のCHO−K1培養上清、または1μg/mlの野生型hVEGF121、組み換えhVEGF165、もしくは組み換えmVEGF165を、適当なウェルに加えた。1時間のインキュベーション後に、そのプレートを洗浄し、室温で1時間、ビオチン化ヤギ・ポリクローナル抗VEGF抗体とともにインキュベートした。検出は、製造業者プロトコルを用いて、HRPコンジュゲート・ストレプトアビジン、続いて、TMB色素基質(Calbiochem)を用いて行われた。
【0090】
XPA.10.064とXPA.10.072のhVEGF121変異体に対する結合パターンは、ベバシズマブのそれと類似しており(表4−5)、このことは、これらの抗体が、重複するまたは類似するエピトープと結合することを示す。
【0091】
実施例8:XPA.10.064とXPA.10.072の組織交差反応性:
凍結された正常なヒト組織アレイ(TMA)は、単一色発色技術(single-color chromogenic technique)を用い、XPA.10.064とXPA.10.072の免疫組織化学(IHC)反応を評価するために用いられた。TMAは、32の正常なヒト組織型を含み、各型は、2人〜3人の異なるドナーからの組織からなる。TMAに加えて、正常なヒト肝臓、腎臓、ファローピウス管、膵臓、尿管および副腎のより多数の切片が、TMAでの染色結果を確認するために、あるいはTMAに含まれない組織に代えて用いられた。陽性対照は、UV−樹脂スライド上にスポットされたhVEGF蛋白質、および抗hVEGFウサギ・モノクローナル抗体による強い染色によって評価された、高レベルのhVEGFを発現する腎臓癌腫組織を含んだ。
【0092】
TMAおよび正常なヒト組織、そしてhVEGF蛋白質スポットおよび腎臓癌腫の陽性対照は、ヒト−ヒトIHC染色プロトコルを用いて、20μg/mlのXPA.10.064、XPA.10.072(ヒトIgG2)またはベバシズマブを用いて染色された。ヒト扁桃炎の場合も、染色プロトコルの効果を観察するために含まれた。最終的なプロトコルは、扁桃組織のB細胞領域中の、組織の内在性の免疫グロブリンと反応性を示さなかった。陰性対照抗体は、ヒトIgGIとIgG2(Sigma, St. Louis, MO)およびヒトKLH抗体のCHO.KLHG2.60(IgG2)であった。
【0093】
XPA.10.064、XPA.10.072およびベバシズマブは、すべて、hVEGF蛋白質スポットと、0−4+の尺度で2−3+(ここで、4+は、最も強い染色強度を示す)で反応した。腎癌組織に関して、XPA.10.064とXPA.10.072が、腫瘍細胞の細胞原形質を染色したが、ベバシズマブは不確かな染色を示した。
【0094】
ヒトIgG1とIgG2は、最小のバックグラウンド染色を与えるのみで、いずれの組織因子も染色しなかった。CHO.KLHG2.60は、副腎皮質の細胞と、食道、乳腺、膵臓、前立腺、胃、甲状腺、尿管、子宮頸部およびファローピウス管の上皮細胞と、反応性を示した。この反応性のため、ヒトIgG1およびIgG2は、陰性対照の参照物として用いられた。
【0095】
XPA.10.064は、試験抗体の中で、最も幅広い組織反応性スペクトルを示した。XPA.10.064は、膀胱、GI管、ファローピウス管、乳腺、前立腺、尿管および子宮の平滑筋細胞で、そして、ファローピウス管、前立腺、皮膚、小腸、胃、甲状腺、尿管、子宮の子宮内膜腺および子宮頸部の上皮細胞で、強く染色した。加えて、XPA.10.064は、小脳、大脳皮質および脊髄のニューロンおよび神経線維のいくつか、ならびに心臓筋細胞と骨格筋細胞、下垂体の細胞、腎糸球体、肝臓シヌソイド内皮、胸腺の間質細胞、肺のマクロファージおよび副腎皮質の細胞を染色した。XPA.10.072は、小脳、大脳皮質および脊髄で神経繊維を強く染色した。XPA.10.072は、GI管、ファローピウス管、前立腺、尿管および子宮の平滑筋、食道、ファローピウス管、乳腺、前立腺、胃、小腸、甲状腺および尿管の上皮細胞、肺のマクロファージと胎盤の繊維芽細胞/組織球も染色した。ベバシズマブは、正常なヒト組織を染色しなかった。
【0096】
XPA.10.064とXPA.10.072の免疫組織化学的な反応性が、標的結合のオン−もしくはオフ−に応答するかを決定するため、多色の免疫蛍光法に基づくアプローチを利用した。このアプローチは、抗体を試験するための、既知の「金基準(究極の判断基準)」である抗VEGF抗体の免疫反応性との同時比較に基づく。共局在していないことは、標的なしの反応性を示すが、試験抗体の標的ありの反応性は、「金基準」抗体との共局在として現れる。
【0097】
陽性対照細胞(Du145)および陰性対照細胞(Hek293)からの細胞ペレットの凍結切片を、最初の実験で用いられたものと同じ発色IHC方法論を用いて、商業的なマウス抗ヒト抗VEGF抗体(BD Pharmingen、クローンG153−694)により染色した。この抗体はDu145細胞を染色したが、Hek293細胞を染色しなかった。加えて、この抗体を用いて染色した結腸癌の凍結切片は、良好な内部の陰性対照を含む、上皮および腫瘍関連基質成分の反応性において特徴的パターンを示した。従って、G153−694を、「金基準」ポジコン抗体に指定した。
【0098】
ゼノンIgGラベリング・キット(Molecular Probes)のプロトコルを用い、一次抗体を、蛍光色素コンジュゲートされたFcを標的とする抗ヒトFabと予めインキュベートし、続いて、適当な正常血清のモル過剰量で未反応のFabを中和した。染色試薬として蛍光抗体−Fab複合体を用い、続いてDAPIにより核の対比染色を行った。結腸(組織番号4558)の腺癌からの凍結切片を、この共局在研究の対照VEGF陽性組織として用いた。XPA.10.064およびXPA.10.072抗体は、赤色(Alexa Fluor594)で標識され、そして、「金基準」抗体は、緑色(Alexa Fluor488)で標識された。このアッセイを、逆の色の組合せを用いて繰り返し行ったが、本質的に同じ結果が得られた。画像は、ライカTCS−SP、モデルDM RXEレーザー走査型共焦点顕微鏡、およびライカ・コンフォーカル・ソフトウェア、バージョン2.0(Leica Microsystems、ウェッツラー、ドイツ)を用いて取得した。複数の視野は、400×で画像化され(少なくとも3回)、そして、代表的な視野を、イメージ・プロ・ソフトウェア(Image Pro software)(Media Cybernetics, Silver Spring, MD)を用いて、共局在を分析した。ベバシズマブが、結腸癌と凍結されたペレット切片の両方で最初のIHC研究のすべてで本質的に陰性だったので、それは共局在研究に含めなかった。
最初のIHC実験に基づいて予想されたように、XPA.10.064とXPA.10.072は、似通った高い程度の局在を示し、そしてXPA.10.064は組織染色で最も大きな強度を示した(図8−9)。
【0099】
実施例9:XPA.10.064およびXPA.10.072によるHUVEC増殖の阻害:
XPA.10.064およびXPA.10.072 scFv−FcおよびIgG2は、HUVECの増殖をブロックする、それらの能力用について試験された。
プールされたHUVEC(Clonetics番号CC−2519)は、BulletKit−2(rhEGF、rhFGF、rhVGEF、アスコルビン酸、ヒドロコルチゾン、IGF、ヘパリン、ゲンタマイシン/アンホテリシンおよび2%FBSが補充される)を含むECGM完全培地(Clonetics番号CC−3024)中で、生育された。細胞は、T−75フラスコにて2〜3×105細胞で播種され、3〜4日目にコンフルエントに達した。コンフルエント前の単層を、PBSを用いて洗浄し、トリプシン処理し、PBSを含む完全培地で中和した。
【0100】
hVEGF165の存在下でのHUVEC増殖を測定するため、HEK293細胞から発現されたhVEGF165の16点の用量滴定を、基礎増殖培養液中に希釈することによって設けた(最終的に0−200ng/ml、2×希釈、2×濃度、50μg/ウェル)。HUVEC細胞を、冷基礎培地/0.1% BSA中に2×105細胞/mlで再懸濁し、そして50μlの細胞(1×104c/w)を、最終容量100μl/ウェルのhVEGF165滴定プレートの各ウェルに加えた。外側のウェルをPBSで浸水し、プレートが、脱水するのを防げるため、パラフィルムで密閉した。プレートを、96時間、5%CO2、37℃でインキュベートし、次いで、約15分〜20分、室温に移した。Cell TiterGlo(TTG、Promega)を解凍して、基質温度にし、100μlの基質/バッファー混合液を、各ウェルに加えた。プレートは、1分〜2分間、オービタルプレート撹拌器で攪拌し、各ウェルから150μlを、白底、白壁のプレートに移し、暗所で5分〜10分間インキュベートした。このプレートを、1秒積算の照度計で読み取った。
【0101】
増殖阻害アッセイに関して、XPA.10.064、XPA.10.072およびベバシズマブの滴定が、作られた(最終的に0μg/ml〜50μg/ml、3×希釈、4×濃度、25μg/ウェルの最終容量)。1:1のhVEGF165:抗体を、成長因子と抗体の両方の4×濃度で加え、そして、プレートを、2時間、5%CO2、37℃でインキュベートした。50μl/ウェルのVEGF/抗体複合体を、再懸濁したHUVEC細胞に加え、そのプレートを、96時間インキュベートし、そして上記のように、TiterGloバッファーで処理した。
【0102】
XPA.10.064およびXPA.10.072 scFvsおよびIgG2は、HUVEC増殖を阻害した。IgG2の結果は、図10および表6に記載する。
表6:XPA.10.064、XPA.10.072およびベバシズマブによるHUVEC増殖の阻害
【表2】
【0103】
実施例10:XPA.10.064およびXPA.10.072によるVEGF−R2リン酸化の阻害:
hVEGF165によるVEGF−R2リン酸化を阻害するXPA.10.064およびXPA.10.072の能力は、ELISAにより分析した。
溶菌産物プレートを作製するため、2〜6継代のHUVEC細胞を溶解し、EGM2完全培地(Lonza)のTCフラスコに蒔き、そして、1〜2継代生育させた。コンフルエント前の細胞をトリプシン処理し、完全培地を用いてで中和し、PBSで2回洗浄し、そして計数した。細胞を、24w形式(三重のウェル)において、完全培地中1×105細胞/ウェルで蒔き、24時間37℃でインキュベートした。インキュベーション後、細胞を、室温のPBSで2回洗浄し、5時間0.1%BSAを含むEBM2培地(Lonza)中で枯渇させた。PBSを静かに注ぎ、細胞を、用量滴定のhVEGF165(刺激)または複合体形成前のVPA.10.064+hVEGF165、VPA.10.072+hVEGF165もしくはベバシズマブ+hVEGF165(阻害)とともに5分間インキュベートした。VPA.10.064+hVEGF165およびVPA.10.072+hVEGF165は、2×の用量滴定の抗体と2×のhVEGF165を1:1で混合し(終濃度:20ng/ml)、そして、24時間37℃でインキュベートすることにより、作製された。hVEGF165、VPA.10.064+hVEGF165およびVPA.10.072+hVEGF165を静かに注ぎ、細胞を氷冷PBSで2回洗浄した。65μg/ウェルの溶菌バッファー/ウェル(1% NP−40、20mMトリス、pH 8.0、137mM NaCI、10%グリセリン、2mM EDTA、1mM 活性オルトバナジウム酸ナトリウム、10μg/ml ロイペプチン)を加え、細胞を、必要とされるまで、30分間4℃で揺らした。
【0104】
VEGF−R2に特異的な捕捉抗体(R&D Systems、VEGF−R2/KDR/Flk−1、カタログ番号357−KD)を、PBS中8.0g/mlの実施濃度に希釈し、100μl/ウェルで96ウェル・マイクロプレートに被覆した。VEGF−R2/KDR/Flk−1は、リン酸化および非リン酸化VEGF−R2の両方と結合する。このプレートは、密封され、一晩インキュベートされた。各ウェルを、吸水し、洗浄バッファーで5回洗浄し、そして、プレートを300μg/ウェルのブロックバッファーを加えることによりブロックし、そして室温で1時間〜2時間インキュベートした。各ウェルを、吸水し、洗浄バッファーでさらに5回以上洗浄し、100μlのHUVEC溶菌産物を、各ウェルに加えた。プレートを、2時間室温でインキュベートし、そして、ウェルを吸水し、洗浄バッファーで5回洗浄した。100μlのリン酸化チロシンに特異的なHPRコンジュゲート検出抗体を、各ウェルに加え、プレートを被覆し、2時間室温で直射光を遮ってインキュベートした。ウェルを吸水し、洗浄バッファーで5回洗浄し、そして基質溶液100μlを、各ウェルに加えた。プレートは、20分間室温で直射光を遮ってインキュベートされ、そして、停止液50μlを各ウェルに加えた。各ウェルの光学濃度は、450nmにてマイクロプレート・リーダーで読み取られた。
【0105】
hVEGF165の用量滴定で処置されたHUVECは、リン酸化VEGF−R2において増加を示した(図11)。ベバシズマブ+hVEGF165の用量滴定で処置されたHUVECは、VEGF−Rの2リン酸化で低下を示した(図12)。XPA.10.064+hVEGF165またはXPA.10.072+hVEGF165の用量滴定で処置されたHUVECは、VEGF−R2リン酸化で低下を示した。各抗体の結果は、図13にまとめた。
【0106】
実施例11:XPA.10.064およびXPA.10.072による脈管形成阻害:
マトリゲル・プラグ・アッセイを用いて、生体内で脈管形成を阻害するXPA.10.064とXPA.10.072の能力を測定した。
6〜7週齢の雌のNU/NUマウスは、脈管形成を誘導するためのヒトVEGFを産生する、2×106DU145細胞を含む0.5mlのマトリゲルを腹部にs.c.注射された。マウスは、0日と3日目に賦形剤対照または0.1μg/kg、1μg/kg、または5mg/kgのXPA.10.064、XPA.10.072またはベバシズマブでi.p.注射された。7日目に、マウスは屠殺され、そして、マトリゲル・プラグが取り出され、測量され、撮影された。プラグは、以下のスキーム:0は、着色または明らかな血管がない;1は、着色とわずかな血管をうかがわせる;2は、黄色から赤色ではっきり識別できる血管がある;そして、3は、均一な赤もしくはピンク色の黒ずんだ血管、に基づいて、0〜3の視覚によるスコアが与えられた(図14)。プラグは、プラグの順序はばらばらにされた状態で、写真を受け取った盲検式の記録者により評価された。
【0107】
XPA.10.072の投与が、1mg/kgと5mg/kgで脈管形成に有意な減少をもたらした一方で、XPA.10.064の投与は、試験したすべての投薬量で脈管形成に有意な減少をもたらした(図15および16)。脈管形成阻害のレベルは、ベバシズマブ存在下で観察されたレベルと類似した。
マウス血清中のXPA.10.064、XPA.10.072およびベバシズマブ濃度は、最後の抗体投薬後の4日目に、ELISAにより測定した。試験したいずれの投薬量でも、3つの抗体の間には、抗体レベルに有意な差はなかった。
【0108】
実施例12:XPA.10.064とXPA.10.072による腫瘍成長の阻害:
腫瘍成長を阻害するXPA.10.064とXPA.10.072の能力は、以前に開示されたプロトコル(Liang 2006)を用いた、A673横紋筋肉腫腫瘍増殖モデルにより試験された。培養液中で維持されたA673細胞は、コンフルエントまで生育され、次いで、回収され、そして無菌のマトリゲル(Matrigel)に再懸濁された。異種移植は、マトリゲル中の5×106個の細胞を6週間齢の雌のヌードマウスの横腹に、s.c.注射することにより樹立された。腫瘍サイズが約100mm3に達したときに、マウスを、無作為に10匹の8群にわけ、賦形剤のみ(群1)、0.5mg/kgのXPA.10.064IgG2(群2)、5mg/kgのXPA.10.064IgG2(群3)、0.5mg/kgのXPA.10.072IgG2(群4)、5mg/kgのXPA.10.072IgG2(群5)、5mg/kgのCHO.KLHIgG2(群6)、0.5mg/kgのベバシズマブ(群7)、または5mg/kgのベバシズマブ(群8)のみを用いて、18日間週に2回(総投薬6回)i.p.注射した。血液試料および組織試料は、最後の投薬後24時間、72時間および168時間で採取した。
【0109】
XPA.10.064とXPA.10.072の投与は、試験した両方の投薬量で、有意に生体内の腫瘍成長を阻害する結果となった(図17)。両方の抗体の成長阻害のレベルは、試験した投薬量すべてで、ベバシズマブにより観察されたレベルよりもわずかに高かった。血清レベルは、すべての投与された抗体について、所定の投薬量で類似していた(0.5mg/kgの血清レベルは約5μg/ml〜7μg/mlであり;5mg/kgの血清レベルは約75μg/ml〜100μg/mlであった)。
【0110】
上述のように、これまでの記載は、単に本発明のさまざまな実施形態を例示することを目的とするものである。上述の具体的なモディフィケーションは、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな均等物、変更およびモディフィケーションを行いうることは認められよう、そして、そのように均等な実施形態が本明細書中に含まれることも理解されよう。本明細書中で言及されるすべての引用文献は、あたかも本明細書中に記載されたかのように、完全に出典明示により本明細書の一部とされる。
【0111】
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【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8記載の重鎖CDRアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または
2)(a)配列番号:9、配列番号:10または配列番号:11、あるいは(b)配列番号:12、配列番号:13または配列番号:14記載の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
重鎖可変領域が、配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
重鎖可変領域が、配列番号:4記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
軽鎖可変領域が、配列番号:3記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
軽鎖可変領域が、配列番号:5記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
IgG2定常領域をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
抗体が、hVEGF165にKD<2.0nMでもって結合するところの、請求項1〜5のいずれか一項記載の、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
抗体が、ベバシズマブにより結合されるエピトープと重複する、hVEGF165上のエピトープに結合するところの、請求項1〜5のいずれか一項記載の、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
抗体が、hVEGF165のVEGF−R1およびVEGF−R2に対する結合をブロックするところの、請求項1〜5のいずれか一項記載の、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
それを必要とする被検体における脈管形成を阻害する方法であって、該被検体に、治療上の有効量の、請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項11】
それを必要とする被検体における異常な脈管形成を伴う疾患を処置する方法であって、該被検体に、治療上の有効量の、請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項12】
それを必要とする被検体におけるVEGFシグナル伝達と関係する炎症性疾患を処置する方法であって、該被検体に、治療上有効量の、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項13】
該疾患が、リウマチ性関節炎、乾癬、強皮症、慢性閉塞性肺疾患、および喘息からなる群より選択されるところの、請求項12記載の方法。
【請求項14】
それを必要とする被検体における湿潤型急性黄斑変性または糖尿病性網膜症を処置する方法であって、該被検体に、治療上有効量の、請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項15】
それを必要とする被検体における増大したVEGFシグナル伝達と関係する癌を処置する方法であって、該被検体に、治療上有効量の、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項16】
抗体またはその抗原結合断片が、コンジュゲートをさらに含むところの、請求項15記載の方法。
【請求項17】
コンジュゲートが、トキシン、サイトカインおよび化学療法剤からなる群より選択されるところの、請求項16記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、キット。
【請求項19】
配列番号:2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14のいずれかに記載のアミノ酸配列をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項19記載のポリヌクレオチドを含む、単離されたベクター。
【請求項21】
請求項20記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項22】
完全ヒト抗体であって、以下:
(1)該抗体がmVEGF165に結合するKDよりも10倍以上小さいKDでもってhVEGF165に結合すること;
(2)hVEGF165にKD<2.0nMでもって結合すること;
(3)ベバシズマブにより結合されるエピトープと重複する、hVEGF165上のエピトープに結合すること;
(4)hVEGF165のVEGF受容体に対する結合をブロックすること;および
(5)VEGF受容体のhVEGF165誘導性リン酸化を阻害すること
よりなる群から選択される特徴を1つまたは複数有する、抗体。
【請求項23】
hVEGF165にKD<2.0nMでもって結合するところの、請求項22記載の完全ヒト抗体。
【請求項24】
ベバシズマブにより結合されるエピトープと重複する、hVEGF165上のエピトープに結合するところの、請求項22記載の完全ヒト抗体。
【請求項25】
hVEGF165のVEGF受容体に対する結合をブロックするところの、請求項22記載の完全ヒト抗体。
【請求項26】
VEGF受容体が、VEGF−R1またはVEGF−R2であるところの、請求項25記載の完全ヒト抗体。
【請求項27】
VEGF受容体のhVEGF165誘導性リン酸化を阻害するところの、請求項22記載の完全ヒト抗体。
【請求項28】
以下の重鎖CDRアミノ酸配列:配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8を含む、重鎖可変領域を有するところの、請求項22記載の完全ヒト抗体。
【請求項29】
以下の軽鎖CDRアミノ酸配列:配列番号:9、配列番号:10または配列番号:11を含む、軽鎖可変領域をさらに有する、請求項28記載の完全ヒト抗体。
【請求項30】
重鎖可変領域が、配列番号:2記載のアミノ酸配列を含み、そして、軽鎖可変領域が、配列番号:3記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項29記載の完全ヒト抗体。
【請求項31】
以下の軽鎖CDRアミノ酸配列:配列番号:12、配列番号:13または配列番号:14を含む、軽鎖可変領域をさらに有する、請求項28記載の完全ヒト抗体。
【請求項32】
重鎖可変領域が、配列番号:4記載のアミノ酸配列を含み、そして軽鎖可変領域が、配列番号:5記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項31記載の完全ヒト抗体。
【請求項33】
完全な抗体である請求項1〜5のいずれか一項記載の、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項34】
モノクローナル抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項35】
ポリクローナル抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項36】
組み換え抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項37】
二重特異性抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項38】
ヒト化抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項39】
キメラ抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項40】
完全ヒト抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項41】
配列番号:3記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および配列番号:2記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する、単離されたヒト抗体。
【請求項42】
配列番号:5記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および配列番号:4記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する、単離されたヒト抗体。
【請求項43】
請求項41記載の抗体および医薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項44】
請求項42記載の抗体および医薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項45】
請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片、および医薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項46】
少なくとも1つの、XPA.10.064またはXPA.10.072の重鎖相補性決定領域、および少なくとも1つの、XPA10.064またはXPA10.072の軽鎖相補性決定領域を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項47】
重鎖相補性決定領域が、XPA.10.064またはXPA10.072の、HCDR1、HCDR1、HCDR3およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるところの、請求項46記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項48】
軽鎖相補性決定領域が、XPA.10.064またはXPA10.072の、LCDR1、LCDR1、LCDR3およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるところの、請求項46記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項1】
1)配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8記載の重鎖CDRアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または
2)(a)配列番号:9、配列番号:10または配列番号:11、あるいは(b)配列番号:12、配列番号:13または配列番号:14記載の軽鎖CDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
重鎖可変領域が、配列番号:2記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
重鎖可変領域が、配列番号:4記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
軽鎖可変領域が、配列番号:3記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
軽鎖可変領域が、配列番号:5記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
IgG2定常領域をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
抗体が、hVEGF165にKD<2.0nMでもって結合するところの、請求項1〜5のいずれか一項記載の、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
抗体が、ベバシズマブにより結合されるエピトープと重複する、hVEGF165上のエピトープに結合するところの、請求項1〜5のいずれか一項記載の、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
抗体が、hVEGF165のVEGF−R1およびVEGF−R2に対する結合をブロックするところの、請求項1〜5のいずれか一項記載の、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
それを必要とする被検体における脈管形成を阻害する方法であって、該被検体に、治療上の有効量の、請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項11】
それを必要とする被検体における異常な脈管形成を伴う疾患を処置する方法であって、該被検体に、治療上の有効量の、請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項12】
それを必要とする被検体におけるVEGFシグナル伝達と関係する炎症性疾患を処置する方法であって、該被検体に、治療上有効量の、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項13】
該疾患が、リウマチ性関節炎、乾癬、強皮症、慢性閉塞性肺疾患、および喘息からなる群より選択されるところの、請求項12記載の方法。
【請求項14】
それを必要とする被検体における湿潤型急性黄斑変性または糖尿病性網膜症を処置する方法であって、該被検体に、治療上有効量の、請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項15】
それを必要とする被検体における増大したVEGFシグナル伝達と関係する癌を処置する方法であって、該被検体に、治療上有効量の、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、方法。
【請求項16】
抗体またはその抗原結合断片が、コンジュゲートをさらに含むところの、請求項15記載の方法。
【請求項17】
コンジュゲートが、トキシン、サイトカインおよび化学療法剤からなる群より選択されるところの、請求項16記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を含む、キット。
【請求項19】
配列番号:2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14のいずれかに記載のアミノ酸配列をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項19記載のポリヌクレオチドを含む、単離されたベクター。
【請求項21】
請求項20記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項22】
完全ヒト抗体であって、以下:
(1)該抗体がmVEGF165に結合するKDよりも10倍以上小さいKDでもってhVEGF165に結合すること;
(2)hVEGF165にKD<2.0nMでもって結合すること;
(3)ベバシズマブにより結合されるエピトープと重複する、hVEGF165上のエピトープに結合すること;
(4)hVEGF165のVEGF受容体に対する結合をブロックすること;および
(5)VEGF受容体のhVEGF165誘導性リン酸化を阻害すること
よりなる群から選択される特徴を1つまたは複数有する、抗体。
【請求項23】
hVEGF165にKD<2.0nMでもって結合するところの、請求項22記載の完全ヒト抗体。
【請求項24】
ベバシズマブにより結合されるエピトープと重複する、hVEGF165上のエピトープに結合するところの、請求項22記載の完全ヒト抗体。
【請求項25】
hVEGF165のVEGF受容体に対する結合をブロックするところの、請求項22記載の完全ヒト抗体。
【請求項26】
VEGF受容体が、VEGF−R1またはVEGF−R2であるところの、請求項25記載の完全ヒト抗体。
【請求項27】
VEGF受容体のhVEGF165誘導性リン酸化を阻害するところの、請求項22記載の完全ヒト抗体。
【請求項28】
以下の重鎖CDRアミノ酸配列:配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8を含む、重鎖可変領域を有するところの、請求項22記載の完全ヒト抗体。
【請求項29】
以下の軽鎖CDRアミノ酸配列:配列番号:9、配列番号:10または配列番号:11を含む、軽鎖可変領域をさらに有する、請求項28記載の完全ヒト抗体。
【請求項30】
重鎖可変領域が、配列番号:2記載のアミノ酸配列を含み、そして、軽鎖可変領域が、配列番号:3記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項29記載の完全ヒト抗体。
【請求項31】
以下の軽鎖CDRアミノ酸配列:配列番号:12、配列番号:13または配列番号:14を含む、軽鎖可変領域をさらに有する、請求項28記載の完全ヒト抗体。
【請求項32】
重鎖可変領域が、配列番号:4記載のアミノ酸配列を含み、そして軽鎖可変領域が、配列番号:5記載のアミノ酸配列を含むところの、請求項31記載の完全ヒト抗体。
【請求項33】
完全な抗体である請求項1〜5のいずれか一項記載の、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項34】
モノクローナル抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項35】
ポリクローナル抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項36】
組み換え抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項37】
二重特異性抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項38】
ヒト化抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項39】
キメラ抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項40】
完全ヒト抗体であるところの、請求項33記載の抗体。
【請求項41】
配列番号:3記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および配列番号:2記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する、単離されたヒト抗体。
【請求項42】
配列番号:5記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;および配列番号:4記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する、単離されたヒト抗体。
【請求項43】
請求項41記載の抗体および医薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項44】
請求項42記載の抗体および医薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項45】
請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片、および医薬上許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項46】
少なくとも1つの、XPA.10.064またはXPA.10.072の重鎖相補性決定領域、および少なくとも1つの、XPA10.064またはXPA10.072の軽鎖相補性決定領域を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項47】
重鎖相補性決定領域が、XPA.10.064またはXPA10.072の、HCDR1、HCDR1、HCDR3およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるところの、請求項46記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項48】
軽鎖相補性決定領域が、XPA.10.064またはXPA10.072の、LCDR1、LCDR1、LCDR3およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるところの、請求項46記載の単離された抗体またはその抗原結合断片。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2010−507594(P2010−507594A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533598(P2009−533598)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/082164
【国際公開番号】WO2008/133706
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【出願人】(506233391)ゾーマ テクノロジー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/082164
【国際公開番号】WO2008/133706
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【出願人】(506233391)ゾーマ テクノロジー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】
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