説明

完全硬化耐熱鋼から成る部品を熱処理する方法及び完全硬化耐熱鋼から成る部品

本発明は、完全硬化耐熱鋼から成る部品を熱処理する方法であって、熱処理が部品の完全硬化、部品の表面層硬度増大及び部品の焼戻しを含んでいる。部品の表面層硬度増大の際表面層への強すぎる添加を回避しながら部品の表面層硬度増大の際、表面層の一層深い硬度増大を伴う拡散元素の一層大きい侵入深さ及び一層大きい表面層硬度を得て、その結果部品の高められた耐久限度を得るため、上部変態温度AC3より上にある共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dに部品を加熱し、完全なオーステナイト化及び含まれる炭素の分解及び表面層への拡散分子の所望の添加に至るまで部品を共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dに保持し、続いて部品を急冷することによって、部品の完全硬化及び部品の表面層のプラズマイオン硬化が、共通な工程(1)で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全硬化耐熱鋼から成る部品を熱処理する方法であって、熱処理が部品の完全硬化、部品の表面層硬度増大及び部品の焼戻しを含み、完全硬化が、上部変態温度AC3より上の焼入れ温度への部品の加熱、焼入れ温度に部品の保持、部品の急冷であり、拡散元素の作用で行われる表面層硬度増大が、拡散温度に部品の保持及び部品の冷却であり、かつプラズマイオン硬化として行われ、焼戻しが、下部変態温度AC1より下の焼戻し温度まで部品の1回又は複数回の加熱、焼戻し温度に部品の保持、及び部品の冷却、及び選択的な低温冷却であるものに関する。
【0002】
更に本発明は、部品の完全硬化、部品の表面層硬度増大及び部品の焼戻しを含む熱処理を受ける完全硬化耐熱鋼から成る部品に関する。
【背景技術】
【0003】
例えばジェットエンジン又はガスタービンの主軸を支持するために使用される転がり軸受部品のように熱的及び機械的に高負荷される部品は、大抵は完全硬化耐熱鋼から成り、製造の際適当な熱処理により後での使用目的に合わされる。以下部品と称されるそれぞれの工作物は、高い強度で高い靭性及び高い摩耗強度を持つようにする。これを達するため、このような部品の熱処理は、通常部品の完全硬化、表面層硬度増大及び焼戻しを含み、完全硬化と表面層硬度増大の順序は異なっていてもよい。
【0004】
部品の一般に焼入れと称される完全硬化は、純熱的方法である。焼入れ又は完全硬化は、鋼の変態温度AC3である911℃より上の焼入れ温度に部品を加熱し、部品をこの焼入れ温度に保ち、続いて部品を急冷することである。その際部品の加熱が時間的に制御されて、部品全体にできるだけ均一な温度上昇が現れ、従って部品の変形が回避されるようにする。
【0005】
焼入れ温度はいわゆるオーステナイト化温度であり、この温度で体心立方格子のフェライトが面心立方格子のオーステナイトに充分完全に変換し、原料に炭化物の形で結合していた炭素が原子状炭素に分解する。高合金鋼では、焼入れ温度は通常1,050°〜1230℃であり、焼入れ温度の保持期間は0.5〜3時間である。
【0006】
部品の冷却は、それぞれの鋼種類の臨界冷却速度より上にある速度で行われる。これにより部品全体はマルテンサイト組織をとり、高度が60HRCないし通常最大64HRCまで増大する。
【0007】
焼入れには、場合によっては例えば−190℃までの部品の冷却の形で低温処理を続けることができ、それにより存在する残留オーステナイトがマルテンサイトに変換される。焼入れにより、部品に残留応力、通常の場合部品の表面層における引張り応力及び芯における圧縮応力が生じる。しかし部品の表面層における引張り応力は不利である。なぜならば、この引張り応力が使用中に生じる引張り応力により強められるので、亀裂の形成及び亀裂の進展が助長され、従って特に振動負荷の場合部品の耐久限度が減少されるからである。
【0008】
これに反し部品の表面層硬度増大は熱化学的方法である。部品は加熱されかつ拡散温度に保たれて、例えば炭素、窒素又は両方の元素の混合物のような拡散元素を含む固体状、液体状又はガス状媒体又はプラズマにさらされ、このような元素がこれらの条件下で部品の表面層へ拡散し、次の冷却に関連して部品の表面層の硬度を増大する。
【0009】
拡散元素として炭素(浸炭)及び優勢な炭素と窒素との混合物(炭窒化)を使用すると、拡散温度は850°〜980℃の範囲にあり、これに反し拡散元素として窒素(窒化)及び優勢な窒素と炭素との混合物(窒炭化)を使用すると、拡散温度は500°〜580℃の範囲にある。
【0010】
プラズマイオン硬化の形の表面層硬度増大では、処理炉と部品との間に電圧を印加することにより、グロ放電に関連して、プラズマが拡散元素の正に帯電したイオンから発生され、部品の表面へ発射される。これにより部品の表面がまず浄化され、続いて部品の表面層が更に加熱され、表面層への拡散元素の拡散が強められる。グロー放電の電圧の制御により、表面層への拡散元素の添加が精確に計量可能である。これは、表面層への強すぎる添加が不純物炭化物又は不純物窒化物を形成し、その結果部品の強度及び耐食性が低下するという点で、重要である。
【0011】
窒素によるプラズマイオン硬化(プラズマ窒化)では、拡散温度は典型的に350°〜600℃であり、これに反し比拡散元素として炭素を使用すると、拡散温度は700°〜1000℃である。表面硬化により得られる硬度は66HRCまでである。通常の場合表面層強度増大後、部品の表面層範囲に圧縮残留応力が存在し、部品の芯に引張り残留応力が存在し、その結果振動負荷において一層高い負荷能力が生じる。しかし表面層の今まで得えられた硬化の最大0.2mmの深さは比較的小さく、大抵の場合行われる研削のような最終加工により、この深さが更に減少される。拡散温度の保持期間は0.5〜4時間とすることができる。
【0012】
部品の焼戻しは、大抵の場合完全硬化及び表面層硬度増大の後に最後の工程として行われ、鋼の下部変態温度AC1より下の焼戻し温度への部品の場合によっては数回の加熱、この焼戻し温度に部品の保持、及びそれに続く部品の冷却である。これによりマルテンサイト組織の変化が起こり、完全硬化の際生じる脆性及び残留応力の減少従って部品の靭性の増大をもたらす。高合金鋼では焼戻し温度は500°〜600℃の範囲にある。焼戻し温度の保持期間は約1〜2時間である。焼戻しにより行われる硬度の減少は、鋼の種類に応じて1〜5HRCである。
【0013】
鋼を熱処理する熱的及び熱化学的方法についてのそれ以外の情報は、ドイツ工業規格及びボッシュ社の自動車技術ハンドブック第24版、304ページ以降の「熱処理」の章からわかる。
【0014】
腐食抵抗を高めるため部品の表面硬化の際炭素を窒素に代えることを対象としたドイツ連邦共和国特許第4033706号明細書には、下部変態温度AC1より上にある拡散温度で窒素により表面層を表面硬化し、続いて直接硬化し、最後に焼戻しすることから成る熱処理方法が記載されている。これに関して直接硬化は、表面硬化と硬化との間に冷却が行われず、処理温度が拡散温度から直接硬化温度に高められることを意味している。この方法の変形例では、表面硬化がプラズマイオン硬化として行われる。この公知の方法の欠点は、表面硬化により行われる表面層の硬度増大が、次の直接硬化によって一部再び戻され、上述した表面硬化によって拡散元素の僅かな侵入深さしか得られないことである。
【0015】
これに反し国際公開第98/01597号には、高合金鋼から成る転がり軸受部品の熱処理方法が紹介されており、拡散元素としての窒素によるプラズマイオン硬化(プラズマイオン窒化)として行われる表面硬化が、部品の機械的最終加工後に初めて、従って硬化及び焼戻し後に行われる。拡散温度は375°〜592℃なるべく460℃である。拡散保持期間は1〜2時間である。硬化される表面層の得られる最大深さは0.5mmである。しかし均一に硬化される表面層は、約0.15mmの深さまでしか得られず、これは不利に比較的薄い。
【0016】
国際出願に対応するドイツ連邦共和国出願第69719046号明細書に開示されている表面硬化軸受部品の製造方法では、プラズマイオン浸炭の形の表面硬化が、熱処理の初めに482℃より上の拡散温度で行われる。それに続いて直接硬化の形の硬化が、982°〜1200℃の焼入れ温度で行われる。この公知の方法でも、表面硬化により行われる表面層の硬度増大が一部再び戻されるので、部品の表面層の最大60HRCの硬度が得られる。
【0017】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19707033号明細書に記載されている転がり軸受部品を製造する類似の方法において、熱処理の初めにそれぞれの部品が、プラズマイオン窒化又はプラズマイオン浸炭窒化により530°〜最高780℃の拡散温度で表面硬化され、それから1020°〜1120℃の焼入れ温度で硬化され、次に−190℃の温度で低温処理され、最後に180℃又は450°〜520℃の焼戻し温度で焼戻される。この方法も前述した欠点を持ち、部品の表面層の得られる最大硬度は62HRCである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の基礎になっている課題は、部品の表面層硬度増大の際、表面層への強すぎる添加を避けながら、表面層の一層深い硬度増大を伴う拡散元素の一層大きい侵入深さ及び一層大きい表面層硬度が得られ、その結果特に増大しかつ変化する負荷において部品の高められた耐久限度が得られる、完全硬化する耐熱鋼から成る部品を熱処理するための最初にあげた種類の方法を提示することである。
【0019】
更に高い耐久限定を持つ完全硬化耐熱鋼から成る部品を提示する。
【0020】
表面区域の一層深く強い硬度増大により、部品の耐久限度を著しく高める比較的高くかつ一層深く達する圧縮残留応力が発生される、という認識が本発明の基礎になっている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
方法に関してこの課題を解決するため、上部変態温度AC3より上にある共通な焼入れ及び拡散温度に部材を加熱し、完全硬化まで及び表面区域への拡散元素の所望の添加まで部品を共通な焼入れ及び拡散温度に保持し、続いて部品を急冷することによって、部品の完全硬化及び部品の表面層のプラズマイオン硬化が1つの共通な工程で行われる。
【0022】
本発明による方法の有利な実施形態が従属請求項2〜10の対象である。
【0023】
鋼の上部変態温度AC3より上にある比較的高い焼入れ温度で、プラズマイオン硬化の形で表面層硬度増大を行うため、公知の方法に比較して拡散元素の大きい侵入深さ従って部品の表面層の一層深い硬度増大が行われる。表面硬化は今や部品の完全硬化と同時に行われるので、そうしない場合次の完全硬化の際別の工程で起こる表面層硬度増大の普通の低下が、拡散元素の合金後拡散により回避される。これにより68HRCまでの表面層の大きい硬度が得られる。部品の表面の高められる耐摩耗性に加えて、こうして処理される部品の耐久限度の増大が行われ、これが特に振動負荷において有利である。部品の充分同時に行われる完全硬化及び部品の表面層硬度増大の有利な二次効果として、全熱処理の2時間以上の時間節約が行われる。
【0024】
共通な焼入れ及び拡散温度の高さ、及び共通な焼入れ及び拡散温度の保持期間は、原則的にそれぞれの鋼の種類及び部品の使用目的により決定される。従って共通な焼入れ及び拡散温度が、部品の鋼の種類の必要な焼入れ温度に合わされるのがよい。なぜならば、低すぎる温度では不充分な完全硬化が行われ、高すぎる温度では望ましくない組織構造が生じることになるからである。実験では、共通な焼入れ及び拡散温度に対して、1050°〜1150℃の値が特に適していることがわかった。
【0025】
しかし鋼の種類及び部品の所望の特性に応じて、完全硬化及び表面層硬度増大のために、共通な焼入れ及び拡散温度の保持期間が必要なことがある。しかし両方の処理方法を完全に実施できるようにするため、共通な焼入れ及び拡散温度の保持期間が、両方の必要な保持期間のうち長い方の保持期間、必要な硬化保持期間又は必要な拡散保持期間に合わされるのがよい。
【0026】
必要な焼入れ保持期間が必要な拡散保持期間より大きい場合、プラズマイオン硬化として行われる表面層硬度増大が、部品の完全硬化の終了前に、グロー放電の電圧の遮断及びプラズマガスの吸い取りにより、簡単に終了される。
【0027】
必要な焼入れ保持期間が必要な拡散保持期間より小さいことが頻繁に起こる場合、部品の芯組織の拡大を回避するため、共通な焼入れ及び拡散温度が有利に低下される。完全硬化のため鋼に炭化物の形で含まれる炭素の分解が上昇する温度と共に比較的強く促進され、かつ硬化温度の増大する保持期間と共に比較的弱く促進されること、及び炭化物の完全な分解後焼入れ温度の保持が部品の芯範囲における組織の拡大を生じて、部品の望ましくない脆化を伴うことの認識が、この手段の基礎となっている。この不利な影響を回避するため、共通な焼入れ及び拡散温度の低下が約20°〜40℃行われると、有利なことがわかった。
【0028】
部品の表面層のプラズマイオン硬化のため、特に炭素(C)、窒素(N)及び両元素の混合物が拡散元素として使用される。その結果部品が、プラズマイオン硬化中に炭素及び/又は窒素を放出するイオン化可能なガスを当てられる。
【0029】
それにより表面層への添加が行われることによって、表面層にある鋼が、部品の芯範囲度は異なるように次の焼戻し処理に反応する。原則的に硬度は、上昇する焼戻し温度と共に520°〜560℃で最大値に達し、それから焼戻し温度の上昇の際再び低下する。この最大値の精確な位置は、炭素及び/又は窒素の溶解される割合に関係し、必要な焼戻し温度は、拡散元素の溶解割合の増大と共に上昇する。
【0030】
従って表面層におけるできるだけ大きい硬度を得るため、冷却後部品の表面層に最大硬度が現れるように、焼戻し温度が鋼に溶解する拡散元素の割合に合わされる。このため焼戻し温度を500°〜600℃の範囲にある値に設定すると、有利なことがわかった。これにより得られる表面層硬度は60〜66HRCの範囲にあり、部品の芯区域には58〜63HRCの硬度が現れる。
【0031】
本発明による方法を適用するために、原材料として市販の耐熱転がり軸受鋼、例えばATIS規格による高速度鋼M50及びDIN17350による高速度鋼S18−0−1を使用することができる。
【0032】
本発明による方法は、例えばジェットエンジン、プロペラタービン、ガスタービン又は内燃機関の排気ガスターボ過給機の回転子軸のような熱機関の機械的及び熱的に高く負荷される軸を支持するために設けられる転がり軸受の内レース、外レース及び転動体のような軸受部品の製造の際、好んで使用される。
【0033】
本発明が、添付図面により実施例について以下説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1には、本発明による熱処理の時間的経過が定性的に示されている。第1の工程1において、部品の完全硬化及び表面層硬度増大が共通に行われる。このためまず部品が、上部変態温度AC3より上の1030°〜1150℃の範囲にある共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dまで均一に加熱され、それから炭素及び/又は窒素のイオンを発生するプラズマの作用を受けて、保持期間ΔtH+Dにわたってこの温度に保持され、次に急冷される。部品の共通な完全硬化及び表面層硬度増大の保持期間ΔtH+Dは、温度推移を破線で示されている部品の別個の完全硬化1’のために必要とされるであろう保持期間Δtより長い。
【0035】
長い保持期間ΔtH+Dにより部品の芯組織が拡大するのを回避するため、焼入れ温度Tに対して共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dが、別個の完全硬化の際約20°〜40℃低下される。共通な完全硬化及び表面層硬化増大の後、約−190℃まで部品の低温処理2が行われる。それに続いて部品の焼戻し3が、下部変態温度AC1より下にある500°〜600℃の高さの焼戻し温度Tで行われる。
【0036】
部品の完全硬化及び表面層硬度増大ガ、プラズマイオン硬化の形で、共通な工程において、上部変態温度AC3より上の比較的高い共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dで行われることによって、一層強い硬度増大が行われ、拡散元素の一層大きい侵入深さのため、部品の一層深い硬度増大が行われる。これにより表面区域に高い圧縮残留応力が発生されて、部品の耐久限度を有利に著しく高める。
【0037】
図2の線図には、AISIM50の高速度鋼から成る部品の表面層における残留応力が、2つの異なる熱処理に対して示されている。残留応力値は、X線回析法(XRD)により求められた。
【0038】
上の曲線4の残留応力推移は、1時間にわたる1100℃での完全硬化、それぞれ2時間にわたる540℃での3回の焼戻し、及び2時間にわたる560℃での1回の焼戻しから成る一般に普通の熱処理に当てはまる。これは、部品の表面層に、部品の耐久限度に対しては比較的不利な50MPaのほぼ一定な引張り残留応力を生じる。
【0039】
これに反し下の線5の残留応力推移は、3時間にわたる1100℃でのプラズマ浸炭の形の同時の完全硬化及び表面層硬度増大、それぞれ2時間にわたる540℃での3回の焼戻し、および2時間にわたる560℃での1回の焼戻しから成る、本発明による熱処理に当てはまる。これは、部品の表面層に、0.2〜0.3mmの深さに約−130MPaの尖頭値を持つ−100MPaの大きさの圧縮残留応力を生じ、それにより部品の耐久限度が著しく高まる。
【0040】
部品の深さ又は表面間隔に関する硬度の推移が、本発明による熱処理について、3つの同じ処理実験に対して、図3による線図に示されている。硬度は約0.2mmの深さにおいて62HRCの最大値を持ち、芯の方へ約59HRCの値まで低下している。この硬度推移により、表面の同時に高い摩耗強度で、部品の高い靭性及び耐久限度が保証されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】 本発明による方法の温度−時間線図を示す。
【図2】 残留応力−深さ線図を示す。
【図3】 測定により求められた硬度−深さ線図を示す。
【符号の説明】
【0042】
1 共通な完全硬化及び表面層硬度増大
1’ 別個の完全硬化
2 低温処理
3 焼戻し
4 (従来の熱処理における)残留応力推移
5 (本発明による熱処理における)残留応力推移
C1 下部変態温度
C3 上部変態温度
t 時間
焼戻し温度
焼入れ温度
H+D 焼入れ及び拡散温度
Δt 拡散保持期間、別個の表面層硬度増大の際の保持期間
Δt 焼入れ保持期間、別個の完全硬化の際の保持期間
ΔtH+D共通な完全硬化及び表面層硬度増大の際の保持期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全硬化耐熱鋼から成る部品を熱処理する方法であって、熱処理が部品の完全硬化、部品の表面層硬度増大及び部品の焼戻しを含み、完全硬化が、上部変態温度AC3より上の焼入れ温度への部品の加熱、焼入れ温度に部品の保持、部品の急冷であり、拡散元素の作用で行われる表面層硬度増大が、拡散温度に部品の保持及び部品の冷却であり、かつプラズマイオン硬化として行われ、焼戻しが、下部変態温度AC1より下の焼戻し温度まで部品の1回又は複数回の加熱、焼戻し温度に部品の保持、及び部品の冷却であるものにおいて、上部変態温度AC3より上にある共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dに部品を加熱し、完全なオーステナイト化及び含まれる炭素の分解及び表面層への拡散分子の所望の添加に至るまで部品を共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dに保持し、続いて部品を急冷することによって、部品の完全硬化及び部品の表面層のプラズマイオン硬化が、共通な工程(1)で行われ、それにより外側表面層に圧縮残留応力が形成されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dが、部品の鋼の種類の必要な焼入れ温度Tに合わされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dが1070℃〜1150℃の温度範囲に設定されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dの保持期間ΔtH+Dが、両方の必要な保持期間のうち長い方の保持期間、必要な硬化保持期間Δt又は必要な拡散保持期間Δtに合わされることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
長い方の必要な拡散保持期間Δtの場合、部品の芯組織の拡大を回避するため、共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dが低下されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
共通な焼入れ及び拡散温度TH+Dの低下が約20°〜40℃行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
部品の表面層のプラズマイオン硬化のため、炭素(C)及び/又は窒素(N)が拡散元素として使用され、このため部品が、プラズマイオン硬化中に、炭素(C)及び/又は窒素(N)を放出するイオン化可能なガスを当てられることを特徴とする、請求項1〜6の1つに記載の方法。
【請求項8】
部品の次の硬化の際、冷却後部品の表面層に最大硬度が現れるように、焼戻し温度Tが鋼に溶解する拡散元素の分解割合に合わされることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
焼戻し温度Tが500°〜600℃の範囲にある値に設定されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
部品の原材料として耐熱鋼が使用されることを特徴とする、請求項1〜9の1つに記載の方法。
【請求項11】
完全硬化する耐熱鋼から成る部品が、部品の完全硬化、部品の表面層硬度増大及び部品の焼戻しを含む熱処理を受けるものにおいて、請求項1〜10の1つに記載の熱処理が行われることを特徴とする、部品。
【請求項12】
部品が転がり軸受の軸受部品を形成していることを特徴とする、請求項11に記載の部品。
【請求項13】
転がり軸受が、熱機関の機械的及び熱的に大きく負荷される軸を支持するために構成されていることを特徴とする、請求項12に記載の部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−520839(P2008−520839A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543686(P2007−543686)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001975
【国際公開番号】WO2006/050696
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(506420843)シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト (80)
【Fターム(参考)】