説明

官能性ポリオレフィンを含む架橋性マスターバッチとしての使用に適した組成物

【課題】組立体(22)と基材(24)が2つの別々の層(22、24)を有する一体構造物を形成するように、第2のポリオレフィンと架橋して基材(24)に接着される組立体(22)を形成するための組成物。
【解決手段】架橋剤と、不飽和カルボン酸またはジカルボン酸の無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドの中から選択される官能性モノマー(X)を含む第1のポリオレフィンとの混合物から成る組成物であって、架橋剤の量が組成物の全重量の5%以上であることを特徴とする組成物。この官能性ポリオレフィンを含む組成物は架橋性マスターバッチとしての使用に適している。このマスターバッチはシランの非存在下でもポリマー、特にポリオレフィンの架橋を可能にし、基材(ポリマー、金属、金属酸化物またはシリコン)に対する接着能を高くすることができる。特に太陽電池の封止で使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋剤を高濃度に含む、官能性ポリオレフィンをベースにした新規組成物に関するものである。
本発明のこの組成物は架橋性ポリマー用のマスターバッチとして使用でき、特に、太陽電池を封止するフィルムの製造で有利に使用できる。
【背景技術】
【0002】
架橋性の熱可塑性樹脂またはエラストマーには一般に有機過酸化物が用いられる。本明細書ではこの熱可塑性樹脂およびエラストマーを「ポリマー」と分類する。このポリマーを架橋するには一般に最初に被架橋ポリマーと過酸化物とを混合し、次の第2段階でポリマーを形成し、第3段階で例えば熱処理によって架橋をする。
【0003】
過酸化物は周囲温度で液体または固体の形にすることができ、このポリマーと過酸化物とを混合するときは、高温すなわちポリマーの軟化点より高い温度で押出または混練等によって混合する。この場合、過酸化物は一般に液体の形をしている。
【0004】
一つの問題は液体の形をした過酸化物はポリマーと混合するのが難しく、過酸化物が分離する現象が観察されることである。第2の問題は過酸化物の導入には過酸化物の導入量を正確に計量できる精密な機器を必要とすることにある。
【0005】
過酸化物と被架橋ポリマーとの混合を容易にするために、追加ポリマーと過酸化物とを高濃度で含む「マスターバッチ」とよばれる組成物を使用することができる。
【0006】
特許文献1(米国特許第5 589 526号明細書)にはエラストマーポリマー、例えばエチレンと酢酸ビニルとのコポリマーと30〜50重量%の有機過酸化物、可塑剤、ポリオクテナマーおよび充填剤を含む組成物とのマスターバッチが記載されている。この特許に記載のマスターバッチは熱可塑性樹脂用ミキサーを用いて上記ポリマーと可塑剤とを溶融し、それに過酸化物、次いで充填剤を添加して製造される。このマスターバッチは官能性ポリオレフィンを全く含んでいない。
【0007】
特許文献2(米国特許第3 594 342号明細書)には、エチレン/酢酸ビニルコポリマーのオリゴマーまたはエチレン/アクリルエステルコポリマーのオリゴマーを過酸化物と混合してマスターバッチを作り、次いでこのマスターバッチを溶融状態のポリエチレンと混合して架橋性ポリエチレンを製造する方法が記載されている。このマスターバッチも官能性ポリオレフィンを全く含んでいない。
【0008】
ポリマーを架橋する必要がある分野の一つは太陽電池モジュールの分野、特に太陽電池を封止する部品用の太陽電池モジュールである。
【0009】
太陽電池モジュールは光エネルギーを電気に変換することができる「太陽電池ユニット」を含む。[図1]は一般的な太陽電池ユニットを示す。この太陽電池ユニット(10)はセル(12)を備え、一つのセル(12)は一般に光電特性を得るように処理されたシリコンベースの光電受光部(14)を有し、この光電受光部(14)が電子コレクタ(16)と接触している。電子コレクタ(16)は光電受光部(14)の上側(上部コレクタ)と下側(下部コレクタ)に配置されている。一つのセルの上部コレクタ(16)は一般に金属合金で作られた導電性バー(18)を介して別のセル(12)の下部コレクタ(16)に接続されている。全てのセル(12)が直列および/または並列に接続されて太陽電池ユニット(10)が形成される。太陽電池ユニット(10)を太陽光下に置くと電流が連続的に流れる。この電流を電池ユニット(10)の両端子(19)で回収する。
【0010】
[図2]は[図1]の太陽電池ユニット(10)が「封止材料」(22)中に封入されてソーラーモジュール(20)となることを示している。こうして封止された電池ユニットの両側に上側保護層(24)および下側保護層(26)(「バックシート」ともよばれる)が配置される。
【0011】
封止材料 (encapsulant) (22)は、太陽電池ユニット(10)と保護層(24)(26)との間の空間を完全に占めて、ソーラーモジュールの出力を悪くする空気が存在しないようにしている。封止材料(22)はさらに、セル(12)が空気中の水および酸素と接触してセル(12)が腐食するのを防止しなければならない。これらの各特性を与えるために封止材料は太陽電池ユニット(10)を「封止(encapsulate)」するための一般にカップリング剤で改質されたポリオレフィンを含む組成物である。封止材料のポリオレフィンを改質するために、カップリング剤を架橋剤と組み合わせて添加し、架橋剤によって経時的なクリープを防止することもできる。カップリング剤は一般に有機チタン酸塩およびシランの中から選択される化合物である。架橋剤は一般に有機過酸化物から選択される。
【0012】
太陽電池パネル組立時には、各部品をラミネーション(貼合せ)で組み立て、シリコン膜を介してパネルを真空吸引するが、このシリコン膜はカップリング剤と接触すると分解する傾向がある。シリコン膜は高価で、それを交換する間は製造を停止する必要があるため、太陽電池モジュールの製造メーカにとっては大きな問題になっている。さらに、カップリング剤は水分と接触すると加水分解し、時間とともにその活性を失う傾向がある。
【0013】
特許文献3(欧州特許第1956661 A1号公報)には、太陽電池封止材料で用いるシラン改質ポリエチレンの混合物としてのマスターバッチが記載されている。このマスターバッチは特定の密度を有するメタロセンポリエチレンと、紫外線吸収剤と、光安定剤と、熱安定剤とを含むが、過酸化物もカップリング剤も含んでいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5 589 526号明細書
【特許文献2】米国特許第3 594 342号明細書
【特許文献3】欧州特許第1956661 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、上記の欠点の少なくとも一つを解決する新規な解決策を見つけ出すことも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の対象は、架橋剤と、不飽和カルボン酸またはジカルボン酸の無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドから選択される官能性モノマー(X)を含む第1のポリオレフィンとの混合物を含む新規な組成物にある。この組成物は第2のポリオレフィンと架橋して基材に接着される組立体を形成でき、この組立体と基材は2つの別々の層を有する一体構造物を形成する。本発明組成物の特徴は上記架橋剤の量が組成物の全重量の5%以上である点にある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】太陽電池ユニットの具体例を示す図で、(a)と(b)は3/4縮尺図である。(a)は接続前の電池を示し、(b)は2つの電池を接続した後の図であり、(c)は完成した太陽電池ユニットの平面図。
【図2】ソーラーモジュールの横断面。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明組成物はカップリング剤の非存在下でも架橋可能かつ接着性があるという利点を有する。特に、本発明組成物は基材(例えばポリマー、金属、金属酸化物またはシリコン)に対する接着能を高くすることが望まれるポリマー、特にポリオレフィンを架橋するためのマスターバッチとして使用できる。
【0019】
架橋剤の量は組成物の全重量の6〜30%、好ましくは7〜16%であるのが好ましい。架橋剤は例えば有機過酸化物である。
【0020】
カップリング剤の存在は必須ではないが、本発明組成物は組成物の接着能を高めることができるカップリング剤を含むこともできる。
【0021】
ポリオレフィンは下記のポリマーであるのが好ましい:
(1)エチレン、
(2)(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸およびグリシジル(メタ)アクリレートの中から選択される少なくとも一種の官能性モノマー(X)、
(3)任意成分としての、カルボン酸ビニルエステルまたはアルキル(メタ)アクリレートの中から選択される4〜20個の炭素原子を含む追加モノマー。
【0022】
ポリオレフィンは下記(1)〜(3)から成るのが好ましい(比率は全重量に対する比率):
(1)0.01〜20重量%の官能性モノマー(X)、
(2)0〜45重量%の追加モノマー、
(3)99.99〜35重量%のエチレン。
【0023】
ポリオレフィンは下記(1)〜(3)から成るのが好ましい(比率は全重量に対する比率):
(1)0.05〜10重量%の官能性モノマー(X)、
(2)10〜35重量%の追加モノマー、
(3)89.5〜55重量%のエチレン。
【0024】
ポリオレフィン中に含まれる官能性モノマー(X)はグラフトまたは共重合によってポリオレフィンに挿入できる。官能性モノマー(X)は無水マレイン酸にすることができる。
【0025】
本発明の一つの観点から、基材(24)はガラス、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)またはこれらの特徴を併せ持つその他の任意のポリマー組成物で作られる。
【0026】
本発明の別の対象は、下記(1)〜(3)の段階を含む本発明の組成物の製造方法にある:
(1)架橋剤を溶液状態で官能性モノマーを有するポリオレフィンと接触させる第1段階、
(2)官能性モノマーを有するポリオレフィンの軟化温度(ASTM規格E 28−99(2004)で測定)より低い温度で、撹拌下に、ポリオレフィンによって過酸化物(b)の溶液を吸収する第2段階、
(3)組成物を回収する第3段階。
【0027】
溶融状態で本発明方法を実施する場合すなわち軟化温度より高い温度で化合物を混合した時には、過酸化物の活性化温度が加工温度より低いため(例えば上記特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載の方法)、組成物が早期(premature)架橋する現象が観察されることがある。本発明方法の利点は、溶融状態で実施する方法に比べて組成物の早期架橋現象が制限され、製造方法が単純である点にある。
この好ましい方法で得られる組成物は本発明の対象でもある。
【0028】
本発明組成物は「第2のポリマー」とよばれるポリマー、好ましくはポリオレフィン(「第2のポリオレフィン」という)を架橋するためのマスターバッチとして有利に使用できる。
【0029】
本発明のさらに別の対象は、ポリオレフィンと本発明組成物とを混合して混合物を製造する段階と、得られた混合物をフィルムの形にする段階とを含む製造方法で得られるフィルムにある。本発明方法で得られたフィルムは太陽電池封止材料として使用できる。従って、本発明はさらに、本発明組成物から得られる構造物から成るフィルムの、太陽電池封止材料としての使用にも関する。
【0030】
本発明はさらに、下記の段階を含む太陽電池モジュールの製造方法に関する:
(1)封止フィルムおよび太陽電池を含むモジュールを構成する各種層を組み立てる段階、
(2)モジュールを硬化させる段階。
本発明の上記以外の利点は以下で詳細に説明する。
【0031】
本発明組成物は、架橋剤と、不飽和カルボン酸またはジカルボン酸の無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドの中から選択される官能性モノマー(X)を含むポリオレフィンとの混合物から成る。
【0032】
有機過酸化物は、熱に曝されたときにポリオレフィンのようなポリマーを架橋することができる有利な架橋剤である。「有機過酸化物」とはペルオキシO−Oタイプの官能基を含む任意の炭化水素ベースの分子を意味する。これらの過酸化物は固体または液体の形態をとる。有機過酸化物は有機溶剤を用いて溶液中に入れることもできる。過酸化物の混合物を使用することもできる。
【0033】
有機過酸化物はジアルキル過酸化物類またはペルオキシエステル類から選択できるのが有利である。有機過酸化物は下記の中から選択するのが好ましい:tert−ブチル2−過ヘキサン酸エチル、ジ−t−過酸化アミル、過酸化ジクミル、t−ブチル過酸化クミル、OO−t−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノぺルオキシカーボネート、OO−t−ペンチルO−(2−エチルヘキシル)モノぺルオキシカーボネート、OO−tert−ブチル イソプロピルモノぺルオキシカーボネート、ジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−tert−アミルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルぺルオキシ)ヘキサンおよび2,2−ジ(t−アミルペルオキシ)プロパン。
【0034】
過酸化物は必要に応じて有機溶剤、例えばアルカン、芳香族、アルケン、ハロゲン化またはアルコールタイプの溶剤を含むことができる。溶剤分子は1〜12個の炭素原子を含むのが好ましい。溶剤の例としてはデカン、ドデカン、2,4,4−トリメチルペンテン、α−メチル−スチレン、トリクロロエチレン、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、(1−メチルエテニル)ベンゼン、2−エチルヘキサノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコールまたはアセトンが挙げられる。
【0035】
溶剤の混合物、例えば上に挙げた溶剤の混合物を用いることもできる。
溶剤の量は有機過酸化物(b)の溶液の全重量の25%以下、さらには10%以下であるのが好ましい。
【0036】
過酸化物の溶液中の溶剤の量が20重量%以上であるときは特に、コポリマー用の溶剤を用いないのが好ましい。「コポリマー用溶剤」とは、溶剤1ml当たり1gのコポリマーと23℃で1時間接触させたときのポリマーの濃度が溶剤1ml当たり0.05g以上であることを意味する。
【0037】
ポリオレフィンはオレフィンを含む構成モノマーから得られるポリマーである。このオレフィンはエチレン、プロピレン、ブタ−1−エン、ペンタ−1−エン、1−ヘキセン、ヘプタ−1−エン、オクテンまたはデカ−1−エンの中から選択できる。オレフィンはエチレンであるのが好ましい。
【0038】
本発明組成物のポリオレフィンは、無水不飽和カルボン酸または無水ジカルボン酸、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドの中から選択される官能性モノマー(X)を含む。
【0039】
ポリオレフィン主鎖に含まれる不飽和モノマー(X)としては下記のものが挙げられる:
(1)不飽和エポキシド。不飽和エポキシドは例えば脂肪族グリシジルエステルおよびエーテル、例えばアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、グリシジルマレエートおよびイタコネート、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートである。また、これらは例えば脂環式グリシジルエステルおよびエーテル、例えば2−シクロヘキセン−1−グリシジルエーテル、シクロヘキセン4,5−ジグリシジルカルボキシレート、シクロヘキセン−4−グリシジルカルボキシレート、5−ノルボルネン−2−メチル−2−グリシジルカルボキシレートおよびエンドシス−ビシクロ(2.2.1)−5−へプテン−2,3−ジグリシジルジカルボキシレートでもよい。不飽和エポキシドとしてはグリシジルメタクリレートを用いるのが好ましい。
(2)不飽和カルボン酸。例えばアクリル酸またはメタクリル酸。
(3)カルボン酸またはジカルボン酸の無水物。これらは例えば下記の中から選択できる:無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリル琥珀酸、シクロヘキサ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、4−メチレンシクロヘキサ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ(2,2,1)へプタ‐5−エン−2,3−ジカルボン酸およびx−メチルビシクロ(2,2,1)へプタ−5−エン−2,2−ジカルボン酸無水物。無水物として無水マレイン酸を用いるのが好ましい。
【0040】
ポリオレフィンは「追加のモノマー」とよばれるオレフィンと共重合可能な別のモノマーをさらに含むことができる。追加のモノマーの例としては下記のものが挙げられる:
(1)第1のオレフィンとは異なるオレフィン(この異なるオレフィンは上記のオレフィンから選択することができる)
(2)ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、エチリデン、ノルボルネンおよびブタジエン、
(3)不飽和カルボン酸エステル、例えばアルキル(メタ)アクリレートに分類されるアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート。これらの(メタ)アクリレートのアルキル鎖は30個以下の炭素原子を有することができる。アルキル鎖の例としてはメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルが挙げられる。不飽和カルボン酸エステルとしてはメチル、エチルおよびブチル(メタ)アクリレートが好ましい、
(4)カルボン酸ビニルエステル。カルボン酸ビニルエステルの例としては酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルまたはマレイン酸ビニルが挙げられる。カルボン酸ビニルエステルとしては酢酸ビニルが好ましい。
【0041】
本発明の2つの変形例で、官能性モノマー(X)はポリオレフィンにグラフトまたは重合することができる。
【0042】
ポリオレフィンはモノマー(オレフィンと、官能性モノマー(X)と、任意成分としての追加のモノマー)の重合で得られる。この重合はオートクレーブまたは管状反応器で高圧ラジカルプロセスによって行うことができ、これらのプロセスおよび反応器は当業者に公知である。これらの重合方法は当業者に公知であり、例えば、下記文献に記載されている方法が挙げられる。
【特許文献4】フランス国特許第2498609号公報
【特許文献5】フランス国特許第2569411号公報
【特許文献6】フランス国特許第2569412号公報
【0043】
不飽和モノマー(X)をポリオレフィン主鎖に共重合しない場合には、ポリオレフィン主鎖にグラフトする。グラフト操作それ自体も公知である。異なる複数の官能性モノマー(X)をポリオレフィン主鎖に共重合および/またはグラフトしたものも本発明の組成物である。このグラフト化ポリマーおよびこのコポリマーは例えば商品名Lotader(登録商標)およびOrevac(登録商標)で本出願人から市販されている。
【0044】
官能性モノマー(X)をポリオレフィンと共重合したポリオレフィンの例としては例えば下記のものが挙げられる:エチレン−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−メチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−エチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−ブチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン−メチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン−エチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン−ブチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーおよびエチレン−酢酸ビニル−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー。
【0045】
官能性モノマー(X)をグラフトしたポリオレフィンの例としては無水マレイン酸をグラフトしたエチレンまたはプロピレンのポリオレフィンが挙げられる。例としては密度が0.860〜0.910の超低密度ポリエチレンまたは密度が0.860〜0.910のEPR(エチレンプロピレンゴム)およびEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)という名前で知られるエチレンプロピレンゴムが挙げられる。
【0046】
官能性モノマー(X)を含むポリオレフィンはエチレン−メチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−エチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−ブチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸コポリマーおよびエチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸コポリマーの中から選択されるのが有利である。
【0047】
架橋される上記組成物またはポリマーの別の基材に対する接着能をさらに高めるために、本発明組成物はカップリング剤をさらに含むことができる。このカップリング剤は有機、無機、好ましくは半無機および半有機にすることができる。これらの中では有機シランまたは有機チタン酸塩、例えばモノアルキルチタネート、トリクロロシランおよびトリアルコキシシランが挙げられる。カップリング剤の量は組成物の全重量に対して0〜2重量%、例えば0.1〜1重量%であるのが好ましい。
【0048】
本発明組成物は無機充填剤または添加剤をさらに含むこともできる。添加剤の例としては可塑剤、抗酸化剤またはオゾン劣化防止剤、静電防止剤、染料、顔料、光学的光沢剤、熱安定剤、光安定剤および難燃剤が挙げられる。
【0049】
充填剤としてはクレー、シリカ、タルク、炭酸塩、例えば炭酸カルシウムおよびケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムが挙げられる。
【0050】
本発明組成物は架橋剤と、官能性モノマー(X)を含むポリオレフィンとを混合して製造する。この組成物は熱可塑性樹脂を混合する通常の技術、例えば混練または押出によって得られる。当業者はこの温度を架橋剤の分解温度に調節して、架橋度が大きくならないようにする。この混合温度は150℃以下、好ましくは70〜110℃であるのが好ましい。この温度では架橋剤の架橋現象が制限される。
【0051】
本発明組成物の製造方法の一つの変形例では、架橋剤は液体の形をしている。この製造方法は下記(a)〜(c)の段階を含む:
(a)上記架橋剤をポリオレフィンと接触させる第1段階、
(b)必要に応じて撹拌下に、ポリオレフィンによって架橋剤を吸収する第2段階、
(c)組成物を回収する第3段階。
【0052】
接触させる第1段階は任意タイプの容器内で実施できる。容器は接触した後に空けたままでも閉じてもよい。容器の密封は密封でも非密封でもよい。好ましくは容器を密封にし、弁を付けるのが好ましい。架橋剤の溶液をコポリマー上に直接注入するか、滴下装置やスプレー等の気化装置を用いてコポリマーと接触させる。
【0053】
吸収段階は架橋剤の溶液が液体のままである温度(架橋剤を溶剤なしで用いた時には架橋剤の融点以上か、融点に等しい温度)で実施する。しかし、この吸収段階の温度はコポリマー(a)の軟化温度(ASTM規格E 28−99(2004)で測定)より低いのが有利である。吸収段階の温度は15〜50℃にすることができる。吸収時間は一般に10〜600分、好ましくは20〜240分にする。吸収段階は撹拌せずに実施できる。撹拌する場合には任意の撹拌装置、例えばブレード、プロペラ、スクリューまたは超音波装置によって、または、回転またはドラム装置内、例えば乾燥器内で実施できる。
【0054】
本発明はさらに、本発明方法で得られる組成物に関する。本発明方法を用いる一つの利点は製造中に観察される架橋が通常の熱可塑性樹脂混合技術を用いて組成物を製造するときよりも少ないことである。このような方法の例は例えば本出願によって出願された特許文献7に記載されている。
【特許文献7】フランス国特許出願第0953978号公報
【0055】
本発明組成物は第2のポリマー、特に第2のポリオレフィンを架橋するためのマスターバッチとして使用できる。驚くことに、本発明組成物はポリマーを架橋させると同時に、ポリマーを基材に押圧したときに基材に対する接着特性を与えることができるという利点がある。
【0056】
第2のポリオレフィンとしては任意のポリオレフィンが使用できる。特にエチレンのコポリマー、好ましくはエチレンの量がコポリマーの全重量の50〜90重量%であるものを使用できる。エチレンコポリマーの例としては、エチレンとエチレン以外のオレフィンとのコポリマー、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、エチレンとアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、エチレンと(メタ)アクリル酸とのコポリマーまたは本発明組成物の製造で用いられる既に述べたエチレンコポリマーが挙げられる。本発明組成物はエチレンと酢酸ビニルとの架橋コポリマー用に特に使用できる。第2のポリオレフィンをポリオレフィンの混合物にすることもできる。
【0057】
架橋されるポリマー(被架橋ポリマー)は共架橋剤をさらに含むことができる。過酸化物が活性化されると、ポリマー上で過酸化物がフリーラジカルを形成し、それによってポリマー鎖に過酸化物を組み込まずにポリマー鎖を架橋することができる。共架橋剤は過酸化物とは異なる機能をする。共架橋剤はフリーラジカル、例えば有機過酸化物の開始剤によって活性化され、すなわち、共架橋剤は過酸化物の分解中に活性化される。従って、共架橋剤は、過酸化物とは違って、ポリマーとの架橋を形成し、架橋ポリマー鎖に組み込まれる。
【0058】
共架橋剤は単官能性または多官能性にすることができる。共架橋剤は少なくとも一種のカルバメート、マレイミド、アクリレート、メタクリレートまたはアリル官能基を有するのが有利である。これらはモル質量が1000g/モル以下、好ましくは400g/モル以下であるのが有利である。カルボン酸アリルが使用できる。共架橋剤はアリル、ジアリルおよびトリアリルタイプの化合物にすることができる。共架橋剤はシアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルトリメリテートおよびトリメチロールプロパン トリメタクリレート、好ましくはシアヌル酸トリアリルから選択するのが有利である。
【0059】
架橋ポリマーの架橋度は一般にゲル含有量を測定して定量化される。このゲル含有量はASTM規格D2765−01(2006)の方法Aを用いて測定できる。ポリマーのゲル含有量は10以上、好ましくは20以上、例えば50以上であるのが有利である。
【0060】
本発明のさらに別の対象は、本発明組成物と第2のポリオレフィンとを混合する段階と、その後にフィルムを成形する段階とを含むフィルムの製造方法にある。混合段階では通常の混合技術、特に熱可塑性樹脂の加工装置、例えば押出機またはミキサーを用いることができる。混合は架橋剤の分解温度より低い温度で実施できる。第2段階の成形段階は架橋剤の分解温度より低い温度で実施する。任意タイプの成形用設備、例えばプレス、射出成形機またはカレンダーが使用できる。この成形を例えばシートダイが押出機の最後に配置されたフィルム押出機を用いることで第1段階と同時に行うこともできる。
【0061】
本発明のさらに別の対象は上記方法で得られるフィルムにある。本発明のフィルムは厚さを0.1〜2mmにすることができる。フィルムは透明であるのが好ましい。すなわち、ASTM規格D1003に従って厚さ500μmのフィルムを可視光の少なくとも一つの波長(380〜780nm)で評価した時の透過率が80%以上、好ましくは85%以上、さらには90%である。
【0062】
本発明のさらに別の対象は、上記フィルムの太陽電池封止材料としての使用にある。本発明フィルムは封止材料としての使用に必要な特徴を全て備えている。すなわち、本発明フィルムは太陽電池ユニットと保護層に接着し且つ完全にマッチする。それによって、ソーラーモジュールの出力を低下させる空気の存在を避けることができる。一つの極めて有利な実施例では、封止材料の層(特に上側封止材料の層)は本明細書に挙げたパラメータの透明度を有する。
【0063】
太陽電池モジュールを作る時には、一般に封止材料の第1下側層、太陽電池ユニット、封止材料の第2上側層、次いで保護フロントシートを保護バックシート上にこの順番で載せる。追加の層、特に結合層または接着層をさらに加えることもできる。本発明フィルムは任意の太陽光電池構造物で使用できるということを明記しておく。この使用は本明細書に挙げたモジュールに制限されないことも明らかである。
【0064】
本発明の太陽電池ユニットを形成するために任意タイプの太陽電池受光部(capteurs photovoltaiquees)を使用することができる。例えば単結晶または多結晶ドープシリコンをベースにした「従来型」受光部を使用できる。例えばアモルファスシリコン、テルル化カドミウム、二セレン化銅インジウムまたは有機材料から形成される薄膜受光部(capteurs)も使用できる。
【0065】
太陽電池モジュールで使用可能なバックシートの例としてはポリエステル、フルオロポリマー(ポリフッ化ビニルPVFまたはポリフッ化ビニリデンPVDF)をベースにした単層または多層フィルムが挙げられるが、これらが全てではない。バックシートの特定構造物としては例えばフルオロポリマー/ポリエチレンテレフタレート/フルオロポリマーまたはフルオロポリマー/ポリエチレンテレフタレート/EVAフィルムの多層構造物が挙げられる。
【0066】
保護フロントシートは耐摩耗性および耐衝撃性を有し、透明で、太陽電池受光部を外部の湿気から保護する。この層はこれらの特徴を併せ持つガラス、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、その他のポリマー組成物で形成できる。
【0067】
本発明フィルムは従来の封止フィルムと比べてPMMAとの接着力が良いのが特に有利な点である。
【0068】
本発明のさらに別の対象は、少なくとも下記の段階を含む太陽電池モジュールの製造方法にある:
(1)本発明フィルムと太陽電池を含むモジュールを構成する各種の層を組み立てる段階、
(2)モジュールを硬化させる段階。
【0069】
太陽電池モジュールの硬化段階を実施するために任意タイプのプレス成形技術、例えばホットプレス、真空プレスまたは貼り合せ、特に加熱貼り合わせを用いることができる。温度を架橋剤の分解温度およびフィルムのポリオレフィンの融点に合わせることによって当業者は製造条件を容易に決定できる。硬化温度は例えば80〜160℃にすることができる。
【0070】
本発明の太陽電池モジュールを製造するのに当業者は例えば下記文献が参照できる。
【非特許文献1】太陽電池科学および工学、Wiley,2003
【0071】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0072】
実施例1
使用材料
有機過酸化物を用いた。有機過酸化物としてはOO−t−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノぺルオキシカーボネートを用いた。
カップリング剤としてビニルトリメトキシシランを用いた。
本発明のマスターバッチは、ポリマーの重量に対して28%のアセテートと0.8%の無水物とを含むエチレン/酢酸ビニル/無水マレイン酸コポリマー(コポリマー1)の顆粒を用いて調製した。
比較例のマスターバッチは、33重量%のアセテートを含むエチレン/酢酸ビニルコポリマー(コポリマー2)の顆粒を用いてを調製した。
【0073】
マスターバッチ組成:
マスターバッチはマスターバッチの全重量に対して下記組成を有する。
【表1】

【0074】
マスターバッチの調製:
各過酸化物溶液をコポリマー顆粒上へ吸収させた。有機過酸化物(2.2kg)をローラミキサー上でコポリマー(19.8kg)と接触させ、必要に応じて、任意成分のカップリング剤を20℃で閉じた容器内で接触させた。ローラの回転軸線は水平であり、1分当たり10回転の速度で容器を回転させて混合する。
吸収の開始時に過酸化物溶液の半分を導入し、吸収の30分後に残りの半分を添加する。120分後にポリマー粒子を回収する。過酸化物溶液の粒子への吸収は完了している。n−ヘプタン中で1時間洗浄した後に粒子を分析した。コポリマー中の過酸化物の量は組成物の全重量の10%である。
【0075】
試験片の調製
本発明のマスターバッチを評価するために、90重量%のコポリマー2と、10重量%のマスターバッチ(実施例I1、I2、CP1またはCP2)との混合物のフィルムを調製する。さらに、85重量%のコポリマー1と、15重量%のマスターバッチI3との混合物のフィルムおよび85重量%のコポリマー2と、15重量%のマスターバッチCP3との混合物のフィルムも調製した。
4つのマスターバッチI1、I2、I3、CP1、CP2またはCP3から得られるフィルムはフィルムダイを備えた二軸逆回転押出機Haake 1で製造した。押出機の温度分布は以下の通り:ホッパ20℃−帯域1:75−帯域2:75−フィルムダイ:75℃、スクリュー速度80回転/分。8cm幅のフィルムが得られる。
【0076】
接着性の測定
マスターバッチI1、I2、CP1およびCP2のガラスへの接着性の評価
ガラス(約3mm)/フィルム(0.32mm)/ポリフッ化ビニリデンベースバックシート(0.32mm)を作り、3つのタイプのフィルムの接着性を評価した。各構造物は下記の複数の段階で製造した:
(1)ガラス基材(200×80×3mm)をアルコール清浄する。
(2)フィルムの厚さを調節するために構造物の各層をスペーサーを介して重ね合わせる。
(3)構造物を110℃の炉内で5kgの質量下に3分間予熱した後、150℃のプレスで構造物を5バールで15分間プレスする。
(4)周囲温度に冷却する。
(5)試験片を空調室で24時間コンディショニングする。
【0077】
マスターバッチI3およびCP3の評価:PMMAに対する接着性
上記と同じ手順でPMMAを用いた構造物を製造した。基材がガラスの代わりにPMMAのシート(200×80×3mm)である点が唯一異なる。
接着性はISO 8510−2規格:1990:可撓性結合リジッド試験片組立体の接着剤−剥離試験に従って、力センサを備えたZwick 1445動力計で90度剥離試験で50mm/分の引張速度で構造物を評価した。試験片をカッターで切断し互いに時の幅は15mmである。試験片は下記接着性を有する。
【0078】
【表2】

【0079】
この試験から、本発明のマスターバッチを用いることで、カップリング剤の非存在下でも、ガラスのような基材に対して優れた接着性を示すフィルムが製造できるということがわかる。
試験I3から、実施例CP3と比べると、本発明マスターバッチは基材がPMMAの場合に特に有利であることがわかる。本発明マスターバッチの利点は多くの基材に対する接着が可能になる点にある。
【0080】
実施例2
使用材料
有機過酸化物としてOO−t−ブチルO−(2−エチルヘキシル)モノぺルオキシカーボネート(PEROX 1)およびtert-ブチル 2−エチルぺルヘキサノエート(PEROX 2)を用いた。カップリング剤としてはビニルトリメトキシシランを用いた。
ポリマーの重量に対して28%のアセテートと0.8%の無水物とを含むエチレンと酢酸ビニルと無水マレイン酸とのコポリマー(コポリマー1)の顆粒を用いて本発明のマスターバッチ(I1)を調製した。比較例のマスターバッチ(CP1)は33重量%のアセテートを含むエチレンと酢酸ビニルとのコポリマー(コポリマー2)の顆粒を用いて調製した。これらのマスターバッチを下記マトリックス(M1、M2およびM3)に希釈してフィルムを製造した。
M1:33重量%のアセテートを含むエチレンと酢酸ビニルとのコポリマー(メルトフローインデックス=45(190℃、21.6kg))
M2:ポリマーの重量に対して28%のアセテートと0.6%の無水物とを含むエチレンと酢酸ビニルと無水マレイン酸とのコポリマー(MFI=80)
M3:ポリマーの重量に対して28%のアセテートと0.5%の無水物とを含むエチレンと酢酸ビニルと無水マレイン酸とのコポリマー(MFI=45)
【0081】
マスターバッチの組成:
マスターバッチはマスターバッチの全重量に対して以下組成を有する。
【表3】

【0082】
マスターバッチの調製:
各過酸化物溶液をコポリマー顆粒上から吸収させた。有機過酸化物(2.2kg)をローラミキサー上でコポリマー(19.8kg)と接触させ、任意成分のカップリング剤を20℃の閉じた容器内で接触させた。ローラの回転軸線は水平であり、1分当たり10回転の速度で容器を回転させて混合した。吸収の開始時に過酸化物溶液の半分を導入し、吸収の30分後に残りの半分を添加した。120分後にポリマー粒子を回収する。過酸化物溶液の粒子への吸収は完了している。n−ヘプタン中で1時間洗浄した後に粒子を分析した。コポリマー中の過酸化物の量は組成物の全重量の10%である。
【0083】
試験片の調製
本発明のマスターバッチを評価するために下記組成のフィルムを調製した。
【表4】

【0084】
3つのマスターバッチI1、I4およびCP1から得られた上記フィルムはフィルムダイを備えた二軸逆回転押出機Haake 1で製造した。押出機温度分布は以下の通り:ホッパ20℃−帯域1:75−帯域2:75−フィルムダイ:75℃、スクリュー速度80回転/分。8cm幅のフィルムが得られる。
【0085】
ガラスに対する接着性の測定
ガラス(約3mm)/フィルム(0.32mm)/ポリフッ化ビニリデンベースのバックシート(0.32mm)を製造して、3つのタイプのフィルムの接着性を評価した。各構造物は下記の複数の段階で製造した:
(1)ガラス基材(200×80×3mm)をアルコール清浄する。
(2)フィルムの厚さを調節するために構造物の各層をスペーサーを用いて重ね合わせる。
(3)構造物を110℃の炉内で5kgの質量下に3分間予熱した後、150℃のプレスで構造物を5バールで15分間プレスする。
(4)周囲温度に冷却する。
(5)試験片を空調室で24時間コンディショニングする。
【0086】
PMMAに対する接着性の測定
(1)PMMA基材(200×80×3mm)を清浄する。
(2)フィルムの厚さを調節するために構造物の各層をスペーサーを用いて重ね合わせる。
(3)構造物を85℃の炉内で5kgの質量下に3分間予熱した後、115℃のプレスで構造物を5バールで15分間プレスする。
(4)周囲温度に冷却する。
(5)試験片を空調室で24時間コンディショニングする。
【0087】
接着性はISO 8510−2規格:1990:可撓性結合リジッド試験片組立体の接着剤−剥離試験に従って、力センサを備えたZwick 1445動力計で90度剥離試験で50mm/分の引張速度で構造物を評価した。試験片はカッターで切断し互いに時の幅は15mmである。各試験片は下記の接着性を有する。
【表5】

【0088】
この試験から、本発明のマスターバッチを用いることによって、カップリング剤の非存在下でもガラスのような基材に対して優れた接着性を示すフィルムが製造できることがわかる。
試験I6およびI7から、実施例CP4と比べると、本発明のマスターバッチは基材がPMMA(ポリ(メチルメタクリレート))のときに特に有利であることがわかる。
【図1(a)】

【図1(b)】

【図1(c)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2のポリオレフィンと架橋して基材(24)に接着された組立体(22)を形成し、組立体(22)と基材(24)とが2つの別々の層(22、24)を有する一体構造物を形成することができる、架橋剤と、不飽和カルボン酸またはジカルボン酸の無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドの中から選択される官能性モノマー(X)を含む第1のポリオレフィンとの混合物を含む組成物であって、上記架橋剤の量が組成物の全重量の5%以上であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
架橋剤の量が組成物の全重量の6〜30%、好ましくは7〜16%である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
架橋剤が有機過酸化物である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
カップリング剤をさらに含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
官能性ポリオレフィンが下記のポリマーである請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物:
(1)エチレン、
(2)(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸およびグリシジル(メタ)アクリレートの中から選択される少なくとも一種の官能性モノマー(X)、
(3)任意成分として、カルボン酸ビニルエステルまたはアルキル(メタ)アクリレートの中から選択される4〜20個の炭素原子を含む追加モノマー。
【請求項6】
官能性モノマー(X)を含む上記ポリオレフィンがその全重量に対して下記を含む請求項4に記載の組成物:
(1)0.01〜20重量%の官能性モノマー(X)、
(2)0〜45重量%の追加モノマー、
(3)99.99〜35重量%のエチレン。
【請求項7】
官能性モノマー(X)を含む上記ポリオレフィンがその全重量に対して下記を含む請求項6に記載の組成物:
(1)0.1〜10重量%の官能性モノマー(X)、
(2)10〜35重量%の追加モノマー、
(3)89.9〜55重量%のエチレン。
【請求項8】
ポリオレフィン中に含まれる官能性モノマー(X)をグラフトまたは共重合によって挿入する請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
官能性モノマー(X)を含むポリオレフィンが、無水マレイン酸グラフトした密度が0.860〜0.910のポリエチレ、エチレン−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−メチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−エチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−ブチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン−メチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン−エチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン−ブチル(メタ)アクリレート−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーおよびエチレン−酢酸ビニル−グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーの中から選択される請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
官能性モノマー(X)が無水マレイン酸である請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
基材(24)がガラス、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)またはこれらの特徴を併せ持つその他の任意のポリマー組成物で作られる請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
下記(1)〜(3)の段階を含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物の製造方法:
(1)架橋剤を溶液状態で官能性モノマーを有するポリオレフィンと接触させる第1段階、
(2)官能性モノマーを有するポリオレフィンの軟化温度(ASTM規格E 28−99(2004)で測定)より低い温度で、撹拌下に、ポリオレフィンによって過酸化物(b)の溶液を吸収する第2段階、
(3)組成物を回収する第3段階。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物または請求項12に記載の方法で得られる組成物の、第2のポリオレフィンを架橋するためのマスターバッチとしての使用。
【請求項14】
下記の段階を含むフィルムの製造方法:
(1)ポリオレフィンと、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物または請求項12に記載の方法で得られる組成物との混合物を製造する段階、
(2)この混合物をフィルムにする段階。
【請求項15】
第2のポリオレフィンと架橋した請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物から得られる構造物から成るフィルムの、太陽電池封止材料としての使用。
【請求項16】
少なくとも下記の段階を含む太陽電池モジュールの製造方法:
(1)請求項14に記載の得られたフィルムおよび太陽電池を含むモジュールの各種構成層を組み立てる段階、
(2)モジュールを硬化する段階。

【図2】
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【公表番号】特表2013−512984(P2013−512984A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541554(P2012−541554)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052499
【国際公開番号】WO2011/067505
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】