定着用ナノ材料発熱体
【課題】ウォームアップ時間、エネルギー効率および加熱アドレス指定可能性の3つに関する問題に対応可能な定着サブシステムを提供する。
【解決手段】印刷装置100は、カーボンナノチューブおよび金属ナノシェルにより構成されるグループから選択したそれぞれ複数のナノ材料から成る1つ以上の光誘起発熱体を備えた定着サブシステム101と、1つ以上の光誘起発熱体に隣接して配置され、それぞれ複数のナノ材料の吸収範囲で発光し、複数のナノ材料による光吸収によって定着サブシステムにおいて発熱するよう配置された1つ以上の発光源150とを備える。
【解決手段】印刷装置100は、カーボンナノチューブおよび金属ナノシェルにより構成されるグループから選択したそれぞれ複数のナノ材料から成る1つ以上の光誘起発熱体を備えた定着サブシステム101と、1つ以上の光誘起発熱体に隣接して配置され、それぞれ複数のナノ材料の吸収範囲で発光し、複数のナノ材料による光吸収によって定着サブシステムにおいて発熱するよう配置された1つ以上の発光源150とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置およびマーキング装置に関し、特に定着サブシステムおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(ドライおよびダイレクト)マーキングにおける現在の定着システムは、エネルギー消費に関して非常に効率が悪い。例えば、典型的な定着ロールでは、熱量のわずか約1%がトナー画像を定着するために使用され、残りは用紙のウォーミングアップとロールの加熱およびスタンバイ時にただ浪費されている。また、加熱量が大きくなるとウォームアップ時間も非常に長くなり、大型の生産機器の場合は例えば約30分に及ぶ場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6344272号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/17009号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/36709号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来技術のこれらおよびその他の問題を解消するために、ウォームアップ時間、エネルギー効率および加熱アドレス指定可能性の3つに関する問題に対応可能な定着サブシステムを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
様々な実施形態による印刷装置を提供する。この印刷装置は、1つ以上の光誘起発熱体を有する定着サブシステムを備えてもよく、前記1つ以上の光誘起発熱体はそれぞれ複数のナノ材料から成り、前記複数のナノ材料はカーボンナノチューブおよび金属ナノシェルにより構成されたグループから選択してもよい。この印刷装置はまた、前記1つ以上の光誘起発熱体に隣接して配置され、それぞれ前記複数のナノ材料の吸収範囲で発光し、前記複数のナノ材料による光吸収によって定着サブシステムにおいて発熱するよう配置された1つ以上の発光源を備えてもよい。
【0006】
様々な実施形態による画像形成方法を提供する。この方法は、媒体上にトナー画像を供給する工程と、カーボンナノチューブおよび金属ナノシェルにより構成されるグループから選択する複数のナノ材料による光吸収によって、1つ以上の光誘起発熱体において発熱を行う定着サブシステムを提供する工程を含んでもよい。この方法はまた、それぞれ前記複数のナノ材料の吸収範囲で発光する1つ以上の発光源を、前記1つ以上の光誘起発熱体に隣接して提供する工程を含んでもよい。この方法はさらに、前記定着サブシステムによって媒体を供給する工程と、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によってトナー画像を媒体に定着することにより、前記1つ以上の光誘起発熱体および前記媒体と接する定着サブシステムを前記複数のナノ材料による光吸収によって加熱する工程を含んでもよい。
【0007】
また別の実施形態によるマーキング方法を提供する。このマーキング方法は、マーキングシステムにおいて媒体を供給する工程を含み、前記マーキングシステムは、カーボンナノチューブと金属ナノシェルにより構成されるグループから選択する複数のナノ材料による光吸収によって1つ以上の光誘起発熱体において発熱を行う定着サブシステムを備えてもよい。このマーキング方法はまた、それぞれ複数のナノ材料の吸収範囲において発光する1つ以上の発光源を、前記1つ以上の光誘起発熱体に隣接して提供する工程を含んでもよい。このマーキング方法はさらに、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によって前記媒体上に画像を転写、定着することにより、トナー画像に対応する前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムを加熱する工程と、フィニッシャに前記媒体を搬送する工程を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の様々な実施形態による例示の印刷装置を概略的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の様々な実施形態による図1の例示の定着部材を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の様々な実施形態による印刷装置の例示の定着サブシステムを概略的に示す図である。
【図4】図4は、本発明の様々な実施形態による印刷装置の別の例示の定着サブシステムを概略的に示す図である。
【図5】図5は、本発明の様々な実施形態による例示の画像形成方法を示す図である。
【図6】図6は、本発明の様々な実施形態による例示のマーキング方法を示す図である。
【図7】図7は、本発明の様々な実施形態による印刷装置の例示の定着サブシステムを概略的に示す図である。
【図8】図8は、本発明の様々な実施形態による印刷装置の別の例示の定着サブシステムを概略的に示す図である。
【図9】図9は、本発明の様々な実施形態による印刷装置の別の例示の定着サブシステムを概略的に示す図である。
【図9A】図9Aは、本発明の様々な実施形態による図9の例示の定着部材を概略的に示す断面図である。
【図9B】図9Bは、本発明の様々な実施形態による金属ナノシェルを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は例示の印刷装置100を概略的に示す図である。例示の印刷装置100は、電子写真感光体172と、電子写真感光体172を一様に帯電させる充電ステーション174を備えてもよい。電子写真感光体172は、図1に示すドラム感光体またはベルト感光体(図示せず)であってもよい。例示の印刷装置100はまた、原稿(図示せず)を発光源(図示せず)で露光して電子写真感光体172上に潜像を形成可能な作像ステーション176を備えてもよい。例示の印刷装置100は、潜像を電子写真感光体172上で可視画像に変換する現像サブシステム178と、可視画像を媒体120上に転写する転写サブシステム179をさらに備えてもよい。印刷装置100はまた、媒体120上の可視画像を定着する定着サブシステム101を備えてもよい。定着サブシステム101はまた、それぞれカーボンナノチューブと金属ナノシェルにより構成されるグループから選択した複数のナノ材料105を含む1つ以上の光誘起発熱体106を有してもよい。
【0010】
様々な実施形態において、複数のナノ材料105は、複数の一層カーボンナノチューブ(SWNT)、複数の二層カーボンナノチューブ(DWNT)および複数の複層カーボンナノチューブ(MWNT)を1つ以上含んでもよい。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは1つ以上の半導体カーボンナノチューブおよび金属カーボンナノチューブであってもよい。更に、カーボンナノチューブは異なる長さ、直径および/またはキラリティ(chiralities)を有してもよい。カーボンナノチューブの直径は約0.5nmから20nm、長さは約100nmから数mmであってもよい。ある実施形態では、図9Bに示すように、複数のナノ材料105はそれぞれ金属ナノシェル405’を含んでもよい。金属ナノシェル405’は誘電体コア492と誘電体コア492上に配置された金属シェル491を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、金属シェル491の金属を金、銀および銅から成るグループから選択してもよい。他の実施形態では、誘電体コア492はシリカ、チタニアおよびアルミナから成るグループから選択してもよい。金属ナノシェル405’における誘電体コア491は、約30nmから約150nm、場合によっては約50nmから70nmの直径を有してもよく、金属シェル491の厚みは約5nmから約25nm、場合によっては約10nmから約15nmであってもよい。
【0011】
再び図1を参照すると、例示の印刷装置100はさらに、前記1つ以上の光誘起発熱体106に隣接して配置され、それぞれ前記複数のナノ材料105の吸収範囲で発光し、前記複数のナノ材料105による光吸収によって定着サブシステム101において発熱するよう配置された1つ以上の発光源150を備えてもよい。様々な実施形態において、前記1つ以上の光誘起発熱体106は、発光源150による露光によって約100℃から約200℃の範囲の温度に達すると共に、露光の中止により所望のより低い温度に急速に達することが可能であり、この所望の低い温度は、露光に際して1つ以上の光誘起発熱体106によって達成された温度より低い温度である。所望温度に到達して室温へ戻るのに要する時間は、例えば発光源、発光源の分光分布、発光源の強度およびプロセス速度のようないくつかの要因により異なる。
【0012】
様々な実施形態では、発光源150は、UVランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、レーザアレイ、発光ダイオード(LED)アレイおよび有機発光ダイオード(OLED)アレイの少なくとも1つを含んでもよい。発光源150は、紫外線から近赤外領域までの領域であればどのような範囲の光でも発することができる。ある実施形態では、発光源150はデジタル発光源であってもよく、前記レーザアレイ、発光ダイオード(LED)アレイおよび有機発光ダイオード(OLED)アレイの少なくとも1つの各光成分は、個々にアドレス指定可能である。ここで言う「光成分」とは、LEDアレイのLED、OLEDアレイのOLEDまたはレーザアレイのレーザーを意味する。ここで言う「個々にアドレス指定可能」とは、LEDアレイのLEDのような各光成分が、その周囲のLEDとは別個に識別、処理可能、具体的には各LEDを個別にオンオフ可能であり、各LEDの出力を個別に制御可能であることを意味する。しかしながらいくつかの実施形態では、例えばLEDアレイのLEDのような各光成分を個々にアドレス指定する代わりに、2つ以上のLEDを含むLEDグループを一括してアドレス指定する、つまりLEDアレイのLEDグループをグループごとにオンオフすることもできる。例えば、ある行間隔およびマージンを有するテキストを印刷する場合には、例えばLEDアレイの中の、テキストに対応する1つ以上のLEDなどの光成分を作動させることにより、1つ以上の光誘起発熱体のテキストに対応する部分は選択的に露光するが、テキストの行間やテキスト周辺部分のマージンに対応するLEDは停止させることができる。従って、デジタル発光源を使用すると、前記1つ以上の光誘起発熱体はデジタル熱源でもよい。
【0013】
印刷装置100の定着サブシステム101は、定着部材110、加圧部材112、給油サブシステム(図示せず)およびクリーニングウェブ(図示せず)のうち1つ以上を備えてもよい。いくつかの実施形態では、図1、3および7において示すように、定着部材110は定着ロール110、310であってもよい。他の実施形態では、図4および8で示すように定着部材110は定着ベルト415であってもよい。様々な実施形態では、加圧部材112は図1、3、4および8に示すような加圧ロール112、312、412または加圧ベルト(図示せず)であってもよい。
【0014】
図2は、例示の定着部材110、310、415を概略的に示す断面図である。例示の定着部材110は、基材102上に配置された整合層(conformance layer)104を有してもよい。いくつかの実施形態では、基材102は、例えばポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミドおよびポリアリールエーテルケトンのような高温プラスチック基材でもよい。他の実施形態では、基材102は例えば鋼やアルミニウムのような金属基板でもよい。ベルト構造を有する基材102の厚さは、約50μmから約150μmであってもよく、場合によっては約65μmから約85μmでもよい。ロール構造を有する基材102の厚さは、約2mmから約20mmであってもよく、場合によっては約5mmから約15mmであってもよい。様々な実施形態では、整合層104はまた熱遮断層であってもよい。整合層104は例えばシリコンゴム、フルオロシリコンおよびフルオロエラストマーのように任意の適切な材料で構成することができる。例示の定着部材110はまた、整合層104上に配置された複数のナノ材料105を含む光誘起発熱体層(light induced heating element layer)106、および光誘起発熱体層106上に配置されたトナー離型層108を有してもよい。様々な実施形態において、光誘起発熱体層106は、複数の一層(single wall)カーボンナノチューブ、複数の二層(double wall)カーボンナノチューブおよび複数の複層カーボンナノチューブを1つ以上含んでもよい。いくつかの実施形態では、光誘起発熱体層106はカーボンナノチューブ織物(carbon nanotube textile)を含んでもよい。他の実施形態では、光誘起発熱体層106は塗布可能な光吸収カーボンナノチューブ溶媒層を含んでもよい。塗布可能な光吸収カーボンナノチューブ溶媒層は、界面活性剤またはDNAまたは高分子材料によって安定化したカーボンナノチューブを水性分散またはアルコール分散することにより塗布可能であることは当業者により理解されるであろう。適切な方法であれば、どのような方法で塗布可能な光吸収カーボンナノチューブ溶媒層を整合層上に塗布してもよい。他のいくつかの実施形態では、光誘起発熱体層106は重合体中に分散した複数の金属ナノシェル405’を含み、この複数の金属ナノシェル405’はそれぞれ誘電体コア492と誘電体コア492上に配置された金属シェル491から成ってもよい。金属シェル491としては、例えば金、銀および銅などの適切な金属であればどのような金属を使用してもよい。誘電体コア492としては、例えばシリカ、チタニアおよびアルミナなどの適切な誘電材料であればどのような材料を使用してもよい。様々な実施形態では、光誘起発熱体層106の厚さは約0.1μmから約150μmであってもよく、場合によっては約40μmから約100μmであってもよい。
【0015】
ある実施形態では、トナー離型層108は、例えばシリコン、フルオロシリコン、フッ素重合体およびフルオロエラストマーのような適切な材料であれなばどのような材料により構成してもよい。トナー離型層108の厚さは約10μmから約100μmであってもよく、場合によっては約20μmから約60μmであってもよい。トナー離型層108の透明性は、複数のナノ材料105の吸収範囲内で約10%から約100%であってもよく、約50%から約100%であってもよい。様々な実施形態では、1つ以上の任意の粘着層(図示せず)を基材102と整合層104間、整合層104と光誘起発熱体層106間、および光誘起発熱体層106とトナー離型層108間に使用して、確実に各層104、106、108間の適切な接合を実現して性能目標を達成することができる。様々な実施形態では、加圧部材112、312、412はまた、図2に示す例示の定着部材110、310、415の断面を有してもよい。
【0016】
再び印刷装置100について言及すると、印刷装置100は図1に示す静電プリンタであってもよい。図3は、静電プリンタの例示の定着サブシステム301を概略的に示す。図3に示す例示の定着サブシステム301はロール構造を有し、定着ニップ311を形成するよう取り付けることができる回転可能な定着ロール310および加圧ロール312を備えてもよい。様々な実施形態では、1つ以上の定着ロール310および加圧ロール312は、複数のナノ材料105から成る1つ以上の光誘起発熱体306を有してもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の光誘起発熱体306は、複数の一層カーボンナノチューブ、複数の二層カーボンナノチューブおよび複数の複層カーボンナノチューブを1つ以上含んでもよい。他の実施形態では、1つ以上の光誘起発熱体306は複数の金属ナノシェルを含んでもよい。1つ以上の光誘起発熱体306は整合層304上に配置され、整合層304は基材302上に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、基材302は、例えばポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミドおよびポリアリールエーテルケトンのような高温プラスチック基材でもよい。他の実施形態では、基材302は例えば鋼やアルミニウムのような金属基板でもよい。図3に示すように、トナー離型層308は1つ以上の光誘起発熱体306上に配置することができる。様々な実施形態では、1つ以上の光誘起発熱体306を熱源として使用することができ、定着部材310および110と同様の構造で加圧ロール312内に配置することができる。例示の定着サブシステム301はまた、1つ以上の光誘起発熱体306に隣接して配置した1つ以上の発光源350を含んでもよい。図3は、1つの発光源350を含む例示の定着サブシステム301を示し、図7は、複数の発光源350を含む例示の定着サブシステム701を示す。未定着トナー像を載せる媒体320は、定着用の定着ニップ311を通して供給することができる。例示の定着サブシステム301はまた、定着部材310の表面に油を差して残留トナーの除去を容易にする注油サブシステム(図示せず)と、補助的な熱源を提供する外部加熱ロール(図示せず)と、クリーニングサブシステム(図示せず)を含んでもよい。様々な実施形態では、定着ロール310および/または加圧ロール312の1つ以上の光誘起発熱体306はデジタル熱源であってもよく、その場合発光源の各光成分はデジタル方式であり、個々にアドレス指定可能であるため、デジタル方式で熱を発生させることができる。
【0017】
図4は、静電プリンタのベルト構造を有する例示の定着サブシステム401を概略的に示す。例示の定着サブシステム401は、定着ニップ411を形成するよう取り付けることができる定着ベルト415および回転可能な加圧ロール412を備えてもよい。様々な実施形態では、1つ以上の定着ベルト415および加圧ロール412は、図2に示すように複数のナノ材料105から成る1つ以上の光誘起発熱体206を有してもよい。例示の定着サブシステム401はまた、1つ以上の光誘起発熱体に隣接して配置された1つ以上の発光源450を含んでもよい。図4は1つの発光源450を含む例示の定着サブシステム401を示し、図8は複数の発光源450を含む例示の定着サブシステム801を示す。
【0018】
図9は、定着ニップ411を形成するよう取り付けることができる定着ベルト415’および回転可能な加圧ロール412を含む別の例示の定着サブシステム901を示す。様々な実施形態では、図9Aで示すように、1つ以上の定着ベルト415’および加圧ロール412は複数のナノ材料405’から成る1つ以上の光誘起発熱体406’で構成してもよい。定着サブシステム901はまた、図9に示すように複数の発光源450を備えてもよく、発光源は定着ベルト415’のどちらの面に対して取り付けてもよい。未定着トナー像を載せる媒体420は、定着用の定着ニップ411を通して供給することができる。図9Aは、定着ベルト415’の断面図を概略的に示す。例示の定着ベルト415’は、基材402’上に配置された光誘起発熱体層406’を含んでもよく、光誘起発熱体層406’は重合体中に分散した複数の金属ナノシェル405’を含んでもよく、光誘起発熱体層406’はまた、トナー離型層として機能してもよい。金属ナノシェル405’は、フッ素重合体、シリコンおよびシロキサン、フルオロシリコン、ポリホスファゼン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等、および重合体のブレンドなどの適切なフッ素重合体であればどのようなフッ素重合体中に分散していてもよい。基材402’は、例えばシリコン、シロキサン、フルオロシリコン、ポリホスファゼン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等、およびこれら重合体のブレンドなど光誘起発熱体層406’を加熱するために発光源が使用する波長を透過させる適切な材料であればどのような材料であってもよい。
【0019】
図5に示すように、様々な実施形態による画像形成方法500を提供する。この方法500は、工程561に示すように媒体上にトナー画像を供給する工程を含んでもよい。この方法500はまた、複数のナノ材料による光吸収によって1つ以上の光誘起発熱体にて発熱を行う定着サブシステムを提供する工程562を含んでもよく、この工程では、ナノ材料をカーボンナノチューブと金属ナノシェルから成るグループから選択してもよく、金属ナノシェルは誘電体コアと誘電体コア上の金属シェルから構成してもよい。いくつかの実施形態では、定着サブシステムを提供する工程562は、ローラー構造を有する定着サブシステムを提供する工程を含んでもよい。他の実施形態では、定着サブシステムを提供する工程562は、ベルト構造を有する定着サブシステムを提供する工程を含んでもよい。他のいくつかの実施形態では、定着サブシステムを供給する工程562は、1つ以上の定着ロール、定着ベルト、加圧ロールおよび加圧ベルトを提供する工程を含んでもよい。この方法500はまた、それぞれ複数のナノ材料の吸収範囲で発光する1つ以上の発光源を、1つ以上の光誘起発熱体に隣接して提供する工程563を含んでもよい。様々な実施形態では、1つ以上の発光源を提供する工程563は、UVランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、レーザアレイ、LEDアレイおよび有機LEDアレイの少なくとも1つを提供する工程を含んでもよい。この方法500はまた、定着サブシステムによって媒体を供給する工程564と、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によってトナー画像を媒体に定着することにより、1つ以上の光誘起発熱体および媒体と接する定着サブシステムを複数のナノ材料による光吸収によって加熱する工程565を含んでもよい。
【0020】
様々な実施形態では、1つ以上の発光源を使用した1つ以上の光誘起発熱体の露光によってトナー画像を媒体上に定着することにより、前記1つ以上の光誘起発熱体および定着サブシステムを加熱する工程565は、前記1つ以上の光誘起発熱体の一部を選択的に露光して前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムのトナー画像に対応する部分を加熱する工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、工程565はさらに、前記1つ以上の光誘起発熱体の第1部分を第1強度を有する光で選択的に露光して、前記第1部分を第1温度に加熱する工程と、前記1つ以上の光誘起発熱体の第2の部分を第1強度と異なる強度を有する光で選択的に露光して、前記第2部分を第1温度とは異なる第2温度まで加熱する工程などを含んでもよい。前記1つ以上の光誘起発熱体の第1部分を第1温度まで加熱し、前記1つ以上の光誘起発熱体の第2部分を第2温度まで加熱することに関しては、例えばエネルギー効率の向上や画質の改善などの多数の理由が考えられることは当業者によって理解されるであろう。この方法500はさらに、工程565に示すように媒体を定着サブシステムに供給してトナー画像を媒体上に定着する工程を含んでもよい。
【0021】
様々な実施形態によれば、マーキングシステムにおいて媒体を供給する工程681を含むマーキング方法600を提供する。このマーキングシステムは、複数のナノ材料による光吸収によって1つ以上の光誘起発熱体にて発熱を行う定着サブシステムを有し、このナノ材料はカーボンナノチューブと金属ナノシェルから成るグループから選択され、この金属ナノシェルは誘電体コアと誘電体コア上の金属シェルから構成される。このマーキング方法600はまた、工程682のようにそれぞれ複数のナノ材料の吸収範囲において発光する1つ以上の発光源を、前記1つ以上の光誘起発熱体に隣接して提供する工程を含んでもよい。様々な実施形態では、1つ以上の発光源を提供する工程682は、UVランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、レーザアレイ、LEDアレイおよび有機LEDアレイの少なくとも1つを提供する工程を含んでもよい。前記1つ以上の発光源の少なくとも1つは、デジタル発光源であってもよく、このデジタル発光源の各光成分は個々にアドレス指定可能であってもよい。デジタル発光源を使用すると、前記1つ以上の光誘起発熱体はデジタル熱源でもよい。このマーキング方法600はさらに、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によって媒体上に画像を転写、定着することにより、トナー画像に対応する前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムを加熱する工程683を含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によって媒体上に画像を転写、定着することにより、トナー画像に対応する前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムを加熱する工程683は、前記1つ以上の光誘起発熱体の一部を選択的に露光することにより、前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムのトナー画像に対応する部分を加熱する工程を含んでもよい。他の実施形態では、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によって媒体上に画像を転写、定着することにより、トナー画像に対応する前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムを加熱する工程683はさらに、前記1つ以上の光誘起発熱体の第1部分を第1強度を有する光で選択的に露光して第1部分を第1温度に加熱する工程と、前記1つ以上の光誘起発熱体の第2部分を第1強度と異なる強度を有する光で選択的に露光して、第2部分を第1温度とは異なる第2温度まで加熱する工程などを含んでもよい。マーキング方法600はまた、フィニッシャに媒体を搬送する工程684を含んでもよい。
【0022】
従来の低量定着システムでは通常、半径方向に比べて軸方向の熱抵抗が比較的高くなるため、定着ロールの軸方向の温度が不均一となる。定着ロール表面の軸方向温度プロフィルは、用紙搬送路の外側のロール表面がより高温となるため、非常に不均一である。これにより、横向きの給紙で多量の印刷を行った後に縦向きの給紙を行うと、ホットオフセットが発生する。開示された定着方式では、軸方向の温度をダイナミックなデジタル発光源出力の同調により調整および制御することにより、定着ロールと加圧ロールに沿った均一な軸方向温度分布を確保することができる。例えば、定着ロールが加圧ロールに接する用紙搬送路の外側では、LED電力出力を低減することができる。ヒートパイプまたは他の材料および装置を使用せずに軸方向の不均一性を緩和することができる。
【符号の説明】
【0023】
100 印刷装置、101 定着サブシステム、102 基材、104 整合層、105 ナノ材料、106 光誘起発熱体、108 トナー離型層、110 定着部材、112 加圧部材、120 媒体、150 発光源、172 電子写真感光体、174 充電ステーション、178 現像サブシステム、179 転写サブシステム、405’ 金属ナノシェル、491 金属シェル、492 誘電体コア、500 画像形成方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置およびマーキング装置に関し、特に定着サブシステムおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(ドライおよびダイレクト)マーキングにおける現在の定着システムは、エネルギー消費に関して非常に効率が悪い。例えば、典型的な定着ロールでは、熱量のわずか約1%がトナー画像を定着するために使用され、残りは用紙のウォーミングアップとロールの加熱およびスタンバイ時にただ浪費されている。また、加熱量が大きくなるとウォームアップ時間も非常に長くなり、大型の生産機器の場合は例えば約30分に及ぶ場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6344272号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/17009号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/36709号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、従来技術のこれらおよびその他の問題を解消するために、ウォームアップ時間、エネルギー効率および加熱アドレス指定可能性の3つに関する問題に対応可能な定着サブシステムを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
様々な実施形態による印刷装置を提供する。この印刷装置は、1つ以上の光誘起発熱体を有する定着サブシステムを備えてもよく、前記1つ以上の光誘起発熱体はそれぞれ複数のナノ材料から成り、前記複数のナノ材料はカーボンナノチューブおよび金属ナノシェルにより構成されたグループから選択してもよい。この印刷装置はまた、前記1つ以上の光誘起発熱体に隣接して配置され、それぞれ前記複数のナノ材料の吸収範囲で発光し、前記複数のナノ材料による光吸収によって定着サブシステムにおいて発熱するよう配置された1つ以上の発光源を備えてもよい。
【0006】
様々な実施形態による画像形成方法を提供する。この方法は、媒体上にトナー画像を供給する工程と、カーボンナノチューブおよび金属ナノシェルにより構成されるグループから選択する複数のナノ材料による光吸収によって、1つ以上の光誘起発熱体において発熱を行う定着サブシステムを提供する工程を含んでもよい。この方法はまた、それぞれ前記複数のナノ材料の吸収範囲で発光する1つ以上の発光源を、前記1つ以上の光誘起発熱体に隣接して提供する工程を含んでもよい。この方法はさらに、前記定着サブシステムによって媒体を供給する工程と、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によってトナー画像を媒体に定着することにより、前記1つ以上の光誘起発熱体および前記媒体と接する定着サブシステムを前記複数のナノ材料による光吸収によって加熱する工程を含んでもよい。
【0007】
また別の実施形態によるマーキング方法を提供する。このマーキング方法は、マーキングシステムにおいて媒体を供給する工程を含み、前記マーキングシステムは、カーボンナノチューブと金属ナノシェルにより構成されるグループから選択する複数のナノ材料による光吸収によって1つ以上の光誘起発熱体において発熱を行う定着サブシステムを備えてもよい。このマーキング方法はまた、それぞれ複数のナノ材料の吸収範囲において発光する1つ以上の発光源を、前記1つ以上の光誘起発熱体に隣接して提供する工程を含んでもよい。このマーキング方法はさらに、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によって前記媒体上に画像を転写、定着することにより、トナー画像に対応する前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムを加熱する工程と、フィニッシャに前記媒体を搬送する工程を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の様々な実施形態による例示の印刷装置を概略的に示す図である。
【図2】図2は、本発明の様々な実施形態による図1の例示の定着部材を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の様々な実施形態による印刷装置の例示の定着サブシステムを概略的に示す図である。
【図4】図4は、本発明の様々な実施形態による印刷装置の別の例示の定着サブシステムを概略的に示す図である。
【図5】図5は、本発明の様々な実施形態による例示の画像形成方法を示す図である。
【図6】図6は、本発明の様々な実施形態による例示のマーキング方法を示す図である。
【図7】図7は、本発明の様々な実施形態による印刷装置の例示の定着サブシステムを概略的に示す図である。
【図8】図8は、本発明の様々な実施形態による印刷装置の別の例示の定着サブシステムを概略的に示す図である。
【図9】図9は、本発明の様々な実施形態による印刷装置の別の例示の定着サブシステムを概略的に示す図である。
【図9A】図9Aは、本発明の様々な実施形態による図9の例示の定着部材を概略的に示す断面図である。
【図9B】図9Bは、本発明の様々な実施形態による金属ナノシェルを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は例示の印刷装置100を概略的に示す図である。例示の印刷装置100は、電子写真感光体172と、電子写真感光体172を一様に帯電させる充電ステーション174を備えてもよい。電子写真感光体172は、図1に示すドラム感光体またはベルト感光体(図示せず)であってもよい。例示の印刷装置100はまた、原稿(図示せず)を発光源(図示せず)で露光して電子写真感光体172上に潜像を形成可能な作像ステーション176を備えてもよい。例示の印刷装置100は、潜像を電子写真感光体172上で可視画像に変換する現像サブシステム178と、可視画像を媒体120上に転写する転写サブシステム179をさらに備えてもよい。印刷装置100はまた、媒体120上の可視画像を定着する定着サブシステム101を備えてもよい。定着サブシステム101はまた、それぞれカーボンナノチューブと金属ナノシェルにより構成されるグループから選択した複数のナノ材料105を含む1つ以上の光誘起発熱体106を有してもよい。
【0010】
様々な実施形態において、複数のナノ材料105は、複数の一層カーボンナノチューブ(SWNT)、複数の二層カーボンナノチューブ(DWNT)および複数の複層カーボンナノチューブ(MWNT)を1つ以上含んでもよい。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは1つ以上の半導体カーボンナノチューブおよび金属カーボンナノチューブであってもよい。更に、カーボンナノチューブは異なる長さ、直径および/またはキラリティ(chiralities)を有してもよい。カーボンナノチューブの直径は約0.5nmから20nm、長さは約100nmから数mmであってもよい。ある実施形態では、図9Bに示すように、複数のナノ材料105はそれぞれ金属ナノシェル405’を含んでもよい。金属ナノシェル405’は誘電体コア492と誘電体コア492上に配置された金属シェル491を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、金属シェル491の金属を金、銀および銅から成るグループから選択してもよい。他の実施形態では、誘電体コア492はシリカ、チタニアおよびアルミナから成るグループから選択してもよい。金属ナノシェル405’における誘電体コア491は、約30nmから約150nm、場合によっては約50nmから70nmの直径を有してもよく、金属シェル491の厚みは約5nmから約25nm、場合によっては約10nmから約15nmであってもよい。
【0011】
再び図1を参照すると、例示の印刷装置100はさらに、前記1つ以上の光誘起発熱体106に隣接して配置され、それぞれ前記複数のナノ材料105の吸収範囲で発光し、前記複数のナノ材料105による光吸収によって定着サブシステム101において発熱するよう配置された1つ以上の発光源150を備えてもよい。様々な実施形態において、前記1つ以上の光誘起発熱体106は、発光源150による露光によって約100℃から約200℃の範囲の温度に達すると共に、露光の中止により所望のより低い温度に急速に達することが可能であり、この所望の低い温度は、露光に際して1つ以上の光誘起発熱体106によって達成された温度より低い温度である。所望温度に到達して室温へ戻るのに要する時間は、例えば発光源、発光源の分光分布、発光源の強度およびプロセス速度のようないくつかの要因により異なる。
【0012】
様々な実施形態では、発光源150は、UVランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、レーザアレイ、発光ダイオード(LED)アレイおよび有機発光ダイオード(OLED)アレイの少なくとも1つを含んでもよい。発光源150は、紫外線から近赤外領域までの領域であればどのような範囲の光でも発することができる。ある実施形態では、発光源150はデジタル発光源であってもよく、前記レーザアレイ、発光ダイオード(LED)アレイおよび有機発光ダイオード(OLED)アレイの少なくとも1つの各光成分は、個々にアドレス指定可能である。ここで言う「光成分」とは、LEDアレイのLED、OLEDアレイのOLEDまたはレーザアレイのレーザーを意味する。ここで言う「個々にアドレス指定可能」とは、LEDアレイのLEDのような各光成分が、その周囲のLEDとは別個に識別、処理可能、具体的には各LEDを個別にオンオフ可能であり、各LEDの出力を個別に制御可能であることを意味する。しかしながらいくつかの実施形態では、例えばLEDアレイのLEDのような各光成分を個々にアドレス指定する代わりに、2つ以上のLEDを含むLEDグループを一括してアドレス指定する、つまりLEDアレイのLEDグループをグループごとにオンオフすることもできる。例えば、ある行間隔およびマージンを有するテキストを印刷する場合には、例えばLEDアレイの中の、テキストに対応する1つ以上のLEDなどの光成分を作動させることにより、1つ以上の光誘起発熱体のテキストに対応する部分は選択的に露光するが、テキストの行間やテキスト周辺部分のマージンに対応するLEDは停止させることができる。従って、デジタル発光源を使用すると、前記1つ以上の光誘起発熱体はデジタル熱源でもよい。
【0013】
印刷装置100の定着サブシステム101は、定着部材110、加圧部材112、給油サブシステム(図示せず)およびクリーニングウェブ(図示せず)のうち1つ以上を備えてもよい。いくつかの実施形態では、図1、3および7において示すように、定着部材110は定着ロール110、310であってもよい。他の実施形態では、図4および8で示すように定着部材110は定着ベルト415であってもよい。様々な実施形態では、加圧部材112は図1、3、4および8に示すような加圧ロール112、312、412または加圧ベルト(図示せず)であってもよい。
【0014】
図2は、例示の定着部材110、310、415を概略的に示す断面図である。例示の定着部材110は、基材102上に配置された整合層(conformance layer)104を有してもよい。いくつかの実施形態では、基材102は、例えばポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミドおよびポリアリールエーテルケトンのような高温プラスチック基材でもよい。他の実施形態では、基材102は例えば鋼やアルミニウムのような金属基板でもよい。ベルト構造を有する基材102の厚さは、約50μmから約150μmであってもよく、場合によっては約65μmから約85μmでもよい。ロール構造を有する基材102の厚さは、約2mmから約20mmであってもよく、場合によっては約5mmから約15mmであってもよい。様々な実施形態では、整合層104はまた熱遮断層であってもよい。整合層104は例えばシリコンゴム、フルオロシリコンおよびフルオロエラストマーのように任意の適切な材料で構成することができる。例示の定着部材110はまた、整合層104上に配置された複数のナノ材料105を含む光誘起発熱体層(light induced heating element layer)106、および光誘起発熱体層106上に配置されたトナー離型層108を有してもよい。様々な実施形態において、光誘起発熱体層106は、複数の一層(single wall)カーボンナノチューブ、複数の二層(double wall)カーボンナノチューブおよび複数の複層カーボンナノチューブを1つ以上含んでもよい。いくつかの実施形態では、光誘起発熱体層106はカーボンナノチューブ織物(carbon nanotube textile)を含んでもよい。他の実施形態では、光誘起発熱体層106は塗布可能な光吸収カーボンナノチューブ溶媒層を含んでもよい。塗布可能な光吸収カーボンナノチューブ溶媒層は、界面活性剤またはDNAまたは高分子材料によって安定化したカーボンナノチューブを水性分散またはアルコール分散することにより塗布可能であることは当業者により理解されるであろう。適切な方法であれば、どのような方法で塗布可能な光吸収カーボンナノチューブ溶媒層を整合層上に塗布してもよい。他のいくつかの実施形態では、光誘起発熱体層106は重合体中に分散した複数の金属ナノシェル405’を含み、この複数の金属ナノシェル405’はそれぞれ誘電体コア492と誘電体コア492上に配置された金属シェル491から成ってもよい。金属シェル491としては、例えば金、銀および銅などの適切な金属であればどのような金属を使用してもよい。誘電体コア492としては、例えばシリカ、チタニアおよびアルミナなどの適切な誘電材料であればどのような材料を使用してもよい。様々な実施形態では、光誘起発熱体層106の厚さは約0.1μmから約150μmであってもよく、場合によっては約40μmから約100μmであってもよい。
【0015】
ある実施形態では、トナー離型層108は、例えばシリコン、フルオロシリコン、フッ素重合体およびフルオロエラストマーのような適切な材料であれなばどのような材料により構成してもよい。トナー離型層108の厚さは約10μmから約100μmであってもよく、場合によっては約20μmから約60μmであってもよい。トナー離型層108の透明性は、複数のナノ材料105の吸収範囲内で約10%から約100%であってもよく、約50%から約100%であってもよい。様々な実施形態では、1つ以上の任意の粘着層(図示せず)を基材102と整合層104間、整合層104と光誘起発熱体層106間、および光誘起発熱体層106とトナー離型層108間に使用して、確実に各層104、106、108間の適切な接合を実現して性能目標を達成することができる。様々な実施形態では、加圧部材112、312、412はまた、図2に示す例示の定着部材110、310、415の断面を有してもよい。
【0016】
再び印刷装置100について言及すると、印刷装置100は図1に示す静電プリンタであってもよい。図3は、静電プリンタの例示の定着サブシステム301を概略的に示す。図3に示す例示の定着サブシステム301はロール構造を有し、定着ニップ311を形成するよう取り付けることができる回転可能な定着ロール310および加圧ロール312を備えてもよい。様々な実施形態では、1つ以上の定着ロール310および加圧ロール312は、複数のナノ材料105から成る1つ以上の光誘起発熱体306を有してもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の光誘起発熱体306は、複数の一層カーボンナノチューブ、複数の二層カーボンナノチューブおよび複数の複層カーボンナノチューブを1つ以上含んでもよい。他の実施形態では、1つ以上の光誘起発熱体306は複数の金属ナノシェルを含んでもよい。1つ以上の光誘起発熱体306は整合層304上に配置され、整合層304は基材302上に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、基材302は、例えばポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミドおよびポリアリールエーテルケトンのような高温プラスチック基材でもよい。他の実施形態では、基材302は例えば鋼やアルミニウムのような金属基板でもよい。図3に示すように、トナー離型層308は1つ以上の光誘起発熱体306上に配置することができる。様々な実施形態では、1つ以上の光誘起発熱体306を熱源として使用することができ、定着部材310および110と同様の構造で加圧ロール312内に配置することができる。例示の定着サブシステム301はまた、1つ以上の光誘起発熱体306に隣接して配置した1つ以上の発光源350を含んでもよい。図3は、1つの発光源350を含む例示の定着サブシステム301を示し、図7は、複数の発光源350を含む例示の定着サブシステム701を示す。未定着トナー像を載せる媒体320は、定着用の定着ニップ311を通して供給することができる。例示の定着サブシステム301はまた、定着部材310の表面に油を差して残留トナーの除去を容易にする注油サブシステム(図示せず)と、補助的な熱源を提供する外部加熱ロール(図示せず)と、クリーニングサブシステム(図示せず)を含んでもよい。様々な実施形態では、定着ロール310および/または加圧ロール312の1つ以上の光誘起発熱体306はデジタル熱源であってもよく、その場合発光源の各光成分はデジタル方式であり、個々にアドレス指定可能であるため、デジタル方式で熱を発生させることができる。
【0017】
図4は、静電プリンタのベルト構造を有する例示の定着サブシステム401を概略的に示す。例示の定着サブシステム401は、定着ニップ411を形成するよう取り付けることができる定着ベルト415および回転可能な加圧ロール412を備えてもよい。様々な実施形態では、1つ以上の定着ベルト415および加圧ロール412は、図2に示すように複数のナノ材料105から成る1つ以上の光誘起発熱体206を有してもよい。例示の定着サブシステム401はまた、1つ以上の光誘起発熱体に隣接して配置された1つ以上の発光源450を含んでもよい。図4は1つの発光源450を含む例示の定着サブシステム401を示し、図8は複数の発光源450を含む例示の定着サブシステム801を示す。
【0018】
図9は、定着ニップ411を形成するよう取り付けることができる定着ベルト415’および回転可能な加圧ロール412を含む別の例示の定着サブシステム901を示す。様々な実施形態では、図9Aで示すように、1つ以上の定着ベルト415’および加圧ロール412は複数のナノ材料405’から成る1つ以上の光誘起発熱体406’で構成してもよい。定着サブシステム901はまた、図9に示すように複数の発光源450を備えてもよく、発光源は定着ベルト415’のどちらの面に対して取り付けてもよい。未定着トナー像を載せる媒体420は、定着用の定着ニップ411を通して供給することができる。図9Aは、定着ベルト415’の断面図を概略的に示す。例示の定着ベルト415’は、基材402’上に配置された光誘起発熱体層406’を含んでもよく、光誘起発熱体層406’は重合体中に分散した複数の金属ナノシェル405’を含んでもよく、光誘起発熱体層406’はまた、トナー離型層として機能してもよい。金属ナノシェル405’は、フッ素重合体、シリコンおよびシロキサン、フルオロシリコン、ポリホスファゼン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等、および重合体のブレンドなどの適切なフッ素重合体であればどのようなフッ素重合体中に分散していてもよい。基材402’は、例えばシリコン、シロキサン、フルオロシリコン、ポリホスファゼン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等、およびこれら重合体のブレンドなど光誘起発熱体層406’を加熱するために発光源が使用する波長を透過させる適切な材料であればどのような材料であってもよい。
【0019】
図5に示すように、様々な実施形態による画像形成方法500を提供する。この方法500は、工程561に示すように媒体上にトナー画像を供給する工程を含んでもよい。この方法500はまた、複数のナノ材料による光吸収によって1つ以上の光誘起発熱体にて発熱を行う定着サブシステムを提供する工程562を含んでもよく、この工程では、ナノ材料をカーボンナノチューブと金属ナノシェルから成るグループから選択してもよく、金属ナノシェルは誘電体コアと誘電体コア上の金属シェルから構成してもよい。いくつかの実施形態では、定着サブシステムを提供する工程562は、ローラー構造を有する定着サブシステムを提供する工程を含んでもよい。他の実施形態では、定着サブシステムを提供する工程562は、ベルト構造を有する定着サブシステムを提供する工程を含んでもよい。他のいくつかの実施形態では、定着サブシステムを供給する工程562は、1つ以上の定着ロール、定着ベルト、加圧ロールおよび加圧ベルトを提供する工程を含んでもよい。この方法500はまた、それぞれ複数のナノ材料の吸収範囲で発光する1つ以上の発光源を、1つ以上の光誘起発熱体に隣接して提供する工程563を含んでもよい。様々な実施形態では、1つ以上の発光源を提供する工程563は、UVランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、レーザアレイ、LEDアレイおよび有機LEDアレイの少なくとも1つを提供する工程を含んでもよい。この方法500はまた、定着サブシステムによって媒体を供給する工程564と、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によってトナー画像を媒体に定着することにより、1つ以上の光誘起発熱体および媒体と接する定着サブシステムを複数のナノ材料による光吸収によって加熱する工程565を含んでもよい。
【0020】
様々な実施形態では、1つ以上の発光源を使用した1つ以上の光誘起発熱体の露光によってトナー画像を媒体上に定着することにより、前記1つ以上の光誘起発熱体および定着サブシステムを加熱する工程565は、前記1つ以上の光誘起発熱体の一部を選択的に露光して前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムのトナー画像に対応する部分を加熱する工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、工程565はさらに、前記1つ以上の光誘起発熱体の第1部分を第1強度を有する光で選択的に露光して、前記第1部分を第1温度に加熱する工程と、前記1つ以上の光誘起発熱体の第2の部分を第1強度と異なる強度を有する光で選択的に露光して、前記第2部分を第1温度とは異なる第2温度まで加熱する工程などを含んでもよい。前記1つ以上の光誘起発熱体の第1部分を第1温度まで加熱し、前記1つ以上の光誘起発熱体の第2部分を第2温度まで加熱することに関しては、例えばエネルギー効率の向上や画質の改善などの多数の理由が考えられることは当業者によって理解されるであろう。この方法500はさらに、工程565に示すように媒体を定着サブシステムに供給してトナー画像を媒体上に定着する工程を含んでもよい。
【0021】
様々な実施形態によれば、マーキングシステムにおいて媒体を供給する工程681を含むマーキング方法600を提供する。このマーキングシステムは、複数のナノ材料による光吸収によって1つ以上の光誘起発熱体にて発熱を行う定着サブシステムを有し、このナノ材料はカーボンナノチューブと金属ナノシェルから成るグループから選択され、この金属ナノシェルは誘電体コアと誘電体コア上の金属シェルから構成される。このマーキング方法600はまた、工程682のようにそれぞれ複数のナノ材料の吸収範囲において発光する1つ以上の発光源を、前記1つ以上の光誘起発熱体に隣接して提供する工程を含んでもよい。様々な実施形態では、1つ以上の発光源を提供する工程682は、UVランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、レーザアレイ、LEDアレイおよび有機LEDアレイの少なくとも1つを提供する工程を含んでもよい。前記1つ以上の発光源の少なくとも1つは、デジタル発光源であってもよく、このデジタル発光源の各光成分は個々にアドレス指定可能であってもよい。デジタル発光源を使用すると、前記1つ以上の光誘起発熱体はデジタル熱源でもよい。このマーキング方法600はさらに、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によって媒体上に画像を転写、定着することにより、トナー画像に対応する前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムを加熱する工程683を含んでもよい。いくつかの実施形態において、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によって媒体上に画像を転写、定着することにより、トナー画像に対応する前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムを加熱する工程683は、前記1つ以上の光誘起発熱体の一部を選択的に露光することにより、前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムのトナー画像に対応する部分を加熱する工程を含んでもよい。他の実施形態では、前記1つ以上の発光源を使用した前記1つ以上の光誘起発熱体の露光によって媒体上に画像を転写、定着することにより、トナー画像に対応する前記1つ以上の光誘起発熱体および前記定着サブシステムを加熱する工程683はさらに、前記1つ以上の光誘起発熱体の第1部分を第1強度を有する光で選択的に露光して第1部分を第1温度に加熱する工程と、前記1つ以上の光誘起発熱体の第2部分を第1強度と異なる強度を有する光で選択的に露光して、第2部分を第1温度とは異なる第2温度まで加熱する工程などを含んでもよい。マーキング方法600はまた、フィニッシャに媒体を搬送する工程684を含んでもよい。
【0022】
従来の低量定着システムでは通常、半径方向に比べて軸方向の熱抵抗が比較的高くなるため、定着ロールの軸方向の温度が不均一となる。定着ロール表面の軸方向温度プロフィルは、用紙搬送路の外側のロール表面がより高温となるため、非常に不均一である。これにより、横向きの給紙で多量の印刷を行った後に縦向きの給紙を行うと、ホットオフセットが発生する。開示された定着方式では、軸方向の温度をダイナミックなデジタル発光源出力の同調により調整および制御することにより、定着ロールと加圧ロールに沿った均一な軸方向温度分布を確保することができる。例えば、定着ロールが加圧ロールに接する用紙搬送路の外側では、LED電力出力を低減することができる。ヒートパイプまたは他の材料および装置を使用せずに軸方向の不均一性を緩和することができる。
【符号の説明】
【0023】
100 印刷装置、101 定着サブシステム、102 基材、104 整合層、105 ナノ材料、106 光誘起発熱体、108 トナー離型層、110 定着部材、112 加圧部材、120 媒体、150 発光源、172 電子写真感光体、174 充電ステーション、178 現像サブシステム、179 転写サブシステム、405’ 金属ナノシェル、491 金属シェル、492 誘電体コア、500 画像形成方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと金属ナノシェルにより構成されるグループから選択したそれぞれ複数のナノ材料から成る1つ以上の光誘起発熱体を備えた定着サブシステムと、
前記1つ以上の光誘起発熱体に隣接して配置され、それぞれ前記複数のナノ材料の吸収範囲で発光し、前記複数のナノ材料による光吸収によって前記定着サブシステムにおいて発熱するよう配置された1つ以上の発光源と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
定着サブシステムは定着ロール、定着ベルト、加圧ロールおよび加圧ベルトを1つ以上含むことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記1つ以上の定着ベルトおよび加圧ベルトの少なくとも1つは基材上に配置された複数の金属ナノシェルを重合体中に分散して成る光誘起発熱体を有することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記1つ以上の発光源の少なくとも1つはデジタル発光源であり、前記デジタル発光源の各光成分は個々にアドレス指定可能であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項1】
カーボンナノチューブと金属ナノシェルにより構成されるグループから選択したそれぞれ複数のナノ材料から成る1つ以上の光誘起発熱体を備えた定着サブシステムと、
前記1つ以上の光誘起発熱体に隣接して配置され、それぞれ前記複数のナノ材料の吸収範囲で発光し、前記複数のナノ材料による光吸収によって前記定着サブシステムにおいて発熱するよう配置された1つ以上の発光源と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
定着サブシステムは定着ロール、定着ベルト、加圧ロールおよび加圧ベルトを1つ以上含むことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記1つ以上の定着ベルトおよび加圧ベルトの少なくとも1つは基材上に配置された複数の金属ナノシェルを重合体中に分散して成る光誘起発熱体を有することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記1つ以上の発光源の少なくとも1つはデジタル発光源であり、前記デジタル発光源の各光成分は個々にアドレス指定可能であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図9A】
【図9B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図9A】
【図9B】
【公開番号】特開2010−102339(P2010−102339A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241274(P2009−241274)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
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