説明

定着装置および画像形成装置

【課題】 ベルト状部材を用いた定着用回転体を備え、高速で可視画像を形成しても十分なニップ幅が得られ、しかも、記録材に対する良好な分離性能が発揮される定着装置および画像形成装置の提供。
【解決手段】 定着ニップ部において記録材を挟圧搬送するための、記録材における未定着トナー像が形成された一面に接する第1の定着用回転体と、この第1の定着用回転体に圧接されるよう設けられた第2の定着用回転体とを具え、第1の定着用回転体は、無端状のベルト状部材と、これを加熱するためのベルト加熱用ローラと、前記ベルト状部材を第2の定着用回転体に圧接する、少なくとも弾性体層を有するニップ形成用ローラとを具え、ニップ形成用ローラの弾性体層を構成する材料が、連泡率が50%以上の連泡タイプスポンジゴムであり、その要復元時間が0.015sec以下のものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式による定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式による画像形成装置においては、紙などの記録材の一面に形成されたトナー像を当該記録材に熱定着させるために、当該記録材の一面に接する、加熱用ローラ、ニップ形成用ローラおよびこれらの加熱用ローラ、ニップ形成用ローラに張架された無端状のベルト状部材を有する第1の定着用回転体と、この第1の定着用回転体のニップ形成用ローラにベルト状部材を介して圧接されて設けられた第2の定着用回転体とを具え、第1の定着用回転体および第2の定着用回転体の圧接部によって形成される定着ニップ部に記録材が挟圧されながら搬送されて当該記録材に形成された未定着トナー像が加熱により定着されるベルト定着方式の定着装置が広く用いられている。
【0003】
このようなベルト定着方式の定着装置において、例えば高速で画像形成を行うためには、定着ニップ部における記録材の搬送方向の長さ(以下、「ニップ幅」ともいう。)が大きいものであることが必要とされ、この要請に応じるために、例えばニップ形成用ローラの外径を大きいものとすることや、ニップ形成用ローラの弾性体層の厚みを大きいものとすることや、または当該弾性体層の硬度を低いものとすることなどが提案されている。
【0004】
また、ベルト定着方式の定着装置においては、ベルト状部材からニップ形成用ローラへの熱拡散の抑止も要請されており、このために、弾性体層を構成する材料として独立発泡タイプのスポンジゴムを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、このように弾性体層を構成する材料として独立発泡タイプのスポンジゴムを用いると、当該独立発泡タイプのスポンジゴムは内部に多くの気泡が存在するために熱伝導率が小さいものとなり、ベルト状部材からニップ形成用ローラへの熱拡散が抑止されて定着温度を確実に確保することができるが、所望のニップ幅を得るためにニップ形成用ローラの弾性体層の厚みを大きいものとすると、またはその硬度を低いものとすると、その圧縮永久歪が低下することによってニップ形成ローラの耐久性が低下してしまう。また、所望のニップ幅を得るためにニップ形成用ローラの外径を大きいものとすると、必然的に定着ニップ部の出口における曲率半径が大きいものとなるために定着装置からの記録材の分離性能が十分に発揮されずに巻き付き現象などが発生してしまう、という問題がある。
【特許文献1】特開2004−139026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、ベルト状部材を用いた定着用回転体を備えた定着装置であって、高速で可視画像を形成する場合にも、十分なニップ幅が得られて確実にトナーの記録材に対する定着が実行され、しかも、記録材に対する良好な分離性能が発揮され、その結果、画像欠陥のない良好な可視画像が得られる定着装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記の定着装置を具えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の定着装置は、定着ニップ部において記録材を挟圧しながら搬送して当該記録材上に形成された未定着トナー像を加熱により定着するための、記録材における未定着トナー像が形成された一面に接する第1の定着用回転体と、この第1の定着用回転体に圧接されて定着ニップ部が形成されるよう設けられた、当該記録材の他面に接する第2の定着用回転体とを具える定着装置であって、
前記第1の定着用回転体は、無端走行路に沿って走行する無端状のベルト状部材と、このベルト状部材を加熱するためのベルト加熱用ローラと、前記ベルト状部材を第2の定着用回転体に圧接することにより定着ニップ部を形成する、少なくとも弾性体層を有するニップ形成用ローラとを具え、
ニップ形成用ローラの弾性体層を構成する材料が、連泡率が50%以上の連泡タイプスポンジゴムであり、当該連泡タイプスポンジゴムは、その要復元時間が0.015sec以下のものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の定着装置においては、ニップ形成用ローラの弾性体層を構成する連泡タイプスポンジゴムが、その熱伝導率が0.08〜0.15mW/sの範囲のものであることが好ましい。
【0009】
本発明の画像形成装置は、上記の定着装置を具えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の定着装置によれば、第1の定着用回転体のニップ形成用ローラが特定の連泡タイプスポンジゴムよりなる弾性体層を含有しているために、この連泡タイプスポンジゴムの特性により、高速で可視画像を定着する場合も、十分なニップ幅が得られて確実にトナーの記録材に対する定着が実行され、しかも、定着ニップ部において圧縮変形される弾性体層について要回復時間が小さく、小さい時間で当該弾性体層の大きさが圧縮状態から基準状態まで回復するので、定着ニップ部の出口における曲率半径が確実に小さいものとなって記録材に対する良好な分離性能が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の定着装置が搭載された画像形成装置の構成の一例を示す説明図である。
この画像形成装置は、回転される像担持体10と、各々、この像担持体10の回転方向に対してこの順に並ぶよう像担持体10の外周面に沿って配設された、像担持体10の表面を帯電させる帯電装置11、像担持体10の表面を露光することにより静電潜像を形成する露光装置12、トナーを含む現像剤を用いて静電潜像を顕在化させることによりトナー像を形成する現像器13、像担持体10上のトナー像を転写領域において記録材P上に転写する転写手段14、像担持体10に密着した状態にある記録材Pを分離させる分離装置15、および転写領域を通過した像担持体10上に残留する未転写トナーを除去するゴムブレード18Aよりなるクリーニング装置18とを具えている。そして、20は、転写領域より搬送される記録材P上の未定着トナー像を定着させて画像を形成する定着装置である。
【0012】
像担持体10は、ドラム状の金属基体と、この金属基体の外周面に形成された有機光導電性化合物よりなる感光層とにより構成されており、図1において紙面に対して垂直な方向に伸びる状態で配設されている。感光層を構成する樹脂としては、例えばポリカーボネートなどを例示することができる。
この像担持体10が回転されるときの線速度は、例えば200〜500mm/secの範囲に設定されている。
【0013】
帯電装置11は、例えば制御グリッドと帯電極とを有するスコロトロン帯電器よりなり、露光装置12は、例えばレーザ照射装置よりなる。
【0014】
現像器13は、例えばマグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ131および像担持体10とこの現像スリーブ131との間にバイアス電圧を印加する電圧印加装置(図示せず)が設けられてなるものである。
【0015】
転写手段14は、適正な大きさに制御された転写電圧が印加されて転写電界が形成され、この転写電界が作用されることにより、像担持体10上に形成されたトナー像を転写領域において記録材Pに転写させる構成のものであり、具体的には、例えば、像担持体10の軸方向に伸びるよう配設された矩形枠状の外匣14B内に、金属ワイヤよりなる放電ワイヤ14Aが像担持体10の軸方向に伸びるよう当該像担持体10と対向して設けられてなる放電機構により構成することができる。
【0016】
分離装置15は、像担持体10に密着した状態にある記録材Pの電荷を除去することによりこの記録材Pを像担持体10から分離させるものであり、例えばコロトロン帯電器よりなるものが用いられる。
【0017】
クリーニング装置18のゴムブレード18Aは、例えば、ポリウレタンゴムなどの弾性体よりなり、その基端部分が支持部材(図示せず)によって支持されると共に、先端部分が像担持体10の表面に当接されるよう設けられており、ゴムブレード18Aの基端側から伸びる方向は、当接箇所における像担持体10の回転による移動方向と反対方向である、いわゆるカウンター方向とされている。
【0018】
定着装置20は、図2に示すように、ニップ形成用ローラ23、ベルト加熱用ローラ21およびこれらニップ形成用ローラ23、ベルト加熱用ローラ21に懸架されたベルト状部材27よりなる定着ベルト回転体22とにより構成され、転写材Pの未定着トナー像が形成された一面(図2においては、例えば転写材Pの上面)に接するよう配置された第1の定着用回転体と、ベルト状部材27を介してニップ形成用ローラ23に圧接されるよう設けられた第2の定着用回転体である加圧ローラ25とを備えており、このニップ形成用ローラ23と加圧ローラ25との圧接部により、定着ニップ部Nが形成されている。図2において、29は非接触型の温度検知手段である。
【0019】
定着ベルト回転体22のベルト加熱用ローラ21は、例えばハロゲンランプなどのヒータランプよりなる加熱源HLaが内部に配置された円筒状の芯金21aよりなるハードローラである。
【0020】
ここで、加熱源HLaは、芯金21aの内部において、ベルト加熱用ローラ21の長さ方向に伸びるよう配置されており、直接の加熱対象であるベルト加熱用ローラ21の外周面の温度が設定温度域に維持されるよう、温度検知手段29によって検知されるベルト状部材27の表面温度に基づき、図示しない制御手段により、例えば点灯状態がオン−オフ制御される。
【0021】
芯金21aを構成する材料としては特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅などの金属またはそれらの合金を挙げることができる。
【0022】
定着ベルト回転体22のニップ形成用ローラ23は、例えば、金属よりなる芯金23aと、この芯金23aの外周面に形成された、後述する材料よりなる弾性体層23bとにより構成されている。
芯金23aを構成する材料としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、アルミニウム、銅などの金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。
【0023】
ニップ形成用ローラ23の硬度は、高分子計器株式会社製のAsker−C型測定器を用いてその厚み方向に荷重9.8Nで測定されるアスカーC硬度で例えば20〜40°の範囲である。
アスカーC硬度が過大なものであると、定着ニップ部Nにおいて十分なニップ幅が確保されないことがあり、また、アスカーC硬度が過小なものであると、ニップ形成用ローラ23として十分な耐久性を得ることができないおそれがある。
【0024】
ベルト状部材27としては、無端状のベルト基材の表面に弾性体層を介して被覆層が形成されてなるものを好適に用いることができる。
ベルト基材を構成する材料としては、ニッケル、ステンレス鋼などの金属材料、ポリイミドなどの樹脂材料を用いることができる。また、ベルト基材の厚みは、金属材料により形成する場合には、例えば40〜60μm、樹脂材料により構成する場合には、例えば50〜90μmである。
弾性体層を構成する材料としては、例えばシリコーンゴムなどを用いることができる。また、弾性体層の厚みは、例えば150〜350μmである。
被覆層は、トナーが付着するのを防ぐためのトナー離型層としての機能を有する層であって、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)およびテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)から選択されるフッ素樹脂よりなり、その厚さが例えば20〜50μmであることが好ましい。
【0025】
定着ベルト回転体22の加圧ローラ25としては、例えば円筒状の芯金25aと、当該芯金25aの外周面に形成された弾性体層25bと、当該弾性体層25bの表面に形成された被覆層25cとよりなるソフトローラを用いることができる。
【0026】
弾性体層25bを構成する弾性体材料としては、例えばシリコーンゴム、発泡シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられるが、特にシリコーンゴムを用いることが好ましい。この弾性体層25bの厚みは、例えば0.5〜3mmである。
【0027】
芯金25aを構成する材料としては特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅などの金属またはそれらの合金を挙げることができる。
【0028】
被覆層25cを構成する材料の具体例としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)等のフッ素樹脂を主成分とする樹脂などが挙げられる。
具体的には、被覆層25cは、例えば(1)ディスパージョン状態のフッ素樹脂を塗布焼成することにより、厚さ20〜50μmに形成すること、(2)厚さ20〜50μmに成形されたフッ素樹脂チューブを芯金25aに被覆させることによって形成すること、などができる。
【0029】
加圧ローラ25の硬度は、高分子計器株式会社製のAsker−C型測定器を用いてその厚み方向に荷重9.8Nで測定されるアスカーC硬度で例えば40〜90°の範囲である。
【0030】
定着ベルト回転体22のニップ形成用ローラ23は、ベルト状部材27を介して加圧ローラ25によって例えば20N/cmの押圧力で押圧されており、これにより、ベルト状部材27と加圧ローラ25との間に定着ニップ部Nが形成される。
【0031】
以上において、定着ベルト回転体22を押圧するニップ形成用ローラ23の弾性体層23bを構成する材料としては、連泡タイプスポンジゴムが用いられ、その連泡率は50%以上とされる。この弾性体層23bの厚みは、例えば、3〜10mmとされる。
【0032】
連泡率とは、スポンジゴム中における全ての気泡の体積のうち、スポンジゴムの外界に連通している気泡の割合であり、この連泡率が100%であるとき、すべての気泡がスポンジゴムの外界に連通していることを表す。この連泡率は、水中にて減圧した後に大気中に戻したときの空隙に対する給水率を測定することによって得ることができる。
【0033】
また、ニップ形成用ローラ23の弾性体層23bを構成する連泡タイプスポンジゴムは、要回復時間が0.015sec以下のものであることが好ましい。
【0034】
ここに、連泡タイプスポンジゴムについて「要回復時間」とは、基準状態の連泡タイプスポンジゴムを押圧することによって圧縮状態とし、その後、押圧を解除して圧縮状態から基準状態に回復するまでに要する時間を表し、例えばJISK6249におけるタイプEデュロメータによって測定することができる。すなわち、図3に示されているように、基準状態(図3(a)参照)から押圧板31を下降させて連泡タイプスポンジゴムの試料32を荷重800Nで押圧して押圧状態とさせ(図3(b)参照)、その後、押圧板31を解除し(図3(c)参照)、押圧状態から基準状態まで回復する時間をレーザー変位計で測定される。
【0035】
ニップ形成用ローラ23の連泡タイプスポンジゴムについて要回復時間が0.015secより長いものであると、定着ニップ部Nの出口においてニップ形成用ローラ23の大きさが十分に回復せず、当該定着ニップ部Nの出口における曲率半径が大きいものとなって、記録材に対する分離性能が十分に発揮されないことがある。
【0036】
さらに、ニップ形成用ローラ23の弾性体層23bを構成する連泡タイプスポンジゴムは、熱伝導率が0.08〜0.15mW/sのものであることが好ましい。
【0037】
ニップ形成用ローラ23の連泡タイプスポンジゴムについて、熱伝導率が0.15mW/s以下であることによって、ベルト状部材27からのニップ形成用ローラ23への熱拡散が抑制され、定着ニップ部Nにおいて十分な定着温度を得ることができる。
【0038】
以上の画像形成装置において現像に用いられるトナーは、例えば、重合性単量体を水系媒体中で重合させて得られる、いわゆる重合トナーとすることができるが、トナーとしては重合トナーであることに限定されるものではなく、例えば粉砕法などによって製造されたものであってもよい。
【0039】
現像剤としては、例えば、以上のトナーと、スチレン−メタクリレート共重合体で被覆した、平均粒径が65μmであるフェライトキャリアを、トナーが50g、キャリアが950gとなる割合で混合することにより製造されたものを用いることができる。
【0040】
以上の画像形成装置においては、次のようにして画像形成動作が行われる。
先ず、予め帯電装置11により所定の極性(例えば負極性)に帯電された像担持体10上に、露光装置12によって露光された照射個所(露光領域)の電位が低下されることにより静電潜像が形成される。その後、現像器13によって像担持体10の表面電位と同じ極性(例えば負極性)に帯電されたトナーが像担持体10の静電潜像に付着して反転現像が行われ、これにより、像担持体10上にトナー像が形成される。
【0041】
次いで、転写領域に像担持体10上に形成されたトナー像と同期して搬送された記録材P上に、転写手段14により像担持体10上のトナー像が転写された後、分離装置15により像担持体10と密着した状態にある記録材Pが分離される。
【0042】
そして、トナー像が転写された記録材Pは、定着装置20に向かって搬送され、定着ベルト回転体22のニップ形成用ローラ23の弾性体層23bが基準状態から圧縮状態に押圧されて形成された定着ニップ部Nの入口から当該定着ニップ部Nに進入し、第1の定着用回転体である定着ベルト回転体22と第2の定着用回転体である加圧ローラ25とにより記録材Pが挟圧されながら搬送されると、この定着ニップ部Nにおいて、加熱源HLaによって加熱された定着用回転体の熱が記録材Pに付与され、記録材P上の未定着トナー像が熱定着される。
【0043】
このような状態においてこの記録材Pが定着ニップ部Nの出口から排出されるが、定着ニップ部Nにおける出口においては、定着ベルト回転体22のニップ形成用ローラ23の弾性体層23bを構成する連泡タイプスポンジゴムの特性によって小さい時間で弾性体層23bの大きさが圧縮状態から基準状態まで回復し、曲率半径が小さいものとされて当該記録材Pが定着ベルト回転体22から分離され、記録材Pに原稿の画像に対応した可視画像が形成される。
【0044】
一方、転写領域を通過して像担持体10上に残留する未転写トナーはクリーニング装置18のゴムブレード18Aによって除去される。
【0045】
このような定着装置20によれば、ニップ形成用ローラ23の弾性体層23bが特定の連泡タイプスポンジゴムよりなり、この連泡タイプスポンジゴムの特性により、高速で可視画像を定着する場合も、連泡タイプスポンジゴムの圧縮変形により十分なニップ幅が得られて確実にトナーの記録材Pに対する定着が実行される。
しかも、定着ニップ部Nにおいて圧縮変形される弾性体層23bについて要回復時間が小さく、小さい時間で当該弾性体層23bの大きさが圧縮状態から基準状態まで回復するので、定着ニップ部Nの出口における曲率半径が小さいものとなって記録材Pに対する良好な分離性能が発揮される。
【0046】
また、この画像形成装置によれば、上記の定着装置を具えているために、記録材Pに対する良好な分離性能が発揮される。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0049】
<実施例1>
図1に示される構成に従って画像形成装置を製造した。具体的な構成は以下に示すとおりである。
【0050】
(1)像担持体としては、フタロシアニン顔料をポリカーボネートに分散させたものからなる厚みが25μmの感光層が、外径が100mm、軸方向長さが332mm、肉厚が1mmであるであるアルミニウム製のドラム状金属基体の外周面にて形成されてなる、負帯電特性を有する有機感光体よりなるものを用い、この像担持体が回転されるときの線速度の大きさを200mm/secに設定した。
【0051】
(2)帯電装置としては、正放電特性を有するスコロトロン帯電器よりなるものを用いた。
(3)露光装置としては、表面標準出力が300μWである半導体レーザ照射装置よりなるものを用いた。
(4)現像器としては、2成分現像方式のものを用いた。
(5)現像剤としては、重量平均粒径が6.5μmである重合トナーが、4質量%の濃度で含有されたものを用いた。
【0052】
(6)転写手段としては、コロナ放電器よりなるものを用い、供給する転写電流の大きさを20μAに設定した。
(7)分離装置としては負帯電特性を有するコロトロン帯電器よりなるものを用いた。
【0053】
(8)クリーニング装置としては、ウレタンゴムよりなり、JIS A硬度が65°、25℃で測定された反発弾性係数が50%の板状のゴムブレードからなるものを用い、このゴムブレードの像担持体に対する押圧力を294mN/cm、像担持体に対する実効当接角を20°に設定した。
【0054】
(9)定着装置としては、図2に示された、ベルト状部材、ベルト加熱用ローラおよびニップ形成用ローラよりなる定着ベルト回転体と、加圧ローラとにより構成されるベルト定着方式のものを用いた。詳細は以下の通りである。
【0055】
〔9−1〕ベルト状部材としては、厚み80μmのポリイミドよりなるベルト基材上に、厚みが300μmのシリコーンゴムよりなる弾性体層が形成され、この弾性体層上に厚み30μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)チューブよりなる被覆層が形成された、その全長が240mmであるものを用いた。
〔9−2〕ベルト加熱用ローラとしては、外径が40mmのアルミニウムよりなる厚み5mmのハードローラを用いた。
〔9−3〕ニップ形成用ローラとしては、外径が40mmであり、厚み5mmのアルミニウム芯金の外周面上に、連泡率が50%、熱伝導率が0.10mW/sである連泡タイプスポンジゴムよりなる厚み10mmの弾性体層が形成されたものであり、アスカーC硬度が25°であり、要復元時間が0.01secであるものを用いた。
〔9−4〕加圧ローラとしては、外径が18mmであり、厚み5mmのアルミニウム芯金の外周面上に、発泡シリコーンゴムよりなる厚み3mmの弾性体層が形成され、この弾性体層の外周面上に、厚み30μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)チューブよりなる被覆層が形成されたものであり、ニップ形成用ローラに対して800Nの圧接力で圧接され、アスカーC硬度が35°であるものを用いた。
【0056】
このような構成の画像形成装置において、非露光領域における像担持体の表面電位を−50V、露光領域における像担持体の表面電位を0Vに設定し、常温常湿(温度20℃、湿度50%)環境下において、定着装置の搬送速度200mm/secに設定すると共に定着温度を140℃、150℃、160℃、170℃および180℃のそれぞれに設定し、記録材としてA4サイズの普通紙を用いて5種類の定着温度について各々1000枚にわたる実写テストを行い、記録材の分離性能を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
〔記録材の分離性能〕
得られた可視画像について1000枚のすべてについて加熱ローラに巻き付く現象が発生しなかった場合を「○」、1枚以上発生した場合を「×」として評価した。
【0058】
<実施例2>
ニップ形成用ローラのアスカーC硬度が35°であり、要復元時間が0.009secであることの他は実施例1と同様の画像形成装置を用いて実施例1と同様にして実写テストを行い、記録材の分離性能を評価した。結果を表1に示す。
<比較例1>
ニップ形成用ローラの弾性体層がシリコーンゴムであるソリッドゴムよりなり、ニップ形成用ローラのアスカーC硬度が25°であり、要復元時間が0.016secであることの他は実施例1と同様の画像形成装置を用いて実施例1と同様にして実写テストを行い、記録材の分離性能を評価した。結果を表1に示す。
【0059】
<比較例2>
ニップ形成用ローラの弾性体層が独立発泡スポンジゴムよりなり、ニップ形成用ローラのアスカーC硬度が25°であり、要復元時間が0.023secであることの他は実施例1と同様の画像形成装置を用いて実施例1と同様にして実写テストを行い、記録材の分離性能を評価した。結果を表1に示す。
【0060】
<比較例3>
ニップ形成用ローラの弾性体層が独立発泡スポンジゴムよりなり、ニップ形成用ローラのアスカーC硬度が35°であり、要復元時間が0.02secであることの他は実施例1と同様の画像形成装置を用いて実施例1と同様にして実写テストを行い、記録材の分離性能を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
<実施例3〜4、比較例4〜6>
像担持体が回転されるときの線速度の大きさを400mm/secに設定すると共に定着装置の搬送速度を400mm/secに設定したことの他はそれぞれ実施例1〜2、比較例1〜3と同様の画像形成装置を用いて実施例1と同様にして実写テストを行い、記録材の分離性能を評価した。結果を表1に示す。
【0062】

【表1】

【0063】
以上においては、実施例1〜4に係る画像形成装置においては、いずれの定着温度においても記録材について良好な分離性能が発揮されることが確認された。これは、ニップ形成用ローラの弾性体層を構成する材料として特定の連泡率および要復元時間を有する連泡タイプスポンジゴムを用いたために、定着ニップ部において圧接されていても、当該定着ニップ部の出口においては弾性体層の大きさが復元し、曲率半径が小さいものとなったからであると推察される。
一方、比較例1〜6に係る画像形成装置においては、定着温度が150℃、160℃、170℃の場合に記録材が定着ベルト回転体のベルト状部材に巻き付く現象が多数枚にわたって発生した。ここに、定着温度が140°、180℃である場合には、トナーに含有されたワックスの成分の作用が大きく発揮され、記録材について良好な分離性能が発揮されたものと推察される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の定着装置が搭載された画像形成装置の構成の一例を示す説明図である。
【図2】図1の画像形成装置における定着装置を拡大して示す説明図である。
【図3】要復元時間を測定する方法を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
10 像担持体
11 帯電装置
12 露光装置
13 現像器
131 現像スリーブ
14 転写手段
14A 放電ワイヤ
14B 外匣
15 分離装置
18 クリーニング装置
18A ゴムブレード
20 定着装置
21 ベルト加熱用ローラ
21a 芯金
22 定着ベルト回転体
23 ニップ形成用ローラ
23a 芯金
23b 弾性体層
25 加圧ローラ
25a 芯金
25b 弾性体層
25c 被覆層
27 ベルト状部材
29 温度検知手段
31 押圧板
32 試料
N 定着ニップ部
P 記録材
HLa 加熱源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ニップ部において記録材を挟圧しながら搬送して当該記録材上に形成された未定着トナー像を加熱により定着するための、記録材における未定着トナー像が形成された一面に接する第1の定着用回転体と、この第1の定着用回転体に圧接されて定着ニップ部が形成されるよう設けられた、当該記録材の他面に接する第2の定着用回転体とを具える定着装置であって、
前記第1の定着用回転体は、無端走行路に沿って走行する無端状のベルト状部材と、このベルト状部材を加熱するためのベルト加熱用ローラと、前記ベルト状部材を第2の定着用回転体に圧接することにより定着ニップ部を形成する、少なくとも弾性体層を有するニップ形成用ローラとを具え、
ニップ形成用ローラの弾性体層を構成する材料が、連泡率が50%以上の連泡タイプスポンジゴムであり、当該連泡タイプスポンジゴムは、その要復元時間が0.015sec以下のものであることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
ニップ形成用ローラの弾性体層を構成する連泡タイプスポンジゴムは、その熱伝導率が0.08〜0.15mW/sの範囲のものであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の定着装置を具えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−215070(P2006−215070A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24880(P2005−24880)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】