説明

定着装置および画像形成装置

【課題】定着ローラの剥離、亀裂を防止可能な定着装置を提供する。
【解決手段】剛性を有する回転自在な軸芯151及びこれを囲繞するように主弾性層153が配された定着ローラ150と、定着ローラ150に圧接した状態で回転駆動される加圧ローラ160とを備え、主弾性層153が変形することにより定着ニップを形成する定着部5において、主弾性層153は、軸芯151の周方向に自由度をもつように軸芯151に支承されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録シート上の未定着画像を定着させる定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機などの画像形成装置には、定着ローラに加圧ローラを押し付けて圧接ニップを確保し、圧接ニップを記録シートが通過することにより記録シート上に形成されたトナーなどの未定着画像を定着させる定着装置がある(特許文献1)。
上記定着ローラは、未定着像を記録材に溶融定着させるために加熱されており、加熱には、ハロゲンヒータを用いる熱ローラ方式や、誘導コイルを用いて電磁誘導加熱する電磁誘導加熱方式等が採用されている。
【0003】
図6に示すように、上記定着ローラ1150は、例えば、電磁誘導加熱方式の場合、回転自在な円筒状の軸芯1151にその周面に第1弾性層1152が接着され、さらにその上に電磁誘導発熱層1153、第2弾性層1154及び離型層1155がこの順で積層されてなる。
前記電磁誘導発熱層1153は、定着ローラ1150に近接配置された誘導コイル(不図示)により、電磁誘導で発熱することで、記録シートS上に形成されたトナーTなどの未定着画像を溶融定着させる。
【0004】
一方、加圧ローラ1160は、回転駆動される円柱状の軸芯1161にその周面を囲繞する第3弾性層1162が接着され、さらに、その上に離型層1163が積層されてなる。
第1弾性層1152は、第2弾性層1154及び第3弾性層1162よりも柔らかく設定されており、主にこの第1弾性層1152が変形することで、定着に必要な圧接ニップ幅を確保することができる。
【特許文献1】特開2005‐351929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、定着ローラ1150に加圧ローラ1160を押し付けた状態で、加圧ローラ1160を回転駆動するうちに、これに従動する定着ローラ1150の第1弾性層1152において、変形と復元が繰り返され、変形が抑制され応力が集中し易い軸芯1151との接着面に亀裂が生じ、定着ローラ1150の寿命が短くなるという問題がある。
この問題は、電磁誘導加熱方式の定着ローラ1150と同様の構成を有する熱ローラ方式の定着ローラにおいても同様に起こり得る。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、定着ローラの亀裂を防止可能な定着装置および画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の定着装置は、剛性を有する回転自在なローラ本体及びこれを囲繞するように弾性部材が配された定着ローラと、該定着ローラに圧接した状態で回転駆動される加圧ローラとを備え、前記弾性部材が変形することにより定着ニップを形成する定着装置において、前記弾性部材は、前記ローラ本体の周方向に自由度をもつように前記ローラ本体に支承されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の画像形成装置は、搬送される記録シート上に形成された未定着画像を定着させる定着部を備える画像形成装置であって、前記定着部として、本発明の上記定着装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
ローラ本体とこの周面を囲繞する弾性部材とが、接着剤でしっかりと固着されているのではなく、ローラ本体の周方向に自由度をもつように弾性部材がローラ本体に支承されているために、弾性部材が動く余地を与えられ、弾性部材の変形に伴う応力集中が発生し難くなり、亀裂の発生を防止し、定着ローラの寿命を長くすることができる。
また、前記ローラ本体と前記弾性部材との間に、摩擦を軽減する摩擦軽減部材が介在していることが望ましい。
【0010】
この構成によれば、ローラ本体と弾性部材とが相対的に動き易くなり、上記弾性部材の内周面における応力集中が起き難くなり、亀裂の発生を防止することができる。
また、前記摩擦軽減部材は、低摩擦材料からなることが望ましい。
これにより、簡単な構成でローラ本体と弾性部材との間で動き易くすることができる。
また、前記摩擦軽減部材は、前記定着ローラの回転軸と平行に配された複数の棒状ころまたは中空ころからなるとしてもよい。
【0011】
これにより、ローラ本体と定着ローラとの摺動部分がなくなり、摺動による摩耗もなくなるため、定着ローラの耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.実施の形態
(構成)
以下、本実施の形態の定着装置および画像形成装置について説明する。
図1は、本実施の形態における定着装置を用いる画像形成装置の一例としてのタンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)の全体の構成を示す断面概略図である。
【0013】
同図に示すように、このプリンタ1は、画像プロセス部3、給送部4、定着部5および制御部6を備えており、ネットワーク(例えばLAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色からなるカラーの画像形成を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成部分の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
【0014】
画像プロセス部3は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部3Y,3M,3C,3K、光学部10、中間転写ベルト11などを備えている。
作像部3Yは、感光体ドラム31Y、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、一次転写ローラ34Y、感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナ35Yなどを備えており、感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像する。他の作像部3M〜3Kについても、作像部3Yと同様の構成になっており、同図では、符号を省略している。
【0015】
光学部10は、レーザダイオードなどの発光素子を備え、感光体ドラム31Y〜31Kを露光するためのレーザ光Lを出射する。
中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラ12と従動ローラ13に張架されて矢印A方向に回転駆動される。
給送部4は、記録シートとしての用紙Sを収容する給紙カセット41と、給紙カセット41内の用紙Sを搬送路43上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ42と、繰り出された用紙Sを二次転写位置46に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラ対44と、二次転写ローラ45などを備えている。
【0016】
制御部6は、外部の端末装置からの画像信号をY〜K色用のデジタル信号に変換し、光学部10の発光素子を駆動させるための駆動信号を生成する。
光学部10は、制御部6からの駆動信号によりY〜K色の画像形成のためのレーザ光Lを発し、感光体ドラム31Y〜31Kを露光走査させる。この露光走査により、帯電器32Y〜32Kにより帯電された感光体ドラム31Y〜31K上に静電潜像が形成される。各静電潜像は、現像器33Y〜33Kにより現像されて感光体ドラム31Y〜31K上にY〜K色のトナー像が形成される。各色のトナー像は、一次転写ローラ34Y〜34Kに作用する静電力により中間転写ベルト11上に順次転写される。この際、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト11上の同じ位置に重ね合わせて一次転写されるようにタイミングをずらして実行される。中間転写ベルト11上に重ね合わされた各色トナー像は、中間転写ベルト11の回転により二次転写位置46に移動する。
【0017】
一方、中間転写ベルト11の移動タイミングに合わせて、給送部4からは、用紙Sの基準位置を把握するタイミングローラ対44を介して用紙Sが給送されて来ており、その用紙Sは、回転する中間転写ベルト11と二次転写ローラ45の間に挟まれて搬送され、二次転写ローラ45に作用する静電力により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して用紙S上に二次転写される。
【0018】
二次転写位置46を通過した用紙Sは、定着部5に搬送され、用紙S上のトナー像(未定着画像)が定着部5において加熱、加圧により用紙Sに定着された後、排出ローラ対71を介して排出トレイ72上に排出される。
図2は、定着装置の一例としての定着部5の構成例を示す部分断面斜視図である。
同図に示すように、定着部5は、磁束発生部170と、当該磁束発生部170の近傍に回転自在に配された筒状の定着ローラ150と、バネなどを用いた不図示の加圧機構によって定着ローラ150を押圧しながらモータ(不図示)などにより回転駆動する加圧ローラ160と、ジャムを防止のために定着ローラ150の周面に当接または近接配置された複数の分離爪(不図示)を有する。
【0019】
主に従動する定着ローラ150が変形することで圧接ニップ部、即ち、定着ニップが形成され、この圧接ニップ部を用紙Sが通過することにより用紙S上に形成されたトナー像Tなどが加熱溶融されると共に加圧されて定着される。
磁束発生部170は、定着ローラ150に向けて周期的に変動する磁界を発生させて誘導加熱する機能部であり、コイルボビンを兼ねる長尺な下側ケーシング部171と、この下側ケーシング部171の長手方向に延面する左右の内壁に沿設された2つの磁性体コア172と、この2つの磁性体コア172に挟まれる領域において巻回された励磁コイル173と、上記2つの磁性体コア172に跨設された複数の磁性体コア174と、下側ケーシング部171を封口する上側ケーシング部175とからなる。
【0020】
下側ケーシング部171は、樹脂などの絶縁材料からなる長尺な筐体(以下、「絶縁筐体」という。)の下部を構成するものであり、その内部に励磁コイル173の巻回経路となる環状の溝部が配されている。
磁性体コア172は、定着ローラ150の長手方向寸法に略対応した長さ寸法を有する長尺部材であり、下側ケーシング部171の溝部の外周面のうち長い側の2つにそれぞれ沿設されている。
【0021】
励磁コイル173は、下側ケーシング部171の溝部に巻回されたリッツ線であり、不図示の耐熱性の樹脂で被覆されている。
この励磁コイル173は、高周波インバー夕(不図示)に接続されており、10〜100[kHz]、100〜2000[W]の高周波電力が供給されことにより、周期的に変動する磁界を発生する。
【0022】
磁性体コア174は、複数存在し、それぞれが励磁コイル173の直上において上記2つの磁性体コア172に跨設されている。
磁性体コア172及び磁性体コア174の材料としては、高透磁率であって鉄損が小さなもの、例えば、パーマロイの積層体が用いられる。
上側ケーシング部175は、上記絶縁筐体の上部を構成するものであり、磁性体コア172、励磁コイル173及び磁性体コア174を収容した下側ケーシング部171を封口する。
【0023】
定着ローラ150は、図3に示すように、例えば、軸芯151の表面に、低摩擦層152、主弾性層153、電磁誘導発熱層154、副弾性層155及び離型層156がこの順で積層され、さらに、これらの層の両端に当接して、これらの回転軸方向への位置ずれを抑止する鍔状のガイドプレート157が軸芯151の両端部に挿嵌されてなる。
定着ローラ150のローラ硬度としては、ASKER‐C硬度で30〜90度程度となっている。
【0024】
以下、定着ローラ150の構成について詳細に説明する。
軸芯151は、本願発明に係るローラ本体の一例であって、外径が20mm、厚みが4mmのアルミニウム製のパイプであり、外周面における摺動性を高めるために、外周面を研磨するか、もしくはフッ素樹脂コーティングすることが望ましい。
また、上述のように軸芯151の材料として、金属材料を用いる場合には、磁束発生部170で発生した磁界により軸芯が電磁誘導加熱されるのを軽減する為に、電磁誘導の影響が少ない非磁性材料を用いることが望ましい。
【0025】
低摩擦層152は、摩擦係数が小さな厚みが10μm以上の筒状フィルムであり、接着剤で固着されない状態で軸芯151に内接、つまり、支承されている。
ここで上記「支承」とは、図3の矢印が示すように、定着ローラの周方向に動く余地、つまり、自由度が与えられつつ支持されている状態をいう。
上記フッ素樹脂の材質としては、例えば、フッ素樹脂が挙げられ、その他にもPFAやPTFE等の耐熱材料が使用可能である。
【0026】
低摩擦層152の厚みを10μm以上とした理由は、外力が加わっても形状が保てる程度の剛性を確保するためである。
主弾性層153は、本願発明に係る弾性体の一例であって、筒状の弾性体であって、外力が加わると変形し、所定幅の圧接ニップ部を形成して所定の加圧力を生ぜしめ、また高い断熱性能を有することにより、電磁誘導発熱層154での発熱効率を高める機能を有する。
【0027】
上記弾性体の材質としては、弾性及び耐熱性が高いゴム材料や樹脂材のスポンジ体(断熱構造体)、例えば、シリコンゴムまたはフッ素ゴム等の耐熱性エラストマーのスポンジ体を用いる。または、これらゴム材及びスポンジ体の2層構成としてもよい。
ここで、主弾性層153の端部形状に着目すると、この端部の外周側の角部(以下、「外周縁角部」という。)が切り欠かれた段部153aが設けられている。
【0028】
以下、このように段部153aが設けられている理由について説明する。
主弾性層153の外周部分は、加圧ローラ160からの押圧を受け、主弾性層153の長手方向に伸展する押圧領域が変形することとなるが、この押圧領域の両端部の内部応力に着目すると、主弾性層153の段部153aが設けられていない場合、上述の外周縁角部がガイドプレート157と当接することとなるが、当接することによって上記変形容積の逃げ場がなくなるので、押圧領域の両端部の内部応力が高まり、亀裂が生じ易くなる。
【0029】
段部153aは、上記押圧領域の両端部における変形容積の逃げ場を確保し、内部応力を緩和し、亀裂が生じないように設けられている。
電磁誘導発熱層154は、厚みが10μm以上、100μm以下の無端状のニッケル電鋳ベルトであり、磁束発生部170で発生した磁界により渦電流が生じ、電磁誘導発熱層154がジュール発熱する機能を有する。
【0030】
副弾性層155は、例えば、JIS硬度が10度、厚みが200μmのシリコンゴムの層であり、用紙Sと定着ローラ150表面との密着性を高める機能を有する。
離型層156は、例えば、PTFEやPFA等のフッ素系樹脂からなる厚みが10μm以上、50μm以下の無端状の帯体であり、定着ローラ表面の離型性を高める機能を有する。
【0031】
ガイドプレート157は、鍔状、つまり中心に透孔を有する円盤状の板体であり、上記透孔に軸芯151が挿嵌されることで、ガイドプレート157が軸芯151に固定されている。
このガイドプレート157は、2つの主面のうちの一方の面に、低摩擦層152、主弾性層153、電磁誘導発熱層154、副弾性層155及び離型層156の全ての端部が当接しており、この当接によりこれら層の回転軸方向への位置ずれを防止する機能を有する。
【0032】
加圧ローラ160は、回転駆動される円筒状の軸芯161の外周面に、弾性層162が接着され、さらに、その上に離型層163が接着されてなる。
軸芯161は、外径30mm、厚みが3mmのアルミニウム製のパイプである。
弾性層162は、厚みが3mm以上、10mm以下のシリコンスポンジゴムからなる。
離型層156は、厚みが10μm以上、50μm以下のフッ素系樹脂からなる無端状の帯体である。
【0033】
上記フッ素系樹脂の具体例としては、PTFEまたはPFA等が挙げられる。
加圧ローラ160は、不図示の付勢手段により、定着ローラ150に対して300N以上、500N以下の荷重で加圧されており、その場合の圧接ニップ幅は約5mm以上、15mm以下になる。
(シミュレーション結果)
発明者は、鋭意検討の結果、主弾性層153の亀裂の原因が、軸芯151の周方向に働くせん断応力にあることを見い出した。
【0034】
このため、本実施の形態の定着部5と、従来の定着部とについて、亀裂を生じ易い主弾性層153の内周面におけるせん断ひずみをシミュレーションにより求めた。
図4に示すように、主弾性層153の内周面におけるせん断ひずみを計算すると、低摩擦層を介することなく軸芯と主弾性層153とを接着固定した従来品において、せん断ひずみが0.23であるのに対し、低摩擦層を介して軸芯151に主弾性層153を支承して実施例品は、0.18となっており、実施例品は、せん断応力の低減に効果があることがわかる。
(まとめ)
本実施の形態の定着ローラ150では、軸芯151とこの周面を囲繞する主弾性層153とが、従来のように接着剤でしっかりと固着されているのではなく、摩擦係数の小さな低摩擦層152を介して、軸芯151の周方向に自由度をもつように主弾性層153が軸芯151に支承されている。
【0035】
これにより、主弾性層153は、軸芯151の周方向に動く余地が与えられるので、主弾性層153の変形に伴うせん断応力が発生し難くなり、亀裂の発生を防止し、定着ローラの寿命を長くすることができる。
(その他の事項)
なお、本実施の形態では、低摩擦層152は、軸芯151及び主弾性層153のいずれにも接着されていないが、軸芯151に接着してもよい。
【0036】
また、低摩擦層152を主弾性層153に接着してもよいが、その場合、低摩擦層152と主弾性層153との接着界面においてせん断力が生じないように、低摩擦層152が主弾性層153と同様の弾性を有することが望ましい。
上記接着を行う際、層間接着力を向上させるためにプライマー等による接着処理を行ってもよい。
【0037】
また、本実施の形態では、軸芯151に主弾性層153が低摩擦層152を介して支承されているが、低摩擦層152を介さずに単に軸芯151と主弾性層153とを接着固定しない状態で支承しただけでも、従来よりも軸芯151及び主弾性層153間の動き易さが増すため、亀裂の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態では、低摩擦層152は、フッ素樹脂からなる筒状フィルムとしたが、このように摩擦係数が低い材料を用いる構成に限るものではなく、例えば、メカニズム的に摩擦力を軽減する構成を用いてもよい。
(変形例)
以下、メカニズム的に摩擦力を軽減する構成について説明する。
【0038】
図5に示すように、フッ素樹脂からなるフィルム状の低摩擦層152の代わりに、複数の棒状ころ159を軸芯151と主弾性層153との間に配してもよい。
図5では説明の都合上、棒状ころ159同士の間に隙間があるが、実際にはこの間隙をできるだけ小さくすることが望ましい。但し、あまりに上記間隙を小さくすると、棒状ころ159同士が干渉して回転に支障をきたすおそれがあるため、若干の隙間は必要である。
【0039】
この構成では、軸芯151及び主弾性層153は、摺動ではなく棒状ころ159が転動するので、磨耗する部品が無く、したがって耐久性が良好となる。
無論、棒状ころ159は、中空ころであっても構わない。
また、軸芯151は、アルミニウム製のパイプとしたが、これに限らず、アルミニウムの他にも、これと同等の強度が確保できれば、例えば鉄、PPS(ポリフェニレンサルファイド)のような耐熱性のモールドのパイプを使用してもよく、また、パイプの代わりに丸棒を用いてもよい。
【0040】
また、本実施の形態では、低摩擦層152は、フッ素樹脂からなる厚みが10μm以上の筒状フィルムとしたが、これに限るものではなく、上記フッ素樹脂からなる筒状フィルムの代わりに、無端状の金属帯体の内周面にフッ素樹脂コーティングを施したものを用いても良い。
その場合、上記金属帯体の材料としては、常温で磁性を有さず電磁誘導加熱され難いオーステナイト系ステンレス材料などの非磁性材料にすることが望ましい。
【0041】
さらに、軸芯151と低摩擦層152との間に、シリコーンオイルや耐熱性グリース等潤滑剤を加え、さらに摩擦係数を小さくしてもよい。
また、本実施の形態では、電磁誘導発熱層154は、無端状のニッケル電鋳ベルトであるとしたが、ニッケル以外にも、例えば、フェライト系もしくはマルテンサイト系ステンレスのように比較的透磁率μが高く、適当な抵抗率ρを有する磁性材料を用いてもよい。
【0042】
また、電磁誘導発熱層154の材料は、非磁性材料の金属材料であってもよく、その場合、金属などの導電性のある材料は材料を薄膜にする事が望ましい。
また、電磁誘導発熱層154の材料は、必ずしも金属材料である必要はなく、樹脂に金属粉などの発熱粒子を分散させたものを用いても良い。
このようにすることで、ローラ硬度が低下し、用紙の分離性を良くすることができる。
【0043】
また、本実施の形態では、副弾性層155は、厚みが200μmのシリコンゴムの層であるとしたが、この厚みに限るものではなく、用紙Sと定着ローラ150表面との密着性を高める上では、10μm以上であればよい。また、定着ローラ150の加熱性能の確保、即ち、トナーの溶融定着品質を確保するためには、800μm以下であればよい。
なお、副弾性層155の材質としては、シリコンゴムに限るものではなく、定着温度での使用に耐えられるフッ素ゴム等の耐熱性エラストマーを用いてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、離型層156は、PTFEやPFA等のフッ素系樹脂からなるとしたが、これに限らず、シリコンゴム、フッ素ゴム、FEP、PFEP等のフッ素樹脂を用いてもよい。
また、本実施の形態では、副弾性層155は、例えば、JIS硬度が10度、厚みが200μmのシリコンゴムの層であるとしたが、これに限るものではなく、弾性層の強度の低下、密着性の不良を防止しつつ、トナーの定着性の不良を防止する上では、JIS硬度が1度以上、80度以下、(より好ましくは、5度以上、30度以下)が望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、定着装置及びこれを用いる画像形成装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施の形態の画像形成装置の構成を示す断面概略図である。
【図2】本実施の形態の定着部の構成例を示す部分断面斜視図である。
【図3】本実施の形態の定着ローラ及び加圧ローラの断面図である。
【図4】本実施の形態の定着ローラ及び従来の定着ローラに生じるせん断ひずみのシミュレーション結果を示す図である。
【図5】本実施の形態の定着ローラの変形例の構成を示す部分断面斜視図である。
【図6】従来の定着ローラ及び加圧ローラの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 プリンタ
3 画像プロセス部
3Y,3M,3C,3K 作像部
4 給送部
5 定着部
6 制御部
10 光学部
11 中間転写ベルト
12 駆動ローラ
13 従動ローラ
31 感光体ドラム
32 帯電器
33 現像器
34 一次転写ローラ
35 クリーナ
41 給紙カセット
42 ローラ
43 搬送路
44 タイミングローラ対
45 二次転写ローラ
46 二次転写位置
71 排出ローラ対
72 排出トレイ
150 定着ローラ
151 軸芯
152 低摩擦層
153 主弾性層
153a 段部
154 電磁誘導発熱層
155 副弾性層
156 離型層
157 ガイドプレート
159 棒状ころ
160 加圧ローラ
161 軸芯
162 弾性層
163 離型層
170 磁束発生部
171 下側ケーシング部
172 磁性体コア
173 励磁コイル
174 磁性体コア
175 上側ケーシング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性を有する回転自在なローラ本体及びこれを囲繞するように弾性部材が配された定着ローラと、該定着ローラに圧接した状態で回転駆動される加圧ローラとを備え、前記弾性部材が変形することにより定着ニップを形成する定着装置において、
前記弾性部材は、前記ローラ本体の周方向に自由度をもつように前記ローラ本体に支承されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ローラ本体と前記弾性部材との間に、摩擦を軽減する摩擦軽減部材が介在していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記摩擦軽減部材は、低摩擦材料からなることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記低摩擦材料は、フッ素樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記摩擦軽減部材は、筒状であって、その内外周面のうち少なくとも一方の面に摩擦を軽減する低摩擦処理が施されていることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項6】
前記弾性部材は、筒状であって、その内周面に摩擦を軽減する低摩擦処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
前記低摩擦処理は、フッ素コーティングであることを特徴とする請求項5または6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記低摩擦処理は、表面研磨処理であることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項9】
前記摩擦軽減部材は、前記定着ローラの回転軸と平行に配された複数の棒状ころまたは中空ころからなることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項10】
前記弾性部材は、断熱性を有することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項11】
前記定着ローラの両端部において、前記弾性部材と当接し、前記弾性部材の軸方向への移動を規制する移動規制部材が配設されていることを特徴とする請求項1の定着装置。
【請求項12】
前記定着ローラの両端部において、前記弾性部材及び前記摩擦軽減部材と当接し、前記弾性部材及び前記摩擦軽減部材の軸方向への移動を規制する移動規制部材が配設されていることを特徴とする請求項3の定着装置。
【請求項13】
搬送される記録シート上に形成された未定着画像を定着させる定着部を備える画像形成装置であって、
前記定着部として、請求項1乃至12のいずれかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−14957(P2009−14957A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175933(P2007−175933)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】