説明

定着装置及びこれを用いた画像形成装置

【課題】ウェブニップ部で堰き止められたトナーをウェブシートで確実に回収し、用紙に再付着することを抑制することが可能なクリーニング機構を備えた定着装置及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】加熱ローラ2に張架される定着ベルト51と、定着ベルト51に接触して定着ベルト51との間に定着ニップNを形成する加圧ローラ56と、加圧ローラ56を定着ベルト51に対して接離させる加圧ローラ接離機構57と、加圧ローラ56の表面を清掃するクリーニング装置70とを備え、定着ニップNに記録媒体を通過させ、熱と圧力とによって用紙P上のトナー像を定着せしめる定着装置50において、加圧ローラ接離機構57の動作により定着ベルト51と加圧ローラ56とが離間すると、加圧ローラ56とクリーニング装置70に備えられるウェブシート71とが離間する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング機構を備えた定着装置及びこれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置は、搬送用紙上に作像された未定着トナーを定着せしめる定着装置を備えている。この定着装置においては、定着ベルトや定着ローラ等の定着部材と加圧ローラ等の加圧部材との圧接領域となる定着ニップ部で搬送用紙上の未定着トナーに熱と圧力を与え、トナー像を溶融・固着させる。しかし、定着ニップ部で溶融されるトナーは、定着ニップ部を通過した後に、その全てが用紙上に固着するのではなく、その一部が定着部材に付着した状態となってしまうことがある。移動する定着部材に付着したトナーは、定着部材と接触する搬送用紙剥離爪、定着部材表面温度検出センサ、加圧部材の表面を汚してしまう。加圧部材表面に付着したトナーは、次の通紙時に用紙に再付着してしまうという問題があった。このような汚れを事前に防ぐために、一般に、加圧部材の外周部には、加圧部材に所定圧力で押圧される清掃部材を用いて、加圧部材表面の付着トナーを清掃するクリーニング機構が設けられている。この清掃部材としては、シート状若しくはローラ状のフェルト、または弾性ゴム部材が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、近年の画像形成装置の高速化、多機能化(カラー印字)によって、加圧部材の汚れも増大しており、フェルト、弾性ゴム部材等からなる清掃部材では、清掃部材のライフ特性やクリーニング性能に問題が発生していた。このため、近年はシート厚みが30〜100μm位のウェブシートを用いるウェブクリーニング方式と呼ばれる清掃方式が開発されることとなっている。ウェブクリーニング方式は、ウェブシートをウェブ送り出し用ローラとウェブシート巻取り用ローラで架橋し、その架橋範囲においてウェブシートが加圧部材に圧接し、圧接領域となるウェブニップ部で加圧部材上の残留トナーを清掃する手法である。
【0004】
図4は、従来のウェブクリーニング方式を採用したクリーニング装置の通紙時における構成を示す構成図である。図4に示すように、クリーニング装置100は、定着部材たる定着ベルト101が加熱ヒータ105を内蔵する加熱ローラ102と定着ローラ103とテンションローラ104によって張架されている。そして、定着ローラ103と対向する位置に定着ベルト101を挟んで定着ニップ部Nを形成する加圧部材たる加圧ローラ106が配置されている。また、加圧ローラ106には、加圧ローラ106上の付着物を清掃するクリーニング装置107が配置されている。クリーニング装置107は、加圧ローラ106の表面に摺擦して加圧ローラ106表面をクリーニングするためのウェブシート108を備えている。この定着装置100の通紙時には、トナーT1が転写された用紙Pが案内ガイド部材に案内されて定着ニップ部Nに進入し、定着ニップ部Nで圧力と熱によりトナーT1が定着される。ただし、トナーT1は、完全に用紙Pに定着されるわけではなく、微量に定着ベルト101上にオフセットする。定着ベルト101上に微量にオフセットしたトナーT2は、再度定着ニップ部Nに移動し、定着ベルト101と加圧ローラ106の離型差によって加圧ローラ106に転写される。加圧ローラ106上に転写されたトナーT2は、ウェブニップ部Mにて堰き止められる。そして、所定のタイミングで、ウェブシート巻き取り用ローラ110が巻き取る方向に回転することで、徐々に新しいウェブシート108がウェブ送り出し用ローラ107側からウェブニップ部Mに移動してくる。このように、ウェブクリーニング方式は、シート上若しくはローラ状の清掃部材を用いる場合に比べ、寿命やクリーニング性能を向上させることができる。
【0005】
一方、図5は、従来のウェブクリーニング方式を採用したクリーニング装置の非通紙時における構成を示す構成図である。図5に示す定着装置100では、非通紙時において、加圧ローラ接離機構111によって加圧ローラ106が定着ベルト101から離間する。定着ベルト101と加圧ローラ106とが常時接触していると、定着ベルト101内部に設けられた加熱ヒータ105の熱が定着ベルト101を介して加圧ローラ106に供給され、加圧ローラ106の温度が必要以上に上がってしまうからである。加圧ローラ106の温度が必要以上に上がってしまうと、定着ニップ部Nに搬送されてくる用紙Pの水分が用紙P上のトナー層を突き抜けて発散してしまい好ましくないのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図5に示す定着装置では、非通紙時において、加圧ローラ接離機構111によって定着ベルト101と加圧ローラ106とが離間しても、ウェブシート108が加圧ローラ106に当接した状態のままである。加圧ローラ106とウェブシート108とが同一の支持部材により支持されていたり、ウェブシート108が加圧ローラ106と常時接触した状態となるような位置に配置されていたりするからである。また、一般に定着ベルト101と加圧ローラ106とは同一の駆動源により駆動されており、非通紙時も定着ベルト101の温度を均一に保つために定着ベルト101を回転させると加圧ローラ106も回転する。そのため、非通紙時において、例えばウェブニップ部Mで堰き止められたトナーT2が多い場合には、加圧ローラ106の回転によりトナーT2がウェブニップ部Mよりすり抜けて用紙P上に再付着するという不具合があった。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものである。その目的は、ウェブニップ部で堰き止められたトナーをウェブシートで確実に回収し、用紙に再付着することを抑制することが可能なクリーニング機構を備えた定着装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、その表面が無端移動し加熱手段を有する定着部材と、その表面が無端移動し該定着部材に接触して該定着部材との間に定着ニップを形成する加圧部材と、該加圧部材を該定着部材に対して接離させる接離機構と、該加圧部材の表面を清掃するクリーニング機構とを備え、該定着ニップに記録媒体を通過させ、熱と圧力とによって該記録媒体上のトナー像を該記録媒体に定着させる定着装置において、上記クリーニング機構は、該加圧部材の表面に摺擦して該加圧部材表面をクリーニングするためのウェブシートと、該ウェブシートを送り出し可能に保持するウェブ保持部材と、該ウェブシートを巻き取り可能な巻取部材と、該ウェブシートを該加圧部材へ押圧する押圧部材とを有し、上記接離機構の動作により該定着部材と該加圧部材とが離間すると、該加圧部材と該ウェブシートとが離間することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ウェブニップ部で堰き止められたトナーをウェブシートで確実に回収し、用紙に再付着することを抑制することが可能なクリーニング機構を備えた定着装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することできるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る複写機の構成を示す概略構成図。
【図2】同複写機の定着装置の通紙時における構成を示す概略構成図。
【図3】同複写機の定着装置の非通紙時における構成を示す概略構成図。
【図4】従来の定着装置の通紙時における構成を示す概略構成図。
【図5】従来の定着装置の非通紙時における構成を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、電子写真方式のカラー複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、本実施形態に係る複写機の構成を示す概略構成図である。図1に示すように、この複写機は、原稿を搬送する原稿搬送装置(ADF)1と、原稿の画像を読み取るためのスキャナ部2と、スキャナ部2で取得された画像データを基に画像形成を行う画像形成手段たる画像形成部3と、画像形成部3に記録媒体たる用紙Pを給紙する給紙部4とを備えている。
【0012】
はじめに、上記画像形成部3の構成について説明する。図1に示すように、上記画像形成部3は、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの各色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット10K、M、C、Yを備えている。以下添字K、M、C、Yはブラック、マゼンタ、シアン、イエローの各色をそれぞれ示す。このプロセスユニット10K、M、C、Yは、それぞれ各色のトナー像を担持する像担持体である感光体11K、M、C、Yを備えている。これら各感光体11K、M、C、Yの周囲には、各感光体11表面を一様に帯電する帯電装置12K、M、C、Yや、各感光体11表面に形成される静電潜像を現像する現像装置13K、M、C、Yや、トナー像転写後の各感光体11表面をクリーニングする感光体クリーニング装置14K、M、C、Y等を備えている。プロセスユニット10K、M、C、Yは、感光体11の周囲に配設される帯電装置12、現像装置13、感光体クリーニング装置14とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部3本体に対して着脱可能になっている。
【0013】
また、上記画像形成部3は、各感光体11K、M、C、Yの一様に帯電された表面に画像情報に応じたレーザ光を照射して静電潜像を形成する光書込装置30を備えている。光書込装置30は、レーザ光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、所定の露光位置において画像データに基づき回転駆動されている各感光体11K、M、C、Yの表面にレーザ光を主走査方向に走査しながら照射する。
【0014】
また、上記画像形成部3は、感光体11K、M、C、Yに形成されたトナー画像を用紙Pに転写する転写ユニット20、用紙P上の未定着トナー像を加圧や加熱の作用によって定着せしめる後述する定着装置50、両面搬送部32等備えている。
【0015】
上記転写ユニット20は、複数のローラ26、27、28により張架されて図中矢印方向に回転駆動する中間転写ベルト21を備えている。中間転写ユニット20は、感光体11K、M、C、Yと所定の電圧が印加される一次転写ローラ23K、M、C、Yとの間に中間転写ベルト21を挟み込んで一次転写ニップを形成する。また、中間転写ユニット20は二次転写バックアップローラ26と所定の電圧が印加される二次転写ローラ25の間に中間転写ベルト21を挟み込んで二次転写ニップを形成している。さらに、中間転写ユニット20は、中間転写ベルト21上に残留する転写残トナーを除去するクリーニング装置22等も備えている。上記プロセスユニット10K、M、C、Yで形成された感光体11K、M、C、Y上のトナー像は、一次転写ニップで中間転写ベルト21に順次重ね合わされて転写される。中間転写ベルト21上に転写された4色重ね合わせトナー像は、二次転写ニップで用紙Pに一括転写されることになる。二次転写ニップを通過後に中間転写ベルト9上に残留する転写残トナーは、クリーニング装置22により除去される。
【0016】
上記転写ユニット20の図中下方には、レジストローラ対44、二次転写ローラ25と定着装置50との間に無端状の紙搬送ベルトを掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット24等を備えている。レジストローラ対44は、後述する給紙部4により供給された用紙Pをローラ間に挟み込み、中間転写ベルト21上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。紙搬送ユニット24は、二次転写ニップを通過してフルカラー画像が転写された用紙Pを定着装置50へと搬送する。
【0017】
上記画像形成部3の図中下方に位置する両面搬送部32は、片面に対する画像定着処理を終えた用紙Pを、切換爪で用紙Pの進路を切り換えて上下反転させ、再び二次転写ニップに進入させる。
【0018】
また、上記複写機の上記給紙部4は、用紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容する給紙カセット40を多段備え、各給紙カセット40内の一番上の用紙Pに給紙ローラ42を押し当てている。選択された給紙ローラ42が回転駆動すると、一番上の用紙Pが分離ローラで分離されて1枚ずつ給紙路41に向けて送り出される。この給紙路41に送り出された用紙Pは、複数の搬送ローラ対43を経て画像形成部3内の給紙路に導かれ、レジストローラ対44のローラ間に挟み込まれる。
【0019】
以上のように構成される画像形成部3において、次のように画像形成が行われる。例えばブラック用のプロセスユニット10Kでは、帯電装置12Kにより一様に帯電された感光体11Kの表面に、光書込装置30で変調及び偏向されたレーザ光が走査されながら照射されて静電潜像が形成される。感光体11K上の静電潜像は、現像装置13Kで現像されてブラック色のトナー画像となる。中間転写ベルト21を挟んで一次転写ローラ23Kに対向する一次転写ニップでは、感光体11K上のトナー像が用紙Pに転写される。トナー像が転写された後の感光体11Kの表面は、感光体クリーニング装置14Kでクリーニングされ、次の静電潜像の形成に備えられる。
【0020】
他のプロセスユニット10M、C、Yについても、上述した画像形成行程が中間転写ベルト21の移動に同期して実行される。一方、給紙カセット40から給送された用紙Pは、レジストローラ対44により所定のタイミングで送出されて二次転写ニップに搬送される。または、画像形成部3の側面に設置された手差しトレイ45から給紙された用紙Pは、給紙ローラによって手差し給紙路内に繰り出され、レジストローラ46により所定のタイミングで送出されて二次転写ニップに搬送される。そして、二次転写ニップでフルカラー画像が一括転写された用紙Pは、紙搬送ユニット24によって搬送されて定着装置50でトナー像が定着される。用紙Pの第一面だけに画像を形成する片面プリントモードの場合には、排紙ローラ対47のローラ間の排紙ニップに挟み込まれた用紙Pがそのまま機外に排出されて排紙トレイ48上にスタックされる。用紙Pの両面に画像を形成する両面プリントモードの場合には、排紙ローラ対47に挟み込まれた用紙Pが逆方向に戻されて、両面搬送部32に進入する。そして、両面搬送部32内で上下反転せしめられた後、再び二次転写ニップに送られて、もう片面にも画像の二次転写処理と定着処理とが施された後、排出ローラ47により排紙トレイ48上に排出される。トナー像転写後の中間転写ベルト21は、ベルトクリーニング装置22により残留トナーが除去され、プロセスユニット10による再度の画像形成に備える。
【0021】
以上の作像動作は、4色重ね合わせのフルカラーモードが図示しない操作部で選択された時の動作である。例えば、白黒画像形成モードが操作部で選択された場合には、駆動ローラ以外の支持ローラ等を移動させて、感光体11Y、M、Cを中間転写ベルト21から離間させ、中間転写ベルト21にKトナー像の形成のみを行ってもよい。
【0022】
次に、本発明の特徴部となる定着装置50について詳細に説明する。図2は、通紙時における定着装置の構成を示す概略構成図である。定着装置50は、図2に示すように、定着部材である定着ベルト51が加熱手段である加熱ローラ51と定着ローラ52とテンションローラ54とによって所定のテンションに張架されている。加熱ローラ52は内蔵する加熱ヒータ55によって加熱され、加熱ローラ52と定着ローラ53とにより張架されている定着ベルト51を加熱する。そして、定着ベルト51は、加熱ローラ52又は定着ローラ53のいずれかに設けられた不図示の駆動源によって図中矢印A方向に回転駆動される。これにより、定着ベルト51は所定の温度に均一に加熱される。
【0023】
また、上記定着装置50では、定着ローラ53と対向する位置に定着ベルト51を挟んで定着ローラ53との間に定着ニップNを形成する加圧部材として加圧ローラ56が配設されている。加圧ローラ56は、加熱ローラ52又は定着ローラ53と同一の駆動源によって不図示のギアを介して図中矢印B方向に回転駆動される。そして、加圧ローラ56は、加圧ローラ接離機構57により、定着ベルト51及び後述するクリーニング装置70の押圧ローラ74に対して離れる方向に移動可能に支持され、定着ベルト51及び押圧ローラ74に当接しての加圧状態、及び離間しての脱圧状態の切り替えが可能となっている。また、この加圧ローラ56には、加圧ローラ56を加熱するための加熱ヒータ58が内蔵されている。
【0024】
また、この定着装置50には、定着装置50内に搬送された用紙Pを定着ニップ部Nに案内するための案内ガイド部材60や、定着ローラ53への用紙Pの巻き付きを防止する用紙剥離爪61や、加圧ローラ56への用紙Pの巻き付きを防止する用紙剥離爪62が設けられている。
【0025】
さらに、この定着装置50には、加圧ローラ56上のトナーT2等の付着物を清掃するクリーニング装置70が設けられている。このクリーニング装置70は、加圧ローラ56の表面に摺擦して加圧ローラ56表面をクリーニングするためのウェブシート71と、ウェブシート71を送り出し可能に保持するウェブ保持部材たるウェブ送り出し用ローラ72と、ウェブシート71を巻き取り可能な巻取部材たるウェブ巻き取り用ローラ73とを備えている。また、クリーニング装置70は、ウェブシート71を挟んで加圧ローラ56との間にウェブニップ部Mを形成する押圧部材たる押圧ローラ74とを備えている。ウェブ送り出し用ローラ72には、ウェブシート71の一端が接続され、ウェブ巻き取り用ローラ73にはウェブシート71の他端が接続され、ウェブ巻き取り用ローラ73は図示しないモータの駆動源によってウェブシート71の巻き取りを行う。
【0026】
ウェブシート71は、布、紙、樹脂シート、樹脂フィルム、金属箔等の適宜な材料によって構成できるが、図示した例では、ウェブシート71が加圧ローラ56の表面に摺接して該表面を清掃するとともに、その表面に離型剤を塗布するように構成されている。そのため、ウェブシート71には、離型剤を含浸できる材料、例えば、アラミドとPETの繊維を混合して成る不織布等で構成されている。かかるウェブシート71が加圧ローラ56の表面に摺接するとき、これに含浸された離型剤が加圧ローラ56表面に薄く均一に塗布される。この離型剤としては、例えば、シリコンオイル等を用いることができ、加圧ローラ56の表面上の付着物をウェブシート側に移行しやすくし、さらに加圧ローラ56の表面の摩耗を防止するものであればよい。
【0027】
上記構成の定着装置50は、図2に示すような通紙時において、加圧ローラ接離機構57により加圧ローラ56が定着ベルト51に加圧されて定着ニップ部Nを形成する。そして、定着ベルト51と加圧ローラ56とが回転駆動されている状態で、定着ニップ部Nを用紙Pが通過する。定着ニップ部Nでは、用紙P上の未定着トナー像T1を加熱作用により溶融させ、溶融トナーを加圧作用により用紙Pの構成成分であるセルロース等の繊維分に浸透させ、当該溶融トナーを固化させる。加圧ローラ56に内蔵されるヒータ58は、定着ニップ部Nで溶融トナーが固化するときに、用紙Pに対して投鋲作用を発揮させる機能をもつ。
【0028】
また、上記構成のクリーニング装置70は、図2に示すような通紙時において、ウェブシート71が加圧ローラ56の表面に当接するウェブニップ部Mで、加圧ローラ56上の残留トナー等の付着物を清掃する。押圧ローラ74は、加圧ローラ56との間にウェブシート71を挟み込むようにして加圧力を加圧ローラ56に対して加える。加圧ローラ56とウェブシート71とが当接するウェブニップ部Mでは、上述した押圧ローラ74から加圧ローラ56が受ける加圧力、及び加圧ローラ56の回転によりウェブシート71に生じた摩擦力により、加圧ローラ56上の付着物が加圧ローラ56からウェブシート71に転移し、加圧ローラ56の清掃が実現される。
【0029】
一方、上記構成の定着装置は、図3に示すような非通紙時において、加圧ローラ接離機構57により加圧ローラ56が定着ベルト51から離間される。このとき、定着ベルト51の温度を均一に保つため、定着ベルト1と加圧ローラ56とは回転駆動されている状態である。また、上記構成のクリーニング装置70は、図3に示すように、加圧ローラ56が定着ベルト1から離間する位置にあるとき、押圧ローラ74(ウエブシート71)は加圧ローラ56と離間する位置に配置されている。ここで、押圧ローラ74(ウエブシート71)と加圧ローラ56との接離は、加圧ローラ56の移動のみによって実現されるものであり、押圧ローラ74の位置は不動のものとなっている。このように構成される定着装置では、非通紙時に、ウェブシート71に回収されたトナーT2が再度加圧ローラ56側に戻ることがない。また、このように、加圧ローラ56とウェブシート71とが離間しているときに、ウェブシート71を十分に巻き取ることにより、再度加圧ローラ56が定着ベルト51に圧接した際に、全く付着トナーのないウェブシート71を加圧ローラ56に当接させることが可能となる。
【0030】
また、上記クリーニング装置70が非通紙時にウェブシートを巻き取る量は、用紙の紙種、紙厚、通紙時の画像条件等によって変更するとよい。例えば、普通紙等の用紙Pに印字する場合には、ウェブシート71の巻き取り量を多くするとよい。普通紙に印字する場合には、コート紙に印字する場合に比べ加圧ローラ56への付着トナーT2が多くなると予想されるからである。このように、ウェブシート71に回収されるトナー量に応じてウェブシート71の巻き取り量を変えることにより、ウェブニップ部Mで堰き止められたトナーをウェブシート71で確実に回収し、加圧ローラ56に再付着することを抑制することができる。また、これにより、ウェブシート71を必要に応じた巻き取り量で効率よく用いることができ、クリーニング装置50の長寿命化を図ることができる。
【0031】
また、用紙Pの両面に画像を形成する両面プリントモードが選択された場合には、用紙Pの加圧ローラ56側にもトナー像がある厳しい条件となる。そのため、両面プリントモードが選択されたときは、ウェブシート71の巻き取りを行いながら定着動作を行うようにするとよい。これにより、ウェブニップ部Mで堰き止められたトナーをウェブシート71で確実に回収し、用紙Pに再付着することを確実に抑制することができる。また、両面プリントモードが選択された場合のみ、ウェブシート71の巻き取りを行ってもよい。加圧ローラ側にもトナー像がある厳しい条件のみ、ウェブシート71の巻き取りを行うことにより、クリーニング装置50の長寿命化を図ることができる。
【0032】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次のような特有の効果を奏する。
(態様A)
その表面が無端移動し加熱ヒータ55などの加熱手段を有する定着ベルト51などの定着部材と、その表面が無端移動し該定着部材に接触して該定着部材との間に定着ニップNなどの定着ニップを形成する加圧ローラ56などの加圧部材と、該加圧部材を該定着部材に対して接離させる加圧ローラ接離機構57などの接離機構と、該加圧部材の表面を清掃するクリーニング装置70などのクリーニング機構とを備え、該定着ニップに用紙Pなどの記録媒体を通過させ、熱と圧力とによって該記録媒体上のトナー像を該記録媒体に定着させる定着装置において、上記クリーニング機構は、該加圧部材の表面に摺擦して該加圧部材表面をクリーニングするためのウェブシート71などのウェブシートと、該ウェブシートを送り出し可能に保持するウェブ送り出し用ローラ72などのウェブ保持部材と、該ウェブシートを巻き取り可能なウェブ巻き取り用ローラ73などの巻取部材と、該ウェブシートを該加圧部材へ押圧する押圧ローラ74などの押圧部材とを有し、上記接離機構の動作により該定着部材と該加圧部材とが離間すると、該加圧部材と該ウェブシートとが離間する。これによれば、ウェブニップ部で堰き止められたトナーをウェブシートで確実に回収し、用紙に再付着することを抑制することが可能である。
(態様B)
(態様A)の定着装置において、上記加圧部材は上記接離機構によって上記定着部材と上記押圧部材とから離れる方向に移動可能に支持される。加圧部材と上記ウェブシートとの接離は、該加圧部材の移動のみで実現する。定着部材と加圧部材とを接離させる接離機構を利用するという簡易な方法で、加圧ローラとウェブシートとを離間させることができる。
(態様C)
(態様A)又は(態様B)の定着装置において、上記ウェブシートに予め離型剤が含浸され、上記加圧部材に離型剤が塗布される。これによれば、加圧部材上の付着物がウェブシートに回収されやすくなり、耐摩耗性も向上する。
(態様D)
(態様A)(態様B)又は(態様C)の定着装置において、上記接離機構の動作により通紙時には上記加圧部材と上記ウェブシートとを当接させ、通紙終了後には該接離機構の動作により該加圧部材と上記ウェブシートとを離間させ、上記巻取部材により上記ウェブシートを巻き取る。これによれば、再度加圧部材が定着部材に圧接した際に、全く付着トナーのないウェブシートを加圧部材に当接させることが可能となり、良好なクリーニング性能を維持することが可能である。
(態様E)
(態様D)の定着装置において、上記巻取部材は、記録媒体の種類、厚み、トナー像の種類に応じて、該ウェブシートの巻き取り量を変えることが可能である。これによれば、加圧部材に多くの付着物が付着しやすい厳しい条件でも、ウェブニップ部で堰き止められたトナーをウェブシートで確実に回収し、加圧部材に再付着することを抑制することができ、良好なクリーニング性能を維持することができる。また、これによれば、ウェブシートを必要に応じた巻き取り量で効率よく用いることができ、クリーニング装置の長寿命化を図ることができる。
(態様F)
(態様A)(態様B)又は(態様C)の定着装置において、上記巻取部材は、上記記録媒体の両面に対してトナー像の形成を行うとき該ウェブシートの巻き取りを行う。これによれば、加圧部材に多くの付着物が付着しやすい厳しい条件でも、ウェブニップ部で堰き止められたトナーをウェブシートで確実に回収し、加圧部材に再付着することを抑制することができ、良好なクリーニング性能を維持することができる。また、これによれば、ウェブシートを必要に応じた巻き取り量で効率よく用いることができ、クリーニング装置の長寿命化を図ることができる。
(態様G)
記録媒体に未定着画像を形成担持させる画像形成手段と、記録媒体上の未定着画像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置において、上記定着手段として、(態様A)(態様B)(態様C)(態様D)(態様E)、又は(態様F)の定着装置を用いる。これによれば、上記定着装置のクリーニング機構の信頼性の向上により、良好な画像品質を維持することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
50 定着装置
51 定着ベルト
52 加熱ローラ
53 定着ローラ
54 テンションローラ
55 加熱ヒータ
56 加圧ローラ
57 加圧ローラ接離機構
58 加熱ヒータ
70 クリーニング装置
71 ウェブシート
72 ウェブ送り出し用ローラ
73 ウェブ巻き取り用ローラ
74 押圧ローラ
N 定着ニップ部
M ウェブニップ部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2009−271343号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面が無端移動し加熱手段を有する定着部材と、その表面が無端移動し該定着部材に接触して該定着部材との間に定着ニップを形成する加圧部材と、該加圧部材を該定着部材に対して接離させる接離機構と、該加圧部材の表面を清掃するクリーニング機構とを備え、該定着ニップに記録媒体を通過させ、熱と圧力とによって該記録媒体上のトナー像を該記録媒体に定着させる定着装置において、
上記クリーニング機構は、該加圧部材の表面に摺擦して該加圧部材表面をクリーニングするためのウェブシートと、該ウェブシートを送り出し可能に保持するウェブ保持部材と、該ウェブシートを巻き取り可能な巻取部材と、該ウェブシートを該加圧部材へ押圧する押圧部材とを有し、
上記接離機構の動作により該定着部材と該加圧部材とが離間すると、該加圧部材と該ウェブシートとが離間することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1の定着装置において、上記加圧部材は上記接離機構によって上記定着部材と上記押圧部材とから離れる方向に移動可能に支持されることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1又は2の定着装置において、
上記ウェブシートに予め離型剤が含浸され、上記加圧部材に離型剤が塗布されることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3の定着装置において、
上記接離機構の動作により通紙時には上記加圧部材と上記ウェブシートとを当接させ、通紙終了後には該接離機構の動作により該加圧部材と上記ウェブシートとを離間させ、上記巻取部材により上記ウェブシートを巻き取ることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項4の定着装置において、
上記巻取部材は、記録媒体の種類、厚み、トナー像の種類に応じて、該ウェブシートの巻き取り量を変えることが可能であることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1、2又は3の定着装置において、
上記巻取部材は、上記記録媒体の両面に対してトナー像の形成を行うとき該ウェブシートの巻き取りを行うことを特徴とする定着装置。
【請求項7】
記録媒体に未定着画像を形成担持させる画像形成手段と、記録媒体上の未定着画像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置において、
上記定着手段として、請求項1、2、3、4、5又は6の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−50662(P2013−50662A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189740(P2011−189740)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】