説明

定着装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】ニップ部に挟持される記録媒体が円滑に搬送され、定着処理による画像の乱れや記録媒体の皺、或いはジャムを防ぐ定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置5は、定着ベルト26の内周面にて定着ベルト26を介して加圧ローラー19に所定の圧力で当接する押圧部材55と、定着ベルト26の内周面に圧接された状態で回転駆動することで定着ベルト26を回転させる駆動ローラー28と、駆動ローラー28及び加圧ローラー19の各軸方向端部にてクロス掛けされ駆動ローラー28から加圧ローラー19に回転力を伝達する伝動ベルト54と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等に用いる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置では、加熱部材と加圧部材との間のニップ部に未定着トナー像を担持した記録媒体が送り込まれ、加熱部材による加熱作用によって記録媒体上のトナーが溶融されると同時に、溶融したトナー像に対して加圧部材から加圧作用が付与されることによって記録媒体に対してトナー像の定着が行われるようになっている。
【0003】
通常、加熱部材として、円筒状芯金の内部にハロゲンランプ等の発熱体が配置され、芯金の表面に弾性層及び離型層が設けられているローラー型のものや、耐熱性を有する無端状ベルトが張架され、該無端状ベルトを加熱する定着ベルト型のもの等が用いられている。近年、画像形成装置の電源のオン状態からすぐに画像形成を開始することができるように、また、画像形成装置の待機状態では何時でも画像形成動作を実行することができるように、定着ベルト型がよく用いられている。定着ベルトは薄肉の熱伝導性の良好な材質からなり熱容量が小さいため、短時間でウォーミングアップを行なうことができる。
【0004】
定着ベルト型の定着装置としては、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されるものがある。特許文献1の定着装置は、無端状の定着ベルトと、定着ベルトを加熱する加熱ローラーと、加熱ローラーとともに定着ベルトを張架する押圧部材と、定着ベルトを挟んで押圧部材と対向する位置に配置されている加圧ローラーとを備える。押圧部材には、ニップ部の中央部分に位置する耐熱弾性部材と耐熱性弾性部材の両側でこれを保持する支持部材が設けられる。支持部材のニップ部上流部分及びニップ部下流部分は異なる曲率で形成され、ニップ部上流部分はニップ部下流部分に対して曲率半径が大きく形成されることで、ニップ部上流部分では、定着ベルトがニップ部に進入する際、定着ベルトへの摺動負荷抵抗の増加や接触面積の変化をきたすことがなく、定着ベルトのスリップ現象が抑止され、また、ニップ部下流部分では、溶融トナーの粘着力による記録媒体の貼り付きを抑制して記録媒体が押圧部材から分離しやすくなっている。
【0005】
また、特許文献2の定着装置は、加熱される無端状の定着ベルトと、定着ベルトの内側に回転不能に固定配置されたニップ形成部材と、定着ベルトの内側においてニップ形成部材の直近に隣接配置された回転駆動可能な駆動ローラーと、ニップ形成部材および駆動ローラーに対して定着ベルトを挟んで圧接され、定着ベルトとの接触部がニップ部になっている回転可能な加圧ローラーとを備える。駆動ローラーが回転駆動すると、これに伴って定着ベルトがニップ形成部材の表面を摺動しながら移動して回転するが、定着ベルトの内側に駆動ローラーを配置していることで、ニップ部に記録媒体が導入された場合、定着ベルトはスリップを生じることなく安定して回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−184446号公報(段落[0039]、[0053]〜[0056]、第2図)
【特許文献2】特開2004−286921公報(段落[0016]〜[0020]、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1では、定着ベルトと押圧部材との摩擦抵抗により、定着ベルトが安定して回転駆動することがなく、記録媒体の皺やジャムが発生するという不都合があった。また、特許文献2では、ニップ形成部材と駆動ローラーとの離間した部分のニップ圧が不安定になり画像乱れが発生するという不都合があった。また、加熱部材がローラー型である定着装置では、加圧ローラーと押圧される加熱ローラーとの一方のローラーが回転駆動することで他方のローラーが従動回転するが、ニップ部で未定着トナー像を溶融定着する際の離型性を向上させているために、ローラー表面に離型層等が設けられ、離型層によってローラーとともに記録媒体がスリップするおそれがあり、像乱れが発生するという不都合があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ニップ部に挟持される記録媒体が円滑に搬送され、定着処理による画像の乱れや記録媒体の皺、或いはジャムを防ぐ定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1の発明の定着装置は、記録媒体上に担持された未定着トナー像を加熱する加熱部材と、該加熱部材に所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラーと、該加圧ローラーの回転軸と前記加熱部材若しくは前記加熱部材を駆動する駆動ローラーの回転軸とにクロス掛けされ、前記加熱部材若しくは前記駆動ローラーと前記加圧ローラーとの間で回転力を伝達する伝動ベルトと、を備え、前記加熱部材と前記加圧ローラーとが圧接するニップ部にて記録媒体上に担持された未定着トナー像を加熱及び加圧して記録媒体にトナー像を定着させることを特徴としている。
【0010】
また、第2の発明では、上記の定着装置において、前記加熱部材は回動可能な無端状の定着ベルトであり、前記駆動ローラーは、前記定着ベルトの内周面に圧接された状態で回転駆動することで前記定着ベルトを回転させるものであり、前記定着ベルトの内周面にて前記定着ベルトを介して前記加圧ローラーに所定の圧力で当接する押圧部材を更に備え、前記伝動ベルトは、前記駆動ローラー及び加圧ローラーの各軸方向端部にてクロス掛けされ前記駆動ローラーから前記加圧ローラーに回転力を伝達することを特徴としている。
【0011】
また、第3の発明では、上記の定着装置において、前記定着ベルトの導電層内に生じる渦電流で該導電層を発熱させる誘導加熱部を更に備え、前記誘導加熱部は、前記定着ベルトの前記駆動ローラーに当接する部分に対向して配設されることを特徴としている。
【0012】
また、第4の発明では、上記の定着装置において、前記加熱部材は回転可能な加熱ローラーであり、前記加圧ローラーの軸方向端部に設けられ前記加圧ローラーより小さい外周径を有する第1ベルト掛け部と、前記加熱ローラーの軸方向端部に設けられ前記加熱ローラーより小さい外周径を有する第2ベルト掛け部と、を備え、前記伝動ベルトは、前記第1ベルト掛け部と第2ベルト掛け部との間にクロス掛けされ前記加圧ローラー及び加熱ローラーの一方から他方のローラーに回転力を伝達するとともに、前記加圧ローラーに対する前記第1ベルト掛け部の外周径の比率は、前記加熱ローラーに対する前記第2ベルト掛け部の外周径の比率と略同じであることを特徴としている。
【0013】
また、第5の発明では、上記の定着装置において、前記加圧ローラーの外周には弾性層が設けられ、前記第1ベルト掛け部の熱膨張係数は前記弾性層の熱膨張係数と略同じであることを特徴としている。
【0014】
また、第6の発明では、上記の構成の定着装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、クロス掛けされた伝動ベルトの回転によって、ニップ部において加熱部材及び加圧ローラーは同じ線速度で他方向に回転する。これによって、ニップ部に挟持される記録媒体は円滑に搬送され、定着処理による画像の乱れ、記録媒体の皺や擦れ、或いはジャムを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図
【図2】第1実施形態に係る定着装置を示す側面断面図
【図3】第1実施形態に係る定着装置を示す平面断面図
【図4】第1実施形態に係る定着装置の加圧ローラーと駆動ローラーに架け渡された伝動ベルトを示す側面図
【図5】第2実施形態に係る定着装置を示す平面断面図
【図6】第2実施形態に係る定着装置の加圧ローラーと加熱ローラーに架け渡された伝動ベルトを示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、この実施形態に限定されない。また発明の用途やここで示す用語等はこれに限定されるものではない。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図である。画像形成装置1は、その下部に配設された給紙部2と、この給紙部2の側方に配設された用紙搬送部3と、この用紙搬送部3の上方に配設された画像形成部4と、この画像形成部4よりも排出側に配設された定着装置5と、画像形成部4及び定着装置5の上方に配設された画像読取部6とを備えている。
【0019】
給紙部2は、記録媒体である用紙9を収容する複数の給紙カセット7を備えており、給紙ローラー8の回転により、複数の給紙カセット7のうち選択された給紙カセット7から用紙9を1枚ずつ用紙搬送部3に送り出す。
【0020】
用紙搬送部3に送られた用紙9は、用紙搬送経路10を経由して画像形成部4に向けて搬送される。画像形成部4は、電子写真プロセスによって、用紙9にトナー像を形成するものであり、図1の矢印方向に回転可能に支持された感光体11と、この感光体11の周囲にその回転方向に沿って、帯電部12、露光部13、現像部14、転写部15、クリーニング部16、及び除電部17を備えている。
【0021】
帯電部12は、高電圧を印加される帯電ワイヤーを備えており、この帯電ワイヤーからのコロナ放電によって感光体11表面に所定電位を与えると、感光体11表面が一様に帯電させられる。そして、画像読取部6によって読み取られた原稿の画像データに基づく光が、露光部13により感光体11に照射されると、感光体11の表面電位が選択的に減衰され、感光体11表面に静電潜像が形成される。
【0022】
次いで、現像部14が感光体11表面の静電潜像を現像し、感光体11表面にトナー像が形成される。このトナー像が転写部15によって感光体11と転写部15との間に供給される用紙9に転写される。
【0023】
トナー像が転写された用紙9は、画像形成部4の用紙搬送方向の下流側に配置された定着装置5に向けて搬送される。定着装置5では用紙9が加熱加圧され、用紙9上にトナー像が溶融定着される。次いで、トナー像が定着された用紙9は、排出ローラー対20によって排出トレイ21上に排出される。
【0024】
転写部15による用紙9へのトナー像の転写後、感光体11表面に残留しているトナーは、クリーニング部16により除去され、また感光体11表面の残留電荷は除電部17により除去される。そして、感光体11は帯電部12によって再び帯電され、以下同様にして画像形成が行われる。
【0025】
定着装置5は図2〜図4のように構成される。図2は定着装置を示す側面断面図であり、図3は定着装置の一端を軸方向に切断した平面断面図であり、図4は定着装置の加圧ローラーと駆動ローラーに架け渡された伝動ベルトを示す側面図である。尚、図4では誘導加熱部を省いて定着装置を示している。
【0026】
図2に示すように、定着装置5は、電磁誘導加熱方式の熱源を用いた定着方式であり、加熱部材である定着ベルト26と、加圧ローラー19と、押圧部材55と、定着ベルト26を加熱する誘導加熱部30と、駆動ローラー28と、サーミスター25と、を備える。加圧ローラー19及び駆動ローラー28は定着装置5の装置本体(図略)の長手方向(軸方向)に回転可能に支持され、誘導加熱部30と押圧部材55及びサーミスター25は装置本体に固定支持される。
【0027】
定着ベルト26は、無端状の耐熱ベルトであり、内周側から順に、導電層26aと、シリコンゴム等からなる弾性層26bと、フッ素樹脂等からなりニップ部Nで未定着トナー像を溶融定着する際の離型性を向上させる離型層26cと、が積層されて構成される。さらに、導電層26aの内周面側にポリイミド樹脂等の薄膜をコーティングして、押圧部材55に対して滑らかに摺動するようにしてもよい。
【0028】
押圧部材55は、定着ベルト26の内周面に当接して設けられ、また、定着ベルト26を介して加圧ローラー19の外周面に対向し、定着ベルト26を加圧ローラー19側に押圧する。押圧部材55の定着ベルト26に当接する面には、フッ素樹脂やポリイミド樹脂等の低摩擦材にて摺動部を設けてもよい。
【0029】
駆動ローラー28は、定着ベルト26の内周面に当接して設けられ、押圧部材55とともに定着ベルト26を回転可能に張架している。また、駆動ローラー28は図示しないモーター等の駆動源によって矢印A方向に回転駆動させられ、駆動ローラー28の回転駆動によって、定着ベルト26は駆動ローラー28の外周面と押圧部材55に沿って矢印A方向に移動(回転)する。
【0030】
加圧ローラー19は、円筒型の芯金19aと、芯金19a上に形成されるシリコンゴム等からなる弾性層19bと、を備える。さらに弾性層19bの表面を覆う肉薄のフッ素樹脂チューブからなる離型層を設けて、ニップ部Nで未定着トナー像を溶融定着する際の用紙9の離型性を向上させるようにしてもよい。加圧ローラー19と定着ベルト26との当接する部分にニップ部Nが形成され、ニップ部Nでは、搬送される用紙9上の未定着トナー像を加熱及び加圧し用紙9上にトナー像を定着する。
【0031】
図3に示すように、駆動ローラー28と加圧ローラー19との各軸方向の端部、詳しくは、駆動ローラー28の定着ベルト26が掛かっていない部分と、加圧ローラー19の定着ベルト26が当接しない部分との各ローラー端部の外周面には、伝動ベルト54が張架されている。
【0032】
図4に示すように、伝動ベルト54は、駆動ローラー28及び加圧ローラー19との間でベルトが交差する十字状に掛けられる(クロス掛けされる)。回転軸として駆動ローラー28が矢印A方向に回転駆動すると、駆動ローラー28の回転駆動によって伝動ベルト54が回転する。クロス掛けされた伝動ベルト54の回転によって、回転軸として加圧ローラー19は定着ベルト26の回転方向(A方向)とは逆のB方向に回転する。また、駆動ローラー28の同じ外周面にて、定着ベルト26と伝動ベルト54とが回転することで、定着ベルト26と、伝動ベルト54によって回転させられる加圧ローラー19とは、ニップ部Nにおける単位時間当たりの移動距離(線速度)が同じになる。これによって、ニップ部Nに挟持される用紙9は円滑に搬送され、定着処理による画像の乱れ、用紙9の皺、或いはジャムを防ぐことができる。
【0033】
図2に戻り、誘導加熱部30は、励磁コイル37とボビン38とコア39とを備え、電磁誘導により定着ベルト26を加熱するものである。誘導加熱部30は、長手方向(図2の紙面の表面から裏面方向)に延びて、駆動ローラー28に当接する部分の定着ベルト26の外周を囲うように定着ベルト26に対向して配設される。
【0034】
銅線等からなる励磁コイル37は、ボビン38に巻回され、コア39の中央部の周りを長手方向に周回するように、誘導加熱部30に対向する定着ベルト26に対応させて渦巻状に配設されている。また励磁コイル37は、図示しない電源に接続されていて、電源から供給される高周波電流により磁束を発生させる。誘導加熱部30から発せられる磁束は、図2の紙面に平行な方向に発せられ、定着ベルト26の導電層26aを貫通する。導電層26aの磁束の周りには渦電流が生じ、渦電流が流れると、導電層26a内の電気抵抗によってジュール熱が発生して、導電層26aが発熱することになる。
【0035】
サーミスター25は、定着ベルト26の外周面において長手方向の中央部及び両端部に対向するように配置され、夫々の領域の温度を検知する。サーミスター25の検知する温度に基づいて、定着ベルト26が誘導加熱部30によって所定の温度となるように制御される。
【0036】
そして、定着ベルト26が加熱され所定の温度に昇温すると、ニップ部Nで挟持された用紙9が加熱されるとともに、加圧ローラー19にて加圧されることにより、用紙9上の粉体状態のトナーが溶融定着される。このように、定着ベルト26は薄肉の熱伝導性の良好な材質からなり熱容量が小さいため、短時間でウォーミングアップを行なうことができ、画像形成が迅速に開始される。
【0037】
尚、上記実施形態では、定着ベルト26を加熱するために、誘導加熱部30を用いる構成を示したが、本発明はこれに限らず、駆動ローラー28が金属円筒管からなり、ハロゲンヒーター等の熱源を駆動ローラー28に内蔵する構成とし、この熱源によって定着ベルト26を加熱するようにしてもよい。この場合も上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0038】
(第2実施形態)
図5、図6はローラー型の定着装置の構成を示す。図5は定着装置の一端を軸方向に切断した平面断面図であり、図6は定着装置の加圧ローラーと加熱ローラーに架け渡された伝動ベルトを示す側面図である。第1実施形態と異なる、伝動ベルトの掛け方について主に説明し、以降、第1実施形態と同じ部分の説明を省略する。
【0039】
図5示すように、定着装置5は、加熱部材である加熱ローラー18と、加圧ローラー19と、伝動ベルト54と、第1ベルト掛け部56と、第2ベルト掛け部57とを備える。加熱ローラー18と、加圧ローラー19は装置本体に回転可能に支持される。
【0040】
加圧ローラー19は、円筒型の芯金19aと、芯金19a上に形成されるシリコンゴム等からなる弾性層19bと、を備える。さらに弾性層19bの表面を覆う肉薄のフッ素樹脂チューブからなる離型層を設けて、ニップ部Nで未定着トナー像を溶融定着する際の用紙9の離型性を向上させるようにしてもよい。
【0041】
加圧ローラー19の軸方向端部には回転軸として第1ベルト掛け部56が設けられる。第1ベルト掛け部56は、伝動ベルト54の一端部を掛け渡すものであり、加圧ローラー19の芯金19aの端部に固着され、また、加圧ローラー19の弾性層19bと略同じ線膨張係数を有する材料、例えばシリコンゴム等にて加圧ローラー19の外周より小さい外径に形成される。
【0042】
加熱ローラー18は、熱伝導性に優れたアルミや鉄等の金属からなる円筒形状の芯金上に、フッ素樹脂のコーティングやチューブを被覆したものが用いられる。加熱ローラー18を加熱するために、加熱ローラー18の芯金内部にハロゲンランプやキセノンランプ等のヒーター24が設けられている。
【0043】
加熱ローラー18の軸方向端部には回転軸として第2ベルト掛け部57が設けられる。第2ベルト掛け部57は、伝動ベルト54の他端部を掛け渡すものであり、加熱ローラー18の端部を絞り加工によって形成される。加熱ローラー18に絞り加工を施す際に、第2ベルト掛け部57の外周は、加熱ローラー18の外周に対して所定の比率で小さい外径となるように形成される。尚、第2ベルト掛け部57は、アルミ等の金属材料を旋盤加工によって形成してもよく、また加熱ローラー18の線膨張係数と略同じ材料を加熱ローラー18の端面に取り付けるようにしてもよい。
【0044】
図6に示すように、伝動ベルト54は、第1ベルト掛け部56及び第2ベルト掛け部57との間でベルトが交差する十字状に掛けられる(クロス掛けされる)。ここで、第1ベルト掛け部56の外周径をC1、加圧ローラー19の外周径をD1とし、また、第2ベルト掛け部57の外周径をC2、加熱ローラー18の外周径をD2とした場合、加圧ローラー19に対する第1ベルト掛け部56の外周径の比率C1/D1(加圧側の径比率)は、加熱ローラー18に対する第2ベルト掛け部57の外周径の比率C2/D2(加熱側の径比率)と略同じになるように構成される。
【0045】
この構成によって、加圧ローラー19が図示しないモーター等の駆動源によって矢印B方向に回転駆動させられると、第1ベルト掛け部56と第2ベルト掛け部57との間で張架された伝動ベルト54が回転する。クロス掛けされた伝動ベルト54の回転によって、加熱ローラー18は、加圧ローラー19の回転方向(B方向)とは逆の矢印A方向に回転する。また、加熱側の径比率が加圧側の径比率と略同じであることによって、加熱ローラー18はニップ部Nにおいて加圧ローラー19と同じ線速度で回転する。これによって、ニップ部Nに挟持される用紙9は円滑に搬送され、定着処理による画像の乱れ、用紙9の皺、或いはジャムを防ぐことができる。尚、加圧ローラー19をモーター等で回転駆動させる替わりに、加熱ローラー18を回転駆動させ、加熱ローラー18の回転力を伝導ベルト54によって加圧ローラー19に伝達するようにしてもよい。
【0046】
また、加圧ローラー19の外周に弾性層19bが設けられる場合、第1ベルト掛け部56は弾性層19bの熱膨張係数と略同じであるように構成される。この構成によれば、加熱ローラー18からの熱伝導によって加圧ローラー19の弾性層19bが熱膨張するとき、第1ベルト掛け部56が弾性層19bと同じように熱膨張することで、加圧側の径比率が略一定値を保持するために、加熱ローラー18はニップ部Nにおいて加圧ローラー19と同じ線速度で回転する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ、それらの複合機等に用いる定着装置及びそれを備えた画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 画像形成装置
5 定着装置
18 加熱ローラー(加熱部材、回転軸)
19 加圧ローラー(回転軸)
19a 芯金
19b 弾性層
24 ヒーター
25 サーミスター
26 定着ベルト(加熱部材)
26a 導電層
26b 弾性層
26c 離型層
28 駆動ローラー
30 誘導加熱部
54 伝動ベルト
55 押圧部材
56 第1ベルト掛け部(回転軸)
57 第2ベルト掛け部(回転軸)
N ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に担持された未定着トナー像を加熱する加熱部材と、
該加熱部材に所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラーと、
該加圧ローラーの回転軸と前記加熱部材若しくは前記加熱部材を駆動する駆動ローラーの回転軸とにクロス掛けされ、前記加熱部材若しくは前記駆動ローラーと前記加圧ローラーとの間で回転力を伝達する伝動ベルトと、を備え、
前記加熱部材と前記加圧ローラーとが圧接するニップ部にて記録媒体上に担持された未定着トナー像を加熱及び加圧して記録媒体にトナー像を定着させることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記加熱部材は回動可能な無端状の定着ベルトであり、
前記駆動ローラーは、前記定着ベルトの内周面に圧接された状態で回転駆動することで前記定着ベルトを回転させるものであり、
前記定着ベルトの内周面にて前記定着ベルトを介して前記加圧ローラーに所定の圧力で当接する押圧部材を更に備え、
前記伝動ベルトは、前記駆動ローラー及び加圧ローラーの各軸方向端部にてクロス掛けされ前記駆動ローラーから前記加圧ローラーに回転力を伝達することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記定着ベルトの導電層内に生じる渦電流で該導電層を発熱させる誘導加熱部を更に備え、前記誘導加熱部は、前記定着ベルトの前記駆動ローラーに当接する部分に対向して配設されることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加熱部材は回転可能な加熱ローラーであり、
前記加圧ローラーの軸方向端部に設けられ前記加圧ローラーより小さい外周径を有する第1ベルト掛け部と、
前記加熱ローラーの軸方向端部に設けられ前記加熱ローラーより小さい外周径を有する第2ベルト掛け部と、を備え、
前記伝動ベルトは、前記第1ベルト掛け部と第2ベルト掛け部との間にクロス掛けされ前記加圧ローラー及び加熱ローラーの一方から他方のローラーに回転力を伝達するとともに、
前記加圧ローラーに対する前記第1ベルト掛け部の外周径の比率は、前記加熱ローラーに対する前記第2ベルト掛け部の外周径の比率と略同じであることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加圧ローラーの外周には弾性層が設けられ、前記第1ベルト掛け部の熱膨張係数は前記弾性層の熱膨張係数と略同じであることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−25288(P2013−25288A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163003(P2011−163003)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】