説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】定着装置の熱が筐体に逃げるのを十分に抑制することができるようにする。
【解決手段】回転体と、該回転体を筐体に対して回転自在に支持する支持部材とを有する。前記回転体は、本体部、及び該本体部の端部に配設され、前記支持部材によって支持され、前記本体部より熱伝導率が低い材料で形成された端部軸24bを備える。該端部軸24bと前記支持部材との接触面は、円周方向における異なる箇所に形成された円弧状の接触部を備える。端部軸24bと支持部材との接触面が、円周方向における異なる箇所に形成された円弧状の接触部を備えるので、本体部の熱が端部軸24b及び支持部材を介して筐体に逃げるのを十分に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真式のプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置、例えば、プリンタにおいては、感光体ドラムの表面が、帯電ローラによって帯電させられ、LEDヘッドによって露光されて静電潜像が形成され、該静電潜像に現像ローラ上で薄層化された現像剤としてのトナーが静電的に付着させられてトナー像が形成されるようになっている。続いて、該トナー像が、転写ローラによって用紙上に転写され、定着装置としての定着器において定着させられて、画像が形成される。
【0003】
前記定着器は、加圧用の回転体としての加圧ローラ、加熱用の回転体としての定着ローラ、並びに前記加圧ローラ及び定着ローラを回転自在に支持する筐体を備え、前記定着ローラ内にハロゲンランプが配設される。そして、該ハロゲンランプによって発生させられた熱が定着ローラに伝達され、用紙上のトナー像が、定着ローラによって加熱され、加圧ローラによって加圧される。
【0004】
ところで、前記定着ローラは、芯金中央部、及び該芯金中央部の両端に取り付けられた端部軸を備え、該端部軸が支持部材としてのベアリングによって支持されるようになっている。したがって、前記ハロゲンランプによって発生させられた熱の一部が端部軸及びベアリングを介して筐体に逃げてしまう。その結果、定着器において消費されるエネルギーがその分多くなってしまう。
【0005】
そこで、定着ローラの芯金中央部を熱伝導率の高い材料で形成し、端部軸を熱伝導率の低い材料で形成することによって、芯金中央部の熱が端部軸を介して筐体に逃げるのを抑制するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−113728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の定着装置においては、端部軸が支持部材によって支持されているので、熱が筐体に逃げるのを十分に抑制することができない。
【0007】
本発明は、前記従来の定着装置の問題点を解決して、熱が筐体に逃げるのを十分に抑制することができる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明の定着装置においては、回転体と、該回転体を筐体に対して回転自在に支持する支持部材とを有する。
【0009】
そして、前記回転体は、本体部、及び該本体部の端部に配設され、前記支持部材によって支持され、前記本体部より熱伝導率が低い材料で形成された端部軸を備える。
【0010】
また、該端部軸と前記支持部材との接触面は、円周方向における異なる箇所に形成された円弧状の接触部を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、定着装置においては、回転体と、該回転体を筐体に対して回転自在に支持する支持部材とを有する。
【0012】
そして、前記回転体は、本体部、及び該本体部の端部に配設され、前記支持部材によって支持され、前記本体部より熱伝導率が低い材料で形成された端部軸を備える。
【0013】
また、該端部軸と前記支持部材との接触面は、円周方向における異なる箇所に形成された円弧状の接触部を備える。
【0014】
この場合、前記回転体において、端部軸が本体部より熱伝導率が低い材料で形成され、端部軸と支持部材との接触面が、円周方向における異なる箇所に形成された円弧状の接触部を備えるので、本体部の熱が端部軸及び支持部材を介して筐体に逃げるのを十分に抑制することができる。
【0015】
また、端部軸の外周面と支持部材の内周面との接触面積が、溝が形成された分だけ小さくなるので、本体部の熱が端部軸及び支持部材を介して筐体に逃げるのを一層抑制することができる。
【0016】
さらに、接触部において、端部軸の外周面と支持部材の内周面とが隙間なく接触させられるので、支持部材によって端部軸を安定させて支持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0018】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概略図である。
【0019】
図に示されるように、プリンタ10においては、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色のドラムカートリッジとしての画像形成ユニット13Bk、13Y、13M、13Cが、プリンタ10の本体、すなわち、装置本体に対して着脱自在に配設される。前記各画像形成ユニット13Bk、13Y、13M、13Cは、図における右側から左側に向かってブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの順に配設され、減法混色によって各色が重ねられる。なお、ブラックの画像形成ユニット13Bkはモノクロ印刷に使用することができる。
【0020】
また、各画像形成ユニット13Bk、13Y、13M、13Cには、各色に対応した現像剤カートリッジとしての、かつ、現像剤収容部としてのトナーカートリッジ12Bk、12Y、12M、12Cがそれぞれ前記画像形成ユニット13Bk、13Y、13M、13Cの本体、すなわち、ユニット本体に対して着脱自在に配設され、各トナーカートリッジ12Bk、12Y、12M、12Cに各色の現像剤としてのトナーが収容される。
【0021】
そして、前記プリンタ10は、画像形成部10a、両面印刷部10b、媒体供給部としての給紙部10c及び媒体排出部としての排紙部10dを備え、前記画像形成部10aにおいて、前記画像形成ユニット13Bk、13Y、13M、13Cに露光装置としてのLEDヘッド14Bk、14Y、14M、14Cが当接させられる。
【0022】
また、前記画像形成ユニット13Bk、13Y、13M、13Cの下方には、転写ユニットu1が配設され、該転写ユニットu1は、搬送ベルト(転写ベルト)21、及び各画像形成ユニット13Bk、13Y、13M、13Cに対応させて配設された転写部材としての転写ローラ20を備える。
【0023】
この場合、前記各画像形成ユニット13Bk、13Y、13M、13Cの構成は、使用されるトナーの色を除いて同じであるので、本実施の形態においては、ブラックの画像形成ユニット13Bkについてだけ説明する。
【0024】
画像形成ユニット13Bkは、像担持体としての感光体ドラム15、帯電装置としての帯電ローラ16、現像剤担持体としての現像ローラ17、及びクリーニング装置としてのクリーニングブレード18を備える。前記感光体ドラム15は、外周面が光導電性材料によって形成され、前記外周面に接触させて、前記帯電ローラ16、現像ローラ17及びクリーニングブレード18が感光体ドラム15の回転方向に沿って配設される。また、前記転写ローラ20は搬送ベルト21を介して感光体ドラム15に当接させられる。
【0025】
該感光体ドラム15が回転させられるのに伴って、帯電ローラ16から電荷が付加され、感光体ドラム15の表面が一様に帯電させられる。そして、LEDヘッド14Bkからの印字情報に基づく光書込みによって、感光体ドラム15が露光され、表面に、潜像としての静電潜像が形成され、続いて、現像ローラ17によって、前記静電潜像が現像されて現像剤像としてのトナー像が形成される。
【0026】
続いて、該トナー像は、感光体ドラム15の回転に伴って転写ローラ20と対向する位置に到達し、感光体ドラム15の直下を搬送ベルト21の走行に伴って矢印方向に搬送される媒体としての用紙Pに転写される。転写後に感光体ドラム15上に残留したトナーは、前記クリーニングブレード18によって掻き取られ、回収される。なお、前記用紙Pにはブラックのトナー像だけでなく、イエロー、マゼンタ及びシアンのトナー像が重ねて転写され、カラーのトナー像が形成される。
【0027】
そして、定着装置としての定着器22は、第1の回転体としての定着ローラ24及び第2の回転体としての加圧ローラ23を備え、用紙Pが加圧ローラ23と定着ローラ24との間に送られ、挟持されて搬送される間に、カラーのトナー像が溶融させられて用紙Pに定着させられる。なお、カラーのトナー像が定着させられた用紙Pは、切換板25を介してスタッカ29又は両面印刷部10bに送られる。
【0028】
そして、前記用紙Pは前記給紙部10cによって給紙される。給紙部10cは、媒体収容部としての用紙カセット26、給紙ローラ27、レジストローラ28等を備える。
【0029】
次に、前記構成のプリンタ10の動作について説明する。
【0030】
操作者が、図示されない操作部において画像形成を開始するための操作を行うと、給紙ローラ27の回転に伴って前記用紙カセット26から用紙Pが一枚ずつ繰り出され、レジストローラ28に送られ、さらに、トナー像の形成に一致するタイミングで搬送ベルト21に送られ、転写ユニットu1によって搬送される。
【0031】
一方、画像形成ユニット13Bk、13Y、13M、13Cにおいては、前述されたように、感光体ドラム15の表面に各色のトナー像が形成される。該トナー像は、転写ローラ20によって前記搬送ベルト21上を搬送される用紙Pに順次重ねて転写され、カラーのトナー像が形成される。そして、カラーのトナー像が形成された用紙Pは、定着器22に送られ、該定着器22において前記カラーのトナー像が定着させられ、カラーの画像が形成される。
【0032】
次に、前記定着器22について説明する。
【0033】
図1は本発明の第1の実施の形態における定着ローラの要部拡大図、図3は本発明の第1の実施の形態における定着器の断面図、図4は本発明の第1の実施の形態における定着ローラの縦断面図、図5は本発明の第1の実施の形態における端部軸の支持状態を示す横断面図である。
【0034】
図に示されるように、定着器22は、前記定着ローラ24、及び定着ローラ24に押し付けて配設された前記加圧ローラ23を備える。
【0035】
前記定着ローラ24は、円筒状に形成された筒状体としての、かつ、本体部としての芯金中央部24a、該芯金中央部24aの両端部に取り付けられた端部軸24b、及び円筒状に形成され、前記芯金中央部24aを被覆する弾性層24cを備える。前記端部軸24bは、筒状部81及び該筒状部81の一端において径方向外方に延びるフランジ部82を備え、該フランジ部82が前記芯金中央部24aの端部に取り付けられる。
【0036】
そして、前記定着ローラ24は、端部軸24bを介して、第1の支持部材としてのベアリング42によって図示されない筐体に対して回転自在に支持され、端部軸24bとベアリング42との間に第1の接触面が形成される。
【0037】
また、前記芯金中央部24a及び端部軸24bの径方向内方には、空洞部83が貫通して形成され、該空洞部83内に加熱体としてのハロゲンランプ41が貫通して配設される。該ハロゲンランプ41の両端は、定着ローラ24外において、図示されない電源に接続される。
【0038】
前記加圧ローラ23は、円柱状に形成された本体部としての芯金部23a、該芯金部23aの両端部において芯金部23aと一体に形成された端部軸23b、及び前記芯金部23aを被覆する弾性層23cを備える。
【0039】
そして、前記加圧ローラ23は、端部軸23bを介して、第2の支持部材としてのベアリング43によって、前記筐体に対して回転自在に、かつ、定着ローラ24に対して移動自在に(加圧ローラ23がx軸方向に延在するとしたときに、y軸方向に移動自在に)支持され、端部軸23bとベアリング43との間に第2の接触面が形成される。また、前記ベアリング43は、付勢部材としてのスプリング44によって定着ローラ24側に向けて付勢され、それに伴って、加圧ローラ23は定着ローラ24に押圧され、前記弾性層23c、24cが互いに押し付けられ、ニップ領域Rを形成する。
【0040】
次に、前記構成の定着器22の動作について説明する。
【0041】
まず、プリンタ10の電源が投入されると、定着器22において立上げが開始され、弾性層24cを、用紙P上のトナー像を溶融させるのに十分な温度に加熱するために、ハロゲンランプ41が通電され、芯金中央部24a及び端部軸24bが加熱される。そして、定着ローラ24の温度が高くなり、良好な定着を行うことができる状態になると、立上げが完了する。また、定着器22において用紙Pを搬送することができるように、定着ローラ24に図示されない駆動部からの回転が伝達される。
【0042】
ところで、前記ハロゲンランプ41が通電されると、ハロゲンランプ41によって発生させられた熱が芯金中央部24aを介して弾性層24cに伝わるが、このとき、熱の一部が芯金中央部24aに取り付けられた端部軸24bにも伝わる。そして、端部軸24bに伝わった熱は、端部軸24bを支持するベアリング42に伝わり、更にベアリング42を介して筐体に逃げてしまう。したがって、定着器22において消費されるエネルギーがその分多くなってしまう。
【0043】
そこで、芯金中央部24aが熱伝導率の高い材料、本実施の形態においては、鉄で形成され、端部軸24bが熱伝導率の低い材料、本実施の形態においては、ステンレスで形成される。したがって、芯金中央部24aの熱が端部軸24b及びベアリング42を介して筐体に逃げるのを十分に抑制することができる。また、芯金中央部24aの径D1より、端部軸24bにおいて接触面を形成する接触領域50の径D2が小さくされるので、端部軸24bにおける熱の移動速度は芯金中央部24aにおける熱の移動速度より極めて遅くされる。したがって、ハロゲンランプ41によって発生させられた熱を定着ローラ24の中央部に効果的に蓄えることができる。
【0044】
さらに、本実施の形態においては、前記接触領域50に、定着ローラ24の軸に対して所定の角度で傾斜させて、少なくとも一つの、本実施の形態においては、複数の溝51が等ピッチで形成される。
【0045】
この場合、各溝51のうちの任意の溝を51aとし、該溝51aにおける一方の稜線51aL上の任意の点をPとしたとき、該点Pを通り、定着ローラ24の中心軸と平行な線をLとすると、該線L上に少なくとも一つの他の稜線が形成されるように各溝51が傾斜させられる。
【0046】
その結果、図5に示されるように、端部軸24bの外周面とベアリング42の内周面とが、円周方向における異なる箇所に形成された複数の円弧状の接触部qで接触することになり、各接触部によって前記接触面が形成される。したがって、各円弧状の接触部qにおいて、定着ローラ24bの外周面とベアリング42の内周面とが隙間なく接触させられるので、ベアリング42によって端部軸24bを安定させて支持することができ、定着ローラ24が、加圧ローラ23によって押圧された状態で回転するときに、ガタ、振動等が生じることがない。
【0047】
そして、端部軸24bの外周面とベアリング42の内周面との接触面積が、溝51が形成された分だけ小さくなるので、芯金中央部24aの熱が端部軸24b及びベアリング42を介して筐体に逃げるのを一層抑制することができる。しかも、ベアリング42によって端部軸を安定させて支持することができるので、ガタ、振動等に起因して定着むらが発生するのを防止することができる。その結果、画像品位を向上させることができる。
【0048】
なお、本実施の形態において、各溝51は、フランジ部82側の端部を始端とし、反対側の端部を終端としたときの、始端から終端までの間に、定着ローラ24の円周方向において360〔°〕より小さい所定の角度にわたって延在させられるが、始端から終端までの間に、360〔°〕以上の角度にわたって、かつ、端部軸24bの外周面を1周以上巻回するように延在させることもできる。
【0049】
また、本実施の形態において、各溝51は、展開させられた状態で直線状に延在させられるが、湾曲させて延在させることもできる。
【0050】
次に、定着ローラ24の実施例について説明する。
【0051】
この場合、定着ローラ24の長手方向の長さL1を280〔mm〕とし、芯金中央部24aを鉄によって形成し、芯金中央部24aの肉厚T1を0.5〔mm〕とし、芯金中央部24aの径D1を26〔mm〕とし、端部軸24bをステンレスによって形成し、筒状部81の肉厚T2を1.0〔mm〕とし、筒状部81の径D2を16〔mm〕とした。また、端部軸24bの円周方向における溝51の幅をH1とし、各溝51間の幅をH2としたとき、
H1=H2
となるようにした。さらに、弾性層24cをシリコーンスポンジによって形成し、肉厚を1.0〔mm〕とし、ハロゲンランプ41の出力を1200〔W〕とした。
【0052】
ところで、鉄の熱伝導率は84〔W/m℃〕程度であり、ステンレスの熱伝導率は17〔W/m℃〕程度である。また、熱の伝達効率は熱を伝える方向の断面積に比例する。
【0053】
前記定着ローラ24の長手方向において、芯金中央部24aの断面積と端部軸24bの断面積とを比較すると、芯金中央部24aの断面積は約40〔mm2 〕であり、端部軸24bの断面積も約40〔mm2 〕である。また、前記幅H1と前記幅H2とが等しいので、端部軸24bとベアリング42との接触面積は、溝51が形成されない場合の端部軸24bとベアリング42との接触面積の半分になる。したがって、端部軸24bからベアリング42に伝達される熱の量は、溝51が形成されない場合の半分になる。
【0054】
次に、本実施の形態における定着ローラ24と比較例の定着ローラとの特性を比較する。
【0055】
図6は比較例における定着ローラの断面図である。
【0056】
図において、64は比較例における定着ローラであり、該定着ローラ64は、円筒状に形成された芯金中央部64a、円筒状に形成され、該芯金中央部64aの両端に取り付けられた端部軸64b、及び円筒状に形成され、前記芯金中央部64aを被覆する弾性層64cを備える。前記端部軸64bは、一端において芯金中央部64aの端部に取り付けられる。
【0057】
この場合、前記芯金中央部64aを鉄によって形成し、芯金中央部64aの肉厚Taを0.5〔mm〕とし、芯金中央部64aの外径Daを26〔mm〕とし、端部軸64bを鉄によって形成し、端部軸64bの肉厚Tbを1.0〔mm〕とし、端部軸64bの外径Dbを26〔mm〕とした。さらに、弾性層64cをシリコーンスポンジによって形成し、肉厚を1.0〔mm〕とした。また、前記定着ローラ64は、端部軸64bを介して、前記ベアリング42(図3参照。)によって図示されない筐体に対して回転自在に支持される。
【0058】
ところで、ステンレスの熱伝導率は、鉄の熱伝導率の17/84倍であるので、本実施の形態における端部軸24bの熱伝導率は、比較例における端部軸64bの熱伝導率の17/84倍になる。また、所定の部材内を熱が伝わる場合の熱量は、部材の断面積に比例する。したがって、本実施の形態における端部軸24bの断面積は40〔mm2 〕であり、比較例における端部軸64bの断面積は79〔mm2 〕であるので、端部軸24b内を熱が伝わる場合の熱量は、端部軸64b内を熱が伝わる場合の熱量の40/79倍になる。
【0059】
さらに、本実施の形態の端部軸24bにおいては、溝51の幅H1と溝51間の幅H2とが等しいので、本実施の形態における端部軸24bとベアリング42との接触面積E1は、比較例における端部軸64bとベアリング42との接触面積E2の1/2倍になる。
【0060】
したがって、本実施の形態における端部軸24bとベアリング42との間で伝達される熱の熱量は、比較例における端部軸64bとベアリング42との間で伝達される熱の熱量の1/2倍になる。その結果、本実施の形態の定着ローラ24において芯金中央部24aの熱が端部軸24bを介してベアリング42に伝達される速度をαとし、比較例の定着ローラ64において、芯金中央部64aの熱が端部軸64bを介してベアリング42に伝達される速度をβとすると、速度αは、
α=(17/84)×(40/79)×(1/2)β
=0.05β
で表すことができる。
【0061】
したがって、本実施の形態の定着ローラ24においては、端部軸24bからベアリング42を介して筐体に逃げる熱を、比較例の定着ローラ64と比べて95〔%〕程度抑制することができる。
【0062】
ところで、本実施の形態においては、芯金中央部24a及び端部軸24bの肉厚を、0.1〔mm〕以上、かつ、1.5〔mm〕以下とするのが好ましく、0.3〔mm〕以上、かつ、1.0〔mm〕以下とするのが更に好ましい。
【0063】
なお、本実施の形態において、ハロゲンランプ41によって定着ローラ24を加熱した際に、弾性層24cが用紙P上のトナー像を定着させるのに必要な温度である180〔℃〕程度に加熱されるまでの時間は、30〔秒〕前後であることが実験によって確認されていて、比較例の定着ローラ64を加熱した際の、弾性層64cが180〔℃〕程度に加熱されるまでの時間である50〔秒〕前後と比べて極めて短いことが分かる。
【0064】
さらに、本実施の形態においては、弾性層24cの肉厚が1〔mm〕にされるので、カラーのトナー像を十分に定着させることができ、端部軸24bの肉厚が1〔mm〕にされるので、A4判の用紙Pに対してカラーのトナー像を定着させるのに必要な10〜20〔kgf〕の加重に十分に耐えることができる。
【0065】
また、本実施の形態においては、定着ローラ24の端部軸24bに溝51が形成されるようになっているが、ベアリング42の内周面に溝を形成することができる。
【0066】
次に、加圧ローラ23の端部軸23bに溝を形成するようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明をし、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0067】
図7は本発明の第2の実施の形態における定着器の断面図である。
【0068】
図において、124は第1の回転体としての定着ローラ、123は第2の回転体としての加圧ローラであり、前記定着ローラ124は、定着用ベルト140、該定着用ベルト140の内周面に当接させて配設された加熱体としてのヒータ141、及び前記定着用ベルト140によって包囲され、前記ヒータ141を支持する支持体142を備える。
【0069】
また、前記加圧ローラ123は、円筒状に形成された本体部としての芯金部123a、円筒状に形成され、前記芯金部23aの両端部において一体に形成された端部軸123b、及び前記芯金部123aを被覆する弾性層123cを備える。そして、前記端部軸123bの外周面に、加圧ローラ123の軸に対して所定の角度で傾斜させて、少なくとも一つの、本実施の形態においては、複数の溝151が等ピッチで形成される。これにより、芯金部123aの熱が、端部軸123b、及び第2の支持部材としてのベアリング43(図1)を介して筐体に逃げるのを一層抑制することができる。
【0070】
次に、定着ベルト張設ローラの端部軸に溝を形成するようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明をし、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0071】
図8は本発明の第3の実施の形態における定着器の断面図である。
【0072】
図において、224は定着ローラユニットであり、該定着ローラユニット224は、第1の回転体としての定着ローラ225、第2の回転体としての加圧ローラ226、第3の回転体としての定着ベルト張設ローラ227、及び定着ベルト228を備え、前記定着ベルト張設ローラ227は定着ベルト228にテンションを与える。また、223は第4の回転体としての加圧ローラであり、前記定着ベルト228を介して前記加圧ローラ226と当接させて配設される。
【0073】
前記加圧ローラ223は、付勢部材としてのスプリング44によって加圧ローラ226に向けて付勢され、媒体としての用紙P(図2)上の現像剤像としてのトナー像を加圧する。また、前記定着ローラ225は、加熱体としてのハロゲンランプ41を備え、該ハロゲンランプ41によって発生させられた熱は定着ベルト228に伝わり、該定着ベルト228を介して用紙P上のトナー像を加熱する。
【0074】
そして、前記定着ベルト張設ローラ227に本発明を適用し、端部軸227bの外周面に、定着ベルト張設ローラ227の軸に対して所定の角度で傾斜させて、少なくとも一つの、本実施の形態においては、複数の溝251が等ピッチで形成される。これにより、定着ベルト228を介して定着ベルト張設ローラ227に伝わった熱が、端部軸227b及び支持部材としての図示されないベアリングを介して筐体に逃げるのを一層抑制することができる。
【0075】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0076】
図9は本発明の第4の実施の形態における定着器の断面図、図10は本発明の第4の実施の形態における断熱部材の斜視図である。
【0077】
この場合、第1の回転体としての定着ローラ24の端部軸24bと第1の支持部材としてのベアリング42との間に断熱部材55が配設される。該断熱部材55は、筒状部84、及び該筒状部84の一端から径方向外方に向けて形成されたフランジ部85を備え、前記筒状部84の内周面に、断熱部材55の軸に対して所定の角度で傾斜させて、少なくとも一つの、本実施の形態においては、複数の溝56が、前記筒状部84の外周面に、断熱部材55の軸に対して所定の角度で傾斜させて、少なくとも一つの、本実施の形態においては、複数の溝57が形成される。
【0078】
前記端部軸24bの外周面には、第1の実施の形態と同様に、定着ローラ24の軸に対して所定の角度で傾斜させて溝51(図5)が形成されるが、断熱部材55の軸に対する溝56と、定着ローラ24に対する溝51とは、互いに角度を異ならせて形成される。したがって、溝51と溝56とが噛合することがないので、ベアリング42によって端部軸24bを安定させて支持することができる。
【0079】
なお、本実施の形態において、加熱体としてのハロゲンランンプ41によって発生させられた熱は、筒状体としての、かつ、本体部としての芯金中央部24aに伝わり、該芯金中央部24aに取り付けられた前記端部軸24bに伝わった後、断熱部材55を介してベアリング42に伝わる。
【0080】
また、前記断熱部材55には、熱伝導率が金属より低い0.08〔W/m℃〕程度の材料、本実施の形態においては、樹脂であるPPSが使用される。しかも、筒状部84の内周面に溝56が、筒状部84の外周面に溝57が形成され、端部軸24bと筒状部84との接触面積、及び筒状部84とベアリング42との接触面積が小さくされる。したがって、筒状部84の熱が端部軸24b及びベアリング42を介して筐体に逃げるのを一層抑制することができる。
【0081】
なお、本実施の形態においては、端部軸24bの外周面に溝51が形成されるようになっているが、端部軸24bの表面を、溝51を形成することなく平坦にすることができる。その場合、断熱部材55の内周面及び外周面に溝56、57を形成するだけでよいので、定着装置としての定着器22のコストを低くすることができる。しかも、断熱部材55を射出成形によって製造することができるので、生産性を向上させることができる。
【0082】
前記各実施の形態においては、芯金中央部24aの材料に鉄が使用されるようになっているが、鉄に代えて、熱伝導率の高い銅、アルミニウム等を使用することができる。その場合、端部軸24bには、銅、アルミニウム等より熱伝導率の低い材料が使用される。
【0083】
また、前記各実施の形態においては、溝51、151、251、56、57を形成することによって各部材間の接触面積を小さくし、部材間の熱伝達を抑制するようになっているが、溝51、151、251、56、57に代えて穴を形成することによって各部材間の接触面積を小さくし、部材間の熱伝達を抑制することができる。この場合も、例えば、端部軸24bとベアリング42との接触面が、円周方向における異なる箇所に形成された円弧状の接触部を備えることになる。
【0084】
さらに、前記各実施の形態においては、本発明を画像形成装置としてのプリンタに適用した例について説明したが、本発明を、複写機、ファクシミリ装置、複合機等に適用することができる。
【0085】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施の形態における定着ローラの要部拡大図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における定着器の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における定着ローラの縦断面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における端部軸の支持状態を示す横断面図である。
【図6】比較例における定着ローラの断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態における定着器の断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態における定着器の断面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態における定着器の断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態における断熱部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0087】
22 定着器
23、123、223、226 加圧ローラ
23b、24b、123b、227b 端部軸
23a、123a 芯金部
24、124、225 定着ローラ
24a 芯金中央部
42、43 ベアリング
227 定着ベルト張設ローラ
q 接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体上の現像剤像を定着させるための定着装置において、
(a)回転体と、
(b)該回転体を筐体に対して回転自在に支持する支持部材とを有するとともに、
(c)前記回転体は、本体部、及び該本体部の端部に配設され、前記支持部材によって支持され、前記本体部より熱伝導率が低い材料で形成された端部軸を備え、
(d)該端部軸と前記支持部材との接触面は、円周方向における異なる箇所に形成された円弧状の接触部を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記円弧状の接触部は、回転体の軸に対して所定の角度で傾斜させて形成された溝によって形成される請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記円弧状の接触部は、円周方向における異なる箇所に形成された穴によって形成される請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記回転体内に加熱体が配設される請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記回転体は付勢部材によって他の回転体に押圧される請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記回転体は定着ベルトを張設するために配設される請求項1に記載の定着装置。
【請求項7】
前記筒状体及び端部軸の肉厚が0.1〔mm〕以上、かつ、1.5〔mm〕以下にされる請求項1に記載の定着装置。
【請求項8】
前記端部軸において前記接触面を形成する接触領域の外径は、筒状体の外径より小さくされる請求項1に記載の定着装置。
【請求項9】
前記溝は前記端部軸の外周面に形成される請求項2に記載の定着装置。
【請求項10】
前記溝は前記支持部材の内周面に形成される請求項2に記載の定着装置。
【請求項11】
前記溝は、前記端部軸と支持部材との間に配設された断熱部材に形成される請求項2に記載の定着装置。
【請求項12】
前記請求項1〜11のいずれか1項に記載の定着装置が搭載された画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−288632(P2009−288632A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142634(P2008−142634)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】