説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】部品点数を増やすことなく、通紙時の従動部材のスリップ現象を抑制し、良好な画像品質を得ることのできる定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】回転する定着部材と、前記定着部材を押圧して通過する記録媒体上の未定着トナーを該記録媒体に定着させるニップ部を形成する加圧ローラ31と、前記定着部材を加熱するヒータと、を備え、加圧ローラ31は、円筒状の芯金32と、芯金32の外周上に設けられる弾性層33と、からなるローラ部材であって、非通紙部の少なくとも軸方向の一部における芯金32の外径RO1が通紙部におけるその外径RO2よりも大きく、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部における弾性層33の厚さt1が通紙部におけるその厚さt2よりも薄くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱と圧力により記録媒体にトナーを定着させる定着装置及び該定着装置を備える電子写真方式、静電記録方式等を利用したFAX、プリンタ、複写機またはそれらの複合機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置として、電子写真方式を利用した画像形成装置が種々考案されており公知技術となっている。その画像形成プロセスは、像担持体である感光ドラムの表面に静電潜像を形成し、感光ドラム上の静電潜像を現像剤であるトナー等によって現像して可視像化し、現像された画像を転写装置により記録媒体(被定着材、用紙、記録紙ともいう)に転写して画像を担持させ、圧力や熱等を用いる定着装置によって記録媒体上のトナー画像を定着する過程により成立している。
【0003】
この定着装置では、対向するローラもしくはベルトもしくはそれらの組み合わせにより構成された定着部材及び加圧部材が当接してニップ部を形成するように配置されており、該ニップ部に記録媒体を挟みこみ、熱および圧力を加え前記トナー像を記録媒体上に定着することを行っている。
【0004】
前記定着装置の一例を挙げると、複数のローラ部材に張架された定着ベルトを定着部材として用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような定着ベルトを用いた装置は、定着部材としての定着ベルト(無端状ベルト)、定着ベルトを張架・支持する複数のローラ部材、複数のローラ部材のうち1つのローラ部材に内設されたヒータ、加圧ローラ(加圧部材)、等で構成されている。ヒータは、ローラ部材を介して定着ベルトを加熱する。そして、定着ベルトと加圧ローラとの間に形成されたニップ部に向けて搬送された記録媒体上のトナー像は、ニップ部にて熱と圧力とを受けて記録媒体上に定着される(ベルト定着方式)。
【0005】
また、このような定着装置において、定着部材、加圧部材のいずれかを駆動により回転する部材(駆動部材)とし、他方を該駆動部材に連れ回りする従動部材としているが、通常、加圧部材を駆動部材とし、定着部材を従動部材としている。
【0006】
ここで、通紙時にはニップ部に記録媒体が挿入されて、ニップ部では大部分が定着部材と加圧部材が接触しなくなり、両者間の摩擦力が減少するため、従動部材(例えば定着部材)が駆動部材(例えば加圧部材)に対して遅れて回転してしまうスリップ現象が発生し、画像品質を劣化させてしまう問題があった。
【0007】
この問題に対しては、加圧部材の軸方向において端部表層を中央部よりも高摩擦係数の材料からなるものとしたり、あるいは軸方向端部が中央部よりも定着部材に対して高荷重で押圧したりすることで、該定着部材を加圧部材に対して確実に連れ回りさせる構成の定着装置が提案されている。
【0008】
例えば、特許文献2では、加圧部材である加圧ベルトの非通紙部と定着部材である加熱ローラの非通紙部に高摩擦体をもうけ、さらにこの加圧ベルトの内部から別部材で加熱ローラに押し付けることで充分なグリップを得て駆動させる構成が開示されている。しかしながら、この方法では加圧部材を定着部材に押し付ける部材が別に必要であり、部品点数の増加につながることから、コストの面で不利である。また部品が増えることで熱容量が増えることになり、熱効率も下がってしまう。
【0009】
また特許文献3では、定着部材である加熱ローラの端部グリップ部を中央通紙部よりも大きい外径に設定し、記録媒体が通過する際に加圧部材の端部と加熱ローラの端部同士が離れることを防止し、確実に端部のグリップで動力を伝達できる構成が開示されている。この場合、定着部材の回転数(あるいは速度)は端部で決まるが、記録媒体の速度は通紙部となる中央部で決まる。そのため、通紙部と端部で加熱ローラの外径差が大きくなると、加熱ローラの速度と記録媒体の搬送速度に差が生じ、結果として画像品質が劣化する問題が発生してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、部品点数を増やすことなく、通紙時の従動部材のスリップ現象を抑制し、良好な画像品質を得ることのできる定着装置及び該定着装置を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。なお、カッコ内に本発明を実施するための形態において対応する部位及び符号等を示す。
〔1〕 回転する定着部材(定着ベルト21、定着ローラ)と、前記定着部材を押圧して通過する記録媒体(記録媒体P)上の未定着トナー(トナー像T)を該記録媒体に定着させるニップ部を形成する加圧部材(加圧ローラ31)と、前記定着部材を加熱する加熱手段(ヒータ25)と、を備え、前記定着部材(前記定着ローラの場合)又は加圧部材は、少なくとも円筒状の芯金(芯金32)と、該芯金の外周上に設けられる弾性層(弾性層33)と、からなるローラ部材であって、非通紙部の少なくとも軸方向の一部における前記芯金の外径(外径RO1)が通紙部におけるその外径(外径RO2)よりも大きく、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部における前記弾性層の厚さ(厚さt1)が通紙部におけるその厚さ(厚さt2)よりも薄くなっていることを特徴とする定着装置(定着装置20、図2〜図5)。
〔2〕 前記ローラ部材(加圧ローラ31)は、その外周面が軸方向に略平坦であることを特徴とする前記〔1〕に記載の定着装置(図3〜図5)。
〔3〕 前記芯金は、軸方向で一定の厚みとなっていることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の定着装置(図3,図5)。
〔4〕 前記芯金は、軸方向で内径(内径RI)が一定であって、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部における厚さが通紙部における厚さよりも厚くなっていることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の定着装置(図4)。
〔5〕 前記芯金は、非通紙部における外径が前記通紙部側からローラ端部側に向かうにつれて徐々に大きくなっており、前記弾性層は、前記非通紙部における厚さが前記通紙部側からローラ端部側に向かうにつれて徐々に薄くなっていることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の定着装置(図5)。
〔6〕 前記ローラ部材は、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部の表面が前記通紙部表面と異なる材料で構成されていることを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の定着装置(図6〜図8)。
〔7〕 前記ローラ部材は、前記通紙部表面が前記弾性層上に形成される離型層(離型層34)で構成されており、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部の表面が該離型層よりも摩擦係数の大きな材料で構成されていることを特徴とする前記〔6〕に記載の定着装置(図6〜図8)。
〔8〕 前記ローラ部材における前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部の表面は、前記弾性層が露出していることを特徴とする前記〔7〕に記載の定着装置(図7,図8)。
〔9〕 前記ローラ部材における弾性層は、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部と前記通紙部とで硬度が異なる材料で形成されていることを特徴とする前記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の定着装置。
〔10〕 前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の定着装置(定着装置20)を備えることを特徴とする画像形成装置(画像形成装置1、図1)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の定着装置によれば、定着部材、加圧部材いずれかのローラ部材において、非通紙部の少なくとも軸方向の一部における前記芯金の外径が通紙部におけるその外径よりも大きく、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部における前記弾性層の厚さが通紙部におけるその厚さよりも薄くなっているので、ローラの総外径を変えることなく、非通紙部の軸上硬度を増加させることができる。その結果、定着部材と加圧部材の間でニップ部を形成する際に非通紙部(例えば軸方向の端部)に押圧力がより集中するようになり、これより通紙時に、従動部材に対して強い駆動力を与えられ、スリップすることなく定着動作を行うことができる。
本発明の画像形成装置によれば、本発明の定着装置を備えているので、良好な画像品質の画像形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る画像形成装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明に係る定着装置の基本構成(1)を示す断面図である。
【図3】本発明の定着装置に用いられる加圧ローラの構成例(1)を示す断面図である。
【図4】本発明の定着装置に用いられる加圧ローラの構成例(2)を示す断面図である。
【図5】本発明の定着装置に用いられる加圧ローラの構成例(3)を示す断面図である。
【図6】本発明の定着装置に用いられる加圧ローラの表面状態の構成例(1)を示す外観図である。
【図7】本発明の定着装置に用いられる加圧ローラの表面状態の構成例(2)を示す外観図である。
【図8】図7の加圧ローラの層構成を示す断面図である。
【図9】本発明に係る定着装置の基本構成(2)を示す断面図である。
【図10】本発明に係る定着装置の基本構成(3)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る定着装置及び画像形成装置の構成について説明する。
図1にて、本発明に係る画像形成装置全体の構成例について説明する。
図1に示すように、画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
【0015】
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像部76、クリーニング部77、除電部(不図示である。)等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)がおこなわれて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
【0016】
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、不図示の駆動モータによって図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
【0017】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0018】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である。)。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
【0019】
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
【0020】
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
【0021】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
【0022】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、装置本体1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
【0023】
レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0024】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ベルト21及び加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0025】
つぎに、本発明に係る定着装置について説明する。
図2は、本発明に係る定着装置の基本構成を示す断面図である。
図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21、加熱部材22、補強部材23、ニップ部を形成する当接部材26、熱源としてのヒータ25、加圧部材としての加圧ローラ31、定着ベルト21の温度を検知してヒータ25を制御するための温度センサ(不図示)などから構成されている。
【0026】
ここで、定着部材としての定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状ベルトであって、図2中の矢印方向(反時計方向)に回転(走行)する。定着ベルト21は、基材上に弾性層、離型層が順次積層されていて、その全体の厚さが1mm以下に設定されている。
【0027】
定着ベルト21の基材は、層厚が30〜100μmであって、ニッケル、ステンレス等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。
また、定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、ニップ部における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。
定着ベルト21の離型層は、層厚が10〜50μmであって、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナー(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保される。
【0028】
また、定着ベルト21の直径は15〜120mmになるように設定されている。本実施形態では、定着ベルト21の直径は例えば30mmに設定されている。
定着ベルト21の内部(内周面側)には、ヒータ25(熱源)、加熱部材22、補強部材23、当接部材26、等が固設されている。これにより、定着ベルト21は、補強部材23によって補強された当接部材26に押圧されて、加圧ローラ31との間にニップ部を形成する。
【0029】
加熱部材22は、例えば薄肉の金属板が曲げ加工されて形成された略パイプ状のものであって、ニップ部を除く位置で定着ベルト21の内周面に対向するように略円形に形成され、ニップ部の位置では当接部材26を収納して保持するように凹部が形成されている。また、加熱部材22は、その幅方向(軸方向)両端部が定着装置20の側板に固定支持されている。
【0030】
補強部材23は、ニップ部における当接部材26の強度を補強する断面形状が略T字型の部材であり、幅方向(軸方向)の長さが当接部材26の長手方向の長さと同等になるように形成されており、定着ベルト21の内周側においてその幅方向両端部が定着装置20の側板に固定支持されている。
【0031】
ヒータ25は、ハロゲンヒータやカーボンヒータであって、その両端部が定着装置20の側板に固定されている。そして、装置本体の電源部により出力制御されたヒータ25の輻射熱によって、加熱部材22が加熱される。さらに、加熱部材22によって定着ベルト21が全体的に加熱されて、加熱された定着ベルト21の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。なお、ヒータ25の出力制御は、定着ベルト21表面に対向するサーミスタ等の温度センサによるベルト表面温度の検知結果に基いておこなわれる。また、このようなヒータ25の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定することができる。
【0032】
加熱部材22は、ニップ部の位置を除く定着ベルト21の内周面全域に対向するように固設されていて、ヒータ25の輻射熱により加熱されて定着ベルト21を加熱する(熱を伝える。)。加熱部材22の材料としては、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属熱伝導体(熱伝導性を有する金属である。)を用いることが好ましい。
【0033】
当接部材26は、加圧ローラ31との対向面が、加圧ローラ31の曲率にならうように凹状に形成されている。これにより、記録媒体Pは加圧ローラ31の曲率にならうようにニップ部から送出されるために、定着工程後の記録媒体Pが定着ベルト21に吸着して分離しないような不具合を抑止することができる。
【0034】
ここで、当接部材26は、定着装置20に対して着脱自在に設置されている。具体的に、当接部材26は、その幅方向両端部が定着装置20の側板に、ネジやスナップフィット等によって着脱自在に固定されている。これにより、長時間の使用にともない定着ベルト21との摺接により当接部材26の磨耗が大きくなっても、当接部材26のみを効率的に交換(メンテナンス)することができる。
【0035】
なお、当接部材26と定着ベルト21とが摺接しても定着ベルト21の磨耗が軽減されるように、当接部材26の摺接面を摩擦係数の低い材料で形成したり、当接部材26と定着ベルト21との間に潤滑剤を塗布したりすることが好ましい。具体的に、当接部材26の摺接面に、テフロン(登録商標)、メッキ、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ガラスコート等の表面コートを施すことにより、摺接面の表面粗さをRz=64μm以下にすることが望ましい。
【0036】
加圧ローラ31は、直径が30mmであって、中空円筒形状の芯金32上に弾性層33を形成したものである。加圧ローラ31の弾性層33は、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の材料で形成されている。なお、弾性層33の表層にPFA、PTFE等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。
【0037】
また、加圧ローラ31は、その幅方向両端部が定着装置20の側板に軸受を介して回転自在であるとともに当接部材26側に移動可能に支持されている。そして、加圧ローラ31には、該加圧ローラ31の軸方向両端のローラ軸を当接部材26側に押圧する加圧手段(不図示)が付設されており、この加圧手段の押圧により加圧ローラ31は定着ベルト21を介して当接部材26に圧接して、双方の部材間に所望のニップ部を形成する。
【0038】
また、加圧ローラ31には不図示の駆動機構の駆動ギアに噛合するギアが設置されていて、加圧ローラ31は図2中の矢印方向(時計方向)に回転駆動される。なお、加圧ローラ31の内部に、ハロゲンヒータ等の熱源を設けることもできる。
【0039】
以上のように構成された定着装置20は、つぎのように動作する。
まず装置本体の電源スイッチが投入されると、ヒータ25に電力が供給されるとともに、加圧ローラ31は加圧手段により定着ベルト21を介して当接部材26を押圧した状態で、図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。これにより、加圧ローラ31との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動(回転)する。
その後、給紙部12から記録媒体Pが給送されて、2次転写ローラ89の位置で、記録媒体P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像(トナー像T)が担持された記録媒体Pは、不図示のガイド板に案内されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。
そして、加熱部材22(ヒータ25)によって加熱された定着ベルト21による加熱と、補強部材23によって補強された当接部材26と加圧ローラ31との押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、記録媒体Pは、ニップ部から排出される。
【0040】
このように、本実施形態における定着装置20は、定着ベルト21の一部のみが局所的に加熱されることなく、加熱部材22によって定着ベルト21が周方向にわたってほぼ全体的に加熱されることになるために、装置を高速化した場合であっても定着ベルト21が充分に加熱されて定着不良の発生を抑止することができる。すなわち、比較的簡易な構成で効率よく定着ベルト21を加熱できるために、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短縮化されるとともに、装置の小型化が達成される。
【0041】
ここで、定着ベルト21は、加圧ローラ31と当接部材26によってニップされており、加圧ローラ31が回転しようとするときに発生する摩擦力の反作用力によって定着ベルト21は回転するようになっているが、通紙時にはニップ部に記録媒体Pが挿入されて、ニップ部では大部分が定着ベルト21と加圧ローラ31が接触しなくなり、両者間の摩擦力が減少するため、従動部材としての定着ベルト21が駆動部材である加圧ローラ31に対してスリップし、画像品質を劣化させてしまう問題が発生した。
発明者らは、ニップ部における記録媒体が存在する通紙部以外の領域である非通紙部における定着ベルト21と加圧ローラ31の接触状態を改善すべく鋭意検討を行い、本発明を成すに至った。以下、本発明の要部構成について説明する。
【0042】
[加圧ローラの構成]
本発明は、定着装置20において、加圧ローラ31は、少なくとも円筒状の芯金32と、該芯金32の外周上に設けられる弾性層33と、からなるローラ部材であって、非通紙部の少なくとも軸方向の一部における芯金32の外径が通紙部におけるその外径よりも大きく、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部における弾性層33の厚さが通紙部におけるその厚さよりも薄くなっていることを特徴とするものである。
このとき、加圧ローラ31は、その外周面が軸方向に略平坦であることが好ましい。
これにより、加圧ローラ31の総外径を変えることなく、非通紙部の軸上硬度を増加させることができ、その結果、定着ベルト21と加圧ローラ31の間でニップ部を形成する際に非通紙部(例えば軸方向の端部)に押圧力がより集中するようになり、これより通紙時に、従動部材となる定着ベルト21に対して強い駆動力を与えられ、スリップすることなく定着動作を行うことが可能となる。
以下、加圧ローラ31の具体例を図面を参照しながら説明する。
【0043】
(第1実施形態)
図3は、本発明の定着装置に用いられる加圧ローラの構成例(1)を示す断面図である。ここでは、加圧ローラ31の回転中心軸の上半分の断面を示している。
図3に示すように、加圧ローラ31は、円筒形状の芯金32の外周上に、弾性層33、PFAなどのフッ素樹脂からなる離型層34が積層されたものとなっている。
【0044】
ここで、芯金32は、軸方向で一定の厚みとなっているとともに、非通紙部の少なくとも軸方向の一部における芯金32の外径RO1が通紙部におけるその外径RO2よりも大きくなっている。したがって、芯金32は、非通紙部の少なくとも軸方向の一部における内径RI1が通紙部におけるその内径RI2よりも大きくなっている。
【0045】
また、弾性層33について、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部における弾性層33の厚さt1が通紙部におけるその厚さt2よりも薄くなっている。なお、離型層34はごく薄い層である。
【0046】
これにより、前記非通紙部における芯金32の外径RO1と弾性層33の厚さt1の合計と、前記通紙部における芯金32の外径RO2と弾性層33の厚さt2の合計はほぼ等しくなり、加圧ローラ31は、その外周面が軸方向に略平坦となっている。あるいは、その外周面の軸方向両端部側がわずかに盛り上がった逆クラウン形状(つづみ形状)となるようにしてもよい。
【0047】
なお、ここでいう通紙部とは、ニップ部において理想的な状態で記録媒体Pが通過する領域のことである。そのため、実際の装置機構における加圧ローラ31の軸方向のガタ分、また搬送される記録媒体Pの主走査方向(軸方向)の通紙位置のばらつき分を考慮して、芯金32において小さい外径RO2となる領域をその通紙部よりも広めにとってある。そして、前記通紙部以外の領域である非通紙部において、これらのガタ分やばらつき分を考慮しても記録媒体Pが通過しない部分を大きな外径RO1となる領域としている。
また、非通紙部の少なくとも軸方向の一部とは、これらのガタ分やばらつき分を考慮しても記録媒体Pが通過しない部分であり、定着ベルト21がスリップしない程度の領域である。
【0048】
以上の構成により、芯金32の相対的に外径が大きくなっている部分(外径RO1の部分)は弾性層33の厚さt1が薄くなっていることから、この部分の軸上硬度は増加するようになる。このように、加圧ローラ31において、両端部の非通紙部のみ軸上硬度が上昇するので、従来と同じような定着方式で定着ベルト21を介して当接部材26に押し付けることで、両端部により荷重が集中する。加圧ローラ31の両端部が固いため、通紙部と同じ量を潰すためにはその部分に荷重が必要なためである。これにより、通紙時でも記録媒体Pが通過していない非通紙部で相手方の従動部材である定着ベルト21をしっかり駆動させてやることができ、通紙時にスリップすることが無くなり、良好な画像が得られる。
【0049】
また、後述の第2実施形態(図4)のように、芯金32の軸方向の厚さとして通紙部(中央部)のみを薄くし、非通紙部側の両端部を通紙部よりも厚い状態にすると、芯金32の非通紙部の方が通紙部よりも熱容量をもってしまうため、省エネ性などが悪化してしまうが、本実施形態では、芯金32の厚さを軸方向で一定の厚みとしているので、芯金32の非通紙部における無駄な熱容量の増加を省くことができ、昇温時間の短縮や消費電力を抑えて省エネ性を向上させることができる。
【0050】
なお、芯金32の外径をあまり極端に大きくし、弾性層33を薄くすると、両端部に荷重が集中しすぎてしまい、その部分の弾性層33を破壊してしまうようになり、また通紙部のニップ圧が減少し、画像品質も劣化してしまうようになる。そのため、通紙部と非通紙部での芯金32の外径差は2mm以内が望ましい。
【0051】
(第2実施形態)
図4は、本発明の定着装置に用いられる加圧ローラの構成例(2)を示す断面図である。
本実施形態の加圧ローラ31は、第1実施形態のものと芯金32の形状が異なるのみで、それ以外は第1実施形態と同じである。
すなわち、芯金32は、軸方向で内径RIが一定であって、非通紙部の少なくとも軸方向の一部における厚さが通紙部における厚さよりも厚くなっており、これにより非通紙部の少なくとも軸方向の一部における芯金32の外径RO1が通紙部におけるその外径RO2よりも大きくなっている。
【0052】
これにより、前記非通紙部における芯金32の外径RO1と弾性層33の厚さt1の合計と、前記通紙部における芯金32の外径RO2と弾性層33の厚さt2の合計はほぼ等しくなり、加圧ローラ31は、その外周面が軸方向に略平坦となっている。
【0053】
その結果、第1実施形態と同様に、芯金32の外径RO1の部分の軸上硬度は増加するので、通紙時でも記録媒体Pが通過していない非通紙部で相手方の従動部材である定着ベルト21をしっかり駆動させてやることができ、通紙時にスリップすることが無くなり、良好な画像が得られる。
【0054】
なお、本実施形態の芯金32は、外周面が平坦な芯金基材について通紙部の領域とそこから少し広げた領域の外周を細くすることで通紙部・非通紙部との外径差を設けるようにするとよい。これにより、芯金32の厚みが一定のまま非通紙部の外径を通紙部よりも大きくしようとすると、加工工程が複雑になり工数が掛かるところ、外径一定の芯金基材に対して例えば通紙部に対応する外周のみを切削すれば良くなり、第1実施形態の場合よりも芯金32の同軸度が良好となる。
【0055】
(第3実施形態)
図5は、本発明の定着装置に用いられる加圧ローラの構成例(3)を示す断面図である。
本実施形態の加圧ローラ31は、第1実施形態のものと芯金32及び弾性層33の形状がともに異なる。
すなわち、芯金32は、非通紙部における外径が前記通紙部側からローラ端部側に向かうにつれて徐々に大きくなっている。図5では、芯金32の軸方向で一定の厚みであるとともに、芯金32の外径が加圧ローラ31の通紙部で最小径RO2であり、非通紙部の所定位置までは最小径RO2一定であるが、該非通紙部の所定位置から軸方向端部に向かうに連れて一定の割合で外径が大きくなり、軸方向最端部となる位置(図中一番右側)で最大径RO1となっている。
なお、芯金32の内径は軸方向で一定として、非通紙部における外径のみが前記通紙部側からローラ端部側に向かうにつれて徐々に大きくなるようにしてもよい。
【0056】
弾性層33は、前記非通紙部における厚さが前記通紙部側からローラ端部側に向かうにつれて徐々に薄くなっている。図5では、弾性層33の厚さが加圧ローラ31の通紙部で最大厚さt2であり、非通紙部の所定位置までは最大厚さt2一定であるが、該非通紙部の所定位置から軸方向端部に向かうに連れて一定の割合で厚さが薄くなり、軸方向最端部となる位置(図中一番右側)で最小厚さt1となっている。
【0057】
これにより、加圧ローラ31の軸方向のどの位置においても芯金32の外径と弾性層33の厚さの合計はほぼ一定となり、加圧ローラ31は、その外周面が軸方向に略平坦となっている。
【0058】
その結果、第1実施形態と同様に、加圧ローラ31の非通紙部の端部側の所定領域の軸上硬度は増加するので、通紙時でも記録媒体Pが通過していない非通紙部で相手方の従動部材である定着ベルト21をしっかり駆動させてやることができ、通紙時にスリップすることが無くなり、良好な画像が得られる。
【0059】
また、第1,2実施形態のように、芯金32において階段状に外径を変化させた場合、加圧ローラ31として使用するとその段差部分の弾性層33に応力が集中し、その部分から弾性層33にゴム破壊が発生してしまうが、本実施形態のように芯金32の外径を徐々に大きくすることで、前記弾性層33の応力集中を緩和し弾性層33のゴム破壊を防止することが可能となる。また、第1,2実施形態のように、芯金32の外径が急激に大きくなる部分があると、その部分のニップ圧が不均一となるため、画像ムラの原因となるが、本実施形態のように芯金32の外径を徐々に大きくするようにするとニップ圧が局部的に不均一となることがなくなり、画像ムラを防ぐことも可能となる。
【0060】
ここで、前述した第1〜3実施形態において、加圧ローラ31は、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部の表面が前記通紙部表面と異なる材料で構成されていることが好ましい。すなわち、加圧ローラ31の軸方向中央部は通紙領域が含まれていることから、離型性の良い材料で構成する必要があり、一方、端部側は非通紙部であることから離型性は必要なく、定着ベルト21を駆動させるのに強い摩擦力を生じさせる材料で構成する(図6〜図8)。
【0061】
図6は、その構成例を示す加圧ローラ31の外観図である。
図6に示すように、加圧ローラ31の軸方向中央領域には、フッ素チューブ被覆が施されることにより離型層34が形成されている。このフッ素チューブで被覆される領域は、前述したように、加圧ローラ31の軸方向のガタ分や記録媒体P通過時の主走査方向(軸方向)の通過位置のばらつき分を考慮して、通紙部(用紙幅)よりも僅かに広い領域となっている。
【0062】
また、非通紙部のうち、離型層34よりも軸方向端部側の領域は、フッ素チューブとは別材質からなる高摩擦表面層35となっている。このとき、高摩擦表面層35は、前記フッ素チューブなどのフッ素樹脂よりも摩擦係数の大きな材料からなることが好ましく、例えば通紙部と共通の弾性層33の上に、高摩擦塗料をコーティングして形成してもよいし、高摩擦ゴムをさらに加硫して形成してもよい。あるいは、芯金32近傍の弾性層33には低熱容量のシリコーンゴムを使用し、非通紙部はフッ素チューブの被覆は行わず、その代わりに低熱容量タイプのシリコーンゴム層(弾性層33)の上に高摩擦係数のシリコーンゴムを形成することが好適である。
【0063】
この構成により、加圧ローラ31の非通紙部の端部側の所定領域の軸上硬度は増加していることに加えて、その領域のローラ表面が通紙部の離型層34よりも高摩擦係数化されているため、通紙時における従動部材である定着ベルト21のスリップをより確実に防止することができる。
【0064】
図7は、別の構成例を示す加圧ローラ31の外観図であり、図8は、その断面図である。
図7,図8(b)に示すように、加圧ローラ31の軸方向中央領域(通紙部)には、図6の場合と同様に、フッ素チューブ被覆が施されることにより離型層34が形成されている。
【0065】
また、図7,図8(a)に示すように、非通紙部のうち、離型層34よりも軸方向端部側の領域(加圧ローラ31における前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部の表面)は、弾性層33が露出している。
【0066】
これによっても、加圧ローラ31の非通紙部の端部側の所定領域の軸上硬度は増加していることに加えて、その領域のローラ表面が通紙部の離型層34よりも高摩擦係数化された状態となるため、通紙時における従動部材である定着ベルト21のスリップをより確実に防止することができる。
【0067】
また、この構成によれば、非通紙部の高摩擦係数化の一つとして、該非通紙部を別部材や別材料で構成するのではなく、フッ素チューブの被覆を予め行わないか、あるいはフッ素チューブで軸方向全体を被覆した後に非通紙部のみこのフッ素チューブ被覆を剥してやればよく、簡易な方法で非通紙部の摩擦係数を大きくすることが可能である。
【0068】
またさらに、加圧ローラ31における弾性層33は、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部と前記通紙部とで硬度が異なる材料で形成されていることが好ましい。弾性層33を構成する材料としては、例えば、通紙部には低硬度で低熱容量タイプのシリコーンゴム、非通紙部には高硬度で高摩擦係数のシリコーンゴムなどを用いるとよい。
【0069】
これにより、加圧ローラ31の非通紙部により荷重をかけて使用しようとしても、非通紙部の芯金32の外径を大きくし弾性層33を薄くする方法では限度がある場合に、弾性層33のゴム硬度自体を通紙部と非通紙部で差を設けることにより、その対応が可能となる。また、加圧ローラ31の軸方向において芯金32の外径と弾性層33の厚さの関係を大きく変化させなくても、弾性層33に使用するゴム硬度を通紙部と非通紙部で変えることで、ニップ部形成時に非通紙部により荷重を掛かることができるため、通紙時に定着ベルト21のスリップを防止することが可能となる。
【0070】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0071】
例えば、定着装置20の基本構成は、図2に示したものに限定されるものではなく、例えば図9に示すように、図2のヒータ25に替えて、電磁誘導加熱方式の誘導加熱部50を加熱部材22の外周側に配置して、該誘導加熱部50により加熱部材22を介して定着ベルト21を加熱するようにしてもよい。それ以外の構成は図2に示したものと同じである。なお、補強部材23を省略してもよい。
【0072】
また、定着装置20の基本構成として、図10に示す構成としてもよい。ここでは、図2に示す構成において、当接部材26を省略し、ニップ部において加熱部材22が定着ベルト21を介して加圧ローラ31と当接している。このとき、加熱部材22は断面が略円形であってニップ部に対応する位置が平面となるように形成されている。また、補強部材23がニップ部位置の加熱部材22を裏面側から支持する構成となっており、補強部材23と加熱部材22との間に加熱効率を低下させないように断熱部材27が設けられている。それ以外の構成は図2に示したものと同じである。
【0073】
また、定着ローラ、加熱ローラからなる複数のローラに掛け回される定着ベルトと、該定着ベルトを介して前記定着ローラを押圧してニップ部を形成する加熱ローラと、からなるベルト定着装置における加圧ローラまたは定着ローラに本発明を適用してもよい。
あるいは、定着ローラと加圧ローラとが直接当接してニップ部を形成するローラ・ローラ方式の定着装置における加圧ローラまたは定着ローラに本発明を適用してもよい。
加圧部材として、加熱ローラ31に替えて加圧ベルト方式の構成としてもよい。
【0074】
また、前述した実施形態では、ニップ部の中央が通紙部となる方式を前提とした構成を示したが、ニップ部の軸方向のどちらかの端部側を基準にした通紙方式(すなわち端部側が通紙部となる方式)の場合にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 画像形成装置(装置本体)
3 露光部
4Y,4M,4C,4K 作像部
5Y,5M,5C,5K 感光体ドラム
12 給紙部
20 定着装置
21 定着ベルト(定着部材)
22 加熱部材
23 補強部材
25 ヒータ(熱源)
26 当接部材
27 断熱部材
31 加圧ローラ(加圧部材)
32 芯金
33 弾性層
34 離型層
35 高摩擦表面層
50 誘導加熱部
75 帯電部
76 現像装置
77 クリーニング部
78 中間転写ベルト
79Y,79M,79C,79K 1次転写バイアスローラ
80 中間転写クリーニング部
82 2次転写バックアップローラ
83 クリーニングバックアップローラ
84 テンションローラ
85 中間転写ユニット
89 2次転写ローラ
97 給紙ローラ
98 レジストローラ対
99 排紙ローラ対
100 スタック部
101 ボトル収納部
102Y,102M,102C,102K トナーボトル
P 記録媒体
T トナー(トナー像)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開平11−2982号公報
【特許文献2】特開2008−165102号公報
【特許文献3】特開2009−104045号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する定着部材と、
前記定着部材を押圧して通過する記録媒体上の未定着トナーを該記録媒体に定着させるニップ部を形成する加圧部材と、
前記定着部材を加熱する加熱手段と、を備え、
前記定着部材又は加圧部材は、少なくとも円筒状の芯金と、該芯金の外周上に設けられる弾性層と、からなるローラ部材であって、非通紙部の少なくとも軸方向の一部における前記芯金の外径が通紙部におけるその外径よりも大きく、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部における前記弾性層の厚さが通紙部におけるその厚さよりも薄くなっていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ローラ部材は、その外周面が軸方向に略平坦であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記芯金は、軸方向で一定の厚みとなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記芯金は、軸方向で内径が一定であって、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部における厚さが通紙部における厚さよりも厚くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項5】
前記芯金は、非通紙部における外径が前記通紙部側からローラ端部側に向かうにつれて徐々に大きくなっており、前記弾性層は、前記非通紙部における厚さが前記通紙部側からローラ端部側に向かうにつれて徐々に薄くなっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記ローラ部材は、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部の表面が前記通紙部表面と異なる材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記ローラ部材は、前記通紙部表面が前記弾性層上に形成される離型層で構成されており、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部の表面が該離型層よりも摩擦係数の大きな材料で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記ローラ部材における前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部の表面は、前記弾性層が露出していることを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
前記ローラ部材における弾性層は、前記非通紙部の少なくとも軸方向の一部と前記通紙部とで硬度が異なる材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の定着装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−103467(P2012−103467A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251697(P2010−251697)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】