説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】加熱回転体の温度が過度に上昇することを迅速に抑制することができる定着装置を提供すること。
【解決手段】加熱回転体9aと、加熱回転体9aに対向して配置され、加熱回転体9aとの間に定着ニップFを形成する加圧回転体9bと、加熱回転体9aの外面から所定距離離間して前記外面に沿って配置され、加熱回転体9aを発熱させるための磁束を発生させる誘導コイル71と、磁性体コア部72であって少なくともその一部のキュリー温度が加熱回転体9aが被転写材Tを定着させる定着温度になった時の磁性体コア部72の温度よりも高く且つ加熱回転体9aがその耐熱温度になった場合の磁性体コア部72の温度よりも低い磁性体コア部72と、磁性体コア部72よりも熱伝導率が高い熱伝導性部材781、782であって、加熱回転体9aの外面に対向すると共に磁性体コア部72に当接して配置される熱伝導性部材781、782と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置においては、熱容量を小さくすることができるベルト方式を備えた定着装置が注目されている。また、近年、急速加熱や高効率加熱の可能性をもった電磁誘導加熱(IH;induction heating)方式が注目されている。
【0003】
電磁誘導加熱方式の定着装置においては、定着装置に搬送(通紙)される被転写材としての用紙の幅(用紙の搬送方向に垂直な方向の用紙の幅:通紙幅)に合わせて、用紙が通過する通紙領域(第1領域)の外側の領域(非通紙領域、第2領域)の温度が過度に上昇することを抑制するために、非通紙領域と通紙領域とにおける加熱回転体の発熱量を調整することができる技術が提案されている。
【0004】
また、電磁誘導加熱方式の定着装置において、加熱回転体と、加圧回転体と、加熱回転体を発熱させるための磁束を発生させる誘導コイルと、キュリー温度に達すると透磁率が所定値まで低下する磁性材料により形成される磁性体コア部と、を備える定着装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載される定着装置においては、用紙が通過しないことで加熱回転体の温度が上昇した非通紙領域において、磁性体コア部がキュリー温度以上になった場合に磁性体コア部の透磁率が低下することで、加熱回転体の温度が過度に上昇することを抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−198665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される定着装置においては、磁性体コア部には、磁性体コア部の加熱回転体に近い部分から離れた部分に向かって、加熱回転体からの熱が伝導される。磁性体コア部の加熱回転体から離れた部分においては、キュリー温度以上の温度に達するのに時間を要する。そのため、非通紙領域において、加熱回転体の温度が過度に上昇することを迅速に抑制することができない可能性がある。
従って、加熱回転体の温度が過度に上昇することを迅速に抑制することができる定着装置が望まれている。
【0007】
本発明は、少なくともその一部がキュリー温度に達すると透磁率が低下する磁性材料により形成される磁性体コア部を備え、加熱回転体の温度が過度に上昇することを迅速に抑制することができる定着装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、加熱回転体と、前記加熱回転体に対向して配置され、前記加熱回転体との間に定着ニップを形成する加圧回転体と、前記加熱回転体の外面から所定距離離間して前記外面に沿って配置され、前記加熱回転体を発熱させるための磁束を発生させる誘導コイルと、磁性体コア部であって、少なくともその一部のキュリー温度が、前記加熱回転体が被転写材を定着させる定着温度になった時の前記磁性体コア部の温度よりも高く且つ前記加熱回転体がその耐熱温度になった場合の前記磁性体コア部の温度よりも低い磁性体コア部と、前記磁性体コア部よりも熱伝導率が高い熱伝導性部材であって、前記加熱回転体の外面に対向すると共に、前記磁性体コア部に当接して配置される熱伝導性部材と、を備える定着装置に関する。
【0009】
また、前記磁性体コア部は、前記誘導コイルの内周縁の近傍に配置されると共に前記誘導コイルを挟まずに前記加熱回転体の外面から所定距離離間して前記加熱回転体の外面に対向する第1コア部を備え、前記熱伝導性部材は、前記第1コア部に当接して配置されることが好ましい。
【0010】
また、前記磁性体コア部は、前記誘導コイルの外周縁の近傍に配置されると共に前記誘導コイルを挟まずに前記加熱回転体の外面から所定距離離間して前記加熱回転体の外面に対向する第2コア部を備え、前記熱伝導性部材は、前記第2コア部に当接して配置されることが好ましい。
【0011】
また、前記熱伝導性部材は、前記加熱回転体側において前記第2コア部から離間すると共に、前記加熱回転体とは反対側において前記第2コア部に当接することが好ましい。
【0012】
また、前記熱伝導性部材は、前記加熱回転体の外面に沿って延びていることが好ましい。
【0013】
また、前記加熱回転体の外面に形成され、被転写材を前記定着ニップに搬送される場合における前記被転写材が通過する領域である第1領域と、前記加熱回転体の外面に形成され、前記第1領域から見て前記被転写材の搬送方向に直交する方向である直交方向の外側の領域である第2領域と、を備え、前記熱伝導性部材は、前記磁性体コア部における前記第2領域に対応する位置に配置されることが好ましい。
【0014】
また、前記熱伝導性部材は、非磁性体材料で形成されることが好ましい。
【0015】
また、前記熱伝導性部材の前記加熱回転体側に前記加熱回転体の外面に対向して配置され、前記熱伝導性部材よりも熱を吸収しやすい輻射熱吸収部材を更に備えることが好ましい。
【0016】
本発明は、表面に静電潜像が形成される1又は複数の像担持体と、前記1又は複数の像担持体に形成された静電潜像をトナー画像として現像する現像器と、前記像担持体に形成されたトナー画像を直接的又は間接的にシート状の被転写材に転写する転写部と、前記定着装置と、を備える画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、少なくともその一部がキュリー温度に達すると透磁率が低下する磁性材料により形成される磁性体コア部を備え、加熱回転体の温度が過度に上昇することを迅速に抑制することができる定着装置を提供することができる。
また、本発明によれば、前記定着装置を備える画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態のプリンター1の各構成要素の配置を説明するための図である。
【図2】第1実施形態のプリンター1の定着装置9の各構成要素を説明するための断面図である。
【図3】図2に示す定着装置9から加熱回転体9aを取り外した状態で、加熱ユニット70を加圧ローラー9b側から視た図である。
【図4】図2に示す定着装置9の磁性体コア部72がキュリー温度に達した場合において磁性体コア部72を通過する磁束を説明する断面図である。
【図5】第2実施形態のプリンター1の定着装置9の各構成要素を説明するための断面図である。
【図6】第3実施形態のプリンター1の定着装置9の各構成要素を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1により、第1実施形態の画像形成装置としてのプリンター1の全体構造を説明する。図1は、本発明の第1実施形態のプリンター1の各構成要素の配置を説明するための図である。
【0020】
図1に示すように、第1実施形態の画像形成装置としてのプリンター1は、装置本体Mを備える。装置本体Mは、画像情報に基づいてシート状の被転写材としての用紙Tにトナー画像を形成する画像形成部GKと、用紙Tを画像形成部GKに給紙すると共にトナー画像が形成された用紙Tを排紙する給排紙部KHとを有する。
装置本体Mの外形は、筐体としてのケース体BDにより構成される。
【0021】
図1に示すように、画像形成部GKは、像担持体(感光体)としての感光体ドラム2と、帯電部10と、露光ユニットとしてのレーザースキャナーユニット4と、現像器16と、トナーカートリッジ5と、トナー供給部6と、ドラムクリーニング部11と、除電器12と、転写部としての転写ローラー8と、定着装置9とを備える。
【0022】
図1に示すように、給排紙部KHは、給紙カセット52と、用紙Tの搬送路Lと、レジストローラー対80と、排紙部50とを備える。
【0023】
以下、画像形成部GK及び給排紙部KHの各構成について詳細に説明する。
まず、画像形成部GKについて説明する。
画像形成部GKにおいては、感光体ドラム2の表面に沿って順に、図1において矢印で示した感光体ドラム2の回転方向に沿って上流側から下流側に順に、帯電部10による帯電、レーザースキャナーユニット4による露光、現像器16による現像、転写ローラー8による転写、除電器12による除電、及びドラムクリーニング部11によるクリーニングが行われる。
【0024】
感光体ドラム2は、円筒形状の部材からなり、感光体又は像担持体として機能する。感光体ドラム2は、搬送路Lにおける用紙Tの搬送方向に対して直交する方向に延びる回転軸を中心に、図1に示した矢印の方向に回転可能である。感光体ドラム2の表面には、静電潜像が形成され得る。
【0025】
帯電部10は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。帯電部10は、感光体ドラム2の表面を一様に負(マイナス極性)又は正(プラス極性)に帯電させる。
【0026】
レーザースキャナーユニット4は、露光ユニットとして機能するものであり、感光体ドラム2の表面から離間して配置される。
【0027】
レーザースキャナーユニット4は、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部機器から入力された画像情報に基づいて、感光体ドラム2の表面を走査露光することで感光体ドラム2の表面に静電潜像を形成することができる。
【0028】
現像器16は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。現像器16は、感光体ドラム2に形成された静電潜像を単色(通常はブラック)のトナーを用いて現像して、単色のトナー画像を感光体ドラム2の表面に形成する。現像器16は、感光体ドラム2の表面に対向配置された現像ローラー17、トナー攪拌用の攪拌ローラー18等を有している。
【0029】
トナーカートリッジ5は、現像器16に対応して設けられており、現像器16に対して供給されるトナーを収容する。
【0030】
トナー供給部6は、トナーカートリッジ5及び現像器16に対応して設けられており、トナーカートリッジ5に収容されたトナーを現像器16に対して供給する。
【0031】
転写ローラー8は、感光体ドラム2の表面に形成されたトナー画像を用紙Tに転写させる。転写ローラー8は、感光体ドラム2に対して当接した状態で回転可能である。
【0032】
感光体ドラム2と転写ローラー8との間には、転写ニップNが形成される。転写ニップNにおいて、感光体ドラム2に形成されたトナー画像が用紙Tに転写される。
除電器12は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。
ドラムクリーニング部11は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。
【0033】
定着装置9は、用紙Tに転写されたトナー画像を構成するトナーを溶融及び加圧して、用紙Tに定着させる。
定着装置9の詳細については後述する。
【0034】
次に、給排紙部KHについて説明する。
図1に示すように、装置本体Mの下部には、用紙Tを収容する給紙カセット52が配置される。給紙カセット52には、用紙Tが積層された状態で載置される載置板60が配置される。載置板60に載置された用紙Tは、カセット給紙部51により搬送路Lに送り出される。カセット給紙部51は、載置板60上の用紙Tを取り出すための前送りコロ61と、用紙Tを1枚ずつ搬送路Lに送り出すための給紙ローラー対63とからなる重送防止機構を備える。
【0035】
装置本体Mの上部には、排紙部50が設けられる。排紙部50は、第3ローラー対53により用紙Tを装置本体Mの外部に排紙する。排紙部50の詳細については後述する。
【0036】
用紙Tを搬送する搬送路Lは、カセット給紙部51から転写ニップNまでの第1搬送路L1と、転写ニップNから定着装置9までの第2搬送路L2と、定着装置9から排紙部50までの第3搬送路L3と、第3搬送路L3を上流側から下流側へ搬送する用紙を、表裏反転させて第1搬送路L1に戻す戻し搬送路Lbとを備える。
【0037】
また、第1搬送路L1の途中には、第1合流部P1が設けられている。第3搬送路L3の途中には、第1分岐部Q1が設けられている。第1分岐部Q1は、戻し搬送路Lbが第3搬送路L3から分岐する分岐部で、第1ローラー対54a及び第2ローラー対54bを有する。第1ローラー対54aの一方のローラーと第2ローラー対54bの一方のローラーとは兼用される。
【0038】
第1搬送路L1の途中(詳細には、第1合流部P1と転写ニップNとの間)には、用紙Tを検出するためのセンサー(不図示)と、用紙Tのスキュー(斜め給紙)補正や画像形成部GKにおけるトナー画像の形成と用紙Tの搬送のタイミングを合わせるためのレジストローラー対80とが配置される。
【0039】
第3搬送路L3の用紙搬送方向側の端部には、排紙部50が形成される。排紙部50は、装置本体Mの上部に配置される。排紙部50は、第3搬送路L3を搬送される用紙Tを第3ローラー対53によって装置本体Mの外部に排紙する。
【0040】
排紙部50の開口側には、排紙集積部M1が形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mの上面(外面)に設けられている。
なお、各搬送路の所定位置には用紙検出用のセンサー(不図示)が配置される。
【0041】
次に、本実施形態のプリンター1の特徴部分である定着装置9に係る構成について詳細に説明する。図2は、第1実施形態のプリンター1の定着装置9の各構成要素を説明するための断面図である。図3は、図2に示す定着装置9から加熱回転体9aを取り外した状態で、加熱ユニット70を加圧ローラー9b側から視た図である。図4は、図2に示す定着装置9の磁性体コア部72がキュリー温度に達した場合において磁性体コア部72を通過する磁束を説明する断面図である。
【0042】
図2に示すように、定着装置9は、加熱回転体9aと、加熱回転体9aに圧接(当接)される加圧回転体としての加圧ローラー9bと、加熱ユニット70とを備える。
【0043】
加熱回転体9aは、その回転軸J1側から見た場合に環状である。加熱回転体9aは、第1周方向R1に回転可能である。加熱回転体9aは、後述する加熱ユニット70を用いることで、電磁誘導を利用した電磁誘導加熱(IH;induction heating)により発熱される。
加熱回転体9aは、定着側ローラー92と、定着側ローラー92の外周面を覆うように配置される加熱回転ベルト93と、を備える。
【0044】
図2に示すように、定着側ローラー92は、円筒状に形成される。定着側ローラー92は、第1周方向R1に直交する方向D2に平行な第1回転軸J1を中心に、第1周方向R1に回転可能である。定着側ローラー92は、第1回転軸J1方向に延びている。本実施形態においては、第1周方向R1の接線に直交する直交方向又は第1回転軸J1方向を「用紙幅方向D2」ともいう。用紙幅方向D2と第1回転軸J1方向とは、略一致している。
【0045】
定着側ローラー92は、定着側ローラー本体921と、第1回転軸J1と同軸の軸部材922と、を有する。定着側ローラー本体921は、円筒状の金属部材と、金属部材の外周面に形成される弾性層と、を有する。
【0046】
定着側ローラー92の軸部材922は、定着側ローラー本体921の両端部から第1回転軸J1方向の外側それぞれに突出している。定着側ローラー92の軸部材922は、定着装置9のケースやその他の部材により回転可能に支持される。これにより、定着側ローラー92は、第1回転軸J1を中心に回転可能となっている。
【0047】
図2に示すように、加熱回転ベルト93は、その回転軸側から見た場合に環状(無端ベルト状)である。加熱回転ベルト93は、第1周方向R1に回転可能である。加熱回転ベルト93は、定着側ローラー92の外周面を覆うように定着側ローラー92の外周面に沿って配置される。加熱回転ベルト93の内周面には、定着側ローラー92の外周面が当接する。加熱回転ベルト93は、耐熱性を有する。
【0048】
本実施形態においては、加熱回転ベルト93の基材は、ニッケル等の強磁性材料により形成される。加熱回転ベルト93は、後述する加熱ユニット70の誘導コイル71により発生される磁束が通る領域に配置されると共に、その基材が強磁性材料により構成されることで、加熱ユニット70の誘導コイル71により発生される磁束の磁路を形成する。誘導コイル71により発生される磁束は、磁路を形成する加熱回転ベルト93に沿って通過する(導かれる)。また、加熱回転ベルト93は基材の外周面に形成される弾性層と、弾性層の外周面に形成される離型層と、をさらに有する。
【0049】
加熱回転ベルト93には、後述する誘導コイル71により発生された加熱回転ベルト93を通過する磁束による電磁誘導によって、渦電流(誘導電流)が発生する。加熱回転ベルト93に渦電流が流れることで、加熱回転ベルト93が有する電気抵抗により、加熱回転ベルト93にはジュール熱が発生する。
【0050】
加圧ローラー9bは、円筒状に形成される。加圧ローラー9bは、加熱回転体9aの垂直方向下方側に且つ定着側ローラー92に対向して配置される。加圧ローラー9bは、用紙幅方向D2に平行な第2回転軸J2を中心に、第2周方向R2に回転可能である。加圧ローラー9bは、第2回転軸J2方向に延びている。
【0051】
加圧ローラー9bは、その外周面が加熱回転ベルト93の外周面(外面)に当接するように配置される。加圧ローラー9bは、加熱回転ベルト93を介して定着側ローラー92を押圧するように配置される。加圧ローラー9bは、定着側ローラー92との間に加熱回転ベルト93の一部を挟み込んで、加熱回転ベルト93と定着ニップFを形成する。定着ニップFは、用紙Tを挟み込むと共に、用紙Tを搬送する。
【0052】
加圧ローラー9bは、加圧ローラー本体941と、第2回転軸J2と同軸の軸部材942と、を有する。加圧ローラー本体941は、円筒状の金属部材と、金属部材の外周面に形成される弾性層と、弾性層の外周面に形成される離型層と、を有する。
【0053】
加圧ローラー9bの軸部材942には、加圧ローラー9bを回転駆動させる回転駆動部(不図示)が接続される。この回転駆動部により、加圧ローラー9bが第2周方向R2に所定速度で回転駆動されると共に、加圧ローラー9bの回転に従動して、加圧ローラー9bの外周面に当接する加熱回転ベルト93が回転される。加熱回転ベルト93が回転されることにより、加熱回転ベルト93の内周面に当接する定着側ローラー92は、加熱回転ベルト93の回転に従動して回転される。
【0054】
定着ニップFに搬送される用紙Tは、定着装置9の通紙領域(第1領域)内を通過して搬送された場合に、トナー画像が定着される。「通紙領域」(第1領域)とは、用紙Tが定着ニップFに搬送される場合において、定着ニップFに搬送される用紙Tが加熱回転ベルト93と加圧ローラー9bとに挟まれて通過する領域のことである。また、通紙領域から見て用紙幅方向D2の外側の領域である用紙Tが通過しない領域を「非通紙領域」(第2領域)という。非通紙領域は、複数のサイズの用紙Tに対応して形成される。
【0055】
図3に示すように、用紙幅方向D2の長さが最大の用紙Tが定着ニップFに搬送される場合の通紙領域として、最大通紙領域901を設定する。最大通紙領域901は、プリンター1ごとにそれぞれ設定される。最大通紙領域901の用紙幅方向D2の外側の領域は、最大非通紙領域901dである。
【0056】
具体的には、加熱回転ベルト93の外周面には、加熱回転ベルト93の最大通紙領域901として、加熱側最大通紙領域901aが形成(設定)される。加圧ローラー9bの外周面には、加熱回転ベルト93の加熱側最大通紙領域901aに対応して、加圧回転体9bの最大通紙領域901として、加圧側最大通紙領域901bが形成(設定)される。加熱側最大通紙領域901aの用紙幅方向D2に平行な方向の長さを、「最大通紙幅W1」という。
【0057】
また、用紙幅方向D2の長さが最小の用紙Tが定着ニップFに搬送される場合の通紙領域として、最小通紙領域903を設定する。最小通紙領域903の用紙幅方向D2の外側の領域は、最小非通紙領域903dである。
【0058】
具体的には、加熱回転ベルト93の外周面には、加熱回転ベルト93の最小通紙領域903として、加熱側最小通紙領域903aが形成(設定)される。加圧ローラー9bの外周面には、加熱回転ベルト93の加熱側最小通紙領域903aに対応して、加圧側最小領域903bが形成(設定)される。加熱側最小通紙領域903aの用紙幅方向D2に平行な方向の長さを、「最小通紙幅W3」という。
【0059】
また、本実施形態の定着装置9においては、用紙幅方向D2の長さが最大長さよりも短く且つ最小長さ(最小幅)よりも長い長さである中間長さ(中間幅)の用紙Tが定着ニップFに搬送される場合の通紙領域として、中間通紙領域902(加熱側中間通紙領域902a、加圧側中間領域902b)を設定する。中間通紙領域902の用紙幅方向D2の外側の領域は、中間非通紙領域902dである。加熱側中間通紙領域902aの用紙幅方向D2に平行な方向の長さを、「中間通紙幅W2」という。
なお、用紙Tの通紙領域は、これに制限されず、各サイズの用紙Tに対応して適宜設定することができる。
【0060】
加熱ユニット70について説明する。図2及び図3に示すように、加熱ユニット70は、誘導コイル71と、磁性体コア部72と、熱伝導性部材としての第1熱伝導性部材781と、熱伝導性部材としての第2熱伝導性部材782と、輻射熱吸収部材としての第1輻射熱吸収層791と、輻射熱吸収部材としての第2輻射熱吸収層792と、を備える。
誘導コイル71は、加熱回転ベルト93の外周面から所定距離だけ離間すると共に、加熱回転ベルト93の外周面に沿って配置される。本実施形態においては、誘導コイル71を、あらかじめ線材を巻き回した形状に形成している。誘導コイル71は、その長手方向が用紙幅方向D2と平行になるように加熱ユニット70に配置される。なお、誘導コイル71を、平面視(図2の上方から視た場合)において、用紙幅方向D2に長い形状に線材を巻き回して形成してもよい。
【0061】
誘導コイル71は、用紙幅方向D2において加熱回転ベルト93の長さよりも長く形成される。誘導コイル71は、加熱回転ベルト93の垂直方向の上方側の略半周の外周面に対向して配置される。誘導コイル71は、用紙幅方向D2に延びる中央領域718を囲むように配置される。中央領域718は、加熱回転ベルト93の垂直方向の最も上方に位置する部分(搬送方向D1における略中央)の上方側において、誘導コイル71の線材が配置されない用紙幅方向D2に長い領域である。
【0062】
誘導コイル71は、誘導コイル71が加熱ユニット70に配置された際に、以下のような配置になるように形成されている。すなわち、誘導コイル71の内周縁(線材711Aが配置されている部位)は、中央領域718を囲む。誘導コイル71を構成する線材は、用紙幅方向D2に延びる。また、誘導コイル71を構成する線材は、誘導コイル71の内周縁から加熱回転ベルト93の周方向に沿って並ぶ。誘導コイル71の外周縁(線材711Bが配置されている部位)は、加熱回転ベルト93の外周面に対向する。
本実施形態においては、誘導コイル71は、耐熱性の樹脂材料により形成された不図示の支持部材の上に固定される。
【0063】
誘導コイル71は、不図示の誘導加熱用回路部に接続される。誘導コイル71には、誘導加熱用回路部から交流電流が印加される。誘導コイル71は、誘導加熱用回路部から交流電流が印加されることにより、加熱回転ベルト93を発熱させるための磁束を発生させる。例えば、誘導コイル71には、周波数が30kHz程度の交流電流が印加される。
【0064】
誘導コイル71により発生された磁束は、加熱回転ベルト93及び磁性体コア部72(後述)により形成された磁束の経路である磁路に導かれる。
【0065】
磁路は、誘導コイル71により発生された磁束が周回方向R3に周回するように、加熱回転ベルト93及び磁性体コア部72(後述)により形成される。周回方向R3とは、誘導コイル71の内周縁711Aの内側と外周縁711Bの外側とを通り誘導コイル71の線材の部分を囲むように周回する方向である。誘導コイル71により発生された磁束は、磁路を通過する。
【0066】
誘導コイル71により発生される磁束は、誘導加熱用回路部(不図示)から交流電流が印加されるため、交流電流のプラス又はマイナスへの周期的な変動により、その大きさ及び方向が変化する。加熱回転ベルト93には、この磁束の変化により誘導電流(渦電流)が発生する。
【0067】
磁性体コア部72は、図2に示すように、周回方向R3に周回する磁路を形成する。磁性体コア部72は、誘導コイル71により発生される磁束が通る領域に配置されると共に、強磁性材料を主体として形成されるため、誘導コイル71により発生される磁束の経路である磁路を形成する。
【0068】
磁性体コア部72は、第1コア部としてのセンターコア部73と、複数のアーチコア部74と、第2コア部としての一対のサイドコア部76とを有する。センターコア部73、アーチコア部74及びサイドコア部76は、例えば、フェライト粉末を焼結して成形される強磁性材料からなるフェライト製の磁性体コアを主体として構成される。
【0069】
また、センターコア部73、アーチコア部74及びサイドコア部76のキュリー温度は、加熱回転ベルト93(定着装置9)が用紙Tを定着させる定着温度になったときのコア部の温度よりも高く、且つ、加熱回転体9a(加熱回転ベルト93)が耐熱温度になったときのコア部の温度よりも低く設定される。具体的には、加熱回転ベルト93の定着温度(用紙Tにトナーを定着するのが可能な温度)を160度とすると、加熱回転ベルト93が定着温度(160℃)になった時の磁性体コア部72(センターコア部73又はサイドコア部76)の温度は120℃である。また、加熱回転ベルト93の耐熱温度は240℃である。この耐熱温度を超えると、加熱回転ベルト93を構成する弾性層の弾性が低下して加熱回転ベルト93の基層から剥がれたり、破損が生じたりする可能性が高くなる。そして、加熱回転ベルト93が耐熱温度(240℃)の時の磁性体コア部72(センターコア部73又はサイドコア部76)の温度は190℃である。したがって、磁性体コア部72(センターコア部73又はサイドコア部76)のキュリー温度は、120℃と190℃との間の温度に設定するのが好ましい。例えば、本実施形態では、磁性体コア部72(センターコア部73又はサイドコア部76)のキュリー温度は、160℃に設定されている。
【0070】
センターコア部73、アーチコア部74及びサイドコア部76のキュリー温度が加熱回転ベルト93が定着温度になったときのコア部の温度よりも高い場合には、ウォームアップ時において、加熱回転体9aの温度が定着温度に達するまでに、センターコア部73、アーチコア部74及びサイドコア部76の温度がキュリー温度に達しない。これにより、センターコア部73、アーチコア部74及びサイドコア部76がキュリー温度に達する前に、加熱回転体9aの温度を定着温度に迅速に上昇させることができる。
また、センターコア部73、アーチコア部74及びサイドコア部76のキュリー温度が加熱回転体9aの耐熱温度になったときのコア部の温度よりも低い場合には、耐熱温度に達する前にキュリー温度に達して、センターコア部73、アーチコア部74及びサイドコア部76の磁束を誘導する機能は、消失する。これにより、加熱回転体9aが耐熱温度に達する前に、加熱回転体9aの過度の温度上昇を確実に抑制することができる。
キュリー温度の設定は、例えば、フェライト粉末を焼結して成形される強磁性材料のフェライト組成を選択することにより好適に設定することができる。
【0071】
センターコア部73は、図2に示すように、誘導コイル71の内周縁711Aの近傍に配置される。センターコア部73は用紙幅方向D2に視た場合に、加熱回転体9aの垂直方向の上方側において、加熱回転体9aの用紙Tの搬送方向D1の略中央に配置される。すなわち、センターコア部73は、誘導コイル71の内周縁の内側の領域である中央領域718に配置されている。
【0072】
センターコア部73は、後述するアーチコア部74と加熱回転体9aとの間に配置され、後述するアーチコア部74とは別体である。センターコア部73は、誘導コイル71を挟まずに加熱回転体9aの外周面から所定距離離間して配置される。センターコア部73の下側の面は、加熱回転体9aの上方側の外周面に対向し、アーチコア部74よりも加熱回転体9aに近い位置に配置される。
【0073】
センターコア部73は、図3に示すように、用紙幅方向D2に長い略直方体形状であり、最大通紙領域901よりも長い。センターコア部73は、アーチコア部74と比べて容積を小さいので、アーチコア部74と比べて熱容量が小さい。
【0074】
センターコア部73は、図2に示すように、磁路の周回方向R3において、アーチコア部74と加熱回転体9aとの間の磁路を形成する。
【0075】
センターコア部73は、図2及び図3に示すように、最小通紙領域903の外側の最小非通紙領域903dにおいて、センターコア部上流側部材731と、センターコア部下流側部材732と、第1熱伝導性部材781とを有する。センターコア部上流側部材731及びセンターコア部下流側部材732それぞれは、最小非通紙領域903dにおいて、用紙幅方向D2に長い略直方体形状に形成される。センターコア部上流側部材731及びセンターコア部下流側部材732は、用紙Tの搬送方向D1に離間した状態で、互いに平行になるように配置されている。
【0076】
第1熱伝導性部材781は、センターコア部上流側部材731とセンターコア部下流側部材732との間に配置され、加熱回転体9aの外周面に対向する。なお、本実施形態においては、後述するように、第1熱伝導性部材781の加熱回転体9aの外周面に対向する側の外面には第1輻射熱吸収部材791が設けられている。本発明における「加熱回転体9aの外周面に対向する」には、第1熱伝導性部材781が加熱回転体9aの外周面に直接対向するのみならず、第1輻射熱吸収部材791を介して第1熱伝導性部材781が加熱回転体9aの外周面に対向する場合が含まれる。
【0077】
第1熱伝導性部材781は、センターコア部上流側部材731及びセンターコア部下流側部材732に挟み込まれるようにして、用紙Tの搬送方向D1の上流側及び下流側からセンターコア部上流側部材731の略全面及びセンターコア部下流側部材732の略全面に当接する。
【0078】
また、第1熱伝導性部材781は、用紙幅方向D2に長い略直方体形状に形成される。第1熱伝導性部材781は、図3に示す第1輻射熱吸収層791(後述)の奥側(紙面の裏側)に、第1輻射熱吸収層791に重なるように配置される。加熱ユニット70を加圧ローラー9b側から視た場合に、センターコア部上流側部材731及びセンターコア部下流側部材732と同様に、最小通紙領域903の外側の最小非通紙領域903dにおいて、第1熱伝導性部材781は、用紙幅方向D2に延びている。つまり、第1熱伝導性部材781は、最小通紙領域903の外側の最小非通紙領域903dにおいて、センターコア部上流側部材731及びセンターコア部下流側部材732に当接している。
【0079】
このように構成されることで、第1熱伝導性部材781は、加熱回転体9aからの熱(輻射熱)を、センターコア部上流側部材731及びセンターコア部下流側部材732に当接した部分からセンターコア部73に伝導させる。
【0080】
第1熱伝導性部材781は、非磁性体材料であり、センターコア部73よりも熱伝導率が高い部材である。
第1熱伝導性部材781は、センターコア部73よりも熱伝導率が高い部材であるため、加熱回転体9aからの熱をセンターコア部73に迅速に伝導させる。また、第1熱伝導性部材781は、センターコア部73の温度を下げる際には、センターコア部73から伝導された熱を迅速に伝達させる。
【0081】
第1熱伝導性部材781としては、例えば、アルミニウム、銅、カーボンなどの非磁性体材料であり、且つ、熱伝導率が10W/mKよりも大きいものが好ましい。なお、一般的なフェライトコアの熱伝導率は5.8W/mK以下であり、アルミニウムの熱伝導率は238W/mK程度であり、カーボンやカーボンナノチューブの熱電伝導率は3000〜5500W/mK程度である。
また、本実施形態においては、第1熱伝導性部材781の厚み(用紙Tの搬送方向D1の長さ)は、0.2mmから5mm程度である。
【0082】
第1熱伝導性部材781は、非磁性体材料で形成されるため、センターコア部73がキュリー温度に達しない場合には、磁束を導く機能を有さずに、加熱回転体9aからの熱をセンターコア部73に伝導させる。一方、センターコア部73がキュリー温度に達した場合には、第1熱伝導性部材781は、磁束を低減させ又は遮蔽する機能を発揮する。
【0083】
具体的には、センターコア部73がキュリー温度に達しない場合には、センターコア部73の磁束を誘導する機能により、磁束は、センターコア部73を通過する。第1熱伝導性部材781は、磁束を導かない状態で、加熱回転体9aからの熱をセンターコア部73に伝導させる(図2参照)。
【0084】
一方、センターコア部73がキュリー温度に達した場合には、センターコア部73の磁束を誘導する機能が消失されることにより、誘導コイル71により発生された磁束は、第1熱伝導性部材781を貫通する。
【0085】
第1熱伝導性部材781は、磁束が第1熱伝導性部材781を貫通(通過)することによって磁束遮蔽部材79に発生した誘導電流で、貫通した磁束に対して逆方向の磁束を発生させる。第1熱伝導性部材781は、錯交磁束(垂直な貫通磁束)をキャンセルする方向の磁束を発生させることで、磁路を通過する磁束を低減させ又は遮蔽する(図4参照)。
【0086】
第1熱伝導性部材781の加熱回転体9a側の表面には、図2及び図3に示すように、第1輻射熱吸収層791が設けられている。第1輻射熱吸収層791は、第1熱伝導性部材781の加熱回転体9a側の外面を覆うように配置される。
【0087】
第1輻射熱吸収層791は、加熱回転体9aの外周面に対向して配置される。第1輻射熱吸収層791は、加熱回転体9aからの熱(輻射熱)を吸収して、第1熱伝導性部材781に伝導させる。第1熱伝導性部材781に伝導された加熱回転体9aからの熱は、センターコア部73に伝導される。
また、第1輻射熱吸収層791は、第1熱伝導性部材781により伝導されたセンターコア部73からの熱を放射する。
【0088】
第1輻射熱吸収層791は、第1熱伝導性部材781よりも熱を吸収しやすい。具体的には、第1輻射熱吸収層791の熱の吸収率は、第1熱伝導性部材781の熱の吸収率よりも高い。
このように構成されることで、第1輻射熱吸収層791は、加熱回転体9aからの熱を迅速に吸収させることができる。
【0089】
第1輻射熱吸収層791は、非磁性体材料により形成される。
第1輻射熱吸収層791としては、例えば、厚さ20μm程度の黒色のコート層から形成される。第1輻射熱吸収層791における20μm程度の黒色のコート層の材料としては、耐熱性を有するフッ素樹脂の中に、輻射熱吸収性を有する平均粒径が0.1μm以下のカーボン粒子を分散させたコート剤を用いることができる。
【0090】
複数のアーチコア部74は、センターコア部73及び誘導コイル71を構成する線材を挟んで加熱回転ベルト93の外周面に対向して配置される。複数のアーチコア部74は、誘導コイル71から離間して配置される。複数のアーチコア部74それぞれは、センターコア部73及び誘導コイル71の上方側の外方において、加熱回転ベルト93の周面に沿うように、用紙Tの搬送方向D1の下流側から上流側にわたって一体的に形成されており、アーチ状に延びている。アーチコア部74は、水平部742と、傾斜部743とを有する。
【0091】
複数のアーチコア部74は、図2に示すように、用紙幅方向D2の所定位置において、磁路の周回方向R3に沿ってセンターコア部73に並んで形成される。複数のアーチコア部74それぞれは、磁路の周回方向R3において、誘導コイル71に対して加熱回転ベルト93とは反対側(誘導コイル71の外側)の磁路を形成する。
【0092】
また、複数のアーチコア部74それぞれは、図3に示すように、用紙幅方向D2に所定距離だけ離間して配置される。複数のアーチコア部74それぞれは、用紙幅方向D2に離間して周回方向R3において周回する複数の磁路を形成する。
【0093】
一対のサイドコア部76は、図2に示すように、磁路の周回方向R3において、加熱回転体9aとアーチコア部74との間における磁路を形成する。一対のサイドコア部76それぞれは、磁路の周回方向R3において、複数のアーチコア部74それぞれに並んで配置される。
【0094】
一対のサイドコア部76それぞれは、誘導コイル71の外周縁711Bの近傍において、誘導コイル71を挟まずに、加熱回転ベルト93の外周面から所定距離だけ離間して加熱回転ベルト93の外周面に対向して配置される。サイドコア部76の加熱回転ベルト93側の端部は、誘導コイル71の外周縁711Bの近傍において、アーチコア部74よりも加熱回転体9aに近い位置に配置される。
【0095】
一対のサイドコア部76それぞれは、用紙幅方向D2に長い略直方体形状で、且つ最大通紙領域901よりも長い。
【0096】
第2熱伝導性部材782は、図2に示すように、サイドコア部76に対してアーチコア部74とは反対側(サイドコア部76の下側)に配置される。第2熱伝導性部材782は、サイドコア部76の下面の略全面に当接する。
【0097】
第2熱伝導性部材782は、用紙幅方向D2に長い略直方体形状である。第2熱伝導性部材782は、図3に示すように、加熱ユニット70を加圧ローラー9b側から視た場合に、最小通紙領域903の外側の最小非通紙領域903dにおいて、用紙幅方向D2に延びている。つまり、第2熱伝導性部材782は、最小通紙領域903の外側の最小非通紙領域903dにおいて、サイドコア部76に当接している。
【0098】
第2熱伝導性部材782は、前述の第1熱伝導性部材781と同様に、非磁性体材料であり、サイドコア部76よりも熱伝導率が高い部材である。第2熱伝導性部材782の材質については、前述の第1熱伝導性部材781と同様であるため、第1熱伝導性部材781の説明を適用又は援用して、その説明を省略する。
また、本実施形態においては、第2熱伝導性部材782の厚み(上下方向の長さ)は、0.2mmから5mm程度である。
【0099】
第2熱伝導性部材782は、前述の第1熱伝導性部材781と同様に、非磁性体材料で形成されるため、サイドコア部76がキュリー温度に達した場合には、磁束を低減させ又は遮蔽する機能を発揮する。第2熱伝導性部材782の磁束を低減させ又は遮蔽する機能の説明については、前述の第1熱伝導性部材781と同様であるため、第1熱伝導性部材781の説明を適用又は援用して、その説明を省略する。
【0100】
第2熱伝導性部材782の加熱回転体9a側の表面には、第2輻射熱吸収層792が設けられている。第2輻射熱吸収層792は、第2熱伝導性部材782の加熱回転体9a側の外面を覆うように配置される。
【0101】
第2輻射熱吸収層792は、加熱回転体9aの外周面に対向して配置される。第2輻射熱吸収層792は、加熱回転体9aからの熱(輻射熱)を吸収して、第2熱伝導性部材782に伝導して、サイドコア部76に伝導させる。また、第2輻射熱吸収層792は、第2熱伝導性部材782により伝導されたサイドコア部76からの熱を放射する。第2輻射熱吸収層792は、前述の第1輻射熱吸収層791と同様の材質である。そのため、第2輻射熱吸収層792の材質については、第1輻射熱吸収層791の説明を適用又は援用して説明を省略する。
【0102】
次に、本実施形態の定着装置9を含むプリンター1の動作について説明する。
まず、プリンター1の受け付け部(不図示)は、プリンター1の電源がONの状態において、例えばプリンター1の外部に配置されている操作部(不図示)が操作されたことに基づいて発生する画像形成指示情報を受け付ける。
【0103】
次に、プリンター1は、印刷動作を開始する。
【0104】
そして、駆動制御部への電力の供給が開始されると、回転駆動部(不図示)により加圧ローラー9bが回転駆動される。加圧ローラー9bの回転駆動に伴って加熱回転体9aは、従動して回転される。
【0105】
次に、定着装置9は、発熱動作を開始する。
これにより、誘導コイル71には、誘導加熱用回路部(不図示)から交流電流が印加される。誘導コイル71は、加熱回転体9aを発熱させるための磁束を発生させる。
【0106】
誘導コイル71により発生された磁束は、図2に示すように、加熱回転体9aへ導かれる。加熱回転体9aに導かれた磁束は、磁路としての加熱回転体9a、サイドコア部76、アーチコア部74及びセンターコア部73を通る。
【0107】
用紙Tの通紙領域においては、誘導コイル71により発生された磁束は、磁路としての加熱回転体9a、サイドコア部76、アーチコア部74及びセンターコア部73に導かれる。
【0108】
そして、磁路を通過する磁束の大きさと方向が変化することにより、加熱回転体9aには、電磁誘導により渦電流(誘導電流)が発生する。加熱回転体9aには、通紙領域及び非通紙領域において、渦電流が流れることで、加熱回転体9aが有する電気抵抗によりジュール熱が発生する。
【0109】
次に、加熱回転体9aの回転により、加熱回転体9aの電磁誘導加熱(IH)により発熱された部分は、定着装置9の加熱回転体9aと加圧ローラー9bとにより形成される定着ニップFに向けて順次移動される。定着装置9は、定着ニップFにおいて、所定の温度になるように、誘導加熱用回路部(不図示)を制御している。
【0110】
そして、トナー画像が形成された用紙Tは、定着装置9の定着ニップFに導入される。定着ニップFにおいて、用紙Tに転写されたトナー像を構成するトナーが溶融し、トナーが用紙Tに定着される。
【0111】
用紙Tが通過する通紙領域においては、加熱回転体9aの外周面に用紙Tが接触することにより、加熱回転体9aから熱が奪われる。一方、用紙Tが通過しない非通紙領域においては、加熱回転体9aの外周面に用紙Tが接触しないため、加熱回転体9aの温度が過度に上昇する場合がある。特に小さいサイズの用紙Tが連続して印刷された場合には、非通紙領域が広範囲にわたっており、その広範囲な非通紙領域において加熱回転体9aの温度が過度に上昇しやすくなる。
【0112】
本実施形態においては、第1熱伝導性部材781は、加熱回転体9aの外周面に対向すると共に、センターコア部73に当接している。第1熱伝導性部材781は、センターコア部73に当接した状態で、最小非通紙領域903dにおいて、用紙幅方向D2に延びている。また、第1熱伝導性部材781の加熱回転体9a側の表面には、第1輻射熱吸収層791が設けられている。第1熱伝導性部材781の熱伝導率は、磁性体コア部72(センターコア部73)の熱伝導率よりも高い。
【0113】
また、第2熱伝導性部材782は、加熱回転体9aの外周面に対向すると共に、サイドコア部76に当接している。第2熱伝導性部材782は、サイドコア部76に当接した状態で、最小非通紙領域903dにおいて、用紙幅方向D2に延びている。第2熱伝導性部材782の加熱回転体9a側の表面には、第2輻射熱吸収層792が設けられている。第2熱伝導性部材782の熱伝導率は、磁性体コア部72(サイドコア部76)の熱伝導率よりも高い。
【0114】
また、第1輻射熱吸収層791及び第2輻射熱吸収層792は、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782よりも熱を吸収しやすい。
そのため、第1輻射熱吸収層791及び第2輻射熱吸収層792は、加熱回転体9aからの熱を効率よく吸収する。第1輻射熱吸収層791及び第2輻射熱吸収層792は、それぞれ、吸収した熱を、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782に迅速に伝導させる。
また、加熱回転体9aからの熱は、第1輻射熱吸収層791及び第2輻射熱吸収層792により、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782を伝導されて、センターコア部73及びサイドコア部76に伝導される。これにより、加熱回転体9aからの熱は、センターコア部73及びサイドコア部76に効率よく迅速に伝導される。また、センターコア部73及びサイドコア部76に伝導された熱は、アーチコア部74に伝導される。
【0115】
このように、第1熱伝導性部材781、第2熱伝導性部材782、第1輻射熱吸収層791及び第2輻射熱吸収層792は、加熱回転体9aからの熱を、センターコア部73、アーチコア部47及びサイドコア部76に効率よく迅速に伝導させることができる。これにより、用紙Tが通過しない非通紙領域において、センターコア部73、アーチコア部47及びサイドコア部76の温度をキュリー温度に迅速に上昇させることができる。
【0116】
本実施形態においては、センターコア部73、アーチコア部47及びサイドコア部76は、上述のように、キュリー温度に達した場合には、磁束を導く機能を消失する。つまり、センターコア部73、アーチコア部47及びサイドコア部76は、非通紙領域においては、キュリー温度に達した場合には、磁束を導く機能を有さなくなる。
【0117】
これにより、誘導コイル71により発生された磁束は、センターコア部73、アーチコア部47及びサイドコア部76に導かれなくなる。そのため、センターコア部73、アーチコア部47及びサイドコア部76が磁束を導く機能を有している場合と比べて、誘導コイル71により発生された磁束のループの形状は、大きくなり、磁束を効率的に導かなくなる。これにより、センターコア部73、アーチコア部47及びサイドコア部76の温度がキュリー温度に達した非通紙領域において、加熱回転体9aを発熱させる効率が低下することで、加熱回転体9aの温度が過度に上昇することが一層抑制される。
【0118】
更に、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782は、センターコア部73、アーチコア部47又はサイドコア部76が磁束を誘導する機能を有さない場合において、誘導コイル71により発生された磁束のうちの少なくとも一部が通過可能な位置に配置されている。
そして、センターコア部73及びサイドコア部76がキュリー温度に達すると、センターコア部73及びサイドコア部76における磁束を導く機能は、消失する。誘導コイル71により発生された磁束のうちの少なくとも一部は、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782を通過する。
【0119】
各サイズの用紙Tの非通紙領域のセンターコア部73及びサイドコア部76の温度がキュリー温度に達すると、非通紙領域において、図4Bに示すように、誘導コイル71により発生された磁束は、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782を通過する。第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782は、非磁性体材料で形成されるため、磁束を低減させ又は遮蔽する機能を有する。
【0120】
具体的には、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782は、その面に垂直な磁束が貫通することによる誘導電流によって貫通磁束とは逆方向の向きの磁束を発生させる。第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782は、錯交磁束(垂直な貫通磁束)をキャンセルする方向の磁束を発生させることで磁路を通過する磁束を低減させ又は遮蔽する。
【0121】
このようにして、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782は、非通紙領域において、強磁性材料からなるセンターコア部73及びサイドコア部76がキュリー温度に達した場合には、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782を貫通する磁束を低減させ又は遮蔽することができる。従って、用紙Tの各サイズに対応して、非通紙領域において、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782により磁束が低減され又は遮蔽されることで、加熱回転体9aの温度が過度に上昇することを一層抑制することができる。
【0122】
第1実施形態のプリンター1によれば、例えば、以下の効果が奏される。
第1実施形態のプリンター1においては、加熱回転体9aと、加熱回転体9aに対向して配置され、加熱回転体9aとの間に定着ニップFを形成する加圧回転体9bと、加熱回転体9aの外面から所定距離離間して前記外面に沿って配置され、加熱回転体9aを発熱させるための磁束を発生させる誘導コイル71と、磁性体コア部72であって少なくともその一部のキュリー温度が加熱回転体9aが用紙Tを定着させる定着温度になった時の磁性体コア部72の温度よりも高く且つ加熱回転体9aがその耐熱温度になった場合の磁性体コア部72の温度よりも低い磁性体コア部72と、磁性体コア部72よりも熱伝導率が高い第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782であって、加熱回転体9aの外面に対向すると共に磁性体コア部72に当接して配置される第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782と、を備える。
【0123】
そのため、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782は、加熱回転体9aからの熱をセンターコア部73及びサイドコア部76に迅速に伝導させることができる。これにより、加熱回転体9aの外周面の熱の上昇に追従させて、センターコア部73及びサイドコア部76の温度をキュリー温度に迅速に上昇させることができる。従って、加熱回転体9aの温度が過度に上昇することを迅速に抑制することができる。
【0124】
また、第1実施形態のプリンター1においては、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782は、最小非通紙領域903dに対応する位置に配置される。そのため、各サイズの用紙Tの非通紙領域において、加熱回転体9aからの熱をセンターコア部73及びサイドコア部76に迅速に伝導させることができる。これにより、加熱回転体9aの外周面の熱の上昇に追従させて、センターコア部73及びサイドコア部76の温度をキュリー温度に効率よく迅速に上昇させることができる。従って、加熱回転体9aの温度が過度に上昇することを迅速に抑制することができる。
【0125】
また、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782は、センターコア部73及びサイドコア部76よりも熱伝導率が高いため、センターコア部73及びサイドコア部76の温度を下げる際に、センターコア部73及びサイドコア部76から伝導された熱を迅速に伝導させて、センターコア部73及びサイドコア部76の温度を迅速に下げることができる。
【0126】
また、第1実施形態のプリンター1においては、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782は、非磁性体材料で形成される。そのため、センターコア部73及びサイドコア部76がキュリー温度に達しない場合には、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782は、磁束を導かずに、加熱回転体9aからの熱を第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782を伝導させる。一方、センターコア部73及びサイドコア部76がキュリー温度に達した場合には、センターコア部73及びサイドコア部76の磁束を導く機能が迅速に消失されて、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782における磁束を低減させ又は遮蔽する機能を発揮させる。従って、センターコア部73及びサイドコア部76がキュリー温度に達しない場合にセンターコア部73及びサイドコア部76により形成される磁路を通過する磁束に影響を与えず、且つ、センターコア部73及びサイドコア部76がキュリー温度に達した場合に加熱回転体9aの温度が過度に上昇することを一層抑制することができる。
【0127】
また、第1実施形態のプリンター1においては、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782の加熱回転体9a側に加熱回転体9aの外面に対向して配置され、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782よりも熱を吸収しやすい第1輻射熱吸収層791及び第2輻射熱吸収層792を更に備える。そのため、第1輻射熱吸収層791及び第2輻射熱吸収層792は、加熱回転体9aからの熱を効率よく吸収することができる。これにより、加熱回転体9aからの熱は、第1輻射熱吸収層791及び第2輻射熱吸収層792から、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782に効率よく伝導される。従って、センターコア部73及びサイドコア部76の温度をキュリー温度に一層迅速に上昇させることができる。
【0128】
次に、本発明のプリンター1の他の実施形態としての第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第2実施形態の説明にあたって、第1実施形態と同一の構成要件については同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。図5は、第2実施形態のプリンター1の定着装置9の各構成要素を説明するための断面図である。
【0129】
第2実施形態のプリンター1は、第1実施形態と比べて、主として、第2熱伝導性部材782A及び第2輻射熱吸収層792Aの構成が異なる。
【0130】
図5に示すように、第2熱伝導性部材782Aは、サイドコア部76のアーチコア部74とは反対側(サイドコア部76の下側)に配置される。第2熱伝導性部材782Aは、第1当接部分783Aと、第1離間部分784Aとを有する。
【0131】
第1当接部分783Aは、用紙幅方向D2に視た場合に、サイドコア部76のアーチコア部74とは反対側の下面において、サイドコア部76の加熱回転体9aから離れた側の端部から用紙Tの搬送方向D1の略中央にわたって当接した状態で、サイドコア部76の下面に平行に略水平に延びている。
第1離間部分784Aは、サイドコア部76から離間している。第1離間部分784Aは、第1当接部分783Aの加熱回転体9a側の端部から斜め下方側に向けて延びている。第1離間部分784Aは、サイドコア部76の用紙Tの搬送方向D1の略中央から加熱回転体9aに近づくにしたがってサイドコア部76の下面から離間するように傾斜する。
【0132】
このように構成されることで、第2熱伝導性部材782Aは、加熱回転体9a側の第1離間部分784Aにおいてサイドコア部76から離間すると共に、加熱回転体9aとは反対側の第1当接部分783Aにおいてサイドコア部76に当接する。
【0133】
第1離間部分784Aは、第1表面785及び第2表面786を有する。第1表面785及び第2表面786は、加熱回転体9aの外周面に対向する。第1表面785は、第1離間部分784Aのサイドコア部76側の面であり、サイドコア部76から離れるように下方側に傾斜する。第2表面786は、第1表面785の加熱回転体9a側の端部から加熱回転体9aから離れるように下方側に傾斜する。
【0134】
第1表面785及び第2表面786は、加熱回転体9aの外周面に対して斜めに傾いた状態で、加熱回転体9aの外周面に対向している。本発明における「加熱回転体9aの外周面に対向する」には、加熱回転体9aの外周面に対して斜めに傾いた状態で対向する場合も含まれる。
【0135】
第1表面785及び第2表面786には、第2輻射熱吸収層792Aが設けられている。第2輻射熱吸収層792Aは、第1吸収層795と、第2吸収層796とを有する。第1吸収層795は、第2熱伝導性部材782Aの第1表面785を覆うように配置される。第2吸収層796は、第2熱伝導性部材782Aの第2表面786を覆うように配置される。第2輻射熱吸収層792Aは、加熱回転体9aの外周面に対向している。
【0136】
第2実施形態のプリンター1によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する他、以下のような効果が奏される。
第2実施形態のプリンター1においては、第2熱伝導性部材782Aは、加熱回転体9a側においてサイドコア部76から離間すると共に、加熱回転体9aとは反対側においてサイドコア部76に当接する。そのため、サイドコア部76の加熱回転体9aに近い側の部分及び離れた側の部分の両側から、加熱回転体9aからの熱をサイドコア部76に伝導させることができる。従って、サイドコア部76の全体の温度を、加熱回転体9aの外周面の温度に追従させて、迅速に上昇させることができる。その結果、サイドコア部76の温度をキュリー温度に迅速に上昇させることで、加熱回転体9aの温度が過度に上昇されることを一層迅速に抑制することができる。
【0137】
また、第1表面785及び第2表面786は、加熱回転体9aの外周面に対して斜めに傾いた状態で、加熱回転体9aの外周面に対向している。そのため、第1表面785及び第2表面786は、加熱回転体9aの外周面に対向する面積が広い。これにより、第2熱伝導性部材782Aの温度を、加熱回転体9aの外周面の温度に追従させて、より効率よく上昇させることができる。
【0138】
次に、本発明のプリンター1の他の実施形態としての第3実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第3実施形態の説明にあたって、第1実施形態及び第2実施形態と同一の構成要件については同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。図6は、第3実施形態のプリンター1の定着装置9の各構成要素を説明するための断面図である。
【0139】
第3実施形態のプリンター1は、第1実施形態及び第2実施形態と比べて、主として、第2熱伝導性部材782B及び第2輻射熱吸収層792Bの構成が異なる。
図6に示すように、第2熱伝導性部材782Bは、薄板状に形成される。第2熱伝導性部材782Bは、薄板状に形成されるため、熱容量が小さい。第2熱伝導性部材782Bは、第2当接部分783Bと、第2離間部分784Bとを有する。
【0140】
第2当接部分783Bは、用紙幅方向D2に視た場合に、サイドコア部76のアーチコア部とは反対側の下面において、サイドコア部76の加熱回転体9a側の端部の部分から加熱回転体9aとは反対側の端部の部分にわたって当接している。
第2離間部分784Bは、サイドコア部76から離間している。第2離間部分784Bは、サイドコア部76の加熱回転体9a側の端部から、サイドコア部76とは反対側(下方側)に向かって加熱回転体9aの外周面に沿って延びている。詳細には、第2熱伝導性部材782Bは、加熱回転体9aの外周面の湾曲形状に沿った湾曲した形状で、加熱回転体9aの外周面に対向している。
【0141】
第2離間部分784Bの加熱回転体9a側の表面787には、第2輻射熱吸収層792Bが設けられている。第2輻射熱吸収層792Bは、第2熱伝導性部材782Bの加熱回転体9aに対向する表面787を覆うように配置されている。つまり、第2輻射熱吸収層792Bは、第2熱伝導性部材782Bと同様に、サイドコア部76の加熱回転体9a側の端部から、サイドコア部76とは反対側(下方側)に向かって加熱回転体9aの外周面に沿って延びている。第2輻射熱吸収層792Bは、加熱回転体9aの外周面に対向して配置される。
【0142】
第3実施形態のプリンター1によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する他、以下のような効果が奏される。
第3実施形態のプリンター1においては、第2熱伝導性部材782Bは、加熱回転体9aの外周面に沿って延びている。そのため、第2熱伝導性部材782Bの表面787は、加熱回転体9aの外周面に対向する面積が広い。これにより、第2熱伝導性部材782Bの温度を、加熱回転体9aの外周面の温度に追従させて、効率よく上昇させることができる。
【0143】
また、第2熱伝導性部材782Bは、加熱回転体9aの外周面の湾曲形状に沿った湾曲した形状で、加熱回転体9aの外周面に対向している。そのため、第2熱伝導性部材782Bが加熱回転体9aの外周面に直接的な対面状態で対向することにより、第2熱伝導性部材782Bの温度を、加熱回転体9aの外周面の温度に追従させて、一層効率よく上昇させることができる。
【0144】
また、第2熱伝導性部材782Bは、薄板状に形成されるため、熱容量が小さい。そのため、第2熱伝導性部材782Bは、加熱回転体9aからの熱をサイドコア部76に一層効率よく伝導させることができる。
【0145】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく種々の形態で実施することができる。
例えば、前述の第1実施形態においては、センターコア部73に当接する第1熱伝導性部材781及びサイドコア部76に当接する第2熱伝導性部材782を設けたが、これに制限されない。センターコア部73に当接する第1熱伝導性部材781のみを設ける構成でもよいし、サイドコア部76に当接する第2熱伝導性部材782のみを設ける構成でもよい。
【0146】
また、前述の第1実施形態においては、センターコア部73、アーチコア部74及びサイドコア部76のキュリー温度は、加熱回転ベルト93(定着装置9)が用紙Tを定着させる定着温度になったときのコア部の温度よりも高く、且つ、加熱回転体9a(加熱回転ベルト93)が耐熱温度になったときのコア部の温度よりも低く設定されているが、これに制限されない。例えば、第1熱伝導性部材781に当接するセンターコア部73のみのキュリー温度や、第2熱伝導性部材782に当接するサイドコア部76のみのキュリー温度が、加熱回転ベルト93(定着装置9)が用紙Tを定着させる定着温度になったときのコア部の温度よりも高く、且つ、加熱回転体9a(加熱回転ベルト93)が耐熱温度になったときのコア部の温度よりも低く設定されていてもよい。
【0147】
また、前述の第2実施形態の構成及び第3実施形態の構成を同時に備えてもよい。具体的には、第2実施形態における第2熱伝導性部材782Aにおいて、第2熱伝導性部材782Aを、第3実施形態における第2熱伝導性部材782Bのように、加熱回転体9aの外周面に沿って延びるように構成してもよい。
【0148】
また、前述の実施形態においては、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782を磁性体コア部72における最小非通紙領域903dに対応する位置に配置したが、これに制限されない。例えば、第1熱伝導性部材781及び第2熱伝導性部材782を、磁性体コア部72における最大非通紙領域901dに対応する位置に配置してもよいし、通紙領域及び非通紙領域の全部にわたって配置してもよい。
【0149】
本発明の画像形成装置の種類は、特に限定がなく、プリンター以外に、コピー機、ファクシミリ、又はこれらの複合機などであってもよい。
シート状の被転写材は、用紙に制限されず、例えば、フィルムシートであってもよい。
【符号の説明】
【0150】
2……感光体ドラム(像担持体)、8……転写ローラー(転写部)、9……定着装置、9a……加熱回転体、9b……加圧ローラー(加圧回転体)、16……現像器、71……誘導コイル、72……磁性体コア部、73……センターコア部(第1コア部)、76……サイドコア部(第2コア部)、781……第1熱伝導性部材(熱伝導性部材)、782……第2熱伝導性部材(熱伝導性部材)、791……第1輻射熱吸収層(輻射熱吸収部材)、792……第2輻射熱吸収層(輻射熱吸収部材)、903……最小通紙領域(第1領域)、903d……最小非通紙領域(第2領域)、F……定着ニップ、T……用紙(被転写材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱回転体と、
前記加熱回転体に対向して配置され、前記加熱回転体との間に定着ニップを形成する加圧回転体と、
前記加熱回転体の外面から所定距離離間して前記外面に沿って配置される前記加熱回転体を発熱させるための磁束を発生させる誘導コイルと、
磁性体コア部であって、少なくともその一部のキュリー温度が、前記加熱回転体が被転写材を定着させる定着温度になった時の前記磁性体コア部の温度よりも高く且つ前記加熱回転体がその耐熱温度になった場合の前記磁性体コア部の温度よりも低い磁性体コア部と、
前記磁性体コア部よりも熱伝導率が高い熱伝導性部材であって、前記加熱回転体の外面に対向すると共に、前記磁性体コア部に当接して配置される熱伝導性部材と、
を備える定着装置。
【請求項2】
前記磁性体コア部は、前記誘導コイルの内周縁の近傍に配置されると共に前記誘導コイルを挟まずに前記加熱回転体の外面から所定距離離間して前記加熱回転体の外面に対向する第1コア部を備え、
前記熱伝導性部材は、前記第1コア部に当接して配置される
請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記磁性体コア部は、前記誘導コイルの外周縁の近傍に配置されると共に前記誘導コイルを挟まずに前記加熱回転体の外面から所定距離離間して前記加熱回転体の外面に対向する第2コア部を備え、
前記熱伝導性部材は、前記第2コア部に当接して配置される
請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記熱伝導性部材は、前記加熱回転体側において前記第2コア部から離間すると共に、前記加熱回転体とは反対側において前記第2コア部に当接する
請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記熱伝導性部材は、前記加熱回転体の外面に沿って延びている
請求項3又は4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記加熱回転体の外面に形成され、被転写材を前記定着ニップに搬送される場合における前記被転写材が通過する領域である第1領域と、
前記加熱回転体の外面に形成され、前記第1領域から見て前記被転写材の搬送方向に直交する方向である直交方向の外側の領域である第2領域と、を備え、
前記熱伝導性部材は、前記磁性体コア部における前記第2領域に対応する位置に配置される
請求項1から5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記熱伝導性部材は、非磁性体材料で形成される
請求項1から6のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
前記熱伝導性部材の前記加熱回転体側に前記加熱回転体の外面に対向して配置され、前記熱伝導性部材よりも熱を吸収しやすい輻射熱吸収部材を更に備える
請求項1から7のいずれかに記載の定着装置。
【請求項9】
表面に静電潜像が形成される1又は複数の像担持体と、
前記1又は複数の像担持体に形成された静電潜像をトナー画像として現像する現像器と、
前記像担持体に形成されたトナー画像を直接的又は間接的にシート状の被転写材に転写する転写部と、
請求項1から8のいずれかに記載の定着装置と、を備える
画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−7874(P2013−7874A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140073(P2011−140073)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】