説明

定着装置

【課題】加熱ローラの剛性の低下を抑制し、熱効率の優れた定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置100は、内部に熱源1を含む加熱ローラ2と、前記加熱ローラ2と対をなす加圧ローラ3とを備える。加熱ローラ2は、円筒状に形成されている。加熱ローラ2の内周面8には、軸方向にのびる凹条9および凸条10を備えている。凹条9および凸条10は、加熱ローラ2の内周面8の全周に亘って、凹条9と凸条10が交互に入れ替わり形成されている。すなわち、加熱ローラ2の内周面8の周方向からみると、規則的な凹凸に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等の電子写真プロセスを利用した電子写真機器に使用され、用紙上のトナーを定着させる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置は、加熱ローラと加圧ローラを有している。加熱ローラは、内部に配置された熱源によって加熱される。加熱ローラと対をなす加圧ローラは、加熱ローラと平行に配置されている。加圧ローラを加熱ローラに圧接させることによって、ニップが形成されている。このニップに未定着トナー像が形成された用紙を通過させることにより、用紙が加熱・加圧されて、トナーが用紙に定着させられる。
【0003】
加熱ローラは、短時間で所定の温度になるように、円筒状の加熱ローラの肉厚が薄肉化され、加熱ローラの熱容量が低下させられている。
また、加熱ローラの薄肉化によって、加熱ローラの剛性が低下することを防ぐため、加熱ローラに、熱処理を施し、剛性を維持する方法が採られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−38811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、加熱ローラの肉厚を薄肉化させると、加熱ローラの熱容量を低下させることができる。しかし、加熱ローラの剛性が低下し、ニップにおいて所定の圧力を確保することができない。そのため、未定着トナー像が形成された用紙を所定の圧力で加圧することができず、画像の定着に悪影響を及ぼす場合がある。
また、加熱ローラの剛性の低下を補うために、加熱ローラに熱処理を施して剛性を維持する方法もあるが、コストアップとなってしまう。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、加熱ローラの剛性の低下を抑制し、熱効率の優れた定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、加熱用ローラを有する定着装置において、前記加熱用ローラは、内側から加熱される内周面と、前記内周面の軸方向にのびる凹条および凸条とを備え、前記凹条および凸条は、前記内周面の周方向にみると、規則的な凹凸に形成されていることを特徴とする定着装置である。
この構成によれば、内周面の軸方向にのびる凹条および凸条を備えることによって、加熱用ローラの内周面の表面積を増加させることができる。これによって、加熱用ローラの熱の吸収効率を向上させることができる。その結果、短時間で加熱用ローラを、所定の温度に加熱することができるため、熱効率が優れている。
【0007】
また、凸条は、加熱用ローラの軸方向の剛性を向上させる。凹条および凸条の形成は、加熱用ローラを軸方向に押し出し鍛造等することにより簡単に作れる。これによって、熱処理等の処理や他の構造を用いずに、加熱用ローラの剛性の低下を抑制することができ、コストも安価である。
上記凹条および凸条は、内周面の周方向にみると、規則的な凹凸に形成されているため、内周面を均一に加熱することができる。これによって、加熱用ローラの外周面に温度ムラが生じることを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る定着装置を示す概略図である。定着装置100は、内部に熱源1を含む加熱ローラ2と、前記加熱ローラ2と対をなす加圧ローラ3とを備える。
加熱ローラ2は、円筒状に形成されており、定着装置100に搬送されてくる未定着トナー4像が形成された用紙5の幅に対応する軸長を有している。加熱ローラ2の内部に配置された熱源1は、棒状に形成されており、加熱ローラ2の軸長と略等しい長さを有している。熱源1は、加熱ローラ2と略同軸に配置されている。加熱ローラ2は、熱源1によって未定着トナー4像を用紙5に定着させるための所定の温度に、内側から加熱される。
【0009】
加圧ローラ3は、円筒状に形成されており、加熱ローラ2の軸長と略等しい軸長を有する。加圧ローラ3は、加圧ローラ3を軸方向に貫通し、両端から突出する支軸6を有している。支軸6は、加圧ローラ3に略同軸に固定されている。支軸6を介して、加圧ローラ3は加熱ローラ2に圧接され、ニップ7が形成されている。
加熱ローラ2は、駆動源(図示せず)により右回りに回転させられる。これによって、加熱ローラ2に圧接されている加圧ローラ3が従動し、回転する。
【0010】
未定着トナー4像が形成された用紙5が、ニップ7に搬送され、加熱ローラ2および加圧ローラ3の回転により、用紙5がニップ7を通過する。用紙5がニップ7を通過している間に、用紙5が加熱ローラ2および加圧ローラ3に、加熱・加圧されることによって、未定着トナー4像が溶融され、用紙5に定着させられる。
図2は、図1における定着装置を概略的に示す斜視図である。
【0011】
図1および図2を参照して、円筒状の加熱ローラ2は、内周面8に軸方向にのびる凹条9および凸条10を備えている。凹条9および凸条10は、直線状をなし、それぞれ加熱ローラ2の一端から他端に亘って形成されている。凹条9および凸条10は、周方向の断面が略台形状に形成されている。凹条9および凸条10は、それぞれを倒立させた形状に相当し、互いに同等の幅を有している。凹条9および凸条10は、加熱ローラ2の内周面8の全周に亘って、凹条9と凸条10が交互に入れ替わり形成されている。すなわち、加熱ローラ2を周方向から見た場合、内周面8は規則的な凹凸に形成されている。
【0012】
これによって、加熱ローラ2の内周面8の表面積を増加させることができる。したがって、加熱ローラ2の熱の吸収効率を向上させることができる。その結果、短時間で加熱ローラ2を、所定の温度に加熱することができるため、熱効率が優れている。
また、また、凸条10は、加熱ローラ2の軸方向の剛性を向上させる。凹条9および凸条10の形成は、加熱ローラ2を軸方向に押し出し鍛造等することにより簡単に作れる。これによって、熱処理等の処理や他の構造を用いずに、加熱ローラ2の剛性の低下を抑制することができ、コストも安価である。
【0013】
上記凹条9および凸条10は、内周面8の周方向にみると、規則的な凹凸に形成されているため、内周面8を均一に加熱することができる。これによって、加熱ローラ2の外周面11に温度ムラが生じることを抑制できる。その結果、未定着トナー4像が形成された用紙5を均一に加熱することができ、良好な画像の定着を行うことができる。
また、加熱ローラ2の内周面8には、熱源1の熱を効率的に吸収するため、例えば、黒色の高放射率を有するコーティング(図示せず)が施されている。これによって、加熱ローラ2の熱の吸収効率をさらに向上させることができ、短時間で加熱ローラ2を所定の温度に加熱することができるため、熱効率が優れている。
【0014】
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、凹条9の周方向の断面形状は、円状、三角状、四角状等であってもよい。また、凸条10の周方向の断面形状は、円状、三角状、四角状等であってもよい。凹条9および凸条10は、互いに異なる断面形状であってもよい。
凹条9および凸条10は、曲線状や折れ曲がりを有する形状等によって、それぞれ加熱ローラ2の一端から他端に亘って形成されてもよい。また、加熱ローラ2の内周面8に、螺旋状に形成されてもよい。
【0015】
上述の実施例では、加熱ローラ2と接する加圧ローラ3を有する定着装置100を示したが、加圧する装置は、図3(a)に示すように2つのローラ12,13間に掛け渡された加圧ベルト14であってもよい。また、図3(b)に示すように、押圧パッド15と、ベルト状フィルム16で構成されたものでもよい。
また、加熱ローラは、直接トナー4および用紙5を加熱するものではなく、図4(a),(b),(c)に示すように、定着ローラ17を間接的に加熱する加熱用ローラ18であってもよい。なお、図4(a),(b),(c)において、19は加圧用ローラ、20は加熱用ベルトである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る定着装置を示す概略図である。
【図2】図1における概略的に示す斜視図である。
【図3】本発明の別の実施の形態に係る定着装置を概略的に示した模式図である。
【図4】本発明のさらに別の実施の形態に係る定着装置を概略的に示した模式図である。
【符号の説明】
【0017】
2 加熱ローラ(加熱用ローラ)
3 加圧ローラ
8 内周面
9 凹条
10 凸条
100 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用ローラを有する定着装置において、
前記加熱用ローラは、
内側から加熱される内周面と、
前記内周面の軸方向にのびる凹条および凸条とを備え、前記凹条および凸条は、前記内周面の周方向にみると、規則的な凹凸に形成されていることを特徴とする定着装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−3828(P2007−3828A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183883(P2005−183883)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】