説明

定着装置

【課題】 定着ローラの薄肉化が進行してもキー部の強度の低下を確実に抑えることができるようにする。
【解決手段】 発熱体24が内装された、軸心回りに回転可能な薄肉円筒状の定着ローラ30の周面に用紙Pを供給することにより当該用紙P上のトナー像に加熱による定着処理を施す定着装置20において、定着ローラ30は、端部で周面の一部が径方向内側に向けて略扁平とされたキー部33を備えている。かかるキー部33は定着ローラ30の端部が端面視で半円月状に形状設定されることによって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やファクシミリ装置等の画像形成装置に適用される、用紙等の記録媒体に転写されたトナー像に対して当該記録媒体への定着処理を施す定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているような、画像形成装置の定着装置に適用される定着ローラが知られている。この定着ローラは、感光体ドラムの周面に形成されたトナー像の転写された用紙上の当該トナー像を当該用紙に定着させるためのものであり、内装されたヒータにより加熱されつつ回転するようになっている。そして、かかる定着ローラの周面へ向けて用紙を供給することによる加熱処理で当該用紙上のトナー像に定着処理が施されるようになっている。
【0003】
かかる定着ローラは、外嵌された軸受けによって軸心回りに回転可能に支持されているとともに、駆動力を伝達するためのギヤが回り止め状態で外嵌されているが、近年、加熱の迅速な立ち上がり(ヒートアップタイムの短縮化)を確保するべく、薄肉化が進行している。そして、定着ローラが薄肉化すると、当該定着ローラに外嵌された断熱部材やギヤ等を回り止めするためのキー孔やキー溝が構造的に弱体化し、これによって定着ローラが破損しやすくなるという問題点が提起される。
【0004】
因みに特許文献1には、両端の外周面に軸心と平行に形成されたカット部分(定着ローラ側キー面という)がそれぞれ設けられてなる定着ローラと、この定着ローラの両端部に回り止め状態で外嵌される断熱部材とを備えた定着装置が記載されている。断熱部材の内周面には、前記定着ローラ側キー面に対応した平面部分(断熱部材側キー面という)が設けられ、断熱部材側キー面を定着ローラ側キー面に対応させた状態で断熱部材を定着ローラの端部に嵌め込むことにより、断熱部材が軸心回りに一体回転可能に定着ローラと結合される。
【特許文献1】特開平10−3223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の定着ローラは、定着ローラ側キー面を切削加工で形成し得る程度の肉厚の円筒体によって形成されているため、特に機械的な強度を落とすことなくキー面を形成させることができるが、本発明が対象としている薄肉化された定着ローラの場合、当該定着ローラに切削加工でキー面を形成させることができないという解決課題が存在する。
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであって、定着ローラの薄肉化が進行してもその端部に強度の低下を抑えつつキー部を形成させることができる定着装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、加熱源が内装された、軸心回りに回転可能な薄肉円筒状の定着ローラの周面に記録媒体を供給することにより当該記録媒体上のトナー像に加熱による定着処理を施す定着装置であって、前記定着ローラは、端部で周面の一部が径方向内側に向けて略扁平とされたキー部を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
かかる構成によれば、定着ローラの端部に形成されたキー部は、定着ローラの周面が略扁平に形成されているため、従来の切削加工でキー部が形成されたものに比較し、キー部をプレス処理で簡単に形成させることが可能であり、キー部の加工作業の作業性が大幅に向上する。しかも、仕上がったキー部は、プレス加工で他の部分と連続した状態になるため、定着ローラがたとえ薄肉化されたものであってもキー部が構造的に弱体化するような不都合が回避され、これによってキー部が局部的な負荷に充分に対応し得るものになる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記扁平な部分一つで前記定着ローラの端面視形状が略半円月状とされていることを特徴とするものである。
【0010】
かかる構成によれば、キー部の略半月円状に対応した部分を有する嵌挿孔を備えた部材(外嵌部材という)が定着ローラの端部に外嵌された状態で、当該外嵌部材および定着ローラは軸心回りに一体回転可能に結合される。そしてこの結合に際し、キー部の端部は外嵌部材から定着ローラの径方向内側に向かう力を受けることになり、定着ローラは、非常に変形し難い状態で外嵌部材の回転が伝達されることになる。
【0011】
このように、定着ローラの周面の一部を半円月状に形成することで、外嵌部材の軸心回りの回転力は、キー部に対し破損させないように作用した状態で定着ローラに伝達されるため、定着ローラがたとえ薄肉化されたものであっても、当該定着ローラは、破損することなく外嵌部材の回転力が確実に伝達される。
【0012】
また、半円月状のキー部は、プレス処理等によって容易に形成される。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記キー部は、端面視で前記略扁平な部分が定着ローラの径方向内側へ膨出する円弧状であることを特徴とするものである。
【0014】
かかる構成によれば、請求項2記載の発明と同様の作用が確保された上で、キー部の略扁平な部分が端面視で定着ローラの径方向内側へ膨出する円弧状に形成されているため、外嵌部材と定着ローラとの間で軸心回りの力が作用し合った場合、キー部の端部は外嵌部材から定着ローラの径方向内側に向かう力を受けることになり(すなわちひずみが径方向の内側に逃げることになり)、外嵌部材を定着ローラに容易に外嵌し得るとともに、定着ローラと外嵌部材との間で非常に変形し難い状態で回転力の伝達が行われる。
【0015】
そして、定着ローラの周面の一部を内側に向けた円弧状に形成することでキー部を設けることにより、定着ローラがたとえ薄肉化されたものであっても、当該定着ローラは、破損することなく外嵌部材の回転力が確実に伝達される。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記キー部に対応するように前記定着ローラの端部に外嵌された外嵌部材を抜止めするストッパが装着可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
かかる構成によれば、定着ローラに外嵌された外嵌部材は、ストッパにより抜止めされる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記キー部を介して前記定着ローラの端部に外嵌された外嵌部材は、キー部を介してねじ止め可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
かかる構成によれば、外嵌部材が外嵌部材にねじ止めされることにより、両者の一体化が確実になる。また、外嵌部材は、定着ローラの周面より凹没したキー部とねじ止めされるため、容易にその機能が損なわれない状態にすることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、定着ローラの端部に形成されたキー部は、定着ローラの周面が略扁平に形成されているため、従来の切削加工でキー部が形成されたものに比較し、キー部をプレス処理で簡単に形成させることができ、キー部の加工作業の作業性を大幅に向上させることができる。しかも、仕上がったキー部は、プレス加工で他の部分と連続した状態になるため、定着ローラがたとえ薄肉化されたものであってもキー部が構造的に弱体化するような不都合が回避され、これによってキー部を局部的な負荷に充分に対応し得るものにすることができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、定着ローラのキー部は、端面視で略扁平な部分が略半円月状に形成されているため、外嵌部材の軸心回りの回転力は、キー部を破損させないように作用した状態で定着ローラに伝達され、これによって定着ローラがたとえ薄肉化されたものであっても、外嵌部材の回転力を当該定着ローラに確実に伝達することができる。また、半円月状のキー部は、プレス処理等によって容易に形成されるため、加工コストの低減化に貢献することができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同様の効果を確保した上で、キー部の略扁平な部分が端面視で定着ローラの径方向内側へ膨出する円弧状に形成されているため、外嵌部材と定着ローラとの間で軸心回りの力が作用し合った場合、キー部の端部は外嵌部材から定着ローラの径方向内側に向かう力を受けることになり(すなわちひずみが径方向の内側に逃げることになり)、外嵌部材を定着ローラに容易に外嵌させることができるとともに、定着ローラは、非常に変形し難い状態で外嵌部材との間で回転力を伝達し合うことができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、定着ローラに外嵌された外嵌部材をストッパにより抜け止めすることができる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、キー部を介して前記定着ローラの端部に外嵌された外嵌部材は、キー部を介してねじ止め可能に構成されているため、両者の一体化を確実に行うことができる。また、外嵌部材は、定着ローラの周面より凹没したキー部とねじ止めされるため、容易にその機能が損なわれないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明に係る定着装置が適用された画像形成装置の一種であるプリンタ10の一実施形態の内部構造の概要を示す正面断面視の説明図である。図1に示すように、プリンタ(画像形成装置)10は、印刷処理に供する用紙(記録媒体)Pを貯留する用紙貯留部12と、この用紙貯留部12に貯留された用紙束P1から繰り出された1枚ずつの用紙Pに対して画像の転写処理を施す画像形成部13と、この画像形成部13で転写処理の施された用紙Pに対して定着処理を施す定着部14とが装置本体11に内装されると共に、定着部14で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部15が装置本体11の頂部に設けられることによって構成されている。前記排紙部15は、装置本体11の頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ151が設けられている。
【0026】
前記用紙貯留部12には、所定数(本実施形態では1つ)の用紙カセット121が装置本体11に対して挿脱自在に設けられている。用紙カセット121の上流端(図1の左方)には、用紙束P1から1枚ずつの用紙Pを繰り出させるピックアップローラ122が設けられている。このピックアップローラ122の駆動によって用紙カセット121から繰り出された用紙Pは、給紙搬送路123およびこの給紙搬送路123の下流端に設けられたレジストローラ対124を介して画像形成部13に給紙されるようになっている。
【0027】
前記画像形成部13は、コンピュータ等から電送された画像情報に基づき用紙Pに転写処理を施すものであり、前後方向(図1の紙面と直交する方向)に延びるドラム心回りに回転可能に設けられた感光体ドラム131の周面に沿うように、当該感光体ドラム131の図1における右上位置から時計方向に向けて帯電器132、露光装置133、現像装置134、転写ローラ135およびクリーニング装置136が配設されることによって形成されている。
【0028】
そして、感光体ドラム131と、帯電器132と、クリーニング装置136とが所定のハウジングに内装され感光体ユニット130としてユニット化されている。前記感光体ドラム131は、周面に静電潜像およびこの静電潜像に沿ったトナー像を形成させるためのものであり、周面にアモルファスシリコン層が積層され、これによってこれらの像を形成させるのに適したものになっている。
【0029】
前記帯電器132は、ドラム心回りに時計方向に回転している感光体ドラム131の周面に一様な電荷を形成させるものであり、コロナ放電によって感光体ドラム131の周面に電荷を付与するようになっている。なお、かかる帯電器132に代えて帯電ローラを採用してもよい。
【0030】
前記露光装置133は、コンピュータ等の外部の機器から電送されてきた画像データに基づき強弱の付与されたレーザー光を回転している感光体ドラム131の周面に照射し、これによる感光体ドラム131周面のレーザー光が照査された部分の電荷の消去によって当該感光体ドラム131の周面に静電潜像を形成させるものである。
【0031】
前記現像装置134は、感光体ドラム131の周面にトナーを供給することによって周面の静電潜像が形成された部分にトナーを付着させ、これによって感光体ドラム131の周面にトナー像を形成させるものである。
【0032】
前記転写ローラ135は、感光体ドラム131の直左方位置に送り込まれた用紙Pに対して当該感光体ドラム131の周面に形成されているプラスに帯電したトナー像を用紙Pに転写させるものであり、トナー像の電荷と逆極性であるマイナスの電荷を用紙Pに付与するようになっている。
【0033】
従って、感光体ドラム131の左下位置に到達した用紙Pは、転写ローラ135と感光体ドラム131とによって押圧挟持されつつ、プラスに帯電した感光体ドラム131周面のトナー像がマイナスに帯電した用紙Pの表面に向けて引き剥がされ、これによって用紙Pに対し転写処理が施されることになる。
【0034】
前記クリーニング装置136は、転写処理後の感光体ドラム131の周面に残留しているトナーや、前記帯電器132で帯電ワイヤに付着した粉塵等の異物を清掃処理したときに飛散して感光体ドラム131の周面に付着したものなどを取り除いて清浄化するためのものである。このクリーニング装置136には、感光体ドラム131の周面に摺擦する摺擦ローラ136aが設けられ、この摺擦ローラ136aの回転で感光体ドラム131の周面に付着した残留トナーや異物が擦り落とされる(すなわち感光体ドラム131の周面が研磨される)ようになっている。このクリーニング装置136によって清浄化された感光体ドラム131の周面は、次の画像形成処理のために再び帯電器132へ向かうことになる。
【0035】
前記定着部14は、画像形成部13によって転写処理の施された用紙Pのトナー像に加熱による定着処理を施すものであり、定着装置20を備えて構成されている。この定着装置20は、用紙Pに熱を加える定着ローラ30と、この定着ローラ30の左側に対向配置された加圧ローラ80とを備えて構成されている。
【0036】
そして、転写処理後の用紙Pは、定着ローラ30と加圧ローラ80との間に形成されたニップ部Nへ向けて送り込まれ、当該ニップ部Nを通過することによって、定着ローラ30からの熱を得て定着処理が施されるようになっている。定着処理の施された用紙Pは、排紙搬送路141を通って排紙部15へ排出されることになる。
【0037】
そして、装置本体11内の図1における右方位置上部に外気を取り入れるためのフィルタ161を備えた送風機16と、この送風機16によってフィルタ161を介して取り入れられた外気を感光体ユニット130へ向けて案内する送風ダクト17とが設けられている。送風機16の駆動で送風ダクト17を介し感光体ユニット130へ向けて吹き付けられた外気は、感光体ユニット130内を貫通し、これによって感光体ドラム131内に設けられた図略のヒータによって感光体ユニット130内が過加熱されている場合に当該感光体ユニット130内を冷却するようになっている。
【0038】
図2は、定着装置の一実施形態を示す背面側から見た斜視図である。従って、図2においては、図1に示す定着装置20と左右の位置関係が逆転している(すなわち、図1では定着ローラ30が右側に、加圧ローラ80が左側に位置しているが、図2では定着ローラ30が左側に、加圧ローラ80が右側に位置している)。
【0039】
図2に示すように、定着装置20は、筐体21内に定着ローラ30と加圧ローラ80とが左右に並設されることによって構成されている。前記筐体21は、図2における手前側の背面板211と、同向こう側の前面板212と、これら背面板211および前面板212の各側縁部間に架設された一対の側板部材213とを備え、これら背面板211、前面板212および側板部材213に囲繞された空間に定着ローラ30および加圧ローラ80を装着するための装着空間Vが形成されている。
【0040】
そして、この装着空間V内において、背面板211および前面板212間の図2における左方位置に定着ローラ30が装着されているとともに、同右方位置に周面を定着ローラ30の周面と当接させた状態で加圧ローラ80が装着されている。
【0041】
前記定着ローラ30の各端部には、後述する環状断熱部材40を介してベアリング60がそれぞれ装着され、定着ローラ30は、これらのベアリング60が背面板211および前面板212にそれぞれ凹設された凹部に嵌め込まれることにより軸心回りに回転可能に筐体21の装着空間Vに装着されるようになっている。なお、加圧ローラ80は、装着空間V内の図2における定着ローラ30の右側位置で背面板211および前面板212間に架設されたローラ軸81に軸支され、定着ローラ30の回転に従動してローラ軸81回りに回転するようになっている。
【0042】
また、定着ローラ30の図2におけるベアリング60より手前側の端部には後述する環状ギヤ(外嵌部材)50が一体回転可能に外嵌されている一方、背面板211には、図略の駆動モータの駆動でギヤ軸221回りに回転する駆動ギヤ22が設けられている。この駆動ギヤ22は、前記環状ギヤ50と噛合され、これによって駆動モータの駆動による駆動ギヤ22の回転が環状ギヤ50を介して定着ローラ30に伝達されるようになっている。
【0043】
また、前記背面板211には、定着ローラ30の端部開口と対向するように端子台23が設けられているとともに、この端子台23から定着ローラ30内の奥部に向けて延設されたハロゲンランプ等からなる発熱体(加熱源)24が設けられている。この発熱体24は、定着ローラ30の内周面と接触し合わないように寸法設定されている。かかる発熱体24に図略の電源からの電力がコネクタ25および端子台23を介して供給されることにより、当該発熱体24が発熱し、これによって定着ローラ30に加熱処理が施されるようになっている。
【0044】
図3は、定着ローラ30を説明するための図であり、(イ)は、環状断熱部材40、環状ギヤ50、ベアリング60およびC型止め輪70が定着ローラ30に装着される前の状態を示す斜視図、(ロ)は、環状断熱部材40、環状ギヤ50、ベアリング60およびC型止め輪70が定着ローラ30に装着された状態を示す定着ローラ30の背面側の拡大斜視図である。また、図4は、環状断熱部材40、環状ギヤ50、ベアリング60およびC型止め輪70が装着された定着ローラ30の全体斜視図であり、図5は、図4のA−A線断面図である。
【0045】
これらの図に示すように、定着ローラ30には、背面側に環状断熱部材40、環状ギヤ(外嵌部材)50、ベアリング60およびC型止め輪70が装着される一方、前面側に環状断熱部材40、ベアリング60およびC型止め輪70が装着されるようになっている。
【0046】
まず、図3の(イ)に示すように、定着ローラ30は、薄肉の金属製の筒体であり、本実施形態においては外径寸法が直径で31.4mmに設定されているとともに、厚み寸法が0.35mmに設定され、これによって発熱体24による定着ローラ30に対する加熱処理が迅速に行われ、プリンタ10の電源スイッチを投入したときの定着装置20の立ち上がりが迅速に行われるようになっている。
【0047】
かかる定着ローラ30には、両端部には、一対の第1係止孔31と、1つの第2係止孔32とがそれぞれ穿設されている。第1係止孔31は、C型止め輪70の両端部を係止するためのものであり、第2係止孔32は、C型止め輪70の中央部を係止するためのものである。本実施形態においては、一対の第1係止孔31間の中心角は、略120°に設定されているとともに、各第1係止孔31と第2係止孔32との間の中心角も略120°に設定され、これによって第1および第2係止孔31,32は、定着ローラ30の周方向に略等ピッチで形成された状態になっている。
【0048】
また、定着ローラ30の図3における手前側の端縁部分の適所(本実施形態においては第2係止孔32の点対称位置)には、定着ローラ30の端部が端面視で半円月状になるように形状設定されることにより、周面の一部が径方向内側に向けて略扁平とされた状態のキー部33が設けられ、このキー部33の存在で外嵌される環状ギヤ50が定着ローラ30と軸心回りに一体回転し得るようになっている。因みに、図3における定着ローラ30の向こう側の端部には、環状ギヤ50を装着する必要がないためキー部33は設けられない。
【0049】
このような定着ローラ30の図2における手前側には、環状断熱部材40と、環状ギヤ50と、ベアリング60と、C型止め輪70とが外嵌される一方、同向こう側には、環状断熱部材40と、ベアリング60と、C型止め輪70とが外嵌されるようになっている(図5参照)。
【0050】
そして、定着ローラ30の図2における手前側においては、まずベアリング60が定着ローラ30に遊嵌され、引き続き環状断熱部材40が定着ローラ30に外嵌された後にベアリング60がこの環状断熱部材40に外嵌され、この状態で環状ギヤ50が定着ローラ30に外嵌された後、C型止め輪70が定着ローラ30に装着されるようになっている。これに対し定着ローラ30の図2における向こう側においては、予めベアリング60が定着ローラ30に遊嵌された状態で環状断熱部材40が定着ローラ30に外嵌され、この環状断熱部材40にベアリング60のみが外嵌された状態でC型止め輪70が定着ローラ30に装着されるようになっている。
【0051】
前記環状断熱部材40は、内径寸法が定着ローラ30の外形寸法より僅かに小さい円筒状を呈する断熱部材本体41と、この断熱部材本体41の一方の端部に同心で形成されたフランジ42とを備えた基本構成を有している。かかる環状断熱部材40は、断熱部材本体41側から定着ローラ30に外嵌される。そして、本実施形態においては、断熱部材本体41の一部に筒心方向の全長に亘って切り込まれることによって形成したスリット43が設けられている。そして、環状断熱部材40の定着ローラ30への外嵌操作は、スリット43の隙間寸法を広げるように環状断熱部材40を弾性変形させ拡径して行われる。従って、環状断熱部材40は、定着ローラ30に外嵌された状態で弾性力により定着ローラ30に巻き締まった状態になっているため、環状断熱部材40の定着ローラ30に対する装着状態が安定する。
【0052】
また、フランジ42が設けられている側と反対側の断熱部材本体41の端縁には、外周面から外方へ軸心に向かって傾斜した環状テーパー部411が形成され、ベアリング60は、この環状テーパー部411に案内されることによって断熱部材本体41へ容易に外嵌操作され得るようになっている。
【0053】
前記環状ギヤ50は、内径寸法が定着ローラ30の外径寸法より僅かに大きく寸法設定され、これによって摺接状態で定着ローラ30に外嵌し得るようになっている。かかる環状ギヤ50の内周面には、図3の(イ)に示すように、前記定着ローラ30のキー部33に対応した弦部51が設けられている。この弦部51を定着ローラ30のキー部33に対応させた状態で環状ギヤ50を定着ローラ30へ押し込んでいくことにより、環状ギヤ50が回り止め状態で定着ローラ30に装着されることになる。
【0054】
前記ベアリング60は、環状断熱部材40を介して定着ローラ30を筒心回りに回転可能に軸支した状態で、前記筐体21(図2)の背面板211に支持されるものである。かかるベアリング60は、内径寸法が断熱部材本体41の外形寸法と略同一に設定され、環状ギヤ50が環状断熱部材40を介して定着ローラ30に外嵌された状態で環状断熱部材40に圧入されるようになっている。
【0055】
前記C型止め輪70は、ベアリング60が外嵌された状態の環状断熱部材40を抜止めするためのものであり、曲率中心角が略略240°の円弧状に形成され、曲率内径寸法が定着ローラ30の外径寸法より若干小さめに寸法設定されている。
【0056】
かかるC型止め輪70は、両端部から互いに対向する方向に向けて突設された(本実施形態では両端部が曲率中心に向かってそれぞれ折り曲げられることによって形成した)一対の端部係止片71と、中央部から内方に向かって突設された(本実施形態では中央部が曲率中心に向かってV字状に折り曲げられることによって形成した)中央係止片72とを有している。
【0057】
そして、一対の端部係止片71は、定着ローラ30の一対の第1係止孔31と対応するとともに、中央係止片72は、定着ローラ30の第2係止孔32と対応するように設定位置が設定されている。従って、環状断熱部材40およびベアリング60が定着ローラ30に外嵌され、さらに環状ギヤ50を定着ローラ30の第1および第2係止孔31,32より僅かに奥に外嵌された状態で、一対の端部係止片71を外側から定着ローラ30の一対の第1係止孔31にそれぞれ嵌入し、さらに中央係止片72を外側から定着ローラ30の第2係止孔32に嵌め込むことによって、C型止め輪70は、図3の(ロ)に示すように、3点支持で定着ローラ30に装着され、これによって環状ギヤ50、環状断熱部材40およびベアリング60が定着ローラ30から抜止めされるようになっている。
【0058】
なお、前記環状断熱部材40、ベアリング60およびC型止め輪70は、定着ローラ30の図3の(イ)および図4における手前側および向こう側の双方の端部にそれぞれ装着されるのに対し、環状ギヤ50は、定着ローラ30の手前側の端部にのみ装着され、向こう側の端部には装着されない。
【0059】
そして、環状断熱部材40、環状ギヤ50、ベアリング60およびC型止め輪70が装着された定着ローラ30が、図2に示すように、ベアリング60を介して筐体21に装着された状態で、図略の駆動モータの駆動で駆動ギヤ22が駆動回転すると、これに噛合している環状ギヤ50も回転し、これによって定着ローラ30も回転することになる。
【0060】
定着ローラ30ならびにこの定着ローラ30に装着されるC型止め輪70によれば、定着ローラ30に一対の第1係止孔31と1つの第2係止孔32とが設けられているとともに、C型止め輪70には、一対の第1係止孔31に対応した端部係止片71と、1つの第2係止孔32に対応した中央係止片72が設けられ、これら端部係止片71および中央係止片72をそれぞれ第1係止孔31および第2係止孔32に嵌め込むことによって、C型止め輪70は、定着ローラ30に3点支持で装着された状態になるため、C型止め輪70の定着ローラ30に対する装着状態が安定したものになる。
【0061】
また、定着ローラ30には、C型止め輪70を装着するための3つの係止孔(一対の第1係止孔31および1つの第2係止孔32)と、環状ギヤ50を装着するための1つのキー部33とが設けられるだけであるため、たとえ定着ローラ30が薄肉化されていても充分に対応することができる。
【0062】
以上詳述したように、本発明に係る定着装置20は、発熱体24が内装された、軸心回りに回転可能な薄肉円筒状の定着ローラ30の周面に用紙Pを供給することにより当該用紙P上のトナー像に加熱による定着処理を施すものであり、定着ローラ30は、端部で周面の一部が径方向内側に向けて略扁平とされたキー部33を備えているため、従来の厚肉の円筒体に切削加工を施してキー部を形成するものに比べて一回のプレス処理で容易にキー部33を形成させることができ、加工コストの低減化に貢献することができる。しかも、プレス処理による塑性変形でキー部33を定着ローラ30の他の部分と切れ目のない状態で形成させることができるため、定着ローラ30のキー部33が形成されている部分が構造的に弱くなるようなことはなく、従って、定着ローラ30がたとえ薄肉化されたものであってもキー部33が構造的に弱体化するような不都合が回避され、これによってキー部33は、定着ローラの周方向に向かう局部的な負荷に充分に対応することができる。
【0063】
そして、キー部33は定着ローラ30の端部が端面視で半円月状に形状設定されることによって形成されているため、キー部33の形状に対応した弦部51を有する嵌挿孔を備えた環状ギヤ50が定着ローラ30の端部に外嵌された状態で、当該環状ギヤ50を軸心回りに回転させると、環状ギヤ50の回転力は、直線状を呈したキー部33の周方向端部に作用し、これによってキー部33の端部は環状ギヤ50から定着ローラ30の径方向内側に向かう力を受けることになり、定着ローラ30は、非常に変形し難い状態で環状ギヤ50の回転が伝達されることになる。
【0064】
このように、定着ローラ30の端部を半円月状に形状設定することによりキー部33を形成することで、環状ギヤ50の軸心回りの回転力は、キー部33を破損させないように作用した状態で定着ローラ30に伝達され、これによって定着ローラ30がたとえ薄肉化されたものであっても、環状ギヤ50の回転力を当該定着ローラ30に確実に伝達することができる。
【0065】
因みに、特開平8−248798号公報には、定着ローラの周面に外部からプレス処理を施すことにより得られる凹溝によって形成されたキー溝が記載されている。しかしながら、このような凹溝からなるキー溝の場合、薄肉の定着ローラの周面に互いに対向した側壁が形成されるように相当大きい変形量を伴うプレス処理を施さなければならず、これによるこの部分のさらなる薄肉化でキー溝周辺が構造的に弱体化してしまうという不都合が生じる。従って、この公報に記載の定着ローラは、当該定着ローラの周方向に向かう力によって凹溝の溝壁が外嵌部材のキーによって外方に向かって押圧され、これによる凹溝の変形に起因して定着ローラが破損するという不具合が生じ易くなるため、本発明のような、略扁平に形成されたキー部33が備える上記した格別の作用効果が得られるものではない。
【0066】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0067】
(1)上記の実施形態においては、定着装置20が適用される画像形成装置としてプリンタ10を例に挙げて説明したが、本発明は、画像形成装置がプリンタ10であることに限定されるものではなく、読み込んだ画像情報を用紙Pに転写する複写機や、電送されてきた画像情報をプリントアウトするファクシミリ装置であってもよい。
【0068】
(2)上記の実施形態においては、環状ギヤ50を定着ローラ30に直接外嵌させるようにしているが、こうする代わりに環状ギヤ50を、環状断熱部材40を介して定着ローラ30に外嵌させるようにしてもよい。
【0069】
(3)上記の実施形態においては、一対の第1係止孔31と1つの第2係止孔32とが定着ローラ30の周方向に等ピッチの位置にそれぞれ穿設されているが、本発明は、第1係止孔31と第2係止孔32とを定着ローラ30の周方向に等ピッチで設けることに限定されるものではなく、状況に応じて適宜の位置に設けてもよい。
【0070】
(4)上記の実施形態においては、キー部33は、断面視で直線状に形成されているが、本発明は、キー部33が直線状であることに限定されるものではない。因みに、図6は、定着ローラ30に設けられるキー部の他の実施形態を示す断面図であり、(イ)は、径方向に中心に向かって円弧状に凹設されたキー部331、(ロ)は、径方向に外方に向かって円弧状に膨設されたキー部332をそれぞれ示している。
【0071】
特に図6の(イ)に示すキー部331にあっては、キー部331の略扁平な部分が端面視で定着ローラの径方向内側へ膨出する円弧状に形成されているため、環状ギヤ50と定着ローラ30との間で軸心回りの力が作用し合った場合、キー部331の端部は環状ギヤ50から定着ローラ30の径方向内側に向かう力を受けることになり(すなわちひずみが径方向の内側に逃げることになり)、環状ギヤ50を定着ローラ30に容易に外嵌し得るとともに、定着ローラ30と環状ギヤ50との間で非常に変形し難い状態で回転力の伝達が行われる。
【0072】
(5)図7は、定着ローラ30′と環状ギヤ50′との間の回り止め装着構造の他の実施形態を示す斜視図である。この実施形態においては、定着ローラ30′にキー部33が設けられている点については、図3に示す定着ローラ30と同様であるが、定着ローラ30′には第1および第2係止孔31,32が設けられていない代わりにキー部33の適所に貫通孔333が設けられている。
【0073】
一方、環状ギヤ50′は、周面に歯が液制されたギヤ本体52と、このギヤ本体52の端面から突設されたスリーブ53とを備えて構成されている。かかる環状ギヤ50′の内周面には、前記キー部33に対応した弦部51が形成され、環状ギヤ50′は、その弦部51を定着ローラ30′のキー部33に対応させつつ定着ローラ30′の端部に嵌め込むことによって回り止め状態で定着ローラ30′に装着されるようになっている。
【0074】
かかる環状ギヤ50′のスリーブ53には、弦部51に対応した部分に周面が平らに切削加工されることによって形成した扁平部54が設けられ、この扁平部54の前記貫通孔333と対向した位置に貫通孔333と同一孔径のねじ孔541が螺設されている。そして、環状ギヤ50′が定着ローラ30の端部に外嵌された状態で、ビスBを前記ねじ孔541に螺着し、その先端を貫通孔333に貫通させるようになされている。
【0075】
この実施形態の回り止め装着構造によれば、定着ローラ30′の端部に貫通孔333を設けるだけであるため、定着ローラ30′の端部の強度を低下させることなく回り止め状態で環状ギヤ50′を定着ローラ30′に装着することができるとともに、扁平部54が存在することでギヤ本体52の機能を損なうことなくビスBで定着ローラ30′と環状ギヤ50′とを一体化させることができる。
【0076】
(6)上記の実施形態においては、定着ローラ30′の端部にキー部33が1つだけ形成されているが、本発明は、キー部33が1つであることに限定されるものではなく、2つ以上設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る定着装置が適用された画像形成装置の一種であるプリンタの一実施形態の内部構造の概要を示す正面断面視の説明図である。
【図2】定着装置の一実施形態を示す背面側から見た斜視図である。
【図3】定着ローラを説明するための図であり、(イ)は、環状断熱部材、環状ギヤ、ベアリングおよびC型止め輪が定着ローラに装着される前の状態を示す斜視図、(ロ)は、環状断熱部材、環状ギヤ、ベアリングおよびC型止め輪が定着ローラに装着された状態を示す定着ローラの背面側の拡大斜視図である。
【図4】環状断熱部材、環状ギヤ、ベアリングおよびC型止め輪が装着された定着ローラの全体斜視図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】定着ローラに設けられるキー部の他の実施形態を示す断面図であり、(イ)は、径方向に中心に向かって円弧状に凹設されたキー部、(ロ)は、径方向に外方に向かって円弧状に膨設されたキー部をそれぞれ示している。
【図7】定着ローラと環状ギヤとの間の回り止め装着構造の他の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
10 プリンタ(画像形成装置) 11 装置本体
12 用紙貯留部 121 用紙カセット
122 ピックアップローラ 123 給紙搬送路
124 レジストローラ対 13 画像形成部
130 感光体ユニット 131 感光体ドラム
132 帯電器 133 露光装置
134 現像装置 135 転写ローラ
136 クリーニング装置 136a 摺擦ローラ
14 定着部 141 排紙搬送路
15 排紙部 151 排紙トレイ
16 送風機 161 フィルタ
17 送風ダクト 20 定着装置
21 筐体 211 背面板
212 前面板 213 側板部材
22 駆動ギヤ 221 ギヤ軸
23 端子台 24 発熱体(加熱源)
25 コネクタ 30 定着ローラ
31 係止孔 32 係止孔
321 括れ溝 33 キー部
331,332 キー部 333 貫通孔
40 環状断熱部材 41 断熱部材本体
411 環状テーパー部 42 フランジ
43 スリット 50,50′ 環状ギヤ(外嵌部材)
51 弦部 52 ギヤ本体
53 スリーブ 54 扁平部
541 ねじ孔 60 ベアリング
70 C型止め輪 71 端部係止片
72 中央係止片 80 加圧ローラ
81 ローラ軸 N ニップ部
P 用紙(記録媒体) P1 用紙束
V 装着空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱源が内装された、軸心回りに回転可能な薄肉円筒状の定着ローラの周面に記録媒体を供給することにより当該記録媒体上のトナー像に加熱による定着処理を施す定着装置であって、
前記定着ローラは、端部で周面の一部が径方向内側に向けて略扁平とされたキー部を備えていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記扁平な部分一つで前記定着ローラの端面視形状が略半円月状とされていることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記キー部は、端面視で前記略扁平な部分が定着ローラの径方向内側へ膨出する円弧状であることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項4】
前記キー部に対応するように前記定着ローラの端部に外嵌された外嵌部材を抜止めするストッパが装着可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
前記キー部を介して前記定着ローラの端部に外嵌された外嵌部材は、キー部を介してねじ止め可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−57645(P2007−57645A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240743(P2005−240743)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】