説明

定着装置

【課題】筒状部材の斜行を抑えて、筒状部材の耐用期間を長くすることができる定着装置を提供することを目的とする。
【解決手段】定着装置100は、可撓性の筒状部材(定着ベルト110)と、筒状部材の内部に配置され、発熱体(ハロゲンランプ120)を有する加熱ユニット200と、加熱ユニット200との間でニップ部を形成するバックアップ部材(加圧ローラ150)と、筒状部材の端面の位置を規制する規制部材と、加熱ユニット200をバックアップ部材へ向けて付勢する付勢部材と、加熱ユニット200をバックアップ部材に圧接させる第1位置と、圧接を解除させる第2位置とに移動させる切替部材と、筒状部材のバックアップ部材とは反対側に設けられ、加熱ユニット200が第2位置に位置するときに、筒状部材の外周面111に接触して筒状部材の姿勢を初期姿勢に戻す接触部材300を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録シートに現像剤像を熱定着するための定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、定着装置として、ニップ部材と、回転可能な筒状のベルトと、ニップ部材との間でベルトを挟んでニップ部を形成するバックアップ部材と、ベルトの端面の位置を規制する端面規制部材と、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−158560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の定着装置において、回転するベルトが斜行して、ベルトの端面が端面規制部材に強く接触することが考えられる。このように、ベルトの端面が端面規制部材に強く接触すると、ベルト端面が割れたり、変形して、ベルトの耐用期間が短くなるといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、ベルト(筒状部材)の斜行を抑えて、ベルトの耐用期間を長くすることができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る定着装置は、可撓性の筒状部材と、前記筒状部材の内部に配置され、発熱体を有する加熱ユニットと、前記加熱ユニットとの間で前記筒状部材を挟んでニップ部を形成するバックアップ部材と、前記筒状部材の両端側に配置され、当該筒状部材の端面の位置を規制する規制部材とを備える。
また、定着装置は、前記加熱ユニットを前記バックアップ部材へ向けて付勢して、前記加熱ユニットを前記筒状部材を介して前記バックアップ部材に圧接させる付勢部材と、前記加熱ユニットを、前記筒状部材を介して前記バックアップ部材に圧接させる第1位置と、圧接を解除させる第2位置とに移動させるように前記付勢部材に作用する切替部材とを備える。
さらに、定着装置は、前記筒状部材の前記バックアップ部材とは反対側に設けられ、前記加熱ユニットが前記第2位置に位置するときに、前記筒状部材の外周面に接触して前記筒状部材の姿勢を初期姿勢に戻す接触部材とを備える。
【0007】
この構成によれば、切替部材によって加熱ユニットを第2位置に移動させると、筒状部材が接触部材に接触して初期姿勢に戻されるので、筒状部材の斜行によって筒状部材の端面が規制部材に摺接して磨耗するのを抑えることができる。
【0008】
また、前記した構成において、前記接触部材は、前記筒状部材の一端部側と他端部側とに別々に設けられているのが望ましい。
【0009】
これによれば、例えば接触部材を筒状部材の一端部から他端部に亘って長く形成するものに比べ、筒状部材との接触位置を明確にでき、その部分の位置精度を上げることができる。
【0010】
また、前記した構成では、前記接触部材は、前記記録シートの搬送方向において、前記筒状部材の頂点よりも上流側の部位に接触する上流側接触部と、前記頂点よりも下流側の部位に接触する下流側接触部とを有するのが望ましい。
【0011】
これによれば、接触部材が筒状部材の頂点を挟んだ2点で接触するので、筒状部材と1点で接触するものに比べ、筒状部材の姿勢をより確実に初期姿勢に戻すことができる。
【0012】
また、前記した構成において、前記接触部材には、前記筒状部材の外周面に接触する凹部が形成されていてもよい。また、前記凹部は、断面視円弧状に形成されていてもよいし、断面視V字状に形成されていてもよい。
【0013】
また、前記した構成では、前記加熱ユニットが前記第2位置に位置するときに、前記筒状部材が前記バックアップ部材から離れるように構成されているのが望ましい。
【0014】
これによれば、第2位置のときに筒状部材がバックアップ部材から離れるので、筒状部材を、動き易くして、より確実に初期姿勢に戻すことができる。
【0015】
また、前記した構成において、前記加熱ユニットは、前記第2位置に位置するときに、前記接触部材との間で前記筒状部材を挟持する挟持部材を有するのが望ましい。
【0016】
これによれば、筒状部材とバックアップ部材の間に詰まった記録シートを引っ張り出すために、加熱ユニットを第2位置に移動させると、筒状部材が接触部材と挟持部材との間で挟持される。そのため、詰まった記録シートを引っ張る際には、筒状部材が記録シートに共回りしないので、筒状部材が接触部材から外れるのを抑えることができ、記録シートを引っ張り出した後も筒状部材の姿勢を初期姿勢に保つことができる。
【0017】
また、前記した構成では、前記第2位置に位置する加熱ユニットに対して前記接触部材に向かう力が働いたときに当該力を吸収する弾性部材が設けられているのが望ましい。
【0018】
これによれば、第2位置において加熱ユニットが筒状部材を介して接触部材に接触しているときに加熱ユニットに対して接触部材に向かう力が働いても、当該力が弾性部材で吸収されるので、加熱ユニットが接触部材に押し付けられることによる筒状部材の損傷を抑えることができる。
【0019】
また、前記した構成において、前記バックアップ部材を支持する筐体に対して移動可能に設けられ、前記加熱ユニットを支持するとともに、前記付勢部材で付勢される支持部材をさらに備える場合には、前記支持部材は、前記弾性部材を介して前記加熱ユニットを支持するのが望ましい。
【0020】
これによれば、第2位置において加熱ユニットが筒状部材を介して接触部材に接触しているときに支持部材をバックアップ部材とは反対側に移動させても、弾性部材の変形により加熱ユニットが支持部材とともに動かないので、加熱ユニットが接触部材側に押圧されることによる筒状部材の損傷を抑えることができる。
【0021】
また、前記した構成において、前記筒状部材は、前記接触部材に接触したときに径方向に移動可能となるように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、加熱ユニットを第2位置に移動させるたびに筒状部材を初期姿勢に戻すことができるので、筒状部材の斜行を抑えて、筒状部材の耐用期間を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る定着装置を備えたレーザプリンタを示す断面図である。
【図2】加熱ユニットが第1位置に位置するときの定着装置を示す断面図である。
【図3】加熱ユニットが第2位置に位置するときの定着装置を示す断面図である。
【図4】加熱ユニットを分解して示す分解斜視図である。
【図5】ガイド部材を上側から見た斜視図(a)と、ステイを組み付けたガイド部材を下側から見た斜視図(b)および下面図(c)である。
【図6】加熱ユニットが第1の位置に位置しているときの定着装置を左側から見た側面図である。
【図7】揺動アームとガイド部材の構造を示す分解斜視図である。
【図8】加熱ユニットが第2の位置に位置しているときの定着装置を左側から見た側面図である。
【図9】接触部材と挟持部材を示す斜視図である。
【図10】接触部材の変形例を示す断面図(a)〜(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の実施形態に係る定着装置100を備えたレーザプリンタ1(画像形成装置)の概略構成について説明した後、定着装置100の詳細な構成について説明する。
【0025】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Pを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙P上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙P上のトナー像を熱定着する定着装置100とを主に備えている。
【0026】
なお、以下の説明において、方向は、レーザプリンタを使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0027】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、用紙Pを収容する給紙トレイ31と、用紙Pの前側を持ち上げる用紙押圧板32と、給紙ローラ33と、給紙パット34と、紙粉取りローラ35,36と、レジストローラ37とを主に備えている。給紙トレイ31内の用紙Pは、用紙押圧板32によって給紙ローラ33に寄せられ、給紙ローラ33と給紙パット34によって1枚ずつ分離され、紙粉取りローラ35,36およびレジストローラ37を通ってプロセスカートリッジ5に向けて搬送される。
【0028】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、レーザ発光部(図示せず)と、回転駆動するポリゴンミラー41と、レンズ42,43と、反射鏡44,45,46とを主に備えている。露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、ポリゴンミラー41、レンズ42、反射鏡44,45、レンズ43、反射鏡46の順に反射または通過して、感光体ドラム61の表面で高速走査される。
【0029】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0030】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、トナー(現像剤)を収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0031】
プロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0032】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Pが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙P上に転写される。
【0033】
定着装置100は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられている。用紙P上に転写されたトナー像(トナー)は、定着装置100を通過することで用紙P上に熱定着される。トナー像が熱定着された用紙Pは、搬送ローラ23,24によって排紙トレイ22上に排出される。
【0034】
<定着装置の詳細構成>
図2に示すように、定着装置100は、筒状部材の一例としての定着ベルト110と、加熱ユニット200と、バックアップ部材の一例としての加圧ローラ150と、規制部材の一例としてのガイド部材170(図5参照)と、接触部材300とを主に備えている。この定着装置100では、加熱ユニット200が定着ベルト110とともに、図2に示す第1位置と、図3に示す第2位置とに移動可能となっている。
【0035】
そして、加熱ユニット200が第2位置に位置するときには、接触部材300が定着ベルト110の外周面111に接触することで、定着ベルト110の姿勢が初期姿勢に戻されるようになっている。つまり、定着ベルト110は、接触部材300に接触したときに加熱ユニット200に対して径方向に移動可能となるように構成されている。
【0036】
なお、接触部材300との接触時に定着ベルト110が径方向に移動可能な構成とするには、例えば、定着ベルト110と加熱ユニット200との間に適度なクリアランスを設けたり、当該クリアランスを設けた上で、さらに、定着ベルト110を弱めの付勢力で付勢してテンションを与えるバネ等を設けてもよい。このように構成することで、定着ベルト110の傾きを抑えることができるので、定着ベルト110の斜行によって定着ベルト110の端面がガイド部材170(図5参照)に摺接して磨耗するのを抑えて、定着ベルト110の耐用期間を長くすることが可能となっている。以下に、具体的な構成について、詳述する。
【0037】
定着ベルト110は、耐熱性と可撓性を有する無端状(筒状)のフィルムであり、その両端部がガイド部材170(図5参照)により回転が案内されている。
【0038】
加熱ユニット200は、定着ベルト110の内部に配置され、主に、発熱体の一例としてのハロゲンランプ120と、ニップ板130と、反射板140と、ステイ160とを備えている。
【0039】
ハロゲンランプ120は、ニップ板130および定着ベルト110を加熱することで用紙P上のトナーを加熱する公知の発熱体であり、定着ベルト110の内側において定着ベルト110およびニップ板130の内面から所定の間隔をあけて配置されている。
【0040】
ニップ板130は、ハロゲンランプ120からの輻射熱を受ける板状の部材であり、筒状の定着ベルト110の内面に摺接するように配置されている。そして、このニップ板130は、ハロゲンランプ120から受けた輻射熱を定着ベルト110を介して用紙P上のトナーに伝達する。
【0041】
このニップ板130は、後述するスチール製のステイ160より熱伝導率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視略U形状に折り曲げることで形成されている。より詳細に、ニップ板130は、断面視において、前後方向(用紙Pの搬送方向)に沿うように延びるベース部131と、上方に向けて折り曲げられた折曲部132とを有している。
【0042】
なお、ベース部131の内面(上面)には、黒色の塗装を施したり、熱吸収部材を設けたりしてもよい。これによれば、ハロゲンランプ120からの輻射熱を効率良く吸収することができる。
【0043】
図4に示すように、ニップ板130のベース部131の左端部には、上方に開口した側面視U形状の係合部134が形成されている。係合部134のうち上方に折り曲げられた一対の側壁部134Aには、係合孔134Bが設けられている。
【0044】
図2に示すように、反射板140は、ハロゲンランプ120からの輻射熱(主に前後方向や上方向に向けて放射された輻射熱)をニップ板130に向けて反射する部材であり、定着ベルト110の内側においてハロゲンランプ120を取り囲むように、ハロゲンランプ120から所定の間隔をあけて配置されている。
【0045】
このような反射板140によってハロゲンランプ120からの輻射熱をニップ板130に集めることで、ハロゲンランプ120からの輻射熱を効率良く利用することができ、ニップ板130および定着ベルト110を速やかに加熱することができる。
【0046】
反射板140は、赤外線および遠赤外線の反射率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視略U形状に湾曲させて形成されている。より詳細に、反射板140は、湾曲形状(断面視略U形状)をなす反射部141と、反射部141の両端部から前後方向外側に沿って延びるフランジ部142とを主に有している。なお、熱反射率を高めるため、反射板140は、鏡面仕上げを施したアルミニウム板などを用いて形成してもよい。
【0047】
図4に示すように、反射板140の左右方向(用紙Pの幅方向)の両端部にはフランジ状の係止部143が合計4つ形成されている(3つのみ図示)。係止部143は、フランジ部142より上方に位置し、ニップ板130、反射板140およびステイ160が組み立てられたときに、後述するステイ160の複数の接触部163を左右方向で挟むように配置される。これにより、ステイ160に対する反射板140の左右方向における位置ずれを抑制することが可能となっている。
【0048】
図2に示すように、加圧ローラ150は、弾性変形可能な部材であり、ニップ板130の下方に配置されている。そして、この加圧ローラ150は、弾性変形した状態でニップ板130との間で定着ベルト110を挟むことで定着ベルト110との間にニップ部を形成している。
【0049】
この加圧ローラ150は、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することで定着ベルト110(または用紙P)との摩擦力により定着ベルト110を従動回転させる。
【0050】
トナー像が転写された用紙Pは、加圧ローラ150と加熱された定着ベルト110の間を搬送されることでトナー像が熱定着されることとなる。
【0051】
ステイ160は、前後方向におけるニップ板130(ベース部131)の両端部を反射板140のフランジ部142を介して支持することでニップ板130の剛性を確保する部材である。ステイ160は、反射板140(反射部141)の外面形状に沿った形状(断面視略U形状)を有して反射板140を覆うように配置されている。このようなステイ160は、比較的剛性が大きい、例えば、鋼板などを断面視略U形状に折り曲げることで形成されている。
【0052】
ステイ160の前壁161および後壁162の下端には、図4に示すように、略櫛歯状をなすように形成された複数の接触部163が設けられている。
【0053】
また、ステイ160の前壁161および後壁162の右端部には、下方に向けて延び、さらに左方へ向けて延びる略L形状の係止部165が設けられている。これにより、各係止部165によって、ニップ板130の右端部が支持される。
【0054】
さらに、ステイ160の左端には、下方に開口した側面視略U形状の保持部167が設けられている。保持部167の各側壁部167Aの内面には、内側に向けて突出する係合ボス167B(一方のみ図示)が設けられている。そして、各係合ボス167Bがニップ板130の各係合孔134Bに係合することで、ニップ板130の左端部の係合部134がステイ160の保持部167によって保持される。
【0055】
図2および図4に示すように、ステイ160の前壁161および後壁162の内面の左右方向両端部には、内側に向けて突出する当接ボス168が合計4つ設けられている。この当接ボス168は、前後方向において反射板140(反射部141)に当接する。これにより、ステイ160によって反射板140が保持される。
【0056】
また、ステイ160の上壁166の左右両端には、左右方向外側に突出する被支持部169が形成されている。
【0057】
そして、ニップ板130および反射板140を保持するステイ160と、ハロゲンランプ120は、図5(a)に示すガイド部材170に固定されている。すなわち、ガイド部材170は、ニップ板130、反射板140、ステイ160およびハロゲンランプ120を一体的に支持している。
【0058】
ガイド部材170は、樹脂などの絶縁性の材料で形成され、定着ベルト110の両端側に1つずつ配置されて、主に定着ベルト110の端面の位置を規制している。具体的に、ガイド部材170は、定着ベルト110の左右方向への移動を規制する規制面171と、定着ベルト110の径方向内側への変形を抑えるための抑制部172と、ステイ160の両端部を保持するための保持凹部173とを主に備えている。
【0059】
抑制部172は、規制面171から左右方向内側に突出するリブであり、開口を下に向けたC字状に形成されている。そして、この抑制部172は、定着ベルト110内に入り込むことで径方向内側への変形を抑えている。また、抑制部172の下側を向いた開口は、ステイ160を保持凹部173に挿入させるための逃げ部となっている。
【0060】
保持凹部173は、下方に開口するとともに左右方向内側に開口する溝であり、図5(b),(c)に示すように、当該保持凹部173を形成する壁のうち前後方向で対向する一対の側壁174には、一対の係合突起174Aが形成されている。各係合突起174Aは、保持凹部173の底面173A(図5(a)参照)から離れた位置から内側に突出するように形成されている。
【0061】
そして、図5(b)に示すように、保持凹部173の底面173Aと一対の係合突起174Aの間に、ステイ160の被支持部169を差し込むと、被支持部169の上下方向への動きが保持凹部173の底面173Aと一対の係合突起174Aとで規制される。これにより、ガイド部材170に対するステイ160の上下方向における位置ずれを抑制することができる。
【0062】
また、一対の係合突起174Aの左右方向内側の面174Bには、ステイ160の左右方向外側の端縁160Aが当接するようになっている。これにより、ガイド部材170に対するステイ160の左右方向における位置ずれを抑制することができる。
【0063】
さらに、ステイ160は、保持凹部173の一対の側壁174間で前後に挟み込まれることで、前後方向における位置ずれが抑制されている。以上のように、ガイド部材170にステイ160が支持されることで、ニップ板130および反射板140がステイ160を介してガイド部材170に一体的に支持される。
【0064】
また、ガイド部材170の左右方向外側には、ハロゲンランプ120を固定するための固定部175が左右方向外側に突出するように形成されている。固定部175の下面には、ボルトB(図6参照)を捩じ込むための取付穴175Aが形成されている。そして、図6に示すように、固定部175の下面には、ハロゲンランプ120の端部にある板状の端子121がボルトBによって直接固定されている。
【0065】
端子121は、レーザプリンタ1の本体筐体2の図示しない電源とフレキシブルな配線を介して電気的に接続されている。このように構成されるガイド部材170は、ニップ板130等を支持した状態で、筐体180に上下に移動可能に支持されている。
【0066】
筐体180は、左右一対の側壁181と、側壁181の下部を連結する下壁(図示略)とを備えており、各側壁181には、ガイド部材170を上下に移動可能に支持する支持溝182が上方に開口するように形成されている。また、筐体180の各側壁181には、加圧ローラ150を回転可能に支持する軸受190と、付勢部材の一例としての第1コイルバネ400と、支持部材の一例としての揺動アーム410と、切替部材500とが設けられている。
【0067】
第1コイルバネ400は、揺動アーム410を介して加熱ユニット200を加圧ローラ150へ向けて付勢させる部材であり、一端が筐体180に固定されるとともに、他端が揺動アーム410の先端部411に固定されている。この第1コイルバネ400の付勢力によって、加熱ユニット200(ニップ板130)が定着ベルト110を介して加圧ローラ150に圧接されている。
【0068】
揺動アーム410は、筐体180に対して揺動可能(移動可能)に設けられており、揺動する先端部411と回転中心となる基端部412との間の中間部で、ガイド部材170(加熱ユニット200)を弾性部材の一例としての第2コイルバネ420を介して支持している。
【0069】
具体的には、図7に示すように、揺動アーム410の中間部には、当該揺動アーム410の長手方向に延びる長孔413が形成されている。一方、ガイド部材170の上面には、上方に突出して長孔413を貫通する突起部176が形成され、この突起部176の上端部には、突起部176の突出方向に直交する方向に延びる被支持部材177が固定されている。
【0070】
そして、第2コイルバネ420が、突起部176と同軸となるように突起部176の外側に配置されるとともに、揺動アーム410の上面と被支持部材177の下面との間に配置されることで、ガイド部材170が第2コイルバネ420を介して揺動アーム410で支持されている。これにより、第2コイルバネ420が、揺動アーム410の揺動方向に変形可能となっている。
【0071】
そのため、図8や図3に示す第2位置において、加熱ユニット200が定着ベルト110を介して接触部材300に接触しているときに揺動アーム410を上方に移動させても(図8の2点鎖線参照)、第2コイルバネ420の変形により加熱ユニット200が揺動アーム410とともに動くことが抑制される。
【0072】
すなわち、第2位置に位置する加熱ユニット200に対して接触部材300に向かう力が働いたときに、当該力が第2コイルバネ420によって吸収されるようになっている。これにより、加熱ユニット200が接触部材300側に押圧されることによる定着ベルト110の損傷を抑えることが可能となっている。
【0073】
切替部材500は、加熱ユニット200を、定着ベルト110を介して加圧ローラ150に圧接させる第1位置(図6の位置)と、圧接を解除させる第2位置(図8の位置)とに移動させるように揺動アーム410を介して第1コイルバネ400に作用する部材である。具体的に、切替部材500は、操作レバー510と、回動軸520と、カム部530を備えて構成されている。
【0074】
操作レバー510は、その一端が筐体180の左右の側壁181に貫通する回動軸520に一体に固定されている。なお、操作レバー510は、回動軸520の一端のみに設けてもよいし、両端にそれぞれ設けてもよい。
【0075】
回動軸520は、左右方向に延びる略円柱の棒状部材であり、筐体180に回動可能に支持されている。
【0076】
カム部530は、回動軸520の左右両端部から径方向外側に突出するように回動軸520に一体に固定されている。そのため、操作レバー510を回動させて左右のカム部530で左右の揺動アーム410を上方に押圧すると、図8に示すように、左右のガイド部材170が第1コイルバネ400の付勢力に抗して上昇することで、加圧ローラ150からニップ板130が離れてニップ圧が解除されるようになっている。
【0077】
より詳しくは、加熱ユニット200が第2位置(図8の位置)に位置するときに、定着ベルト110が加圧ローラ150から離れるように、切替部材500の各部材の大きさや形状等が適宜設定されている。これにより、第2位置のときに定着ベルト110が加圧ローラ150から離れるので、定着ベルト110が接触部材300(図2参照)に接触したときに動き易くなり、定着ベルト110をより確実に初期姿勢に戻すことが可能となっている。
【0078】
図2、図3および図9に示すように、接触部材300は、定着ベルト110の上側(加圧ローラ150とは反対側)に配置されるように定着装置100を構成するフレームや本体筐体2に設けられている。具体的に、接触部材300は、定着ベルト110の一端部側と他端部側とに別々に設けられている。
【0079】
これにより、例えば接触部材を定着ベルトの一端部から他端部に亘って長く形成するものに比べ、接触部材300と定着ベルト110との接触位置を明確にでき、その部分の位置精度を上げることができる。
【0080】
また、接触部材300の下側には、下方に向けて開口する断面視V字状の凹部310が形成されている。凹部310は、後斜め上方に向けて傾斜する上流側接触部の一例としての上流側傾斜面311と、後斜め下方に向けて傾斜する下流側接触部の一例としての下流側傾斜面312とを有している。
【0081】
上流側傾斜面311は、用紙Pの搬送方向において、定着ベルト110の頂点110A(最上方に位置する点)よりも上流側の部位に接触するように、頂点110Aよりも上流側に配置されている。また、下流側傾斜面312は、用紙Pの搬送方向において、定着ベルト110の頂点110Aよりも下流側の部位に接触するように、頂点110Aよりも下流側に配置されている。
【0082】
これにより、接触部材300の凹部310が定着ベルト110の頂点110Aを挟んだ2点で接触するので、例えば定着ベルトと1点で接触するものに比べ、定着ベルト110の姿勢をより確実に初期姿勢に戻すことが可能となっている。
【0083】
また、加熱ユニット200は、第2位置に位置するときに、各接触部材300との間で定着ベルト110を挟持する挟持部材210を有している。具体的に、挟持部材210は、断面視U字状に形成され、各接触部材300に対応した位置においてステイ160に固定されている。
【0084】
これにより、定着ベルト110と加圧ローラ150の間に詰まった用紙Pを引っ張り出すために、加熱ユニット200を第2位置に移動させると、定着ベルト110が接触部材300と挟持部材210との間で挟持される。そのため、詰まった用紙Pを引っ張る際には、定着ベルト110が用紙Pに共回りしないので、定着ベルト110が接触部材300から外れるのを抑えることができ、用紙Pを引っ張り出した後も定着ベルト110の姿勢を初期姿勢に保つことが可能となっている。
【0085】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0086】
前記実施形態では、凹部として断面視V字状の凹部310を例示したが、本発明はこれに限定されず、凹部の形状はどのような形状であってもよい。例えば、図10(a)に示すように、定着ベルト110の外周面に沿った断面視円弧状の凹部610を接触部材600に形成してもよい。
【0087】
また、図10(b)に示すように、定着ベルト110の外周面に3つ以上の接点で接触する段差状の凹部810であってもよい。また、定着ベルト110と接触する部分は凹部に限らず、例えば図10(c)に示すように、板状の接触部材700から下方に突出して、定着ベルト110の頂点110Aの上流側と下流側に接触する2つの突出部710,720であってもよい。
【0088】
前記実施形態では、付勢部材および弾性部材の一例としてのコイルバネを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、板バネや線バネなどであってもよい。
【0089】
前記実施形態では、記録シートの一例として、厚紙、はがき、薄紙などの用紙Pを採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばOHPシートであってもよい。
【0090】
前記実施形態では、発熱体の一例としてハロゲンランプ120を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば誘導加熱方式のIH(Induction Heating)ヒータや発熱抵抗体などであってもよい。
【0091】
前記実施形態では、バックアップ部材として加圧ローラ150を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベルト状の加圧部材などであってもよい。
【符号の説明】
【0092】
100 定着装置
110 定着ベルト
111 外周面
120 ハロゲンランプ
150 加圧ローラ
170 ガイド部材
200 加熱ユニット
300 接触部材
400 第1コイルバネ
500 切替部材
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートに現像剤像を熱定着するための定着装置であって、
可撓性の筒状部材と、
前記筒状部材の内部に配置され、発熱体を有する加熱ユニットと、
前記加熱ユニットとの間で前記筒状部材を挟んでニップ部を形成するバックアップ部材と、
前記筒状部材の両端側に配置され、当該筒状部材の端面の位置を規制する規制部材と、
前記加熱ユニットを前記バックアップ部材へ向けて付勢して、前記加熱ユニットを前記筒状部材を介して前記バックアップ部材に圧接させる付勢部材と、
前記加熱ユニットを、前記筒状部材を介して前記バックアップ部材に圧接させる第1位置と、圧接を解除させる第2位置とに移動させるように前記付勢部材に作用する切替部材と、
前記筒状部材の前記バックアップ部材とは反対側に設けられ、前記加熱ユニットが前記第2位置に位置するときに、前記筒状部材の外周面に接触して前記筒状部材の姿勢を初期姿勢に戻す接触部材とを備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記接触部材は、前記筒状部材の一端部側と他端部側とに別々に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記接触部材は、前記記録シートの搬送方向において、前記筒状部材の頂点よりも上流側の部位に接触する上流側接触部と、前記頂点よりも下流側の部位に接触する下流側接触部とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記接触部材には、前記筒状部材の外周面に接触する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記凹部は、断面視円弧状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記凹部は、断面視V字状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
【請求項7】
前記加熱ユニットが前記第2位置に位置するときに、前記筒状部材が前記バックアップ部材から離れるように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記加熱ユニットは、前記第2位置に位置するときに、前記接触部材との間で前記筒状部材を挟持する挟持部材を有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記第2位置に位置する加熱ユニットに対して前記接触部材に向かう力が働いたときに当該力を吸収する弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記バックアップ部材を支持する筐体に対して移動可能に設けられ、前記加熱ユニットを支持するとともに、前記付勢部材で付勢される支持部材をさらに備え、
前記支持部材は、前記弾性部材を介して前記加熱ユニットを支持することを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
【請求項11】
前記筒状部材は、前記接触部材に接触したときに径方向に移動可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−73197(P2013−73197A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214260(P2011−214260)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】