説明

定量吐出装置

【課題】簡単にかつ確実にシリンジのエア抜きをできる、定量吐出装置を提供する。
【解決手段】定量吐出シリンジ10は、シリンジ12と定量吐出装置14とを含む。定量吐出装置14は、矢印A方向に延びる外筒26、外筒26に収容される内筒28およびばね30、外筒26に挿入される蓋部材32、外筒26と内筒28と蓋部材32とを挿通する押圧部材34、ならびに外筒26に取り付けられる操作部材36を含む。準備操作では操作部材36が初期位置から停止位置に移動され、準備操作以降の操作では操作部材36が待機位置から停止位置に移動される。これによって準備操作における押圧部材34の移動距離は準備操作以降の操作における押圧部材34の移動距離よりも長くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は定量吐出装置に関し、より特定的には、シリンジの栓体をシリンジの容器の軸方向かつ吐出口側に移動させることによって吐出口から収容物を所定量ずつ吐出させる定量吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、たとえば特許文献1に開示されているような、液状の薬剤が予め充填されたシリンジ(プレフィルドシリンジ)と、シリンジの栓体を移動させることによってシリンジの容器から薬剤を所定量ずつ吐出させる定量吐出装置とを含む、定量吐出シリンジが知られている。定量吐出シリンジに用いられる定量吐出装置では、操作部材を移動させることによって、外筒に収容される内筒が押圧部材とともに吐出口側に移動し、押圧部材が栓体を吐出口側に押圧する。これによって栓体が吐出口側に移動し、吐出口から薬剤が吐出される。
【0003】
シリンジと定量吐出装置とを連結する際に押圧部材が栓体を押圧すると容器が破損するおそれがある。栓体の打栓工程において容器内に混入する空気の量は一定ではなく、加熱滅菌工程において空気の膨張による栓体の移動量も一定ではないために、容器内の栓体の位置はシリンジ毎にばらつく。このようにシリンジ毎に栓体の位置が異なっていても容器を破損させることのないように、定量吐出装置には、シリンジと定量吐出装置とを連結した状態で押圧部材と栓体との間に確実に空隙を形成するように押圧部材が設けられる。
【0004】
通常、このような定量吐出シリンジは、吐出口を上に向けた状態で操作部材を移動させる準備操作を行うことによって、容器内の空気を排出してから使用される。つまり、使用前の準備操作によってエア抜きされる。従来、上述のように押圧部材と栓体との間に空隙が形成されているので、1回の準備操作における押圧部材の移動距離が短い場合、準備操作を複数回行うことによってエア抜きしていた。
【特許文献1】特表平9−503150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術の定量吐出シリンジでは、何回の準備操作でエア抜きが完了するのかを使用者が把握していない場合、収容物を無駄に吐出することがないように操作部材を慎重に操作しなければならず、エア抜きに手間がかかるという問題があった。
それゆえに、この発明の主たる目的は、簡単にかつ確実にシリンジのエア抜きをできる、定量吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の定量吐出装置は、一方端部に吐出口を有する筒状の容器と前記容器内に設けられる栓体とを含むシリンジに連結され、前記栓体を前記容器の軸方向かつ前記吐出口側に移動させることによって前記容器の収容物を前記吐出口から所定量ずつ吐出させる定量吐出装置であって、前記軸方向に延びる外筒、前記軸方向に移動可能に前記外筒に収容される内筒、前記外筒と前記内筒とを挿通し、前記内筒とともに前記軸方向かつ前記吐出口側に移動することによって前記栓体を押圧する押圧部材、前記軸方向に移動可能に設けられ、前記軸方向かつ前記吐出口側に移動されることによって前記内筒と前記押圧部材とを前記軸方向かつ前記吐出口側に移動させる操作部材、所定の停止位置で前記操作部材を係止する係止部、前記操作部材を前記停止位置よりも前記軸方向かつ前記吐出口とは反対側の初期位置に配置する配置手段、および前記操作部材を前記停止位置から前記軸方向かつ前記停止位置と前記初期位置との間の待機位置に戻す復帰手段を備え、準備操作では前記配置手段によって前記初期位置に配置される前記操作部材を前記停止位置に移動させることで前記押圧部材を移動させ、前記準備操作以降の操作では前記復帰手段によって前記待機位置に戻された前記操作部材を前記停止位置に移動させることで前記準備操作よりも短い距離で前記押圧部材を移動させる。
【0007】
請求項2に記載の定量吐出装置は、請求項1に記載の定量吐出装置において、前記係止部は前記外筒に設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の定量吐出装置は、請求項1に記載の定量吐出装置において、前記外筒の前記吐出口側端部に設けられ、前記内筒を係止する蓋部材をさらに含み、前記係止部は前記蓋部材によって係止される前記内筒の前記吐出口とは反対側の端部に設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の定量吐出装置は、請求項1から3のいずれかに記載の定量吐出装置において、前記配置手段によって前記初期位置に配置される前記操作部材が前記軸方向かつ前記吐出口側に動かないように前記操作部材の動きを規制する規制手段をさらに含むことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の定量吐出装置では、準備操作における操作部材の移動距離が準備操作以降の操作における操作部材の移動距離よりも長く、準備操作における押圧部材の移動距離が準備操作以降の操作における押圧部材の移動距離よりも長くなる。このように準備操作における押圧部材の移動距離を長くすることによって、栓体の移動距離を長くでき、1回の準備操作で簡単にかつ確実にシリンジのエア抜きをできる。また、準備操作における押圧部材の移動距離を長くすることによって、栓体が容器に固着している場合であっても栓体を確実に移動させることができ、準備操作以降の操作における栓体の動きを滑らかにできる。
【0011】
操作部材を停止位置で係止する係止部は、たとえば請求項2に記載するように外筒に設けてもよいし、たとえば請求項3に記載するように蓋部材によって係止される内筒の吐出口とは反対側の端部に設けてもよい。
【0012】
請求項4に記載の定量吐出装置では、初期位置に配置される操作部材の軸方向かつ吐出口側への動きが規制手段によって規制されるので、使用前における操作部材の誤動作を防止でき、シリンジの容器が破損することを防止できる。ひいては、シリンジから収容物が漏れ出すことを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、簡単にかつ確実にシリンジのエア抜きをできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。
図1を参照して、この発明の一実施形態の定量吐出シリンジは10は、液状の薬剤L(図3参照)が予め充填されたプレフィルドシリンジ(以下、単にシリンジという)12と、シリンジ12から収容物である薬剤Lを所定量(たとえば50μL)ずつ吐出させるための定量吐出装置14とを含む。
【0015】
図2および図3に示すように、シリンジ12は、矢印A方向(軸方向)に延びる円筒状の容器16と、容器16内に摺動可能に設けられる栓体18とを含む。容器16の一方端部には吐出部20が設けられ、吐出部20には薬剤Lを吐出するための吐出口20aが設けられる。また、容器16の他方端部には、定量吐出装置14の押圧部材34(後述)が挿入される挿入口16aと鍔部22とが設けられる。このような容器16はたとえばガラス等からなる。容器16の吐出部20には、吐出口20aを塞ぐキャップ24が取り付けられる。
【0016】
栓体18は、たとえばブチルゴム等の弾性部材からなり、その外周面に複数の環状突起を有する円柱状に形成される。栓体18の各環状突起の外径は栓体18が容器16内を摺動可能な範囲で容器16の内径よりも大きく、栓体18の各環状突起は容器16の内周面に密着する。したがって、容器16内で栓体18から挿入口16a側に薬剤Lが漏れ出すことはない。このような栓体18は、容器16内で栓体18と吐出口20aとの間に残る空気をできるだけ少なくするために、真空打栓、エア針打栓またはベントチューブ打栓等の方法によって容器16内に配置される。
【0017】
図2および図3に示すように、定量吐出装置14は、矢印A方向に延びる外筒26、外筒26に収容される内筒28、外筒26に収容されるばね30、外筒26に挿入される蓋部材32、外筒26と内筒28と蓋部材32とを挿通する押圧部材34、および外筒26に取り付けられる操作部材36を含む。
【0018】
外筒26は、矢印A方向に延びる円筒状に形成され、貫通孔38を有する。外筒26は、開口端38aを有するシリンジ12側の大径部26aと、開口端38bを有しかつ大径部26aよりも外径および内径が小さい小径部26bとによって構成される。図3に示すように、外筒26内には段部26cが設けられる。このような外筒26は、たとえばPP(ポリプロピレン)等の合成樹脂からなる。
【0019】
大径部26aの外周面には、使用者が指を掛けるための2つの突起が設けられる。また、図3に示すように、大径部26aの側壁には、矢印A方向に直交する方向に並ぶ2つの貫通孔40が形成される。
【0020】
小径部26bには、開口端38bから中央部近傍にかけて操作部材36を配置するための配置部42が設けられる。配置部42は、環状突起44,46を含む。配置部42は、環状突起44,46以外の部分の外径が小径部26bの配置部42以外の部分の外径よりも小さくなるように設けられる。環状突起44は開口端38b近傍に設けられ、環状突起46は環状突起44と配置部42の段部42aとの間に設けられる。図4に示すように、環状突起44には、開口端38b側に延びる一対の突起48a,48bと一対の突起48c,48dとが設けられる。また、環状突起44には、矢印B方向(周方向)に直交する方向(矢印A方向:図2および図3参照)に延びる2つの切り欠き部50が設けられる。一方の切り欠き部50は突起48a,48b間かつ突起48b近傍から矢印A方向に延び、他方の切り欠き部50は突起48c,48d間かつ突起48d近傍から矢印A方向に延びる。図3に示すように、環状突起46は、環状突起44側に外径が小さくなるように設けられる。
【0021】
図2および図5に示すように、内筒28は矢印A方向に延びる貫通孔52を有する略円筒状に形成される。内筒28の外周面には、中央部よりもややシリンジ12側の位置に鍔部54が設けられる。図5に示すように、内筒28の側壁には、開口端52aから鍔部54にかけて一対の凹部56aが設けられる。一対の凹部56aは、内筒28の側壁を矢印A方向に直交する方向から挟むように設けられる。これによって、内筒28の貫通孔52は、操作部材36側の開口端52aからみて略I字状となる(図4参照)。また、内筒28には、鍔部54からシリンジ12側にかけて側壁から切り離される一対の凹部56bが設けられる。一対の凹部56bはそれぞれ凹部56aと矢印A方向に並び、一対の凹部56bの対向面にはシリンジ12側に高くなる鋸歯状の突起58が設けられる。このような内筒28は、たとえばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)等の合成樹脂からなる。
【0022】
図2に示すように、ばね30は、棒状部材を螺旋状に形成することによって得られる。ばね30は、たとえばステンレス等の金属からなる。
【0023】
図6に示すように、蓋部材32は底板60を有する円筒状に形成され、底板60の中央には内筒28の貫通孔52と略同形状の貫通孔62が設けられる。底板60には、開口端33側の面(図6においては上面)に内筒28の一対の凹部56b(図3参照)と矢印A方向に並ぶように一対の揺動部64が立設される。図3および図6に示すように、一対の揺動部64の内筒28側の端部には、シリンジ12側に高くなる鋸歯状の突起66が互いの頂部を対向させて設けられる。
【0024】
また、底板60のシリンジ12側の面(図6においては下面)には、連結部材88(後述)が挿入される挿入部68が設けられる。図2に示すように、挿入部68には貫通孔70が設けられる。なお、図2には1つの貫通孔70のみが示されているが、貫通孔70は矢印A方向に直交する方向に並ぶように挿入部68に2つ設けられる。
【0025】
蓋部材32の外周面かつ開口端33近傍には鍔部72が設けられ、蓋部材32の外周面かつ鍔部72よりもシリンジ12側には外筒26の貫通孔40に嵌合する突起74が設けられる。このような蓋部材32は、たとえばPP等の合成樹脂からなる。
【0026】
図2〜図4に示すように、押圧部材34は、内筒28の貫通孔52に対応する略円柱状に形成される。詳しくは、押圧部材34は、矢印A方向に直交する方向から挟むように2つの凹部76が設けられる略円柱状に形成され、断面略I字状となる(図4参照)。図3に示すように、2つの凹部76の底面にはそれぞれ、複数の突起78が等間隔に設けられる。各突起78はシリンジ12側に低くなる鋸歯状に形成される。このような押圧部材34は、たとえばPOM(ポリアセタール)等の合成樹脂からなる。
【0027】
図2および図3に示すように、操作部材36は、シリンジ12側に開口する筒状に形成され、矢印A方向に延びる円筒部80と、円筒部80に設けられる円板状のボタン部82とを含む。図3および図4に示すように、円筒部80の内周面かつ開口端近傍には、円弧状の突起84が対向するように2つ設けられる。未使用時には突起84が配置部42の環状突起44,46間に配置される。この実施形態では、配置部42の環状突起44,46と操作部材36の2つの突起84とによって配置手段が構成され、図3に示す位置が操作部材36の初期位置となる。
【0028】
また、図3に示すように、円筒部80の内周面には矢印A方向に延びる突起86が設けられる。図4に示すように、突起86は、外筒26の突起48a,48b間と外筒26の突起48c,48d間とに1つずつ配置される。図4の状態では2つの突起86がそれぞれ環状突起44に接する。したがって、図4の状態では、ボタン部82が矢印A方向かつシリンジ12側に押圧されても、操作部材36が移動することはない。この実施形態では、配置部42の環状突起44と操作部材36の2つの突起86とによって規制手段が構成される。
【0029】
図7に示すように、操作部材36を操作する際には、図4に示す状態から矢印B方向の一方(ここでは時計回り方向)に操作部材36を回転させることによって、2つの突起86がそれぞれ切り欠き部50上に配置される。そして、この状態でボタン部82が押圧されることによって、操作部材36が矢印A方向かつシリンジ12側に移動する。矢印A方向かつシリンジ12側に移動する操作部材36は、円筒部80内でボタン部82が外筒26の開口端38bに接することによって停止する。つまり、操作部材36は外筒26の開口端38bによって係止される。この実施形態では、外筒26の開口端38bが係止部に相当する。
【0030】
定量吐出装置14は、上述の各部材をたとえば以下のように組み立てることによって得られる。まず、突起58が矢印A方向に並ぶ2つの突起78間に位置するように内筒28に押圧部材34を挿通させる。そして、押圧部材34が挿通される内筒28とばね30とを、内筒28、ばね30の順に開口端38a側から外筒26に収容し、蓋部材32を開口端38a側から外筒26に挿入する。蓋部材32は、突起74を貫通孔40に嵌合させることによって外筒26に固定される。その後、操作部材36の突起84に配置部42の環状突起44を乗り越えさせることによって、操作部材36が外筒26に取り付けられる。
【0031】
図3に示すように、定量吐出装置14では、ばね30を内筒28の鍔部54と蓋部材32の鍔部72とで挟むことによって、内筒28が矢印A方向かつシリンジ12とは反対側に付勢され、内筒28の鍔部54が外筒26の段部26cに接する。鍔部54が段部26cに接した状態では、内筒28の開口端52aが外筒26の開口端38bから突出する。また、未使用時には、内筒28を挿通する押圧部材34が操作部材36のボタン部82に接する。この実施形態では、内筒28、ばね30および蓋部材32によって復帰手段が構成される。
【0032】
また、図2および図3に示すように、定量吐出シリンジ10は、シリンジ12と定量吐出装置14とを連結するための連結部材88を含む。連結部材88は、外形楕円の筒状に形成される大径部88aと、その内径が容器16の外径よりも僅かに大きい円筒状の小径部88bとによって構成される。図2および図3に示すように、大径部88aの内周面には2つの突起90が設けられる。また、図2に示すように、大径部88aの外周面には蓋部材32の貫通孔70に嵌合する突起92が設けられる。なお、図2には、1つの突起92のみが示されているが、突起92は矢印A方向に直交する方向に並ぶように大径部88aの外周面に2つ設けられる。
【0033】
シリンジ12と定量吐出装置14とは、容器16を連結部材88に挿通し、連結部材88の大径部88aを蓋部材32の挿入部68に挿入することによって連結される。連結部材88は、大径部88aの突起92を挿入部68の貫通孔70に嵌合させることによって、蓋部材32に固定される。図3に示すように、連結部材88が蓋部材32に固定された状態では、容器16の鍔部22が蓋部材32の底板60と大径部88aの突起90とに挟まれ、小径部88bの内周面と容器16の外周面とが接しかつ鍔部22の外周面が大径部88aの内周面に接する。したがって、定量吐出装置14に連結されたシリンジ12が矢印A方向および矢印A方向に直交する方向に動くことはない。また、図3から、定量吐出装置14の押圧部材34は、未使用時に押圧部材34と栓体18との間に空隙を形成するように設けられていることがわかる。
【0034】
通常、真空打栓、エア針打栓またはベントチューブ打栓等によって栓体18を容器16内に配置しても容器16内には空気が残ってしまう。そこで、定量吐出シリンジ10は、容器16に残った空気を排出するための準備操作を行ってから使用される。つまり、定量吐出シリンジ10は、準備操作によってエア抜きをしてから使用される。
【0035】
ついで、図8を参照して、準備操作時の定量吐出シリンジ10の動作について説明する。準備操作は、キャップ24に代えて図示しない注射針を吐出部20(図3参照)に取り付けた状態で行われる。また、図8(a)に示すように、準備操作はボタン部82を下に向けた状態で行われる。つまり、準備操作は、吐出口20a(図3参照)を上に向けることによって吐出口20a側に空気を集めて行われる。
【0036】
まず、初期位置にある操作部材36{図8(a)参照}が押圧されることによって、突起84が配置部42の環状突起46を乗り越えるように円筒部80が弾性変形し、操作部材36が矢印A方向かつシリンジ12側に移動する。これによって、押圧部材34が操作部材36に押圧され矢印A方向かつシリンジ12側に移動する。
【0037】
つづいて、押圧部材34の1つ目の突起78が揺動部64の突起66に接する。突起66がシリンジ12側に高くなる鋸歯状に形成されかつ突起78がシリンジ12側に低くなる鋸歯状に形成されているので、押圧部材34の移動に伴って突起66の頂部が突起78の斜面を滑り、押圧部材34の移動が進むにつれて突起66が突起78によって外側に押圧される。これによって、一対の揺動部64の底板60近傍がそれぞれ弾性変形し、互いの突起66が離れるように一対の揺動部64が揺動する。
【0038】
そして、図8(b)に示すように、操作部材36の突起84が配置部42の環状突起46を乗り越えることによって、外筒26内では押圧部材34の1つ目の突起78が揺動部64の突起66を乗り越え、操作部材36内では内筒28の開口端52aがボタン部82に接する。製造工程でシリンジ12毎に栓体18の位置が異なっても、栓体18は少なくとも図8(b)の状態で押圧部材34に接するように容器16内に配置されている。
【0039】
図8(b)に示す状態からばね30の付勢に逆らって操作部材36が押圧されることによって、内筒28および押圧部材34が矢印A方向かつシリンジ12側に移動する。これとともに押圧部材34によって押圧される栓体18が矢印A方向かつ吐出口20a(図3参照)側に移動し、容器16内の空気が吐出部20(図3参照)に取り付けられる注射針を介して外部に排出される。
【0040】
そして、図8(c)に示すように、操作部材36が外筒26の開口端38bに接することによって、操作部材36が停止する。つまり、図8(c)に示す位置が操作部材36の停止位置となる。このように操作部材36を初期位置{図8(a)参照}から停止位置{図8(c)参照}に移動させることによって、押圧部材34が使用開始位置(ここでは2つ目の突起78が突起66を乗り越える位置)に移動され、エア抜きが完了する位置に栓体18が移動される。
【0041】
その後、操作部材36への押圧が解除されることによって、ばね30に付勢される内筒28および操作部材36が矢印A方向かつシリンジ12とは反対側に移動する。このとき、押圧部材34の突起78と蓋部材32の突起66とが互いの平行な面で係合しているので、押圧部材34が内筒28とともに矢印A方向かつシリンジ12とは反対側に移動することはない。また、突起58がシリンジ12側に高くなる鋸歯状に形成されかつ突起78がシリンジ12側に低くなる鋸歯状に形成されているので、内筒28の移動に伴って突起58の頂部が突起78の斜面を滑り、内筒28の移動が進むにつれて突起58が突起78によって外側に押圧される。これによって、一対の凹部56bの鍔部54近傍がそれぞれ弾性変形し、互いの突起58が離れるように一対の凹部56bが揺動する。そして、図8(d)に示すように、突起58が1つの突起78を乗り越えるとともに突起84が環状突起46に接することによって操作部材36が停止する。つまり、図8(d)に示す位置が操作部材36の待機位置となる。
【0042】
このような準備操作の後、操作部材36を待機位置{図8(d)参照}から停止位置{図8(c)参照}に移動させることによって、内筒28の突起58と押圧部材34の突起78とが互いの平行な面で係合し、押圧部材34が内筒28とともに矢印A方向かつシリンジ12側に移動する。これによって、押圧部材34が栓体18を矢印A方向かつ吐出口20a(図3参照)側に所定の距離だけ移動させる。
【0043】
図8からわかるように、定量吐出装置14では、準備操作における操作部材36の移動距離D1が準備操作以降の操作における操作部材36の移動距離D2よりも長く、準備操作における押圧部材34の移動距離が準備操作以降の操作における押圧部材34の移動距離よりも長くなる。これによって、準備操作における栓体18の移動距離を準備操作以降の操作における栓体18の移動距離よりも長くできる。
【0044】
このような定量吐出シリンジ10によれば、準備操作における押圧部材34の移動距離を準備操作以降の操作における押圧部材34の移動距離よりも長くすることによって、1回の準備操作で確実にエア抜きが完了する位置に栓体18を移動させることができる。したがって、1回の準備操作によって、簡単にかつ確実にシリンジ12のエア抜きをできる。
【0045】
準備操作における押圧部材34の移動距離を長くすることによって、栓体18が容器16に固着している場合であっても栓体18を確実に移動させることができ、準備操作以降の操作における栓体18の動きを滑らかにできる。
【0046】
操作部材36が初期位置にあるときに突起86が環状突起44に接することによって操作部材36の矢印A方向かつシリンジ12側への動きが規制されるので、使用前における操作部材36の誤動作を防止でき、容器16が破損することを防止できる。ひいては、シリンジ12から薬剤Lが漏れ出すことを防止できる。
【0047】
なお、上述の定量吐出装置14では、外筒26の開口端38bによって操作部材36を係止する場合について説明したが、外筒の他の部分に係止部を設けてもよい。たとえば、配置部の段部によって操作部材を係止するようにしてもよい。
【0048】
ついで、図9および図10を参照して、この発明の他の実施形態について説明する。
図9および図10に示す定量吐出シリンジ10aでは、上述の定量吐出装置14に代えて定量吐出装置14aが用いられる。定量吐出装置14aには、内筒28、蓋部材32、押圧部材34および操作部材36に代えて、内筒28a、蓋部材32a、押圧部材34aおよび操作部材36aが用いられる。それ以外については、定量吐出装置14と14aとは同様に構成されるので、重複する説明は省略する。また、内筒28a、蓋部材32a、押圧部材34aおよび操作部材36aにおいて、内筒28、蓋部材32、押圧部材34および操作部材36と同様に構成される部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
内筒28aには、鍔部54のシリンジ12側の面かつ一対の凹部56bを囲むように円筒部94が設けられる。蓋部材32aの側壁は、蓋部材32aの開口部の直径が蓋部材32の開口部の直径よりも小さくなるように、蓋部材32の側壁よりも厚みが大きく形成される。したがって、蓋部材32aの開口端33aの面積は蓋部材32の開口端33の面積よりも大きくなる。
【0050】
操作部材36aの円筒部80aは、操作部材36の円筒部80よりも矢印A方向寸法が大きくなるように形成される。同様に、操作部材36aの突起86aは、操作部材36の突起86よりも矢印A方向寸法が大きくなるように形成される。また、図10に示すように、ボタン部82のシリンジ12側の面には、円筒部80a内で押圧部材34aの外周面を囲むように円筒部96が設けられる。
【0051】
図10に示すように、押圧部材34aは、操作部材36aが初期位置に配置された状態で操作部材36aのボタン部82に接するように、操作部材36aに最も近い突起78から操作部材36a側の端面までの寸法が大きくなるように押圧部材34よりも矢印A方向に延ばされる。
【0052】
ついで、図11を参照して、定量吐出装置14aが用いられる定量吐出シリンジ10aの準備操作時の動作について説明する。
まず、初期位置の操作部材36a{図11(a)参照}が押圧されることによって、押圧部材34aが操作部材36aに押圧され矢印A方向かつシリンジ12側に移動する。そして、図11(b)に示すように、操作部材36aの突起84が配置部42の環状突起46を乗り越えた状態では、操作部材36の円筒部96の開口端が内筒26aの開口端52aに接する。
【0053】
図11(b)に示す状態からばね30の付勢に逆らって操作部材36aが押圧されることによって、内筒28aおよび押圧部材34aが矢印A方向かつシリンジ12側に移動する。これとともに押圧部材34aによって押圧される栓体18が矢印A方向かつ吐出口20a(図10参照)側に移動し、容器16内の空気が外部に排出される。
【0054】
そして、図11(c)に示すように、内筒28aの円筒部94の開口端が蓋部材32aの開口端33aに接することによって内筒28aが停止し、内筒28aの開口端52aに接する操作部材36aが停止する。したがって、この実施形態では、内筒28aの開口端52aが係止部として機能する。操作部材36aが図11(c)の停止位置で停止したとき、押圧部材34aが使用開始位置に移動され、エア抜きが完了する。
【0055】
その後、操作部材36aの押圧が解除されることによって、ばね30に付勢される内筒28aおよび操作部材36aが矢印A方向かつシリンジ12とは反対側に移動し、図11(d)に示す待機位置に操作部材36aが戻される。
【0056】
図11からわかるように、定量吐出装置14aにおいても上述の定量吐出装置14と同様に、準備操作における操作部材36aの移動距離D1が準備操作以降の操作における操作部材36aの移動距離D2よりも長く、準備操作における押圧部材34aの移動距離が準備操作以降の操作における押圧部材34aの移動距離よりも長くなる。したがって、定量吐出シリンジ10aによれば、上述の定量吐出シリンジ10と同様に、1回の準備操作によって、簡単にかつ確実にシリンジ12のエア抜きをできる。
【0057】
なお、上述の実施形態では、規制手段を環状突起44と突起86(86a)とによって構成する場合について説明したが、規制手段はこれに限定されない。たとえば、規制手段として図1に破線で示すストッパ98を用い、配置部42の段部42aと円筒部80の開口端との間にストッパ98を取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】この発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の実施形態の分解斜視図である。
【図3】図1の実施形態のX−X断面図である。
【図4】図1の実施形態のY−Y断面図である。
【図5】内筒の断面図である。
【図6】蓋部材の断面図である。
【図7】図4の状態から操作部材を回転させた状態を示す断面図である。
【図8】図1の実施形態の準備操作時の動作を示す断面図である。
【図9】この発明の他の実施形態の分解斜視図である。
【図10】図9の実施形態の断面図である。
【図11】図9の実施形態の準備操作時の動作を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10,10a 定量吐出シリンジ
12 シリンジ
14,14a 定量吐出装置
16 容器
18 栓体
20a 吐出口
26 外筒
28,28a 内筒
30 ばね
32,32a 蓋部材
33,33a,38a,38b,52a 開口端
34,34a 押圧部材
36,36a 操作部材
44,46 環状突起
48a,48b,48c,48d,58,66,78,84,86,86a 突起
50 切り欠き部
80,94,96 円筒部
98 ストッパ
薬剤L

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端部に吐出口を有する筒状の容器と前記容器内に設けられる栓体とを含むシリンジに連結され、前記栓体を前記容器の軸方向かつ前記吐出口側に移動させることによって前記容器の収容物を前記吐出口から所定量ずつ吐出させる定量吐出装置であって、
前記軸方向に延びる外筒、
前記軸方向に移動可能に前記外筒に収容される内筒、
前記外筒と前記内筒とを挿通し、前記内筒とともに前記軸方向かつ前記吐出口側に移動することによって前記栓体を押圧する押圧部材、
前記軸方向に移動可能に設けられ、前記軸方向かつ前記吐出口側に移動されることによって前記内筒と前記押圧部材とを前記軸方向かつ前記吐出口側に移動させる操作部材、
所定の停止位置で前記操作部材を係止する係止部、
前記操作部材を前記停止位置よりも前記軸方向かつ前記吐出口とは反対側の初期位置に配置する配置手段、および
前記操作部材を前記停止位置から前記軸方向かつ前記停止位置と前記初期位置との間の待機位置に戻す復帰手段を備え、
準備操作では前記配置手段によって前記初期位置に配置される前記操作部材を前記停止位置に移動させることで前記押圧部材を移動させ、前記準備操作以降の操作では前記復帰手段によって前記待機位置に戻された前記操作部材を前記停止位置に移動させることで前記準備操作よりも短い距離で前記押圧部材を移動させる、定量吐出装置。
【請求項2】
前記係止部は前記外筒に設けられる、請求項1に記載の定量吐出装置。
【請求項3】
前記外筒の前記吐出口側端部に設けられ、前記内筒を係止する蓋部材をさらに含み、
前記係止部は前記蓋部材によって係止される前記内筒の前記吐出口とは反対側の端部に設けられる、請求項1に記載の定量吐出装置。
【請求項4】
前記配置手段によって前記初期位置に配置される前記操作部材が前記軸方向かつ前記吐出口側に動かないように前記操作部材の動きを規制する規制手段をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の定量吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−29558(P2008−29558A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205717(P2006−205717)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人科学技術振興機構、「アレルギー性鼻炎治療剤」委託開発、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【出願人】(507229124)
【出願人】(000108339)ゼリア新薬工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】