説明

定量噴射機構および、この定量噴射機構を備えたエアゾール式製品

【課題】エアゾール式製品の定量バルブ機構において、内容物の定量噴射量の一定化,安定化を図る。
【解決手段】定量室Aから容器内部にいたる内容物通路に、静止モードにおける当該通路を閉状態に設定するためのボール弁9および弁座7bからなる弁作用部を設けた。定量室Aに充填された内容物に混在する液化ガスが気化して容器本体内部の気相と同圧になったときにも、定量室A内の当該内容物が容器本体の内容物液面まで逆流して減少するのを前記弁作用部9,7bで阻止して、次の作動モードにおいて内容物噴射量が低下しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器の定量噴射後に定量室と容器内部との間の内容物通路の一部が閉状態に初期設定されることにより、この定量室に収納済みで次回の定量噴射対象となる静止モードの定量室内容物が容器内部に流れていかないようにした定量噴射機構に関する。
【0002】
エアゾール容器の定量噴射機構においても通常の非定量連続噴射機構の場合と同じように、作動モード設定操作の終了にともない容器内部の内容物がステム側(ハウジング側)の定量室にいわば充填される。
【0003】
この充填内容物が静止モードの定量室にそのまま収納保持されて次回の作動モード設定操作により一定量の内容物が外部空間に噴射される、すなわち定量噴射機構の噴射量が低下しないことが望ましく、本発明はこのような要請に応えるものである。
【0004】
なお本明細書では、ステム孔部(=内容物通過用孔部)が閉じてハウジング内部と外部空間域が連通しない状態を示す語として「静止モード」を用い、ステム孔部が開いてハウジング内部と外部空間域が連通した状態を示す語として「作動モード」を用いる。
【背景技術】
【0005】
従来、作動モード設定操作と連動するステムがハウジング内部の上流側環状シール部材などと当接し、この当接部分と、当該操作によりステムガスケットとのシール状態から開放された内容物通過用の下流側ステム孔部との間に画定される定量室の内容物を、外部空間に噴射する定量噴射機構が用いられている(特許文献1参照)。
【0006】
ここで作動モード設定操作の終了により静止モードに移行すると、すなわちステムが初期位置に復帰してステム孔部がステムガスケットで閉塞され、かつ、定量室のいわば上流側端部ともいえるステムと上記環状シール部材などとの当接状態が解除されて定量室と容器内部とが連通すると、容器内容物がこの定量室に流入する。そして、この流入内容物が次回の作動モード設定操作で外部空間に定量噴射される。
【0007】
このような従来の定量噴射機構の場合、作動モードから静止モードに移行したまま放置されると定量室の液面が下がり、次回使用時に噴射量の低下がみられる。
【0008】
この液面低下の原因は、ハウジングの定量室に内容物ともに流入した噴射剤(液化ガス)の一部が気化して定量室上側に気相部が形成され、当該気相部の圧力が上昇していくことである。当該圧力が容器内部上側の噴射剤気相部の圧力と同じになれば、定量室の液面(気相部の下端面)は容器内部のそれと同じ高さになるまで下がる。
【特許文献1】特開平11−300242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように従来の定量噴射機構は、静止モードの継続にともない定量室中の噴射剤(液化ガス)が気化して、定量室上側の気相部と容器内部上側の噴射剤気相部との間に内容物が挟まれたいわばU字管のような「気相部(定量室)−液相部−気相部(容器内部)」の連続空間域が形成される。
【0010】
定量室内の噴射剤の気化にともなって定量室気相部の圧力が増加することにより、定量室の液面が下がってしまう。
【0011】
そのため、次のエアゾール容器作動時の噴射対象域となる定量室に十分な量の内容物が収納されずに、外部空間へ定量噴射される内容物の量が低下してしまうという問題点があった。
【0012】
そこで本発明では、定量室から容器内部にいたる内容物通路(例えばハウジング下部や内容物通過用のチューブなど)の一部に、少なくとも静止モードにおける当該通路を閉状態に設定するための弁作用部を設け、これにより次回の噴射対象物である定量室の内容物が容器内部の方にいわば逆流するのを防止して、内容物の定量噴射量の一定化,安定化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)エアゾール容器のハウジング部分に形成される定量室(例えば後述の定量室A,A’)の内容物が、作動モード設定操作と連動するステム(例えば後述のステム2)を介して外部空間に噴射される定量噴射機構において、
前記定量室と容器内部との間の内容物通路の一部を少なくとも静止モードのときに閉状態に初期設定して当該定量室から当該容器内部への内容物の流れを阻止し、
かつ、作動モード設定操作にともなう当該内容物通路の容器内部側と外部空間側との圧力差で生じる当該容器内部から当該定量室への内容物の流れにより、当該一部を初期設定の閉状態から開状態に移行させるための、
弁作用部(例えば後述のボール弁9,弁座7b,7d’)を、
当該内容物通路に設ける。
(2)上記(1)において、
前記定量室として、
前記ステムの内容物通過用孔部(例えば後述の横孔部2b)に対するステムガスケット(例えば後述のステムガスケット6)と、当該ステムがその作動モード位置において当接する環状シール部(例えば後述の環状シール部材8)とで画定される空間(例えば後述の定量室A)を用い、
前記弁作用部として、
前記環状シール部の上流側に設けられ、かつ、作動モード設定操作の終了により前記ステムと当該環状シール部との当接状態が解除されて前記容器内部から前記画定空間に流入する内容物に押圧される逆止弁(例えば後述のボール弁9)と、当該逆止弁の受け部分(例えば後述の弁座7b)を用いる。
(3)上記(1)において、
前記定量室として、
前記ステムの内容物通過用孔部(例えば後述の横孔部2b)に対するステムガスケット(例えば後述のステムガスケット6)と、静止モード位置の前記弁作用部とで画定される空間(例えば後述の定量室A’)を用い、
前記弁作用部として、
作動モード設定操作に基づく定量噴射時に前記容器内部から流入する内容物に押圧される逆止弁(例えば後述のボール弁9)と、静止モードの当該逆止弁の受け部分(例えば後述の弁座7d’)とを用い、
前記画定空間には、
定量噴射後の段階で、前記流入内容物に押圧されて筒状の定量室内通路域(例えば後述のブッシュ8’,通路部8a’)を閉じたままの前記逆止弁の下流側となる空間部分に前記容器内部側から内容物を流入させる、ための補助通路域(例えば後述の溝部8d’,切欠部8e’)を備える。
【0014】
このような構成からなる定量噴射機構および、当該定量噴射機構を備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明はこのように、定量室から容器内部にいたる内容物通路(例えばハウジング下部や内容物通過用のチューブなど)の一部に、少なくとも静止モードにおける当該通路を閉状態に設定するための弁作用部を設けているので、次回の噴射対象物である定量室の内容物が容器内部の方にいわば逆流するのを防止して、内容物の定量噴射量の一定化,安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1乃至図6を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
ここで、
図1は、本発明の定量噴射機構(その1)の静止モードを示し、
図2は、図1の押しボタンが押圧操作された作動モード(定量噴射状態)を示し、
図3は、図2に続く押圧操作解除後の定量室充填中モードを示し、
図4は、本発明の定量噴射機構(その2)の静止モードを示し、
図5は、図4の押しボタンが押圧操作された作動モード(定量噴射状態)を示し、
図6は、図5に続く押圧操作解除後の定量室充填済モードを示している。
【0018】
ここで、定量噴射機構(その1)における、
・図1の静止モードでは、内容物通過用のステム孔部および内容物逆流阻止用のボール弁がともに閉じ、
・図2の作動モードでは、ステム孔部が開き、ボール弁が閉じ、
・図3の定量室充填中モードでは、ステム孔部が閉じ、ボール弁が開いている。
【0019】
すなわち、図1の静止モードでは定量室と容器内部との間がボール弁で遮断され、図2の作動モードでは定量室の内容物がステム孔部を経て外部空間域に噴射され、図3の定量室充填中モードではボール弁が開いて容器側の内容物が定量室に流入している。
【0020】
また、定量噴射機構(その2)における、
・図4の静止モードでは、内容物通過用のステム孔部および内容物逆流阻止用の下方弁がともに閉じ、
・図5の作動モードでは、ステム孔部が開き、下方弁が開いて、当該下方弁の上動位置規制用の上方弁が閉じ、
・図6の定量室充填済モードでは、ステム孔部が閉じ、上方弁が開き、下方弁が閉じている。
【0021】
すなわち、図4の静止モードでは定量室と容器内部との間がボール弁で遮断され、図5の作動モードでは定量室の内容物がステム孔部を経て外部空間域に噴射されると同時にボール弁が上動して容器側の内容物が定量室に流入し、図6の定量室充填済モードではボール弁が静止モードの初期位置に戻って下方弁を閉じている。
【0022】
図1〜図6で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば通路域2a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えばステム2)の一部であることを示している。
【0023】
図1〜図3において、
1は外部空間域への通路部が形成された上下動タイプの押しボタン,
2は押しボタン1の通路部と嵌合し、下側部分が後述の上側ハウジング4に配設されて、かつ、後述のコイルスプリング5の弾性作用で図示上方向に付勢されて後述のステムガスケット6とともに弁作用を呈するステム,
2aは押しボタン1の通路部にいたる内容物や噴射剤の通路域,
2bは外部空間域への噴射弁を構成する横孔部,
2cは外周面に形成されて後述のコイルスプリング5の上端部を受ける環状段部,
3は後述の内容物および噴射剤を収納しているエアゾール式製品の容器本体の開口端部側に取り付けられたマウンティングキャップ,
4はステム2を上下動可能な形で収容する筒状の上ハウジング,
4aは後述のコイルスプリング5の下端側を受ける複数のリブ,
4bは当該リブの下端部分の内周面に形成された中間環状部,
4cは当該中間環状部で画定されてステム2の下側外周面を案内する縦孔部,
5はステム2の環状段部2cと上ハウジング4のリブ4aの段部との間に配設されて当該ステムを上方向に付勢するコイルスプリング,
6は上ハウジング4の開口部分とマウンティングキャップ3の天井面との間に取り付けられて当該上ハウジングの内部空間域のシール作用を呈し、また、ステム2の横孔部2bとともに噴射弁として作用するステムガスケット,
7は上ハウジング4の下側筒状部分と嵌合し内容物通路として機能する筒状の下ハウジング,
7aは後述のチューブ10が取り付けられる筒状部,
7bは後述のボール弁9が当接する環状テーパ面形状の弁座(内容物逆流阻止用の弁作用部),
8は上ハウジング4の中間環状部4bと下ハウジング7の上端面部分との間に取り付けられて、作動モード(図2参照)のステム2との当接により定量室を画定するラッパ状の環状シール部材,
8aは下端側開口部の周方向に飛び飛びに形成されて定量室充填モード(図3参照)の後述のボール弁9を受けるとともに、その隙間部分からは内容物が上ハウジング4(定量室)に流入する間歇凸状部,
9は定量噴射終了後などのように定量室内部の圧力が低下した場合に当該圧力と容器内部の噴射剤圧力との差に基づいて流入する内容物の作用で図示上方向に移動し、当該流入にともないこの圧力差が略解消された段階で自重により落下して弁座7bとの当接状態(図1参照)に復帰するボール弁(内容物逆流阻止用の弁作用部),
10は下ハウジング7に取り付けられた内容物流入用のチューブ,
Aは作動モードにおいて上流側の環状シール部材8と下流側のステムガスケット6との間に画定される定量室,
Bは作動モードにおいて定量噴射される内容物の流れ(図2参照),
Cは定量室充填モードにおける内容物の流れ(図3参照),
をそれぞれ示している。
【0024】
ここで、押しボタン1,ステム2,上ハウジング4,下ハウジング7およびチューブ10などはポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。
【0025】
また、マウンティングキャップ3は金属製のものであり、コイルスプリング5は金属製,プラスチック製のものであり、ステムガスケット6はゴム製のものであり,環状シール部材8はプラスチック製,ゴム製のものであり、ボール弁9は金属製,ゴム製,プラスチック製のものである。
【0026】
なお、環状シール部材8はステム2やボール弁9との当接によりその当接部分が変形し、当接作用を受けなくなると元の状態に復帰しようとする。
【0027】
図1〜図3の定量噴射機構の基本的特徴は、定量室Aを画定する環状シール部材8の上流側であって容器内部との間の内容物通路となる下ハウジング7に、弁座7dとボール弁9とからなる内容物逆流阻止用の弁作用部を設けたことである。
【0028】
定量噴射直後のボール弁9(図3参照)は、上述のように容器内部からの流入内容物の作用でいわば押し上げられて間歇凸状部8aに当接し、その状態に保持される。
【0029】
この当接状態で、間歇凸状部8aの間からは内容物が上ハウジング4の内部空間域に流入していく。
【0030】
上ハウジング4などの定量室Aに容器内部からの内容物が十分に流入して定量室Aの圧力が容器内部のそれと略同じになるまで大きくなると、当該内容物の流入も終わり、ボール弁9はその自重で落下して弁座7dと当接する。
【0031】
そのため、内容物とともに定量室Aに入っている噴射剤が気化して気相部の圧力が大きくなったとしても、すでに定量室Aに充填されている内容物がチューブ10を経て容器内部の方に流れることはない。
【0032】
すなわち前回の定量噴射の終了にともなって定量室Aに流入した内容物(図3参照)はそこに保持されたままとなり、次の定量噴射で外部空間に放出される内容物が減少することは生じない。
【0033】
なお、定量噴射動作そのものはこれまでの定量噴射機構のそれと同じであり、図2の作動モードでは、押しボタン1の押圧操作によりステム2が下動し、その横孔部2bと定量室Aとが連通してステム下端側部分と環状シール部材8とが当接した状態になる。
【0034】
そして、この当接部分とステムガスケット6との間の定量室Aに入っている内容物のみがその中の噴射剤(液化ガス)の作用で「横孔部2b−通路域2a−押しボタン1の通路部」を経て外部空間に噴射される。
【0035】
この噴射終了後は上述のように、図3の内容物充填モードに移行して定量室Aの内部に容器内部の内容物が流入する。
【0036】
このとき利用者の押圧操作も終わっているので、ステム2はコイルスプリング5の作用で上方向に移動して初期位置(静止モード位置)に復帰しており、図3の定量室Aへの流入内容物が横孔部2bから外部空間に噴射されることはない。
【0037】
図3の定量室Aへの内容物の流入が進むと上述のようにボール弁9が落下し、それと弁座7dとの間が閉状態となって図1の静止モードに移行する。
【0038】
図4〜図5において、
4’はステム2を上下動可能な形で収容する筒状の汎用ハウジング,
4a’は内部に設けられてステム2の下端外周面を上下方向に案内するとともに、コイルスプリング5の下端部を受ける段部を設けたリブ,
4b’は追加ハウジング部分を取り付けない場合において、内容物流入用のチューブ取り付けるための筒状部,
7’は筒状部4b’の外周面に嵌合する追加ハウジング,
7a’はチューブ10を取り付ける筒状部,
7b’はボール弁9を追加ハウジングの径方向中央に案内するリブ,
7c’はボール弁9を格納する定量室下側空間域,
7d’は図1〜図3の弁座7bに相当し、静止モードにおいてボール弁9が当接して定量室下側空間域7c’の上流側を閉状態にする環状テーパ面形状の弁座(下方弁:弁作用部),
8’はフランジ付き筒形状のブッシュ,
8a’は通路部,
8b’は通路部8a’の上流側に設けられ、筒状部4b’の下端面およびリブ7b’の上端部に当接してブッシュの固定位置を設定するフランジ部,
8c’はボール弁9の密着によって通路部8a’の入口部分を閉状態にする環状テーパ面形状の弁座(上方弁),
8d’はブッシュ外周面の上下方向に設けられ、弁座8c’とボール弁9とが閉状態における内容物流入路として作用する溝部
8e’はフランジ部8b’に設けられ、弁座8c’とボール弁9とが閉状態における内容物流入路として作用する切欠部,
A’は静止モードにおいて弁座7d’に当接した上流側のボール弁9と、下流側のステムガスケット6との間に画定される定量室,
B’は容器本体から定量室下側空間域7c’への内容物の概略的な流れ方向,
C’は定量室下側空間域7c’から容器外部空間への内容物の概略的な流れ方向,
D’は定量室下側空間域7c’から定量室上側空間域の汎用ハウジング4’内や通路部8a’への内容物の概略的な流れ方向,
をそれぞれ示している。
【0039】
なお、汎用ハウジング4’,追加ハウジング7’およびブッシュ8’以外の、押しボタン1,ステム2,マウンティングキャップ3,コイルスプリング5,ステムガスケット6,ボール弁9およびチューブ10はそれぞれ、図1〜図3の同じ参照番号の各構成要素と同一の機能を有している。
【0040】
ここで、汎用ハウジング4’および追加ハウジング7’はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。また、ブッシュ8’はプラスチック製またはゴム製のものである。
【0041】
図示(図4〜図6)の定量噴射機構の基本的特徴は、
(11)静止モードにおける定量室画定用のボール弁9と弁座7d’との弁作用により定量室A’と容器内部との間を遮断状態にしたこと、
(12)一般的な非定量バルブ機構を構成する汎用ハウジング4’の筒状部4b’に、定量室追加用ユニット(追加ハウジング7’,ブッシュ8’およびボール弁9)を取り付ける態様にしたこと、
である。
【0042】
静止モードにおけるこのボール弁9などの弁作用により、図1〜図3の定量噴射機構の場合と同じように、定量室に流入済みの次回噴射対象の内容物がチューブ10を介して容器内部側に流れることは確実に阻止される。これにより内容物の一定量噴射を確保することができる。
【0043】
操作ボタン1,ステム2,マウンティングキャップ3,汎用ハウジング4’,コイルスプリング5およびステムガスケット6は、一般的な非定量バルブ機構のための汎用部品であって、本発明の定量噴射機構のため特別に設計する必要はない。
【0044】
また、これら汎用部品相互の組み立てに際しても特別な行程を必要とせず、組み立て済みの非定量バルブ機構をそのまま流用することもできる。
【0045】
汎用ハウジング4’の筒状部4b’の内周面側にはブッシュ8’が嵌入しており、ブッシュ8’の外周面側に設けられた溝部8d’は当該内周面との間に、内容物通過用断面積の小さな通路部(補助通路域)を形成している。
【0046】
汎用ハウジング4’の筒状部4b’の外周面側には追加ハウジング7’が嵌合しており、ボール弁9はブッシュ8’の下方の定量室下側空間域7c’内を自由に上下移動できる態様で設けられている。
【0047】
なお、追加ハウジング7’の内周面にはリブ7b’が設けられており、ボール弁9が上下方向以外へ移動するのを防止して弁座8c’への密着を確実にしている。
【0048】
また、リブ7b’同士の間は、ボール弁9が自重で落下する際に内容物の通過域として作用する。
【0049】
図4の静止モードにおけるステム2はコイルスプリング5の作用によってステムガスケット6と密接していて、孔部2bは閉状態になっている。
【0050】
定量室A’には前回の定量噴射終了にともなって内容物が容器本体から流入して、ボール弁9は定量室下側空間域7c’下端の弁座7d’に当接している。
【0051】
このように前回の定量噴射の作動が終了した後の静止モード(図4,図6参照)ではボール弁9と弁座7d’とが当接して閉状態になるので、噴射剤として液化ガスを用い、定量室A’に満たされた内容物に混在する当該液化ガスが気化して容器内部の気相と同圧になったときにも、定量室側の当該内容物が容器本体の内容物液面まで逆流することはない。この逆流が阻止されることにより、次の作動モードへの移行時に内容物噴射量が低下するのを防いでいる。
【0052】
図4の状態から利用者によって操作ボタン1が押圧されると、ステム2がコイルスプリング5の弾性力に抗しながら下動して図5の定量噴射モードに移行する。
【0053】
このとき、それまでのステム2とステムガスケット6との密接状態は解除され、孔部2bは開状態になり、汎用ハウジング4’の内部空間域が、ステム2の孔部2b,内部通路域2aおよび操作ボタン1の通路部分,噴射孔(図示せず)を介して容器外部空間と連通する。
【0054】
その結果、容器外部空間と容器内部空間域(汎用ハウジング4’,追加ハウジング7’や容器本体などの各内部空間域)との圧力差によって、当該各ハウジングの内容物がC’方向に流れるて噴射孔から外部に噴射され、容器本体の内容物がB’方向にチューブ10から定量室下側空間域7c’に流入する。
【0055】
この定量室下側空間域7c’への内容物流入にともない、ボール弁9は上方へ移動していき、最後は弁座8c’に密着して通路部8a’の流入側を閉状態に設定する。
【0056】
この閉状態設定により通路部8a’およびその下流側空間域が大気圧にほぼ等しくなるとそれまでの噴射状態は実質的に停止するので、利用者は内容物の定量噴射が終了したことを認識できる。
【0057】
通路部8a’の流入側が閉状態になった後も、通路部8a’の流入側から下流側の空間域の内容物はそれと混在している液化ガスの気化・膨張によってほぼ全て外部に噴出されてしまう。
【0058】
ボール弁9と弁座8c’とが密着して通路部8a’の上流側が閉状態となった後でも、操作ボタン1が押圧されている間は、容器本体の内容物が「定量室下側空間域7c’−切欠部8e’−溝部8d’−汎用ハウジング4’内部空間−孔部2b−内部通路域2a−操作ボタン1の通路部分」を経て外部に噴射されつづけるが、溝部8d’の断面積が小さいので噴射量はわずかである。
【0059】
利用者が図5の操作ボタン1の押圧操作状態を解除すると、ステム2はコイルスプリング5の弾性力によって上方に復帰し、ステムガスケット6と密接して孔部2bは閉状態になる(図6)。
【0060】
上述のように定量噴射の終了にともないほぼ大気圧となった汎用ハウジング4’およびブッシュ8’の内部空間には、容器本体の噴射剤圧力によって定量室下側空間域7c’の内容物がD’方向に流入して、当該ブッシュなどの内部空間圧力が増加する。
【0061】
この圧力増加にともなってブッシュ8’の内部空間と定量室下側空間域7c’とが略同圧になると、弁座8c’に密着していたボール弁9は自重で定量室下側空間域7c’の下端部分に落下して静止モードに復帰する。
【0062】
本発明が以上の実施形態に限定されないこと勿論であり、例えば、
(21)図1〜図6のボール弁9に代えて、円柱形状の弁体,鞘状の弁体,円柱端面を半球形状した弁体など各種形状のものを用いる、
(22)下ハウジング7や追加ハウジング7’に複数の弁体9を入れる、
(23)図1〜図3の弁座7bおよびボール弁9に代えて、スイング式,ダイヤフラム式,ボール以外のリフト式などの、各種逆止弁を用いる、
(24)図4〜図6の(ボール弁9および)弁座7d’による弁作用部に代えて、または、併用して、弁座7d’の上流側に当該弁作用部とは別の内容物逆流阻止用の逆止弁(スイング式,ダイヤフラム式,リフト式など)を設ける、
(25)図4〜図6のブッシュ8’を省略して、筒状部4b’の内周面に溝部8d’や切欠部8e’と同様の作用を呈する溝部などを形成する、
ようにしてもよい。
【0063】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、消臭剤,洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0064】
容器本体の内容物に配合される成分としては、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0065】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0066】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0067】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0068】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0069】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0070】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0071】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0072】
噴射剤としては、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の定量噴射機構(その1)の静止モードを示す説明図である。
【図2】図1の押しボタンが押圧操作された作動モード(定量噴射状態)を示す説明図である。
【図3】図2に続く押圧操作解除後の定量室充填中モードを示す説明図である。
【図4】本発明の定量噴射機構(その2)の静止モードを示す説明図である。
【図5】図4の押しボタンが押圧操作された作動モード(定量噴射状態)を示す説明図である。
【図6】図5に続く押圧操作解除後の定量室充填済モードを示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1:押しボタン
2:ステム
2a:通路域
2b:横孔部
2c:環状段部
3:マウンティングキャップ
4:上ハウジング
4a:リブ
4b:中間環状部
4c:縦孔部
5:コイルスプリング
6:ステムガスケット
7:下ハウジング
7a:筒状部
7b:弁座
8:環状シール部材
8a:間歇凸状部
9:ボール弁
10:チューブ
A:定量室
B:作動モードにおいて定量噴射される内容物の流れ(図2参照)
C:定量室充填モードにおける内容物の流れ(図3参照)
【0075】
(以下は図4〜図6のみで使用)
4’:汎用ハウジング
4a’:リブ
4b’:筒状部
7’:追加ハウジング
7a’:筒状部
7b’:リブ
7c’:定量室下側空間域
7d’:弁座(下方弁)
8’:ブッシュ
8a’:通路部
8b’:フランジ部
8c’:弁座(上方弁)
8d’:溝部
8e’:切欠部
A’:定量室
B’:容器本体から定量室下側空間域7c’への内容物の流れ方向
C’:定量室下側空間域7c’から容器外部空間への内容物の流れ方向
D’:定量室下側空間域7c’から汎用ハウジング4’内や通路部8a’への内容物の流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のハウジング部分に形成される定量室の内容物が、作動モード設定操作と連動するステムを介して外部空間に噴射される定量噴射機構において、
前記定量室と容器内部との間の内容物通路の一部を少なくとも静止モードのときに閉状態に初期設定して当該定量室から当該容器内部への内容物の流れを阻止し、
かつ、作動モード設定操作にともなう当該内容物通路の容器内部側と外部空間側との圧力差で生じる当該容器内部から当該定量室への内容物の流れにより、当該一部を初期設定の閉状態から開状態に移行させるための、
弁作用部を、当該内容物通路に設けた、
ことを特徴とする定量噴射機構。
【請求項2】
前記定量室は、
前記ステムの内容物通過用孔部に対するステムガスケットと、当該ステムがその作動モード位置において当接する環状シール部とで画定される空間からなり、
前記弁作用部は、
前記環状シール部の上流側に設けられ、かつ、作動モード設定操作の終了により前記ステムと当該環状シール部との当接状態が解除されて前記容器内部から前記画定空間に流入する内容物に押圧される逆止弁と、
当該逆止弁の受け部分とからなる、
ことを特徴とする請求項1記載の定量噴射機構。
【請求項3】
前記定量室は、
前記ステムの内容物通過用孔部に対するステムガスケットと、静止モード位置の前記弁作用部とで画定される空間からなり、
前記弁作用部は、
作動モード設定操作に基づく定量噴射時に前記容器内部から流入する内容物に押圧される逆止弁と、
静止モードの当該逆止弁の受け部分とからなり、
前記画定空間は、
定量噴射後の段階で、前記流入内容物に押圧されて筒状の定量室内通路域を閉じたままの前記逆止弁の下流側となる空間部分に前記容器内部側から内容物を流入させる、ための補助通路域を備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の定量噴射機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の定量噴射機構を備え、かつ、噴射剤および内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−47290(P2010−47290A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213580(P2008−213580)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】