説明

定電流電源

【課題】本発明の課題は、誤差を低減させて、出力安定度を向上させる定電流電源を提供することにある。
【解決手段】本発明は、トランス25,25のそれぞれ1次側にフルブリッジ回路及びLC直列共振回路が接続されると共にトランス25,25の2次側にそれぞれ整流器26,26が接続される2つの回路を直流電源11とコンデンサ負荷29間に並列に接続する主充電系及び副充電系と、前記副充電系のトランス25の1次側に並列にLC直列共振回路及びフルブリッジ回路を介して直流電源11が接続されると共に、トランス25の1次側にコンデンサ負荷29が設定電圧値になる短絡するシャント回路が接続される補充電系とを具備し、前記シャント回路によりコンデンサ負荷29への出力電圧を連続的に制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種レーダ装置及び線形加速器等の高電圧コンデンサ充電電源の充電用として使用される定電流電源に係り、特に出力電圧安定度を向上させる場合に利用可能である定電流電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一定周期で急速放電を行うコンデンサ負荷に安定的に充電するための定電流電源として、トランスの1次側にLC直列共振回路及びフルブリッジ回路を介して直流電源が接続され、前記トランスの2次側に整流器を介してコンデンサ負荷が接続されるコンバータがある。前記コンバータでは、コンデンサ負荷が設定電圧に到達したらコンバータをオフする方式が一般的である。
【0003】
図3は従来の定電流電源の動作を説明するためのタイミングチャートである。すなわち、図3に示すように、ドライブ信号A,Bでフルブリッジ回路を駆動し、LC直列共振回路で発生したLC共振電流をトランスの1次側に流すと、トランスの2次側には整流出力の2次側電流が流れてコンデンサ負荷を充電する。前記コンデンサ負荷が設定電圧に到達すると、設定電圧到達信号が抽出されてコンバータをオフする。この場合、コンデンサ負荷の出力電圧が設定電圧に到達してから、コンバータの動作が停止するまでの時間は、出力を出し続けることとなり出力電圧を押し上げて余剰分(誤差分)となる。この余剰分(誤差分)は設定電圧到達タイミングによって異なり、最大で共振動作1回分が余分な電力として2次側へと伝送される。その伝送された電力が設定電圧に対して誤差となり、出力電圧安定度を向上させる上で障害となっていた。
【0004】
図4は従来の定電流電源を示す回路図である。図4において、直流電源11が接続される入力端子12,13間にはコンデンサ14が接続される。前記入力端子12にはダイオード15,16のそれぞれカソードが接続され、前記ダイオード15,16のそれぞれアノードにはダイオード17,18のカソードがそれぞれ対応して接続される。前記ダイオード17,18のそれぞれアノードは入力端子13に接続される。前記ダイオード15,16,17,18のそれぞれ対応したカソードとアノード間には例えばスイッチングトランジスタ等よりなるスイッチ19,20,21,22がそれぞれ対応して接続される。前記ダイオード15,16,17,18及びスイッチ19,20,21,22はフルブリッジ回路を構成する。前記ダイオード15のアノードにはインダクタンス23及びコンデンサ24よりなるLC直列共振回路を介してトランス25の1次側巻線の一端が接続され、前記トランス25の1次側巻線の他端は前記ダイオード16のアノードに接続される。前記トランス25の2次側巻線には整流器26を介して出力端子27,28が接続され、前記出力端子27,28には一定周期で急速放電を行うコンデンサ負荷29が接続される。前記トランス25の1次側巻線の一端にはダイオード32のアノードが接続されると共にダイオード33のカソードが接続される。前記トランス25の1次側巻線の他端にはダイオード30のアノードが接続されると共にダイオード31のカソードが接続される。前記ダイオード30のカソードはダイオード32のカソードに接続され、前記ダイオード33のアノードは前記ダイオード31のアノードに接続される。前記ダイオード32のカソードと前記ダイオード33のアノード間には例えばスイッチングトランジスタ等よりなるスイッチ34が接続される。前記ダイオード30,31,32,33及びスイッチ34は高速シャント回路を構成する。
【0005】
図5は図4の定電流電源の動作を説明するためのタイミングチャートである。すなわち、スイッチ19,22を図5(a)に示すようなドライブ信号Aで駆動すると共にスイッチ20,21を図5(b)に示すようなドライブ信号Bで駆動すると、インダクタンス23及びコンデンサ24よりなるLC直列共振回路によりトランス25の1次側巻線には図5(d)に示すようなLC共振電流が流れる。トランス25の1次側巻線に図5(d)に示すようなLC共振電流が流れると、トランス25の2次側巻線には電流が誘起され、整流器26で整流されて図5(e)に示すような2次側電流(整流出力)が出力端子27,28を介してコンデンサ負荷29に供給されて充電される。而して、コンデンサ負荷29が例えば50kV等の所定の設定電圧に到達すると、図5(c)に示すような設定電圧到達信号がスイッチ34に印加されてダイオード30,31,32,33及びスイッチ34よりなる高速シャント回路がオン(ON)するため、図5(e)に示すように余剰分(誤差分)のうち回路の動作遅れを除いた部分につてはトランス25の2次側に伝送されない。このように、コンデンサ負荷29の設定電圧到達タイミングにて高速シャント回路を動作させトランス25の1次側巻線の両端を短絡することで、コンデンサ負荷29の設定電圧到達から共振動作が停止するまでの間にトランス25を経由し2次側へと伝送されてしまう電力をバイパスし1次側へ回生する。その結果、出力端子27,28での設定電圧に対する出力電圧の誤差が低減し、出力電圧安定度が改善されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-068289号公報
【特許文献2】特開2002−010486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4の従来の定電流電源においても、高出力安定度を実現させる上では依然として下記2点の問題があった。
【0008】
(1) 出力電力の大きい電源においては共振動作1回分の電流が大きいため、シャント動作開始までの遅れ時間に伝送される電力も大きくなり出力電圧安定度を悪化させる。
【0009】
(2) 設定電圧到達時点で共振動作を止めるため、負荷側の変動分を吸収できない。
【0010】
尚、設定電圧到達時の誤差を低減させるには、共振動作1回分の電流を小さくすれば良いが、充電時間の制約があるため限界がある。また、負荷側の変動分を押さえるためには、シャント回路を従来のON/OFF制御ではなくアナログ的に制御(負荷インピーダンスの低下分のみを電源側より供給し続ける)すれば良いが、共振動作の電流が大きい上に、シャント回路は出力電圧の1次変換電圧で連続的に動作することから、シャント回路の損失は非常に大きくなる。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、トランスの1次側回路(フルブリッジ回路+LC直列共振回路)を分割し、設定電圧到達後に共振回路の切換えを行い、微小電力の共振回路を設定電圧到達後も動作させ、その出力電圧をシャント回路にて連続的に制御することで、誤差を低減し、出力安定度を向上させる定電流電源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の定電流電源は、第1のトランスの1次側に第1のLC直列共振回路及び第1のフルブリッジ回路を介して直流電源が接続され、前記第1のトランスの2次側に第1の整流器を介してコンデンサ負荷が接続されて構成される主充電系と、第2のトランスの1次側に前記第1のLC直列共振回路及び前記第1のフルブリッジ回路と並列に接続された第2のLC直列共振回路及び第2のフルブリッジ回路を介して前記直流電源が接続され、前記第2のトランスの2次側に前記第1の整流器と並列に接続された第2の整流器を介して前記コンデンサ負荷が接続されて構成される副充電系と、前記第2のトランスの1次側に前記第2のLC直列共振回路及び前記第2のフルブリッジ回路と並列に接続された第3のLC直列共振回路及び第3のフルブリッジ回路を介して前記直流電源が接続されると共に、前記第2のトランスの1次側に前記コンデンサ負荷が設定電圧値になると前記第2のトランスの1次側を短絡するシャント回路が接続される補充電系とを具備し、前記シャント回路により前記コンデンサ負荷への出力電圧を連続的に制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の定電流電源は、トランスの1次側回路(フルブリッジ回路+LC直列共振回路)を分割することで、設定電圧到達時に2次側へ供給されている電力を下げ誤差を低減させると共に、設定電圧到達後に共振回路の切換えを行い、微小電力の共振回路を設定電圧到達後も動作させ、その出力電圧をシャント回路にて連続的に制御することで、誤差を低減し、出力安定度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る定電流電源を示す回路図である。
【図2】(a)は図1の定電流電源でコンデンサ負荷を充電する場合の出力電圧波形を示す波形図であり、(b)は(a)のイ部を示す拡大図である。
【図3】従来の定電流電源の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】従来の定電流電源を示す回路図である。
【図5】図4の定電流電源の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る定電流電源を示す回路図である。図中、同一部分に対応する部分は同一符号に対応する符号を付して説明する。
【0017】
図1において、直流電源11が接続される入力端子12,13間にはコンデンサ14が接続される。前記入力端子12にはダイオード15,16のそれぞれカソードが接続され、前記ダイオード15,16のそれぞれアノードにはダイオード17,18のカソードがそれぞれ対応して接続される。前記ダイオード17,18のそれぞれアノードは入力端子13に接続される。前記ダイオード15,16,17,18のそれぞれ対応したカソードとアノード間には例えばスイッチングトランジスタ等よりなるスイッチ19,20,21,22がそれぞれ対応して接続される。前記ダイオード15,16,17,18及びスイッチ19,20,21,22はフルブリッジ回路を構成する。前記ダイオード15のアノードにはインダクタンス23及びコンデンサ24よりなるLC直列共振回路を介してトランス25の1次側巻線の一端が接続され、前記トランス25の1次側巻線の他端は前記ダイオード16のアノードに接続される。前記トランス25の2次側巻線には整流器26を介して出力端子27,28が接続され、前記出力端子27,28には一定周期で急速放電を行うコンデンサ負荷29が接続される。前記出力端子28は接地される。前記直流電源11、コンデンサ14、ダイオード15,16,17,18及びスイッチ19,20,21,22よりなるフルブリッジ回路、インダクタンス23及びコンデンサ24よりなるLC直列共振回路、トランス25、および整流器26は主充電系を構成する。
【0018】
前記入力端子12にはダイオード15,16のそれぞれカソードが接続され、前記ダイオード15,16のそれぞれアノードにはダイオード17,18のカソードがそれぞれ対応して接続される。前記ダイオード17,18のそれぞれアノードは入力端子13に接続される。前記ダイオード15,16,17,18のそれぞれ対応したカソードとアノード間には例えばスイッチングトランジスタ等よりなるスイッチ19,20,21,22がそれぞれ対応して接続される。前記ダイオード15,16,17,18及びスイッチ19,20,21,22はフルブリッジ回路を構成する。前記ダイオード15のアノードにはインダクタンス23及びコンデンサ24よりなるLC直列共振回路を介してトランス25の1次側巻線の一端が接続され、前記トランス25の1次側巻線の他端は前記ダイオード16のアノードに接続される。前記トランス25の2次側巻線には整流器26を介して出力端子27,28が接続される。前記直流電源11、コンデンサ14、ダイオード15,16,17,18及びスイッチ19,20,21,22よりなるフルブリッジ回路、インダクタンス23及びコンデンサ24よりなるLC直列共振回路、トランス25、および整流器26は副充電系を構成する。
【0019】
前記入力端子12にはダイオード15,16のそれぞれカソードが接続され、前記ダイオード15,16のそれぞれアノードにはダイオード17,18のカソードがそれぞれ対応して接続される。前記ダイオード17,18のそれぞれアノードは入力端子13に接続される。前記ダイオード15,16,17,18のそれぞれ対応したカソードとアノード間には例えばスイッチングトランジスタ等よりなるスイッチ19,20,21,22がそれぞれ対応して接続される。前記ダイオード15,16,17,18及びスイッチ19,20,21,22はフルブリッジ回路を構成する。前記ダイオード15のアノードにはインダクタンス23及びコンデンサ24よりなるLC直列共振回路を介してトランス25の1次側巻線の一端が接続され、前記トランス25の1次側巻線の他端は前記ダイオード16のアノードに接続される。前記直流電源11、コンデンサ14、ダイオード15,16,17,18及びスイッチ19,20,21,22よりなるフルブリッジ回路、インダクタンス23及びコンデンサ24よりなるLC直列共振回路、トランス25、および整流器26は補充電系を構成する。
【0020】
前記トランス25の1次側巻線の一端にはダイオード32のアノードが接続されると共にダイオード33のカソードが接続される。前記トランス25の1次側巻線の他端にはダイオード30のアノードが接続されると共にダイオード31のカソードが接続される。前記ダイオード30のカソードはダイオード32のカソードに接続され、前記ダイオード33のアノードは前記ダイオード31のアノードに接続される。前記ダイオード32のカソードにはトランジスタ39のコレクタが接続され、前記ダイオード33のアノードにはトランジスタ39のエミッタが接続される。前記ダイオード30,31,32,33及びトランジスタ39はシャント回路を構成する。
【0021】
前記出力端子27と出力端子28の間には出力分圧抵抗35,36が直列に接続され、抵抗35と抵抗36の接続点は誤差増幅器37の+側入力端に接続され、誤差増幅器37の−側入力端には基準電圧V0が印加される。誤差増幅器37の出力端は例えば発光ダイオードとフォトトランジスタよりなる光回路等の絶縁回路38を介してトランジスタ39のベースに接続される。
【0022】
すなわち、前記主充電系において、ドライブ信号でフルブリッジ回路のスイッチ19,20,21,22が駆動され、インダクタンス23及びコンデンサ24よりなるLC直列共振回路で発生したLC共振電流がトランス25の1次巻線に流れると、トランス25の2次巻線には電流が誘起され、整流器26で整流された2次側電流(整流出力)がコンデンサ負荷29に供給されて充電される。
【0023】
また、前記副充電系において、ドライブ信号でフルブリッジ回路のスイッチ19,20,21,22が駆動され、インダクタンス23及びコンデンサ24よりなるLC直列共振回路で発生したLC共振電流がトランス25の1次巻線に流れると、トランス25の2次巻線には電流が誘起され、整流器26で整流された2次側電流(整流出力)がコンデンサ負荷29に供給されて充電される。
【0024】
また、前記補充電系において、ドライブ信号でフルブリッジ回路のスイッチ19,20,21,22が駆動され、インダクタンス23及びコンデンサ24よりなるLC直列共振回路で発生したLC共振電流がトランス25の1次巻線に流れると、トランス25の2次巻線には電流が誘起され、整流器26で整流された2次側電流(整流出力)がコンデンサ負荷29に供給されて充電される。
【0025】
図2(a)は図1の定電流電源でコンデンサ負荷を充電する場合の出力電圧波形を示す波形図であり、図2(b)は図2(a)のイ部を示す拡大図である。
【0026】
すなわち、主充電系のフルブリッジ回路のスイッチ19,20,21,22を駆動するドライブ信号、副充電系のフルブリッジ回路のスイッチ19,20,21,22を駆動するドライブ信号、及び補充電系のフルブリッジ回路のスイッチ19,20,21,22を駆動するドライブ信号を調整してA部、B部、C部の充電を行い、A部は充電開始から主充電系と副充電系の並列動作でコンデンサ負荷29を充電し、充電時間短縮のため大電力で設定電圧値の99%程度まで充電を行う。B部は設定電圧値の99%程度まで充電した時から副充電系のみの動作でコンデンサ負荷29を充電し、主充電系の1/4程度の電力で設定電圧値に到達する時まで充電動作を行い、設定電圧到達時の誤差を低減する。C部は設定電圧値に到達した時から補充電系のみの動作でコンデンサ負荷29を充電し、副充電系から更に1/4程度の電力で充電動作を行う。
【0027】
この場合、コンデンサ負荷29が例えば50kV等の所定の設定電圧に到達すると、設定電圧到達信号がダイオード30,31,32,33及びトランジスタ39よりなるシャント回路のトランジスタ39のベースに印加されてオン(ON)するため、トランス25の1次側巻線の両端のインピーダンスを変えることで、設定電圧到達時の誤差と負荷変動による影響を打ち消すように、シャント回路にて2次側への供給量を制御する。
【0028】
すなわち、出力端子27,28への出力電圧は、出力分圧抵抗35,36で分圧されて誤差増幅器37の+側入力端に加えられ、基準電圧V0と比較・増幅される。出力端子27,28への出力電圧が設定電圧を超えると、誤差増幅器37の+側入力端に加えられる出力分圧抵抗35,36で分圧された電圧が基準電圧V0を超え、誤差増幅器37の出力信号が+(高レベル)となる。誤差増幅器37の+(高レベル)出力信号は絶縁回路38を介してトランジスタ39をドライブする。トランジスタ39はベースに+(高レベル)出力が加えられてオンし、トランジスタ39のコレクタ・エミッタ間のインピーダンスを下げる。このとき、補充電系のLC直列共振回路側(変圧トランス25の1次側)からみると、トランジスタ39のコレクタ・エミッタ間のインピーダンスは負荷側のインピーダンスの変圧トランス25の1次変換分と並列に接続されたことになり、補充電系のLC直列共振回路のLC共振電流は分流されることとなる。補充電系のLC直列共振回路のLC共振電流の一部はダイオード32、ダイオード33、ダイオード30、及びダイオード31よりなる整流回路を介してトランジスタ39のコレクタ・エミッタに流れる。
【0029】
尚、図1で分かるように、補充電系の回路は副充電系とトランス25の1次側で共通となっている。これはC部の動作時は主充電系と副充電系の共振動作が停止しているため、補充電系を副充電系に並列接続しても影響を受けることがないためである。
【0030】
次に、動作条件を下記と仮定し、図1の回路構成にて動作させた場合の出力電圧安定度の概算を算出する。
【0031】
・設定電圧 :50kV
・負荷充電周期 :50Hz
・設定電圧に到達するまでの時間 :16ms(A部14ms、B部2ms)
・設定電圧に到達後の制御時間 :4ms
・共振動作の周期 :25μs(A、B、C部共通)
・負荷容量 :0.3μF
・負荷インピーダンス :100MΩ
この条件にてコンデンサ負荷への充電動作を考えると、A、B部の設定電圧に到達するまでのステップ数(共振動作の回数)は、
A部:14ms/25μs=560step
B部:2ms/25μs=80step
共振動作1回で上昇する充電電圧の平均値は、
A部:49.5kV/560step=88.4V(設定値の99%まで充電)
B部:500V/80step=6.25V(設定値の99%→100%を充電)
A部は主充電系と副充電系の並列動作なので主充電系のみの電圧上昇分は、
88.4V−6.25V=82.15V
A、B部の電圧上昇分の比較により、副充電系を主充電系の1/4程度の電力とすることは、充電時間的には十分可能である。
【0032】
負荷条件からC部の電圧降下(自然放電)は、
((50kV/100MΩ)×4ms)/0.3μF=6.7V
C部の共振動作1回で上昇する充電電圧の平均値を副充電系の1/4とすると、
6.25V/4=1.6V
C部のステップ数は、
4ms/25μs=160step
C部の制御時間は4msであり、その間で負荷条件による電圧降下分を補い、設定電圧値に制御されれば良いので、共振動作1回で1.6Vの充電が可能な電力を供給する能力があれば十分であることが分かる。
【0033】
この場合、補充電系の共振動作1回で上昇する電圧1.6Vが、出力電圧の誤差範囲となるため、出力電圧安定度は、
(1.6V/50kV)×100=0.0032%p−p(peak−to−peak)
よって、定電流電源内で使用する部品条件、負荷条件等により各系統の分担電力は適正化する必要があるが、補充電系の電力を十分に下げ、最終的にシャント回路により制御される電圧の振幅を低減することで、大幅に安定度を改善することが可能である。
【0034】
以上のように、一定周期で急速放電を行うコンデンサ負荷に安定的に充電するためのフルブリッジ回路及びLC直列共振回路を用いた定電流電源において、直列共振後のトランスにて変圧する前の1次側電流を、設定電圧に到達する際、LC直列共振回路の切替えとシャント回路により制御することで、余分な電力が2次側へ伝送されることを防ぎ、設定電圧に対する出力電圧の安定度を向上させることができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0036】
11…直流電源、12,13…入力端子、14…コンデンサ、15,16,17,18,15,16,17,18,15,16,17,18…ダイオード、19,20,21,22,19,20,21,22,19,20,21,22…スイッチ、23,23,23…インダクタンス、24,24,24…コンデンサ、25,25…トランス、26,26…整流器、27,28…出力端子、29…コンデンサ負荷、30,31,32,33…ダイオード、35,36…出力分圧抵抗、37…誤差増幅器、38…絶縁回路、39…トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランスの1次側に第1のLC直列共振回路及び第1のフルブリッジ回路を介して直流電源が接続され、前記第1のトランスの2次側に第1の整流器を介してコンデンサ負荷が接続されて構成される主充電系と、
第2のトランスの1次側に前記第1のLC直列共振回路及び前記第1のフルブリッジ回路と並列に接続された第2のLC直列共振回路及び第2のフルブリッジ回路を介して前記直流電源が接続され、前記第2のトランスの2次側に前記第1の整流器と並列に接続された第2の整流器を介して前記コンデンサ負荷が接続されて構成される副充電系と、
前記第2のトランスの1次側に前記第2のLC直列共振回路及び前記第2のフルブリッジ回路と並列に接続された第3のLC直列共振回路及び第3のフルブリッジ回路を介して前記直流電源が接続されると共に、前記第2のトランスの1次側に前記コンデンサ負荷が設定電圧値になると前記第2のトランスの1次側を短絡するシャント回路が接続される補充電系とを具備し、
前記シャント回路により前記コンデンサ負荷への出力電圧を連続的に制御することを特徴とする定電流電源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−223646(P2011−223646A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86545(P2010−86545)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000221155)東芝電波プロダクツ株式会社 (62)
【Fターム(参考)】