実装基板製造システムおよび実装基板の製造方法
【課題】基板の搬送ラインに沿って配設された複数の基板処理装置により多品種の実装基板を生産する実装基板製造システムにおいて、生産性を向上させる。
【解決手段】実装機5は、複数のテープフィーダー551を部品収容部550に装着可能で、しかもテープフィーダー551の配置態様を変更可能となっており、共通段取りした状態で複数の品種の実装基板を製造する。そして、実装機5が全品種のうち少なくとも一品種でボトルネックとなっている場合に、当該実装機におけるテープフィーダー551の配置態様を変更することでボトルネックとなっている品種での実装機5のCTを短縮している。
【解決手段】実装機5は、複数のテープフィーダー551を部品収容部550に装着可能で、しかもテープフィーダー551の配置態様を変更可能となっており、共通段取りした状態で複数の品種の実装基板を製造する。そして、実装機5が全品種のうち少なくとも一品種でボトルネックとなっている場合に、当該実装機におけるテープフィーダー551の配置態様を変更することでボトルネックとなっている品種での実装機5のCTを短縮している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の基板処理装置を基板の搬送ラインに沿って配設し、搬送ラインに沿って基板を搬送しながら各基板処理装置により基板に処理を施して多品種の実装基板を製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に電子部品を実装する実装基板製造システムでは、印刷機、検査機および実装機などの基板処理装置が搬送路に沿って並設されており、各基板処理装置が搬送路に沿って搬送される基板に対して処理プログラムにしたがって所望の処理を施し、これによって基板に電子部品が実装された実装基板が製造される(特許文献1参照)。例えば実装機では、処理プログラムとして実装プログラムが設定され、この実装プログラムにしたがって順次IC(Integrated Circuit)等の電子部品が基板に実装される。また、検査機では、処理プログラムとして検査プログラムが設定され、この検査プログラムにしたがって印刷機による印刷処理の良否検査や実装機による部品実装の良否検査が実行される。
【0003】
また、各実装機に対する基板に実装すべき部品の分配についての適正化処理を行うことで、全ての実装機のサイクルタイムが略同じ程度になるように調整している。その一方で、次の点を考慮して最適化処理を打ち切ることもあった。すなわち、適正化処理によって各実装機のサイクルタイムが短縮されたとしても、ラインの生産性、つまりラインサイクルタイムは各基板処理装置のうち最も長いサイクルタイムに依存し、当該サイクルタイムを有する基板処理装置が実装基板の製造にとってボトルネックとなる。そこで、特許文献1に記載のシステムでは、実装機以外の基板処理装置、例えば印刷機のサイクルタイムが最も長く、印刷機がボトルネックとなる場合には、最適化処理を打ち切って適正化処理にかかる時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−270337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように構成されたシステムでは、実装機、印刷機、検査機などの各基板処理装置が品種に応じた処理プログラム(実装プログラム、印刷プログラム、検査プログラムなど)にしたがって動作することで多品種の実装基板を製造可能となっている。したがって、このような実装基板製造システムでは、各品種のラインサイクルタイムを検討する必要があり、実装基板の品種を考慮した上で実装基板製造システムの生産性を改善する余地があった。
【0006】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板の搬送ラインに沿って配設された複数の基板処理装置により多品種の実装基板を生産する実装基板製造システムにおいて、生産性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる実装基板製造システムは、基板の搬送ラインに沿って配設される複数の基板処理装置と、複数の基板処理装置を制御して多品種の実装基板を生産する制御装置とを備える実装基板製造システムであって、上記目的を達成するため、複数の基板処理装置の少なくとも1台は、部品を供給する部品供給部の配置態様を変更可能に部品供給部を複数個装備する部品収容部と、搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を複数の部品供給部から移載するヘッドユニットとを含み、制御装置は、実装機が所定の配置態様で配置された複数の部品供給部から部品を実装して実装基板を生産するときの各基板処理装置のサイクルタイムを品種ごとに求めるサイクルタイム算出部と、少なくとも一品種について実装機のサイクルタイムが最も長くなり、実装機がボトルネックになるか否かを判断するボトルネック判断部と、実装機がボトルネックになると判断される場合に、実装機における複数の部品供給部の配置態様の変更を指示して品種についての実装機のサイクルタイムを短縮させる変更指示部とを含むことを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる実装基板の製造方法は、基板の搬送ラインに沿って配設される複数の基板処理装置のうちの少なくとも1台が部品を供給する部品供給部の配置態様を変更可能に部品供給部を複数個装備し、搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を実装する実装機であり、複数の基板処理装置で多品種の実装基板を生産する実装基板の製造方法であって、上記目的を達成するため、実装機が所定の配置態様で配置された複数の部品供給部から部品を実装して実装基板を生産するときの各基板処理装置のサイクルタイムを品種ごとに算出する工程と、各品種において最も長いサイクルタイムを有してボトルネックとなる基板処理装置を求め、少なくとも一品種について実装機がボトルネックとなるか否かを判断する工程と、実装機がボトルネックになると判断される場合に、品種についての実装機のサイクルタイムが短縮されるように、実装機における複数の部品供給部の配置態様を変更した後で、実装基板を生産する工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(実装基板製造システムおよび実装基板の製造方法)では、実装基板を製造するために複数の基板処理装置が基板の搬送ラインに沿って配設されているが、そのうちの少なくとも1台が、部品供給部の配置態様を変更可能に部品供給部を複数個装備しており、しかも搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を実装する、いわゆる共通段取りされた実装機である。このような場合、この実装機が少なくとも一品種についてボトルネックとなる場合、実装機における複数の部品供給部の配置態様を変更することで当該品種についての実装機のサイクルタイムを短縮することが可能となることがある。そこで、本発明では、当該実装機における複数の部品供給部の配置態様を変更することでボトルネックとなっている品種での実装機のサイクルタイムを短縮し、これによって実装基板製造システムにより全品種の実装基板を製造するためのトータル時間(後の実施形態での「合計ラインCT」に相当)の短縮を図り、生産性を向上させる。
【0010】
このように本発明では、実装基板の製造開始前に実装機における複数の部品供給部の配置態様の変更を制御装置が指示するが、その指示内容にしたがってロボットにより自動的に部品供給部の配置を変更するように構成してもよいが、ユーザやオペレータなどによるマニュアル操作によって配置態様を変更してもよい。この場合、その指示内容を的確に伝えるために当該指示内容を表示する表示装置を設けるのが望ましい。また、表示装置が実装機における複数の部品供給部の配置態様を表示することで、ユーザやオペレータなどが表示装置に映し出される配置態様に基づいて、ユーザやオペレータは配置態様の変更を確認することができ、誤った配置態様で部品供給部が実装機に装着されるのを効果的に防止することができ、生産性を確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、上記実装機を含む実装基板製造システムにより部品実装を製造する際に、少なくとも一品種について上記実装機がボトルネックとなる場合、当該品種についての実装機のサイクルタイムが短縮されるように、実装機における複数の部品供給部の配置態様を変更した後で、実装基板を生産しているため、全品種の実装基板を製造するために要する時間を短縮して生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる実装基板製造システムの第1実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】図1の実装基板製造システムに装備される実装機の概略構成を示す平面図である。
【図3】データ作成装置および実装機の電気的構成を部分的に示すブロック図である。
【図4】図1に示す実装基板製造システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】図4中のフィーダー配置の決定処理を示すフローチャートである。
【図6】フィーダー配置の決定処理を模式的に示す図である。
【図7】実装機の表示/操作ユニットに表示される段取りの指示の一例を示す図である。
【図8】マシンCTと評価値AAとの関係を示す図である。
【図9】部品収容部に収容されたテープフィーダーと基板との関係を模式的に示す図である。
【図10】本発明にかかる実装基板製造システムの第2実施形態におけるフィーダー配置の決定動作を示すフローチャートである。
【図11】図10中のフィーダーの仮想移動動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明にかかる実装基板製造システムの第1実施形態の概略構成を示す図である。この実装基板製造システム1では、同図に示すように、基板を搬送する搬送ライン2に沿って基板搬送方向Xの上流側(同図の右手側)から下流側(同図の左手側)にかけて、基板搬入機3、印刷機4、複数の実装機5、検査機6および基板搬出機7等が並設されている。これらのライン構成装置のうち基板搬入機3は、未処理基板を収容する基板収容部(図示省略)を有しており、この基板収容部から基板を印刷機4に順次搬入する。また、印刷機4は、搬入された基板の処理領域にクリーム半田を印刷により塗布する。
【0014】
また、半田が印刷された基板に対して部品を実装するために、複数(本実施形態では2台)の実装機5が搬送ライン2に沿って一列に並設されている。この明細書では、これら2台の実装機を区別して説明するために、基板搬送方向Xの上流側に位置する実装機5を「実装機A」と称し、下流側に位置する実装機5を「実装機B」と称する一方、これらを区別しない場合には、単に「実装機5」と称する。
【0015】
2台の実装機5により部品が実装された基板は検査機6に搬送され、部品が実装された基板、つまり実装基板の検査を行い、良否判定を行う。そして、この検査機6から搬送される検査済みの実装基板は基板搬出機7の実装基板収容部(図示省略)に順次収容される。
【0016】
この実装基板製造システム1を構成する各基板処理装置(印刷機4、複数の実装機5、検査機6)、基板搬入機3、および基板搬出機7はローカルエリアネットワークLANに接続されている。また、このローカルエリアネットワークLANには、各基板処理装置で所定の処理を実行するための処理プログラムを作成するとともに実装基板製造システム1全体を制御するデータ作成装置(サーバーPC)8が接続されている。そして、データ作成装置8および基板処理装置の間で種々のプログラムやデータ等がローカルエリアネットワークLANを介して通信可能となっている。
【0017】
図2は、図1の実装基板製造システムに装備される実装機の概略構成を示す平面図である。また、図3は、データ作成装置および実装機の電気的構成を部分的に示すブロック図である。なお、図2では、基板搬送方向X、基板搬送方向Xに直交する水平方向Yおよび鉛直方向Zに対応した三次元の座標系を採用している。
【0018】
実装機5では、基台511上に基板搬送機構520が配置されており、基板PBを基板搬送方向Xに搬送可能となっている。より詳しくは、基板搬送機構520は、基台511上において基板PBを図2の右側から左側へ搬送する一対のコンベア521、522を有している。これらのコンベア521、522はX軸方向に沿って延設され、しかもY軸方向に所定間隔だけ離間しながら配置されている。また、前側(+Y側)のコンベア521は基台511に固定された固定コンベアであるのに対し、後側(−Y側)のコンベア522はY軸方向に移動可能な可動コンベアであり、コンベア521、522の間のY軸方向間隔、つまりコンベア幅を可変可能となっている。この可動コンベア522はW軸モーターM51(図3参照)と接続されており、実装機5全体を制御するコントローラ630のモーター制御部533によりW軸モーターM51を駆動制御することで可動コンベア522はY軸方向に移動させられてコンベア幅を基板PBのY軸方向の長さ、つまり基板幅に適合させることが可能となっている。
【0019】
このように本実施形態では、W軸モーターM51によってコンベア幅を基板幅に適合させた状態で基板搬送方向Xの上流側(図2の右手側)から搬送されてくる基板PBを実装機本体内に引き入れ、コンベア521、522により搬送する。また、コンベア521、522は、基板PBを所定の実装作業位置(図2に示す基板PBの位置)で停止させる。また、当該基板PBは図略の保持装置により固定保持される。
【0020】
そして、実装作業位置で固定された基板PBに対して部品収容部550から供給される電子部品(図示省略)がヘッドユニット560に複数搭載された吸着ノズル561により移載される。このようにヘッドユニット560が部品収容部550の上方と基板PBの上方の間を複数回往復して当該実装機によって基板PBに実装すべき部品の全部について実装処理が完了すると、基板搬送機構520は実装機コントローラ530からの駆動指令に応じて基板PBを搬出する。
【0021】
基板搬送機構520のY軸方向の両側には、上記した部品収容部550が配置されており、これらの部品収容部550に対して複数のテープフィーダー551を装着可能に構成されている。また、部品収容部550では、各フィーダー551に対応して電子部品を一定ピッチで収納・保持したテープを巻回したリール(図示省略)が配置されており、各フィーダー551による電子部品の供給が可能となっている。なお、第1実施形態では、部品収容部550は、コンベア521、522に対して(+Y)側と(−Y)側のそれぞれ上流部と下流部の合計4箇所に設けられており、各部品収容部550では、実装プログラムに基づいて実行される基板PBへの部品実装に応じて適切なフィーダー551が装着される。また、多品種の実装基板を高い生産性で製造するために、いわゆる共通段取りが行われるとともにテープフィーダー551の配置態様が適宜変更される。これらの点に関しては、後で図面を参照しつつ詳述する。
【0022】
また、実装機5では、基板搬送機構520の他に、ヘッド駆動機構570が設けられている。このヘッド駆動機構570はヘッドユニット560を基台511の所定範囲にわたりX軸方向およびY軸方向に移動するための機構であり、X軸方向およびY軸方向への移動に、それぞれX軸モーターM52およびY軸モーターM53が使用される。そして、ヘッドユニット560の移動により吸着ノズル561で吸着された電子部品が部品収容部550の上方位置から基板PBの上方位置に搬送される。すなわち、このヘッドユニット560では、鉛直方向Zに延設された不図示の実装用ヘッドが8本、X軸方向(基板搬送機構520による基板PBの搬送方向)に等間隔で列状配置されている。また、実装用ヘッドのそれぞれの先端部には、吸着ノズル561が装着されている。
【0023】
各実装ヘッドはヘッドユニット560に対してZ軸モーターM54を駆動源とするノズル昇降駆動機構により昇降(Z軸方向の移動)可能に、かつR軸モーターM55を駆動源とするノズル回転駆動機構によりノズル中心軸回りに回転可能となっている。これらの駆動機構のうちノズル昇降駆動機構は吸着もしくは装着を行う時の下降位置と、搬送や撮像を行う時の上昇位置との間で実装ヘッドを昇降させるものである。一方、ノズル回転駆動機構は部品吸着ノズルを、電子部品の実装方向への合致のためやR軸方向の吸着ズレの補正のため等、必要に応じて回転させるための機構であり、回転駆動により電子部品を実装時における所定のR軸方向に位置させることが可能となっている。
【0024】
そして、ヘッド駆動機構570によってヘッドユニット560が部品収容部550の上方に移動し、Z軸モーターM54によって吸着ノズル561が吸着対象部品を搭載するフィーダー551の部品吸着位置上方に位置されるとともに、吸着ノズル561が下降して部品収容部550から供給される電子部品に対して吸着ノズル561の先端部が接して吸着保持し、吸着ノズル561が上昇する。こうして吸着ノズル561で電子部品を吸着保持したままヘッドユニット560が基板PBの上方に搬送され、所定位置において所定方向に向けて電子部品を基板PBに移載する。
【0025】
なお、搬送の途中において、搬送路の側方の2つの部品収容部550のX方向中間に配置される部品認識カメラC51の上方をヘッドユニット560が通過し、部品認識カメラC51が各吸着ノズル561に吸着された電子部品を下方から撮像することで、各吸着ノズル561における吸着ずれが検知され、各電子部品を基板PBに移載する際に吸着ずれに見合った位置補正がされる。
【0026】
また、ヘッドユニット560のX軸方向の両側部には、基板認識カメラC52がそれぞれ固定されており、ヘッド駆動機構570によりヘッドユニット560をX軸方向およびY軸方向に移動させることで任意の位置で基板PBの上方から撮像可能となっている。このため、各基板認識カメラC52は、実装作業位置上にある基板PBに付された複数のフィデューシャルマークを撮影して基板位置、基板方向を画像認識する。
【0027】
このように構成された実装機5全体を制御するコントローラ530は、演算処理部531と、ハードディスクドライブなどの記憶部532と、モーター制御部533と、画像処理部534と、サーバー通信制御部535とを備えている。この演算処理部531はCPU等により構成されており、後述するようにデータ作成装置8で作成されて記憶部532に書き込まれた実装プログラムにしたがって実装機各部を制御して部品実装を行う。また、記憶部532には、上記した実装プログラム以外に、後述するようにデータ作成装置8で作成される段取り指示が書き込まれる。
【0028】
モーター制御部533には、W軸モーターM51、X軸モーターM52、Y軸モーターM53、Z軸モーターM54およびR軸モーターM55が電気的に接続されており、各モーターを駆動制御する。また、これらのモーターM51〜M55にはモーターの回転状況に応じたパルス信号を出力するエンコーダ(図示省略)がそれぞれ付設されている。各エンコーダから出力されるパルス信号はコントローラ530に取り込まれる構成となっており、これらの信号を受けた演算処理部531が各軸モーターM51〜M55の回転量に関する情報を取得し、モーター制御部533と共に各軸モーターM51〜M55を制御する。
【0029】
また、画像処理部534には部品認識カメラC51および基板認識カメラC52が電気的に接続されており、これら各カメラC51,C52出力される撮像信号がそれぞれ画像処理部534に取り込まれる。そして、画像処理部534では、取り込まれた撮像信号に基づいて、部品画像の解析ならびに基板画像の解析がそれぞれ行われる。
【0030】
この実装機5では、表示/操作ユニット540が設けられて実装プログラムや段取り指示情報などを表示する。また、表示/操作ユニット540は、作業者がコントローラ530に対して各種データや指令などの情報を入力するためにも使用される。さらに、実装機5には、データ作成装置8や他の基板処理装置等との間で実装プログラムなどの各種データの授受を行うためにサーバー通信制御部535が設けられている。
【0031】
データ作成装置8は上記のように実装プログラムを作成することができるコントローラ810を有しており、このコントローラ810は実装プログラム以外に印刷プログラム、検査プログラムなどを作成することができ、また実装基板製造システム1全体を制御する。このコントローラ810には、CPU等により構成される演算処理部811と、ハードディスクドライブなどの記憶部812と、通信制御部813とが設けられている。これらのうち演算処理部811は、生産性を向上させるために、各品種での各基板処理装置(印刷機4、実装機5および検査機6)のサイクルタイム(以下「マシンCT」と略する)を算出する。また、演算処理部811は、算出されたマシンCTに基づいて少なくとも一品種について実装機5のサイクルタイムが最も長くなり、実装機5がボトルネックになるか否かを判断する。そして、実装機5がボトルネックになると判断される場合に、演算処理部811は、上記算出結果に基づいて実装機5でのテープフィーダー551の配置態様、つまりフィーダー位置を決定し、実装機5における複数の部品供給部の配置態様の変更を指示して品種についての実装機のサイクルタイムを短縮させる。このように、演算処理部811は、マシンCTを算出するサイクルタイム算出部(CT算出部)、実装機5がボトルネックになるか否かを判断するボトルネック判断部(BN判断部)、実装機5がボトルネックになる場合にフィーダー位置を決定するフィーダー位置決定部、および部品供給部の配置態様の変更を指示する変更指示部としての機能を担うものであり、図3に示すように、それらの機能ブロックが演算処理部811で実行される。また、記憶部812には、上記した実装プログラム、各基板処理装置のマシン情報および基板情報などが記憶されている。そして、次に説明するように実装機5による部品実装を実行させる前に、実装機5でのテープフィーダー551の段取りを指示して生産性の向上を図っている。なお、図3中の符号820は演算処理部811により作成された印刷プログラム、検査プログラム、実装プログラム、段取り指示情報などを表示したり、作業者がコントローラ810に対して各種データや指令などの情報を入力するための表示/操作ユニットである。
【0032】
次に、上記のように構成された実装基板製造システム1による実装基板の製造方法について図4ないし図7を参照しつつ説明する。図4は、図1に示す実装基板製造システムの動作を示すフローチャートである。また、図5は、図4中のフィーダー配置の決定処理を示すフローチャートである。また、図6は、フィーダー配置の決定処理を模式的に示す図である。さらに、図7は、実装機の表示/操作ユニットに表示される段取りの指示の一例を示す図である。
【0033】
この第1実施形態では、図4に示すように、データ作成装置8は各実装機5による部品実装処理を開始する前にフィーダー配置の決定処理を実行して実装機5におけるテープフィーダー551の配置態様の調整を行う(ステップS11)。このフィーダー配置の決定処理では、データ作成装置8の演算処理部811は、図5に示すように、後述する調整動作を実行する回数を示す試行カウント値Kを初期値である「1」にセットする(ステップS110)。そして、演算処理部811は、システム1により製造する実装基板の品種毎に、各実装機5に対する基板PBに実装すべき部品の分配についての最適化処理を行い、実装プログラムを作成する(ステップS111)。また、実装プログラムに適したテープフィーダー551の配置態様を設定するが、特に多品種の実装基板を製造する場合、品種変更に伴うテープフィーダー551の頻繁な入替え作業を抑制して実装基板の生産性を向上させるため、いわゆる共通段取りを行う。例えば図6の左欄に示すように、品種AAAで使用される部品を収納するテープフィーダー551のみならず、品種BBBで使用される部品を収納するテープフィーダー551や、品種AAAおよび品種BBBの両方で使用される部品を収納するテープフィーダー551も実装機5に装着するように共通段取りが行われる。
【0034】
次のステップS112では、演算処理部811は各品種のマシンCTおよびラインCTを算出する。ここでは、算出結果の一例を図6に示して説明する。例えば図6の右上欄に示すように、実装機5により搬送ライン2に沿って搬送される2種類(品種AAA、BBB)の基板PBに対し、
・印刷機4による印刷処理に要する時間…印刷機CT、
・実装機Aによる実装処理に要する時間…実装機ACT、
・実装機Bによる実装処理に要する時間…実装機BCT、
・検査機6による検査処理に要する時間…検査機CT
をそれぞれ求め、各品種での印刷機CT、実装機ACT、実装機BCT、検査機CTが上記「マシンCT」に相当する。そして、品種AAAについては、これらのマシンCTのうち印刷機CTが最も長く、これが品種AAAの実装基板を製造する際のボトルネックであり、品種AAAの実装基板を製造するためのラインのサイクルタイム、つまりラインCTは印刷機CTと同じ値となる。一方、品種BBBにおいては、実装機BCTが最も長く、これが品種BBBの実装基板を製造する際のボトルネックであり、品種BBBのラインCTは実装機BCTと同じ値となる。
【0035】
こうして、最適化処理直後の各種CT(サイクルタイム)が求まると、試行カウント値Kが所定の最大試行回数を超えない(つまり、ステップS113で「NO」)間、演算処理部811は次のステップS114〜S119を実行してテープフィーダー551の配置態様を変更して生産性の向上を図る。というのも、上記した各種CTのうち実装機5のマシンCT(上記具体例では実装機ACTおよび実装機BCT)はテープフィーダー551の配置態様によって変動するからである。すなわち、実装機5のマシンCTは、実装プログラムにしたがって各部品を対応するテープフィーダー551にヘッドユニット560を移動させ、当該テープフィーダー551から部品を取り出し、基板PBの上方位置まで移動させた後に基板PBに搭載する一連の動作に要する時間を積算したものである。したがって、テープフィーダー551の配置態様によってヘッドユニット560の移動距離は異なり、しかもテープフィーダー551のセット位置に応じて各テープフィーダー551に対してアクセス可能なノズルが制限される場合があり、それら状況に応じて実装機5のマシンCTは変動する。
【0036】
本実施形態では、データ作成装置8の演算処理部811は、テープフィーダー551の配置位置を仮想的に移動させた(ステップS114)後、仮想移動後の配置態様での各品種でのマシンCTおよびラインCTを算出する(ステップS115)とともに、全品種のラインCTの合計値を、実装基板製造システム1の生産性を示す指標として求める。例えば図6の下欄に示すように、実装機Bにおけるテープフィーダー551の配置態様を変更したことで品種AAAの実装機BCTが品種AAAのラインCTを超えることなく、品種BBBのボトルネックとなっていた実装機BCTが短縮される。その結果、品種BBBのラインCTは短縮され、ラインCTの合計値も小さくなってシステム全体での生産性を向上させることができる。
【0037】
そこで、上記のようにフィーダー551の仮想移動後のラインCTを求めた後で、演算処理部811は全品種のラインCTの合計値を算出し(ステップS116)、その合計値が改善される、つまり小さくなったか否かを判定する(ステップS117)。そして、改善されない場合のみ、ステップS114でのフィーダーの仮想移動を取りやめてフィーダーの仮想位置を元に戻す(ステップS118)。このような一連の処理が完了すると、試行カウント値Kを「1」だけインクリメントし(ステップS119)、ステップS113に戻る。そして、このステップS113で「YES」と判定した時点、つまり所定の最大試行回数を超えた時点で、データ作成装置8の演算処理部811は、フィーダー配置の決定処理を終了する。
【0038】
図4に戻って説明を続ける。フィーダー配置の決定処理(ステップS11)が完了すると、その時点でのフィーダーの仮想移動後の配置態様を示すフィーダー配置データならびに実装プログラムをデータ作成装置8が通信制御部813およびローカルエリアネットワークLANにより実装機5に送信する(ステップS12)。なお、上記した図6に示す具体例では、実装機Bがボトルネックとなる場合について説明したが、実装機Aがボトルネックになる場合およびいずれの実装機5もがボトルネックになる場合も、本実施形態と全く同様にしてテープフィーダー551の配置態様の変更が決定され、それに対応するフィーダー配置データが実装機5に送信される。また、本実施形態では、フィーダー配置データとともに実装プログラムを転送しているが、実装プログラムの転送タイミングはこれに限定されるものではなく、例えば実装プログラムの生成直後に転送してもよい。
【0039】
一方、実装機5は、フィーダー配置データを受信し(ステップS21)、その受信データに基づいて実装機5のコントローラ510はテープフィーダー551の段取り修正内容を表示/操作ユニット540の表示部541に表示してユーザやオペレータなどにテープフィーダー551の交換や移動などを促す。すなわち、コントローラ510の演算処理部531は、実装プログラムおよびフィーダー配置データで示される段取り指示を記憶部532に記憶するとともに、段取り指示の内容を表示/操作ユニット540の表示部541に表示する(ステップS22)。その表示内容の一例が図7に示すものである。この第1実施形態では、4カ所の部品収容部550へのテープフィーダー551の収容状況がそれぞれ表示領域542〜545に表示されるとともに、これらの表示領域542〜545の下方に位置する表示領域546に具体的な指示内容が表示される。
【0040】
この表示領域546に表示された指示内容にしたがってユーザなどがテープフィーダー551の交換や取付などを行うのであるが、演算処理部531は段取り結果を照会し(ステップS23)、さらに、その段取り結果がフィーダー配置データと合致しているか否かを判定する(ステップS24)。そして、段取りが正しく行われていないと判定する間、演算処理部531は段取り修正の指示を行った(ステップS25)上で、段取り指示の表示(ステップS22)、段取り照会(ステップS23)および段取り判定を繰り返して行う。
【0041】
このステップS24でフィーダー配置データに対応する段取りの完了を確認すると、演算処理部531は記憶部532に記憶されている実装プログラムを読み出し、実装処理を開始する(ステップS26)。そして、実装動作の実行(ステップS27)をステップS28で実装完了を確認するまで継続させる一方、実装完了の確認後(ステップS28で「YES」)、実装が完了した旨が実装機5からデータ作成装置8に送信される(ステップS29)。
【0042】
以上のように、本実施形態における実装機5は、複数のテープフィーダー551を部品収容部550に装着可能で、しかもテープフィーダー551の配置態様を変更可能となっており、共通段取りした状態で複数の品種の実装基板を製造する。このように構成された実装機5では、上記したようにテープフィーダー551の配置態様を変更することで実装機5のマシンCTも変化する。そこで、本実施形態では、実装機5が全品種のうち少なくとも一品種でボトルネックとなっている場合に、当該実装機におけるテープフィーダー551の配置態様を変更することでボトルネックとなっている品種での実装機5のCTを短縮している。したがって、実装基板製造システムに1より全品種の実装基板を製造するためのトータル時間、つまり合計ラインCTを短縮することができ、その結果、生産性を向上させることができる。
【0043】
また、テープフィーダー551の段取りをフィーダー配置データに基づいて変更するにあたって、その段取り指示を表示部541の表示領域546に対して具体的に表示しているため、ユーザやオペレータなどは戸惑うことなく、ステップ・バイ・ステップで的確に段取り替えを行うことができる。また、表示部541の表示領域542〜545では、現状の段取り状態が表示されるため、ユーザやオペレータなどは、表示部541に映し出される配置態様に基づいて、配置態様の変更を確認することができ、誤った配置態様でテープフィーダー551が実装機に装着されるのを効果的に防止することができ、生産性を確実に向上させることができる。
【0044】
このように本実施形態では、データ作成装置8が本発明の「制御装置」に相当している。また、テープフィーダー551が本発明の「部品供給部」に相当している。また、フィーダー配置データで示される段取り指示が本発明の「制御装置による指示内容」に相当し、表示部541の表示領域542〜545に表示される現状の段取り状態が本発明の「実装機における複数の部品供給部の配置態様」に相当しており、それらを表示する表示部541を有する表示/操作ユニット540が本発明の「表示装置」として機能している。
【0045】
ところで、上記実施形態では、最適なテープフィーダー551の配置態様を求めるために、テープフィーダー551の配置位置を仮想的にランダムに移動させながら各仮想移動後におけるマシンCTおよびラインCTを算出しているが、次のようにテープフィーダー551の配置位置を仮想移動させてもよく(ステップS114)、これにより、最適なテープフィーダー551の配置態様を合理的に、かつ短時間で求めることができる。
【0046】
実装基板製造システム1を構成する各基板処理装置(図1では、印刷機4、実装機5、検査機6)には、印刷機4や検査機6のようにマシンCTを短縮することができる余地がないものがある。一方、上記実施形態における実装機A、Bでは、マシンCTを短縮することが可能である。ただし、図6の右欄を比較してわかるように、一方の実装機BCTを短縮した場合、他方の実装機ACTは長くなる。したがって、これらの点を考慮した上で仮想移動を設定するのが望ましい。
【0047】
そこで、品種および基板処理装置毎に評価値AAを求めるとともに、テープフィーダー551の配置位置毎に評価値BBを求め、それらを総合的に判断することでフィーダーの仮想移動を設定するのが合理的である。以下、図8を参照しつつ評価値AAについて説明し、図9を参照しつつ評価値BBについて説明した後で、それらを用いた動作について図10および図11を参照しつつ説明する。
【0048】
図8は、マシンCTと評価値AAとの関係を示す図である。評価値AAは、品種およびマシン毎に算出される値であり、実装機A、BのようにマシンCTを短縮することが可能な基板処理装置のマシンCTから参照マシンCTを減じた値である。この「参照マシンCT」とは、マシンCTを短縮することができる余地がない基板処理装置のマシンCTのうちの最も長いマシンCTを意味している。例えば図8中の品種AAAでは、印刷機CTが参照マシンCTとなり、実装機Aの評価値AAは「−5.0(=25.0−30.0)」となり、実装機Bの評価値AAは「−4.0(=26.0−30.0)」となる。したがって、評価値AAが大きい基板処理装置とは、当該品種についてマシンCTを短縮したい基板処理装置であることを意味する。逆に、評価値AAが小さい基板処理装置とは、当該品種についてマシンCTを大きくできる余地がある、つまりマシンCTが大きくなったとしても参照マシンCTには達せず、ボトルネックにならない基板処理装置であることを意味する。したがって、評価値AAを算出し、それらの算出結果に基づきフィーダーの移動が最も効果的である品種および基板処理装置を特定することができる。例えば図8に示す具体例では、フィーダーの移動によるサイクルタイムの短縮に効果的な組み合わせは実装機Bでの品種AAAに使用するフィーダー551と品種BBBに使用するフィーダー551との移動であることがわかる。
【0049】
図9は、部品収容部に収容されたテープフィーダーと基板との関係を模式的に示す図である。同図において各テープフィーダー551に付した番号は、各テープフィーダー551を装着したセット位置の「負荷度」を示している。この「負荷度」とは、各テープフィーダー551のセット位置と基板PBとの距離に応じたものであり、当該距離が長くなるにしたがって部品実装のためにヘッドユニット560が移動するのに要する時間が長くなること、さらに端の位置にセットされたテープフィーダー551に対してアクセス可能なノズル数が少なくなることを考慮したものである。つまり、上記距離およびセット位置に応じて負荷度を大きく設定している。そして、テープフィーダー551のセット位置の負荷度と当該テープフィーダー551に収納された部品の実装点数を掛け合わせたものを評価値BBとしている。したがって、評価値BBが大きいとは、マシンCTを増加させる部品であることを示している。
【0050】
図10は、本発明にかかる実装基板製造システムの第2実施形態におけるフィーダー配置の決定動作を示すフローチャートである。この第2実施形態では、第1実施形態と同様に、演算処理部811は品種毎に最適化処理を行って実装プログラムを作成し(ステップS31)、さらに各品種のマシンCTおよびラインCTを算出する(ステップS32)。また、試行カウント値Kを初期値である「1」にセットする(ステップS33)。そして、フィーダー配置の決定動作の終了条件が満足されるか否かを演算処理部811は判断する(ステップS34)。この実施形態では、終了条件として、
・試行カウント値Kが所定の最大試行回数を超えない、
・移動可能なテープフィーダー551の候補が存在しない
という2つの条件を含んでおり、いずれの条件も満足されていない(ステップS34で「NO」と判定される)間、演算処理部811は次のステップS35〜S41を実行してテープフィーダー551の配置態様を変更して生産性の向上を図るが、第2実施形態では、第1実施形態と異なる態様でフィーダーの仮想位置移動を実行している。
【0051】
図11は、図10中のフィーダーの仮想移動動作を示すフローチャートである。この第2実施形態では、同図に示すように、演算処理部811が各品種/実装機毎に評価値AAおよびBBを算出する(ステップS351)。そして、それらの中から評価値AAが最大の品種/実装機を選択するとともに(ステップS352)、評価値BBが最大となる部品(以下これを「部品(I)という」)を選択する(ステップS353)。こうして、ボトルネックとなる品種/実装機を特定し、しかも、当該品種/実装機においてCTを大きくさせている要因となる部品(I)を収納するテープフィーダー551を特定している。
【0052】
また、評価値AAが最小の品種/実装機を選択するとともに(ステップS354)、評価値BBが最小となる部品(II)または空きスペース(II)(以下、これらを総称して「部品等(II)という」)を選択する。こうして、上記部品(I)を収納するテープフィーダー551との交換先あるいは当該テープフィーダー551の移動先となる空きスペースを特定している。つまり、このようなフィーダーの交換あるいは移動によって、評価値AAが最小の品種/実装機のマシンCTは上昇するものの、ボトルネックとなるまでマシンCTが増大する可能性は低く抑えられる。
【0053】
こうして部品(I)および部品(II)の選択が完了すると、演算処理部811は部品等(II)が部品であるのか、空きスペースであるのかを判定する(ステップS356)。そして、部品である場合には、部品(I)を収納するテープフィーダー551と、部品(II)を収納するテープフィーダー551とを交換するようにフィーダー551を仮想的に移動させる(ステップS357)。逆に、空きスペースである場合には、部品(I)を収納するテープフィーダー551を空きスペース(II)に移動するようにフィーダー551を仮想的に移動させる(ステップS358)。こうしてテープフィーダー551の配置位置を仮想的に移動させてフィーダー配置の決定処理(ステップS35)を終了する。
【0054】
図10に戻って説明を続ける。この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、データ作成装置8の演算処理部811は、テープフィーダー551の配置位置を仮想的に移動させた後の配置態様での各品種でのマシンCTおよびラインCTを算出する(ステップS36)とともに、全品種のラインCTの合計値を、実装基板製造システム1の生産性を示す指標として求める。そして、その合計値が改善される、つまり小さくなったか否かを演算処理部811は判定する(ステップS38)。そして、改善されない場合のみ、ステップS39でテープフィーダー551を元に戻し、さらに次の候補を選択する(ステップS40)。こうして、1回の試行が完了すると、試行カウント値Kを「1」だけインクリメントした(ステップS41)後、ステップS34に戻り、上記一連の処理を繰り返す。こうして、テープフィーダー551の配置態様を決定した後、第1実施形態と同様に、実装機5におけるテープフィーダー551の配置態様を変更した上で実装処理を開始する。
【0055】
以上のように、第2実施形態によれば、評価値AAおよび評価値BBを算出し、それらに基づきテープフィーダー551の交換や移動などを決定しているので、第1実施形態に比べ、より的確に、しかも短時間で最適なテープフィーダー551の配置態様を決定することができる。もちろん、第2実施形態においても、その決定された配置態様を示すフィーダー配置データに基づいて実装機5での段取り指示や現状の段取り状態を表示部541に表示しながらテープフィーダー551の配置態様を変更しているので、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0056】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、段取り指示や現状の段取り状態を実装機5で表示しているが、データ作成装置8側でも併せて表示するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、本発明の「部品供給部」としてテープフィーダー551のみを装備させているが、その他のフィーダーや部品トレイなどの部品供給部を用いた実装機を組み込んだシステムに対しても本発明を適用することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、テープフィーダー551などの部品供給部の配置態様に関連する段取り指示に基づいてユーザやオペレータなどによるマニュアル操作によって配置態様を変更しているが、指示内容にしたがってロボットにより自動的に部品供給部の配置を変更するように構成してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、2台の実装機5を装備する実装基板製造システム1に対して本発明を適用しているが、実装機5の台数はこれに限定されるものではなく、フィーダー551の配置態様を変更可能にフィーダー551を複数個装備し、しかも搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を実装する、いわゆる共通段取りされる実装機を1台以上有するシステム1に適用可能である。したがって、当該実装機を1台以上有するシステムであれば、例えば基板処理装置として印刷を検査する印刷検査装置、基板PBに対して部品実装のための接着剤やクリームはんだ等の塗布液を塗布する塗布装置やベーク炉をさらに備えたシステムや、フィーダー551の配置変更が制限されている実装機をさらに備えたシステムにも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…実装基板製造システム
2…搬送ライン
4…印刷機(基板処理装置)
5…実装機(基板処理装置)
6…検査機(基板処理装置)
8…データ作成装置(制御装置)
541…表示部(表示装置)
550…部品収容部
551…テープフィーダー(部品供給部)
560…ヘッドユニット
811…演算処理部(制御装置)
PB…基板
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の基板処理装置を基板の搬送ラインに沿って配設し、搬送ラインに沿って基板を搬送しながら各基板処理装置により基板に処理を施して多品種の実装基板を製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に電子部品を実装する実装基板製造システムでは、印刷機、検査機および実装機などの基板処理装置が搬送路に沿って並設されており、各基板処理装置が搬送路に沿って搬送される基板に対して処理プログラムにしたがって所望の処理を施し、これによって基板に電子部品が実装された実装基板が製造される(特許文献1参照)。例えば実装機では、処理プログラムとして実装プログラムが設定され、この実装プログラムにしたがって順次IC(Integrated Circuit)等の電子部品が基板に実装される。また、検査機では、処理プログラムとして検査プログラムが設定され、この検査プログラムにしたがって印刷機による印刷処理の良否検査や実装機による部品実装の良否検査が実行される。
【0003】
また、各実装機に対する基板に実装すべき部品の分配についての適正化処理を行うことで、全ての実装機のサイクルタイムが略同じ程度になるように調整している。その一方で、次の点を考慮して最適化処理を打ち切ることもあった。すなわち、適正化処理によって各実装機のサイクルタイムが短縮されたとしても、ラインの生産性、つまりラインサイクルタイムは各基板処理装置のうち最も長いサイクルタイムに依存し、当該サイクルタイムを有する基板処理装置が実装基板の製造にとってボトルネックとなる。そこで、特許文献1に記載のシステムでは、実装機以外の基板処理装置、例えば印刷機のサイクルタイムが最も長く、印刷機がボトルネックとなる場合には、最適化処理を打ち切って適正化処理にかかる時間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−270337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように構成されたシステムでは、実装機、印刷機、検査機などの各基板処理装置が品種に応じた処理プログラム(実装プログラム、印刷プログラム、検査プログラムなど)にしたがって動作することで多品種の実装基板を製造可能となっている。したがって、このような実装基板製造システムでは、各品種のラインサイクルタイムを検討する必要があり、実装基板の品種を考慮した上で実装基板製造システムの生産性を改善する余地があった。
【0006】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板の搬送ラインに沿って配設された複数の基板処理装置により多品種の実装基板を生産する実装基板製造システムにおいて、生産性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる実装基板製造システムは、基板の搬送ラインに沿って配設される複数の基板処理装置と、複数の基板処理装置を制御して多品種の実装基板を生産する制御装置とを備える実装基板製造システムであって、上記目的を達成するため、複数の基板処理装置の少なくとも1台は、部品を供給する部品供給部の配置態様を変更可能に部品供給部を複数個装備する部品収容部と、搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を複数の部品供給部から移載するヘッドユニットとを含み、制御装置は、実装機が所定の配置態様で配置された複数の部品供給部から部品を実装して実装基板を生産するときの各基板処理装置のサイクルタイムを品種ごとに求めるサイクルタイム算出部と、少なくとも一品種について実装機のサイクルタイムが最も長くなり、実装機がボトルネックになるか否かを判断するボトルネック判断部と、実装機がボトルネックになると判断される場合に、実装機における複数の部品供給部の配置態様の変更を指示して品種についての実装機のサイクルタイムを短縮させる変更指示部とを含むことを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかる実装基板の製造方法は、基板の搬送ラインに沿って配設される複数の基板処理装置のうちの少なくとも1台が部品を供給する部品供給部の配置態様を変更可能に部品供給部を複数個装備し、搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を実装する実装機であり、複数の基板処理装置で多品種の実装基板を生産する実装基板の製造方法であって、上記目的を達成するため、実装機が所定の配置態様で配置された複数の部品供給部から部品を実装して実装基板を生産するときの各基板処理装置のサイクルタイムを品種ごとに算出する工程と、各品種において最も長いサイクルタイムを有してボトルネックとなる基板処理装置を求め、少なくとも一品種について実装機がボトルネックとなるか否かを判断する工程と、実装機がボトルネックになると判断される場合に、品種についての実装機のサイクルタイムが短縮されるように、実装機における複数の部品供給部の配置態様を変更した後で、実装基板を生産する工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明(実装基板製造システムおよび実装基板の製造方法)では、実装基板を製造するために複数の基板処理装置が基板の搬送ラインに沿って配設されているが、そのうちの少なくとも1台が、部品供給部の配置態様を変更可能に部品供給部を複数個装備しており、しかも搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を実装する、いわゆる共通段取りされた実装機である。このような場合、この実装機が少なくとも一品種についてボトルネックとなる場合、実装機における複数の部品供給部の配置態様を変更することで当該品種についての実装機のサイクルタイムを短縮することが可能となることがある。そこで、本発明では、当該実装機における複数の部品供給部の配置態様を変更することでボトルネックとなっている品種での実装機のサイクルタイムを短縮し、これによって実装基板製造システムにより全品種の実装基板を製造するためのトータル時間(後の実施形態での「合計ラインCT」に相当)の短縮を図り、生産性を向上させる。
【0010】
このように本発明では、実装基板の製造開始前に実装機における複数の部品供給部の配置態様の変更を制御装置が指示するが、その指示内容にしたがってロボットにより自動的に部品供給部の配置を変更するように構成してもよいが、ユーザやオペレータなどによるマニュアル操作によって配置態様を変更してもよい。この場合、その指示内容を的確に伝えるために当該指示内容を表示する表示装置を設けるのが望ましい。また、表示装置が実装機における複数の部品供給部の配置態様を表示することで、ユーザやオペレータなどが表示装置に映し出される配置態様に基づいて、ユーザやオペレータは配置態様の変更を確認することができ、誤った配置態様で部品供給部が実装機に装着されるのを効果的に防止することができ、生産性を確実に向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、上記実装機を含む実装基板製造システムにより部品実装を製造する際に、少なくとも一品種について上記実装機がボトルネックとなる場合、当該品種についての実装機のサイクルタイムが短縮されるように、実装機における複数の部品供給部の配置態様を変更した後で、実装基板を生産しているため、全品種の実装基板を製造するために要する時間を短縮して生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる実装基板製造システムの第1実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】図1の実装基板製造システムに装備される実装機の概略構成を示す平面図である。
【図3】データ作成装置および実装機の電気的構成を部分的に示すブロック図である。
【図4】図1に示す実装基板製造システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】図4中のフィーダー配置の決定処理を示すフローチャートである。
【図6】フィーダー配置の決定処理を模式的に示す図である。
【図7】実装機の表示/操作ユニットに表示される段取りの指示の一例を示す図である。
【図8】マシンCTと評価値AAとの関係を示す図である。
【図9】部品収容部に収容されたテープフィーダーと基板との関係を模式的に示す図である。
【図10】本発明にかかる実装基板製造システムの第2実施形態におけるフィーダー配置の決定動作を示すフローチャートである。
【図11】図10中のフィーダーの仮想移動動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明にかかる実装基板製造システムの第1実施形態の概略構成を示す図である。この実装基板製造システム1では、同図に示すように、基板を搬送する搬送ライン2に沿って基板搬送方向Xの上流側(同図の右手側)から下流側(同図の左手側)にかけて、基板搬入機3、印刷機4、複数の実装機5、検査機6および基板搬出機7等が並設されている。これらのライン構成装置のうち基板搬入機3は、未処理基板を収容する基板収容部(図示省略)を有しており、この基板収容部から基板を印刷機4に順次搬入する。また、印刷機4は、搬入された基板の処理領域にクリーム半田を印刷により塗布する。
【0014】
また、半田が印刷された基板に対して部品を実装するために、複数(本実施形態では2台)の実装機5が搬送ライン2に沿って一列に並設されている。この明細書では、これら2台の実装機を区別して説明するために、基板搬送方向Xの上流側に位置する実装機5を「実装機A」と称し、下流側に位置する実装機5を「実装機B」と称する一方、これらを区別しない場合には、単に「実装機5」と称する。
【0015】
2台の実装機5により部品が実装された基板は検査機6に搬送され、部品が実装された基板、つまり実装基板の検査を行い、良否判定を行う。そして、この検査機6から搬送される検査済みの実装基板は基板搬出機7の実装基板収容部(図示省略)に順次収容される。
【0016】
この実装基板製造システム1を構成する各基板処理装置(印刷機4、複数の実装機5、検査機6)、基板搬入機3、および基板搬出機7はローカルエリアネットワークLANに接続されている。また、このローカルエリアネットワークLANには、各基板処理装置で所定の処理を実行するための処理プログラムを作成するとともに実装基板製造システム1全体を制御するデータ作成装置(サーバーPC)8が接続されている。そして、データ作成装置8および基板処理装置の間で種々のプログラムやデータ等がローカルエリアネットワークLANを介して通信可能となっている。
【0017】
図2は、図1の実装基板製造システムに装備される実装機の概略構成を示す平面図である。また、図3は、データ作成装置および実装機の電気的構成を部分的に示すブロック図である。なお、図2では、基板搬送方向X、基板搬送方向Xに直交する水平方向Yおよび鉛直方向Zに対応した三次元の座標系を採用している。
【0018】
実装機5では、基台511上に基板搬送機構520が配置されており、基板PBを基板搬送方向Xに搬送可能となっている。より詳しくは、基板搬送機構520は、基台511上において基板PBを図2の右側から左側へ搬送する一対のコンベア521、522を有している。これらのコンベア521、522はX軸方向に沿って延設され、しかもY軸方向に所定間隔だけ離間しながら配置されている。また、前側(+Y側)のコンベア521は基台511に固定された固定コンベアであるのに対し、後側(−Y側)のコンベア522はY軸方向に移動可能な可動コンベアであり、コンベア521、522の間のY軸方向間隔、つまりコンベア幅を可変可能となっている。この可動コンベア522はW軸モーターM51(図3参照)と接続されており、実装機5全体を制御するコントローラ630のモーター制御部533によりW軸モーターM51を駆動制御することで可動コンベア522はY軸方向に移動させられてコンベア幅を基板PBのY軸方向の長さ、つまり基板幅に適合させることが可能となっている。
【0019】
このように本実施形態では、W軸モーターM51によってコンベア幅を基板幅に適合させた状態で基板搬送方向Xの上流側(図2の右手側)から搬送されてくる基板PBを実装機本体内に引き入れ、コンベア521、522により搬送する。また、コンベア521、522は、基板PBを所定の実装作業位置(図2に示す基板PBの位置)で停止させる。また、当該基板PBは図略の保持装置により固定保持される。
【0020】
そして、実装作業位置で固定された基板PBに対して部品収容部550から供給される電子部品(図示省略)がヘッドユニット560に複数搭載された吸着ノズル561により移載される。このようにヘッドユニット560が部品収容部550の上方と基板PBの上方の間を複数回往復して当該実装機によって基板PBに実装すべき部品の全部について実装処理が完了すると、基板搬送機構520は実装機コントローラ530からの駆動指令に応じて基板PBを搬出する。
【0021】
基板搬送機構520のY軸方向の両側には、上記した部品収容部550が配置されており、これらの部品収容部550に対して複数のテープフィーダー551を装着可能に構成されている。また、部品収容部550では、各フィーダー551に対応して電子部品を一定ピッチで収納・保持したテープを巻回したリール(図示省略)が配置されており、各フィーダー551による電子部品の供給が可能となっている。なお、第1実施形態では、部品収容部550は、コンベア521、522に対して(+Y)側と(−Y)側のそれぞれ上流部と下流部の合計4箇所に設けられており、各部品収容部550では、実装プログラムに基づいて実行される基板PBへの部品実装に応じて適切なフィーダー551が装着される。また、多品種の実装基板を高い生産性で製造するために、いわゆる共通段取りが行われるとともにテープフィーダー551の配置態様が適宜変更される。これらの点に関しては、後で図面を参照しつつ詳述する。
【0022】
また、実装機5では、基板搬送機構520の他に、ヘッド駆動機構570が設けられている。このヘッド駆動機構570はヘッドユニット560を基台511の所定範囲にわたりX軸方向およびY軸方向に移動するための機構であり、X軸方向およびY軸方向への移動に、それぞれX軸モーターM52およびY軸モーターM53が使用される。そして、ヘッドユニット560の移動により吸着ノズル561で吸着された電子部品が部品収容部550の上方位置から基板PBの上方位置に搬送される。すなわち、このヘッドユニット560では、鉛直方向Zに延設された不図示の実装用ヘッドが8本、X軸方向(基板搬送機構520による基板PBの搬送方向)に等間隔で列状配置されている。また、実装用ヘッドのそれぞれの先端部には、吸着ノズル561が装着されている。
【0023】
各実装ヘッドはヘッドユニット560に対してZ軸モーターM54を駆動源とするノズル昇降駆動機構により昇降(Z軸方向の移動)可能に、かつR軸モーターM55を駆動源とするノズル回転駆動機構によりノズル中心軸回りに回転可能となっている。これらの駆動機構のうちノズル昇降駆動機構は吸着もしくは装着を行う時の下降位置と、搬送や撮像を行う時の上昇位置との間で実装ヘッドを昇降させるものである。一方、ノズル回転駆動機構は部品吸着ノズルを、電子部品の実装方向への合致のためやR軸方向の吸着ズレの補正のため等、必要に応じて回転させるための機構であり、回転駆動により電子部品を実装時における所定のR軸方向に位置させることが可能となっている。
【0024】
そして、ヘッド駆動機構570によってヘッドユニット560が部品収容部550の上方に移動し、Z軸モーターM54によって吸着ノズル561が吸着対象部品を搭載するフィーダー551の部品吸着位置上方に位置されるとともに、吸着ノズル561が下降して部品収容部550から供給される電子部品に対して吸着ノズル561の先端部が接して吸着保持し、吸着ノズル561が上昇する。こうして吸着ノズル561で電子部品を吸着保持したままヘッドユニット560が基板PBの上方に搬送され、所定位置において所定方向に向けて電子部品を基板PBに移載する。
【0025】
なお、搬送の途中において、搬送路の側方の2つの部品収容部550のX方向中間に配置される部品認識カメラC51の上方をヘッドユニット560が通過し、部品認識カメラC51が各吸着ノズル561に吸着された電子部品を下方から撮像することで、各吸着ノズル561における吸着ずれが検知され、各電子部品を基板PBに移載する際に吸着ずれに見合った位置補正がされる。
【0026】
また、ヘッドユニット560のX軸方向の両側部には、基板認識カメラC52がそれぞれ固定されており、ヘッド駆動機構570によりヘッドユニット560をX軸方向およびY軸方向に移動させることで任意の位置で基板PBの上方から撮像可能となっている。このため、各基板認識カメラC52は、実装作業位置上にある基板PBに付された複数のフィデューシャルマークを撮影して基板位置、基板方向を画像認識する。
【0027】
このように構成された実装機5全体を制御するコントローラ530は、演算処理部531と、ハードディスクドライブなどの記憶部532と、モーター制御部533と、画像処理部534と、サーバー通信制御部535とを備えている。この演算処理部531はCPU等により構成されており、後述するようにデータ作成装置8で作成されて記憶部532に書き込まれた実装プログラムにしたがって実装機各部を制御して部品実装を行う。また、記憶部532には、上記した実装プログラム以外に、後述するようにデータ作成装置8で作成される段取り指示が書き込まれる。
【0028】
モーター制御部533には、W軸モーターM51、X軸モーターM52、Y軸モーターM53、Z軸モーターM54およびR軸モーターM55が電気的に接続されており、各モーターを駆動制御する。また、これらのモーターM51〜M55にはモーターの回転状況に応じたパルス信号を出力するエンコーダ(図示省略)がそれぞれ付設されている。各エンコーダから出力されるパルス信号はコントローラ530に取り込まれる構成となっており、これらの信号を受けた演算処理部531が各軸モーターM51〜M55の回転量に関する情報を取得し、モーター制御部533と共に各軸モーターM51〜M55を制御する。
【0029】
また、画像処理部534には部品認識カメラC51および基板認識カメラC52が電気的に接続されており、これら各カメラC51,C52出力される撮像信号がそれぞれ画像処理部534に取り込まれる。そして、画像処理部534では、取り込まれた撮像信号に基づいて、部品画像の解析ならびに基板画像の解析がそれぞれ行われる。
【0030】
この実装機5では、表示/操作ユニット540が設けられて実装プログラムや段取り指示情報などを表示する。また、表示/操作ユニット540は、作業者がコントローラ530に対して各種データや指令などの情報を入力するためにも使用される。さらに、実装機5には、データ作成装置8や他の基板処理装置等との間で実装プログラムなどの各種データの授受を行うためにサーバー通信制御部535が設けられている。
【0031】
データ作成装置8は上記のように実装プログラムを作成することができるコントローラ810を有しており、このコントローラ810は実装プログラム以外に印刷プログラム、検査プログラムなどを作成することができ、また実装基板製造システム1全体を制御する。このコントローラ810には、CPU等により構成される演算処理部811と、ハードディスクドライブなどの記憶部812と、通信制御部813とが設けられている。これらのうち演算処理部811は、生産性を向上させるために、各品種での各基板処理装置(印刷機4、実装機5および検査機6)のサイクルタイム(以下「マシンCT」と略する)を算出する。また、演算処理部811は、算出されたマシンCTに基づいて少なくとも一品種について実装機5のサイクルタイムが最も長くなり、実装機5がボトルネックになるか否かを判断する。そして、実装機5がボトルネックになると判断される場合に、演算処理部811は、上記算出結果に基づいて実装機5でのテープフィーダー551の配置態様、つまりフィーダー位置を決定し、実装機5における複数の部品供給部の配置態様の変更を指示して品種についての実装機のサイクルタイムを短縮させる。このように、演算処理部811は、マシンCTを算出するサイクルタイム算出部(CT算出部)、実装機5がボトルネックになるか否かを判断するボトルネック判断部(BN判断部)、実装機5がボトルネックになる場合にフィーダー位置を決定するフィーダー位置決定部、および部品供給部の配置態様の変更を指示する変更指示部としての機能を担うものであり、図3に示すように、それらの機能ブロックが演算処理部811で実行される。また、記憶部812には、上記した実装プログラム、各基板処理装置のマシン情報および基板情報などが記憶されている。そして、次に説明するように実装機5による部品実装を実行させる前に、実装機5でのテープフィーダー551の段取りを指示して生産性の向上を図っている。なお、図3中の符号820は演算処理部811により作成された印刷プログラム、検査プログラム、実装プログラム、段取り指示情報などを表示したり、作業者がコントローラ810に対して各種データや指令などの情報を入力するための表示/操作ユニットである。
【0032】
次に、上記のように構成された実装基板製造システム1による実装基板の製造方法について図4ないし図7を参照しつつ説明する。図4は、図1に示す実装基板製造システムの動作を示すフローチャートである。また、図5は、図4中のフィーダー配置の決定処理を示すフローチャートである。また、図6は、フィーダー配置の決定処理を模式的に示す図である。さらに、図7は、実装機の表示/操作ユニットに表示される段取りの指示の一例を示す図である。
【0033】
この第1実施形態では、図4に示すように、データ作成装置8は各実装機5による部品実装処理を開始する前にフィーダー配置の決定処理を実行して実装機5におけるテープフィーダー551の配置態様の調整を行う(ステップS11)。このフィーダー配置の決定処理では、データ作成装置8の演算処理部811は、図5に示すように、後述する調整動作を実行する回数を示す試行カウント値Kを初期値である「1」にセットする(ステップS110)。そして、演算処理部811は、システム1により製造する実装基板の品種毎に、各実装機5に対する基板PBに実装すべき部品の分配についての最適化処理を行い、実装プログラムを作成する(ステップS111)。また、実装プログラムに適したテープフィーダー551の配置態様を設定するが、特に多品種の実装基板を製造する場合、品種変更に伴うテープフィーダー551の頻繁な入替え作業を抑制して実装基板の生産性を向上させるため、いわゆる共通段取りを行う。例えば図6の左欄に示すように、品種AAAで使用される部品を収納するテープフィーダー551のみならず、品種BBBで使用される部品を収納するテープフィーダー551や、品種AAAおよび品種BBBの両方で使用される部品を収納するテープフィーダー551も実装機5に装着するように共通段取りが行われる。
【0034】
次のステップS112では、演算処理部811は各品種のマシンCTおよびラインCTを算出する。ここでは、算出結果の一例を図6に示して説明する。例えば図6の右上欄に示すように、実装機5により搬送ライン2に沿って搬送される2種類(品種AAA、BBB)の基板PBに対し、
・印刷機4による印刷処理に要する時間…印刷機CT、
・実装機Aによる実装処理に要する時間…実装機ACT、
・実装機Bによる実装処理に要する時間…実装機BCT、
・検査機6による検査処理に要する時間…検査機CT
をそれぞれ求め、各品種での印刷機CT、実装機ACT、実装機BCT、検査機CTが上記「マシンCT」に相当する。そして、品種AAAについては、これらのマシンCTのうち印刷機CTが最も長く、これが品種AAAの実装基板を製造する際のボトルネックであり、品種AAAの実装基板を製造するためのラインのサイクルタイム、つまりラインCTは印刷機CTと同じ値となる。一方、品種BBBにおいては、実装機BCTが最も長く、これが品種BBBの実装基板を製造する際のボトルネックであり、品種BBBのラインCTは実装機BCTと同じ値となる。
【0035】
こうして、最適化処理直後の各種CT(サイクルタイム)が求まると、試行カウント値Kが所定の最大試行回数を超えない(つまり、ステップS113で「NO」)間、演算処理部811は次のステップS114〜S119を実行してテープフィーダー551の配置態様を変更して生産性の向上を図る。というのも、上記した各種CTのうち実装機5のマシンCT(上記具体例では実装機ACTおよび実装機BCT)はテープフィーダー551の配置態様によって変動するからである。すなわち、実装機5のマシンCTは、実装プログラムにしたがって各部品を対応するテープフィーダー551にヘッドユニット560を移動させ、当該テープフィーダー551から部品を取り出し、基板PBの上方位置まで移動させた後に基板PBに搭載する一連の動作に要する時間を積算したものである。したがって、テープフィーダー551の配置態様によってヘッドユニット560の移動距離は異なり、しかもテープフィーダー551のセット位置に応じて各テープフィーダー551に対してアクセス可能なノズルが制限される場合があり、それら状況に応じて実装機5のマシンCTは変動する。
【0036】
本実施形態では、データ作成装置8の演算処理部811は、テープフィーダー551の配置位置を仮想的に移動させた(ステップS114)後、仮想移動後の配置態様での各品種でのマシンCTおよびラインCTを算出する(ステップS115)とともに、全品種のラインCTの合計値を、実装基板製造システム1の生産性を示す指標として求める。例えば図6の下欄に示すように、実装機Bにおけるテープフィーダー551の配置態様を変更したことで品種AAAの実装機BCTが品種AAAのラインCTを超えることなく、品種BBBのボトルネックとなっていた実装機BCTが短縮される。その結果、品種BBBのラインCTは短縮され、ラインCTの合計値も小さくなってシステム全体での生産性を向上させることができる。
【0037】
そこで、上記のようにフィーダー551の仮想移動後のラインCTを求めた後で、演算処理部811は全品種のラインCTの合計値を算出し(ステップS116)、その合計値が改善される、つまり小さくなったか否かを判定する(ステップS117)。そして、改善されない場合のみ、ステップS114でのフィーダーの仮想移動を取りやめてフィーダーの仮想位置を元に戻す(ステップS118)。このような一連の処理が完了すると、試行カウント値Kを「1」だけインクリメントし(ステップS119)、ステップS113に戻る。そして、このステップS113で「YES」と判定した時点、つまり所定の最大試行回数を超えた時点で、データ作成装置8の演算処理部811は、フィーダー配置の決定処理を終了する。
【0038】
図4に戻って説明を続ける。フィーダー配置の決定処理(ステップS11)が完了すると、その時点でのフィーダーの仮想移動後の配置態様を示すフィーダー配置データならびに実装プログラムをデータ作成装置8が通信制御部813およびローカルエリアネットワークLANにより実装機5に送信する(ステップS12)。なお、上記した図6に示す具体例では、実装機Bがボトルネックとなる場合について説明したが、実装機Aがボトルネックになる場合およびいずれの実装機5もがボトルネックになる場合も、本実施形態と全く同様にしてテープフィーダー551の配置態様の変更が決定され、それに対応するフィーダー配置データが実装機5に送信される。また、本実施形態では、フィーダー配置データとともに実装プログラムを転送しているが、実装プログラムの転送タイミングはこれに限定されるものではなく、例えば実装プログラムの生成直後に転送してもよい。
【0039】
一方、実装機5は、フィーダー配置データを受信し(ステップS21)、その受信データに基づいて実装機5のコントローラ510はテープフィーダー551の段取り修正内容を表示/操作ユニット540の表示部541に表示してユーザやオペレータなどにテープフィーダー551の交換や移動などを促す。すなわち、コントローラ510の演算処理部531は、実装プログラムおよびフィーダー配置データで示される段取り指示を記憶部532に記憶するとともに、段取り指示の内容を表示/操作ユニット540の表示部541に表示する(ステップS22)。その表示内容の一例が図7に示すものである。この第1実施形態では、4カ所の部品収容部550へのテープフィーダー551の収容状況がそれぞれ表示領域542〜545に表示されるとともに、これらの表示領域542〜545の下方に位置する表示領域546に具体的な指示内容が表示される。
【0040】
この表示領域546に表示された指示内容にしたがってユーザなどがテープフィーダー551の交換や取付などを行うのであるが、演算処理部531は段取り結果を照会し(ステップS23)、さらに、その段取り結果がフィーダー配置データと合致しているか否かを判定する(ステップS24)。そして、段取りが正しく行われていないと判定する間、演算処理部531は段取り修正の指示を行った(ステップS25)上で、段取り指示の表示(ステップS22)、段取り照会(ステップS23)および段取り判定を繰り返して行う。
【0041】
このステップS24でフィーダー配置データに対応する段取りの完了を確認すると、演算処理部531は記憶部532に記憶されている実装プログラムを読み出し、実装処理を開始する(ステップS26)。そして、実装動作の実行(ステップS27)をステップS28で実装完了を確認するまで継続させる一方、実装完了の確認後(ステップS28で「YES」)、実装が完了した旨が実装機5からデータ作成装置8に送信される(ステップS29)。
【0042】
以上のように、本実施形態における実装機5は、複数のテープフィーダー551を部品収容部550に装着可能で、しかもテープフィーダー551の配置態様を変更可能となっており、共通段取りした状態で複数の品種の実装基板を製造する。このように構成された実装機5では、上記したようにテープフィーダー551の配置態様を変更することで実装機5のマシンCTも変化する。そこで、本実施形態では、実装機5が全品種のうち少なくとも一品種でボトルネックとなっている場合に、当該実装機におけるテープフィーダー551の配置態様を変更することでボトルネックとなっている品種での実装機5のCTを短縮している。したがって、実装基板製造システムに1より全品種の実装基板を製造するためのトータル時間、つまり合計ラインCTを短縮することができ、その結果、生産性を向上させることができる。
【0043】
また、テープフィーダー551の段取りをフィーダー配置データに基づいて変更するにあたって、その段取り指示を表示部541の表示領域546に対して具体的に表示しているため、ユーザやオペレータなどは戸惑うことなく、ステップ・バイ・ステップで的確に段取り替えを行うことができる。また、表示部541の表示領域542〜545では、現状の段取り状態が表示されるため、ユーザやオペレータなどは、表示部541に映し出される配置態様に基づいて、配置態様の変更を確認することができ、誤った配置態様でテープフィーダー551が実装機に装着されるのを効果的に防止することができ、生産性を確実に向上させることができる。
【0044】
このように本実施形態では、データ作成装置8が本発明の「制御装置」に相当している。また、テープフィーダー551が本発明の「部品供給部」に相当している。また、フィーダー配置データで示される段取り指示が本発明の「制御装置による指示内容」に相当し、表示部541の表示領域542〜545に表示される現状の段取り状態が本発明の「実装機における複数の部品供給部の配置態様」に相当しており、それらを表示する表示部541を有する表示/操作ユニット540が本発明の「表示装置」として機能している。
【0045】
ところで、上記実施形態では、最適なテープフィーダー551の配置態様を求めるために、テープフィーダー551の配置位置を仮想的にランダムに移動させながら各仮想移動後におけるマシンCTおよびラインCTを算出しているが、次のようにテープフィーダー551の配置位置を仮想移動させてもよく(ステップS114)、これにより、最適なテープフィーダー551の配置態様を合理的に、かつ短時間で求めることができる。
【0046】
実装基板製造システム1を構成する各基板処理装置(図1では、印刷機4、実装機5、検査機6)には、印刷機4や検査機6のようにマシンCTを短縮することができる余地がないものがある。一方、上記実施形態における実装機A、Bでは、マシンCTを短縮することが可能である。ただし、図6の右欄を比較してわかるように、一方の実装機BCTを短縮した場合、他方の実装機ACTは長くなる。したがって、これらの点を考慮した上で仮想移動を設定するのが望ましい。
【0047】
そこで、品種および基板処理装置毎に評価値AAを求めるとともに、テープフィーダー551の配置位置毎に評価値BBを求め、それらを総合的に判断することでフィーダーの仮想移動を設定するのが合理的である。以下、図8を参照しつつ評価値AAについて説明し、図9を参照しつつ評価値BBについて説明した後で、それらを用いた動作について図10および図11を参照しつつ説明する。
【0048】
図8は、マシンCTと評価値AAとの関係を示す図である。評価値AAは、品種およびマシン毎に算出される値であり、実装機A、BのようにマシンCTを短縮することが可能な基板処理装置のマシンCTから参照マシンCTを減じた値である。この「参照マシンCT」とは、マシンCTを短縮することができる余地がない基板処理装置のマシンCTのうちの最も長いマシンCTを意味している。例えば図8中の品種AAAでは、印刷機CTが参照マシンCTとなり、実装機Aの評価値AAは「−5.0(=25.0−30.0)」となり、実装機Bの評価値AAは「−4.0(=26.0−30.0)」となる。したがって、評価値AAが大きい基板処理装置とは、当該品種についてマシンCTを短縮したい基板処理装置であることを意味する。逆に、評価値AAが小さい基板処理装置とは、当該品種についてマシンCTを大きくできる余地がある、つまりマシンCTが大きくなったとしても参照マシンCTには達せず、ボトルネックにならない基板処理装置であることを意味する。したがって、評価値AAを算出し、それらの算出結果に基づきフィーダーの移動が最も効果的である品種および基板処理装置を特定することができる。例えば図8に示す具体例では、フィーダーの移動によるサイクルタイムの短縮に効果的な組み合わせは実装機Bでの品種AAAに使用するフィーダー551と品種BBBに使用するフィーダー551との移動であることがわかる。
【0049】
図9は、部品収容部に収容されたテープフィーダーと基板との関係を模式的に示す図である。同図において各テープフィーダー551に付した番号は、各テープフィーダー551を装着したセット位置の「負荷度」を示している。この「負荷度」とは、各テープフィーダー551のセット位置と基板PBとの距離に応じたものであり、当該距離が長くなるにしたがって部品実装のためにヘッドユニット560が移動するのに要する時間が長くなること、さらに端の位置にセットされたテープフィーダー551に対してアクセス可能なノズル数が少なくなることを考慮したものである。つまり、上記距離およびセット位置に応じて負荷度を大きく設定している。そして、テープフィーダー551のセット位置の負荷度と当該テープフィーダー551に収納された部品の実装点数を掛け合わせたものを評価値BBとしている。したがって、評価値BBが大きいとは、マシンCTを増加させる部品であることを示している。
【0050】
図10は、本発明にかかる実装基板製造システムの第2実施形態におけるフィーダー配置の決定動作を示すフローチャートである。この第2実施形態では、第1実施形態と同様に、演算処理部811は品種毎に最適化処理を行って実装プログラムを作成し(ステップS31)、さらに各品種のマシンCTおよびラインCTを算出する(ステップS32)。また、試行カウント値Kを初期値である「1」にセットする(ステップS33)。そして、フィーダー配置の決定動作の終了条件が満足されるか否かを演算処理部811は判断する(ステップS34)。この実施形態では、終了条件として、
・試行カウント値Kが所定の最大試行回数を超えない、
・移動可能なテープフィーダー551の候補が存在しない
という2つの条件を含んでおり、いずれの条件も満足されていない(ステップS34で「NO」と判定される)間、演算処理部811は次のステップS35〜S41を実行してテープフィーダー551の配置態様を変更して生産性の向上を図るが、第2実施形態では、第1実施形態と異なる態様でフィーダーの仮想位置移動を実行している。
【0051】
図11は、図10中のフィーダーの仮想移動動作を示すフローチャートである。この第2実施形態では、同図に示すように、演算処理部811が各品種/実装機毎に評価値AAおよびBBを算出する(ステップS351)。そして、それらの中から評価値AAが最大の品種/実装機を選択するとともに(ステップS352)、評価値BBが最大となる部品(以下これを「部品(I)という」)を選択する(ステップS353)。こうして、ボトルネックとなる品種/実装機を特定し、しかも、当該品種/実装機においてCTを大きくさせている要因となる部品(I)を収納するテープフィーダー551を特定している。
【0052】
また、評価値AAが最小の品種/実装機を選択するとともに(ステップS354)、評価値BBが最小となる部品(II)または空きスペース(II)(以下、これらを総称して「部品等(II)という」)を選択する。こうして、上記部品(I)を収納するテープフィーダー551との交換先あるいは当該テープフィーダー551の移動先となる空きスペースを特定している。つまり、このようなフィーダーの交換あるいは移動によって、評価値AAが最小の品種/実装機のマシンCTは上昇するものの、ボトルネックとなるまでマシンCTが増大する可能性は低く抑えられる。
【0053】
こうして部品(I)および部品(II)の選択が完了すると、演算処理部811は部品等(II)が部品であるのか、空きスペースであるのかを判定する(ステップS356)。そして、部品である場合には、部品(I)を収納するテープフィーダー551と、部品(II)を収納するテープフィーダー551とを交換するようにフィーダー551を仮想的に移動させる(ステップS357)。逆に、空きスペースである場合には、部品(I)を収納するテープフィーダー551を空きスペース(II)に移動するようにフィーダー551を仮想的に移動させる(ステップS358)。こうしてテープフィーダー551の配置位置を仮想的に移動させてフィーダー配置の決定処理(ステップS35)を終了する。
【0054】
図10に戻って説明を続ける。この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、データ作成装置8の演算処理部811は、テープフィーダー551の配置位置を仮想的に移動させた後の配置態様での各品種でのマシンCTおよびラインCTを算出する(ステップS36)とともに、全品種のラインCTの合計値を、実装基板製造システム1の生産性を示す指標として求める。そして、その合計値が改善される、つまり小さくなったか否かを演算処理部811は判定する(ステップS38)。そして、改善されない場合のみ、ステップS39でテープフィーダー551を元に戻し、さらに次の候補を選択する(ステップS40)。こうして、1回の試行が完了すると、試行カウント値Kを「1」だけインクリメントした(ステップS41)後、ステップS34に戻り、上記一連の処理を繰り返す。こうして、テープフィーダー551の配置態様を決定した後、第1実施形態と同様に、実装機5におけるテープフィーダー551の配置態様を変更した上で実装処理を開始する。
【0055】
以上のように、第2実施形態によれば、評価値AAおよび評価値BBを算出し、それらに基づきテープフィーダー551の交換や移動などを決定しているので、第1実施形態に比べ、より的確に、しかも短時間で最適なテープフィーダー551の配置態様を決定することができる。もちろん、第2実施形態においても、その決定された配置態様を示すフィーダー配置データに基づいて実装機5での段取り指示や現状の段取り状態を表示部541に表示しながらテープフィーダー551の配置態様を変更しているので、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0056】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、段取り指示や現状の段取り状態を実装機5で表示しているが、データ作成装置8側でも併せて表示するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、本発明の「部品供給部」としてテープフィーダー551のみを装備させているが、その他のフィーダーや部品トレイなどの部品供給部を用いた実装機を組み込んだシステムに対しても本発明を適用することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、テープフィーダー551などの部品供給部の配置態様に関連する段取り指示に基づいてユーザやオペレータなどによるマニュアル操作によって配置態様を変更しているが、指示内容にしたがってロボットにより自動的に部品供給部の配置を変更するように構成してもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、2台の実装機5を装備する実装基板製造システム1に対して本発明を適用しているが、実装機5の台数はこれに限定されるものではなく、フィーダー551の配置態様を変更可能にフィーダー551を複数個装備し、しかも搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を実装する、いわゆる共通段取りされる実装機を1台以上有するシステム1に適用可能である。したがって、当該実装機を1台以上有するシステムであれば、例えば基板処理装置として印刷を検査する印刷検査装置、基板PBに対して部品実装のための接着剤やクリームはんだ等の塗布液を塗布する塗布装置やベーク炉をさらに備えたシステムや、フィーダー551の配置変更が制限されている実装機をさらに備えたシステムにも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…実装基板製造システム
2…搬送ライン
4…印刷機(基板処理装置)
5…実装機(基板処理装置)
6…検査機(基板処理装置)
8…データ作成装置(制御装置)
541…表示部(表示装置)
550…部品収容部
551…テープフィーダー(部品供給部)
560…ヘッドユニット
811…演算処理部(制御装置)
PB…基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の搬送ラインに沿って配設される複数の基板処理装置と、
前記複数の基板処理装置を制御して多品種の実装基板を生産する制御装置と
を備える実装基板製造システムであって、
前記複数の基板処理装置の少なくとも1台は、
部品を供給する部品供給部の配置態様を変更可能に前記部品供給部を複数個装備する部品収容部と、
前記搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を前記複数の部品供給部から移載するヘッドユニットとを含み、
前記制御装置は、
前記実装機が所定の配置態様で配置された前記複数の部品供給部から部品を実装して実装基板を生産するときの各基板処理装置のサイクルタイムを品種ごとに求めるサイクルタイム算出部と、
少なくとも一品種について前記実装機のサイクルタイムが最も長くなり、前記実装機がボトルネックになるか否かを判断するボトルネック判断部と、
前記実装機がボトルネックになると判断される場合に、前記実装機における前記複数の部品供給部の配置態様の変更を指示して前記品種についての前記実装機のサイクルタイムを短縮させる変更指示部とを含む
ことを特徴とする実装基板製造システム。
【請求項2】
前記変更指示部による指示内容を表示する表示装置を備える請求項1に記載の実装基板製造システム。
【請求項3】
前記表示装置は前記実装機における前記複数の部品供給部の配置態様を表示する請求項2に記載の実装基板製造システム。
【請求項4】
基板の搬送ラインに沿って配設される複数の基板処理装置のうちの少なくとも1台が部品を供給する部品供給部の配置態様を変更可能に前記部品供給部を複数個装備し、前記搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を実装する実装機であり、前記複数の基板処理装置で多品種の実装基板を生産する実装基板の製造方法であって、
前記実装機が所定の配置態様で配置された前記複数の部品供給部から部品を実装して実装基板を生産するときの各基板処理装置のサイクルタイムを品種ごとに算出する工程と、
各品種において最も長いサイクルタイムを有してボトルネックとなる基板処理装置を求め、少なくとも一品種について前記実装機がボトルネックとなるか否かを判断する工程と、
前記実装機がボトルネックになると判断される場合に、前記品種についての前記実装機のサイクルタイムが短縮されるように、前記実装機における前記複数の部品供給部の配置態様を変更した後で、実装基板を生産する工程と
を備えることを特徴とする実装基板の製造方法。
【請求項1】
基板の搬送ラインに沿って配設される複数の基板処理装置と、
前記複数の基板処理装置を制御して多品種の実装基板を生産する制御装置と
を備える実装基板製造システムであって、
前記複数の基板処理装置の少なくとも1台は、
部品を供給する部品供給部の配置態様を変更可能に前記部品供給部を複数個装備する部品収容部と、
前記搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を前記複数の部品供給部から移載するヘッドユニットとを含み、
前記制御装置は、
前記実装機が所定の配置態様で配置された前記複数の部品供給部から部品を実装して実装基板を生産するときの各基板処理装置のサイクルタイムを品種ごとに求めるサイクルタイム算出部と、
少なくとも一品種について前記実装機のサイクルタイムが最も長くなり、前記実装機がボトルネックになるか否かを判断するボトルネック判断部と、
前記実装機がボトルネックになると判断される場合に、前記実装機における前記複数の部品供給部の配置態様の変更を指示して前記品種についての前記実装機のサイクルタイムを短縮させる変更指示部とを含む
ことを特徴とする実装基板製造システム。
【請求項2】
前記変更指示部による指示内容を表示する表示装置を備える請求項1に記載の実装基板製造システム。
【請求項3】
前記表示装置は前記実装機における前記複数の部品供給部の配置態様を表示する請求項2に記載の実装基板製造システム。
【請求項4】
基板の搬送ラインに沿って配設される複数の基板処理装置のうちの少なくとも1台が部品を供給する部品供給部の配置態様を変更可能に前記部品供給部を複数個装備し、前記搬送ラインに沿って搬送される2品種以上の基板に対して各品種に応じた部品を実装する実装機であり、前記複数の基板処理装置で多品種の実装基板を生産する実装基板の製造方法であって、
前記実装機が所定の配置態様で配置された前記複数の部品供給部から部品を実装して実装基板を生産するときの各基板処理装置のサイクルタイムを品種ごとに算出する工程と、
各品種において最も長いサイクルタイムを有してボトルネックとなる基板処理装置を求め、少なくとも一品種について前記実装機がボトルネックとなるか否かを判断する工程と、
前記実装機がボトルネックになると判断される場合に、前記品種についての前記実装機のサイクルタイムが短縮されるように、前記実装機における前記複数の部品供給部の配置態様を変更した後で、実装基板を生産する工程と
を備えることを特徴とする実装基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−62290(P2013−62290A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198189(P2011−198189)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
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