説明

実装方法

【課題】熱硬化型接着剤の反応性にかかわりなく、接続信頼性を損なうことなく、基板の反りを防止する実装方法を提供する。
【解決手段】相対向する電極を有する、基板と実装部品とを熱硬化型接着剤を介在させ、相対向する基板と実装部品をステージとヘッドとの間で、加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する回路の実装方法であって、実装部品の熱圧着開始より0.01〜30秒間遅れて基板を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と実装部品とを熱硬化型接着剤を介して熱圧着する実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相対する多数の電極を有する被接続部材を接続するための接続材料として、異方導電性フィルム(ACF)、異方導電性ペースト(ACP)、非導電性フィルム(NCF)等の熱硬化型接着剤を介して基板と実装部品とを熱圧着する方法が知られている。これらは、プリント配線基板、LCD用ガラス基板、フレキシブルプリント基板等の基板や、IC、LSI等の半導体素子やパッケージなどの実装部品を接続する際、相対する電極同士の導通状態を保ち、隣接する電極同士の絶縁を保つように電気的接続と機械的固着を行う。このような熱硬化型接着剤の多くは熱硬化性樹脂を含有する接着剤成分と、必要により配合される導電性粒子とを含みフィルム状に形成されており、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の支持体に積層した状態で製品化されている。そして使用に際しては、熱硬化型接着剤を被接続部材に設け、熱硬化性樹脂を硬化させて部材間の機械的固着を得ると共に、対向する電極間を直接または導電性粒子を介して接触させて電気的接続を得ている。
例えば、LCD用ガラス基板にICチップを実装するCOG(Chip On Glass)では、図1に示したように、LCD用ガラス基板1上に熱硬化型接着剤2を介在させ、相対向する基板と実装部品3をステージ4とヘッド5との間で、加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する。一般的にヘッド5の温度は、150〜300℃とし、ステージ4は、加熱せず室温付近か、ヘッドから伝熱され伝熱量と放散量がつりあった温度とする場合や、媒体による温度調整をすることが多い。これは、基板と実装部品の電極との位置あわせの際に、熱硬化型接着剤2の熱硬化反応が始まるのを抑制するためであり、さらに、実装工程において熱圧着毎に接続温度がばらつくことを防止するため、熱硬化反応の開始温度以下となる60℃以下に加温している。
液晶表示用ガラスパネルへの液晶駆動用ICの実装は、液晶駆動用ICの実装されたフレキシブルテープとガラスパネルとを回路接続部材で接合するOLB実装方法や、液晶駆動用ICを直接ガラスパネル上に回路接続部材で接合するCOG実装方法が用いられている。COG実装の場合、COGに用いるガラス基板として、製品の軽量化や高密度実装を目的として、薄型で線膨張係数の低いものが使用されるようになり、例えば、従来の1.1mm厚の基板から0.7mm厚の基板が使用され、線膨張係数も従来の4.8×10-6/℃程度のものから3.1×10-6/℃程度のものが使用されるようになってきている。
このように基板の薄型、低熱膨張になると、図2に示したように熱硬化型接着剤の熱分布歪みや内部応力により、基板に反り変形が生じ表示にむらが出たり、接続抵抗の上昇を招くといった問題がある。
【0003】
これに対し、熱硬化型接着剤を低弾性率化して基板の内部応力を低減させることが行われている。しかし、低弾性率の熱硬化型接着剤を使用した場合、基板の反りは抑制できても、接続信頼性が低下するという問題が生じる。
基板のそりを抑制する方法として、ステージとヘッドとの間で、基板と実装部品とを熱硬化型接着剤を介して熱圧着する実装方法において、熱圧着時のステージ温度を、硬化後の接着剤の温度と弾性率の関係における弾性率の変曲点の温度以上とする方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−312069号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、あらかじめステージを加熱しているため、特に最近の低温反応型の熱硬化型接着剤を用いる場合、ステージを加熱しすぎると実装材料を熱圧着する前に熱硬化型接着剤が反応して接着できなくなり、一方でステージの加熱を弱めると接着はされるものの、本来の目的である、そりの抑制ができない問題があった。
【0006】
本発明は以上のような従来技術の問題点を抜本的に解決するものであり、相対向する電極を有する基板と実装部品とを熱硬化型接着剤を介在させ、相対向する基板と実装部品をステージとヘッドとの間で、加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する回路の実装方法を行う際に、熱硬化型接着剤の反応性にかかわりなく、接続信頼性を損なうことなく、基板の反りを防止する実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、相対向する電極を有する基板と実装部品を熱硬化型接着剤を介在させ、相対向する基板と実装部品をステージとヘッドとの間で、加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する回路の実装方法であって、実装部品の熱圧着開始より0.01〜30秒間遅れて基板を加熱することを特徴とする実装方法を提供するものである。
好ましくは、実装部品の熱圧着開始より遅れて基板を加熱した際の、基板の到達温度(T1:℃)と、硬化後の熱硬化性接着剤のガラス転移温度(T2:℃)との間には、
−30≦T1−T2≦100(℃)
が成立することを特徴とする実装方法を提供するものである。
また好ましくは、基板の加熱については、実装部品の熱圧着終了後、別途基板を加熱して行うことを特徴とする実装方法を提供するものである。
更に、基板の加熱については、熱圧着開始より遅れてステージを加熱して行うことを特徴とする実装方法を提供するものである。
また更に、硬化後の熱硬化型接着剤のガラス転移温度が、80〜250℃であることを特徴とする実装方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実装方法によれば、ICチップ等の実装部品を基板に熱硬化型接着剤を介在させ熱圧着により実装する場合に、熱硬化性接着剤の反応性にかかわりなく、接続信頼性を損なうことなく、基板の反りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実装方法は、図1に示したように、基板1上に熱硬化型接着剤2を介して実装部品3を配したものを、ステージ4とヘッド5の間で熱圧着することにより実装する場合において、ステージとヘッドとの間で、基板と実装部品とを熱硬化型接着剤を介して加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する際に、実装部品の熱圧着開始より遅れて基板を加熱するものである。
本発明の基板1は、実装材料を所定の位置に配置して、電気的回路としてなるものであればよく、具体的にはガラス基板、ガラス強化エポキシ基板、紙フェノール基板、セラミック基板、積層板などが挙げられる。
本発明の熱硬化型接着剤2は、種々の異方導電性フィルム(ACF)、異方導電性ペースト(ACP)、非導電性フィルム(NCF)等を使用することができる。接続信頼性や導通抵抗の点から、硬化後の熱硬化型接着剤のガラス転移温度(Tg)は、80〜250℃のものを使用することが好ましく、100〜240℃のものがより好ましく、120〜230℃が最も好ましい。
硬化後の熱硬化型接着剤のガラス転移温度(Tg)が80℃未満の場合、そりが低減できるものの接続信頼性が低くなる傾向があり、一方硬化後の熱硬化型接着剤のガラス転移温度(Tg)が250℃を超える場合、基板の加熱により反りが低減されるに伴い、接続信頼性が低下する傾向がある。
ガラス転移温度(Tg)は、例えば硬化後の熱硬化型接着剤のTMA測定やDMA測定によるtanδピーク温度から算出できる。
熱硬化型接着剤中の熱硬化性樹脂成分は、例えば(メタ)アクリル化合物、アクリル樹脂、ウレタン化合物、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等からなるものを使用することができる。さらに熱硬化性樹脂の硬化反応の形態も二重結合のラジカル重合や、エポキシ樹脂のイオン重合、重付加など、いずれの重合形態を利用することができる。さらにそれ自身では熱硬化しないフィルム形成ポリマーを含んでいても良い。また、その他の添加物としてラジカル重合開始剤、エポキシ硬化剤、シランカップリング剤を含んでいても良い。
これらの熱硬化性樹脂成分やフィルム形成ポリマーやその他添加物の種類や量を調整することにより、熱硬化型接着剤2のガラス転移温度(Tg)を制御することができる。
【0010】
本発明の実装部品としては、ICチップ、LSIチップ、抵抗、コンデンサなど、基板上に直接実装するものであればいかなるものも用いることができる。これらの中でICチップ、LSIチップなど部品サイズが大きく、接続端子数が多い実装材料を用いた場合に本発明の効果が顕著に表れる。
【0011】
本発明の実装部品の熱圧着開始より遅れて基板を加熱する方法としては、実装部品の熱圧着を開始した後に、熱圧着しながらステージを加熱する方法、実装部品の熱圧着を開始、圧力開放された後にステージを加熱する方法、実装部品の熱圧着を開始、終了した後に別途基板を加熱する方法等、いずれの方法を用いても良い。
【0012】
ステージを加熱する方法としては、ステージ4に、セラミックヒーター、抵抗式のヒーターを内蔵したパルスヒーター等を用いることが好ましい。熱に対する寸法安定性や温度制御性が良好であるセラミックヒーターを用いると、ステージ4の温度制御が良好であり好ましい。
【0013】
加熱ヘッド5は、金属製のブロックに加熱ヒーターを内蔵したもの等を使用することができる。熱圧着時に、熱硬化型接着剤2を介在して構成される基板1と実装部品とを、加熱ヘッド5によって、1端子当たり圧力50〜2000kg/cm2 で加圧し、熱硬化型接着剤の硬化を行うに十分な熱を加えることが好ましい。
【0014】
実装部品の熱圧着を開始、終了した後に別途基板を加熱する方法は、熱板上に基板を配置し、一定時間放置する方法、熱板上に基板を配置し基板を熱板に押し付ける方法、加熱炉の中に実装部品を実装した基板を投入する方法、基板に温風を吹き付ける方法、超音波やその他外部からのエネルギーを基板に与えて基板を加熱する方法など、いずれの方法を用いても良い。このとき、実装部品の熱圧着開始より遅れて基板を加熱した際の、基板の到達温度(T1:℃)と、硬化後の熱硬化性接着剤のガラス転移温度(T2:℃)との間に、−30≦T1−T2≦100(℃)が成立することが望ましく、−25≦T1−T2≦90(℃)が成立することがより望ましく、−20≦T1−T2≦80(℃)が成立することが更に望ましく、−15≦T1−T2≦70(℃)が成立することが最も望ましく、−10≦T1−T2≦60(℃)が成立することが極めて望ましい。T1−T2>100(℃)の場合には接続抵抗の上昇や、基板と実装部品との剥離が生じる傾向があり、一方T1−T2<−30(℃)の場合には、反り低減効果が減少する傾向がある。
また、本発明における実装部品の熱圧着開始から、基板の加熱開始までの間(ti)は0.01s≦ti≦1000hの範囲であることが望ましく、0.02s≦ti≦100hの範囲であることがより望ましく、0.03s≦ti≦10hの範囲であることが更に望ましく、0.04s≦ti≦1hの範囲であることが最も望ましい。
実装部品の熱圧着開始から、基板の加熱開始までの間(ti)が、0.01s未満の場合、接続抵抗の上昇や基板と実装部品との剥離が生じる傾向があり、一方、1000hを超える場合には量産性に乏しくなる傾向がある。
【0015】
本発明は、上記で説明した他に、ステージと加熱ヘッドとの間で、基板と実装部品とを熱硬化型接着剤を介在して熱圧着する実装方法において、基板1とICチップ3のような実装部品の位置関係を逆にし、基板1側から加熱ヘッド5で加熱加圧しても良い。この場合、熱圧着に遅れて加熱するのは実装部品となる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を表1に示す実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例1〜12、比較例1〜6)
基板として、ガラス基板(コーニング#7059、外形38mm×28mm、厚さ0.7mm、表面にITO(酸化インジウム錫)配線パターン(パターン幅50μm、ピッチ50μm)を有するもの)、実装部品として、ICチップ(外形1.7mm×17.2mm、厚さ0.55mm、バンプの大きさ50μm×50μm、バンプのピッチ50μm)を100MPa(バンプ面積換算)の荷重をかけて加熱加圧して実装した。熱硬化型接着剤としては、表に示した(i)、(ii)又は(iii)の異方導電性フィルム(ACF)を使用し、基板と実装部品に介在させ、セラミックヒーターからなるステージとセラミックヒーターからなるヘッド(5mm×30mm)を用いて表に示す条件で実装した。
なお、表には、実装部品の熱圧着開始より遅れて基板を加熱した際の、基板の到達温度(T1:℃)と、硬化後の熱硬化性接着剤のガラス転移温度(T2:℃)との差T1−T2と、実装部品の熱圧着開始から、基板の加熱開始までの間(ti)もあわせて示した。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】


(熱硬化型接着剤の硬化後のTg測定)
異方導電性フィルムを幅5mm、長さ40mmの長方形型に切断した。このフィルムを、熱風乾燥機を用いて170℃で2時間加熱して、硬化した異方導電フィルムを作製した。これをDAM測定装置(Rheometrics 製 RSA II)で粘弾性スペクトルを測定し、tanδピークの値をTgとした。
【0019】
(基板の反り)
図3に示したように、基板とICチップの実装後のICチップ側を平坦な台の上に置き、基板の上面の凸面から12.5mm離れた箇所の高さLを測定し、この値を反りの指標とした。
【0020】
(接続信頼性測定方法)
接続信頼性測定用サンプルの接続直後の接続抵抗と、耐湿試験(85℃、85%RH)に500時間放置後の接続抵抗を四端子法で測定した。10サンプルの平均値を接続抵抗(Ω)とし、次の4段階の基準で接続抵抗を評価した。
○:1Ω未満
□:1Ω以上、5Ω未満
×:5Ω以上
OPEN:導通がなく、接続抵抗が測定できない
これらの結果を表1に示した。
【0021】
表1中、Tgは、硬化後の熱硬化性接着剤のガラス転移温度(T2:℃)。基板加熱条件中の温度は、実装部品の熱圧着開始より遅れて基板を加熱した際の、基板の到達温度(T1:℃)。
tiは、実装部品の熱圧着開始から、基板の加熱開始までの時間(ti)
表1の結果から、基板を加熱せず実装材料を熱圧着した比較例1〜3と比較して、実装材料を熱圧着し、その後に基板を加熱した実施例1〜12では基板の反りが著しく抑制され、かつ接続信頼性も優れていることがわかる。一方、実装材料を熱圧着する前に基板を加熱した比較例4〜6では、OPEN不良が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実装方法を説明する断面模式図である
【図2】基板のそりを説明する断面図である
【図3】実装部品実装後における基板の反りの測定方法を説明する断面図である
【符号の説明】
【0023】
1…基板、2…熱硬化型接着剤、3…ICチップ(実装部品) 、4…ステージ、5…加熱ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する電極を有する基板と実装部品とを熱硬化型接着剤を介在させ、相対向する基板と実装部品をステージとヘッドとの間で、加熱加圧して加圧方向の電極間を電気的に接続する回路の実装方法であって、実装部品の熱圧着開始より0.01〜30秒間遅れて基板を加熱することを特徴とする実装方法。
【請求項2】
請求項1において、実装部品の熱圧着開始より遅れて基板を加熱した際の、基板の到達温度(T1:℃)と、硬化後の熱硬化性接着剤のガラス転移温度(T2:℃)との間に、
−30≦T1−T2≦100(℃)
が成立することを特徴とする実装方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、基板の加熱について、実装部品の熱圧着終了後、別途基板を加熱して行うことを特徴とする実装方法。
【請求項4】
請求項1又は2において、基板の加熱について、熱圧着開始より遅れてステージを加熱して行うことを特徴とする実装方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかにおいて、硬化後の熱硬化型接着剤のガラス転移温度が、80〜250℃であることを特徴とする実装方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−214596(P2007−214596A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127685(P2007−127685)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願2002−363962(P2002−363962)の分割
【原出願日】平成14年12月16日(2002.12.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】