説明

実装構造体、液滴吐出ヘッド

【課題】端子及び配線の狭ピッチ化を図るとともに熱影響を低減する。
【解決手段】本発明の実装構造体は、複数の配線161、162が形成された基体100Aと、能動面210及び能動面210の裏面よりも面積が小さい側面220を有するとともに複数の配線の各々に電気的に接続される端子230が能動面210の周縁に沿って設けられた電子部品200と、を備えている。電子部品200は、側面220が基体100Aに接続され基体100Aに実装されている。端子230と配線161、162とが、端子230及び配線162に析出させためっきを介して導通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装構造体、及び液滴吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の分野においては、半導体装置等の電子部品を基板に実装する技術が用いられている。例えば液滴吐出ヘッドは、液状体の貯留部やノズル、液状体を加圧しノズルから押し出す駆動素子等を備えており、駆動素子の配線を有する基板には、駆動素子に電気信号を供給するドライバ(電子部品)が実装されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、駆動素子を覆う封止基板上に直方体状のドライバが配置されている。ドライバは端子を有する能動面を上面とし、その裏面が封止基板に接着剤等で固着されている。ドライバの端子は、駆動素子から引き出された配線にワイヤボンディングで電気的に接続されている。このようなワイヤボンディングを用いた実装構造体では配線の狭ピッチ化が難しいため、駆動素子の高集積化や電子機器の小型化が困難である。
【0004】
そこで、ワイヤボンディングを用いない実装構造体が提案されている(例えば特許文献2)。特許文献2では、配線及び端子の各々をシードとしてめっきを析出させ、互いのめっきを接触させて配線と端子とを導通させている。このような技術を用いれば、配線の狭ピッチ化が対応可能になる。また、複数の端子・配線間を一括して接続することができるので、ワイヤボンディングを用いる場合よりも実装プロセスの効率化が図られる。
【特許文献1】特開2000−135790号公報
【特許文献2】特開2006−80182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の技術を用いる場合でも、さらなる狭ピッチ化に対応可能とし、かつ電子部品の熱による基板側への悪影響を低減する観点から改善点もある。
【0006】
端子や配線をシードとしてめっきを析出させると、めっきが端子・配線間と同程度の大きさで端子間や配線間にも等方成長する。端子間や配線間においてめっきの接触による短絡を防止する観点から、端子の間隔や配線の間隔を端子・配線間よりも広くすることが考えられる。特許文献2の実装構造にこれを適用するためには、端子・配線間に電子部品の厚さ以上の段差があるので、端子の間隔や配線の間隔をこの段差以上とする必要がある。すなわち、電子部品の厚さが狭ピッチ化の妨げとなってしまう。
【0007】
また、製造上や設計上の理由により、直方体状の電子部品の能動面は直方体の最も大きな面となっていることが多い。能動面の裏面を基板に固着させると、電子部品と基板との接触面積が大きくなる。すると、電子部品の動作時に接触部分を介して基板に伝わる熱量が大きくなり、基板側に悪影響を与えてしまうおそれがある。例えば、液滴吐出ヘッドにおいては、基板側に吐出する液状体が貯留されており、この液状体が加熱されてしまうおそれがある。液状体が加熱されると、その粘性等の特性が変化して吐出量が設定値と異なってしまうこともある。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑み成されたものであって、配線の狭ピッチ化に対応可能であり、かつ電子部品の熱による基板側への悪影響を低減することが可能な実装構造体を提供することを目的の1つとする。また、このような実装構造体を備えた良好な液滴吐出ヘッドを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実装構造体は、複数の配線が形成された基体と、能動面及び該能動面の裏面よりも面積が小さい側面を有するとともに前記複数の配線の各々に電気的に接続される端子が前記能動面の周縁に沿って設けられた電子部品と、を備え、前記電子部品は、前記側面が前記基体に接続され前記基体に実装されており、前記端子と前記配線とが、該端子及び該配線に析出させためっきを介して導通していることを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、能動面の裏面よりも面積が小さい側面を基体に接続させているので、能動面の裏面を基体に接続させる場合よりも、電子部品と基体との接触面積が小さくなる。したがって、電子部品の動作時に接触部分を通って基体に伝わる熱量が小さくなり、熱による基体側への悪影響が低減される。
【0011】
また、能動面の裏面を基体に接続させる場合よりも、端子と配線との間の距離が能動面の直交方向における電子部品の厚さ分だけ近くなり、端子と配線とを導通させるために必要なめっきの寸法を小さくすることができる。したがって、端子の間や配線の間においてめっきが接触することによる短絡を防止することができ、端子の間隔や配線の間隔を狭くすることができる。また、端子と配線との間の距離に比べて大きなめっきで端子と配線とを導通させことができ、接続信頼性を高めることができる。
【0012】
また、前記複数の端子の間隔及び前記複数の配線の間隔が、前記端子と前記配線との間の距離よりも広くなっている構成としてもよい。
このようにすれば、端子の間や配線の間においてめっきが接触することによる短絡を防止することができる。
【0013】
また、前記複数の端子の間に、前記能動面における前記側面側の外周に向かって延びる絶縁性の隔壁が設けられている構成としてもよい。
このようにすれば、端子の間においてめっきが接触導通しなくなるので、端子の間における短絡を確実に防止することができる。したがって、端子の狭ピッチ化や接続信頼性の向上が図られる。
【0014】
また、前記複数の端子の各々が、該端子から前記能動面における前記側面側の外周に向かって延びる接続導電部を有しており、前記接続導電部と前記配線とが、該接続導電部及び該配線に析出させためっきを介して導通している構成としてもよい。
このようにすれば、接続導電部と配線との間の距離は、端子と配線との間の距離よりも短くなるので、端子と配線とを導通させるために必要なめっきの寸法を小さくすることができる。これにより、端子及び配線の狭ピッチ化や接続信頼性の向上が図られる。
【0015】
また、前記能動面が、前記基体において前記電子部品と接続される面に対して90°より小さな角度をなす傾斜面となっている構成としてもよい。
このようにすれば、電子部品が接続される面に形成された配線と端子とが近くなるので、端子と配線とを導通させるために必要なめっきの寸法を小さくすることができる。これにより、端子及び配線の狭ピッチ化や接続信頼性の向上が図られる。
【0016】
また、前記基体は段差を有するとともに前記電子部品が前記段差の上段面に配置されており、前記配線が前記段差の下段面に形成されているとともに前記下段面と前記上段面との間の段差側面、又は前記段差側面と前記上段面とに形成されている構成としてもよい。この場合には、前記段差側面が、前記下段面と90°より大きな角度をなす傾斜面となっていることが好ましい。
このようにすれば、段差を有する基体に電子部品を実装することができるとともに、端子及び配線の狭ピッチ化や、接続信頼性の向上が図られる。また、段差側面が下段面と90°より大きな角度をなす傾斜面となっていれば、90°以下の角度をなす場合よりも段差側面における配線材料のカバレッジ性を向上させることができる。また、配線材料を成膜した後この膜をパターニングする手法を用いる場合に、レジストパターン等のマスクを配置(形成)することが容易化される。以上のように、良好な配線とすることが可能になる。
【0017】
本発明の液滴吐出ヘッドは、液状体を吐出するノズル開口に連通し、前記液状体を貯留する圧力発生室と、前記圧力発生室の内壁を構成する第1基板と、前記第1基板に設けられ前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる駆動素子と、前記第1基板に形成され前記駆動素子に導電接続された配線と、前記第1基板における前記配線の形成面に配置され前記駆動素子を覆う第2基板と、前記駆動素子を駆動する電子部品と、を備え、前記第1基板と前記第2基板とを含んだ基体に前記電子部品が実装されており、該基体と該電子部品とからなる実装構造体が前記の本発明の実装構造体となっていることを特徴とする。
【0018】
このようにすれば、前記のように電子部品の動作時に基体側へ伝わる熱量が低減されるので、圧力発生室に貯留された液状体の昇温が低減される。したがって、液状体の昇温による特性変化が低減され、特性変化による吐出量の変化が低減される。よって、所定量の液状体を吐出させることが可能な良好な液滴吐出ヘッドとなる。
また、前記のように配線の狭ピッチ化が図られるので、配線と導通する駆動素子の高集積化が図られる。駆動素子の高集積化によりノズル開口の狭ピッチ化が図られ、微細なパターンで液状体を吐出させることが可能な液滴吐出ヘッドとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。以降の説明では図面を用いて各種の構造を例示するが、構造の特徴的な部分を分かりやすく示すために、図面中の構造はその寸法や縮尺を実際の構造に対して異ならせて示す場合がある。
【0020】
[第1実施形態]
図1〜3は、第1実施形態の液滴吐出ヘッド100の構成を示す図である。液滴吐出ヘッド100は、複数の基板が重ね合わされた構造を基体としている。ここでは前記基板の面方向において互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、面方向に直交する方向をZ方向とする。以下、このようなXYZ直交座標系に基づいて各部材の位置関係を説明する。図1にはZ方向における一方の側から見た液滴吐出ヘッド100の概略斜視図を、図2にはZ方向における他方の側から見た液滴吐出ヘッド100の分解斜視図を、図3には図1のA−A線に沿う断面構成図を、それぞれ示している。
【0021】
図1に示すように、液滴吐出ヘッド100は、基体100Aに電子部品200が実装された構造となっている。本実施形態の基体100Aは、Z負方向から順にノズル基板110、流路形成基板120、振動板130、封止基板140、及びコンプライアンス基板150が重ね合わされた構造となっている。
【0022】
詳しくは後述するが、流路形成基板120、振動板130、封止基板140等には、それぞれ開口部が設けられている。これら開口部は、互いに連通して基体100Aの中空構造を構成しており、液状体の流路や貯留部等となっている。コンプライアンス基板150には、液状体の導入口153や、導入された液状体の圧力を調整する圧力調整部154が設けられている。
【0023】
基体100Aは、Y方向に並ぶ複数の駆動素子(後述する)を内包しており、振動板130には、各駆動素子と導通する第1配線161がX方向に延設されている。封止基板140の中央部には、第1配線161を露出させる溝部180がY方向に延設されている。基体100Aは、溝部180による段差を有している。すなわち、開口部内に露出した振動板130のZ正方向側の面が下段面180A、封止基板140のZ正方向側の面が上段面180B、上段面180Bと下段面180Aとの間の封止基板140側面が段差側面180Cとなっている。段差側面180C及び上段面180Bには、第2配線162がX方向に延設されている。第1配線161及び第2配線162は、互いに導通するようになっており、配線160を構成している。配線160は、各駆動素子に対応してY方向に並んでいる。
【0024】
また、上段面180Bには、電子部品200が配置されている。本実施形態の電子部品200は、前記駆動素子のドライバとして機能する半導体装置である。電子部品200は、Y方向に長手の略直方体状になっており、能動面210と能動面210よりも面積が小さい側面220とを有している。ここでは、能動面210をX正方向(側方)に向けて配置されており、側面220をZ負方向(下方)に向けて配置されている。
【0025】
能動面210のZ負方向側の周縁には、複数の端子230がY方向に沿って列状に設けられている。端子230は、例えばAlやNi−Cr、Cu、Ni、Au、Agのうちの1又は2以上からなるパッド状のものである。電子部品200は、側面220が基体100Aに接続され実装されており、各端子230は、これに対応する配線160と導通している。端子230と配線160との接続部については後に説明する。
【0026】
図2に示すように、ノズル基板110のZ正方向側に流路形成基板120が配置されている。ノズル基板110と流路形成基板120とは、例えば接着剤や熱溶着フィルム等を介して固定されている。流路形成基板120は、シリコンやガラス、セラミックス材料等からなるものであり、ここではシリコンからなるものを採用している。流路形成基板120には、その中央部からX方向に延びる複数の隔壁121が形成されている。隔壁121は、流路形成基板120の母材であるシリコン単結晶基板が異方性エッチングにより部分的に除去され形成されている。除去された部分は、隔壁121により区画された平面視略櫛歯状の開口部となっている。
【0027】
これらの開口部のうちX方向に延びた部分は、ノズル基板110及び振動板130に挟まれて圧力発生室122を構成している(図3参照)。ノズル基板110には、各圧力発生室122に対応させてY方向に並ぶノズル開口111が設けられている。各圧力発生室122の内壁には供給路123が設けられており、複数の圧力発生室122の各々は、各供給路123を介して共通の液溜り124に通じている。
【0028】
なお、図2にはY方向に並ぶ6個のノズル開口111を示しているが、実際には多数(例えば180個)のノズル開口111が並んでいる。また、Y方向に並ぶ圧力発生室122、駆動素子、及びノズル開口111を1つのグループとして、X方向に2つのグループが配置された構成を例示しているが、1つのグループで構成された液滴吐出ヘッドであってもよい。
【0029】
図3に示すように、流路形成基板120のZ正方向には、振動板130が配置されている。振動板130は、流路形成基板120側から順に配置された弾性膜131と下電極膜132とを有している。弾性膜131は、例えば1〜2μm程度の厚さの酸化シリコン膜からなっており、下電極膜132は、例えば0.2μm程度の厚さの金属膜からなっている。下電極膜132は、弾性膜131のZ正方向側に概略ベタ状に設けられている。
【0030】
振動板130のZ正方向には、下電極膜132側から順に圧電体膜133と上電極膜134とが配置されている。圧電体膜133は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなり厚さが1μm程度の膜である。上電極膜134は、例えば0.1μm程度の厚さの金属膜からなっている。下電極膜132、圧電体膜133、及び上電極膜134は駆動素子170を構成している。なお、弾性膜を省略して下電極膜が弾性膜を兼ねる構成としてもよい。
【0031】
また、振動板130のZ正方向に、駆動素子170を覆って封止基板140が配置されている。封止基板140は、流路形成基板120とともに基体100Aを構成しているので、流路形成基板120と略同一の熱膨張率を有する剛性材料を用いることが好ましい。ここでは、流路形成基板120と同様にシリコン単結晶基板を用いている。なお、流路形成基板120と同様に、ガラスやセラミック材料等からなる封止基板140を採用してもよい。
【0032】
封止基板140には、液溜り124と対応する部分に開口部が設けられており、開口部の内側が液溜り141となっている。液溜り124、141は、導入口153から導入された液状体を貯留することができるようになっている。また、封止基板140には、駆動素子170を覆う部分に凹部(駆動素子保持部)142が設けられている。駆動素子保持部142は、駆動素子170の周囲に駆動素子170の運動を阻害しない程度の空間を確保するとともに、その空間を密封する機能を有している。
【0033】
駆動素子保持部142は、駆動素子170のうち少なくとも圧電体膜133を封止可能な寸法となっている。駆動素子保持部142は、複数の駆動素子170で共通して設けられていてもよいし、駆動素子170ごとに区画されていてもよい。また、駆動素子保持部142の内部を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気としてもよい。これにより、駆動素子保持部142内を低湿度に保持することができ、駆動素子170の劣化を効果的に防止することができる。
【0034】
封止基板140の中央部には、溝部180が設けられている。本実施形態では、段差側面180Cが下段面180Aと溝部180側において90°より大きな角度をなす傾斜面となっている。面方位(100)のシリコン単結晶基板を封止基板140の母材とし、これをフッ酸等でウエットエッチングすれば、各面方位のエッチングレートの違いにより、傾斜角が約54°(前記の角度が約126°)の傾斜面を形成することができる。
【0035】
駆動素子170の上電極膜134は、駆動素子保持部142の内部から溝部180の内側まで延設されて第1配線161となっている。第1配線161の形成材料としては、例えばAlやNi−Cr、Cu、Ni、Au、Ag等の導電材料を用いることができる。第1配線161の形成方法としては、前記の導電材料をスパッタリング法で成膜した後、この膜をフォトリソグラフィ法及びエッチング法等を用いてパターニングする方法や、後に[製造方法]で説明するめっきによる方法等を用いることができる。
【0036】
また、駆動素子保持部142の外側に延設された上電極膜134と、下電極膜132との間に短絡を防止するための絶縁膜135が介挿されている。なお、上電極膜をそのまま延設する代わりに、上電極膜と電気的に接続された配線を流路形成基板120上に形成し、この電極配線を駆動素子保持部142の外側に引出して、第1配線としてもよい。
【0037】
封止基板140のZ正方向には、コンプライアンス基板150が接合されている。コンプライアンス基板150は、封止基板140側から順に配置された封止膜151と固定板152とを有している。封止膜151は、液溜り141に対応する封止基板140の開口部を覆って(塞いで)設けられている。封止膜151は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さ6μm程度のポリフェニレンスルフィドフィルム)からなっている。固定板152は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さ30μm程度のステンレス鋼)からなっている。
【0038】
固定板152は、液溜り141を覆う部分の封止膜151を露出させる開口部を有しており、開口部内の封止膜151は、圧力調整部154となっている。圧力調整部154は、液溜り141、124に貯留された液状体の圧力に応じて撓み変形するようになっている。これにより、液状体を導入するための圧力等を緩和することができ、この圧力が圧力発生室122の内側に及ばないようになっている。
【0039】
封止基板140の上段面180B及び段差側面180Cには、第2配線162が形成されている。第2配線162は、第1配線161と同様の導電材料からなるものである。その形成方法としては、前記の導電材料からなる膜をパターニングする方法を用いることもできるが、めっき処理を用いることが好ましい。めっき処理を用いる場合には、第2配線の形成材料として、Cu、Ni、Auのうちの1又は2以上の組合せを用いることが好ましい。これにより、良好にめっきを良好に析出させることができ、接続信頼性を向上させることができる。
【0040】
本実施形態の第2配線162は、配線下地膜163にめっきを析出させたものである。配線下地膜は、めっきのシードとして機能するものであり、その形成材料としては前記の導電材料やめっきを析出させる触媒が付与された感光性樹脂材料等を用いることができる。ここでは、触媒としてパラジウム(Pd)の微粒子を含んだ感光性樹脂を用いている。
【0041】
封止基板140の上段面180Bには、電子部品200が配置されている。液滴吐出ヘッド100は、流路形成基板120と振動板130とからなる第1基板と、封止基板140からなる第2基板とを含んだ基体100Aに電子部品200が実装された実装構造体を有しており、この実装構造体は本発明を適用したものとなっている。
【0042】
詳しくは、電子部品200は、側面220が上段面180B側に接続されており、側面220は、能動面210の裏面よりも面積が小さくなっている。配線下地膜163の形成部において、側面220は接着剤250及び配線下地膜163を介して上段面180Bと固着されている。また、配線下地膜163の非形成部において、側面220は接着剤250を介して上段面180Bと固着されている。配線下地膜163と端子230とをシードとし、これらに一括してめっきが析出されている。配線下地膜163に析出されためっきが第2配線162となっており、このめっきがさらに成長させられて端子230側のめっきと接触し実質的に一体となっている。
【0043】
このような場合には、めっき処理の初期段階において配線下地膜163に析出しためっきが第2配線162の一部であるので、端子230と第2配線162との距離は、端子230と配線下地膜163との距離で定義される。また、第2配線162の間隔としては、各第2配線162に対応する配線下地膜163の間隔で定義される。本実施形態では、端子230の間隔及び第2配線162の間隔が、端子230と第2配線162との距離よりも広くなっている。すなわち、配線下地膜163の間隔が、端子230と配線下地膜163との距離よりも広くなっている。
【0044】
また、図3に示すように能動面210において端子230と反対の周縁には、外部接続端子240が設けられている。電子部品200のZ正方向には、外部接続用の配線基板300が配置されており、配線基板300には、外部接続配線310が設けられている。外部接続端子240は、端子230と同様にめっき280を介して外部接続配線310と電気的に接続されている。
【0045】
外部接続配線310は、液滴吐出ヘッド100の外部に設けられた電源や制御装置等と電気的に接続されている。なお、外部接続端子240と外部接続配線310との間のめっき280は、端子230と第2配線162との間のめっき260と同じめっき処理で、一括して析出されたものである。
【0046】
以上のような構成の液滴吐出ヘッド100において、前記制御装置からの電気信号は、配線基板300の外部接続配線310から電子部品200に入力される。この電気信号に基づいて電子部品200は、駆動素子170用の駆動電圧波形の生成やそのスイッチング等を行うようになっている。端子230から所定のタイミングで駆動電圧波形が出力され、これが第2配線162及び第1配線161を介して上電極膜134に伝達される。
【0047】
これにより、圧電体膜133に所定の電圧が印加され、圧電体膜133は印加電圧に応じて収縮する。すると、圧電体膜133のZ負方向における振動板130は、圧電体膜133と一体に圧力発生室122の反対側(Z正方向)へ撓曲する。これにより、圧力発生室122の容積が増大し、増大した容積分の液状体が液溜り124、141から圧力発生室122に流入する。そして、上電極膜134への電圧の印加が停止されると、圧電体膜133及び振動板130はともに元の形状に戻り、圧力発生室122は元の容積に戻る。すると、圧力発生室122内の液状体の圧力が上昇し、ノズル開口111から被処理基板に向けて液状体の液滴が吐出される。このように、液滴吐出ヘッド100は、所定のタイミングで被処理基板に液滴を吐出すること可能になっている。
【0048】
液滴吐出ヘッド100に吐出動作をさせると、電子部品200は駆動電圧波形の生成やそのスイッチング等を行うので発熱する。この熱は、電子部品200の側面220から接着剤250を介して封止基板140側に伝わる。すると、液溜り141、124や圧力発生室122に貯留された液状体が加熱される。加熱された液状体は粘性等の物性が変化するので、吐出される液滴の量(吐出量)が変化し設定値と異なってしまうおそれがある。
【0049】
ところが、第1実施形態の液滴吐出ヘッド100は、電子部品200が本発明の実装構造体をなしているので、以下の理由により吐出量の変化が格段に低減されている。電子部品200は、能動面210の裏面よりも面積が小さい側面220が封止基板140側に接続(固着)されている。したがって、能動面210の裏面が接続されている場合よりも、電子部品200と封止基板140側との接触面積が小さくなり、接触部分を介して封止基板140に伝わる熱量が低減される。よって、液状体の昇温が抑制されるので液状体の物性変化が小さくなり、吐出量がほとんど変化しなくなる。
【0050】
また、能動面210の裏面が接続されている場合よりも、第2配線(配線)162と端子230との距離が、電子部品200のX方向における厚さだけ短くなる。したがって、第2配線162と端子230とを導通させるために必要なめっきの寸法(厚さ)が小さく(薄く)なり、Y方向に並んだ端子230の間や第2配線162の間において、めっきが接触することが防止される。よって、端子230の間や第2配線162の間における短絡が防止される。
【0051】
また、短絡が防止されるので、めっきの厚さのマージンが大きくなる。したがって、短絡を防止するとともに、端子230と第2配線162との距離に比べてめっきを厚くすることが可能になる。これにより、端子230と第2配線162とが確実に導通するようになり、接続信頼性が高められる。
また、短絡が防止されているので、端子230の間隔や第2配線162の間隔のマージンが大きくなる。したがって、短絡を防止するとともに、端子230の間隔や第2配線162の間隔を狭くすることが可能になる。これにより、Y方向における第2配線162の数を増やすことができ、Y方向における駆動素子170の数を増やすことができる。よって、駆動素子170間の距離を短くすることができ、ノズル開口111の間隔(ノズルピッチ)を小さくすることができる。
【0052】
以上のように本実施形態の液滴吐出ヘッド100にあっては、熱による吐出量の変化が防止されているので、所定量の液状体を吐出させることができる。したがって、被処理基板に所定量の液状体を配置させることができる。例えば、液滴吐出ヘッド100を電極膜やカラーフィルタ等の機能膜の形成に用いれば、機能膜を所定の寸法に形成することができ、これを良好に機能させることができる。また、ノズル開口111の狭ピッチ化が図られるので、微細なパターンで液状体を配置することもできる。これにより、微細な膜パターンを形成することができる。
このように、本実施形態の液滴吐出ヘッド100は、良好なデバイスの製造や高品質な画像の印刷等に用いることが可能な良好なものとなっている。
【0053】
なお、前記第1実施形態では、上段面180Bにおいて配線下地膜163が電子部品200の配置部分よりも外側まで形成されていたが、電子部品200の配置部分よりも内側(溝部180側)まで形成されていてもよい。また、電子部品が上段面180Cにおける溝部180側の周縁に配置されており、第2配線が上段面180Bに形成されていない構成としてもよい。この場合には、段差側面180Cに形成された第2配線と端子とがめっきにより導通していればよい。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の液滴吐出ヘッドを説明する。本実施形態が前記第1実施形態と異なる点は、電子部品の能動面が、基体において前記電子部品と接続される面に対して90°より小さな角度をなす傾斜面となっている点である。
【0055】
図4は、第2実施形態の液滴吐出ヘッド100を示す断面構成図であり、図3に示した断面構成図と対応する部分を示している。図4に示すように、本実施形態の電子部品200は、能動面210と側面220とに共有される一辺が配線下地膜163に当接しているとともに、能動面210の裏面と側面220とに共有される一辺が配線下地膜163と離間している。側面220と上段面180Bとの間には接着剤250が設けられている。接着剤250のY方向と直交する断面形状は、略三角形となっている。このように電子基板200は、側面220が上段面180B側と接着剤250を介して接続(固着)されている。
【0056】
本実施形態の液滴吐出ヘッド100にあっては、能動面210が上段面180Bとなす角度が90°よりも小さいので、この角度が90°以上の場合(例えば、第1実施形態)よりも端子230と配線下地膜163との距離が小さくなる。したがって、端子230と第2配線162とを導通させるために必要なめっき260の寸法が小さくなる。したがって、Y方向に並ぶ端子230の間や第2配線162の間において、めっきが接触しにくくなるので、めっきを介した短絡を防止することができる。よって、接続信頼性の向上や端子等の狭ピッチ化が図られ、良好な液滴吐出ヘッド100となる。
また、本実施形態のように、X方向に2つのグループが配置された液滴吐出ヘッド100の場合には、2つの電子部品200の配線基板300側の間隔が狭くなるので、配線基板300を小型化することができる。
【0057】
なお、本実施形態では2つの電子部品200においてX方向に並ぶ2つの外部接続端子240が共通の外部接続配線310に接続されているが、2つの電子部品200で独立した外部接続配線に接続されていてもよい。
【0058】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の液滴吐出ヘッドを説明する。本実施形態が前記第1、第2実施形態と異なる点は、電子部品200が、下段面180A側に配置されている点である。
【0059】
図5は、第3実施形態の液滴吐出ヘッドを示す断面構成図であり、図3に示した断面構成図と対応する部分を示している。図5に示すように、2つの電子部品200は、能動面210の裏面側で貼り合わされて一体となっており、側面220が接着剤250を介して絶縁膜135に固着(接続)されている。2つの電子部品200を一体化すれば、実装プロセスの簡略化が図られる。端子230は、端子230及び第1配線161に析出させためっき260を介して、第1配線161と導通するようになっている。
【0060】
本実施形態の液滴吐出ヘッド100にあっては、上段面180Bや段差側面180Cに第2配線162が不要とされ、配線160が簡略化されている。したがって、配線160の形成プロセスが簡略化され、低コストの液滴吐出ヘッド100となっている。
【0061】
なお、2つの電子部品200を貼り合せることなく独立して配置してもよい。この場合には、電子部品200における露出面積が大きくなるので、電子部品200の放熱性が改善される。また、電子部品200を絶縁膜135と固着させるのではなく、流路形成基板120、弾性膜131及び下電極膜132のいずれかと固着させるようにしてもよい。
【0062】
[製造方法]
次に、前記第1実施形態の液滴吐出ヘッド100の製造方法、並びにその実装構造体の製造方法を説明する。
【0063】
図6(a)〜(c)、図7(a)〜(c)は、液手吐出ヘッド100の製造方法を示す工程図である。図6(a)〜(c)には、図3に示した要部断面図を示しており、図7(a)〜(c)には能動面210の要部平面図を示している。
【0064】
まず、図6(a)に示すように封止基板140の中間体140Aを形成する。具体的には、面方位が(100)のシリコン単結晶基板を用意し、その表面を熱酸化する。そして、フォトリソグラフィ法等を用いて上段面180Bとなる部分を覆ってレジストパターンを形成した後、これをマスクとしフッ酸をエッチャントとしてシリコン単結晶基板をエッチングする。これにより、傾斜角が約54°の傾斜面を段差側面180Cとする溝部180を形成する。そして、再度熱酸化すること等により、中間体140Aが得られる。
【0065】
次いで、図6(b)に示すように、上段面180B及び段差側面180Cに配線下地膜163を形成する。配線下地膜の形成材料としては、これにめっき用の金属を析出させ得るものを用いる。具体的には、めっき用の金属よりもイオン化傾向が大きい金属材料や、還元性を有するもの、析出の触媒性を有するものを用いることができる。ここでは、触媒として機能するパラジウム(Pd)の微粒子を含有した感光性のエポキシ系樹脂を用いる。このエポキシ系樹脂を溶媒に溶解させて液状とし、上段面180B及び段差側面180Cに塗布する。そして、この塗布膜にフォトマスク等を用いて選択的に露光し、現像することにより配線下地膜163を形成する。このようにすれば、導電膜をエッチングによりパターニングして形成する場合よりも、レジストパターンを用いたエッチング等のプロセスを省くことができる。これにより、製造工程の簡略化が図られる。
【0066】
なお、配線下地膜163を形成せずに、第2配線を直接形成することもできる。この場合には、導電材料を成膜した後、フォトリソグラフィ法や、静電塗布・電着レジスト等を用いてレジストパターンを形成する。そして、これをマスクとして材料膜をエッチングしパターニングする。この他にも、銀粒子等を含有した液状体を液滴吐出法や印刷法等により選択的に塗布した後、液状体の溶媒を揮発させるようにしてもよい。
【0067】
次いで、中間体140Aの上段面180Bの裏面側に凹部や貫通孔を形成して、これを封止基板140とする。凹部や貫通孔は、駆動素子保持部142や液溜り141等の流路となる部分である。また、これと独立してあるいは一部のプロセスを共通させて、流路形成基板120、振動板130、コンプライアンス基板150、駆動素子170、電子部品200及び配線基板300を形成する。これらは、公知の形成材料や形成方法を用いて形成することができる。ここでは、振動板130及び駆動素子170が下電極膜132を共有しているので、これらを一体に形成する。
【0068】
次いで、図6(c)に示すように、流路形成基板120、振動板130、封止基板140、コンプライアンス基板150、駆動素子170、電子部品200及び配線基板300を組立てる。ここでは、電子部品200の側面220全体に接着剤を塗布しておき、端子230と配線下地膜163とが対応するように、電子部品200と封止基板140とを位置合わせする。なお、端子と230と配線下地膜163とが数〜10μm程度離れていてもよい。そして、側面220を封止基板140に押し当てるとともに接着剤を硬化させ、硬化した接着剤250により電子基板200と封止基板140とを固着させる。電子部品200と配線基板300との組立ても同様にして行う。
【0069】
次いで、組立てられた液滴吐出ヘッド100の中間体に無電解めっき処理を行い、第2配線162を形成するとともに、第1配線161と第2配線162との接続部、第2配線162と端子230との接続部、及び外部接続端子240と外部接続配線310との接続部を一括して形成する。めっき用の金属としては、AuやNi、Cu等が好適である。ここでは、亜硫酸金(I)ナトリウム(Na[Au(SO])を金源とした無電解めっき浴に前記中間体を浸漬して、無電解Auめっき処理を行う。
【0070】
なお、溝部の内側やX方向に並ぶ2つの電子部品200の間で、めっき液が十分に流通しない場合がある。この場合には、Y方向にめっき液を流通させることにより、良好にめっきを析出させることができる。また、Y正方向及びY負方向にめっき液を交互に流通させれば、均一な厚さにめっきを析出させることができる。
【0071】
図7(a)に示すように、電子部品200の能動面210には、端子230がY方向に沿って等間隔で並んでいる。また、封止基板140の上段面180Bには、配線下地膜163が等間隔でならんでいる。端子230の間隔d1、及び配線下地膜163の間隔d2は、端子230と配線下地膜163との距離d3よりも広くなっている。
【0072】
液滴吐出ヘッド100の前記中間体に無電解めっき処理を行うと、図7(b)に示すように、端子230の表面及び配線下地膜163の表面にめっきが選択的に析出する。これにより、配線下地膜163に析出しためっきを第2配線162とすることができる。また、端子230に析出しためっき260aは、第2配線162と端子230を導通させるめっきの一部となる。
【0073】
そして、図7(c)に示すように無電解めっき処理を継続して、めっき260aを成長させるとともに第2配線162を厚膜化する。めっきは、シードとなる端子230及び配線下地膜163の表面に等方的に成長するが、間隔d1及び間隔d2が、距離d3よりも広くなっているので、端子230の間や配線下地膜163の間において異なる端子230に析出しためっき260が互いに接触することが防止される。したがって、めっき260が接触することによる短絡が防止される。このようにして、端子230側から成長しためっきと配線下地膜163側から成長しためっきとが接触して実質的に一体となり、めっき260が得られる。
【0074】
また、図示しないものの、第1配線161と第2配線162との間、及び外部接続端子240と外部接続配線310との間にもめっきが析出しており、めっきを介した電気的な接続が得られる。以上のようにして図3に示した液滴吐出ヘッド100が得られる。
【0075】
このようにめっき処理によれば、多数の端子230及び多数の第2配線162に対して、各端子230と第2配線162との間にめっき260を一括して形成することができる。したがって、多数の端子・配線間を個々にハンダ等で接続する方法よりも、プロセスの効率化が図られる。
【0076】
また、配線下地膜163にめっきを析出させてこれを第2配線162とすれば、端子230と配線とを導通させるためのめっき処理と同じプロセスで第2配線162を形成することができる。これにより、めっき処理と独立して第2配線を形成するよりもプロセスの効率化が図られる。また、めっき処理により第2配線162を形成すれば、スパッタリング法による成膜を減らすことができる。めっき処理はスパッタリング法よりも低温プロセスであるので、成膜時の熱により封止基板140等にひずみを生じることが防止される。
【0077】
また、端子230及び第2配線162にめっきが選択的に析出されるので、ハンダ等を選択的に配置する手法に比べて位置ずれ等に起因する接続不良が低減され、接続信頼性を高めることができる。また、端子230と第2配線162との間、あるいは第1配線161と第2配線162との間の隙間をめっきで埋めることができので、位置合わせのマージンが大きくなる。これにより、位置合わせの簡略化や接続信頼性の向上等が図られる。
【0078】
なお、前記第3実施形態の液滴吐出ヘッド100を製造する場合には、例えば封止基板140の母材として面方位が(110)のシリコン単結晶基板を用いる。これを前記のようにレジストパターンをマスクとしフッ酸でエッチングすると、下段面180Aに対して約90°の角度をなす段差側面180Cが得られる。そして、配線下地膜163を形成せずに組立てを行った後、めっき処理を行うことにより液滴吐出ヘッド100が得られる。この場合には、配線下地膜163を形成するプロセスを省くことができるので、効率よく液滴吐出ヘッドを製造することができる。
【0079】
[変形例]
なお、前記第1〜3実施形態ではパッド状の端子を有する略直方体状の電子部品を例示したが、この他の構造の電子部品を採用することも可能である。以下、電子部品の変形例を説明する。
【0080】
図8(a)〜(d)は、変形例1〜4の電子部品を示す概略斜視図であり、図9(a)〜(d)は、変形例5〜8の電子部品を示す要部断面図である。
図8(a)に示す変形例1の電子部品200が前記第1〜3実施形態と異なる点は、端子230の間に絶縁性の隔壁290が設けられている点である。このようにすれば、等方成長しためっきが端子230の間において接触することがなくなるので、めっきの接触による短絡が防止される。したがって、短絡を防止しつつ端子230の間隔を狭くすることができ、ノズル開口111の狭ピッチ化が図られる。これにより、微細な膜パターンを形成可能な液滴吐出ヘッドとなる。また、端子230とこれに接続される配線との間隔に比べて、大きなめっきによりこれらを導通させることができるので、接続信頼性を高めることもできる。これにより、高信頼性の液滴吐出ヘッドとなる。
【0081】
図8(b)に示す変形例2の電子部品200には、端子230から端子230が配置された周縁側の外周に向かって引出し配線(接続導電部)235が設けられている。引出し配線235は、導電膜がパターニングされたものであってもよいし、第2配線162と同様に配線下地膜にめっきを析出させたものであってもよい。めっきからなる引出し配線235とする場合には、第2配線162の形成や端子230と配線とを導通させるめっき処理と共通のプロセスで、引出し配線235を形成することができる。変形例2の電子部品200にあっては、配線(例えば第2配線162)と端子230との距離よりも、配線と引出し配線235との距離の方が短くなる。したがって、端子と230と配線を導通させるために必要なめっきを薄くすることができ、狭ピッチ化や接続信頼性の向上が図られる。よって、良好な液滴吐出ヘッドとすることが可能になる。
【0082】
図8(c)に示す変形例3の電子部品200は、能動面210に凹部が設けられており、この凹部の内側に端子230が設けられている。例えば、端子230は、電子部品200の内部配線の一部を凹部内に露出させたものである。このような端子230を有する電子部品200にも本発明は適用可能である。また、図8(d)に示す変形例4の電子部品200は、凹部の内側に端子230が設けられているともに、凹部から端子が配置された周縁側の外周に向かって溝部が設けられており、この溝部の内側に引出し配線235が設けられている。変形例4の電子部品200にあっては、溝部の側壁が前記変形例1の隔壁290と同様に機能し、かつ引出し配線235が設けられているので、端子230と配線を導通させるためのめっきを格段に薄くすることができる。なお、前記溝部は、端子230を能動面210に露出させるプロセスで凹部と一括して形成すればよい。
【0083】
図9(a)に示す変形例5の電子部品200は、側面220が能動面210に対して傾斜面になっている。直方体状の電子部品の場合には電子部品と基体とが線で接するので、傾斜角の精度が損なわれるおそれがある。そのため、電子部品を傾かせて保持する保持手段等として高精度のものが必要となり、組立てプロセスが複雑化する場合がある。変形例5のように側面220が傾斜面となっていれば電子部品と基体とが面で接するため、基体に電子部品を容易に固着することができるとともに所定の傾斜角とすることができる。
【0084】
図9(b)に示す変形例6の電子部品200は、能動面とその裏面との間に2つの面を有している。そのうちの1つが能動面210に対して傾斜した側面220となっており、もう1つが能動面210に直交する面となっている。例えば、直方体状の電子部品において、能動面の周縁を面取りすることにより変形例6の電子部品200が得られる。変形例6の電子部品200も変形例5と同様に、電子部品200を基体に対して傾かせて配置する場合に、良好に配置することができる。また、電子部品200と基体との接面積を小さくすることができ、動作時における熱影響をさらに低減することができる。
【0085】
なお、図9(a)、(b)に示した電子部品200のように、能動面210に対して傾斜した側面220の形成は、電子部品の個片化とともに行うことができる。すなわち、電子部品は、シリコンウエハ等に電子部品の各々を構成する回路等を多数形成した後、これを個片化して形成されている。個片化は、例えば円板状のダイシングカッタ等を回転させ、シリコンウエハの所定位置(電子部品形成部の間)を切削・研磨することで行われている。ダイシングカッタの刃が円板の外周に向かうにつれて尖った形状となっていれば、変形例5の側面220を形成することができる。また、円板の厚さが周縁で均一であり、その中央側で漸次厚くなっていれば、変形例6の側面220を形成することができる。
【0086】
図9(c)に示す変形例7の電子部品200は、変形例6と同じ形状となっているが、能動面210に直交する面を側面220としている。この場合には、第1実施形態と同様に、能動面が基体に対して直交するように電子部品200を配置することができる。また、変形例6と同様に電子部品200と基体100Aとの接面積を小さくすることができ、熱影響を低減することができる。
【0087】
図9(d)に示す変形例8の電子部品200には、能動面210の裏面側に板状の支持部材295が設けられている。これにより、能動面210に直交する方向の力に対して、強度を確保することができる。なお、支持部材295が基体側に設けられている場合にも同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第1実施形態の液滴吐出ヘッドを一方の側からみた概略斜視図である。
【図2】液滴吐出ヘッドを他方の側からみた分解斜視図である。
【図3】液滴吐出ヘッドの断面構成図である。
【図4】第2実施形態の液滴吐出ヘッドの断面構成図である。
【図5】第3実施形態の液滴吐出ヘッドの断面構成図である。
【図6】(a)〜(c)は、液手吐出ヘッドの製造方法を示す工程図である。
【図7】図6(c)に続く工程図である。
【図8】(a)〜(d)は、変形例1〜4の構成をそれぞれ示す概略斜視図である。
【図9】(a)〜(d)は、変形例5〜8の構成をそれぞれ示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0089】
100・・・液滴吐出ヘッド、110・・ノズル基板、111・・・ノズル開口、120・・・流路形成基板(第1基板)、122・・・圧力発生室、130・・・振動板、140・・・封止基板(第2基板)、150・・・コンプライアンス基板、160・・・配線、161・・・第1配線、162・・・第2配線、170・・・駆動素子、180A・・・下段面、180B・・・上段面、180C・・・段差側面、200・・・電子部品、210・・・能動面、220・・・側面、230・・・端子、235・・・引出し配線(接続導電部)、260、260a、280・・・めっき、290・・・隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配線が形成された基体と、能動面及び該能動面の裏面よりも面積が小さい側面を有するとともに前記複数の配線の各々に電気的に接続される端子が前記能動面の周縁に沿って設けられた電子部品と、を備え、
前記電子部品は、前記側面が前記基体に接続され前記基体に実装されており、前記端子と前記配線とが、該端子及び該配線に析出させためっきを介して導通していることを特徴とする実装構造体。
【請求項2】
前記複数の端子の間隔及び前記複数の配線の間隔が、前記端子と前記配線との間の距離よりも広くなっていることを特徴とする請求項1に記載の実装構造体。
【請求項3】
前記複数の端子の間に、前記能動面における前記側面側の外周に向かって延びる絶縁性の隔壁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の実装構造体。
【請求項4】
前記複数の端子の各々が、該端子から前記能動面における前記側面側の外周に向かって延びる接続導電部を有しており、前記接続導電部と前記配線とが、該接続導電部及び該配線に析出させためっきを介して導通していることを特徴とする請求項1又は3に記載の実装構造体。
【請求項5】
前記能動面が、前記基体において前記電子部品と接続される面に対して90°より小さな角度をなす傾斜面となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の実装構造体。
【請求項6】
前記基体は段差を有するとともに前記電子部品が前記段差の上段面に配置されており、前記配線が前記段差の下段面に形成されているとともに前記下段面と前記上段面との間の段差側面、又は前記段差側面と前記上段面とに形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の実装構造体。
【請求項7】
前記段差側面が、前記下段面と90°より大きな角度をなす傾斜面となっていることを特徴とする請求項6に記載の実装構造体。
【請求項8】
液状体を吐出するノズル開口に連通し、前記液状体を貯留する圧力発生室と、
前記圧力発生室の内壁を構成する第1基板と、
前記第1基板に設けられ前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる駆動素子と、
前記第1基板に形成され前記駆動素子に導電接続された配線と、
前記第1基板における前記配線の形成面に配置され前記駆動素子を覆う第2基板と、
前記駆動素子を駆動する電子部品と、を備え、
前記第1基板と前記第2基板とを含んだ基体に前記電子部品が実装されており、該基体と該電子部品とからなる実装構造体が請求項1〜7のいずれか一項に記載の実装構造体となっていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−200307(P2009−200307A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41352(P2008−41352)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】