説明

室温で加硫してエラストマーを得ることができるオルガノポリシロキサン組成物および新規オルガノポリシロキサン重縮合触媒

本発明は、室温で加硫処理して、重縮合によって架橋され、エラストマーになることができ、かつアルキルスズ系触媒を含まない、オルガノポリシロキサン組成物に関し、また新規オルガノポリシロキサン重縮合触媒に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温で加硫して、重縮合によって架橋され、かつ毒性問題を示すアルキルスズ系触媒を含まないエラストマーを得ることができるオルガノポリシロキサン組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、シリコーン化学における新規重縮合触媒、およびオルガノポリシロキサンの重縮合反応用触媒としてのその使用に関する。
【0003】
重縮合によって架橋するエラストマー配合物は、一般的に、シリコーンオイル、一般的にヒドロキシル末端基を有し、場合によりシランで前官能化されてアルコキシ末端を有するポリジメチルシロキサン、架橋剤、重縮合触媒、通常は、スズ塩またはアルキルチタン酸塩、補強剤および他の任意の添加剤、例えば増量剤、接着促進剤、着色剤、殺生剤などを含む。
【0004】
これらの室温で加硫するオルガノポリシロキサン組成物は、周知であり、2つの異なる群、すなわち、単一成分型(単一構成型とも言う)組成物(RTV−1)および二成分型(二構成型とも言う)組成物(RTV−2)に分類される。
【0005】
架橋中、水(RTV−1組成物の場合は、大気中水分により提供されるか、またはRTV−2組成物の場合は、組成物の一部に導入されるかのいずれかである)が重縮合反応を可能にし、その結果、エラストマーネットワークが形成される。
【0006】
一般的に、単一成分型(RTV−1)組成物は、空気からの水分にさらされた場合に架橋する。つまり、閉鎖媒体中では架橋できない。例えば、シーラントまたは低温硬化性接着剤として用いられる単一成分型シリコーン組成物は、アセトキシシラン、ケチミノキシシラン、アルコキシシランなどの種類の反応性官能基の加水分解機構に従い、続いて、形成されるシラノール基と他の残存する反応性官能基との間の縮合反応が起こる。加水分解は、一般的に、大気に暴露された表面から物質中に拡散する水蒸気によって起こる。一般的に、重縮合反応の反応速度は非常に遅く、これらの反応はしたがって好適な触媒によって触媒される。使用される触媒としては、スズ、チタン、アミン系触媒またはこれらの触媒の組成物がしばしば使用される。スズ系触媒(特に、仏国特許出願公開第2557582号を参照)およびチタン系触媒(特に、仏国特許出願公開第2786497号を参照)は、非常に有効な触媒である。
【0007】
二成分型組成物に関して、これらは二成分(二構成体)の形態で販売され、保存され、第1成分はベースポリマー材料を含み、第2成分は触媒を含む。この2つの成分は、使用時に混合され、混合物は比較的硬質なエラストマーの形態で架橋する。これらの二成分型組成物は周知であり、特に、Walter Nollの著書「Chemistry and Technology of Silicones」、1968年、第2版、395頁〜398頁に記載されている。これらの組成物は、本質的に4つの異なる成分:
・反応性α,ω−ジヒドロキシジオルガノポリシロキサンポリマー、
・架橋剤、一般的にはシリケートまたはポリシリケート、
・スズ触媒、および
・水
を含む。
【0008】
通常、縮合触媒は有機スズ化合物に基づく。実際、多くのスズ系触媒が、これらのRTV−2組成物の架橋触媒として提案されている。最も広く使用されている化合物は、アルキルスズカルボキシレート、例えばトリブチルスズモノオレエートまたはジアルキルスズジカルボキシレート、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテートまたはジメチルスズジラウレートである(Nollの著書「Chemistry and Technology of silicones」、337頁、Academic Press、1968年、第2版または欧州特許第147323号もしくは同第235049号を参照)。
【0009】
しかし、アルキルスズ系触媒は、非常に有効であるが、通常、無色の液体であり、シリコーンオイル中に可溶性であり、毒性であるという欠点がある(CMR2は生殖毒性)。
【0010】
チタン系触媒も、RTV−1組成物において広く使用されるが、主な欠点としては、これらはスズ系触媒よりも反応速度が遅い。さらに、これらの触媒は、ゲル化の問題のためにRTV−2組成物において使用できない。
【0011】
他の触媒、例えば亜鉛、ジルコニウムまたはアルミニウム系触媒が時折言及されるが、これらは有効性が凡庸なので、ごくわずかしか産業的開発がなされていない。
【0012】
持続可能な開発のためには、したがって、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の無毒な触媒を開発する必要があるようである。
【0013】
オルガノポリシロキサンの重縮合反応の触媒についての別の重要な態様は、ポットライフ、つまり、組成物が混合後に硬化せずに使用できる時間である。この時間は、使用可能にするために十分長くなければならないが、製造後、遅くとも数分または数時間で取り扱いできる成形品を得るために十分短くなければならない。触媒は、したがって、触媒された混合物のポットライフと、成形品を取り扱うことができるようになるまでの時間(これらの時間は、目的の用途、例えば成形またはシールの製造に依存する)との間でまずまずの妥協を可能にするものでなければならない。加えて、触媒は、触媒された混合物に対して保存時間に応じて変化しない塗布時間を与えるものでなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2557582号
【特許文献2】仏国特許出願公開第2786497号
【特許文献3】欧州特許第147323号
【特許文献4】欧州特許第235049号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Walter Noll,「Chemistry and Technology of Silicones」、1968年、第2版、395頁〜398頁
【非特許文献2】Noll,「Chemistry and Technology of silicones」、337頁、Academic Press、1968年、第2版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の主な目的は、したがって、空気からの水分中で、できるだけ完全な表面架橋とコア架橋との両方を可能にする新規触媒を見いだすことである。
【0017】
本発明の別の主な目的は、単一成分型および二成分型エラストマー組成物の両方の架橋に使用できる触媒を提案することである。
【0018】
本発明の別の主な目的は、2種類の単一成分型および二成分型エラストマー組成物の保存、加工および架橋の制約を継続して同時に満たす触媒系を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的は、特に、本発明によって達成され、本発明は、第1に、一方で、重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、他方で、触媒有効量の、下記式(1)、(2)または(3):
[M(L1r1(L2r2(Y)x](1)
(式中、
r1≧1、r2≧0およびx≧0、
記号Mは:銅、銀、ホウ素、スカンジウム、セリウム、イッテルビウム、ビスマス、モリブデン、ゲルマニウムおよびマンガンによって構成される群から選択される金属を表し、
記号L1は、β−ジカルボニラートアニオンもしくはβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオン、またはβ−ケトエステル由来のアセチルアセタートアニオンであるリガンドを表し、r1≧2の場合、記号L1は同一または異なり、ただし、記号Mがホウ素、銅、またはビスマスを表す場合、記号L1はアセチルアセトネート(acac)ではないという補足条件を備え、
記号L2は、L1とは異なるアニオン性リガンドを表し、r2≧2の場合、記号L2は同一または異なり、
記号Yは中性リガンドを表し、x≧2である場合、記号Yは同一または異なる)、
[Fe(L3r3(L4r4(Y’)x'](2)
(式中:
r3≧1、r4≧0およびx’≧0、
記号L3は、β−ケトエステル化合物のβ−ケトエステラートアニオンまたはエノラートアニオンであるリガンドを表し、r3≧2の場合、記号L3は同一または異なり、
記号L4は、L3とは異なるアニオン性リガンドを表し、r4≧2の場合、記号L4は同一または異なり、そして
記号Y’は中性リガンドを表し、x’≧2の場合、記号Y’は同一または異なる)、および
[Fe(L5r5(L4r4(Y’)x'](3)
(式中:
r5≧1、r4≧0およびx’≧0、
記号L5は、3,5−ヘプタンジオナート、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナートおよび2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートによって構成される群から選択されるβ−ジケトナートアニオンであるリガンを表し、r5≧2の場合、記号L5は同一または異なり、
記号L4は、L5とは異なるアニオン性リガンドを表し、r4≧2の場合、記号L4は同一または異なり、そして
記号Y’は、中性リガンドを表し、x’≧2の場合、記号Y’は同一または異なる)
の金属錯体もしくは塩Aである少なくとも1つの重縮合触媒とを含むことを特徴とする、オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【0020】
「金属錯体または塩A」という定義には、前記金属錯体もしくは塩Aの全てのオリゴマー形態または類似体が含まれると解釈される。
【0021】
本発明者らが、思いがけなく、そして予想外なことに、オルガノポリシロキサンの重縮合反応の優れた触媒を得るためには、その少なくとも1つのリガンドがβ−ジカルボニラートアニオンである特定の金属の金属錯体を使用することが推奨されることを見いだしたことは評価される。
【0022】
本発明者らが、金属のある錯体がオルガノポリシロキサンの重縮合反応において凡庸な活性しか有さないとされていた技術的な不利益を克服したことも評価される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
リガンドの定義は、「Chimie Organometallique」[Organometallic Chemistry],Didier Astruc,2000年発行,EDP Sciences(特に、第1章、「Les complexes monometalliques」[Single metal complexes],31頁以下参照)から得られる。
【0024】
中性リガンドYまたはY’の性質はあまり重要ではなく、当業者は、当該金属に適した任意の種類の中性リガンドを使用する。
【0025】
本発明の触媒は、固体状態であっても、液体状態であってもよい。単独で、または好適な溶媒中で組み入れることができる。溶媒中である場合にシリコーンオイルを添加することができ、溶媒を次いで蒸発させて、触媒をシリコーン媒体中に移す。得られた混合物は触媒ベースとしての働きをする。
【0026】
好適な一実施形態によれば、本発明の重縮合触媒は、下記式(4)、(5)および(6):
[M(L1l1(L2l2](4)
(式中:
1≧1およびl2≧0、
記号Mは:銅、銀、ホウ素、スカンジウム、セリウム、イッテルビウム、ビスマス、モリブデン、ゲルマニウムおよびマンガンによって構成される群から選択される金属を表し、
記号L1は、β−ジカルボニラートアニオンもしくはβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオン、またはβ−ケトエステル由来のアセチルアセタートアニオンであるリガンドを表し、l1≧2の場合、記号L1は同一または異なり、ただし、記号Mがホウ素、銅またはビスマスを表す場合、記号L1はアセチルアセトネート(acac)ではないという補足条件を備え、
記号L2は、L1とは異なるアニオン性リガンドを表し、l2≧2の場合、記号L2は同一または異なる)、
[Fe(L3l3(L4l4](5)
(式中:
3≧1、l4≧0およびl3+l4=3、
記号L3は、β−ケトエステラートアニオンまたはβ−ケトエステル化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表し、l3≧2の場合、記号L3は同一または異なり、
記号L4は、L3とは異なるアニオン性リガンドを表し、l4≧2の場合、記号L4は同一または異なる)、および
[Fe(L5l5(L4l4](6)
(式中:
5≧1、l4≧0およびl4+l5=3、
記号L5は、3,5−ヘプタンジオナート、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナートおよび2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートによって構成される群から選択されるβ−ジケトナートアニオンであるリガンドを表し、l5≧2の場合、記号L5は同一または異なり、そして
記号L4は、L5とは異なるアニオン性リガンドを表し、l4≧2の場合、記号L4は同一または異なる)
から選択される金属錯体もしくは塩Aである。
【0027】
別の好適な実施形態によれば、本発明の重縮合触媒は、触媒有効量の、下記式(1’)、(2’)もしくは(3’):
[M(L1r1(L2r2(Y)x](1’)
(式中:
r1≧1、r2≧0およびx≧0、
記号Mは:セリウム、モリブデン、マンガンおよびビスマスによって構成される群から選択される金属を表し、
記号L1は、β−ジカルボニラートアニオンもしくはβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオン、またはβ−ケトエステル由来のアセチルアセタートアニオンであるリガンドを表し、r1≧2の場合、記号L1は同一または異なり、ただし、記号Mがビスマスを表す場合、記号L1はアセチルアセトネート(acac)ではないという補足条件を備え、
記号L2は、L1とは異なるアニオン性リガンドを表し、r2≧2の場合、記号L2は同一または異なり、そして
記号Yは中性リガンドを表し、x≧2の場合、記号Yは同一または異なる)、
[Fe(L3r3(L4r4(Y’)x'](2)
(式中:
r3≧1、r4≧0およびx’≧0、
記号L3は、β−ケトエステラートアニオンまたはβ−ケトエステル化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表し、r3≧2の場合、記号L3は同一または異なり、
記号L4は、L3とは異なるアニオン性リガンドを表し、r4≧2の場合、記号L4は同一または異なり、そして
記号Y’は中性リガンドを表し、x’≧2の場合、記号Y’は同一または異なる)、および
[Fe(L5r5(L4r4(Y’)x'](3)
(式中:
r5≧1、r4≧0およびx’≧0、
記号L5は、3,5−ヘプタンジオナート、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナートおよび2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートによって構成される群から選択されるβ−ジケトナートアニオンであるリガンドを表し、r5≧2の場合、記号L5は同一または異なる)
の金属錯体または塩Aである少なくとも1つの重縮合触媒である。
【0028】
別の実施形態において、本発明の重縮合触媒は、下記式(7)、(8)、(10)および(11)、
(7):[Ce(L1r5(L2r6];(式中、r5≧1およびr6≧0およびr5+r6=3)、
(8):[Mo(L1r7(L2r8];(式中、r7≧1およびr8≧0およびr7+r8=6)、
(10):[Bi(L1r11(L2r12];(式中、r11≧1およびr12≧0およびr11+r12=3)、
(11):[Mn(L1r13(L2r14];(式中、r13≧1およびr14≧0およびr13+r14=3)、
(式中:
記号L1は、β−ジカルボニラートアニオンもしくはβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオン、またはβ−ケトエステル由来のアセチルアセタートアニオンであるリガンドを表し、リガンドL1の数≧2の場合、記号L1は同一または異なり、ただし、記号Mがビスマスを表す場合、記号L1はアセチルアセトネート(acac)ではないという補足条件を備え、そして
記号L2はL1とは異なるアニオン性リガンドを表し、リガンドL2の数≧2の場合、記号L2は同一または異なる)
の金属錯体もしくは塩によって構成される群から選択される金属錯体または塩Aである。
【0029】
本発明を実施するために、本発明の重縮合触媒として、以下の錯体によって構成される群から選択される金属錯体または塩Aを好適に使用する:
(12):[Ce(t−Bu−acac)3](式中、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(13):[Ce(acac)3](式中、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオンまたは2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(14):[Ce(EAA)3](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(15):[Mo(O2)(t−Bu−acac)2](式中、(t−Bu−acac=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(16):[Mo(O2)(Cy−acac)2](式中、Cy−acac=2−アセチルシクロヘキサノナートアニオンまたは2−アセチルシクロヘキサノンのエノラートアニオンである);
(17):[Mo(O2)(acac)2](式中、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオンまたは2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(18):[Mo(O2)(Cp−acac)2](式中、Cp−acac=2−アセチルシクロペンタノナートアニオンまたは2−アセチルシクロペンタノンのエノラートアニオンである);
(19):[Mn(acac)3](式中、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオンまたは2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(20):[Fe(t−Bu−acac)3](式中、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(21):[Fe(EAA)3](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(22):[Fe(iPr−AA)3](式中、iPr−AA=イソプロピルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソプロピルのエノラートアニオンである);
(23):[Fe(iBu−AA)3](式中、iPr−AA=イソブチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソブチルのエノラートアニオンである);
(24):[Fe(tBu−AA)3](式中、tPr−AA=t−ブチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸t−ブチルのエノラートアニオンである);
(25):[Fe(EAA)2(2−エチルヘキサノエート)](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(26):[Fe(EAA)(2−エチルヘキサノエート)2](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(31):[Bi(hfacac)3](式中、hfacac=1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタンジオナートアニオン);
(32):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)2(2,2−ジメチルブチラート)];
(33):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)(2,2−ジメチルブチラート)2];および
(35):[Fe(トリフルオロacac)3]。
【0030】
なお、本発明の本質の少なくとも一部は、重縮合触媒として用いられる金属化合物Aの所定の組み合わせを慎重かつ有利に選択することによる。
【0031】
本発明の好適な一実施形態によれば、β−ジカルボニラートリガンドL1は、次式:
1COCHR2COR3(34)
(式中:
1は、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐C1−C30炭化水素系ラジカルまたは置換もしくは非置換芳香族を表し、
2は、水素または有利には最大4個の炭素原子を有する炭化水素系(一般的にはアルキル)ラジカルを表し、
3は、置換もしくは非置換、直鎖、環状もしくは分岐C1−C30炭化水素系ラジカル、置換もしくは非置換芳香族、または−OR4ラジカルを表し、ここで、R4は、置換もしくは非置換、直鎖、環状もしくは分岐C1−C30炭化水素系ラジカルを表し、ここで、
1およびR2は一緒になって環を形成することができ、そして
2およびR4は一緒になって環を形成することができる。
ただし、記号Mが、ホウ素、銅もしくはビスマスを表す場合、記号L1はアセチルアセトネート(acac)でないという補足条件を備える。
のβ−ジケトン由来のβ−ジケトナートアニオンまたはβ−ケトエステル由来のβ−ケトエステラートアニオンである。
【0032】
本発明の組成物について特に有利である式(34)のβ−ジケトンのうち、次のβ−ジケトンによって構成される群から選択されるものが特に挙げられる:2,4−ペンタンジオン(acac);2,4−ヘキサンジオン;2,4−ヘプタンジオン;3,5−ヘプタンジオン;3−エチル−2,4−ペンタンジオン;5−メチル−2,4−ヘキサンジオン;2,4−オクタンジオン;3,5−オクタンジオン;5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン;6−メチル−2,4−ヘプタンジオン;2,2−ジメチル−3,5−ノナンジオン;2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン;2−アセチルシクロヘキサノン(Cy−acac);2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(t−Bu−acac);1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン(F−acac);ベンゾイルアセトン;ジベンゾイルメタン;3−メチル−2,4−ペンタジオン;3−アセチル−2−ペンタノン;3−アセチル−2−ヘキサノン;3−アセチル−2−ヘプタノン;3−アセチル−5−メチル−2−ヘキサノン;ステアロイルベンゾイルメタン;オクタノイルベンゾイルメタン;4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン;4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタンおよび4,4’−ジ−t−ブチルジベンゾイルメタン。
【0033】
本発明の別の好適な実施形態によれば、β−ジカルボニラートリガンドL1は、以下の化合物由来のアニオンによって構成される群から選択されるβ−ケトエステラートアニオンである:アセチル酢酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、n−デシルおよびn−ドデシルエステル、または仏国特許出願公開第1435882号に記載されているもの。
【0034】
本発明の金属錯体Aの構成要素の性質をもう少し詳細に説明するためには、L2およびL4が、以下のアニオンによって構成される群から選択できるアニオン性リガンドであることを特定することが重要である:フルオロ(F-)、クロロ(Cl-)、トリヨード(1-)(I3-、ジフルオロクロラート(1-)[ClF2-、ヘキサフルオロイオダート(1-)[IF6-、オキソクロラート(1-)(ClO)-、ジオキソクロラート(1-)(ClO2-、トリオキソクロラート(1-)(ClO3-、テトラオキソクロラート(1-)(ClO4-、ヒドロキソ(OH)-、メルカプト(SH)-、セラニド(SeH)-、ヒペルオキソ(O2-、オゾニド(O3-、ヒドロキソ(OH-)、ヒドロジスルフィド(HS2-、メトキソ(CH3O)-、エトキソ(C25O)-、プロポキシド(C37O)-、メチルチオ(CH3S)-、エタンチオラート(C25S)-、2−クロロエタノラート(C24ClO)-、フェノキシド(C65O)-、フェニルチオ(C65S)-、4−ニトロフェノラート[C64(NO2)O]-、ホルマート(HCO2-、アセタート(CH3CO2-、プロピオナート(CH3CH2CO2-、ニトリド(N3-、シアノ(CN)-、シアナート(NCO)-、チオシアナート(NCS)-、セレノシアナート(NCSe)-、アミド(NH2-、ホスフィノ(PH2-、クロロアザニド(ClHN)-、ジクロロアザニド(Cl2N)-、[メタンアミナート(1-)](CH3NH)-、ジアゼニド(HN=N)-、ジアザニド(H2N−NH)-、ジホスフェニド(HP=P)-、ホスホニト(H2PO)-、ホスフィナート(H2PO2-、カルボキシラート、エノラート、アミド類、アルキラートおよびアリーラート。
【0035】
特に好適な一実施形態によれば、L2およびL4は、以下のアニオンによって構成される群から選択されるアニオン性リガンドである:アセテート、オキサレート、プロピオネート、ブチレート、イソブチレート、ジエチルアセテート、ベンゾエート、2−エチルヘキサノエート、ステアレート、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、t−ブトキシド、t−ペントキシド、8−ヒドロキシキノリネート、ナフテネート、トロポロネートおよびオキシドO2-アニオン。
【0036】
本発明の別の対象は、前記のような、オルガノポリシロキサンの重縮合反応触媒としての、本発明の金属錯体もしくは塩Aの使用からなる。
【0037】
本発明の別の対象は、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用触媒としての、次式の金属錯体もしくは塩によって構成される群から選択される化合物の使用からなる:
(12):[Ce(t−Bu−acac)3](式中、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンの2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(13):[Ce(acac)3](式中、acac=2,4−ペンタンジオンの2,4−ペンタンジオナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(14):[Ce(EAA)3](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(15):[Mo(O2)(t−Bu−acac)2](式中、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンの2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(16):[Mo(O2)(Cy−acac)2](式中、Cy−acac=2−アセチルシクロヘキサノンの2−アセチルシクロヘキサノナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(17):[Mo(O2)(acac)2](式中、acac=2,4−ペンタンジオンの2,4−ペンタンジオナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(18):[Mo(O2)(Cp−acac)2](式中、Cp−acac=2−アセチルシクロペンタノンの2−アセチルシクロペンタノナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(19):[Mn(acac)3](式中、acac=2,4−ペンタンジオンの2,4−ペンタンジオナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(20):[Fe(t−Bu−acac)3](式中、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンの2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(21):[Fe(EAA)3](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(22):[Fe(iPr−AA)3](式中、iPr−AA=イソプロピルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソプロピルのエノラートアニオンである);
(23):[Fe(iBu−AA)3](式中、iPr−AA=イソブチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソブチルのエノラートアニオンである);
(24):[Fe(tBu−AA)3](式中、tPr−AA=t−ブチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸t−ブチルのエノラートアニオンである);
(25):[Fe(EAA)2(2−エチルヘキサノエート)](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(26):[Fe(EAA)(2−エチルヘキサノエート)2](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(31):[Bi(hfacac)3](式中、hfacac=1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタンジオナートアニオン);
(32):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)2(2,2−ジメチルブチラート)];
(33):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)(2,2−ジメチルブチラート)2];および
(35):[Fe(トリフルオロacac)3]。
【0038】
その別の態様によれば、次式の新規化合物も本発明の1つの対象である:
(14):[Ce(EAA)3](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(16):[Mo(O2)(Cy−acac)2](式中、Cy−acac=2−アセチルシクロヘキサノンの2−アセチルシクロヘキサノナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(18):[Mo(O2)(Cp−acac)2](式中、Cp−acac=2−アセチルシクロペンタノンの2−アセチルシクロペンタノナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(22):[Fe(iPr−AA)3](式中、iPr−AA=イソプロピルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソプロピルのエノラートアニオンである);
(23):[Fe(iBu−AA)3](式中、iPr−AA=イソブチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソブチルのエノラートアニオンである);
(25):[Fe(EAA)2(2−エチルヘキサノエート)](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(26):[Fe(EAA)(2−エチルヘキサノエート)2](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(32):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)2(2,2−ジメチルブチラート)];および
(33):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)(2,2−ジメチルブチラート)2]。
【0039】
本発明の重縮合触媒(金属錯体または塩A)の量は、単一成分型または二成分型調製物のいずれかにかかわらず、合計重量の0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5%である。
シリコーンベースBの説明:
重縮合反応によって架橋し、硬化する、本発明において使用されるシリコーンベースは周知である。これらのベースは、特に多くの特許で詳細に記載され、市販されている。
【0040】
これらのシリコーンベースは単一成分型ベース、つまり、1つのパッケージ中に包装され、水分の非存在下での保存中安定であり、水分、特に周囲空気によって提供される水分、または使用中にベース内で発生する水によって提供される水分の存在下で硬化し得るベースである。
【0041】
単一成分型ベースとは別に、二成分型ベース、つまり2つのパッケージ中に包装され、本発明の重縮合触媒が組み入れられるとすぐに硬化するベースを用いることができる。これらは、2つの別個の画分中に触媒を組み入れた後に包装し、画分の一方はおそらくは例えば本発明の触媒のみ、または架橋剤との混合物を含む。
【0042】
本発明の組成物を製造するために用いられるシリコーンベースBは:
重縮合によって架橋して、エラストマーになることができる少なくとも1つのポリオルガノシロキサンオイルC、
随意としての少なくとも1つの架橋剤D、
随意としての少なくとも1つの接着促進剤E、および
随意としての少なくとも1つのケイ質有機および/または非ケイ質無機充填剤F
を含むことができる。
【0043】
ポリオルガノシロキサンオイルCは、好ましくは、25℃で50〜5,000,000mPa.sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンポリマーであり、架橋剤Dは、好ましくは1分子あたり、ケイ素原子に結合した2個より多い加水分解可能な基を有する有機ケイ素化合物である。ポリオルガノシロキサンオイルCは、ヒドロキシル官能基を有する前駆体の、架橋性シラン含有加水分解性ラジカルとの縮合によって得られる加水分解可能なラジカルによってその末端で官能化することもできる。
【0044】
架橋剤(D)として、
次の一般式:
1kSi(OR2(4-k)
(式中、記号R2は、同一または異なって、1〜8個の炭素原子を有するアルキルラジカル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたは2−エチルヘキシルラジカル、C3−C6オキシアルキレンラジカルを表し、記号R1は、直鎖もしくは分岐、飽和もしくは不飽和、脂肪族炭化水素系基、飽和もしくは不飽和および/または芳香族、単環式もしくは多環式炭素環式基を表し、kは0、1もしくは2に等しい)のシラン、およびこのシランの部分加水分解生成物を挙げることができる。
【0045】
3−C6アルコキシアルキレンラジカルの例として、以下のラジカルを挙げることができる:
CH3OCH2CH2
CH3OCH2CH(CH3)−
CH3OCH(CH3)CH2
25OCH2CH2CH2
記号R1は:
・C1−C10アルキルラジカル、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチルもしくはデシルラジカル、
・ビニルおよびアリルラジカル、ならびに
・C5−C8シクロアルキルラジカル、例えばフェニル、トリルおよびキシリルラジカル
を包含するC1−C10炭化水素系ラジカルを表す。
【0046】
架橋剤Dは、シリコーン市場で入手可能な製品であり、さらに、その室温硬化組成物における使用は公知であり、特に、仏国特許出願公開第1126411号、同第1179969号、同第1189216号、同第1198749号、同第1248826号、同第1314649号、同第1423477号、同第1432799号および同第2067636号に記載されている。
【0047】
架橋剤Dのうち、アルキルトリアルコキシシラン、アルキルシリケートおよびアルキルポリシリケートが特に好ましく、ここで、有機ラジカルは、1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルである。
【0048】
使用することができる架橋剤Dの他の例としては、以下のシラン:
・プロピルトリメトキシシラン、
・メチルトリメトキシシラン、
・エチルトリメトキシシラン、
・ビニルトリエトキシシラン、
・メチルトリエトキシシラン、
・ビニルトリエトキシシラン、
・プロピルトリエトキシシラン、
・テトラエトキシシラン、
・テトラプロポキシシラン、
・1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、
・1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、および
・テトライソプロポキシシラン、
または:CH3Si(OCH33、C25Si(OC253、C25Si(OCH33
CH2=CHSi(OCH33、CH2=CHSi(OCH2CH2OCH33
65Si(OCH33、[CH3][OCH(CH3)CH2OCH3]Si[OCH32
Si(OCH34、Si(OC254、Si(OCH2CH2CH34、Si(OCH2CH2CH2CH34
Si(OC24OCH34、CH3Si(OC24OCH33、ClCH2Si(OC253を特に挙げることができる。
【0049】
架橋剤Dの他の例としては、エチルポリシリケートまたはn−プロピルポリシリケートを挙げることができる。
【0050】
一般的には、重縮合によって架橋して、エラストマーになることができるポリオルガノシロキサンC100重量部あたり、0.1〜60重量部の架橋剤Dを使用する。
【0051】
したがって、本発明の組成物は、少なくとも1つの接着促進剤E、例えば:
(1)ケイ素原子と結合した、1個以上の加水分解可能な基、および
(2)窒素原子を含むか、または(メタ)アクリレート、エポキシおよびアルケニルラジカルの群から選択されるラジカル、さらに好ましくは以下の化合物:
ビニルトリメトキシシラン(VTMO)、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)、
[H2N(CH23]Si(OCH2CH2CH33
[H2N(CH23]Si(OCH33
[H2N(CH23]Si(OC253
[H2N(CH24]Si(OCH33
[H2NCH2CH(CH3)CH2CH2]SiCH3(OCH32
[H2NCH2]Si(OCH33
[n−C49−HN−CH2]Si(OCH33
[H2N(CH22NH(CH23]Si(OCH33
[H2N(CH22NH(CH23]Si(OCH2CH2OCH33
[CH3NH(CH22NH(CH23]Si(OCH33
[H(NHCH2CH22NH(CH23]Si(OCH33
【化1】

またはこのような基を20%超の含有量で含むポリオルガノシロキサンオリゴマーによって構成される群から選択されるラジカルで置換された1個以上の有機基(単独または混合物として)
の両方を含む有機ケイ素化合物を含み得る。
【0052】
単一成分型および二成分型ベースに関して、非常に細かく粉砕された生成物の無機充填剤Fを使用し、その平均粒子径は、0.1μm未満である。これらの充填剤としては、ヒュームドシリカおよび沈降シリカが挙げられ、これらのBET比表面積は、一般的に、40m2/gを超える。これらの充填剤は、0.1μmを超える平均粒子径を有する、粗く粉砕された生成物の形態であってもよい。このような充填剤の例として、石英粉末、珪藻土シリカ、炭酸カルシウム、焼成粘土、ルチル型酸化チタン、鉄、亜鉛、クロム、ジルコニウムまたは酸化マグネシウム、様々な形態のアルミナ(水和もしくは未水和)、窒化ホウ素、リトポン、メタホウ酸バリウム、硫酸バリウムおよびガラスマイクロビーズを挙げることができ、これらの比表面積は、一般的に30m2/g未満である。
【0053】
これらの充填剤は、様々な有機ケイ素化合物での処理によって表面変性することができる。これらの有機ケイ素化合物は、この目的のために習慣的に用いられているものであり、オルガノクロロシラン、ジオルガノシクロポリシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザンまたはジオルガノシクロポリシラザンであってもよい(仏国特許出願公開第1126884号、同第1136885号および同第1236505号、ならびに英国特許出願公開第1024234号)。処理された充填剤は、ほとんどの場合、それらの重量の3〜30%の有機ケイ素化合物を含む。充填剤は、異なる粒子サイズの様々な種類の充填剤の混合物から構成され得、したがって、例えばこれらは、30〜70%の40m2/gを超えるBET比表面積を有する微粉末シリカおよび70〜30%の30m2/g未満の比表面積を有する粗く粉砕されたシリカから構成され得る。
【0054】
充填剤を導入する目的は、良好な機械的およびレオロジー特性を、本発明の組成物の硬化の結果得られるエラストマーに付与することである。
【0055】
これらの充填剤と組み合わせて、無機および/または有機顔料、ならびにエラストマーの耐熱性(希土類元素の塩および酸化物、例えば酸化セリウムおよび水酸化物)および/または耐火性を改善する薬剤も使用することができる。例えば、国際出願国際公開第98/29488号に記載されている酸化物のカクテルを使用することが可能である。ハロゲン化有機誘導体、有機リン誘導体、白金誘導体、例えばクロロ白金酸(そのアルカノールもしくはエーテルとの反応生成物)、または塩化第1白金−オレフィン錯体の耐火性を改善するための薬剤を挙げることができる。これらの顔料および薬剤は、あわせて、多くとも充填剤の20重量%である。
【0056】
他の慣習的な助剤および添加剤を本発明の組成物中に組み入れることができ、これらは、前記組成物が用いられる用途の一機能として選択される。
【0057】
本発明の組成物を製造するために使用されるシリコーンベースは、
・100部の、重縮合によって架橋して、エラストマーになることができるポリオルガノシロキサンオイルC、
・0〜20部の架橋剤D、
・0〜20部の接着促進剤E、および
・0〜50部の充填剤F
を含むことができる。
【0058】
主な構成成分以外にも、本発明の組成物の物理的特性および/またはこれらの組成物の硬化の結果得られるエラストマーの機械的特性に対して作用させるために、非反応性直鎖ポリオルガノシロキサンポリマー(G)を導入することができる。
【0059】
これらの非反応性直鎖ポリオルガノシロキサンポリマー(G)は周知であり、これらは、本質的にジオルガノシロキシ単位および少なくとも1%のモノオルガノシロキシおよび/またはシロキシ単位から形成される、25℃で少なくとも10mPa.sの粘度を有する、α,ω−ビス(トリオルガノシロキシ)ジオルガノポリシロキサンポリマーを含み、ケイ素原子と結合した有機ラジカルは、メチル、ビニルおよびフェニルラジカルから選択され、これらの有機ラジカルの少なくとも60%はメチルラジカルであり、多くとも10%はビニルラジカルである。これらのポリマーの粘度は、25℃で数千万mPa.sであり、これらはしたがって、流体から粘稠外観を有する油状物および軟質ゴムから硬質ゴムを包含する。これらは、仏国特許出願公開第978058号、同第1025150号、同第1108764号および同第1370884号にさらに具体的に記載される通常の技術にしたがって調製される。25℃で10mPa.s〜1000mPa.sの範囲の粘度を有するα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ジメチルポリシロキサンオイルを好ましく用いることができる。可塑剤としての働きをするこれらのポリマーは、重縮合によって架橋することができるポリオルガノシロキサンオイルC100部あたり、多くとも70部、好ましくは5〜20部の割合で導入することができる。
【0060】
本発明の組成物は、さらに有利には、少なくとも1つのシリコーン樹脂(H)を含むことができる。これらのシリコーン樹脂は、周知であり、市販されている分岐オルガノポリシロキサンポリマーである。これらは、1分子あたり、式R'''3SiO1/2(M単位)、R'''2SiO2/2(D単位)、R'''SiO3/2(T単位)およびSiO4/2(Q単位)のものから選択される少なくとも2つの異なる単位を有する。R'''ラジカルは同一または異なり、直鎖もしくは分岐アルキルラジカルまたはビニル、フェニルもしくは3,3,3−トリフルオロプロピルラジカルから選択される。好ましくは、アルキルラジカルは、1〜6個の炭素原子(両端を含む)を有する。さらに詳細には、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチルおよびn−ヘキシルラジカルのアルキルRラジカルを挙げることができる。これらの樹脂は、好ましくは、ヒドロキシル化され、この場合、5〜500meq/100gのヒドロキシル基重量含有量を有する。
【0061】
樹脂の例として、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂およびMDT樹脂を挙げることができる。
【0062】
本発明の組成物を製造するために、単一成分型組成物の場合、様々な基本的構成要素を無水環境中で、熱を供給するかまたは供給しないで、場合によりこの構成要素に前記アジュバントおよび添加剤を添加して、よく混合できる装置を使用することが必要である。これらの成分全てを装置中に任意の導入順序で添加することができる。したがって、オルガノポリシロキサンオイルCおよび充填剤Fをまず混合し、次いで得られたペーストに架橋剤D、化合物Eおよび本発明の触媒を添加することが可能である。オイルC、架橋剤D、化合物Eおよび充填剤Fを混合し、続いて本発明の触媒を添加することも可能である。これらの操作の間、揮発性物質の除去を促進するために、混合物を50〜180℃の範囲の温度で、大気圧下または減圧下で加熱することができる。
【0063】
そのまま、つまり希釈せずに、または希釈剤中分散液の形態で用いられる本発明の単一成分型組成物は、水の非存在下での保存中、安定であり、水の存在下、低温で硬化して(分散液の場合は溶媒の除去後)、エラストマーを形成する。
【0064】
組成物をそのまま固体基体上に高湿度雰囲気中で堆積させた後、硬化してエラストマーになるプロセスが起こることが観察され、これは堆積した物質の外部から内部まで起こる。膜はまず表面で形成され、次いで架橋が深部へ引き継がれる。膜が完全に形成されると、その結果、表面で不粘着な感触になり、これには数分の時間を必要とし、この期間は、組成物を取り巻く雰囲気の相対湿度の程度および後者の架橋度に依存する。
【0065】
さらに、堆積層の深部硬化は、形成されたエラストマーの離型および取り扱いを可能にするために十分でなければならず、長い時間を必要とする。実際に、この時間は、不粘着な感触の形成について前述した因子だけでなく、堆積層の厚さにも依存し、この厚さは、一般的に、0.5mm〜数センチメートルである。
【0066】
単一成分型組成物は、多数の用途、例えば建築業界における接合、最も多様な材料(金属、プラスチック、天然および合成ゴム、木材、ボード、陶器、れんが、セラミック、ガラス、石材、コンクリート、メーソンリーユニット)の組み立て、導電体の絶縁、電子回路のポッティング、または合成樹脂もしくは発泡体で作られた物品の製造に用いられる型の調製に用いることができる。
【0067】
本発明の二成分型組成物の製造も、好適な装置中で様々な構成要素を混合することによって行う。均一な組成物を得るために、まずポリマーAを充填剤Cと混合するのが好ましく、全混合物を少なくとも30分間、80℃より高い温度で加熱して、充填材を油で完全に湿らせることができる。得られた混合物を、好ましくは80℃より低い温度、例えば室温付近にしたものに、他の構成成分、つまり、架橋剤、触媒、ならびに場合により様々な添加剤およびアジュバントおよびさらには水を添加することができる。
【0068】
本発明の組成物を多数の用途、例えば、建築業界または運送業界における接合および/または接着(例えば、自動車、航空宇宙、鉄道、海洋および航空業界)、最も多様な材料(金属、プラスチック、天然および合成ゴム、木材、ボード、ポリカーボネート、陶器、れんが、セラミック、ガラス、石材、コンクリートならびにメーソンリーユニット)の組み立て、導電体の絶縁、電子回路のポッティング、ならびに合成樹脂または発泡体で作られる物品を製造するための型の調製に用いることができる。
【0069】
したがって、本発明の別の対象は、本発明のオルガノポリシロキサン組成物の前駆体であり、前記定義のようなものであって、重縮合反応によって加硫してシリコーンエラストマーになることができ、前記組成物を形成するために混合することが意図される2つの別個の部分P1およびP2であり、これらの部分のうちの1つが本発明の金属錯体または塩A、および前記定義のようなものをオルガノポリシロキサンの重縮合反応の触媒として、ならびに架橋剤Dを含み、一方、他の部分は前記種を含まず、
・重縮合によって架橋して、エラストマーになることができるポリオルガノシロキサンオイルC100重量部あたり、
・0.001〜10重量部の水
を含むことを特徴とする、二成分系から構成される。
【0070】
本発明の別の対象はまた、水の非存在下での保存中に安定であり、水の存在下で架橋して、エラストマーになり、
・アルコキシ、オキシム、アシルおよび/またはエノキシ型、好ましくはアルコキシ型の官能化末端を有する少なくとも1つの架橋性直鎖ポリオルガノポリシロキサン、
・充填剤、および
・本発明の金属錯体Aであり、前記定義の通りである重縮合反応の触媒
を含むことを特徴とする、単一成分型ポリオルガノシロキサン組成物から構成される。
【0071】
単一成分型ベースは、例えば、参照として引用される欧州特許第141685号、同第147323号、同第102268号、同第21859号、仏国特許第2121289号および同第2121631号で詳細に記載されている。
【0072】
これらの単一成分型ベースに、例えば、有機ケイ素化合物から選択され、一方で、アミノ、ウレイド、イソシアネート、エポキシ、アルケニル、イソシアヌレート、ヒダントイル、グアニジノおよびメルカプトエステルラジカルの群から選択されるラジカルで置換された有機基を有し、他方で加水分解性基、一般的にはケイ素原子と結合したアルコキシ基を同時に有する接着促進剤Eを添加することが可能である。このような接着剤の例は、米国特許第3517001号、同第4115356号、同第4180642号、同第4273698号、同第4356116号ならびに欧州特許第31996号および同第74001号に記載されている。
【0073】
二成分型ベースは、例えば、参照として引用される欧州特許第118325号、同第117772号、同第10478号、同第50358号、同第184966号、米国特許第3801572号および同第3888815号で詳細に記載されている。
【0074】
本発明の別の対象は、本発明に係る前記定義の金属錯体または塩Aの、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用触媒としての使用から構成される。
【0075】
本発明の最後の対象は、本発明に係る前記定義の二成分系、または本発明に係る前記定義の組成物の架橋および硬化によって得られるエラストマーから構成される。
【0076】
本発明の他の利点および特徴は、例示のために記載し、限定するものではない、以下の実施例を読むと明らかになるであろう。
【実施例】
【0077】
例1:触媒合成
【0078】
触媒(14):[Ce(EAA)3](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオン−[Ce(エチルアセトアセタート)3]である)の合成
【0079】
12ミリモルの三塩化セリウム(3g)のエタノール水溶液(20mlのEtOH、10mlの水)に、68ミリモルのアセト酢酸エチル(8.88g)を添加し、次いで10分後、28重量%(4.1g)の濃度のアンモニアの水溶液を得られた無色溶液に添加した。40分激しく撹拌した後、形成された白色固体を濾過し、50℃、3mbarで乾燥後、少量の水酸化セリウムを含有する予期された生成物(3g)を得た。
Ce含有量(計算値)=26.6%、Ce含有量(分析値)(ICP):=34.5%
IR分析(nm):2979、1611、1505、1239、1161、960。
【0080】
触媒(16)および(18)の合成:
【0081】
(16):[Mo(O2)(Cy−acac)2](式中、Cy−acac=2−アセチルシクロヘキサノンの2−アセチルシクロヘキサノナートアニオンまたはエノラートアニオンである)−MoO2(2−アセチルシクロヘキサノナート)2
(18):[Mo(O2)(Cp−acac)2](式中、Cp−acac=2−アセチルシクロペンタノンの2−アセチルシクロペンタノナートアニオンまたはエノラートアニオンである)。
【0082】
5分にわたって、30ミリモルのモリブデン酸ナトリウム水和物(7.26g)の水50ml中溶液(5Nの塩酸でpH1(10ml)に酸性化)に、激しく撹拌しながら、75ミリモルのβ−ジケトン(2−アセチルシクロペンタノン:9.46g、2−アセチルシクロヘキサノン:10.51g)を添加した。溶液は黄色から緑色に変化した。撹拌を5時間、室温で続け、形成された沈殿を濾過し、次いで水で洗浄した。70℃、3mbarで乾燥後、それぞれ、10.51gの緑色固体の形態の(16)(収率=87%)および10.7gの黄色固体の形態の(18)(収率=94%)を得た。
【0083】
【表1】

【0084】
触媒(22)および(23)の合成:
【0085】
(22):[Fe(iPr−AA)3](式中、iPr−AA=イソプロピルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソプロピルのエノラートアニオン[Fe(イソプロピルアセトアセタート)3]である)、および
(23):[Fe(iBu−AA)3](式中、iPr−AA=イソブチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソブチルのエノラートアニオン[Fe(イソブチルアセトアセタート)3]である)。
【0086】
112ミリモルのナトリウムメチレート(6g)の100mlのエタノール中溶液を、蒸留によって20%濃縮し、次いで112.5ミリモルのβ−ケトエステル(16.2gのアセト酢酸イソプロピルまたは17.8gのアセト酢酸イソブチル)を添加し、得られた溶液を80℃で1時間加熱して、透明な黄色からオレンジ色の溶液を得た。37.1ミリモルの無水塩化鉄(6g)の20mlのエタノール中溶液を80℃で30分にわたって添加し、次いで混合物を80℃で3時間加熱し、冷却し、必要ならば濾過し、濃縮乾固し、残留物を100mlのジイソプロピルエーテル中に溶かし、不均一混合物をセライト上で濾過した。蒸発乾固後、極暗赤色油状物を得、これは(22)の場合は中程度に粘稠性であり、(23)の場合は凝固し、それぞれ15.9g(収率88.5%)および15.8g(収率80.6%)であった。
【0087】
【表2】

【0088】
混合触媒(25)および(26)の合成:
【0089】
(25):[Fe(EAA)2(2−エチルヘキサノエート)](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオン[Fe(エチルアセトアセタート)2(2−エチルヘキサノエート)]である)、および
(26):[Fe(EAA)(2−エチルヘキサノエート)2](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオン[Fe(エチルアセトアセタート)(2−エチルヘキサノエート)2]である)。
【0090】
12.5ミリモルの2−エチルヘキサン酸鉄および1または2当量のアセト酢酸エチルのヘプタン(30ml)中溶液を還流温度で16時間加熱した。冷却後、赤橙色有機溶液を10℃の炭酸水素塩水溶液、次いで水で洗浄し、次いで乾燥し、蒸発乾固させた。2つの錯体を比較的ペースト状の固体形態で得た。
【0091】
【表3】

【0092】
触媒(32)および(33)の合成:
【0093】
(32):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)2(2,2−ジメチルブチラート)]、
(33):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)(2,2−ジメチルブチラート)2
【0094】
15ミリモルの2,2−ジメチル酪酸鉄および1または2当量のアセト酢酸エチルのヘプタン(35ml)中溶液を還流温度で16時間加熱した。冷却後、有機溶液を10℃の炭酸水素塩水溶液、次いで水で洗浄し、次いで乾燥し、蒸発乾固させた。比較的ペースト状の固体形態で2つの錯体を得た。
【0095】
【表4】

【0096】
例2:初期試験
【0097】
新規種の触媒活性を示すために、2つの簡単な試験を開発した。
【0098】
2つの試験で、下記の手順を行った。
・官能化または非官能価油、次いで触媒、次いでRTV2組成物の場合、架橋剤、次いで場合により水を、磁気撹拌棒を備えた小さな開口部の円筒形容器中に連続して添加し、撹拌を300rpmに設定した。次のものを測定した:撹拌を停止した時間(約1000cP(もしくはmPa)の粘度に相当する)、次いで油がそれ以上流動しなくなる時間、不粘着スキン形成タイムおよびコア架橋時間。新規触媒の活性をテトラブチルジスタノキサンジラウレートまたはTegokat225(最速のジアルキルスズ型触媒の1つ(Sn当量で1.24ミリモル))と比較した。
【0099】
RTV2試験:
【0100】
試験する種を、短鎖α,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサンオイル(OH含有量に対して1/2当量、粘度100mPa.s、48V100油)と接触させ、次いで架橋剤、エチルシリケートを添加するか(1当量/OH)、または同じ体積の「改良」エチルシリケート、つまりエトキシポリシロキサンの混合物(この場合、>1当量/OH)を添加した。
【0101】
下記実施例で用いられる量は、特に記載しない限り、次のとおりであった:
・0.553ミリモルOH/gを有する4.48gの48V100油(粘度:100cPもしくはmPa)、
・1.24ミリモルの試験される種(1/2当量/OH)、
・0.52gのエチルシリケート(1当量/OH)または同じ体積の「改良」シリケート、例えばエチルシリケート(=0.82g)。
【0102】
RTV1試験:
【0103】
先に使用したのと同じ油をあらかじめビニルトリメトキシシランで官能化し(VTMO)、試験される種を、先と同じ条件下でこの油と接触させ、次いで2当量の水を添加した(2当量/初期OH)。
【0104】
下記実施例で使用する量は、特に記載しない限り、次のとおりであった:
・4.77gのVTMO官能化48V100油、
・1.24ミリモルの試験される種(1/2当量/OH)、
・90μlの水(撹拌=t0の1分後に添加)。
【0105】
RTV1試験の結果を下記表Iに示す:
【表5】

【0106】
エチルシリケート架橋剤RTV2試験の結果を下記表IIに示す。
【0107】
【表6】

【0108】
「改良」シリケート架橋剤RTV2試験の結果を下記表IIIに示す。
【0109】
【表7】

【0110】
例3:RTV1およびRTV2組成物についてのペースト試験
【0111】
次に、ある触媒を、「ペースト」として知られる類似した系でも試験した。
【0112】
RTV1組成物において、使用したペーストは、次のようにして調製した:20000センチポアズの粘度を有し、0.066%のOHを含むα,ω−ジヒドロキシル化油3464g、およびビニルトリメトキシシラン120gの混合物に、撹拌しながら、水酸化リチウムのメタノール中2重量%溶液16gを添加し、次いで、5分後、400gのAE55ヒュームドシリカを添加した。混合物を真空下で揮発分除去し、無水環境中で保存した。
【0113】
各試験に関して、試験した触媒を50gのこのペーストと混合し、次いで触媒可能性を3つの方法で評価した:
・スキン形成タイム(SFT)、2mmフィルム上で表面架橋が観察されるまでの時間、
・48時間での粘着感の存続、
・制御環境下(23℃および50%相対湿度)で、時間(2、3、4、7および14日)の経過にわたる厚さ6mmビーズの硬度(ショアA硬度)。高温安定性も、室温で7日、続いて100℃で7日後のビーズに関して行った硬度測定によって評価した。
【0114】
本発明の様々な触媒を試験した。
【0115】
前記のような比較のために、次のものも試験した:
・スズ系触媒:ジブチルスズジラウレート(DBTDL)、
【0116】
結果を下記表IVに示す:
【表8】

【0117】
NB:ショア硬さを6mmビーズに関して測定した。結果の表中、記号「>」はビーズの上部に関して測定された硬度値に相当し、記号「<」は、上部ほど周囲空気にさらされていないビーズ下部に関して測定された硬度値に相当する。
RTV2組成物において、粘稠性ジヒドロキシル化油(48V14000)および改良シリケート架橋剤(22.5gの油あたり1g)の混合物であって、触媒を添加し、混合したものに対して直接試験を実施した。まず、ポットライフを測定した(混合物の粘度のために使用できなくなるまでの時間)、次いで別の混合物からはじめて、厚さ6mmのスラグを硬度測定のために長時間にわたって鋳造した(前記のように上部および下部について実施した)。
【0118】
比較のために、前記のように、以下のものも試験した:
・スズ系触媒:ジメチルスズジネオデカノエート(UL28)。
【0119】
結果を下記表Vに示す。
【0120】
【表9】

【0121】
NB:ショア硬さを6mmスラグ上で測定した。結果の表で、記号「>」は、スラグの上部で測定された硬度値に相当し、記号「<」は、上部ほど周囲空気にさらされていないスラグ下部で測定された硬度値に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒有効量の下記式(1)、(2)または(3)の金属錯体または塩Aである少なくとも1種の重縮合触媒とを含むことを特徴とする、オルガノポリシロキサン組成物。
[M(L1r1(L2r2(Y)x] (1)
(式中:
r1≧1、r2≧0およびx≧0、
記号Mは、銅、銀、ホウ素、スカンジウム、セリウム、イッテルビウム、ビスマス、モリブデン、ゲルマニウムおよびマンガンによって構成される群から選択される金属を表し、
記号L1は、β−ジカルボニラートアニオンまたはβ−ジカルボニル含有化合物のエノラートアニオン、またはβ−ケトエステル由来のアセチルアセタートアニオンであるリガンドを表し、r1≧2の場合、記号L1は同一または異なり、ただし、記号Mがホウ素、銅またはビスマスを表す場合、記号L1はアセチルアセトネート(acac)ではないものとし、
記号L2は、L1とは異なるアニオン性リガンドを表し、r2≧2である場合、記号L2は同一または異なり、そして
記号Yは中性リガンドを表し、x≧2である場合、記号Yは同一または異なる);
[Fe(L3r3(L4r4(Y’)x'] (2)
(式中:
r3≧1、r4≧0およびx’≧0、
記号L3は、β−ケトエステラートアニオンまたはβ−ケトエステル化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表し、r3≧2の場合、記号L3は同一または異なり、
記号L4は、L3とは異なるアニオン性リガンドを表し、r4≧2の場合、記号L4は同一または異なり、そして
記号Y’は、中性リガンドを表し、x’≧2の場合、記号Y’は同一または異なる);
[Fe(L5r5(L4r4(Y’)x'] (3)
(式中:
r5≧1、r4≧0およびx’≧0、
記号L5は、3,5−ヘプタンジオナート、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナートおよび2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートによって構成される群から選択されるβ−ジケトナートアニオンであるリガンドを表し、r5≧2の場合、記号L5は同一または異なり、
記号L4は、L5とは異なるアニオン性リガンドを表し、r4≧2の場合、記号L4は同一または異なり、そして
記号Y’は、中性リガンドを表し、x’≧2の場合、記号Y’は同一または異なる)。
【請求項2】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒有効量の次式(4)、(5)または(6)の金属錯体Aである少なくとも1種の重縮合触媒とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
[M(L1l1(L2l2] (4)
(式中:
1≧1およびl2≧0、
記号Mは:銅、銀、ホウ素、スカンジウム、セリウム、イッテルビウム、ビスマス、モリブデン、ゲルマニウムおよびマンガンによって構成される群から選択される金属を表し、
記号L1は、β−ジカルボニル含有化合物のβ−ジカルボニラートアニオンもしくはエノラートアニオン、またはβ−ケトエステル由来のアセチルアセタートアニオンであるリガンドを表し、l1≧2の場合、記号L1は同一または異なり、ただし、記号Mがホウ素、銅またはビスマスを表す場合、記号L1はアセチルアセトネート(acac)ではないものとし、
記号L2は、L1とは異なるアニオン性リガンドを表し、l2≧2の場合、記号L2は同一または異なる);
[Fe(L3l3(L4l4] (5)
(式中:
3≧1、l4≧0およびl3+l4=3、
記号L3は、β−ケトエステラートアニオンまたはβ−ケトエステル化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表し、l3≧2の場合、記号L3は同一または異なり、
記号L4は、L3とは異なるアニオン性リガンドを表し、l4≧2の場合、記号L4は同一または異なる);
[Fe(L5l5(L4l4] (6)
(式中:
5≧1、l4≧0およびl4+l5=3、
記号L5は、3,5−ヘプタンジオナート、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナートおよび2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートによって構成される群から選択されるβ−ジケトナートアニオンであるリガンドを表し、l5≧2の場合、記号L5は同一または異なり、そして
記号L4は、L5とは異なるアニオン性リガンドを表し、l4≧2の場合、記号L4は同一または異なる)。
【請求項3】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒有効量の式(1’)、(2’)または(3’)の金属錯体または塩Aである少なくとも1種の重縮合触媒とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
[M(L1r1(L2r2(Y)x] (1’)
(式中:
r1≧1、r2≧0およびx≧0、
記号Mは、セリウム、モリブデン、マンガンおよびビスマスによって構成される群から選択される金属を表し、
記号L1は、β−ジカルボニル含有化合物のβ−ジカルボニラートアニオンもしくはエノラートアニオン、またはβ−ケトエステル由来のアセチルアセタートアニオンであるリガンドを表し、r1≧2の場合、記号L1は同一または異なり、ただし、記号Mがビスマスを表す場合、記号L1はアセチルアセトネート(acac)ではないものとし、
記号L2は、L1とは異なるアニオン性リガンドを表し、r2≧2の場合、記号L2は同一または異なり、そして
記号Yは、中性リガンドを表し、x≧2の場合、記号Yは同一または異なる);
[Fe(L3r3(L4r4(Y’)x'] (2)
(式中:
r3≧1、r4≧0およびx’≧0、
記号L3は、β−ケトエステラートアニオンまたはβ−ケトエステル化合物のエノラートアニオンであるリガンドを表し、r3≧2の場合、記号L3は同一または異なり、
記号L4は、L3とは異なるアニオン性リガンドを表し、r4≧2の場合、記号L4は同一または異なり、そして
記号Y’は、中性リガンドを表し、x’≧2の場合、記号Y’は同一または異なる);
[Fe(L5r5(L4r4(Y’)x'] (3)
(式中:
r5≧1、r4≧0およびx’≧0、
記号L5は、3,5−ヘプタンジオナート、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオナートおよび2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートによって構成される群から選択されるβ−ジケトナートアニオンであるリガンドを表し、r5≧2の場合、記号L5は同一または異なり、
記号L4は、L5とは異なるアニオン性リガンドを表し、r4≧2の場合、記号L4は同一または異なり、そして
記号Y’は、中性リガンドを表し、x’≧2の場合、記号Y’は同一または異なる)。
【請求項4】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒有効量の下記式(7)、(8)、(10)および(11)の金属錯体または塩によって構成される群から選択される金属錯体または塩Aである少なくとも1種の重縮合触媒とを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
(7):[Ce(L1r5(L2r6];(式中、r5≧1およびr6≧0およびr5+r6=3);
(8):[Mo(L1r7(L2r8];(式中、r7≧1およびr8≧0およびr7+r8=6);
(10):[Bi(L1r11(L2r12];(式中、r11≧1およびr12≧0およびr11+r12=3);
(11):[Mn(L1r13(L2r14];(式中、r13≧1およびr14≧0およびr13+r14=3);
(式中:
記号L1は、β−ジカルボニル含有化合物のβ−ジカルボニラートアニオンもしくはエノラートアニオン、またはβ−ケトエステル由来のアセチルアセタートアニオンであるリガンドを表し、リガンドの数がL1≧2の場合、記号L1は同一または異なり、ただし、記号Mがビスマスを表す場合、記号L1は、アセチルアセトネート(acac)ではないものとし、そして
記号L2は、L1とは異なるアニオン性リガンドを表し、リガンドの数がL2≧2の場合、記号L2は同一または異なる)。
【請求項5】
重縮合反応によって硬化してシリコーンエラストマーになることができるシリコーンベースBと、触媒有効量の、下記錯体によって構成される群から選択される金属錯体または塩Aである少なくとも1つの重縮合触媒とを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のオルガノポリシロキサン組成物。:
(12):[Ce(t−Bu−acac)3](式中、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(13):[Ce(acac)3](式中、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオンまたは2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(14):[Ce(EAA)3](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(15):[Mo(O2)(t−Bu−acac)2](式中、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(16):[Mo(O2)(Cy−acac)2](式中、Cy−acac=2−アセチルシクロヘキサノナートアニオンまたは2−アセチルシクロヘキサノンのエノラートアニオンである);
(17):[Mo(O2)(acac)2](式中、acac=2,4−ペンタンジオンの2,4−ペンタンジオナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(18):[Mo(O2)(Cp−acac)2](式中、Cp−acac=2−アセチルシクロペンタノナートアニオンまたは2−アセチルシクロペンタノンのエノラートアニオンである);
(19):[Mn(acac)3](式中、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオンまたは2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(20):[Fe(t−Bu−acac)3](式中、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンの2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたはエノラートアニオンである);
(21):[Fe(EAA)3](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(22):[Fe(iPr−AA)3](式中、iPr−AA=イソプロピルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソプロピルのエノラートアニオンである);
(23):[Fe(iBu−AA)3](式中、iPr−AA=イソブチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソブチルのエノラートアニオンである);
(24):[Fe(tBu−AA)3](式中、tPr−AA=t−ブチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸t−ブチルのエノラートアニオンである);
(25):[Fe(EAA)2(2−エチルヘキサノエート)](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(26):[Fe(EAA)(2−エチルヘキサノエート)2](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(31):[Bi(hfacac)3](式中、hfacac=1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタンジオナートアニオンである);
(32):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)2(2,2−ジメチルブチラート)];
(33):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)(2,2−ジメチルブチラート)2];および(34):[Fe(トリフルオロacac)3]。
【請求項6】
β−ジカルボニラートリガンドL1が、次式のβ−ジケトン由来のβ−ジケトナートアニオンまたは次式のβ−ケトエステル由来のβ−ケトエステラートアニオンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
1COCHR2COR3 (34)
(式中:
1は、置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐C1−C30炭化水素系基または置換もしくは非置換芳香族基を表し、
2は、水素または炭化水素系基、一般的にはアルキル基、有利には最高で4個の炭素原子を有するものであり、
3は、置換もしくは非置換、直鎖、環状もしくは分岐C1−C30炭化水素系基、置換もしくは非置換芳香族基、または−OR4ラジカルを表し、ここで、R4は、置換もしくは非置換、直鎖、環状または分岐C1−C30炭化水素系ラジカルを表し、
1およびR2は一緒になって環を形成することもでき、そして
2およびR4は一緒になって環を形成することもでき、
ただし、記号Mがホウ素、銅またはビスマスを表す場合、記号L1はアセチルアセトネート(acac)でないものとする。)
【請求項7】
式(34)のβ−ジケトンが、以下のβ−ジケトン:2,4−ペンタンジオン(acac);2,4−ヘキサンジオン;2,4−ヘプタンジオン;3,5−ヘプタンジオン;3−エチル−2,4−ペンタンジオン;5−メチル−2,4−ヘキサンジオン;2,4−オクタンジオン;3,5−オクタンジオン;5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン;6−メチル−2,4−ヘプタンジオン;2,2−ジメチル−3,5−ノナンジオン;2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン;2−アセチルシクロヘキサノン(Cy−acac);2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(t−Bu−acac);1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオン(F−acac);ベンゾイルアセトン;ジベンゾイルメタン;3−メチル−2,4−ペンタジオン;3−アセチル−2−ペンタノン;3−アセチル−2−ヘキサノン;3−アセチル−2−ヘプタノン;3−アセチル−5−メチル−2−ヘキサノン;ステアロイルベンゾイルメタン;オクタノイルベンゾイルメタン;4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン;4,4’−ジメトキシジベンゾイルメタンおよび4,4’−ジ−t−ブチルジベンゾイルメタンによって構成される群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項8】
β−ジカルボニラートリガンドL1が、以下の化合物:アセチル酢酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、t−ブチル、イソペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、n−ノニル、n−デシルおよびn−ドデシルエステル由来のアニオンによって構成される群から選択されるβ−ケトエステラートアニオンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項9】
2およびL4が、以下のアニオン:フルオロ(F-)、クロロ(Cl-)、トリヨード(1-)(I3-、ジフルオロクロラート(1-)[ClF2-、ヘキサフルオロイオダート(1-)[IF6-、オキソクロラート(1-)(ClO)-、ジオキソクロラート(1-)(ClO2-、トリオキソクロラート(1-)(ClO3-、テトラオキソクロラート(1-)(ClO4-、ヒドロキソ(OH)-、メルカプト(SH)-、セラニド(SeH)-、ヒペルオキソ(O2-、オゾニド(O3-、ヒドロキソ(OH-)、ヒドロジスルフィド(HS2-、メトキソ(CH3O)-、エトキソ(C25O)-、プロポキシド(C37O)-、メチルチオ(CH3S)-、エタンチオラート(C25S)-、2−クロロエタノラート(C24ClO)-、フェノキシド(C65O)-、フェニルチオ(C65S)-、4−ニトロフェノラート[C64(NO2)O]-、ホルマート(HCO2-、アセタート(CH3CO2-、プロピオナート(CH3CH2CO2-、ニトリド(N3-、シアノ(CN)-、シアナート(NCO)-、チオシアナート(NCS)-、セレノシアナート(NCSe)-、アミド(NH2-、ホスフィノ(PH2-、クロロアザニド(ClHN)-、ジクロロアザニド(Cl2N)-、[メタンアミナート(1-)](CH3NH)-、ジアゼニド(HN=N)-、ジアザニド(H2N−NH)-、ジホスフェニド(HP=P)-、ホスホニト(H2PO)-、ホスフィナート(H2PO2-、カルボキシラート、エノラート、アミド類、アルキラートおよびアリーラートによって構成される群から選択されるアニオン性リガンドであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項10】
2およびL4が、以下のアニオン:アセテート、オキサレート、プロピオネート、ブチレート、イソブチレート、トリメチルアセテート、ジエチルアセテート、ベンゾエート、2−エチルヘキサノエート、ステアレート、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、t−ブトキシド、t−ペントキシド、8−ヒドロキシキノリネート、ナフテネート、トロポロネート、およびオキシドO2-アニオンによって構成される群から選択されるアニオン性リガンドであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の金属錯体もしくは塩Aである触媒有効量の少なくとも1種の重縮合触媒と、次のもの:
・重縮合によって架橋して、エラストマーになることができる少なくとも1つのポリオルガノシロキサンオイルC、
・随意としての少なくとも1種の架橋剤D、
・随意としての少なくとも1種の接着促進剤E、および
・随意としての少なくとも1種のケイ質有機および/または非ケイ質無機充填剤F
を含むシリコーンベースBとを含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のオルガノポリシロキサン組成物の前駆体であり、重縮合反応によって加硫してシリコーンエラストマーになることができる二成分系であって、
前記組成物を形成するために混合されることを目的とする2つの別個の部分P1およびP2であることを特徴とし、
これらの部分のうちの一方がオルガノポリシロキサンの重縮合反応用触媒としての請求項1〜10のいずれか一項に記載の金属錯体もしくは塩Aおよび架橋剤Dを含み、もう一方が前記種を含まずに次のもの:
・重縮合によって架橋してエラストマーにすることができるポリオルガノシロキサンオイルC100重量部あたり、
・0.001〜10重量部の水
を含むことを特徴とする、前記二成分系。
【請求項13】
水分の非存在下での保存中に安定であり、水の存在下で架橋してエラストマーになる単一成分型ポリオルガノシロキサン組成物であって、
・アルコキシ、オキシム、アシルおよび/またはエノキシ型、好ましくはアルコキシ型の官能化末端を有する少なくとも1種の架橋性直鎖ポリオルガノポリシロキサン、
・充填剤、および
・請求項1〜10のいずれか一項に記載の金属錯体もしくは塩Aである重縮合反応の触媒
を含むことを特徴とする、前記単一成分型ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項14】
請求項12に記載の二成分系、または請求項1〜11もしくは13のいずれか一項に記載の組成物の架橋および硬化によって得られるエラストマー。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の金属錯体Aの、オルガノポリシロキサンの重縮合反応用触媒としての使用。
【請求項16】
オルガノポリシロキサンの重縮合反応用の触媒としての、下記の式の化合物の使用。
(12):[Ce(t−Bu−acac)3](式中、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(13):[Ce(acac)3](式中、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオンまたは2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(14):[Ce(EAA)3](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(15):[Mo(O2)(t−Bu−acac)2](式中、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(16):[Mo(O2)(Cy−acac)2](式中、Cy−acac=2−アセチルシクロヘキサノナートアニオンまたは2−アセチルシクロヘキサノンのエノラートアニオンである);
(17):[Mo(O2)(acac)2](式中、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオンまたは2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(18):[Mo(O2)(Cp−acac)2](式中、Cp−acac=2−アセチルシクロペンタノナートアニオンまたは2−アセチルシクロペンタノンのエノラートアニオンである);
(19):[Mn(acac)3](式中、acac=2,4−ペンタンジオナートアニオンまたは2,4−ペンタンジオンのエノラートアニオンである);
(20):[Fe(t−Bu−acac)3](式中、(t−Bu−acac)=2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナートアニオンまたは2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンのエノラートアニオンである);
(21):[Fe(EAA)3](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(22):[Fe(iPr−AA)3](式中、iPr−AA=イソプロピルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソプロピルのエノラートアニオンである);
(23):[Fe(iBu−AA)3](式中、iPr−AA=イソブチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソブチルのエノラートアニオンである);
(24):[Fe(tBu−AA)3](式中、tPr−AA=t−ブチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸t−ブチルのエノラートアニオンである);
(25):[Fe(EAA)2(2−エチルヘキサノエート)](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(26):[Fe(EAA)(2−エチルヘキサノエート)2](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(31):[Bi(hfacac)3](式中、hfacac=1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタンジオナートアニオンである);
(32):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)2(2,2−ジメチルブチラート)];
(33):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)(2,2−ジメチルブチラート)2];および
(35):[Fe(トリフルオロacac)3]。
【請求項17】
次式の化合物:
(14):[Ce(EAA)3](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(16):[Mo(O2)(Cy−acac)2](式中、Cy−acac=2−アセチルシクロヘキサノナートアニオンまたは2−アセチルシクロヘキサノンのエノラートアニオンである);
(18):[Mo(O2)(Cp−acac)2](式中、Cp−acac=2−アセチルシクロペンタノナートアニオンまたは2−アセチルシクロペンタノンのエノラートアニオンである);
(22):[Fe(iPr−AA)3](式中、iPr−AA=イソプロピルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソプロピルのエノラートアニオンである);
(23):[Fe(iBu−AA)3](式中、iPr−AA=イソブチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸イソブチルのエノラートアニオンである);
(25):[Fe(EAA)2(2−エチルヘキサノエート)](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(26):[Fe(EAA)(2−エチルヘキサノエート)2](式中、EAA=エチルアセトアセタートアニオンまたはアセト酢酸エチルのエノラートアニオンである);
(32):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)2(2,2−ジメチルブチラート)];または
(33):[Fe(イソプロピルアセトアセタート)(2,2−ジメチルブチラート)2]。

【公表番号】特表2011−506739(P2011−506739A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538836(P2010−538836)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001769
【国際公開番号】WO2009/106719
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(507421304)ブルースター・シリコーン・フランス・エスアエス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】