説明

室温で架橋可能なイオン伝導性重合体系

リチウムイオン電池、太陽電池、およびエレクトロクロミック装置等の電池のために、イオン伝導性材料として調製され利用される、無水物含有重合体、オキシアルキレンアミンを含む室温で架橋可能な重合体系、およびこれらから生じる重合体電解質が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無水物含有重合体、オキシアルキレンアミンを含む室温で架橋可能な重合体系、およびこれらから生じる重合体電解質を提供する。当該重合体および電解質は、リチウムイオン電池、太陽電池、およびエレクトロクロミック装置等の、電池のためのイオン伝導性材料として有用である。
【背景技術】
【0002】
重合体電解質は、重合体電池、燃料電池、および燃料センサ等の、新技術の発展におけるその可能性のために高い関心を集めている。例えば、リチウムイオン電池は、リチウムの小さい原子量と大きいイオン化エネルギーに起因して高いエネルギー密度を提供し、携帯電話、ラップトップ型コンピュータ、小型カメラなどのような、多くの携帯用電子機器のための電力源として広く用いられるようになっている。電池では、電子絶縁分離手段が2個の電極を分離するために用いられ、電解質が還元部位と酸化部位の間で必要なイオンの通過を促進するために用いられる。重合体電解質から作成された膜は、分離手段および電解質の組み合わせとしての役割を果たすことができ、電池の製造においてより高い効率を提供し、一方で、多くの電解質系で用いられる可燃性の有機溶媒を除去することによって、その安全性について高まる懸念に対処する。
【0003】
Armandらは、ポリ(酸化エチレン)が、過塩素酸リチウム塩を溶解することができ、固体電解質としての役割を果たすことができる錯体を形成することを1978年に発見した。この錯体は、固体状態で比較的良好なイオン伝導性を有する。しかしながら、そのイオン伝導性は、非水電解質溶液のイオン伝導性と比較して不十分であり、当該錯体の陽イオン輸率は極めて低い。
【0004】
その後、酸化ポリプロピレン、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、およびポリエステル等の、直線状酸化ポリエチレン関連の重合体から成る、広範囲の重合体電解質が開発された。一般的に、これらの重合体電解質は、室温で約10−7〜10−6S/cmのイオン伝導性を有する。イオン伝導は、重合体鎖部分の局地的輸送によってイオンを伝導する、ポリエーテル重合体の非結晶部分に主に起因すると考えられている(Armand、Solid State Ionics, Vol. 9/10、745〜754頁、1983年)。PEO等の直線状ポリエーテル重合体はそれに溶解した金属塩によって結晶化する傾向があり、それ故、イオン移動を制限し、実際のイオン伝導性が予測値より遥かに低くなる。
【0005】
重合体電解質が高いイオン伝導性を提供するためには、理想的には、それは良好なイオン伝導体の可動性を有する多くの非結晶領域を有し、高濃度の溶解したイオン伝導性塩の存在下でさえ結晶化すべきでない。電解質のための分岐状PEOを設計し作成する多くの試み(例えば、Atsushi Nishimotoら、Electrochim Acta, Vol. 43, No. 10-11、1,177〜1,184頁、1998年)が報告されているが、その合成法は複雑であり、製造費用は高い。
【0006】
さらに、PEO錯体の陽イオン輸率は、陽イオンのマトリクス重合体の極性基との相互作用が、陰イオンの相互作用と比較して強力なため、極めて低い傾向がある。二次電池では、用いられる電極は陽イオンに対して活性である。可動の陽イオンと陰イオンの両方を有する電解質が用いられる場合、陰イオンの移動は、陽極によって妨害され得、二次電池の電圧または出力の揺らぎを引き起こし得る濃度分極をもたらす。従って、非可動の陰イオンを有するイオン伝導体が望ましい。このような材料はしばしば単一イオン伝導体と呼ばれ、一般的に高い陽イオン輸率を有する。
【0007】
参照することにより全体として本明細書に盛り込まれる米国公開特許出願第2006/0014066 A1号は、イオン伝導性および陽イオン輸率を改善すると主張されている、立体特異性構造を有するイオン伝導性重合体について開示している。当該出願で公開されているシンジオタクチックポリ(スルホン酸スチレン)の固体重合体電解質は、2×10−6S/cmの室温(25℃)伝導性を有し、これは従来の固体伝導性重合体電解質より高い。
【0008】
参照することにより全体として本明細書に盛り込まれる米国特許第6,537,468号は、オキシアルキレンおよび架橋剤で置換または接合して半相互浸透網状組織(IPN)構造を形成し、そこでIPNに密閉された分岐状オキシアルキレン重合体が高いイオン伝導性と所望の粘着性に寄与し、その一方で架橋構造が形状保持を提供するポリビニルアルコール部分を含む重合体を含む、高伝導性を有する重合体電解質について開示している。当該伝導性分岐状ポリビニルアルコールは、架橋網状組織と共有結合しない。粘着性を有する固体重合体電解質は(例えば、100℃で)加熱することによって生成され、架橋を実現した。
【0009】
参照することにより全体として本明細書に盛り込まれる米国特許第6,881,820号は、様々な温度で許容可能なイオン伝導性または陽子伝導性を有する、力学的に弾性の薄膜に仕立てることができる、テトラカルボン酸二無水物の、ポリオキシアルキレンジアミンおよび芳香族多官能性アミンとの縮合重合によって形成される、一連のロッド−コイルブロックポリイミド共重合体について開示している。当該共重合体は、ポリエーテルのコイル部分と共に交互に構成される短硬性ポリイミドのロッド部分から成る。ポリエーテルのコイル接合部分を有する剛性重合体骨格から成る、接合構造または櫛形構造を有する共重合体の調製法は開示されておらず、3つ以上の無水官能基を有するスチレンおよびマレイン酸無水物の共重合体等の、多官能性無水物を有する架橋共重合体の調製法も開示されていない。
【0010】
参照することにより全体として本明細書に盛り込まれる米国特許第6,368,746号は、ポリブタジエン共重合体ゴム等の有機結合剤重合体と共に硫化リチウム(LiS)および硫化ケイ素(SiS)等の、無機固体電解質から成る成形固体電解質について開示している。
【0011】
これらの努力にもかかわらず、重合体の非結晶部分を増加し、伝導性を改善する分岐状または接合されたオキシアルキレン重合体から成る現在の重合体電解質は、依然として所望のイオン伝導性を提供できず、一般的に複雑な合成を伴う。
【発明の概要】
【0012】
代替の単一イオン伝導性重合体、例えば、陽イオン輸率を上昇させ、分極を減少させる固定した陰イオン基を有する重合体を開発する試みは、同様の障害に直面してきた。電解液をその多孔性構造内に被包できる高多孔質膜は、改善された力学的安定性のために利用された。しかしながら、電極との接触不良および漏液の可能性という不利益があり得る。リチウムイオン伝導性無機固体電解質も利用されたが、作成するのに高温が必要となり、有機重合体とともに用いられない限り柔軟ではない。
【0013】
高い伝導性を実現するためには、ポリ(酸化エチレン)(PEO)、PVC、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)PEO等の、可溶な重合体を用いたゲル重合体電解質(GPE)が、重合体Liイオン電池における使用のために開発された。これらGPEは潜在的に、電解液の桁に近いイオン伝導性を有する(10−4S/cm超過である可能性がある)。
【0014】
これらゲル重合体電解質の多くは一般的に、乏しい力学特性を伴う高い伝導性か、または、低い伝導性を伴う良好な力学特性の何れかを有する。PEO系電解質は、そのイオン伝導に悪影響を与える高度の結晶性を有する。PAN系電解質は長期間の貯蔵において溶媒の滲出を被り、溶媒が重合体膜の表面に漏れ、イオン伝導性を劇的に減少させる。PMMA系電解質は高いイオン伝導性を有するが、安定な寸法と良好な物理的特性を有する重合体膜を形成するのは困難である。
【0015】
高い誘電率(ε=0.84)と強力な電子吸引官能基を有するPVDFは非溶性であるが、炭酸塩溶媒中では膨潤性であり、それ故、GPEのための重合体マトリクスとして用いられる場合、良好な力学的強度を有する支持構造相を提供できる。
【0016】
固体重合体電解質の使用には多くの潜在的な利点があり、例えば、柔軟性、剛性、処理可能性、軟性、硬性、多孔性、粘着性、低い毒性、最小の火災危険、軽量、高いエネルギー密度、より低い製造費用、改善された性能などのような調節可能な物理特性がある。しかしながら、特有の分子構造を有する新たな固体電解質、および/または、室温で一切の溶媒を用いずに良好なイオン伝導性を提供できる新たなイオン輸送機構の必要性が残る。例えば、従来の固体伝導性重合体電解質の室温の伝導性は1×10−6S/cm以下であり、これは多くの用途において不十分である。
【0017】
無水官能基を含む重合体(ポリ無水物)は、モノオキシアルキレンアミン、および/または、ポリオキシアルキレンアミンと環境温度で反応し、接合かつ/または架橋したオキシアルキレンアミド重合体、例えば、オキシアルキレンアミド酸含有の重合体を形成できるということが分かっている。当該ポリ無水物は、単独重合体でも共重合体でもよい。一般的に、骨格内に含まれる無水物部分のそれぞれは同一であり、例えば、マレイン酸無水物であるが、2種類以上の無水物部分が存在し得る。
【0018】
本明細書で用いられる「重合体」は、単独重合体および共重合体を包含する一般的用語である。語句「重合体または共重合体」が用いられる場合、それは、単独重合体または共重合体の何れかが本発明の実施において引き起こされ得るという概念を強化するのに用いられる。しかしながら、一般的には、当該重合体は、無水物共重合体である。
【0019】
接合反応および/または架橋反応は、室温にて低い濃度で行い、ゲルとして、架橋または接合されたアミド酸含有重合体を生成でき、それは、例えば、溶媒の蒸発、および架橋反応または接合反応の完了に続く溶液流延法によって容易に固体膜に転化される。当該接合反応および/または架橋反応は、有機溶媒中に溶解された電解質(有機電解質)の存在下でも行うことができ、良好なイオン伝導性を有するゲルまたは固体の重合体電解質を生成できる。例えば、ポリ無水物およびポリオキシアルキレンアミンの反応は、室温でリチウム塩の存在下で進行し、固体重合体電解質膜を形成する。良好なイオン伝導性を有する、高含有率のオキシアルキレンエーテルを含む透き通ったゴム状の不溶膜が得られる。
【0020】
当該オキシアルキレンアミド重合体は、さらに熱処理し、一部または全部のアミンアミド部分を改善した力学特性のためにイミドに転換することもできる。重合体のオキシアルキレンアミド酸基は、Li塩基で中和し、イオン伝導性の促進および陽イオン輸率の改善のために、固定した陰イオン性カルボン酸塩基、および、オキシアルキレンエーテル部分を有する単一イオン伝導性重合体を形成することもできる。
【0021】
ポリ無水物と、モノオキシアルキレンアミンまたはポリオキシアルキレンアミンとの反応は、室温でリチウム塩基の存在下でも進行する。その添加したリチウム塩基は、生成したアミド酸を中和し、陽イオン輸送の促進のために、重合体中に固定した陰イオン基を提供する。従って、分岐状ポリオキシアルキレンおよび単一イオン伝導性重合体の両方の利点を有する、高含有率の非結晶オキシアルキレンエーテルと固定された陰イオン基とを含む重合体電解質を調製するための方法が提供される。
【0022】
当該接合または架橋された重合体は成形固体膜を容易に形成し、電池、太陽電池、およびエレクトロクロミック装置等の、様々な用途における固体重合体電解質としての使用に適切である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、
【0024】
【化1】

および、
【0025】
【化2】

から選択される1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む、接合または架橋されたイオン伝導性重合体を提供する。
式中、
*は残りの重合体骨格への結合を示し、
Gは、H、C〜C12のアルキル、金属陽イオン、またはアミノ陽イオンであって、
A、A’およびA”は、他とは独立して、C〜C24のアルキレンであり、例えば、C〜C12のアルキレンであって、
x、y、およびzのそれぞれは0〜約125の数であり、好ましくは0〜50の数であり、特に0〜40の数であり、一般的には、x、y、またはzのうち少なくとも1つは1以上であり、具体的には、xは1〜40であり、yおよびzは独立して、0〜40であって、
Eは、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであって、
R’はHまたはC〜C12のアルキルであって、
R”は、H、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルキルカルボニル、C〜C10のアリール、1つ以上のC〜C12アルキルによって置換されたC〜C10のアリール、C〜C12のアラルキル、1つ以上のC〜C12アルキルによって置換されたC〜C12のアラルキル、または下記の基:
【0026】
【化3】

であって、
式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであるか、
あるいは、1つのE’は、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであり、他方は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に架橋を形成するカルボニル結合基であるか、
あるいは、2つのE’基は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に縮合するマレイミド基をともに形成し、このようにして架橋を形成する。
【0027】
アルキルは、特定数の炭素原子の直鎖または分岐鎖であり、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、tert−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシルである。
【0028】
アルキルカルボニルまたはアルカノイルは、結合部位にカルボニルを有する、特定数の炭素原子の直鎖または分岐鎖である。
【0029】
アルキレンは、直線状でも分岐状でもよい、各末端部分で置換された特定数の炭素原子の鎖であり、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ドデシレン、または、1つ以上のC〜C12アルキル基によって置換された上記アルキレン、例えば、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチルメチレン、ジエチルメチレン、プロピルメチレン、ペンチルメチレン、ヘプチルメチレン、ノニルメチレン、ウンデシルメチレン、メチルエチレン、プロピルエチレン、ブチルエチレン、ペンチルエチレン、ヘキシルエチレン、デシルエチレン、1,1−ジメチルエチレン、1,2−ジメチルエチレン、1,1−ジエチルエチレン、1,2−ジエチルエチレン、1−メチル−1−エチルエチレン、1−メチル−2−プロピルエチレン、メチルプロピレン、1,1−ジメチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,1−ジエチルプロピレン、および、1,2−ジエチルプロピレンなどである。
【0030】
例えば、A、A’およびA”によって表されるアルキレン基は、互いに独立して、メチルエチレン等のエチレン置換またはアルキル置換のエチレンである。それ故、本発明の1つの実施形態は、
【0031】
【化4】

および、
【0032】
【化5】

から選択される1つ以上のアミノ酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む、接合または架橋されたイオン伝導性重合体である。
ここで、式中、
各Rは、他と独立して、HまたはC〜C12のアルキルであり、例えば、各Rは、他とは独立して、Hまたはメチルであり、その他の変数は上記の通りである。例えば、x、y、またはzのうち少なくとも1つは1以上である。
【0033】
例えば、Gは、H、C〜C12のアルキル、または、Li、Na、K、Mg、およびCaから選択される金属陽イオンであり、例えば当該金属はLiで、EはHであり、各Rは、他とは独立して、HまたはC〜C12のアルキルであり、例えば、各Rは、他と独立して、Hまたはメチルであり、R’はHまたはメチルであり、R”はHまたは下記の基:
【0034】
【化6】

であって、
式中、各E’はHであるか、あるいは、1つのE’はHであり、他方は上記の通りに架橋を形成するカルボニル結合基であるか、あるいは、2つのE’基はともにマレイミド基を形成し、上記の通りに架橋を形成する。
【0035】
例えば、当該重合体は、
【0036】
【化7】

および、
【0037】
【化8】

から選択されるアミノ酸部分またはマレイミド部分、および/または、
【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

および、
【0040】
【化11】

から選択される架橋したアミノ酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む。
式中、
Gは、H、C〜C12のアルキル、金属陽イオン、またはアミノ陽イオンであり、例えば、GはHまたはLiであって、
各Rは独立して、C〜C12のアルキルであり、例えば、メチルであって、
R’はHまたはC〜C12のアルキルであり、例えば、メチルであって、
R”は、H、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルキルカルボニル、フェニル、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたフェニル、ベンジル、フェネチル、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたベンジルまたはフェネチル、あるいは下記の基:
【0041】
【化12】

であり、式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルである。
【0042】
例えば、当該接合または架橋したイオン伝導性重合体は、
【0043】
【化13】

および、
【0044】
【化14】

から選択される1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む。
式中、
*は重合体の結合位置を示し、
Gは、H、C〜C12のアルキル、または金属陽イオンであり、GはHまたはLiであることが好ましく、
Eは、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであり、EはHであることが好ましく、
R’および各Rは独立して、HまたはC〜C12のアルキルであり、R’およびRはメチルであることが好ましく、
R”は、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニル、あるいは下記の基:
【0045】
【化15】

であり、R”はメチルまたは下記の基:
【0046】
【化16】

であることが好ましく、
式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであるか、
あるいは、1つのE’は、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであり、他方は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に架橋を形成するカルボニル結合基であるか、
あるいは、2つのE’基は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に縮合するマレイミド基をともに形成し、このようにして架橋を形成し、
好ましくは、各E’はHであるか、あるいは、1つのE’はHであり、他方は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に架橋を形成するカルボニル結合基であるか、あるいは、2つのE’基は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に縮合するマレイミド基をともに形成し、このようにして架橋を形成する。
【0047】
例えば、当該接合または架橋したイオン伝導性重合体は、
【0048】
【化17】

から選択される1つ以上のアミド酸部分を重合体骨格内に含む。
式中、
*は重合体の結合位置を示し、
Gは、H、C〜C12のアルキル、または金属陽イオンであり、GはHまたはLiであることが好ましく、
Eは、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであり、EはHであることが好ましく、
R’および各Rは独立して、HまたはC〜C12のアルキルであり、R’およびRはメチルであることが好ましく、
R”は、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニル、あるいは下記の基:
【0049】
【化18】

であり、R”はメチルまたは下記の基:
【0050】
【化19】

であることが好ましく、
式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであるか、
あるいは、1つのE’は、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであり、他方は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iの1つ以上のアミド酸部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に架橋を形成するカルボニル結合基であって、
好ましくは、各E’はHであるか、あるいは、1つのE’はHであり、他方は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iの1つ以上のアミド酸部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に架橋を形成するカルボニル結合基である。
【0051】
例えば、当該接合または架橋したイオン伝導性重合体は、
【0052】
【化20】

から選択される1つ以上のマレイミド部分を重合体骨格内に含む。
式中、
*は重合体の結合位置を示し、
R’および各Rは独立して、HまたはC〜C12のアルキルであり、R’およびRはメチルであることが好ましく、
例えば、yは10〜40であり、xおよびzは独立して、1〜10であって、
R”は、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニル、あるいは下記の基:
【0053】
【化21】

であり、R”は下記の基:
【0054】
【化22】

であることが好ましく、
式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであるか、
あるいは、1つのE’は、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであり、他方は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式IIの1つ以上のマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に架橋を形成するカルボニル結合基であるか、
あるいは、2つのE’基は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に縮合するマレイミド基をともに形成し、このようにして架橋を形成し、
好ましくは、各E’はHであるか、あるいは、1つのE’はHであり、他方は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式IIの1つ以上のマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に架橋を形成するカルボニル結合基であるか、あるいは、2つのE’基は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式IIの1つ以上のマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に縮合するマレイミド基をともに形成し、このようにして架橋を形成する。
【0055】
例えば、当該重合体は、
【0056】
【化23】

【0057】
【化24】

および、
【0058】
【化25】

から選択される架橋したアミノ酸部分またはマレイミド酸部分を骨格内に含む。
式中、
Gは、H、C〜C12のアルキル、金属陽イオン、またはアミノ陽イオンであり、GはHまたはLiであることが好ましく、
R’および各Rは独立して、HまたはC〜C12のアルキルであり、R’およびRはメチルであることが好ましい。
【0059】
例えば、当該重合体は、
【0060】
【化26】

から選択される、架橋されたアミノ酸部分を骨格内に含む。
式中、各定義は上記で定義された通りである。
【0061】
例えば、当該重合体は、
【0062】
【化27】

から選択される、架橋されたマレイミド酸部分を骨格内に含む。
ここで、式中、
R’および各Rは独立して、HまたはC〜C12のアルキルであり、R’およびRはメチルであることが好ましく、
例えば、yは10〜40であり、xおよびzは独立して、1〜10である。
【0063】
本発明の重合体は、その骨格に無水物繰り返し単位を含む重合体、例えば、マレイン酸無水物共重合体(その多くが市販である)を、アルキレンオキシ鎖またはポリアルキレンオキシ鎖で置換された少なくとも1つのアミン、または、アミノ基がアルキレンオキシ鎖またはポリアルキレンオキシ鎖によって結合しているジアミンと反応させることによって都合よく調製される。一般的に、ポリアルキレンオキシアミンまたはジアミンが用いられる。無水物含有重合体の任意数の無水物基は、反応条件および化学量論に応じて反応し得、例えば1〜99%の、例えば10〜99%の、または10〜95%の無水物基がアミンと反応する。
【0064】
本発明はそれ故、接合または架橋したイオン伝導性重合体、および、それによって入手可能な(例えば、調製される)重合体の調製のための方法を提供し、当該方法は、ポリ無水物重合体、例えば、マレイン酸無水物共重合体を、下記の化学式の少なくとも1つのアミンと反応させるステップを含む。
【0065】
【化28】

式中、
A、A’およびA”は、他と独立して、C〜C24のアルキレンであり、例えば、C〜C12のアルキレンであって、
x、y、およびzのそれぞれは0〜約125の数であり、一般的には、x、y、またはzのうち少なくとも1つは1以上であって、
Eは、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであって、
R’はHまたはC〜C12のアルキルであって、
R”は、H、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルキルカルボニル、C〜C10のアリール、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたC〜C10のアリール、C〜C12のアラルキル、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたC〜C12のアラルキル、または下記の基:
【0066】
【化29】

であり、式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであり、一般的に1〜99%の無水物単位がアミンと反応する。
【0067】
例えば、A、A’およびA”によって表されるアルキレン基は、互いに独立して、下記の化学式中のようなメチルエチレン等の、エチレン置換またはアルキル置換のエチレンである。
【0068】
【化30】

式中、各Rは、他と独立して、HまたはC〜C12のアルキルであり、例えば、各Rは、他と独立して、Hまたはメチルであり、その他の変数は上記の通りである。
【0069】
例えば、無水物を含む重合体、例えば、マレイン酸無水物共重合体は、下記の化学式の少なくとも1つのアミンと反応する。
【0070】
【化31】

式中、
各Rは独立して、C〜C12のアルキルであり、例えば、メチルであって、
R’はHまたはC〜C12のアルキルであり、例えばHまたはメチルであり、例えばメチルであって、
R”は、H、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルキルカルボニル、フェニル、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたフェニル、ベンジル、フェネチル、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたベンジルまたはフェネチル、あるいは下記の基:
【0071】
【化32】

であり、R”はメチルまたは下記の基:
【0072】
【化33】

であることが好ましく、式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルキルカルボニルであり、好ましくはHである。
【0073】
本発明において有用なポリオキシアルキレンアミン化合物としては、ポリオール開始剤を酸化プロピレンおよび/または酸化エチレンと反応させるステップと、その後の末端ヒドロキシル基の、例えば、グリセロールトリス[ポリ(プロピレングリコール)、アミン末端]エーテル、トリメチロールプロパン(TMP)トリス[ポリ(プロピレングリコール)、アミン末端]エーテル、および、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールトリス[ポリ(プロピレングリコール)、アミン末端]エーテルのアミノ化によって調製されるものが挙げられる。
【0074】
適切なオキシアルキレンアミン化合物としては、JEFFAMINEという商品名でHUNTSMAN社より市販されている商品、例えば、JEFFAMINE XTJ 502、JEFFAMINE XTJ 505、JEFFAMINE XTJ 509、および、JEFFAMINE D2000が挙げられる。
【0075】
本発明において有用なポリ無水物の重合体および共重合体は、繰り返し単位として環式無水物を含む重合体および共重合体であり、例えば、単量体単位としてマレイン酸無水物を含む共重合体、例えば、スチレン、オレフィン、および、(メタ)アクリル酸のエステルとアミド等の、エチレン性不飽和単量体を有するマレイン酸無水物重合体およびマレイン酸無水物共重合体等であり、当該エチレン性不飽和単量体はスチレンであることが好ましい。
【0076】
適切なポリ無水物の例としては、ポリ(スチレン−alt−マレイン酸無水物)、ポリ(スチレン−co−マレイン酸無水物)、ポリ(メチルビニルエーテル−alt−マレイン酸無水物)、ポリ(エチレン−g−マレイン酸無水物)、ポリ(イソブチレン−alt−マレイン酸無水物)、ポリ(イソプレン−g−マレイン酸無水物)、ポリ(マレイン酸無水物−alt−1−オクタデセン)、ポリ(エチレン−co−アクリル酸エチル−co−マレイン酸無水物)、ポリ(エチレン−graff−マレイン酸無水物)、特にポリ(スチレン−co−マレイン酸無水物)が挙げられる。
【0077】
例えば、当該ポリ無水物は、マレイン酸無水物とスチレンの共重合体(PSMAn)である。PSMAnは、無水物基のアルコールとの反応から生成したエステルに対応するアルキルエステル基を含み得る。好適な部分的にエステル化したPSMAnは、合計の無水物基の50%未満がエステル化されているメチルエステル基を含むものである。
【0078】
ポリ無水物共重合体へのスチレン繰り返し単位の組み込みは、接合または架橋した重合体において、特に高濃度のイオン伝導性塩の存在下で、ポリエーテル部分の非結晶領域の形成を促進する。
【0079】
例えば、本発明の接合または架橋したイオン伝導性重合体は、オキシアルキレンアミン、好ましくは、ポリオキシエチレン(PEO)ジアミン等の多官能性オキシアルキレンアミンと、PSMAnを反応させることによって得られる、ポリ(スチレン−co−PEOマレインアミド酸)である。ポリ(スチレン−co−PEOマレインアミド酸)のリチウム塩は、水酸化リチウムまたはリチウムメトキシド等の、リチウム塩基を用いた中和によって容易に得られ、ポリ(スチレン−co−PEOマレインイミド)への転化は、真空中で加熱することによって達成することができる。当然ながら、これら方法の何れか、またはこれら方法の任意の組み合わせによって最終的に得られる、実際の「スチレン−co−PEOマレインアミド酸」は、塩またはイミドへの部分転化に基づいて、一定量のアミン酸部分、酸塩、および/またはイミドを含み得る。
【0080】
固体重合体電解質膜は、リチウム塩の存在下で接合反応または架橋反応を実施することによって調製できる。ゲル重合体電解質膜も、電解液で予備形成されたポリ(スチレン−co−PEOマレイン酸)重合体を後浸漬することによって調製される。
【0081】
本発明の特定の態様をさらに説明するために、マレイン酸無水物共重合体であるPSMAnの、アミノポリアルキレン酸化物、例えばJEFFAMINEとの反応が下に示され、式中、R、R’、R”、R’”は独立して、C〜C12のアルキル基である。当然ながら、第1生成物の異性体も発生し得る。
【0082】
【化34】

【0083】
単官能性オキシアルキレンアミンとのPSMAnの反応生成物は、一般的に可溶である。固体重合体電解質膜は、オキシアルキレンアミドまたはオキシアルキレンイミド生成物を、適切な溶媒および/または電解液溶液中に溶解し、重合体溶液を基板上に流延することによって調製できる。
【0084】
架橋した重合体は、PSMAnを、オキシアルキレンジアミン、またはオキシアルキレンポリアミンを1分子当たり2つ以上のアミン基と反応させることによって同様に調製される。このような場合では、不溶な膜は、適切な溶媒中で反応を行い、基板上または容器内で反応溶液を流延することによって形成できる。
【0085】
【化35】

さらに:
【0086】
【化36】

【0087】
固体重合体電解質の膜または薄膜は、環境温度および/または上昇温度で溶媒を完全に蒸発させることによって得ることができる。ゲル重合体電解質膜は、乾燥も、部分的に溶媒を蒸発させる部分乾燥もせずに得ることができる。ゲル重合体電解質の溶媒または可塑剤の含有率は、所望量の溶媒を用いて初期反応溶液を調製することによって、あるいは、部分的に溶媒を蒸発させることによって容易に制御できる。揮発性溶媒および不揮発性溶媒(または可塑剤)を含む溶媒混合物は、力学特性とイオン伝導性を調和させる望ましい量の溶媒または可塑剤の含有物を含む、ゲル重合体電解質を調製するために用いることができる。
【0088】
本発明はそれ故、良好な伝導性および力学特性を有する膜の調製のための、単純な合成法および容易な方法を提供する。高いオキシアルキレンエーテルの含有率を有する透き通ったゴム状の不溶膜が得られ、これは製造するのに潜在的に低廉である。当該方法は用途が広く、様々な力学特性および電気特性を有する膜を、アミン/ポリ無水物の架橋系の組成および比率を変更することによって作成できる。
【0089】
本発明で提供される重合体電解質は、高含有率の非結晶オキシアルキレンエーテルと固定した陰イオン基を含み、分岐状ポリオキシアルキレン重合体と単一イオン伝導性重合体の両方の利点を有する。溶媒または可塑剤を有しない本発明の固体重合体電解質膜は、室温で高い伝導性(10−6S/cm超過)を生じ得る。本発明の重合体電解質ゲル膜は、室温で電解液の伝導性(10−4S/cm超過)と同程度の高い伝導性を生じ得る。当該共有架橋した固体電解質膜およびゲル電解質膜は、優れた力学特性および耐溶媒性をも有する。
【0090】
当該固体重合体電解質またはゲル電解質は、よく知られているリチウム塩、アルカリ金属塩などの電解質塩を含み得る。例えば、ビストリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウムなどのような塩を、個別に、または混合して用いることができる。当該固体重合体電解質は、本発明のイオン伝導性重合体の他に、追加の既知のイオン伝導性重合体を含み得る。
【0091】
本発明のイオン伝導性重合体を含む、上記の通りに構成された固体重合体電解質は、例えば電池中の電解質材料として使用できる。当該電池は一次電池または二次電池の何れかに適用され得、その両方とも当該分野では十分に既知である。
【0092】
それ故、本発明の1つの実施形態は、室温の架橋可能な重合体系、および、イオン伝導のために固体重合体電解質として用いることができる、前記重合体系から生じる重合体を提供する。本発明の別の実施形態は、室温で良好な伝導性と高い陽イオン輸率を有する固体重合体電解質を提供する。他の実施形態としては、電極との良好な接触を与える柔軟性固体電解質の薄膜または膜と、リチウムイオン電池のための正極(陽極)および負極(陰極)を作成するための、結合剤として用いることができる架橋可能な重合体系とが挙げられる。
【0093】
別の実施形態は、例えばLiイオン電池中において、優れたイオン伝導性を有するゲル重合体電解質として用いることができる電解液を含む、固体ゲルの形態にある架橋した重合体を提供する。
【0094】
別の実施形態は、安定な寸法と良好な物理的特性を有するゲル重合体電解質としての使用のための、非溶性であるが有機電解液中で膨潤性である膜の形態にある架橋した重合体マトリクスを提供する。
【0095】
別の実施形態は、高含有率のオキシアルキレンエーテルを含む、透き通ったゴム状の不溶膜を作成する、用途が広い方法を提供する。当該膜は室温で形成することができ、室温で従来の固体重合体電解質より高いイオン伝導性を実現できる。
【0096】
マレイン酸無水物共重合体をJEFFAMINE等のアミノポリアルキレン酸化物と反応させるための、本発明の化学的方法が上で詳述されているが、当然ながらその他の重合体およびアルキレンオキシアミンを使用できる。当該イオン伝導性重合体の特性をさらに最適化するために、追加の化合物、例えば、アルコールまたはアミン、すなわち、モノアミン、または、エチレンジアミンまたはジエチレントリアミン等のポリアミンを、当該ポリ無水物と、当該アミノアルキレン酸化物と同一の段階または追加の段階の何れかにおいて反応させることもできる。
【0097】
様々な金属塩および金属を含む塩基は、当該反応において用いることができ、得られた重合体に組み込むことができる。しかしながら、Li塩は、本明細書の他の部分で説明したように、固体重合体電解質膜において利点を提供する。無機金属塩または有機金属塩を用いることができるが、有機金属塩は、上記方法で一般的に用いられる溶媒の溶解度において利点を提供する。
【0098】
無水物含有重合体とオキシアルキレンアミンの反応は、電解質塩またはリチウム塩を有しない溶媒中でも有する溶媒中でも行うことができる。ポリ無水物およびオキシアルキレンアミンを溶解させるための適切な溶媒の例としては、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル、アセトンとメチルエチルケトン等のケトン、アセトニトリルと、プロピオニトリルと、バレロニトリル等のニトリル、N−メチルピロリジノン等のN−アルキルアミド、N−メチルスクシンイミド等のN−アルキルイミド、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチル等の炭酸塩、および、当該溶媒の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。リチウム塩の例としては、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ヘキサフルオロホスホン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、臭化リチウム、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド、ヨウ化リチウム、および、当該リチウム塩の混合物が挙げられる。
【0099】
イオン伝導性重合体電解質の膜または薄膜は、多くの場合、溶液流延法、回転塗布法、または任意の適切な塗布法によって、反応溶液から直接都合よく調製できる。当該得られた膜は、60〜250℃の、好ましくは100〜180℃の上昇温度において熱でさらに処理し、スクシンイミド含有の重合体に転化できる。
【0100】
可溶なオキシアルキレンアミドとポリオキシアルキレンイミドは、単官能性オキシアルキレンアミンを用いて、溶液生成物または固体生成物の形態で調製できる。その後、イオン伝導性重合体電解質の膜および薄膜は、電解液中で当該重合体を溶解させること、溶液流延法、または基板上で当該溶液を被覆することによって調製できる。
【0101】
例えば、マレイン酸無水物重合体の少なくとも1つのアミンとの反応によって得ることができる(例えば、得られた)重合体は、60〜250℃等の、約60〜約250℃の上昇温度において熱で処理される。
【0102】
例えば、当該固体重合体電解質またはゲル電解質は、本明細書で定義されるようなイオン伝導性重合体を含む。
【0103】
例えば、当該固体重合体電解質またはゲル電解質は、重合体骨格に結合した金属カルボン酸塩、または複合電解質塩を含む。
【0104】
例えば、当該固体重合体電解質またはゲル電解質は、重合体骨格に結合したリチウムカルボン酸塩、または複合電解質リチウム塩を含む。
【0105】
本発明の目的の一つは、陽極、陰極、および固体重合体電解質、または本明細書で定義されるゲル電解質を有する電池である。
【0106】
本発明の別の目的は、本明細書で定義される重合体を含む成形膜である。
【0107】
本発明のさらなる目的は、固体重合体電解質、またはゲル電解質、または成形膜における、本明細書で定義される重合体の用途である。
【0108】
下記の実施例は本発明の特定の実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例】
【0109】
原材料
下記の材料を、本発明の架橋した重合体および電解質を調製するのに用いる。
【0110】
表1は、様々な分子量(MW)、メチルエステル含有率、Tg、および、マレイン酸無水物に対するスチレンの比率(St:MAnの比率)を有する、3種の市販のマレイン酸無水物/スチレンの共重合体(PSMAn)を列挙する。
【0111】
【表1】

【0112】
表2は、同様の分子量(2,000)を有するが、様々な官能性を有する市販のJEFFAMINEのポリオキシアルキレンアミンを列挙する。JEFFAMINE XTJ502(C11)およびJEFFAMINE D2000(C12)は、ポリオキシエチレン(PEO)部分とポリオキシプロピレン(PPO)部分をそれぞれ主に含む二官能性アミン架橋剤であり、JEFFAMINE XTJ507(C13)は単官能性アミンPEOである。
【0113】
【表2】

C11は、
【0114】
【化37】

に該当する。
式中、yは最大39であり、x+zは6である。
C12は、
【0115】
【化38】

に該当する。
ここで、式中、yおよびzは両方0であり、xは約32である)。
C13は、
【0116】
【化39】

に該当する。
(式中、yは約6であり、x+zは29である)。
【0117】
当該共重合体およびポリオキシアルキレンアミンのテトラヒドロフラン(THF)溶液は、所望量の共重合体またはポリオキシアルキレンアミンを、適量のTHF中に単に溶解させることにより容易に使用可能である。
【0118】
表3は、PEO/PPO含有の重合体を有する重合体電解質を調製するのに用いられる市販のリチウム塩を列挙する。
【0119】
【表3】

【0120】
伝導性測定
伝導性測定のために、固体重合体電解質膜またはゲル重合体電解質膜を、同一金属(真鍮またはステンレス鋼)の2つの対称性電極の間に挟み込む。SOLARTRON 1252Aの周波数応答解析装置(FRA)を、SOLARTRON 1287Aの電気化学界面(ECI)と組み合わせて用いる交流インピーダンスによって電気伝導性を決定する。0.1〜300kHzの周波数範囲を有し、20mVの交流電圧振幅を有する複合インピーダンススペクトルを得る。複合インピーダンススペクトルの半円弧から、既知の面積および厚さを有する解析した重合体電解質薄膜のイオン伝導性を計算して、バルク抵抗を得る。
【0121】
実施例1
テトラヒドロフラン(THF)中の2.9gのPSMAnの共重合体A7の12重量%溶液と、THF中の7.5gのポリエチレンオキシドジアミンC11の40重量%溶液とを混合し、低粘性の透き通った反応溶液を生成し、その反応溶液の調製の約3分後に、およそ1.5gの反応溶液を2つのガラスペトリ皿とアルミニウム秤量皿のそれぞれに流延することによって、本発明の架橋した重合体を含む固体膜を調製する。その流延した溶液を、室温で硬化し溶媒から蒸発させて除去する。約15分後、その流延した薄膜は手で触れられるくらいまで乾燥し、THFに不溶であった。硬化(外観、力学特性、および溶媒膨潤に更なる変化がないことによって確認される)は、室温で一晩置き、流延皿から剥離されて透き通ったゴム状の乾燥した薄膜を生成して、固体膜を生じた後、完了したとみなされた。
【0122】
流延されない、残りの反応溶液は粘性が増加し、約150分以内(可使時間)に室温でゲル化し始める。架橋したポリオキシエチレンアミドおよびTHF溶媒を含む、透き通った固体ゲルを一晩で得る。
【0123】
固体膜中の架橋したポリオキシエチレンアミド、および本実施例で得たゲルは、90重量%の、イオンの錯体化および伝導のために利用可能な、酸化エチレン(EO)/酸化プロピレン(PO)単位を含む。
【0124】
THFからの溶液流延法によって何れの密着薄膜も全く得られないので、開始材料A7またはC11の何れも薄膜形成重合体ではないことを留意されたい。
【0125】
実施例2
実施例1と類似の手順に従い、様々な量のTHF中のPSMAn共重合体A7の20重量%溶液と、当該表で示されているTHF溶液中のポリエチレンオキシドジアミンC11の40重量%溶液とを混合して透き通った溶液を生成し、約5分後に3つの別々のペトリ皿のそれぞれに流延することによって、異なる組成物の架橋した重合体を含む固体膜を調製する。
【0126】
室温で一晩置いた後にその硬化した乾燥薄膜を得て、その特性をその組成とともに表Ex2にまとめる。
【0127】
異なる試験溶媒、すなわちHO、THF、アセトニトリル(CHCN)、クロロホルム、メタノール(MeOH)、イソプロパノール(IPA)の中に硬化した薄膜の小片を入れることによって、当該重合体の溶解度を試験する。水を抽出した膜と未抽出膜のFTIRスペクトルによって、マレインアミド酸の生成を確認する。
【0128】
【表4】

【0129】
実施例3
実施例2と同一の手順に従い、様々なPSMAn共重合体溶液を、表Ex3で示される様々なポリオキシアルキレンアミン溶液と混合し、およそ20%の固体を含む溶液中において、1:1の比率のアミン対無水物の比率を含む混合物を生成することによって、架橋したEO/PO含有の共重合体膜を調製する。28cmの面積のテフロン(登録商標)ペトリ皿に適量のこの反応溶液を流延することによって、所定の厚さを有する薄い自立薄膜(膜)を得る。
【0130】
適量のリチウムメトキシド(LiOMe)を含めて、アミド酸の所望度の中和(DN)を実現することによって、実施例3F、3G、および3Hにおいて、固定した陰イオン性カルボン酸塩基と可動なLiイオンを有する、架橋した重合体電解質膜を得る。
【0131】
真空炉内にて140℃で実施例3Bの膜を加熱することによって実施例3Cから、および、真空炉内にて140℃で実施例3Fの膜を加熱することによって実施例3Hから、ポリエチレンオキシドイミドの架橋した重合体電解質膜を得る。熱処理後の膜は茶色または黄色に変色し、改善した力学特性を有するようである。
【0132】
これらの実施例で得た全ての架橋した膜は、ほとんどの有機電解液の存在下で不溶であるが膨潤性である。LP30(1:1の炭酸エチレンおよび炭酸ジメチル中における1MのLiPF)での膨潤指数(SI)は、約4(20%の重合体を含むゲル電解質)である。この実施例も、必要な厚さを有する固体重合体電解質膜を、流延溶液の重合体濃度と流延容器の面積を制御することによって調製できるということを示す。
【0133】
【表5】

【0134】
実施例4
実施例1と類似の手順に従い、表Ex4に示されている通り、PSMAnであるA7とA7’の溶液を単官能性EO/POアミンであるC13と反応させることによって、架橋していない重合体の固体膜を調製する。実施例4Aは、低分子量(1,600)のPSMAn(A7)から、50重量%のEO/POエーテル含有率と、0.1のアミン/無水物の比率とを有する膜を生じる。実施例4Bは、高分子量(350,000)の部分的にメチルエステル化したPSMAn(A7’)から、83重量%という高いEO/PO含有率、および高いアミン/無水物比(0.5)を有する膜を生じる。
【0135】
単官能性EO/POアミンであるC13で調製した膜は透明であるが、ジアミンEO/POであるC11とC12で架橋した膜より遥かに乏しい力学特性を有し、比較的高い重合体濃度でさえ約45時間のゲル化時間という、密着薄膜を形成するためにより多くの時間を必要とする。PSMAn(A7)よりも高分子量(350,000)の部分的にメチルエステル化したPSMAn(A7’)から、より良好な力学特性および耐溶媒性を有する薄膜を得る。
【0136】
【表6】

【0137】
実施例5
実施例1と類似の手順に従い、表Ex5に示されている通り、高分子量(50,000)のPSMAnであるA7”の溶液をPOジアミンであるC12(PPODA)と反応させることによって、架橋した重合体の固体膜を調製する。改善した力学特性を有する(より強固かつより粘着性が低い)膜を得た。
【0138】
【表7】

【0139】
実施例6A
実施例1と同様の手順に従い、8.4gのテトラヒドロフラン(THF)中におけるPSMAnであるA7の20重量%溶液と、20.8gのTHF中におけるポリエチレンオキシドジアミンであるC11の40重量%溶液と、0.5gの過塩素酸リチウム(LiClO)(THF中に予め溶解させ、10%の溶液を生じた)を混合し、透き通った反応溶液を生成し、その反応溶液の調製の約2分後に、その反応溶液の一部を複数のガラスペトリ皿に流延することによって、Li塩を含む架橋した重合体電解質膜を調製する。
【0140】
反応容器内の残りの反応溶液は室温で8時間未満以内にゲル化し、このことは、重合体の架橋反応がLi塩の存在下で進行できるということを示す。ペトリ皿中の流延溶液を硬化させ、室温で7日間溶媒を蒸発させて除去し、5重量%のLiClOを含む固体重合体電解質の透明かつゴム状の不溶膜を得る。
【0141】
実施例6Bおよび6C
実施例6Aの手順に従い、異なるLi塩および濃度を用いて、10重量%のトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CFSOLi)を(重合体の総量に基づいて)含む重合体電解質膜である実施例6B、および、10重量%の臭化リチウム(LiBr)を含む重合体電解質膜である実施例6Cを調製する。
【0142】
当該膜の室温(20℃)におけるイオン伝導性を測定し、その結果を表Ex6に示す。
【0143】
【表8】

【0144】
実施例7A
実施例6と同様の手順に従い、メチルエチルケトン(MEK)中における0.5gのLiClOを溶解させ、その後、10.4gのMEK中におけるポリエチレンオキシドジアミンであるC11の40重量%溶液を混合しながら添加し、その後、4.2gのMEK中におけるPSMAn共重合体であるA7の20重量%溶液の添加によって、MEK中における溶液からLi塩を含む架橋した重合体電解質膜を調製する。その反応溶液の一部を混合した5分後にガラスペトリ皿内に流延し、真空下で一晩乾燥させ、溶媒を一切含まない固体重合体電解質膜を得る。
【0145】
実施例7B
実施例7Aの手順に従い、適量のLiBFをLi塩として代用して、10%のLiBF塩を含む固体重合体電解質膜を調製する。
【0146】
実施例7C
0.45gのメタノール中における10%のリチウムメトキシド(LiOCH)溶液をLiBFのMEK溶液に添加し、複数のリチウム塩を有する固体重合体電解質膜を得るということを除いては、実施例7Bの手順を繰り返す。
【0147】
当該膜の室温(20℃)におけるイオン伝導性を測定し、その結果を表Ex7に示す。
【0148】
【表9】

【0149】
実施例8A
ビーカー中で0.83gのMEK中におけるLiClOを溶解し、その後、10.4gのMEK中におけるポリエチレンオキシドジアミンであるC11の40重量%溶液を混合しながら添加し、その後、4.2gのMEK中におけるPSMAn共重合体であるA7の20重量%溶液の添加によって、架橋した重合体の重合体電解質ゲルを調製する。その反応溶液をビーカー中で流延しないがゲル化させ、約3時間後に、約30%の重合体および約5%のLiClO(重合体重量に基づいて16.6%)を含む半固体弾性ゲルを得る。
【0150】
実施例8B
0.83gの代わりに1.5gのLiClOを用い、約65時間以内にゲル化する溶液を得、約20%の重合体および約6%のLiClO(重合体重量に基づいて30%)を含む半固体弾性ゲルを得るということを除いては、実施例8Aの手順を繰り返す。
【0151】
当該膜の室温(20℃)におけるイオン伝導性を測定し、その結果を表Ex8に示す。
【0152】
【表10】

【0153】
比較例
本発明の膜との比較のために、37.4gのアセトニトリル中におけるPEO重合体(分子量:約900,000g/モル)の6.7重量%溶液に、アセトニトリル中に予め溶解させた0.25gのLiClO、アセトニトリル中に予め溶解させた0.5gのLiClO、または、アセトニトリル中に予め溶解させた0.37gのCFSOLiの何れかを添加することによって、様々な量のリチウム塩を含むポリ(酸化エチレン)(PEO)の固体重合体電解質膜を調製する。その得られた溶液を上記の通りにペトリ皿内に流延し、室温で一晩置き、PEOの重量に基づいて10%のLiClO、PEOの重量に基づいて20%のLiClO、および、PEOの重量に基づいて15%のCFSOLiをそれぞれ含む濁った白色の膜を得る。
【0154】
当該膜の室温(20℃)におけるイオン伝導性を測定し、その結果を表C Ex1に示す。
【0155】
【表11】

【0156】
本発明の固体重合体電解質は、実施例6〜8に示されている通り、室温で10−6S/cm超過の伝導性を提供し、これは、従来の固体PEO重合体電解質の伝導性より10倍を超えて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

および、
【化2】

から選択される1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む、接合または架橋したイオン伝導性重合体であり、
式中、
*は残りの重合体骨格への結合を示し、
Gは、H、C〜C12のアルキル、金属陽イオン、またはアミノ陽イオンであって、
A、A’およびA”は、他と独立してC〜C24のアルキレンであり、
x、y、およびzのそれぞれは0〜約125の数であり、
Eは、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであって、
R’はHまたはC〜C12のアルキルであって、
R”は、H、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルキルカルボニル、C〜C10のアリール、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたC〜C10のアリール、C〜C12のアラルキル、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたC〜C12のアラルキル、または下記の基:
【化3】

であって、
式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであるか、
あるいは、1つのE’は、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであり、他方は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に架橋を形成するカルボニル結合基であるか、
あるいは、2つのE’基は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に縮合するマレイミド基をともに形成し、このようにして架橋を形成する、
接合または架橋したイオン伝導性重合体。
【請求項2】
【化4】

および、
【化5】

から選択される1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含み、
式中、
各Rは、他と独立して、HまたはC〜C12のアルキルであり、x、y、またはzのうち少なくとも1つは1以上である、
請求項1に記載の接合または架橋したイオン伝導性重合体。
【請求項3】
Gは、H、C〜C12のアルキル、または、Li、Na、K、Mg、およびCaから選択される金属陽イオンであって、
EはHであって、
各Rは、他と独立して、HまたはC〜C12のアルキルであって、
R’はHまたはメチルであり、R”はHまたは下記の基R’:
【化6】

であり、
式中、各E’はHであるか、あるいは、1つのE’はHであり、他方は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に架橋を形成するカルボニル結合基であるか、あるいは、2つのE’基は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に縮合するマレイミド基をともに形成し、このようにして架橋を形成する、
請求項1に記載の接合または架橋したイオン伝導性重合体。
【請求項4】
【化7】

および、
【化8】

から選択される1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含み、
式中、
*は重合体の結合位置を示し、
Gは、H、C〜C12のアルキル、または金属陽イオンであって、
Eは、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであって、
R’および各Rは独立して、HまたはC〜C12のアルキルであって、
R”は、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニル、あるいは下記の基:
【化9】

であって、
式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであるか、
あるいは、1つのE’は、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであり、他方は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に架橋を形成するカルボニル結合基であるか、
あるいは、2つのE’基は、同一の重合体骨格に、もしくは、化学式Iまたは化学式IIの1つ以上のアミド酸部分またはマレイミド部分を重合体骨格内に含む別の重合体鎖の骨格に縮合するマレイミド基をともに形成し、このようにして架橋を形成する、
請求項2に記載の接合または架橋したイオン伝導性重合体。
【請求項5】
【化10】

【化11】

および、
【化12】

から選択される架橋したアミノ酸部分またはマレイミド酸部分を前記骨格内に含み、
式中、
Gは、H、C〜C12のアルキル、金属陽イオン、またはアミノ陽イオンであって、
R’および各Rは独立して、HまたはC〜C12のアルキルである、
請求項2に記載の重合体。
【請求項6】
下記の化学式、
【化13】

の少なくとも1つのアミンとマレイン酸無水物重合体を反応させることによって得ることができ、
式中、
A、A’およびA”は、他と独立して、C〜C24のアルキレンであって、
x、y、およびzのそれぞれは0〜約125の数であって、
Eは、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであって、
R’はHまたはC〜C12のアルキルであって、
R”は、H、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルキルカルボニル、C〜C10のアリール、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたC〜C10のアリール、C〜C12のアラルキル、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたC〜C12のアラルキル、または下記の基:
【化14】

であり、式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであり、1〜99%の無水物単位がアミンと反応する、
請求項1に記載の重合体。
【請求項7】
下記の化学式、
【化15】

の少なくとも1つのアミンとマレイン酸無水物重合体を反応させることによって得ることができ、
式中、各Rは、他と独立してHまたはC〜C12のアルキルである、
請求項6に記載の重合体。
【請求項8】
下記の化学式、
【化16】

の少なくとも1つのアミンとマレイン酸無水物重合体を反応させることによって得ることができ、
式中、
Rはメチルであって、
R’はHまたはメチルであって、
R”は、H、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルキルカルボニル、フェニル、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたフェニル、ベンジル、フェネチル、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたベンジルまたはフェネチル、あるいは下記の基:
【化17】

であり、
式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルである、
請求項6に記載の重合体。
【請求項9】
前記マレイン酸無水物重合体は、スチレン、オレフィン、および、(メタ)アクリル酸のエステルとアミドから選択されるエチレン性不飽和単量体とのマレイン酸無水物共重合体である、請求項6〜8の何れかに記載の重合体。
【請求項10】
マレイン酸無水物重合体が、下記の化学式:
【化18】

の少なくとも1つのアミンと反応し、
式中、
A、A’およびA”は、他と独立して、C〜C24のアルキレンであって、
x、y、およびzのそれぞれは0〜約125の数であって、
Eは、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルであって、
R’はHまたはC〜C12のアルキルであって、
R”は、H、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルキルカルボニル、C〜C10のアリール、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたC〜C10のアリール、C〜C12のアラルキル、1つ以上のC〜C12のアルキルによって置換されたC〜C12のアラルキル、または下記の基:
【化19】

であり、
式中、各E’は独立して、H、C〜C12のアルキル、またはC〜C12のアルキルカルボニルである、
請求項1に記載の重合体を調製するための方法。
【請求項11】
請求項1〜9の何れかに記載のイオン伝導性重合体を含む、固体重合体電解質またはゲル電解質。
【請求項12】
重合体骨格に結合した金属カルボン酸塩、または複合電解質塩を含む、請求項11に記載の固体重合体電解質またはゲル電解質。
【請求項13】
陽極と、陰極と、請求項11に記載の固体重合体電解質またはゲル電解質とを有する電池。
【請求項14】
請求項1〜9の何れかに記載の重合体を含む成形膜。
【請求項15】
固体重合体電解質、またはゲル電解質、または成形膜内における、請求項1〜9の何れかに記載の重合体の使用。

【公表番号】特表2011−506629(P2011−506629A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536406(P2010−536406)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066175
【国際公開番号】WO2009/071469
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】