説明

室温で硬化するコーティング剤の使用

本発明は、室温で硬化するコーティング剤の使用に関する。カソード腐食を防止するためおよびエアロゾルとしてまたははけ塗り塗料として塗布するための室温硬化性コーティング剤を提供するために、本発明によれば、当該コーティング剤は、以下の方法:a)5〜95重量%の金属アルコキシドを5〜95重量%の金属顔料と混合することと、b)溶媒および(固形物の量に対して)10重量%までの触媒を添加することと、によって製造されることが提案される。カソード耐食はこのようにして得られ、このカソード耐食は、異なる金属からなる基材においても接触腐食を効果的に防止する。本発明に関して、本発明のコーティング剤は、個々の金属粒子を伝導性のまたは半伝導性の金属酸化物コーティングで被覆すること、例えば亜鉛上の二酸化チタンコーティングによって、活性の低下の制御を成し遂げるということが示された。溶接性は保たれ、当該コーティング剤を上塗りすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温で硬化するコーティング剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食に対する活性な保護のための亜鉛または亜鉛合金に基づく金属コーティング剤は、先行技術から公知である。塩水噴霧試験では、これらのコーティング剤は、コーティング厚さがおよそ7μmであるとき、およそ100時間の活性な耐食を与える。それゆえ、十分な耐食を得るために、50〜60μmの厚さのコーティングを使用することが慣用的である。
【0003】
永久的な耐腐食性が必要とされるところでは、保護されるべき表面は、塗料、ワニスもしくはスポットシーラーとして知られるものの塗布により、または電気化学的ディップコーティングにより追加的に不動態化されてもよい。
【0004】
あるいは、亜鉛コーティングの厚さが、例えば溶融亜鉛めっきによっておよそ70μmまで厚くされてもよい。
【0005】
亜鉛フレークコーティングは、5〜10μm厚さという比較的薄層で塗布されたときでさえ非常に良好な耐腐食性を示すが、亜鉛フレークコーティングはスプレー塗りに適していない。なぜなら、亜鉛フレークコーティングを硬化させるために、少なくとも250℃という温度が仕様とされているからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、カソード耐食を提供しかつエアロゾルとしておよびはけ塗り塗料として適用できる室温硬化性コーティング剤を創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この前提部に従う使用のために、この目的は、以下の方法:
a)5〜95重量%の金属アルコキシドを5〜95重量%の金属顔料と混合することと、
b)溶媒および(固形物の量に対して)10重量%までの触媒を添加することと
に従って製造される、カソード耐食を提供するための室温硬化性コーティング剤が、エアロゾルまたははけ塗り塗料の形態で使用されるという点で、本発明によって確立される。
【0008】
カソード耐食はこのようにして得られ、このカソード耐食は、異なる金属からなる基材における接触腐食を効果的に防止する。本発明に関して、本発明のコーティング剤は、個々の金属粒子を伝導性のまたは半伝導性の金属酸化物コーティングで被覆すること、例えば亜鉛上の二酸化チタンコーティングによって、活性の低下の制御を成し遂げるということが示された。金属粒子は、当該金属アルコキシドによって「その場で」不動態化され、室温で硬化する従来の亜鉛コーティングに典型的な白錆の形成を防止する。溶接性は保たれ、当該コーティング剤を上塗りすることができる。当該コーティング剤の表面は汚れにくく、疎水性および撥油性を有する。当該コーティング剤の「自己回復性表面」のおかげで、当該コーティング剤は、比較的耐スリキズ性および耐摩耗性があり、ポリウレタンシーラントおよびシリコーンシーラントに対して良好な接着表面を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1つの実施形態は、(いずれの場合も固形物の量に対して)20重量%まで、好ましくは0〜10重量%、最も好ましくは0.1〜2.5重量%の添加剤が添加されることにある。
【0010】
(いずれの場合も固形物の量に対して)50重量%まで、好ましくは0〜25重量%、最も好ましくは0〜10重量%の着色料が添加されることも本発明の範囲にある。
【0011】
当該コーティング剤はすでに金属の効果を有するが、当該コーティング剤は、無機もしくは有機の着色料または顔料の添加によりそれぞれの基材に合うように調整されてもよい。例えば、種々の亜鉛および金属の色合い、例えばステンレス鋼およびアルミニウムなどを作製することが可能であるが、他の色も可能である。
【0012】
本発明のコーティング剤は、金属基材、特に鋼鉄、合金鋼、亜鉛、亜鉛めっき鋼板、アルミニウムまたはアルミニウム合金の上への噴霧、特にエアロゾル缶または吹き付け器からの噴霧、はけ塗りまたはローラー塗りによって塗布され、その後、室温で乾燥されてもよい。この基材は、例えば溶接、ボルト締めまたはリベット打ちによって一緒に接合されたこれらの金属のうちの2以上を含む複合材料であってもよい。
【0013】
当該コーティング剤が5〜60μmの層厚さで、好ましくは5〜25μmの層厚さで、さらにより好ましくは10〜15μmの層厚さで塗布されることは本発明の範囲にある。
【0014】
非常に良好な耐食を生成するためには、先行技術におけるよりも明らかに薄いコーティング厚さで十分であるということが、本発明の範囲で明らかになる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態は、当該金属アルコキシドが、チタンアルコキシド、特にチタンブチレート、チタンプロピレートまたはチタンイソプロピレート、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドおよびスズアルコキシドからなる群から選択され、金属含有量が、いずれの場合も、1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、さらにより好ましくは1〜30重量%の範囲にあるということにある。
【0016】
金属顔料が、亜鉛、アルミニウムおよびマグネシウム、ならびにそれらの混合物および合金からなる群から選択されることは本発明の範囲にある。
【0017】
亜鉛ならびに亜鉛およびアルミニウムの混合物または合金が好ましい。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、当該溶媒は、好ましくは水、アルコール、プロトン性もしくは非プロトン性の溶媒を含有するかまたはこれらからなり、この溶媒は、最も好ましくはトルエン、ブチルグリコール、キシレンもしくはイソプロパノールからなるかまたはこれらを含有する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、室温硬化性コーティング剤がエアロゾルの形態で使用される必要がある場合は、プロパン、ブタン、ケトン、エーテル、二酸化炭素、窒素、クロロフルオロカーボンまたは笑気からなる群から選択される噴霧剤が添加される。
【0020】
室温硬化性コーティング剤がエアロゾルの形態で使用される必要がある場面では、その室温硬化性コーティング剤は、2〜40重量%、好ましくは5〜25重量%、さらにより好ましくは5〜15重量%の固形分含量まで溶媒または溶媒混合物で目的に合わせて希釈される。
【0021】
室温硬化性コーティング剤がはけ塗り塗料の形態で使用される必要がある場面では、本発明の別の実施形態によれば、室温硬化性コーティング剤を、溶媒または溶媒混合物で25〜75重量%、好ましくは40〜60重量%の固形分含量まで希釈することが有利である。
【0022】
本発明は、好ましくは1〜10重量%の触媒、さらにより好ましくは1〜5重量%の触媒の添加を想定し、この触媒は、ルイス酸、ルイス塩基、有機酸および有機塩基、無機塩基、官能性シラン、特にアミノシラン、無機酸、特に硫酸またはリン酸、リン酸塩もしくはリン酸エステルまたはブロックされたリン酸塩もしくはリン酸エステルからなる群から選択される。
【0023】
当該添加剤が、艶消し剤、流れ調整剤、スリップ剤、接着促進剤、柔軟剤、沈降防止剤、特にアエロジル(Aerosil)、撥水剤および撥油剤、防湿剤、抑制剤および親水化剤からなる群から選択されることも本発明の範囲にある。
【0024】
これに関して、シランは、特に適切な接着促進剤であり、シリコーンは特に適切な柔軟剤である。
【0025】
本発明によれば、着色料は、無機顔料または有機顔料、二酸化チタン、カーボンブラックおよび酸化鉄からなる群から選択される。
【0026】
本発明は、実施形態を参照して下記で詳細に説明される。
【実施例】
【0027】
100gのキシレンを、100gの微細な、薄片状の亜鉛粉末および15gの同様に薄片状のアルミニウム顔料ペーストの混合物の上へと注いだ。この反応混合物を密閉容器の中で24時間放置し、次いで低速撹拌機を用いて2時間均質化した。
【0028】
40gのオルトチタン酸テトラ−n−ブチルを、乾燥窒素雰囲気下でこの反応混合物へと混ぜ込み、この混合物を、低速撹拌機を用いて1時間均質化し、次いで12時間還流させた。亜鉛およびアルミニウムの粒子は、このプロセスの間にこの有機金属成分によって表面改質される。この反応混合物を再度室温まで冷却した後、さらに40gのオルトチタン酸テトラ−n−ブチルを乾燥窒素雰囲気下で混ぜ込み、さらに5時間、撹拌を続けた。
【0029】
次いで、さらに40gのオルトチタン酸テトラ−n−ブチルを添加し、この混合物が均一になるまでこの混合物を撹拌した。次いで、元の量のうちの300gだけが残るまで、この反応混合物全体をロータリー・エバポレーターの中、浴温度で、真空下で濃縮した。
【0030】
塗布の間、この液体コーティング材料を連続的に撹拌して、固形成分が沈降するのを防ぐ。
【0031】
80gのコーティング材料を75gのキシレンおよび5gのメチルエチルケトンで希釈し、400mlのエアロゾル缶に充填し、密閉して、200gのプロパン/ブタン噴霧剤混合物を加えた。このスプレー缶の内容物を、脱脂し清浄にした鋼板に、クロスハッチ手法によって塗布し、標準大気湿度条件(30〜60%湿度)下、室温(20〜25℃)で1日乾燥した。良好な活性な耐食をもたらす耐摩耗性のグレーメタリックのコーティングが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の方法:
a)5〜95重量%の金属アルコキシドを5〜95重量%の金属顔料と混合することと、
b)溶媒および(固形物の量に対して)10重量%までの触媒を添加することと
に従って製造される、エアロゾルまたははけ塗り塗料の形態でカソード耐食を提供するための室温硬化性コーティング剤の使用。
【請求項2】
(いずれの場合も固形物の量に対して)20重量%まで、好ましくは0〜10重量%、最も好ましくは0.1〜2.5重量%の添加剤が添加される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
(いずれの場合も固形物の量に対して)50重量%まで、好ましくは0〜25重量%、最も好ましくは0〜10重量%の着色料が添加される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記コーティング剤は、5〜60μmの層厚さで、好ましくは5〜25μmの層厚さで、さらにより好ましくは10〜15μmの層厚さで塗布される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記金属アルコキシドは、チタンアルコキシド、特にチタンブチレート、チタンプロピレートまたはチタンイソプロピレート、ジルコニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドおよびスズアルコキシドからなる群から選択され、金属含有量は、いずれの場合も、1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、さらにより好ましくは1〜30重量%の範囲にある、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記金属顔料は、亜鉛、アルミニウムおよびマグネシウム、ならびにそれらの混合物および合金からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記溶媒は、好ましくは水、アルコール、プロトン性もしくは非プロトン性の溶媒を含有するかまたはこれらからなり、前記溶媒は、最も好ましくはトルエン、ブチルグリコール、キシレンもしくはイソプロパノールからなるかまたはこれらを含有する、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
エアロゾルの形態での室温硬化性コーティング剤の使用のために、プロパン、ブタン、ケトン、エーテル、二酸化炭素、窒素、クロロフルオロカーボンまたは笑気からなる群から選択される噴霧剤が添加される、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
エアロゾルの形態での室温硬化性コーティング剤の使用のために、前記コーティング剤は、2〜40重量%、好ましくは5〜25重量%、さらにより好ましくは5〜15重量%の固形分含量まで溶媒または溶媒混合物で希釈される、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
はけ塗り塗料の形態での室温硬化性コーティング剤の使用のために、前記コーティング剤は、25〜75重量%、好ましくは40〜60重量%の固形分含量まで溶媒または溶媒混合物で希釈される、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
好ましくは1〜10重量%の触媒、さらにより好ましくは1〜5重量%の触媒が添加され、前記触媒は、ルイス酸、ルイス塩基、有機酸および有機塩基、無機塩基、官能性シラン、特にアミノシラン、無機酸、特に硫酸またはリン酸、リン酸塩もしくはリン酸エステルまたはブロックされたリン酸塩もしくはリン酸エステルからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
前記添加剤は、艶消し剤、流れ調整剤、スリップ剤、接着促進剤、柔軟剤、沈降防止剤、特にアエロジル、撥水剤および撥油剤、防湿剤、抑制剤および親水化剤からなる群から選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項13】
前記着色料は、無機顔料および有機顔料、二酸化チタン、カーボンブラックおよび酸化鉄からなる群から選択される、請求項3に記載の使用。

【公表番号】特表2013−505116(P2013−505116A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529125(P2012−529125)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【国際出願番号】PCT/DE2010/075090
【国際公開番号】WO2011/032555
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(507408187)ナノ−エックス ゲーエムベーハー (9)
【出願人】(512057150)ケロナ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】