説明

害虫防除部材

【課題】昆虫網動物と軟体動物門腹足網動物の両者を防除することができる害虫防除部材を提供する。
【解決手段】樹脂と、昆虫網動物防除剤と、を含有してなる昆虫網動物防除部材10と、銅成分を含有する軟体動物門腹足網動物防除部材20を備え、昆虫網動物防除部材10に軟体動物門腹足網動物防除部材20を配設してなる害虫防除部材1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建物や、各種機器のハウジング、あるいは植物等、様々な対象物に設置可能であり、当該対象物内に害虫が侵入することを防止する、あるいは駆除する害虫防除部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、ゴキブリ、蟻、クモ、ムカデ等のような昆虫網動物が、建物や各種機器等のような様々な対象物内に侵入することを防止する昆虫網動物防除部材が紹介されている。このような昆虫網動物防除部材として、例えば、昆虫網動物防除成分が含有された樹脂から構成され、昆虫網動物から保護すべき対象物に取付けることにより、昆虫網動物防除部材から徐々に放出される昆虫網動物防除成分の効果によって、前記対象物を昆虫網動物から保護するものが紹介されている。(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、ナメクジやカタツムリ等のような軟体動物門腹足網動物が銅を忌避する性質を利用することで、軟体動物門腹足網動物から植物等を保護する軟体動物門腹足網動物防除部材も種々提案されている。具体的には、例えば、銅からなるテープ材をミカン等の果樹の幹に巻き付けることも提案されている。(例えば、特許文献3及び4参照)。
【0004】
そしてまた、植物が植えられている植木鉢やプランター等の下において忌避効果を発揮し、ナメクジの棲み家を排除し、前記植物の周りからナメクジを一掃することでナメクジによる被害の軽減を可能にする、ナメクジ忌避剤及び該ナメクジ忌避剤を用いるナメクジの忌避方法も提案されている。(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2004−357553号公報
【特許文献2】特開2000−212005号公報
【特許文献3】特開平2−9806号公報
【特許文献4】特開平10−45517号公報
【特許文献5】特開2001−302406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、蟻やゴキブリ等の昆虫網動物を防除する効能を有する成分と、ナメクジやカタツムリ等の軟体動物門腹足網動物を防除する効能を有する成分とが異なることは、従来から知られている。したがって、両者を防除する際には、例えば、特許文献1及び2で紹介されている昆虫網動物防除部材と、特許文献4及び5で紹介されている軟体動物門腹足網動物防除部材の両方を使用する必要がある。このため、コストがかかると共に、少なくとも2種類の防除部材を、建物や各種機器等、様々な対象物に設置する必要があり、作業工数も増加する。
【0006】
また、特許文献3では、蟻とナメクジの両方を防除することが記載されているが、蟻を防除する部材として天然ゴムを使用しており、樹脂と昆虫網動物防除剤との組合わせについては、言及されていない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、前述したような昆虫網動物と軟体動物門腹足網動物の両者(本明細書では、単に「害虫」と記すことがある)を防除することができると共に、所望の形状に簡単に加工することができる害虫防除部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため本発明は、害虫から保護すべき対象物に取付けられ、当該害虫を防除する害虫防除部材であって、樹脂と、昆虫網動物防除剤とを含有する昆虫網動物防除部材と、銅成分を含有する軟体動物門腹足網動物防除部材とを備え、前記昆虫網動物防除部材に、軟体動物門腹足網動物防除部材を配設してなる害虫防除部材を提供するものである。
【0009】
この構成を備えた害虫防除部材は、昆虫網動物防除部材に軟体動物門腹足網動物防除部材が配設されているため、昆虫網動物と軟体動物門腹足網動物の両者を効率よく防除することができる。また、昆虫網動物防除部材は、樹脂と、昆虫網動物防除剤とを含有して構成されているため、所望の形状に簡単に加工することができる。
【0010】
また、前記昆虫網動物防除部材は、前記昆虫網動物防除剤が含有する昆虫網動物防除成分を徐々に放出させるよう構成することもできる。このように構成することで、前記昆虫網動物防除部材から昆虫網動物防除成分が微量ずつ徐々に放出されることになる。したがって、前記利点に加え、薬理的な昆虫網動物防除効果(例えば、昆虫網動物防除成分の放出による昆虫網動物忌避効果、昆虫網動物防除成分に触れることによる殺虫効果等)を長期間にわたって発揮させることができる。
【0011】
前記軟体動物門腹足網動物防除部材は、前記昆虫網動物防除部材に着脱可能に配設することができる。このように構成することで、仮に、軟体動物門腹足網動物防除部材または昆虫網動物防除部材の何れか一方に不具合が生じた際に、不具合が生じた部材を交換することができる。また、この構成の場合、前記昆虫網動物防除部材は、前記軟体動物門腹足網動物防除部材を受容して保持する保持部を備え、前記保持部は、弾性変形することにより前記軟体動物門腹足網動物防除部材を受容し、弾性復元することで当該前記軟体動物門腹足網動物防除部材を保持するよう構成することもできる。このように構成することで、昆虫網動物防除部材と軟体動物門腹足網動物防除部材がファスニング機構によって着脱されることになる。したがって、昆虫網動物防除部材に対し、軟体動物門腹足網動物防除部材をワンタッチで簡単に着脱することができる。
【0012】
また、本発明にかかる害虫防除部材は、前記昆虫網動物防除部材に、前記対象物に対する害虫の侵入経路を強制的に変更し、当該侵入経路に沿って前進する害虫を落下させる及び/または害虫の前進を停止させる侵入経路変更部を形成することもできる。このように構成することで、前記利点に加え、害虫が対象物に侵入することを物理的に阻止することもできる。
【0013】
そしてまた、本発明にかかる害虫防除部材は、前記軟体動物門腹足網動物防除部材は、害虫防除部材が対象物に取付けられた際に、前記昆虫網動物防除部材の右側端となる位置から左側端となる位置に亘って配設されるよう構成することもできる。このように構成することで、前記軟体動物門腹足網動物防除部材は、軟体動物門腹足網動物の侵入経路上に存在することになるため、前記利点に加え、軟体動物門腹足網動物をさらに効率よく防除することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる害虫防除部材は、昆虫網動物防除部材に、軟体動物門腹足網動物防除部材を配設した構成を備えているため、昆虫網動物と軟体動物門腹足網動物の両者を効率よく防除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の好適な実施の形態にかかる害虫防除部材について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施の形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図、図2は、図1に示す害虫防除部材の一部を拡大して示す側面図、図3は、図1に示す害虫防除部材を対象物に取付けた状態を示す側面図である。なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載した。
【0017】
図1〜図3に示すように、本実施の形態にかかる害虫防除部材1は、例えば、蟻、ゴキブリ、クモ、ムカデ等のような昆虫網動物を防除する昆虫網動物防除部材10と、昆虫網動物防除部材10の一端に着脱可能に配設され、ナメクジやカタツムリ等のような軟体動物門腹足網動物を防除する軟体動物門腹足網動物防除部材20と、を備えており、害虫から保護すべき対象物100(例えば、建物や各種機器、植物等)に取付け可能となっている。
【0018】
昆虫網動物防除部材10は、略板状の平面部11と、平面部11の一端に連続形成され且つ略半球状に湾曲した湾曲部12とを備え、側面視で略J字状を呈している。この昆虫網動物防除部材10は、平面部11を、例えば、両面テープ、各種接着剤、螺子や釘等の固定部材200により対象物100に固定する(図3参照)ことで、対象物100に取付けられる。
【0019】
湾曲部12は、対象物100に対する害虫の侵入経路を強制的に変更し、当該侵入経路に沿って前進する害虫を落下させる及び/または害虫の前進を停止させるもの(侵入経路変更部)である。湾曲部12の平面部11から延出した先端には、後に詳述する軟体動物門腹足網動物防除部材20を受容して保持する保持部13が形成されている。
【0020】
保持部13は、軟体動物門腹足網動物防除部材20を受容する凹状に湾曲した凹部15を画定し、凹部15に受容された軟体動物門腹足網動物防除部材20を把持する(保持する)把持部14A及び14Bを有している。把持部14A及び14Bは、弾性変形することにより凹部15の入り口を拡張し、凹部15に軟体動物門腹足網動物防除部材20を挿入(受容)可能とし、凹部15に軟体動物門腹足網動物防除部材20が挿入(受容)された際に弾性復元して軟体動物門腹足網動物防除部材20を把持(保持)可能とする。この構成により、軟体動物門腹足網動物防除部材20は、昆虫網動物防除部材10にファスニング機構によって着脱されることになるため、昆虫網動物防除部材10に対し、軟体動物門腹足網動物防除部材20をワンタッチで簡単に着脱することができる。なお、凹部15は、湾曲部12の先端面に沿って(先端面に亘って)形成されている。
【0021】
この昆虫網動物防除部材10は、基本的には、樹脂と、昆虫網動物防除剤とを含有して構成されていればよいが、本実施の形態では、可塑剤、無機充填剤、添加剤の少なくとも1種を、樹脂及び昆虫網動物防除剤に加え、これらを混練して所望の形状に成型することで得た。
【0022】
昆虫網動物防除部材10に含有される樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリカーボネート樹脂(PC)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリフェニレンオキシド樹脂(PPO)、ポリカプロラクトン樹脂(PCL)、ポリブチレンサクシネート樹脂(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート樹脂(PBSA)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、(EVA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合樹脂(EEA)、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、液晶性ポリエステル樹脂の何れか1種を単独で、またはこれらから選ばれた2種以上の混合物、及びこれらの樹脂にエストラマーを混合した熱可塑性エストラマーの少なくとも1種の樹脂を選択することができる。
【0023】
ポリアミド樹脂の具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12樹脂等のポリアミド樹脂、ポリアミドMXD、ポリアミド6T樹脂等の芳香族ポリアミド樹脂を例示できる。
【0024】
ポリアセタール樹脂の具体例としては、オキシメチレン単位のみからなる単独重合体の他、オキシメチレン単位を主成分とし、これに副成分としてオキシエチレン単位等の他の共重合単位を含む共重合体、これらを架橋させてなる架橋重合体、またはグラフト共重合させてなるグラフト共重合体を例示できる。
【0025】
ポリエチレン樹脂の具体例としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンを例示できる。
【0026】
ポリプロピレン樹脂の具体例としては、ポリプロピレンのホモポリマー、及びエチレンとプロピレンのランダム共重合体やブロック共重合体を例示できる。
【0027】
また、昆虫網動物防除部材10に含有される昆虫網動物防除剤としては、各種の農業害虫、衛生害虫その他の昆虫類、蜘蛛類、ダニ類、鼠等の小動物の防除活性を有する薬剤であり、小動物忌避活性を有する化合物、殺虫活性、殺ダニ活性、殺蜘蛛活性若くは殺鼠活性等の殺小動物活性を有する化合物、小動物の摂食阻害活性を有する化合物、小動物の成長コントロール活性を有する化合物等を例示できる。
【0028】
このような昆虫網動物防除剤の具体例としては、イミダクロプリドの様なクロロニコチニル系殺虫剤、シラフルオフェンの様なケイ素原子を有するネオフィルラジカルからなる化合物、ベンフラカルブ、アラニカルブ、メトキシジアゾン、カルボスファン、フェノブカルブ、カルバリル、メソミル、プロポクサー、フェノキシカルブ等のカーバメート系化合物、ピレトリン、アレスリン、dl,d-T80−アレスリン、d-T80-レスメトリン、バイオアレスリン、d-T80-フタルスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、プロパスリン、ペルメトリン、アクリナトリン、エトフェンプロックス、トラロメトリン、フェノトリン、d-フェノトリン、フェンバレレート、エンペントリン、プラレトリン、テフルスリン、ベンフルスリン等のピレスロイド系化合物、ジクロロボス、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、プロモフォス、フェンチオン、トリクロルホン、ナレド、テメホス、フェンクロホス、クロルピリホスメチル、シアホス、カルクロホス、アザメチホス、ピリダフェンチオン、プロペタンホス、クロルピリホス等の有機リン系化合物及びこれらの異性体、誘導体、類縁体等を例示できる。また、メトプレン、ピリプロキシフェン、キノプレン、ハイドロプレン、デオヘノラン、NC-170、フルフェノロクスロン、ジフルベンズロン、ルフェヌロン、クロルアズロン等の小動物の成長をコントロールする活性を有する化合物が挙げられる。また、殺ダニ剤としてケルセン、クロルフェナビル、デブフェンピラドピリダベン、ミルベメクチン、フェンピロキシメート、殺鼠剤としてはシリロシド、ノルボマイド、隣化亜鉛、硫酸タリウム、貴隣、アンツー、ワルファリン、エンドサイド、クマリン、クマテトラリン、プロマジオロン、ディフェチアロン等が挙げられる。さらに、タイワンヒノキ、アスナロ、ヒノキアスナロ(青森ヒバ)等に含まれるヒノキチオールや、ハーブや、ヒノキに含まれるカジノール誘導体(α−カジノール,T−カジノール)や、クローブ、ナツメグ、コリアンダー、クミン等の香油植物に多く含まれるゲラニオール、ピネン、カリオフィレン、ボルネオール、オイゲノール等の天然由来の薬剤も使用することができる。
【0029】
可塑剤としては、前記樹脂に対して可塑性能を付与し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、スルホンアミド誘導体、スルホン酸エステル誘導体、カルボン酸アミド誘導体、カルボン酸エステル誘導体より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、これらは、昆虫網動物防除成分を溶解保持し、徐放性を付与する作用を有するものと考えられる。このような可塑剤のうち、カルボン酸エステル誘導体としては、水酸基、ニトロ基、アミノ基、エポキシ基、ハロゲン等で置換されてもよい各種カルボン酸のアルキルエステル、芳香族エステル等を例示でき、水酸基やエポキシ基を有するものはポリアミドとの相溶性が良好であるため好ましい。
【0030】
なお、可塑剤の中には、昆虫網動物防除剤が含有する昆虫網動物防除成分を徐々に放出させるための徐放性を付与する作用を有するものがあり、このような可塑剤を添加することで、薬理的な昆虫網動物防除効果を長期間にわたって発揮させることが期待できる。
【0031】
無機充填材としては、粒子状無機充填材、繊維状無機充填材、或いは鱗片状無機充填材を使用することができる。
【0032】
粒子状無機充填材としては、チタン酸カリウム粒子、チタニア粒子、単斜晶系チタニア粒子、シリカ粒子等を例示でき、これらを単独で又は混合して用いることができる。該粒子状無機充填材の中では、チタン酸カリウム粒子が特に好ましい。
【0033】
また、繊維状無機充填材としては、例えば、平均繊維径0.05〜10μm、平均繊維長3〜150μm、好ましくは、平均繊維径0.1〜7μm、平均繊維長5〜50μmの形状を有する繊維状無機充填材を好適に使用することができ、該繊維状無機充填材としては、例えば、4チタン酸カリウム繊維、6チタン酸カリウム繊維、8チタン酸カリウム繊維、チタニア繊維、単斜晶系チタニア繊維、シリカ繊維、ワラストナイト、ゾノトライト等を例示でき、これらを単独で又は混合して用いることができる。これらの繊維状無機充填剤の中では、8チタン酸カリウム繊維が特に好ましい。
【0034】
また、鱗片状無機充填材としては、チタン酸カリウム、チタン酸カリウムリチウム、チタン酸カリウムマグネシウム、タルク、合成マイカ、天然マイカ、セリサイト、板状アルミナ、窒化ホウ素等を例示でき、これらを単独で又は混合して用いることができる。該鱗片状無機充填材の中では、チタン酸カリウムが特に好ましい。
【0035】
無機充填材は、そのままでも使用し得るが、樹脂との界面接着性を向上させ機械的物性を一層向上させるために、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等のシランカップリング剤またはチタネートカップリング剤等の表面処理剤で表面処理して用いてもよい。
【0036】
また、昆虫網動物防除部材10には、本発明の目的を損なわない範囲で、ゼオライト、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)等の無機充填材を併用することもできる。
【0037】
なお、無機充填材の中には、昆虫網動物防除剤が含有する昆虫網動物防除成分を徐々に放出させるための徐放性を付与する作用を有するものがあり、このような無機充填材を添加することで、薬理的な昆虫網動物防除効果を長期間にわたって発揮させることが期待できる。また、無機充填材の配合は機械的物性の向上にも寄与し得るものとなる。
【0038】
また、昆虫網動物防除部材10には、樹脂表面における皮膜形成を抑制し得る添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収性光安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤、及びカーボンからなる群より選択される1種または2種以上を挙げることができる。
【0039】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、ビス-[3,3-ビス-(4’-ハイドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)-ブタノイックアシッド]-グリコールエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3',3'',5,5',5''-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a''-(メチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤を挙げることができる。
【0040】
リン系酸化防止剤としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-フェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリストールジフォスファイト等のリン系酸化防止剤を挙げることができる。
【0041】
紫外線吸収剤としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、プロパンジオックアシッド,[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメチルエステル等の紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0042】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(Nメチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ))、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザ-ジスピロ-[5.1.11.2]-ヘンエイコサン-21-オン、プロパン二酸,[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-,ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)エステル、1,3-ベンゼンジカルボキシアミド、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)、2-エチル,2'-エトキシ-オキサラニリド等のヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
【0043】
なお、添加剤は、これらを単独でまたは混合して用いることができる。中でも、ベースレジンとの相溶性と皮膜形成の阻害性に優れるという観点から、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド
)]、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-エチル,2'-エトキシ-オキサラニリド、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(Nメチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ))、1,3-ベンゼンジカルボキシアミド、N,N'-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)を好適に使用できる。
【0044】
軟体動物門腹足網動物防除部材20は、銅成分を含有する部材、例えば、銅線等から構成することができる。この軟体動物門腹足網動物防除部材20は、昆虫網動物防除部材10に形成された凹部15に着脱可能に配設される。すなわち、軟体動物門腹足網動物防除部材20は、害虫防除部材1を対象物100に取付けた際に、昆虫網動物防除部材10の右側端となる位置から左側端となる位置に亘って配設されることになる。したがって、軟体動物門腹足網動物防除部材20は、軟体動物門腹足網動物の侵入経路上に存在することになるため、軟体動物門腹足網動物を効率よく防除することができる。
【0045】
この構成を備えた害虫防除部材1は、前述したように、昆虫網動物防除成分を放出するため、薬理的な昆虫網動物防除効果(例えば、昆虫網動物防除成分の放出による昆虫網動物忌避効果、昆虫網動物防除成分に触れることによる殺虫効果等)を発揮することができる。ここで、仮に、昆虫網動物が湾曲部12まで到達した場合は、湾曲部12によって、昆虫網動物を落下させる、あるいは昆虫網動物の前進を停止させることができる。
【0046】
一方、対象物100に侵入しようとしている害虫が軟体動物門腹足網動物の場合は、湾曲部12まで到達した軟体動物門腹足網動物を湾曲部12によって落下させる、あるいは前進を停止させることができる。また、湾曲部12で軟体動物門腹足網動物が落下あるいは前進の停止を行わなかった場合、軟体動物門腹足網動物防除部材20に到達するため、軟体動物門腹足網動物は、ここで防除される。そしてまた、軟体動物門腹足網動物防除部材20は、昆虫網動物防除部材10に対し着脱可能であるため、仮に、両者の何れか一方に不具合が生じた場合は、不具合が生じた部材を新しいものに簡単に交換することができるため、経済的である。
【0047】
なお、本実施の形態では、昆虫網動物防除部材10の湾曲部12の先端に軟体動物門腹足網動物防除部材20を配設した場合について説明したが、これに限らず、例えば、図4に示すように、平面部11の先端に保持部13を形成し、この保持部13によって軟体動物門腹足網動物防除部材20を保持してもよい。
【0048】
また、軟体動物門腹足網動物防除部材20は、例えば、図5及び図6に示すように、平面部11の所定位置(図5及び図6では、湾曲部12の近傍)に保持部13を形成し、この保持部13によって軟体動物門腹足網動物防除部材20の一部が平面部11の表面に露出するように保持してもよい。なお、図5に示す害虫防除部材1の場合、保持部13は、平面部11の表面とほぼ面一に形成されており、軟体動物門腹足網動物防除部材20の一部が平面部11の表面から若干突出した構成となっている。また、図6に示す害虫防除部材1の場合、保持部13は、平面部11の表面から突出して形成されている。
【0049】
そしてまた、本実施の形態では、昆虫網動物防除部材10を平面部11と湾曲部12から構成した場合について説明したが、これに限らず、昆虫網動物防除部材10は、例えば、図7〜図11に示すように、平面部11と、平面部11の先端から略直角方向に延出した延出部32から構成してもよい。この構成の場合、延出部32が、対象物100に対する害虫の侵入経路を強制的に変更し、当該侵入経路に沿って前進する害虫を落下させる及び/または害虫の前進を停止させる侵入経路変更部の役割を果たす。
【0050】
また、昆虫網動物防除部材10を平面部11と延出部32から構成した場合、軟体動物門腹足網動物防除部材20は、図7に示すように、平面部11の先端に保持部13を形成し、この保持部13によって軟体動物門腹足網動物防除部材20を保持してもよく、図8〜図11に示すように、平面部11の所定位置(図8〜図11では、平面部11の略中央近傍)に保持部13を形成し、この保持部13によって軟体動物門腹足網動物防除部材20の一部が平面部11の表面に露出するように保持してもよい。なお、軟体動物門腹足網動物防除部材20は、平面部11の外面、内面の何れに配設してもよい。
【0051】
そしてまた、害虫防除部材1が、図7、図10及び図11に示す構成を有する場合は、例えば、対象物100に形成された階段状の段部101(図10参照)に設けることもできる。
【0052】
さらにまた、本発明にかかる害虫防除部材1は、例えば、図12〜図14に示すように、侵入経路変更部を設けなくてもよい。この構成の場合、軟体動物門腹足網動物防除部材20は、図12に示すように、平面部11の先端に保持部13を形成し、この保持部13によって軟体動物門腹足網動物防除部材20を保持してもよく、図13及び図14に示すように、平面部11の所定位置(図13及び図14では、平面部11の略中央近傍)に保持部13を形成し、この保持部13によって軟体動物門腹足網動物防除部材20の一部が平面部11の表面に露出するように保持してもよい。なお、軟体動物門腹足網動物防除部材20は、平面部11の外面、内面の何れに配設してもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、害虫防除部材1を対象物100に取付けた際に、昆虫網動物防除部材10の右側端となる位置から左側端となる位置に亘って、軟体動物門腹足網動物防除部材20を配設した場合について説明したが、これに限らず、軟体動物門腹足網動物防除部材20のサイズや形状、配設位置、配設数等は、軟体動物門腹足網動物防除効果を発揮可能であれば、所望により任意に決定することができる。
【0054】
そしてまた、本実施の形態では、昆虫網動物防除部材10に対し、軟体動物門腹足網動物防除部材20を、弾性変形及び弾性復元を利用したファスニング機構によって着脱可能に配設した場合について説明したが、これに限らず、軟体動物門腹足網動物防除部材20は、保持部13の側面側から凹部15内にスライドさせて挿入する、軟体動物門腹足網動物防除部材20を昆虫網動物防除部材10に螺子止めする等、他の構成により着脱可能に配設してもよい。
【0055】
また、軟体動物門腹足網動物防除部材20は、昆虫網動物防除部材10に対し、必ずしも着脱可能に配設しなくてもよい。この場合は、昆虫網動物防除部材10に軟体動物門腹足網動物防除部材20を、例えば、両面テープや各種接着剤等により固定する、あるいは、昆虫網動物防除部材10の表面から軟体動物門腹足網動物防除部材20の一部が露出するように両者を成型する等、様々な方法により製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【図2】図1に示す害虫防除部材の一部を拡大して示す側面図である。
【図3】図1に示す害虫防除部材を対象物に取付けた状態を示す側面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【図6】本発明の他の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【図7】本発明の他の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【図8】本発明の他の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【図9】本発明の他の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【図10】本発明の他の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【図11】本発明の他の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【図12】本発明の他の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【図13】本発明の他の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【図14】本発明の他の実施の形態にかかる害虫防除部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 害虫防除部材
10 昆虫網動物防除部材
11 平面部
12 湾曲部
13 保持部
20 軟体動物門腹足網動物防除部材
32 延出部
100 対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫から保護すべき対象物に取付けられ、当該害虫を防除する害虫防除部材であって、
樹脂と、昆虫網動物防除剤と、を含有する昆虫網動物防除部材と、
銅成分を含有する軟体動物門腹足網動物防除部材と、
を備え、
前記昆虫網動物防除部材に、軟体動物門腹足網動物防除部材を配設してなる害虫防除部材。
【請求項2】
前記昆虫網動物防除部材は、前記昆虫網動物防除剤が含有する昆虫網動物防除成分を徐々に放出させる請求項1記載の害虫防除部材。
【請求項3】
前記軟体動物門腹足網動物防除部材は、前記昆虫網動物防除部材に着脱可能に配設されてなる請求項1または請求項2記載の害虫防除部材。
【請求項4】
前記昆虫網動物防除部材は、前記軟体動物門腹足網動物防除部材を受容して保持する保持部を備え、前記保持部は、弾性変形することにより前記軟体動物門腹足網動物防除部材を受容し、弾性復元することで当該前記軟体動物門腹足網動物防除部材を保持する請求項3記載の害虫防除部材。
【請求項5】
前記昆虫網動物防除部材は、前記対象物に対する害虫の侵入経路を強制的に変更し、当該侵入経路に沿って前進する害虫を落下させる及び/または害虫の前進を停止させる侵入経路変更部が形成されてなる請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の害虫防除部材。
【請求項6】
前記軟体動物門腹足網動物防除部材は、害虫防除部材が対象物に取付けられた際に、前記昆虫網動物防除部材の右側端となる位置から左側端となる位置に亘って配設される請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の害虫防除部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−203187(P2009−203187A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47176(P2008−47176)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000226507)株式会社ニックス (96)
【Fターム(参考)】