説明

家具用メカトロニックロック

本発明は、メカトロニックロック(1)であって、ロック(1)を施錠するために引っ込み位置から前進位置に動かすことができる直線運動可能なボルト(2)を有するメカトロニックロックに関する。ロック(1)は、ボルト(2)を手動で作動させる作動要素(4)と、ボルト(2)の直線運動をボルト(2)の前進位置で制止するためにボルト(2)の輪郭部分(3)中に側方に嵌まり込むことができる制止要素(5)と、可動中間要素を動かす電気駆動装置(18)とを更に有する。ボルト(2)が引っ込み位置にあるときに駆動装置(18)を作動させることによってばね手段(7)、特にコイルばねを付勢することができるような仕方で第1のばね手段(7)を介して可動中間要素により制止要素(5)を作動させることができる。かくして、制止要素(5)は、ボルト(2)を前進させると、ボルト(2)の輪郭部分(3)中でその前進位置にスナップ嵌合し、ボルト(2)は、引っ込められないようになる。また、各々がメカトロニックロック(1.1,...1.5)を備えた少なくとも2つの家具構造体を有する装置が記載される。かかる装置は、ロック(1.1,...1.5)を解錠する少なくとも2つの個々にコード化可能なトランスポンダ(20.1,...20.7)と、中央制御装置(40)と、データを中央制御装置(40)とロック(1.1,...1.5)との間で伝送できるようにするネットワーク(30)とを更に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカトロニックロック、特に家具用ロック(錠)であって、ロックを施錠するために引き戻し位置から押し進め位置に動かすことができる直線運動可能なボルト及びボルトを手動で作動させる作動要素を有するロックに関する。
【背景技術】
【0002】
メカトロニック(電子機械式)ロックが知られている。かかるロックは、特に可動ロック要素を有する機械的部分と、ロックの解錠及び施錠を制御する電子的部分とを有している。メカトロニックロックは、多くの利点を備えている。例えば、とりわけ、かかるロックは、例えばデータをロックに送りロックにより読み取ることができる能動型又は受動型トランスポンダを用いることによりロックのワイヤレス解錠を可能にする。さらに、かかるロックは、ロックを解錠する認可をロック及び/又はトランスポンダ内で簡単な仕方で電子的に変更することができる点においてロックシステムの融通性のある適合を可能にする。
【0003】
独国特許第3842569(C2)号明細書(ゲーツェ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュテンクテル・ハフツング(Geze GmbH))は、扉及び窓を施錠したり解錠したりする施錠装置であって、緊急操作装置により電気的且つ手動で作動させることができるボルトを有する装置を開示している。この場合、ボルトは、ばねの影響下で作用を受けて施錠位置に至り、電気モータと相互作用し、ボルトは、電気モータによる施錠及び解錠中、ばねの影響下で電気モータの出力駆動要素と接触状態に保持される。ボルトの結合がばねによって支援されるので、このボルトは、更に、スナップ嵌合作用で動作することができ、即ち、扉が閉鎖位置に達する前であっても施錠位置を選択することができる。
【0004】
独国特許出願公開第10021839(A1)号明細書(レーマン・ヴェルトリーブズゲゼルシャフト・ミット・ベシュテンクテル・ハフツング(Lehmann Vertriebsgesellschaft mbH))は、直線制止スライダを備えた電気的に作動可能な施錠装置を有する家具用電子ロックに関する。この施錠装置は、可逆的回転方向直流モータを有し、このモータは、施錠装置及び家具用クロージャ又は閉鎖装置を互いに別個独立に作動させることができるバッファばねに作用し、これら2つの装置は、バッファばねによって拘束ばねの力に抗して制止スライダにあらかじめ十分に応力を加えた場合にのみ互いに相互作用する。モータの回転運動は、カム軌道及びカム軌道内で案内される制止スライダ要素を備えた回転本体により制止スライダの直線運動に変換される。バッファばねのばね力は、拘束ばねのばね力よりも大きい。一形態では、制止キャッチを制止することができる手段としての制止ボルトが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第3842569(C2)号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10021839(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
公知のメカトロニックロックは、複雑な機械的設計を有する場合が多く、ロックの直感的な作動を困難にする。
【0007】
本発明の目的は、冒頭に述べた技術分野と関連し、単純な設計のものであり、大部分に関して従来型メカニカル(機械式)ロックと同一の仕方で作動及び使用することができるメカトロニックロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載にされた特徴によって達成される。本発明によれば、ロックは、ボルトの押し進め位置においてボルトの直線運動を制止するためにボルトの側部の輪郭部内に嵌まり込むことができる制止要素及び可動中間要素を動かす電気入力駆動装置を有する。ボルトが引き戻されている状態で入力駆動装置を作動させることによって第1のばね手段、特にコイルばねにあらかじめ応力を加えることができるように可動中間要素により第1のばね手段を介して制止要素を作動させることができ、ボルトをその押し進め位置まで前方に押すと、制止要素は、ボルトの輪郭部内にスナップ嵌合し、ボルトが引き戻されるのを阻止するようになっている。
【0009】
ボルトは手動で作動され、ボルトの制止は間接的に電気的にのみ達成されるので、ロックを主として直感的に、即ち、従来型ロックと同様な仕方で作動させることができる。制止手段には、ばね手段によりボルトに対してあらかじめ応力を加えることができる。したがって、ボルトの輪郭部と関連して、ボルトの作動時間とは独立して制止手段の閉鎖動作を計画することが可能であり、それにより、電気入力駆動装置の高いエネルギー効率が得られると共に後の時点においても、入力駆動装置を作動させる必要なく、ロックの簡単且つ迅速なロックが可能である。輪郭部は、この場合、外方膨らみ、切り込みの形態をしていて良く、或いは、突出した形態、例えばボルトに設けられたタブの形態をしていても良い。
【0010】
ボルトは、これを直線的に動かすことができるよう設計されているので、ボルトをロックからの単純な直線運動によって合わせ部品内に動かすことができ、又、ボルトを合わせ部品から戻すことができる。これにより、ロック及びロックと相互作用する合わせ部品を単純なものであるように設計することができる。ロックボルトは、例えば扉の枠、家具又は別の扉にしっかりと装着される合わせ部品と相互作用する。
【0011】
原理的には、電気的に作動可能な入力駆動装置は、公知であって市販されている。一例を挙げると、かかる入力駆動装置は、電磁石、マイクロモータ又は圧電セラミック素子を利用している。
【0012】
中間要素は、有利には、入力駆動装置の作動により動かすことができる入力駆動部と、第2のばね手段、特にコイルばねを介して入力駆動部に取り付けられている出力駆動部とを有し、制止要素を引き戻すことによってボルトを解除する時に制止要素がボルトの輪郭部内でつかえて動かなくなった場合に入力駆動装置を作動させることにより第2のばね手段に応力を加えるようになっている。
【0013】
出力駆動部は、それ自体、制止要素に結合され、この制止要素は、ボルトが閉鎖(施錠動作)状態にあるとき、ボルトの輪郭部と相互作用する。制止要素が対応の輪郭部から完全に引き戻される前に、ロックの開放動作中にボルトが実際に引き戻されると、制止要素が輪郭部内に短い間つかえて動かなくなることが起こりうる。この状況において、電気入力駆動装置の作動は、入力駆動部を動かし、かくして、コイルばねに応力を加える。例えばユーザが少しの間ボルトに加わる力を減少させることにより制止要素及びかくして出力駆動部が動くことができるようになるやいなや、応力が加わっている第2のばね手段は、出力駆動部を引き戻し、それと同時に制止要素も又引き戻されて輪郭部から離脱する。したがって、電気入力駆動装置は、輪郭部と出力駆動部に結合されている制止要素との間に生じるクランプ力によっては制止要素を直接解除することはできない。制止状態は、輪郭部と制止要素との間に働くクランプ力が減少するまでは解除されない。
【0014】
また、例えばこのような特徴をなしで済ますことが可能である。また、この動作において、入力駆動装置により実施される仕事を記憶し、出力駆動部が嵌入固定(clamp in)されるやいなや、かかる仕事を出力駆動部に伝達するばねを用いることなく、入力駆動装置を出力駆動部に直接作用させることができ、又は入力駆動部を介してのみ出力駆動部に作用させることができる。中間要素は、一体に形成されても良く、その結果として、入力駆動装置の運動は、制止要素に直接伝達される。この場合、入力駆動装置は、この入力駆動装置が中間要素を駆動する力を制止要素が嵌入固定されていないときにのみ入力駆動装置が動作するように制限するよう制御可能である。
【0015】
入力駆動装置は、有利には、回転シャフトを備えた電気モータにより構成される。この場合、回転シャフトを回転させることにより伝動装置を介して中間要素を動かすことができる。エレクトロニクスにより電気モータを確実且つ正確に制御することができ、したがって、電気モータを中間要素のための入力駆動装置として用いることができる。この場合、電気モータの回転シャフトの回転は、伝動装置によって中間要素に伝達され、この中間要素をこの回転運動により動かすことができる。例えばこのような伝動装置により、入力駆動装置の単純な技術的具体化を提供することに加えて、中間要素を正確に制御することができる。
【0016】
他の入力駆動装置、例えばリニアアクチュエータも又、電気モータに代えて入力駆動装置として使用することができる。
【0017】
ロックの好ましい一実施形態では、中間要素の入力駆動部は、ねじ山付きスリーブであり、ねじ山付きスリーブは、外部輪郭部を介して伝動装置の輪郭出力シャフトと相互作用し、外部輪郭部は、輪郭出力シャフトに回転的に固定された状態で連結される。
【0018】
ねじ山付きスリーブは、これが回転することができるようそのねじ山を介して設けられ、その結果として、回転運動が伝動装置の出力シャフトからねじ山付きスリーブの外部輪郭部に伝達され、その結果としてねじ山付きスリーブの直線運動が生じる。一例を挙げると、出力シャフトとねじ山付きスリーブとの間の相互作用は、歯車伝動装置という歯形システムにより達成できる。この場合、伝動装置の出力シャフトは、電気モータそれ自体の回転シャフトであっても良く、或いは、このシャフトにより駆動され、回転がステップアップ又はステップダウンされるシャフトであっても良い。多部分構成型中間要素の場合、ねじ山付きスリーブが入力駆動部を形成することができ、その直線運動が、第2のばね要素によって中間要素の出力駆動部に伝達される。
【0019】
変形例として、中間要素は、異なる仕方で、例えば、ねじ山付きスリーブを用いないで、或いは、入力駆動ベルト又は摩擦ロック連結方式によって駆動されても良く、入力駆動ベルト又は摩擦ロック連結方式の場合、ねじ山付きスリーブ及び伝動装置の出力シャフトに、相互に合致する輪郭部を設ける必要はない。
【0020】
制止要素は、有利には、直線運動可能な制止ボルトにより構成される。制止ボルトを中間要素に特に容易に結合することができ、したがって、かかる制止ボルトは、本発明のロックにとって特に簡単なオプションを提供する。例えばこのような制止ボルトを第1のばね手段により中間要素に連結することができる。直線運動可能な中間要素の場合、制止ボルトを直線的に動かすことができ、かかる制止ボルトは、同じ仕方でボルトの輪郭部中に係合させることができる。
【0021】
また、制止要素は、異なる形態のものにすることが可能である。例えば、制止要素をレバーによって構成することができ、レバーは、回転し又は回動し、このレバーを中間要素によりレバーがボルトの輪郭部に嵌まり込み又は係合するロック位置とレバーがボルトの輪郭部から離脱するロック解除位置との間で前後に動かすことができるよう取り付けられる。
【0022】
好ましい一実施形態では、中間要素の入力駆動部及び出力駆動部、制止ボルト並びに第1及び第2のばね手段は、同一軸線上に配置される。例えばこのような構造体、即ち、中間要素及び制止ボルト並びにばね手段という部品から成る構造体の提供の結果として、特に単純な力の伝達が得られる。というのは、入力駆動部の直線運動は、第2のばね要素又はばね手段により中間要素の出力駆動部に伝達され、そして、これから第1のばね要素又はばね手段により制止要素に伝達されるからである。ばね要素がコイルばねの形態をしている場合、この直線的な力の伝達を特に容易に達成することができる。
【0023】
変形例として、中間要素の入力駆動部及び出力駆動部、制止要素並びに第1及び第2のばね要素を同一軸線上に設けないようにすることも可能である。直接的直線的作用する伝動機構体以外の伝動機構体は、例えばこのような構造体、即ち、上述のコンポーネントから成る構造体を必要とする場合がある。
【0024】
ロックの好ましい一実施形態では、出力駆動部は、ねじ山付きスリーブ内で可動的に案内され、出力駆動部は、制止ボルトから遠ざかった側のねじ山付きスリーブの側部から制止ボルトに向いた側のねじ山付きスリーブの側部まで延びる。圧縮ばねが、第2のばね手段として、ねじ山付きスリーブと制止ボルトから遠ざかった側の出力駆動部の端部との間に配置される。停止リングが、ねじ山付きスリーブと制止ボルトの方に向いた側の出力駆動部の端部との間に配置される。さらに、制止ボルトの方に向いた側の出力駆動部の端部が、第1のばね手段に作用する。
【0025】
ねじ山付きスリーブ内における出力駆動部の可動案内が、入力駆動装置に結合されているねじ山付きスリーブと出力駆動部との間におけるばね力の伝達を可能にする。ロックを解錠するために利用される第1の方向におけるこの力伝達は、制止ボルトとは反対側に位置していて、第2のばね要素を構成する圧縮ばねを介して行われる。ねじ山付きスリーブが中間要素の出力駆動部に対して第1の方向に動くことにより、圧力が圧縮ばねに加わり、この圧縮ばねは、この圧力を出力駆動部に伝達する。入力駆動部を逆方向に動かすと、入力駆動部は、停止リングに作用し、この停止リングは、運動を直接出力駆動部に伝達する。出力駆動部は、それ自体、第1のばね要素を押し、かくして、第1のばね要素は、力を制止ボルトに及ぼす。制止ボルトがそれぞれの方向に動くことができるので、入力駆動装置の作動により制止ボルトの直線運動が生じる。ボルトの輪郭部が接近不能であり又は制止ボルトが輪郭部内でつかえて動かなくなっているために制止ボルトが動くことができない場合、入力駆動装置の作動により2つのばね手段のうちの一方にあらかじめ応力が加わる又はプリストレスが加わる。
【0026】
変形例として、ねじ山付きスリーブと中間要素の出力駆動部を互いにしっかりと連結しても良く、或いは、スリーブをこれが回転することができるが出力駆動部上で直線運動できないように設けても良い。また、出力駆動部及びねじ山付きスリーブ並びに第2のばね要素を違ったやり方で配置しても良い。
【0027】
一例を挙げると、ねじ山付きスリーブを、第2のばね要素がねじ山付きスリーブを制止ボルトの方に向いた側で中間要素の出力駆動部に結合するように、出力駆動部に取り付けても良い。
【0028】
別の好ましい実施形態では、作動要素を回転させることによりボルトを作動させることができる。回転可能な作動要素、例えば回転ノブ、ドアキャッチ、レバー又はラッチが、容易且つ直感的に作動可能な要素となる。
【0029】
変形例として、作動要素は、例えば直線運動可能な取っ手の形態をしていても良い。一例を挙げると、直線運動可能な取っ手によっても又、ボルトを直接作動させることができる。
【0030】
作動要素は、有利には、歯付きロッド入力駆動装置によりボルトに結合され、歯付きロッド入力駆動装置は、作動要素側が第1の歯車状歯形システムにより形成され、ボルト側が歯車状歯形システムと永続的に相互作用する歯付きロッド状歯形システムにより構成される。この結果、作動要素の回転運動は、ボルトの直線運動に変換される。
【0031】
例えばこのような歯付きロッド入力駆動装置は、回転可能な作動要素と直線運動可能なボルトとの間の確実な結合を提供し、かかる結合は、技術的には容易に具体化できる。さらに、歯付きロッド入力駆動装置は、伝動機能を提供することができる。
【0032】
作動要素側の歯形システムは、有利には、回転可能な作動要素それ自体に設けられ、ボルト側の歯形システムは、有利には、ボルトに直接設けられる。したがって、本発明の機能は、最小数の部品で達成でき、それにより、作動要素とボルトとの間のロスが少なく機械的に頑丈な連結部が作られる。
【0033】
変形例として、作動要素は、他の何らかの仕方でボルトと相互作用することができる。作動要素側の歯形システム及び/又はボルト側の歯形システムは、作動要素から見て下流側に配置された回転可能な要素に設けられても良く、或いは、ボルトの上流側に配置された直線運動可能な要素に設けられても良い。例えば、作動要素をレバー機構体によってボルトに連結することが可能である。歯付きロッドのようにではなく、結合装置は、例えばスタッドを回転可能な作動要素、又はボルト若しくは上流側の直線運動可能な要素と接触する下流側の回転要素に設けることにより、又は回転可能な作動要素に偏心状態で取り付けられたトグルレバーを用いることにより、違ったやり方で設計することも可能である。加うるに、作動要素側の歯車状歯形システムとボルト側の歯付きロッド状歯形システムとの間にステップアップ又はステップダウン伝動装置を設けることも又可能である。
【0034】
ロックは、有利には、適当にコード化されたトランスポンダをロックの受け入れ領域内に動かしたときにのみ解錠可能である。例えばこのようなロックの実施形態により、ロックを開放することが許可されている人のキーレス(無鍵)識別が可能である。ロックと機械的に係合することが必要なキーが必要ではないということにより結果的に得られる単純化に加えて、トランスポンダは、更に、互いに異なるユーザをカテゴリー化可能である。例えば、ユーザ又はユーザグループを個別に識別可能である。ユーザ又はユーザグループのかかる識別により、例えば特定の選択されたユーザのみがロックをロック解除することができ、又は日時又は曜日の関数としてロックを解錠し或いは施錠することができるようになる。
【0035】
識別データのワイヤレス伝送の手段は、原理的には、RFID(無線認証)という名称で知られている。本発明の目的上、能動型トランスポンダと受動型トランスポンダの両方を用いることができる。能動型トランスポンダは、ロック受信機により受信可能な信号、例えばRF信号又は赤外線信号を放出することができるという特徴を備えている。受動型トランスポンダは、これらがロック受信機の近くに位置している場合、ロック受信機により無接触で、例えば誘導的に又は容量的に読み取ることができる要素を有する。認可ユーザと関連した識別信号がトランスポンダから受信機に伝送されると、コントローラは、入力駆動装置を作動させ、その結果として、作動要素若しくはボルト又は結合機構体が解除され、ボルトを引き戻すことができる。
【0036】
変形例として、例えばこのようなトランスポンダをなしで済ますことも可能である。一例を挙げると、コードをキーパッドで入力することにより又は単にボタンを押すだけで制止要素を解除すると共にボルトを解除することも可能である。
【0037】
能動型トランスポンダに用いられる本発明のロックは、能動型トランスポンダを作動させて識別信号を放出させるために作動信号を放出することができる送信機を備えることができる。したがって、能動型トランスポンダがロックに接近したときに、このロックがその存在を検出し、適宜、ロックを開放することができるようにするために能動型トランスポンダそれ自体が永続的に又は速い速度で放出することは必要ではない。トランスポンダ受信機は、これがロックからの作動信号を受信することができるようにするために待機モードであることが必要であるに過ぎない。これにより、トランスポンダの電力消費量が大幅に減少する。
【0038】
変形例として、制御要素、例えば押しボタンを備えていて、ユーザが制御要素を作動させた場合にのみ識別信号を放出するトランスポンダを使用することが可能である。別の実施形態では、トランスポンダは、識別信号を連続的に又は所定の時間間隔(例えば、0.1〜0.5秒)で送る。電力消費量を減少させるため、トランスポンダを手動でオフに切り換えるのが良く、更に、トランスポンダは、運動センサを有するのが良く、その結果、信号の放出をトランスポンダが動いていない或る特定の時間間隔(例えば約30秒)後に中断させることができる。新たな運動の検出後、識別信号の放出が再開される。
【0039】
ロックは、有利には、送信機を作動させて作動信号を放出させ又は受動型トランスポンダを読み取ることができるようにする手段としての制御要素、特に押しボタンを有する。例えばこのような押しボタンにより、送信機が適当な信号を連続的に又は短い間隔で放出するのを回避し、かくして、不必要な大量のエネルギーを消費するのを回避することが可能である。この場合、例えば押しボタンを押すことにより制御要素の作動が単一の作動信号の放出をもたらすことが実行可能であり、又、制御要素の作動の結果として、指定された期間にわたり作動信号の連続的又は定期的な繰り返し放出を生じさせることも実行可能である。
【0040】
変形例として、送信機は、作動信号を連続的に又は一定間隔で放出することも可能であり、このためには、固有の制御要素は不要である。
【0041】
好ましい一実施形態では、制御要素は、回転可能な作動要素の回転シャフト内に設けられた押しボタンの形態をしている。制御要素のこの実施形態により、特に直感的な制御が可能である。したがって、作動要素を作動しているユーザは、作動要素に取り付けられている押しボタンを前もって押すことによりロックを解錠することができる。
【0042】
変形例として、制御要素は、これとは違った設計のものであっても良い。一方において、制御要素を押しボタンでは構成しないようにすることが可能であり、他方において、他の何らかの仕方で設計された押しボタン又は制御要素を、回転可能な作動要素の回転シャフト内とは異なる場所に配置することができる。この場合、特に、制御要素を作動要素に隣接して配置することが可能である。作動要素は又、例えばその回転軸線回りの僅かな量の運動の自由度を提供することにより、又は作動要素全体が軸方向に動くことができるようにすることにより、同時に制御要素としても作用するよう(したがって、同時にそれ自体押しボタンとして作用するよう)設計可能である。
【0043】
ロックは、有利には、ロックを制御するコントローラを有し、制止要素の開放動作後の所定の時間間隔後に電気入力駆動装置を自動的に作動させて、ボルトの位置に応じて、制止要素を前方に動かすと共に第1のばね手段に応力を加えるようになっている。これにより、ロックはボルトを閉鎖(施錠動作)させた後でも再びロックされるようになる。この場合、第1のばね要素のおかげで、電気入力駆動装置の作動時点で、ボルトがロック位置にあるか開放位置にあるかは重要なことではない。ボルトが開放位置にあると共に、電気入力駆動装置により中間要素を介して駆動される制止要素がボルトの輪郭部と相互作用することができない場合、ばね要素は、応力を制止要素に及ぼす。ボルトが施錠位置を占め、制止要素がボルトの輪郭部と相互作用し、即ち、輪郭部内にスナップ嵌合するやいなや、ばね要素が制止要素に応力を加えている状態は解除される。その上、ボルトの自動制止によるこの実施形態の追加の安全性として、この実施形態も又、ボルトを能動的に制止するための作動要素又は制御要素を別途必要としない。
【0044】
変形例として、電気入力駆動装置の自動作動のためのコントローラをなしで済ますことも可能である。また、コントローラが例えばボルトの位置に基づいてボルトを自動的に制止することが可能である。
【0045】
好ましい実施形態では、ロックは、制止ボルトの瞬時位置を検出することができる手段としてのセンサを備える。一例を挙げると、例えばこのようなセンサは、制止ボルトの一方の又は両方の意図した限界位置で作動されるリミットスイッチによって構成できる。これは、ロックが施錠されているかどうか即ち、ボルトが制止されているかどうか又はボルトが解除されているかどうか、即ち、ボルトを開放又は解錠動作させることができるかどうかの識別で決まる。1つ又は2つ以上のかかるセンサは、電気入力駆動装置がばね要素を介して制止ボルトに結合されている実施形態では特に価値がある。これは、例えばこのような実施形態では、入力駆動装置の位置から制止ボルトの位置まで妨げられることなく閉鎖動作することは可能ではなく、その結果、入力駆動装置の位置のための検出器が制止ボルトの位置の検出には適していないからである。しかしながら、ボルトが制止されているか又は解除されているかどうかについての情報は、例えば目的が開閉動作を記録することにある場合又は本発明のロックの状態がリアルタイムで中央施設に伝送される場合、大いに関心のある場合がある。
【0046】
変形例として、センサをなしで済ますことも可能である。センサによりロックが施錠されているか或いは解錠されているかを識別するためのロックの機能はそれ自体不要である。
【0047】
電気入力駆動装置、コントローラ及び該当する場合には受信機のための電力は、有利には、例えば長寿命電池により電源とは別個独立に供給される。原理的には、ユーザがロックを開放するために利用するエネルギーを回収することも可能であり、かかるエネルギーを用いると、充電式電池又は適当なキャパシタを充電することができる。電池が切れている場合であっても何ら問題なく家具を開放することができるようにするため、電気エネルギーをロックに供給することができる外部から接近可能な給電接続部を有するのが良い。この場合、市販の給電ユニット又は本発明のロックのために特別に設計された給電ユニットをこの給電接続部に接続するのが良く、その後ロックを通常の仕方で作動させることができる。電池は、ロックをいったん解錠すると、電池を交換することができるよう容易に接近可能であれば、有利である。給電ユニットにはそれ自体、電源から電力供給でき又は電池から電力供給できる。メカトロニックロックに設けられた給電接続部は、使用されていないとき、好都合には例えばキャップにより覆われる。
【0048】
変形例として、電気入力駆動装置、コントローラ及び該当する場合には受信機も又、外部エネルギー源から給電可能である。この目的のため、一例を挙げると、ロックは、外部電源システム又は外部電池に接続されるのが良い。
【0049】
特に、電池式ロックが外部から接近可能な給電接続部を備えていない場合、ロックは、有利には、電池電圧を測定する装置を有し、ロックは、所定の第1の電池電圧がアンダーシュート状態にあるときに警報信号を鳴らし、第1の電池電圧よりも低い所定の第2の電池電圧をアンダーシュートした後、特定的にコード化されたトランスポンダによってのみロックを解錠することができるよう制御される。
【0050】
電池の限界的又は危険な充電状態を時に適って指示することができるようにするために、測定装置は、電池に蓄えられている電荷をチェックする。所定の第1の電池電圧がアンダーシュートされている場合に警報信号が鳴らされることにより、ユーザは、ロックの中断しない問題のない開放を保証するために、電池を間もなく交換しなければならないことに気づく。第1の電池電圧よりも低い所定の第2の電池電圧がオーバーシュートされると、ロックは、その作動性を制御された仕方で制限する。作動性を制限することは、特定的にコード化されたトランスポンダによってのみ開放することができるようにすることである。一例を挙げると、これらは、人々の特定グループに発行され、例えばメンテナンスサービスに発行される。したがって、ロックは、電池を遅滞なく交換することも可能な人によってのみ依然として開放可能である。これにより、電気入力駆動装置を電池により依然として作動させることができる下限としての限界的電池電圧を下回るまでロックを作動させるのを阻止することが可能である。
【0051】
変形例として、ロックを所定の第2の電池電圧を下回るまで依然として作動させることができるユーザは、特定の手動で入力される識別コードによって選択することも可能である。原理的には、更に又、電池電圧を測定する装置を用いないで且つこの装置の助けにより導入される機構体を用いないで、ロックを作動させることが可能である。
【0052】
ロックは、家具に特に適しており、例えば、扉、フラップ又は引き出しの中又はその上に設けられる。本発明の特に好ましい一実施形態では、ロックは、家具の扉の外壁と内壁との間に保持される。この場合、外壁と内壁は、互いに距離を置いて配置され、これら壁は、比較的薄手の材料、例えば板金で作られ、その結果、壁相互間にはロック又はその主要な部分のためのスペースが生じる。
【0053】
複数個の家具構造体内に配置されたメカトロニック、特に本発明のロックの使用により、ロックシステムを中央で管理すると共に/或いはモニタすることができる。この目的のため、装置であって、
a)少なくとも2つの家具構造体を有し、家具構造体の各々は、少なくとも1つのメカトロニックロックを有し、
b)ロックを解錠する少なくとも2つのトランスポンダを有し、第1の識別コードをトランスポンダのうちの第1のトランスポンダに割り当てることができ、第1の識別コードと同一ではない第2の識別コードをトランスポンダのうちの第2のトランスポンダに割り当てることができ、
c)中央制御装置を有し、
d)データを中央制御装置とロックとの間で伝送できるようにする手段としてのネットワークを有することを特徴とする装置が提供される。
【0054】
この場合、個々の家具構造体を同一の家具及び/又は複数個の家具内に収納するのが良い。本発明のロックは、特に好ましくは、複数個の家具を備えた家具システムと関連して用いられ、この場合、家具は各々、本発明のメカトロニックロック又は別々のメカトロニックロックを備えた複数個の家具構造体を有するのが良い。ネットワークは、有利には、ワイヤを用いないで、例えば公知のワイヤレスプロトコル、例えばWLAN又はブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)を利用して具体化される。一例を挙げると、中央制御装置を固有の受信機を備えた従来型パーソナルコンピュータ(PC)で構成することができる。中央制御装置の目的に応じて、データは、中央制御装置からロックに流れる(例えば、ロック計画を変更するため)と共に/或いは逆方向に流れる(例えば、ロック作動プロセスをモニタするため)。互いに異なる識別コードは、家具システムの互いに異なるユーザを識別するために用いられ、かくして、カスタマイズされたロックプランを作ることができると共に家具システムの使用に関するユーザ関連情報を記録することができる。
【0055】
中央制御装置は、識別コードとロックを解錠するための認可との間の割当てを記憶することができる認可データベースを有し、かくして、認可の中央管理が可能である。ロックを開放する認可も又、この認可データベース中に識別化方式で記録されるのが良い。例えば、特定のユーザグループが所定の時間間隔でのみ、例えば、特定の業務時間又は特定の曜日の間だけロックを解錠することができるようにすることが実現可能である。
【0056】
代替的に又は追加的に、中央制御装置は、複数のユーザに対するロックの解錠動作の評価を可能にするよう識別コードとロックの解錠動作との間の割当てを記憶することができるアクセスデータベースを更に有するのが良い。時間に関する情報も又、識別コード及びそれぞれ作動されたロックに関連した詳細に加えて、データベース中に記憶されるのが良い。解錠動作の全体的評価に加えて、個々の識別コードと解錠動作との間の割当ても又、行われて記憶されるのが良い。個人化された使い方に関する統計及び使い方のモニタも又可能である。
【0057】
アクセスデータベースにより、作業環境の使用を記録するために本発明の家具システムを用いることが可能である。この目的のために、以下のステップが実施され、かかるステップは、
a)ロックを解錠するトランスポンダを作業環境のユーザに発行するステップを含み、互いに異なる識別コードが互いに異なるトランスポンダに割り当てられ、
b)解錠動作中、それぞれの識別コードを解錠されたメカトロニックロックにより記録するステップを含み、
c)次に、識別コードを中央データベースに送るステップを含み、
d)次に、1つのロックと1つの識別コードとの間の割当てを中央データベースに記憶させるステップを含む。
【0058】
記憶された割当て(場合によっては、これらに時間に関する情報が追加されている)を用いると、どのユーザがどの家具構造体をいつどれほど多く使ったかを突き止めることができ、その目的は、例えば、文書又はファイルを得て又はこれを戻すことにある。次に、作業環境を例えば文書、ファイル又は内容物の入った家具全体を別々に配置し又はオフィススペースをユーザに別々に割り当てることにより対応のデータに基づいて最適化することができる。家具システムに加えて、別の情報送信機及び/又は受信機、例えば時間記録システム、コンピュータ設備又は例えばどの部屋がどのユーザによりいつ用いられたかを突き止める専用記録施設を設けるのが良い。
【0059】
本発明の別の有利な実施形態及び特徴の組み合わせは、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲全体から明らかになろう。
【0060】
図面は例示の実施形態を説明するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】中間要素が応力を受けていない状態で閉鎖又は施錠位置にある本発明の露出状態のロックの平面図である。
【図2】中間要素が応力を受けていない状態で開放又は解錠位置にある露出状態のロックの平面図である。
【図3】中間要素があらかじめ応力を受けた状態で閉鎖又は施錠位置にある露出状態のロックの平面図である。
【図4】中間要素があらかじめ応力を受けた状態の開放又は解錠位置にある露出状態のロックの平面図である。
【図5】ロックの断面図である。
【図6】ロックが取り付けられた状態の家具扉を示す図である。
【図7】本発明のロックの斜視図である。
【図8】本発明のロック及びロックがトランスポンダと連続状態にある状態のブロック図である。
【図9】本発明のロック装置を備えた家具システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
基本的に、図中、同一の部品は同一の参照符号で示されている。
【0063】
図1は、本発明のロック1の平面図である。ロック1は、露出状態にあり、即ち、ロックハウジングカバーがこの図では取り外されている。したがって、ボルト2の制止機構体が見える。ボルト2は、閉鎖又は施錠動作位置にあり、即ち、ボルトがハウジングに対して前方に押された位置にあり、この位置では、ボルト2は、ボルト2に設けられた輪郭部3に嵌まり込み係合している制止ボルト5によってロックされている。ボルト2は、矩形であり、歯付きロッド9bを備えている。歯付きロッド9bは、歯車9aと相互作用し、歯車9aは、手動式回転取っ手4に回転的に固定された(一緒に回転可能な)状態で連結されている。回転取っ手4は、形状が丸形であり、その中央に、外部から操作可能な押しボタン31を備えている。
【0064】
押しボタン31は、図示の実施形態では、開放又は解錠機構体を作動させるために用いられる。一例を挙げると、押しボタン31を押すと、ロックがオフ切り換え(又は待機)モードから受け入れモードに変化する。一例を挙げると、かくして、能動型トランスポンダを作動させ又は受動型トランスポンダを読み取る信号が出される。ロックを開放することが認可された人のトランスポンダがロックの受け入れ領域内に位置していることが、ロックにより分かった場合、ボルト2が解除される。
【0065】
同様に、回転取っ手4を回すと、その結果として、これに連結されている歯車9aが回転する。これは、歯付きロッド9bと相互作用し、歯付きロッド9bは、それ自体が、ボルト2を押し進め閉鎖(施錠動作)位置と引き戻し開放(解錠動作)位置との間で動かす。この場合、ボルト2のハウジングは、ボルト2をハウジング内に完全に引き戻すことができるよう設計されている。ボルト2の輪郭部3は、この場合、ボルト2中への側部内方膨らみの形態をしている。押し進め閉鎖位置では、制止ボルト5は、ボルト2の輪郭部3に係合又は嵌まり込むことができ、かくしてボルト2がハウジング内に引き戻されるのを阻止する。ピンの形態をしている制止ボルト5の前側部分の前端部は、この目的のため、輪郭部3内へ、ボルト2の運動方向に対して直角に動かされる。
【0066】
ボルト2を制止する機構体は、電気入力駆動装置18によって動かされる。電気入力駆動装置18は、電気モータにより構成され、この電気モータの入力駆動シャフトには、歯車17が取り付けられている。歯車17はそれ自体、別の歯車19を駆動し、入力駆動シャフトと別の歯車19の軸線は、互いに平行に延びている。別の歯車19は、円筒形であり、この筒体の高さ、即ち、歯車19のその軸線に沿う広がりは、歯車19の直径よりも大きい。歯車19は、外部輪郭部22を介してねじ山付きスピンドルを駆動する。
【0067】
ねじ山付きスピンドルは、外側輪郭部22を備えた第1の部分と、雄ねじ(外部ねじ山)23を備えた第2の部分とを有している。外部輪郭部22は、この場合、歯車19と相互作用し、したがって、電気入力駆動装置18の回転運動を別の細長い歯車19を介してねじ山付きスピンドルに伝達する。ねじ山付きスピンドルの雄ねじ23は、ロック1のハウジングに固定された状態で設けられた雌ねじ24(内部ねじ山)と相互作用する。回転運動が外部輪郭部22によりねじ山付きスピンドルに伝達された結果として、ねじ山付きスピンドルは、雄ねじ23とハウジングの雌ねじ24の相互作用により別の歯車19の軸線に平行な軸線に沿って螺進する。この場合、歯車19の細長い広がりにより、ねじ山付きスピンドルの外部輪郭部22は、歯車19の回転運動がねじ山付きスピンドルに伝達されるよう歯車19と常時相互作用する。
【0068】
ピンの形態をした出力駆動部16が、ねじ山付きスピンドル内に設けられていて、動くことができるようになっている。出力駆動部16の長手方向軸線は、この場合、ねじ山付きスピンドルが回転中に進む軸線と一致している。ねじ山付きスピンドルは、環状の形状をなして出力駆動部16を包囲しており、かくして、ジャーナル軸受を構成し、このジャーナル軸受内において、出力駆動部16は、ねじ山付きスピンドルの回転運動とは別個独立に自由に動くことができる。さらに、制止ボルトの方向におけるねじ山付きスピンドルの軸方向運動を制限する停止リング34は、制止ボルトの方に向いたねじ山付きスピンドルの側で出力駆動部16に取り付けられている。この方向におけるねじ山付きスピンドルの軸方向運動中、停止リング34により、出力駆動部16は、ねじ山付きスピンドルの運動に直接追随する。外部輪郭部22を備えた第1の部分及び雄ねじ23を備えた第2の部分に加えて、ねじ山付きスピンドルは、第1のプレート25を更に有し、第1のプレート25は、同様に、制止ボルトから見て反対側に位置する出力駆動部16の側を環状の形態をなして包囲している。第1のプレート25は、コイルばね8が載っている又は当たっている軸方向接触面を有し、コイルばね8は、同様に、出力駆動部16を環状の形態をなして包囲している。この場合、コイルばね8は、ねじ山付きスピンドルの一部である第1のプレート25と制止ボルトから見て反対側の出力駆動部16の端面にしっかりと連結された第2のプレート26との間に配置されている。
【0069】
第2のプレート26の方向におけるねじ山付きスピンドルの軸方向運動の結果として、コイルばね8は、第1のプレート25と第2のプレート26との間で圧縮され、かくして、力がねじ山付きスピンドルから出力駆動部16に伝達される。出力駆動部16が自由に動くことができる場合、この出力駆動部は、ねじ山付きスピンドルの運動に直接追随する。出力駆動部16がねじ山付きスピンドルの運動に直接追随することができるほど自由に動くことができない場合、コイルばね8が圧縮される。出力駆動部16を再び解除すると、コイルばね8が応力を受けている結果として、一方においてねじ山付きスピンドルを戻していないことを条件として、出力駆動部16は、ボルトから軸方向に遠ざけられ、ばね8から再び応力が除去される。
【0070】
いま説明したばかりのねじ山付きスピンドルの運動(その間、ばね8が圧縮される)は、制止ボルト5を引き戻して輪郭部3から離脱させ、したがってボルト2を解除する運動に対応している。制止ボルト5は、この場合、第3のプレート14を介して出力駆動部16により動かされ、第3のプレート14は、制止ボルト5の方に向いた出力駆動部16の端面にしっかりと連結されている。第3のプレート14は、制止ボルト5に設けられた凹部(凹部はボルト2から見て反対側に位置している)内に配置され、凹部は、この凹部内で出力駆動部16が第3のプレート14(出力駆動部16の端面に取り付けられている)と共に動くことができるよう設計されている。
【0071】
凹部は、停止部15によりその開口領域が閉鎖されており、出力駆動部16のための中央開口部を有している。また、停止部15は、出力駆動部の第3のプレート14のための接触面を提供し、したがって、出力駆動部16の軸方向運動をボルトから遠ざかる方向で制止ボルト5に伝達することができる。制止ボルト5の中空領域は、別のコイルばね7を収容しており、このコイルばねは、端面側の第3のプレート14と凹部のボルト側端部との間に配置されている。
【0072】
凹部を包囲している制止ボルト5の部分は、出力駆動部よりも大径であると共にボルト2の輪郭部3内にピンとして嵌まり込んでいる制止ボルト5の部分よりも大径である。図示の実施形態において凹部を包囲している制止ボルト5の部分の断面は、制止ボルト5のボルト側端部(ピンの形態をしている)から始まって、2段階で上昇している。大きさが中位の断面の制止ボルトの部分と最も大きな断面の制止ボルトの部分との間の段部は、この場合、リミットスイッチ29bのための作動要素として用いられる。第2のリミットスイッチ29aが、ボルト2から見て反対側の制止ボルト5の端面によって作動される。
【0073】
リミットスイッチ29a,29bは、制止ボルト5の運動軸線の側で制止ボルト5から距離を置いたところに配置され、その結果、制止ボルト5の最大径の部分のみがリミットスイッチ29a,29bに接触するようになっている。リミットスイッチ29a,29bは、制止ボルト5の運動方向に沿って更に配置されており、その結果、制止ボルト5が引き戻し位置にあるとき、第2のリミットスイッチ29aを作動させ、即ち、ボルト2を解除するようになっている。これとは対照的に、制止ボルト5がボルト2の輪郭部3内に嵌まり込むやいなや第1のリミットスイッチが作動され、したがってボルト2を制止するように、第1のリミットスイッチ29bは配置されている。したがって、制止ボルト5の位置を確実に且つ電気入力駆動装置18の位置、出力駆動部16の位置又はボルト2の位置とは無関係に固定することができる。図1では、リミットスイッチ29bは、作動させられており、制止ボルト5がロック位置にあるという信号を出している。
【0074】
図示の実施形態では、リミットスイッチ29a,29bは、それ自体知られている電子部品により形成されたコントローラ10を備えたプリント回路板上に配置されている。コントローラ10は、本質的に長方形のハウジング内に保持され、電気入力駆動装置18から見て反対側で、ねじ山付きスピンドル、出力駆動部16及び制止ボルト5の運動軸線に並んで配置されている。市販の筒形電池を保持する電池コンパートメント27も又、コントローラ10に加えて、ロック1のハウジング内に配置されている。最後に、ロック1のハウジングは、ねじ、リベット又はこれらに類似した取り付け手段のための穴の形態をした2つの取り付け部28a,28bを更に有している。
【0075】
図1は、ボルト2が制止され、即ち制止ボルト5が輪郭部3内に嵌まり込み、端面プレート15,26を含む出力駆動部16及びねじ山付きスピンドルを有する中間要素がロック位置にある状態で本発明のロック1を示している。図示の状況では、両方のばね7,8は、これらが応力を受けていない位置にある。
【0076】
図2は、図1の本発明のロック1を同じ図で示している。図1とは対照的に、施錠機構体は、図2では、開放又は解錠動作位置にある。開放位置では、ボルト2を図2に示されているように引き戻すことが可能である。図2の引き戻し状態のボルト2は、ロック1のハウジング内には完全には保持されていない。したがって、ボルト2を更に引き戻すことができる。
【0077】
制止ボルト5は、その非ロック位置にあり、その結果、ボルト2の輪郭部3は、解除され、ボルト2を自由に動かすことができる。制止ボルト5をこの非ロック位置に動かすため、ねじ山付きスピンドルは、その引き戻し位置にあり、即ち、図2に示されている配置関係において右側にできるだけ遠くまで動かされている。施錠機構体の他の要素の相対的配置状態は、図1に示されている配置状態に類似している。図2に示されている位置では、制止ボルト5は、リミットスイッチ29aを作動させ、このリミットスイッチは、制止ボルト5が非施錠動作位置にあり、即ち、ロックを解錠することができるという信号を出す。
【0078】
リミットスイッチ29a,29bの作動は、制止ボルト5の瞬時位置を定めるために用いられる。これは、一方においては、特に複数個のロックを有するロックシステムの目的上、それぞれのロック1の閉鎖又は施錠状態をモニタして記録するのに有用である。他方、制止ボルト5の非ロック位置を信号で知らせるリミットスイッチ29aの作動は、時間間隔の開始を定め、この時間間隔の後に、ねじ山付きスピンドルが入力駆動装置18によって自動的に再び戻される。さらに、制止ボルトの位置に関するリミットスイッチ29a,29bのうちの一方を用いて、指標(例えば発光ダイオード)を生じさせることが可能であり、それにより、ユーザは、ロックがロックされているかいなかを判定することができる。
【0079】
図2では、既に説明した図1の場合と同様、2つのばね7,8は、応力を受けていない位置にあり、即ち、ばね7,8のうちのいずれも圧縮されていない。
【0080】
図3は、2つの図、即ち、図1及び図2に示されているのと同一のロック1を示している。制止ボルト5は、施錠動作位置にあり、即ち、制止ボルト5は、ボルト2の輪郭部3内に嵌め込まれている。しかしながら、2つのばね7,8が応力を受けていない図1に示されている状況とは対照的に、ばね8は、この場合、応力を受けている。
【0081】
ねじ山付きスピンドルは、ロック1を解錠する位置にある。この位置では、ねじ山付きスピンドルは、雄ねじ23を介して後部まで押されており、第1のプレート25は、雄ねじ23を介して圧力をばね8に及ぼしている。ばね8は、圧縮されており、それ自体、圧力を第2のプレート26に、したがって、出力駆動部16に及ぼしている。この図3に示されている状況は、制止ボルト5が例えばユーザにより固定された場合に生じることがあり、ボルト2が制止ボルト5に圧接されている。この場合、制止ボルト5を自由に動かすことができないので、ねじ山付きスピンドルの開放運動により、ばね8の圧縮が生じる。制止ボルト5をクランプしている力を除くやいなや、ばね8の力により、ねじ山付きスピンドルの運動が出力駆動部16に伝達され、それにより、制止ボルト5を非施錠動作位置に動かすことができる。
【0082】
図4は、制止ボルト5が非施錠動作位置にあるロックの状態を示している。ボルト2は、制止ボルト5がボルト2の輪郭部3内に嵌まり込むことができないように引き戻されている。しかしながら、図4に示されている状況では、ねじ山付きスピンドルは、ロック位置にある。ねじ山付きスピンドルは、その運動を停止リング34を介して出力駆動部16に伝達する。この動作中、出力駆動部16は、この端面に連結されている第3のプレート14と一緒に前方に動かされる。第3のプレート14が出力駆動部16と一緒に動いた結果として、第3のプレート14は、力をばね7に及ぼし、その結果、ばね7は、制止ボルト5と出力駆動部に取り付けられている第3のプレート14との間で圧縮される。制止ボルト5がボルト2の輪郭部3内に嵌まり込むことができるやいなや、ボルト2は、再びその閉鎖位置に向かって前方に押されるので、ばね7は、力を制止ボルト5の運動に変換し、制止ボルトをそのロック位置に動かす。
【0083】
図5は、本発明のロックの断面側面図である。この図は、回転取っ手4、及び回転取っ手4内の中央に収容されていて、回転取っ手4の表面からロックの底部まで延びる押しボタン31を示している。ロックの底部では、押しボタン31は、接触要素と相互作用し、その結果として、押しボタン31の作動により信号を出し始めることができ、それにより、ロックの非施錠動作が開始される。ロックが解錠されるやいなや、ボルト2を回転取っ手4によって戻すことができる。適当なトランスポンダが本発明のロックの受け入れ領域内に配置されるやいなや、解錠動作は、押しボタン31を作動させた後、1秒のほんの数分の一で起こる。
【0084】
図6は、家具の扉32内に設置された本発明のロックを示している。ロックは、外壁36と内壁37との間で扉32内に収納されている。外壁36及び内壁37は、例えば、金属で作られるのが良い。加うるに、ロックを、ロックの寸法形状に一致するよう形作られた凹部を有する中実扉32内に設置することも可能である。ロックは、扉32の縁部のところに位置決めされ、ロックのボルト2がその施錠動作位置にあるとき扉32の別の真っ直ぐな縁部を越えて突き出て扉32に設けられている停止部と相互作用し、その結果ボルト2によって扉32の開放を阻止することができるようになっている。ロックのボルト2は、外開き可能な扉32の場合、本質的に内壁37の延長部として、扉32の縁部を越えて突き出る。内開き可能な扉32の場合、ボルト2は、本質的に外壁36の延長部として同様に形成される。加うるに、ボルト2を内壁36と内壁37の両方の延長部として構成し又は扉の壁36,37相互間の凹み内に配置することも可能である。すでに図5に示したように、図6も又、ロック及び扉32の断面側面図である。ロックは、本質的に家具の扉32と同一厚さのものであり、したがって、このロックを扉32内に配置できる。図5と同様、図6も又、ロックの回転取っ手4を断面で示すと共に回転取っ手4の回転軸線に沿って回転取っ手の表面からロックの底部まで延びる押しボタン31を示している。ロックがロック解除状態にあるとき、回転取っ手4によりボルト2を引き戻すことができる。
【0085】
図7は、本発明のロックの斜視図である。すでに先の図1〜図4にも示されている要素は、底部プレート35に取り付けられている。電池27のための充填収容コンパートメントが、図の左側に示されている。ロック機構体のためのコントローラ10は、このロック機構体の横に並んで、ロックのハウジングの上方部分内に右側に配置されている。電気アクチュエータ6は、コントローラ10の下に示されている。図示のこの実施形態では、アクチュエータ6は、回転電気モータ及びこのモータの回転運動を中間要素33の直線運動に変換する伝動装置を有している。中間要素33は、図7において左側から右側に延びており、この中間要素は、制止ボルトを駆動し、この制止ボルトは、そのロック位置において、ボルト2を制止する。ロックのボルト2は、歯付きロッド9b及び歯車を介して回転取っ手4に連結され、この回転取っ手4を介してボルト2を手動で動かすことができる。押しボタン31が、回転取っ手4の中央に配置されており、ロック機構体を作動させる目的でこの押しボタンを押す。ロックのボルト2及び回転取っ手4は、図7に示されているロックの実施形態では、ロックの右側に配置されている。回転取っ手4は、ロックのハウジングの上方に取り付けられていて、円周方向溝を備えた丸形手動輪の形態をしており、かかる円周方向溝は、回転取っ手4を作動させるのを容易にする。図7は、底部プレート35に設けられた取り付け具28bを更に示しており、かかる取り付け具により、ロックを家具の扉に取り付けることができる。ロックは、全体として本質的に長方形の形をしており、この形状は、ロックの個々のコンポーネントの配置状態に適当に適合可能である。底部プレートのアラインメントに対して直角をなすロックの僅かな広がりにより、ロックを家具の扉又は壁要素内に都合良く収納することができる。
【0086】
図8は、本発明のロック及びトランスポンダとの間のその連絡状態を示すブロック図である。ロック1は、例えば、上述した実施形態のうちの1つに従って設計されるのが良い。ロックは、ボルト2及びロックを施錠したり解錠したりするために結合機構体9によりボルト2を作動させることができる手段としての回転取っ手4を有している。さらに、アクチュエータ6がロック1内に設けられ、このアクチュエータは、ボルト2を制止することができる。アクチュエータは、中央コントローラ10によって制御され、このコントローラ10は、押しボタン31に接続されると共に送信機/受信機12に接続されている。アンテナ13が送信機/受信機12に結合されている。コントローラ10及び送信機/受信機12をボルトハウジング内、アクチュエータハウジング内又はロック1の別のハウジング内に収納することができる。一例を挙げると、アンテナは、家具の外部の領域を邪魔しないで通信を保証するよう回転取っ手4の領域内に設けられるのが良い。ロック1を能動型トランスポンダ20によって開放することができ、この能動型トランスポンダは、同様に、アンテナ21を備えている。
【0087】
以下において、上述の実施形態に関する開放動作の手順について説明する。トランスポンダ20は、これが一般的に待機状態にあるよう制御され、この待機状態では、トランスポンダ20それ自体は、信号を出すことはなく、その受信機は、単に待機状態にある。これにより、エネルギーを節約することができる。トランスポンダは、所定の形式のものであり、所定のデータ内容を含む信号がアンテナ21を介して受信されたときにのみ送信機によりアンテナ21を介してそれ以外の信号を放出するよう作動される。これら信号は、所定の形態(周波数、振幅、変調)の状態にあり、これら信号は、所定のデータ内容を有し、特に、トランスポンダ20に関する識別情報を含む。
【0088】
ロック1も又、一般に待機状態にある。この状態では、送信機/受信機12は、オフに切り換えられており、アクチュエータ6は動作状態にはない。ロック1は、押しボタン31及びコントローラ10により動作状態に切り換えられる。動作状態では、送信機/受信機12は、コントローラ10によりモニタされるトランスポンダ20のための作動信号を定期的に放出し、それと同時に、送信機/受信機12は又、トランスポンダ20からの信号をいつでも受信できる状態にある。
【0089】
したがって、トランスポンダ20を装備したユーザがロック1を備えた家具に接近すると、最初にロック1とトランスポンダ20との間に通信が生じるわけではない。しかしながら、ユーザが押しボタン31を作動させるやいなや、ロック1は、その動作状態に切り換えられる。したがって、作動信号が放出され、この作動信号はトランスポンダ20によって受信される。かくして、このトランスポンダは、作動されてその識別信号を放出し、この識別信号をロック1内の送信機/受信機12によって受信することができる。
【0090】
トランスポンダ20からの識別信号に含まれている識別情報がコントローラ10に格納されている識別データに合致した場合、コントローラ10は、アクチュエータ6を作動させ、その結果、アクチュエータ6はボルト2を解除し、その結果、回転取っ手4を作動させることによりロック1を解錠することができる。作動状態のロック1の切り換え、トランスポンダ20の作動及び識別情報の交換は、極めて短時間で起こり、その結果、ユーザが回転取っ手4を回したいと思ったとき、アクチュエータ6は、適当なトランスポンダ20によって既に作動されているようになっている。したがって、ユーザは、便利ではないということで煩うことはない。というのは、トランスポンダ20とロック1の両方は、一般には、これらの電力節約待機モードにあるからである。
【0091】
識別情報を種々の仕方でコントローラ10に送ることができる。最も簡単な場合、識別情報は、製造業者により例えば読み取り専用記憶装置に既に記憶されており、トランスポンダは、この場合、開放されるべきロックに対応した情報を備えている。したがって、ロック計画が変わった場合、トランスポンダレベルで変更を実施する。しかしながら、ロックは又、例えばアンテナ13及び送信機/受信機12を介するワイヤレス伝送方式によっても識別情報を遡及的にプログラムし又は変更することができるよう設計されているのが良い。さらに、各開放動作中、中央データベース中の識別情報をオンラインでチェックすることも可能であり、既存の送信/受信手段を同様にこの目的のために使用できる。
【0092】
ボルト2をいったん解除すると、一般的な方式で又は個々のロックに対して個別的に決定できる時間間隔が開始し、その終了後、アクチュエータ6はもう一度ボルト2が制止される位置まで動かされる。時間間隔は、典型的には、2〜3秒である。ボルト2の解除とアクチュエータ6の引き戻しとの間の時間間隔以内で、回転取っ手4を作動させることができ、かくして、ロック1を開放することができる。本発明に従って構成されると共に図1〜図4に示されているような制止機構体の構成に鑑みて、アクチュエータ6はボルト2がまだその閉鎖位置にない場合であっても静止位置に戻すことができる。これは、この状況では、コイルばね7があらかじめ応力を受けているからであり、その結果、制止ボルト5は、ロックの手動ロック後、対応の凹み内に嵌まり込んで係止することができるようになっている。時間間隔後であってアクチュエータ6を戻した後、ロックは、もう一度その電力節約待機モードに変わることができる。
【0093】
図9は、本発明のロック装置を備えた家具システムのブロック図である。このシステムは、各々が図8に示されているようなロック1.1...1.5を備えた複数個の家具を有している。ロック1.1...1.5は、一連のトランスポンダ20.1...20.7と相互作用し、この場合、融通性のあるロック計画を用いることができ、その間、各トランスポンダ20.1...20.7について、ロック1.1...1.5への接近が所望に応じて解除し又は制止されることができる。ロック1.1...1.5は、ネットワーク30を介して中央コントローラ40と通信する。特に、ネットワーク30は、ワイヤレス形態であり、例えば、ロック1.1...1.5内に設けられている送信及び受信手段を制御する。中央コントローラ40は、一方において、認可データベース41を有し、識別コードとロック1.1...1.5を解錠する上での認可との間の割当てをかかる認可データベース中に記憶させることができ、かくして、認可の中央管理が可能である。個々のロック1.1...1.5に適切な認可情報は、いずれの場合においても、中央コントローラ40を備えたネットワーク30を介してロック1.1...1.5によりオンラインでチェックでき又はロック1.1...1.5に記憶され、必要に応じて、ネットワーク30を介して中央コントローラ40によってアップデートされる。かくして、ロック計画全体をトランスポンダ20.1...20.7が交換され又は再プログラムされる必要なく、中央で管理して適合させることができる。
【0094】
他方、中央コントローラ40は、アクセスデータベース42を有し、用いられるトランスポンダ20.1...20.7の適当な時刻及び識別情報がロック1.1...1.5のうちの1つで実施される各開放動作のためにこのアクセスデータベース中に記憶される。次に、このデータに基づいて、例えばどのユーザがどの時点でどれほど多く特定のロックを作動させたかを把握することが可能である。集めたデータから統計的方法により別の情報を得ることができる。この情報の全ては、例えばユーザのための運動距離を短くするため又は互いに近い短い時間間隔で同一のユーザにより用いられることが多い家具を位置決めするために家具システムのユーザの作業環境を最適化する別のステップで利用できる。
【0095】
また、本発明のロックの種々の設計上の変更例が実現可能である。例えば、ロックは、ロックの個々のコンポーネントを互いに対して異なるように配置することにより扁平さが少ない状態で製作することができる。例えば、ロックの広がりを減少させるために異なる電池を用いることが可能である。回転モータの形態の電気入力駆動装置に加えて、リニアアクチュエータを用いることも可能であり、リニアアクチュエータは、適切に改造された伝動装置によりねじ山付きスピンドル及び制止ボルトに作用する。輪郭部は、ボルトの一コーナ部のところに設けられた凹部の形態をしていることに加えて、これとは異なって、例えば、制止ボルトがロック位置にあるとき、ボルトの運動を制止するタブの形態をした突出部として設計されても良い。ボルトに設けられた輪郭部内に軸方向に嵌まり込む制止ボルトに加えて、回動することができ、そして出力駆動部によって施錠動作位置又は非施錠動作位置に動かすことができる制止要素を用いることも可能である。コイルばねに加えて、更に又、別のばね押し要素を用いることが可能である。
【0096】
以上要約すると、本発明は、簡単な設計のものであり、大部分が従来型メカニカルロックと同一の仕方で制御されると共に使用できるメカトロニックロックを提供しているといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカトロニックロック(1)、特に家具用ロックであって、
a)前記ロック(1)を施錠するために引き戻し位置から押し進め位置に動かすことができる直線運動ボルト(2)と、
b)前記ボルト(2)を手動で作動させる作動要素(4)と、
c)前記ボルト(2)の前記押し進め位置において前記ボルト(2)の直線運動を制止するために前記ボルト(2)の側部の輪郭部(3)内に嵌まり込むことができる制止要素(5)と、
d)可動中間要素を動かす電気入力駆動装置(18)と、を有し、
e)前記ボルト(2)が引き戻されている状態で前記入力駆動装置(18)を作動させることによって第1のばね手段(7)、特にコイルばねにあらかじめ応力を加えることができるように、前記可動中間要素により前記第1のばね手段(7)を介して前記制止要素(5)を作動させることができ、前記ボルト(2)がその押し進め位置まで前方に押されると、前記制止要素(5)は、前記ボルト(2)の前記輪郭部(3)内にスナップ嵌合し、前記ボルト(2)が引き戻されるのを阻止するようになっている、ロック(1)。
【請求項2】
前記中間要素は、前記入力駆動装置(18)の作動により動かすことができる入力駆動部と、第2のばね手段(8)、特にコイルばねを介して前記入力駆動部に取り付けられている出力駆動部(16)とを有し、前記制止要素(5)が引き戻されることによって前記ボルト(2)が解除される時に、前記制止要素(5)が前記ボルト(2)の前記輪郭部(3)内でつかえて動かなくなった場合に、前記入力駆動装置(18)を作動させることにより前記第2のばね手段(8)に応力を加えるようになっている、請求項1記載のロック(1)。
【請求項3】
前記入力駆動装置(18)は、回転シャフトを備えた電気モータにより構成され、前記回転シャフトを回転させることにより伝動装置(17,19)を介して前記中間要素を動かすことができる、請求項1又は2記載のロック(1)。
【請求項4】
前記中間要素の前記入力駆動部は、ねじ山付きスリーブであり、前記ねじ山付きスリーブは、外部輪郭部(22)を介して前記伝動装置の輪郭出力シャフト(19)と相互作用し、前記外部輪郭部は、前記輪郭出力シャフト(19)に回転的に固定された状態で連結されている、請求項2に従属した請求項3記載のロック(1)。
【請求項5】
前記制止要素(5)は、直線運動可能な制止ボルトにより形成されている、請求項1〜4のうちいずれか1項に記載のロック(1)。
【請求項6】
前記中間要素の前記入力駆動部及び前記出力駆動部(16)、前記制止ボルト(5)並びに前記第1及び前記第2のばね手段(7,8)は、同一軸線上に配置されている、請求項2に従属した請求項5記載のロック(1)。
【請求項7】
前記出力駆動部(16)は、前記ねじ山付きスリーブ内で可動的に案内され、前記出力駆動部は、前記制止ボルト(5)から遠ざかった側の前記ねじ山付きスリーブの側部から、前記制止ボルト(5)の方に向いた側の前記ねじ山付きスリーブの側部まで延び、圧縮ばねが、前記第2のばね手段(8)として、前記ねじ山付きスリーブと前記制止ボルト(5)から遠ざかった側の前記出力駆動部(16)の端部との間に配置され、停止リング(34)が、前記ねじ山付きスリーブと前記制止ボルト(5)の方に向いた側の前記出力駆動部(16)の端部との間に配置され、前記制止ボルト(5)の方に向いた側の前記出力駆動部(16)の端部は、前記第1のばね手段(7)に作用する、請求項4に従属した請求項6記載のロック(1)。
【請求項8】
前記作動要素(4)は、前記ボルト(2)を作動させるために回転させることができる、請求項1〜7のうちいずれか1項に記載のロック(1)。
【請求項9】
前記作動要素(4)は、歯付きロッド入力駆動装置(9a,9b)により前記ボルト(2)に結合され、前記歯付きロッド入力駆動装置(9a,9b)は、前記作動要素側に設けられた第1の歯車状歯形システム(9a)、及び前記歯車状歯形システムと永続的に相互作用し、前記ボルト側に設けられている歯付きロッド状歯形システム(9a)により構成されている、請求項8記載のロック(1)。
【請求項10】
適当にコード化されたトランスポンダ(20)を前記ロック(1)の受け入れ領域内に動かしたときにのみ前記ロック(1)を解錠することができる、請求項1〜9のうちいずれか1項に記載のロック(1)。
【請求項11】
能動型トランスポンダ(20)を作動させて識別信号を放出させるために作動信号を放出することができる送信機(12)を有する、請求項10記載のロック(1)。
【請求項12】
前記送信機(12)を作動させて前記作動信号を放出させ又は受動型トランスポンダ(20)を読み取ることができるようにする手段としての制御要素(31)、特に押しボタンを有する、請求項10又は11記載のロック(1)。
【請求項13】
前記制御要素(31)は、前記回転可能な作動要素(4)の回転シャフト内に設けられた押しボタンの形態をしている、請求項8に従属した請求項12記載のロック(1)。
【請求項14】
前記ロック(1)を制御するコントローラ(10)を有し、コントローラは、前記制止要素(5)の開放動作後の所定の時間間隔後に前記電気入力駆動装置(18)を自動的に作動させて前記ボルト(2)の位置に応じて、前記制止要素(5)を前方に動かすと共に前記第1のばね手段(7)に応力を加えるようにロックを制御する、請求項1〜13のうちいずれか1項に記載のロック(1)。
【請求項15】
前記ロック(1)は、前記制止ボルト(5)の瞬時位置を検出することができる手段としてのセンサ(29a,29b)を備えている、請求項1〜14のうちいずれか1項に記載のロック(1)。
【請求項16】
前記電気入力駆動装置(18)には電池により電力が供給される、請求項1〜15のうちいずれか1項に記載のロック(1)。
【請求項17】
前記ロック(1)は、電池電圧を測定する装置を有し、前記ロック(1)は、所定の第1の電池電圧をアンダーシュートしているときに警報信号を鳴らし、前記第1の電池電圧よりも低い所定の第2の電池電圧をアンダーシュートした後は、特定的にコード化されたトランスポンダ(20)によってのみ前記ロック(1)を解錠することができるよう制御される、請求項16記載のロック(1)。
【請求項18】
請求項1〜17のうちいずれか1項に記載のロック(1)を少なくとも1つ有する家具。
【請求項19】
前記ロック(1)は、前記家具の扉(32)の外壁(36)と内壁(37)との間に保持される、請求項18記載の家具。
【請求項20】
装置であって、
a)少なくとも2つの家具構造体を有し、前記家具構造体の各々は、少なくとも1つのメカトロニックロック(1.1...1.5)、特に請求項1〜17のうちいずれか1項に記載のロックを有し、
b)前記ロック(1.1...1.5)を解錠する少なくとも2つのトランスポンダ(20.1...20.7)を有し、第1の識別コードを前記トランスポンダのうちの第1のトランスポンダ(20.1)に割り当てることができ、前記第1の識別コードと同一ではない第2の識別コードを前記トランスポンダのうちの第2のトランスポンダ(20.2)に割り当てることができ、
c)中央制御装置(40)を有し、
d)データを前記中央制御装置(40)と前記ロック(1.1...1.5)との間で伝送できるようにする手段としてのネットワーク(30)を有する、装置。
【請求項21】
前記中央制御装置(40)は、識別コードと前記ロック(1.1...1.5)を解錠するための認可との間の割当てを記憶することができる認可データベース(41)を有し、かくして、認可の中央管理が可能である、請求項20記載の装置。
【請求項22】
前記中央制御装置(40)は、複数のユーザに対する前記ロック(1.1...1.5)の解錠動作の評価を可能にするよう識別コードと前記ロック(1.1...1.5)の前記解錠動作との間の割当てを記憶することができるアクセスデータベース(42)を有する、請求項20又は21記載の装置。
【請求項23】
少なくとも2つの家具構造体を有する作業環境の使用の検出方法であって、前記家具構造体の各々は、少なくとも1つのメカトロニックロック(1.1...1.5)、特に請求項1〜17のうちいずれか1項に記載のロックを有し、前記方法は、
a)前記ロック(1.1...1.5)を解錠するトランスポンダ(20.1...20.7)を作業環境のユーザに発行するステップを有し、互いに異なる識別コードが互いに異なるトランスポンダ(20.1...20.7)に割り当てられ、
b)解錠動作中、それぞれの識別コードをそれぞれのメカトロニックロック(1.1...1.5)により検出するステップを有し、
c)前記識別コードを中央データベース(42)に送るステップを有し、
d)1つのロック(1.1...1.5)と1つの識別コードとの間の割当てを前記中央データベースに記憶させるステップを有する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−500997(P2011−500997A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529208(P2010−529208)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000395
【国際公開番号】WO2009/049433
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(391029440)ウーエスエム ホールディング アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】