説明

家電機器および、その制御方法、プログラム

【課題】無線通信に影響するようなノイズを発生する家電機器においても、確実安全に遠隔制御できる。
【解決手段】洗濯機2は、洗濯機2のモータ13、電磁弁14など不要電波源となる負荷運転状況のノイズ強度を計測する。外部コントロール機器1からの無線制御電文を無線手段11を受信した際には、この無線制御電文の電波強度を計測してノイズ強度と比較してS/Nを算出し、予め設定した閾値と比較して十分なS/Nが取れない場合は、無線制御伝聞を破棄する。本方法により、負荷運転により無線通信の妨げとなるような不要電波を生じる恐れのある家電機器においても、確実に無線通信が行え、外部コントロール機器からでも安全確実に家電機器の遠隔制御を行えるようなシステムに広く適用することができる方式を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電機器に無線通信手段を備えてリモート制御や消費電力の見える化といったシステムを構築する際に、特にモータの運転や給湯器のバーナーの点火など、家電機器の負荷運転により発生するノイズに起因した誤通信の発生により、安全確実な家電機器の制御が行えない課題において、安全確実な無線通信を実現する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家電機器では、家電機器を外部コントロール機器から制御することにより、家電機器の運転状態を遠隔で把握し、調理の完了などを居ながらにして把握できる他、これらの外部コントロール機器をインターネット回線などに接続することにより、帰宅前に風呂の準備や部屋の暖房しておくなどの生活の利便性が高められるようになっている。
【0003】
しかしながら、家電機器には、水や湯、熱を扱う機器も多く、目の届かないリモート制御は、確実安全に行われることが必須であり、誤通信により機器が意図した動きと異なる制御がされない様に万全の体策が必要である。
【0004】
特に、無線通信においては、同じ周波数を用いた他システムの通信や、機器自身が発する不要輻射ノイズなどの影響により、誤通信が起こらないような体策を考慮しておくことが必要である。
【0005】
こうした一例として、ボイラの遠隔制御において、ノイズの影響を受けた通信を排除する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1では、ボイラを遠隔操作装置で遠隔制御する際の電文内容にエラー検出コードを付加し、エラーが検出された場合には、該当の電文内容は廃棄して有効として扱わず、該当の電文内容に従った制御を行わないようになっている。これにより、通信エラーにより不必要なボイラの運転停止が発生し、ボイラの稼働率が低下し、ひいてはこれに起因した工場の操業効率が低下しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−038404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、エラー検出符号では、多重ビット誤りが発生した場合など、ビット誤りが発生しても検出できない場合がある。更に検出能力の高いビット検出符号やエラー訂正符号を用いた場合でも、付加するデータ量が大きくなる上、電文長が長くなるため、それだけエラー発生頻度も大きくなってしまう事が懸念されるなど、エラー検出コードのみでは十分な体策とは出来ない課題がある。
【0009】
従って、特許文献1のようにエラー発生時の対応などにも習熟した操作者が常時配置されている工場などでの運用と異なり、家庭などでの家電機器に関しては、誤制御による影響が大きくなる懸念が想定される。
【0010】
一方、家電機器への無線通信手段の設置方法を考えると、マイコンなどで構成する制御手段が金属部材で遮蔽される事が多い、電波伝搬品質を改善のために樹脂筐体の内側に固
定して家電機器の筐体表面近くに配置するといった構成上、制御手段と無線手段をリード線などで接続するケースが多く考えられる。
【0011】
このため、ノイズの原因としては、家電機器のモータやパワー素子などの負荷運転時のノイズが、これらのリード線をアンテナとして無線手段にも伝播して、更に大きなノイズの主原因となると考えられる。
【0012】
ノイズによる無線通信エラーを避ける方式としては、送信する前に使用する無線周波数帯での電波強度を計測して他のシステムの無線通信電波やノイズなどの状況を調べ、周辺の電波強度が所定の閾値(以下、キャリアセンスレベル)を越える場合は送信を待ち合わせるキャリアセンス方式が広く公知となっている。
【0013】
しかしながら、キャリアセンス方式では周辺の不要電波の影響を極力避けて送信を行うタイミングを決める指標とはできるが、送信側での電波状況の判定である上、送信前のごく一時的な電波状況をチェックするに過ぎないため、実際の送信電文や、遠く離れた受信側での通信エラーの発生具合についての判断の指標とするには課題がある。
【0014】
このため、無線通信手段を備える家電機器においては、ノイズ原因となる負荷制御は自機器の制御手段で制御するため、当然負荷運転タイミングを正確に判断でき、この負荷運転時を避けることが最も簡便かつ有効な方法であると考えられるものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記従来の課題を解決するために、外部コントロール機器と自機器状態や制御内容を通信する無線通信手段と、前記自機器の制御を行う制御手段と、不要電波源となる負荷を制御する負荷制御手段とを備えた家電機器において、前記負荷の動作状態ごとに前記無線手段が受信する不要電波強度を予め計測して記憶すると共に、前記外部コントロール機器から前記無線手段が受信する無線電波強度を計測し、前記無線電波強度と、該当する前記負荷の動作状態での前記不要電波強度の相対比が、予め設定した閾値より小さい場合は無線通信を行わない、もしくは無線通信内容は無効とする、の少なくとも何れか一方を行う構成としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特に一般的な家電機器の遠隔操作を行う際に、エラー原因となる家電機器の負荷運転に起因するノイズによる通信エラーを避け、通信エラーを伴う電文により、家電機器の意図しない制御操作や実際のユーザ操作と異なる内容の家電機器制御の発生を防止し、家電機器をより安全、確実に遠隔制御できうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1における家電機器の構成の一例を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における家電機器の無線手段での電界強度の計測値の変化の一例を示すタイムチャート
【図3】本発明の実施の形態1における家電機器(洗濯機)の負荷運転状態(工程状態)により通信内容の有効無効の判定閾値を設定するテーブルの一例を示す図
【図4】本発明の実施の形態1における家電機器の制御方法の動作の一例を示す動作フロー図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、外部コントロール機器と自機器状態や制御内容を通信する無線通信手段と、前記自機器の制御を行う制御手段と、不要電波源となる負荷を制御する負荷制御手段とを備えた家電機器において、前記負荷の動作状態ごとに前記無線手段が受信する不要電波強
度を予め計測して記憶すると共に、前記外部コントロール機器から前記無線手段が受信する無線電波強度を計測し、前記無線電波強度と、該当する前記負荷の動作状態での前記不要電波強度の相対比が、予め設定した閾値より小さい場合は無線通信を行わない、もしくは無線通信内容は無効とする、の少なくとも何れか一方を行う構成としている。
【0019】
これにより、家電機器の負荷運転状況により、受信する無線電文の信号対ノイズ強度(S/N)を判定して、エラー発生率高い負荷運転状況での遠隔制御内容を破棄できるため、安全確実な家電機器の遠隔制御が可能となる。
【0020】
第2の発明は、第1の発明は、前記負荷の動作状態ごとに前記無線手段が受信する不要電界強度信号の計測値は、前記無線手段が使用する無線周波数ごとに計測する構成としている。
【0021】
これにより、複数の周波数から通信に使用されてない周波数を選択して数新するような形態においても、最適な判定ができるようになっている。
【0022】
第3の発明は、所定の不要電界強度信号の強度閾値を越える前記負荷の動作状態で、前記家電機器の機器状態に関する無線通信を行うが、前記負荷の動作状態を制御する無線通信は行わない、もしくは無効とする構成としている。
【0023】
これにより、家電機器の状態を問い合わせるといった、万が一通信エラーが発生しても家電機器の安全性に関しては影響の少ないと考えられる無線通信に関しては、家電機器の運転状況による遅延が発生しないようにしている。
【0024】
第4の発明は、前記負荷運転に際して、前記家電機器は前記外部コントロール機器に関して負荷運転期間の開始と終了を知らせる電文を送信して、前記負荷運転期間は、前記家電機器が前記負荷運転期間の負荷運転の一時停止タイミングにおいて電文の有無を問い合わせる問合せ電文を送信し、外部コントローラは前記問合せ電文を受信してから所定時間内に応答電文を返送することにより有効な無線通信を行う構成としている。
【0025】
これにより、家電機器側の負荷運転が頻繁に発生する場合でも、極力遅延の発生しない無線通信が可能となっている。
【0026】
第5の発明は、外部コントロール機器へ自機器状態や制御内容を通信する無線通信手段と、前記自機器の制御を行う制御手段と、不要電波源となる負荷を制御する負荷制御手段とを備えた家電機器において、予め計測した前記負荷の動作状態ごとに前記無線手段が受信する不要電波強度を計測するステップと、前記無線手段が受信する無線電波強度を計測するステップと、前記不要電波強度と前記無線電波強度の相対比を所定の閾値と比較判定するステップと、前記相対比が前記所定の閾値より小さい場合は無線通信を行わない、もしくは無線通信内容は無効とする、の少なくとも何れか一方を行うステップ、とを備えた家電機器の制御方法となっている。
【0027】
これにより、家電機器の負荷運転状況により、受信する無線電文の信号対ノイズ強度(S/N)を判定して、エラー発生率高い負荷運転状況での遠隔制御内容を破棄できるため、安全確実な家電機器の遠隔制御が可能となる制御方法となっている。
【0028】
第6の発明の態様は、上記家電機器、又は上記コントローラ機器の機能をコンピュータに実装させるためのプログラムである。
【0029】
これにより、プログラムなので、プログラム更新装置の変更や配布などが簡単にできる
ようになっている。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の本実施の形態1における家電機器の構成の一例を示したブロック図である。
【0031】
図1は、外部コントロール機器1、家電機器の一例として洗濯機2のブロック図を示している。外部コントロール機器1は、機器全体の制御を行う制御手段4、各家電機器の無線手段と通信するための無線手段9、各家電機器の状態などを表示する液晶装置やLEDなどの表示デバイスから構成するLCD6、LCD6への表示内容を制御する表示制御手段5、ユーザの操作入力を行うスイッチ(以下、SWと略記)などの入力デバイスから構成するSW7、インターネットなどに接続する広域通信手段3を備える。制御手段4は、マイコンおよびその周辺回路で構成する。
【0032】
洗濯機2は、洗濯機全体を制御する制御手段10、外部コントロール機器1と通信する無線手段11、モータ13、電磁弁14などの消費電力の大きい負荷の運転や停止を制御する負荷制御手段12、15を備える。負荷制御手段12、15は、IGBTなどの大電力のスイッチング素子やリレーなどの回路で構成する。また、外部コントロール機器1と同様に、制御手段10はマイコンとその周辺回路で構成する。
【0033】
洗濯機2の制御手段10は、現在の運転工程が、「洗い」「すすぎ」「脱水」であるといった運転状況や洗濯運転終了までの残り所要時間、タイマ予約情報などの情報を含んだ無線電文を無線手段11により外部コントロール機器1のLCD6に表示を行うように構成する。また逆に、SW7で操作した内容や、屋外で携帯電話などで操作した内容をインターネットなどの広域通信手段3を経由して受付、これらの制御指示内容を含んだ無線電文を無線手段9から洗濯機2の無線手段11に送信し、洗濯機2の制御を行うように構成する。
【0034】
一般的に、家電機器への無線通信手段の設置方法を考えると、マイコンなどで構成する制御手段が金属部材で遮蔽される事が多い、電波伝搬品質を改善のために樹脂筐体の内側に固定して荷電危機の表面近くに配置するといった構成上、制御手段と無線手段をリード線などで接続する構成をとらざるを得ず、本実施の形態1の洗濯機2でも、本体筐体内側に無線手段11を設置する構成とする。
【0035】
このため、ノイズの原因としては、家電機器のモータやパワー素子などの負荷運転時のノイズがこれらのリード線をアンテナとして無線手段にも伝播してノイズ源となることが主原因となると考えられる。
【0036】
家電機器、特に白物家電では、モータなど消費電力の大きい負荷や、IHクッキングヒータなどのように高温を発生するものなどがあり、人の目が届かない遠隔操作で運転を始めると、事故などに繋がる懸念もある。
【0037】
従って、家電機器の制御を始めるなどの無線電文は、通信エラーを起こすこと無く通信できる事が必須条件である。
【0038】
このため、本実施の形態1での無線通信においては、自機器の制御手段でノイズ原因となる負荷制御するため、負荷運転タイミングを正確に判断できるため、この負荷運転時の通信を避ける、または、無線での制御電文を有効にしない制御を行う構成とする。
【0039】
以下、図2により負荷運転時の通信エラーを避ける方法の一例について説明する。図2
は、不要電波の電界強度と外部コントロール機器1および洗濯機2の無線手段の通信電文の電波強度を計測した場合の時間変化の一例を示したタイムチャート図である。
【0040】
図2の縦軸は、ある電波強度を基準として、その比率を対数目盛りで表示するものであり、上部に向かうほど信号強度が大きいことを示す。また、横軸は、電波強度の時間変化を示したものである。細い実線17で示すグラフは、家電機器のモータなどの負荷動作に伴うノイズ信号による不要電波強度の時間変化を示す。太い実線16で示す洗濯機2の無線手段11で受信する無線通信の電界強度値16の時間変化を示す。
【0041】
例えば、一例として図2では、洗濯機2のモータ13などの負荷運転が行われていない時刻Tn0〜Tn1、時刻Tn2〜Tn3、時刻Tn4〜Tn5では不要電波強度が、平均的にRn〔off〕の低い値を示す。一方、モータ13などの負荷運転が行われている時刻Tn1〜Tn2、時刻Tn3〜Tn4では、平均的にRn〔on〕の高い値を示す。
【0042】
また、洗濯機2の無線手段11で外部コントロール機器1の無線手段9からの無線通信電文の電界強度値17は、無線電文を受信している、時刻Ts1〜Ts2、時刻Ts3〜Ts4、時刻Ts5〜Ts6では、平均的にRs〔on〕の高い値を示す。一方、洗濯機2の無線手段11で無線電文を受信していない、時刻Ts0〜Ts1、時刻Ts2〜Ts3、時刻Ts4〜Ts5、時刻Ts6〜Ts7では、平均的にRs〔off〕の低い値を示す。
【0043】
従って、時刻Ts1〜Tn1のように洗濯機2のモータ13などの負荷停止中は、不要電波強度と無線電文強度の比であるS/Nが、図2の負荷停止中のS/N18に示すように、(Rs〔on〕−Rn〔off〕)と大きく受信できる。
【0044】
一方、時刻Tn1〜Ts2のように負荷運転中は、負荷運転中のS/N17に示すように(Rs〔on〕−Rn〔on〕)と小さくなる。図2では、縦軸を対数軸で記述するため、目盛りの差が電波強度の比となる。
【0045】
無線通信では、不要電波強度と無線電文強度の比であるS/Nが小さいほど、通信エラー率が増大することは公知であり、従って、予め閾値を設けてS/Nが本閾値より小さい場合は、無線通信を行わない、若しくは、通信内容を破棄することにより、通信エラーにより制御内容の誤った家電機器の運転をすることのない、確実な制御動作を可能にできうるものである。
【0046】
この際の閾値は、無線電文の周波数や変調方式、回路構成など設計内容を考慮した電波強度ごとの通信エラー率値や、無線電文の長さから決定すると最も有効である。
【0047】
図2において、洗濯機2のモータやIHクッキングヒータの加熱コイルなどの消費電力の大きい負荷運転を行う家電機器においては、不要電波強度は負荷運転により生ずるものが圧倒的に大きい場合が多い。更に、負荷運転の開始タイミングや、運転停止のタイミングは、該当家電機器の制御手段が決定する。このため、予め各負荷の負荷運転時の不要電波強度Rn〔on〕を計測しておけば、洗濯機2の無線手段11など、家電機器の無線手段で受信した無線電文のS/Nを計測することができ、予め設定したS/Nの閾値と比較して、通信エラー率が高いと判断できる状況での無線電文の受信を中断したり、受信した無線電文の制御内容を実行せず無効にする、といった通信エラーの発生が予測される状況での無線電文を無効にする判断ができ、よりユーザ所望の操作と異なる制御を実行したりすることのない、確実な無線通信が可能となる。
【0048】
図3に、洗濯機2での運転工程ごとのRn〔on〕を設定したテーブルの一例を示す。
このテーブルは、洗濯機2の内部に設けられた記憶手段(図示せず)に記憶されている。図3の第1列は、洗濯機2の運転工程を示し、第2列は第1列に示す運転工程での不要電界強度Rnを示している。
【0049】
なお、図3の第1列は洗濯機2の運転工程ごとの項目でテーブルを作成しているが、負荷運転状態ごとの項目でテーブルを作成する方法も有効である。例えば、脱水モータ高速回転時、脱水モータ低速回転時、給水弁開放時、といった負荷状態別にする方法である。
【0050】
この他、複数の負荷が同時に運転されるような家電機器では、負荷毎に、負荷運転中の不要電波強度Rn〔on〕を計測しておき、該当の組み合わせの負荷運転状態のRn〔on〕を個別の負荷運転状態のRn〔on〕を加算してRn〔on〕を決定する方法も可能である。
【0051】
更に、すすぎ工程のように、モータの運転停止が繰り返されるような工程では、不要電波強度Rn〔on〕が最も大きくなる負荷運転状態のRn〔on〕を計測して該当工程のRn〔on〕とする方法も有効である。
【0052】
加えて、図3のテーブルは、家電機器の出荷前に機種ごとの測定値をデフォルト値のテーブルとして予めプログラムの一部として記憶しておく方法や、家電機器1台づつに試運転モードを設けて図3のテーブルを作成や更新する方法も有効である。
【0053】
更には、デフォルトのテーブルは予め記憶しておき、実際の運転時に該当の運転工程に移行した直後に再度測定してテーブルを更新する方法も有効である。特に、洗濯機のモータ運転では、洗濯する衣類の量や質により、モータの負荷状況が変わり、不要電波強度Rn〔on〕も変動する場合があり、この実運転でのテーブル更新は非常に有効であると考えられる。
【0054】
また、以上の説明では、無線周波数を切替えて無線通信を行う構成については説明していないが、一般には複数の無線周波数帯を切り替えて通信を行う方法が一般的である。複数の無線周波数帯を切り替えて無線通信を行う場合には、それぞれの無線周波数帯の不要電波強度Rn〔on〕を計測して判定に用いる方法も可能である。
【0055】
この他、無線通信においては、データを通信するデータ転送速度によっても、エラー発生率が異なることが知られている。このため、無線周波数帯の違いに加えて、無線手段の使用するデータ転送速度ごとに通信内容を無効とするかどうかの閾値を変更する構成も有効である。
【0056】
更に、以上の説明では、洗濯機2などの家電機器側で無線電文ごとに電波強度を計測する例を説明したが、本実施の形態1の洗濯機2のように大型の家電機器の場合には、家電機器の設置場所が移動されることが稀であり、外部コントロール機器1も設置場所が固定されている場合には、洗濯機2と外部コントロール機器1間の無線電文の電波強度は平均的にはほぼ一定なRs〔on〕となる。従って、Rs〔on〕を予め計測して判定に用いれば、洗濯機2において、無線電文毎に電波強度を計測する処理が不要となり、洗濯機2の無線手段11での処理を一層簡便に出来うるものである。
【0057】
一例として、無線通信のシステムでは、通信相手を決定しておくために設置時に通信相手の情報や暗号化のキーワードなどを初期交換して記憶するペアリングと呼ぶ無線通信処理を行うのが一般的である。ペアリング処理中は、家電機器の負荷運転などは行われないため、このペアリング処理中の無線電文を計測してRs〔on〕を決定すれば、変動の少ない安定な計測が出来、特別なRs〔on〕計測処理を導入する必要がなく有効なもので
ある。
【0058】
以下、図4の動作フロー図を用いて、洗濯機2の制御手段10の動作内容の一例を説明する。図4の動作フロー図は、本実施の形態1の無線通信に関わる部分のみを示している。
【0059】
なお、図4の動作フロー図では、図3に一例を示したテーブルは、デフォルト値を用い、実運転の運転工程が移行直後にRn〔on〕を再計測して更新する方法で説明する。
【0060】
外部コントロール機器1は、制御手段4でマイコンのプログラムが起動され周辺回路の初期設定が終了した後に家電制御を行う信号の待ち受け処理が開始されると(ステップS201)、ユーザのSW操作やインターネット回線から広域通信手段3を通しての通信内容などから洗濯機2に送信する無線電文があるかどうかを判断する(ステップS202)。送信する無線電文がある場合は無線ステップS203に進んで、無線電文を送信する。送信する無線電文がない場合は、再びステップS202に戻ってユーザのSW操作の待ち受けや広域通信手段3を通しての通信処理を継続する。
【0061】
一方、洗濯機2は電源が投入され制御手段10による制御処理が開始されると(ステップS101)、電源投入直後は、運転待機工程となるが、まず運転工程(負荷運転状態)が変化したかどうかを判定する(ステップS102)。
【0062】
ステップS102で、運転工程が変化していれば(YESの場合)、該当負荷運転時の不要電波強度Rn〔on〕を計測し始める(ステップS103)。そして、所定時間計測を行い、計測が正常に完了したかを判断する(ステップS104)。ここで、計測が正常に完了しない場合とは、例えば、計測開始直後に、たまたま近隣の他の類似システムの電波を受信して、自システムの無線電文かどうかを判定するために、一旦無線電文の受信処理に移行してしまい安定した計測時間が確保できなかったケースや、一時的に外部からのバースト的なノイズを受けて非常に変動の大きい信頼性の低い計測値が得られたケース、などといった場合である。
【0063】
ステップS104において、計測が正常に完了したと判断された場合は、制御手段10は計測値を該当負荷運転に対応した不要電波強度Rnとして、記憶手段に記憶されているテーブルの書き換えを行う(ステップS105)。一方、ステップS104において計測が正常に完了したと判断されなかった場合は、記憶手段に記憶されているテーブルから該当負荷運転に対応した不要電波強度Rnを取得する(ステップS106)。
【0064】
ステップS105やステップS106により該当負荷運転に対応した不要電波強度Rnを把握できた場合、あるいはステップS102において運転工程が変化していない場合は、外部コントロール機器1からの無線電文を待ち受ける(ステップS107)。
【0065】
ステップS107で無線電文を受信しない場合(NOの場合)は、再び上記ステップS102から処理を行う。ステップS107において無線電文を受信する(S107、YESの場合)と、無線電文のデータ内容を受信すると共に、無線電文の電波強度Rs〔on〕を計測する(ステップS108)。
【0066】
ステップS108で無線電文の電波強度Rs〔on〕を計測すると、現在の運転工程(負荷運転状態)に対応する不要電波強度Rn〔on〕との比であるS/Nを算出し、このS/Nと予め設定した所定の閾値Rthを比較する(ステップS109)。
【0067】
ステップS109でS/Nが所定の閾値Rth以上であれば(YESの場合)、受信し
た無線電文の内容を有効と判定して、ステップS111に進んで、無線電文の内容に従って洗濯機2の制御を行う。また、S/Nが所定の閾値Rthより小さければ(NOの場合)受信した無線電文の内容を無効と判定して無線電文を破棄して(ステップS110)、再びステップS102に戻って、次の無線電文を待ち受ける。なお、ステップS109、S110で無線電文を無効とする場合には、無線電文の途中で受信を中止しても構わない。
【0068】
ステップS111で洗濯機2の制御を行った後は、こちらも再びステップS102に戻って、次の無線電文を待ち受ける。
【0069】
以上の説明した構成以外にも、次のような構成を加えることも有効である。実際には、洗濯機2の負荷運転期間が長い場合、負荷停止の休止期間が短い場合などには、一旦、洗濯機2からの負荷運転が始まってしまうと、洗濯機2の停止などの無線電文を外部コントロール機器1から送信するタイミングを知ることができず、無線通信が出来なくなる恐れがある。
【0070】
この場合には、「負荷運転期間モード」を設け、本モード中は、洗濯機2から負荷運転の休止タイミングに無線電文を外部コントロール機器1に送信し、送信したい内容を外部コントロール機器1から洗濯機2に返信する構成を組み合わせることが有効である。
【0071】
具体的な構成の一例としては、以下の構成で実装が可能である。負荷運転を始める際に洗濯機2側から「負荷運転期間モード」を開始する旨の無線電文を送信すると共に、負荷運転を終了した場合には「負荷運転期間モード」を終了した旨の無線電文を送信する。「負荷運転期間モード」中は、負荷運転の休止タイミングを管理する洗濯機2は、無線電文の送受信を行うために必要な時間幅よりも長い。負荷の休止期間がある場合に、外部コントロール機器1に送信すべき無線電文があるかの問合せ電文を送信する構成である。
【0072】
なお、以上の説明では、全ての電文を一律に判定する例を説明したが、洗濯機2の現在の運転工程を問い合わせる運転状態問合の電文など、洗濯機2の負荷を制御しない電文、洗濯機2の安全性を損なう恐れのない内容に関する電文は本実施の形態1の方法による電文の廃棄は行わず、負荷の消費電力を増大するなどユーザが傍に居ない状態の遠隔操作では万が一の制御内容が通信エラーにより間違えていた場合に家電機器の2の安全運転を損なう恐れのある制御内容の無線電文については、本実施の形態1の判定方法を適用する方法も有効である。
【0073】
この他、図4の動作フロー図では、応答電文を洗濯機2側から外部コントロール機器1に返送する構成は示してないが、無線電文を廃棄したかどうかのACK/NACK電文や、運転状態内容を含んだ応答電文を返送する構成も可能なものである。
【0074】
また、本実施の形態1の方法に加え、無線電文にエラー訂正符号を付加し、このエラー訂正符号の判定結果も加えて2重の判定を行う構成でも構わない。
【0075】
最後に、本実施の形態1では、家電機器として洗濯機2を例に挙げて説明したが、HP給湯器や、IHクッキングヒータ、冷蔵庫、エアコンなどの家電機器に用いる場合でも、本実施の形態1の方法は有効なものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明にかかる家電装置は、家電機器の負荷運転状況によるノイズ状況と受信する無線電文の電波強度のS/Nを適切に判定することにより、負荷運転により無線通信の妨げとなるような不要電波を生じる恐れのある家電機器においても、確実に無線
通信が行え、外部コントロール機器からでも安全確実に家電機器の遠隔制御を行えるようなシステムに広く適用することができる方式を提供できる。
【符号の説明】
【0077】
1 外部コントロール機器
2 洗濯機
4、10 制御手段
9、11 無線手段
12、15 負荷制御手段
13 モータ
14 電磁弁
16 電界強度値
17 電界強度値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部コントロール機器と自機器状態や制御内容を通信する無線通信手段と、前記自機器の制御を行う制御手段と、不要電波源となる負荷を制御する負荷制御手段とを備えた家電機器において、前記負荷の動作状態ごとに前記無線手段が受信する不要電波強度を予め計測して記憶すると共に、前記外部コントロール機器から前記無線手段が受信する無線電波強度を計測し、前記無線電波強度と、該当する前記負荷の動作状態での前記不要電波強度の相対比が、予め設定した閾値より小さい場合は無線通信を行わない、もしくは無線通信内容は無効とする、の少なくとも何れか一方を行う構成とする家電機器。
【請求項2】
前記負荷の動作状態ごとに前記無線手段が受信する不要電界強度信号の計測値は、前記無線手段が使用する無線周波数ごとに計測する請求項1記載の家電機器。
【請求項3】
所定の不要電界強度信号の強度閾値を越える前記負荷の動作状態で、前記家電機器の機器状態に関する無線通信を行うが、前記負荷の動作状態を制御する無線通信は行わない、もしくは無効とする構成とする家電機器。
【請求項4】
前記負荷運転に際して、前記家電機器は前記外部コントロール機器に関して負荷運転期間の開始と終了を知らせる電文を送信して、前記負荷運転期間は、前記家電機器が前記負荷運転期間の負荷運転の一時停止タイミングにおいて電文の有無を問い合わせる問合せ電文を送信し、外部コントローラは前記問合せ電文を受信してから所定時間内に応答電文を返送することにより有効な無線通信を行う請求項1記載の家電機器。
【請求項5】
外部コントロール機器へ自機器状態や制御内容を通信する無線通信手段と、前記自機器の制御を行う制御手段と、不要電波源となる負荷を制御する負荷制御手段とを備えた家電機器の制御方法において、
予め計測した前記負荷の動作状態ごとに前記無線手段が受信する不要電波強度を計測するステップと、前記無線手段が受信する無線電波強度を計測するステップと、前記不要電波強度と前記無線電波強度の相対比を所定の閾値と比較判定するステップと、前記相対比が前記所定の閾値より小さい場合は無線通信を行わない、もしくは無線通信内容は無効とする、の少なくとも何れか一方を行うステップと、を備えた家電機器の制御方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の家電機器の機能をコンピュータに実装させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−235215(P2012−235215A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101078(P2011−101078)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】