説明

容器の電子線滅菌

【課題】容器に照射する放射線をより正確な強度で照射可能な方法および装置を提供する。
【解決手段】滅菌する容器10の内部に処理ヘッド5を導入し、所定時間にわたり少なくとも間欠的に前記容器10の内部で前記処理ヘッド5より放射線を出射し、前記所定時間dTにわたり少なくとも間欠的にある相対移動速度vで前記容器10の長手方向Lに前記処理ヘッド5に対して前記容器10を相対移動させる容器滅菌方法とし、前記容器10の内部に位置する前記処理ヘッド5の前記相対移動速度vは、前記所定時間dTにわたり変化し、前記容器10の内部プロファイル10aの関数として制御される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を滅菌する装置および方法に関し、特に電子線を用いて容器を滅菌する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料製造業では、まずプラスチック容器を形成し、ついで容器に飲料を充填することが知られている。これらの容器は、時として充填に先立ち内側などを滅菌する必要がある。従来技術において広く用いられている方法に、過酸化水素などの滅菌ガスを用いた滅菌がある。しかし近年、容器を滅菌する際の薬品の使用を低減する努力がなされている。またそれに伴い、たとえば紫外線や電子線など、他の手段により容器を滅菌する装置や方法も近年知られるようになっている。
【0003】
本出願人による未公開の欧州特許出願第07007977.7号によると、電子線を出射する出射指を容器に導入し、この出射指に対して容器の長手方向に容器を相対移動させて滅菌を行う方法および装置が記載されている。この工程によれば、プラスチック容器内部の効率的な滅菌が可能である。しかしながら、滅菌のために容器に対して放射線を自由に作用させられるわけではなく、その強度について上限値と下限値を設ける必要がある。下限値については、容器の効率的な滅菌に必要な線量によって決定され、線量は、滅菌する細菌など多くの要因に依存する。上限線量については、滅菌する容器が損傷しない範囲に限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願第07007977.7号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、容器に照射する放射線をより正確な強度で照射可能な方法および装置を提供することにある。また、放射線による容器の滅菌処理の改良についても意図される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の手段により上記目的が達成される。有利な実施形態やさらなる改良により、従属請求項の主題は構成される。
【0007】
本発明に係る容器滅菌方法では、滅菌する容器の内部に処理ヘッドを導入し、所定時間にわたり記容器の内部で前記処理ヘッドが放射線を出射し、前記容器は、前記所定時間にわたり少なくとも間欠的である相対移動速度で、前記容器の長手方向において、前記処理ヘッドに対して相対移動させる。本発明によれば、前記容器の内部に位置する前記処理ヘッドの前記相対移動速度は、前記所定時間にわたり変化し、前記容器の内部プロファイルの関数として制御される。
【0008】
したがって本発明によれば、容器に対する処理ヘッドの移動速度、すなわち放射線の出射位置での移動速度を、容器のプロファイルの関数として制御することが提案される。ここで移動速度の変化とは、ある移動方向における移動速度の変化を意味するものと理解され、特に移動速度の信号の変化を意味するものでない。
【0009】
処理ヘッドを固定し、それに対して容器を長手方向に相対移動させることができる。ま、容器の長手方向に処理ヘッドを移動させることや、容器と処理ヘッドをともに移動させることも可能である。
【0010】
放射線の出射と長手方向の移動は、少なくとも時おり同時に行われることが好ましく、常に同時に行われることがより好ましい。ただし、移動を小幅に行い停止段階でそのつど放射線を出射することも可能である。
【0011】
移動速度を変化させることにより、ボトルの異なるプロファイルへの適合化を図ることができる。たとえば、処理ヘッドが容器の口部を通過するときは、容器の内壁が処理ヘッド付近に位置するため、より速く移動することができる。ここで容器の内部プロファイルとは、特に容器の内壁を意味するものと理解され、特に処理ヘッドに対するものとされる。
【0012】
一般的には、内面に対する相対的な放射線強度に特有である少なくとも1つのパラメータが移動中に制御される。したがって、移動速度の代わりに、処理ヘッドによる出射強度を、たとえば電子出射装置の場合には加速電圧の変化により制御することもできる。また、逆電圧を用いることも可能である。
【0013】
さらに、容器の内部プロファイルに応じて、後期に容器に到達する前の放射線の吸収を増加または減少させることもできる。これはたとえば、一定時間、意図的に処理ヘッドの冷却を行い、出射された放射線または容器の内壁に当たる放射線を冷媒により減衰させることにより可能である。また、既定的もしくは可変的に放射線を吸収する吸収要素を設けてもよい。
【0014】
ひとつの好ましい方法では、前記処理ヘッドより電荷キャリアが出射される。この場合、処理ヘッドまたは他の要素が、電子出射源と、電子を出射窓に向けて加速する加速装置とを備えていてもよい。この出射された電子により、容器の内壁が滅菌される。
【0015】
別の好ましい方法では、前記移動は記憶装置に記憶されたデータに基づいて制御装置により制御され、前記データは前記容器の前記長手方向における前記容器の断面に特有である。たとえば容器のより広い断面を有する後段の部分では、容器に対する処理ヘッドの移動速度を減少させ、断面の狭まった部分では、容器に対する処理ヘッドの移動速度を増加させることができる。
【0016】
このように、処理ヘッドと容器との相対移動を、所定の進行プロファイルを通して設定することができる。この場合、照射プロセス全体にわたる全進行プロファイルの作成が可能であり、このプロファイルは個別の曲線区分に分割することが好ましい。この場合、異なる行程速度と、必要があれば加速度とを、容器の各行程移動に割り当てることができる。このような分割は、容器の形状への良好な適合化を図る上で有利である。
【0017】
この場合、上記曲線区分の始点および終点、すなわち行程距離と、必要な進行速度、すなわち行程速度とを指定することができる。ついで各曲線区分を結合して進行プロファイルに対応する全体の曲線を形成することができる。この場合、各曲線区分の行程距離および進行時間を合計することにより、進行プロファイルの総行程および総プロセス時間が得られる。この場合、進行プロファイルにおける異なる速度が結合する地点において、キンクが各曲線区分間に発生する可能性がある。このようなキンクは、さらに制御を行うことで除去可能であり、適切な加速と減速により滑らかな(すなわち数学的に微分可能な)速度プロファイルを得ることができる。
【0018】
別の好ましい方法では、前記処理ヘッドの移動は、前記容器の直径の関数として制御される。ここで、特に処理ヘッドより出射される電子は、ある特定の射程を持ち、進行経路長にわたりある特定の割合でエネルギーを失う点に留意すべきである。したがって、特に容器の拡径領域においては、電子のエネルギー減少分を補えるように作用時間を長くする必要がある。
【0019】
別の好ましい方法では、前記処理ヘッドの移動は、前記容器の前記長手方向に対して前記容器の内壁が延在する方向の角度の関数として制御される。たとえば、上部から下方に向かって広がる容器部分には、容器の口部領域が設けられることが多く、この容器部分には出射された電子線が到達しにくい。したがって、この領域においても移動速度を減少させるべきである。
【0020】
上述したように、前記移動は、プログラムされた進行プロファイルに基づいて制御されることが特に好ましい。この進行プロファイルは、対応する容器から得られた経験的なデータに基づいて求めることができるが、たとえば曲率や断面など、容器のパラメータに基づいて求めることもできる。
【0021】
前記容器自体を前記長手方向に移動させることが好ましく、したがって処理ヘッドまたは出射指を一定の高さに保持することが特に好ましい。その目的のため、容器自体を長手方向に上昇または下降させるクランプを配置した支持装置を設けてもよい。
【0022】
別の好ましい方法では、容器または参照容器の内部に処理ヘッドを導入し、前記容器の内部で前記処理ヘッドが放射線を出射することにより前記進行プロファイルが求められる。前記放射線の出射の間、前記容器の長手方向に前記処理ヘッドに対して前記容器が相対移動し、前記容器の内壁に当たる放射線に特有の多数の特徴的なデータが記録される。したがってこの方法により、処理ヘッドが容器の内壁に照射する参照線量が求められる。またここで、移動と同時に電子線を出射することもでき、さらに出射と移動を少なくとも一部交互に行うこともできる。
【0023】
ひとつの好ましい方法では、前記処理ヘッドより出射される放射線に反応しそれにより前記放射線の強度に関する結果が得られる物質が前記容器の内壁に設けられる。したがって、たとえば照射測定フィルムを用いて線量測定を行うことができ、このとき測定フィルムは容器の内壁に設けられる。このようにして、処理された容器における線量分布を求めることができる。このような測定帯は、線量強度に応じて変色し、線量測定装置により評価することができる。この場合、対応するプラスチックの支持体で測定フィルムを隠し、容器壁の内部で発生する効果をシミュレートすることも可能である。さらに、測定フィルムに色素を塗布してもよい。放射線の効果により、フィルムは吸収したエネルギー量に比例して特定の色調に変色する。ついでこれらの色調を線量測定装置で読み取ることにより、照射された線量をたとえばキログレイ(kGy)単位で示すことができる。
【0024】
本発明に係る別の方法では、容器内部滅菌用進行プロファイルが求められる。この方法では、処理ヘッドが容器の内部に導入され、前記容器内部の前記処理ヘッドが、前記容器の内壁に放射線を照射し、好ましくは前記放射線を出射する間、前記容器の長手方向に前記処理ヘッドに対して前記容器を相対移動させる。本発明によれば、前記容器の内壁に当たる放射線に特有の多数のデータが記録される。このようにして得られたデータは特に後に実施する運転モードの上述の進行プロファイルの決定に利用できることから、この決定方法は上述の発明と密接に関連する。
【0025】
ただし、この測定方法は上述した実際の運転方法とは独立に実施することもできる。上述した測定方法を用いて多数の容器について測定を行い、これらの容器について得られたデータをデータベースに記憶することが好ましく、そのデータベースは後に実施する運転方法において利用できる。また、測定を行った容器について得られた値を適用することにより、すでに測定を行った容器と類似する別の容器を処理することもできる。また、測定を行う容器をたとえば類似する頭部や基部などに分けることにより、得られた測定値をさらに多くの容器に用いることができる。たとえば、ある容器の頭部が第1の測定済み容器の頭部と類似し、基部が第2の容器の基部と類似する場合などである。
【0026】
また本発明は、滅菌する容器の内部に導入可能に構成された処理ヘッドを備える容器滅菌装置に関する。前記処理ヘッドは、放射線を出射する放射線源を備え、前記装置は、処理ヘッドが少なくとも間欠的に放射線を出射する間、所定の移動速度で前記容器の長手方向に前記処理ヘッドに対して前記容器を移動させる移動装置を備える。本発明によれば、前記装置は、前記容器の内部に位置する前記処理ヘッドの相対移動速度を変化させ、前記容器の内部プロファイルの関数として前記相対移動速度を制御する制御装置を備える。
【0027】
上記処理ヘッドは、容器内に口部を介して導入可能であることが好ましく、この口部はたとえば容器本体より小さな断面を有する。上記移動装置は、所定の進行プロファイルの関数として容器を移動する駆動装置であってよく、特にリニアモータが挙げられるが、それに限定されない。
【0028】
前記放射線源は、電荷キャリア、特に電子を出射することが好ましい。ただし、たとえばX線や紫外線など、他の種類の放射線を出射することも可能である。本発明の基本概念は、このような他の種類の放射線にも適用可能である。
【0029】
別の有利な実施形態において、前記装置は、前記処理ヘッドの移動に特有である進行プロファイルを記憶する記憶装置を備える。上述したように、このような進行プロファイルは、ある特定の種類のボトルについて得られた経験的なデータから求めることができる。ただし、たとえば容器の断面や容器壁の傾斜角などを踏まえた理論上の考慮に少なくとも一部基づいて進行プロファイルを得ることも可能である。
【0030】
別の有利な実施形態において、前記装置は、滅菌する容器の画像を記録する画像記録装置を備える。この場合、画像記録データを速度制御に用いることができる。たとえば、運転モードで容器の画像を記録し、この画像を記憶された複数の容器の画像と画像処理ソフトウェアにより比較する。対応する容器が見つかれば、対応する進行プロファイルをロードし、運転モードにおける進行プロファイルに基づき処理ヘッドの移動を制御することが可能である。
【0031】
ただし、画像を記録し、この画像に基づいて容器形状を求め、その形状に基づいて処理ヘッドの進行プロファイルを制御することも可能である。また、上記2つの方法をさまざまに組み合わせて用い、直接的な幾何学的考慮と経験的なデータの両方に基づいて進行プロファイルを制御してもよい。
【0032】
別の有利な実施形態において、前記装置は、搬送装置上に互いに前後に配置された複数の処理ヘッドを備える。この場合、たとえば把持クランプなどのボトルホルダと処理ヘッドの両方を同じ搬送装置上に配置し、互いに同期して移動させることもできる。滅菌の間、たとえば対応する処理ヘッドを同時に移動させる搬送回転コンベアにより容器を移動させることが好ましい。このようにして、互いに前後に並んだ容器を高い処理量で滅菌することができる。
【0033】
また、すでに形成した容器と形成前のプリフォームともに内部滅菌が可能である。
【0034】
このように、上記装置は回転ユニットとしても直線ユニットとしても構成できる。また、PET容器などの容器の内部と外部ともに電子線で滅菌可能な処理室に上記装置全体を収容することができる。また、滅菌ユニット自体を延伸ブロー成形機や充填装置と一体化してもよく、単独ユニットとして構成してもよい。後者の場合は、必要に応じて既存のラインに後付けできるという利点がある。延伸ブロー成形機や充填装置と一体化する場合は、総製造コストが低減できるという利点がある。
【0035】
また、スターホイール、たとえば容器をネック部で扱うスターホイールを介して、滅菌ユニットまで容器を搬送することも可能であり、滅菌ユニットにおいて直線行程移動により処理ヘッドまたは出射指に沿って容器を移動させる。
【0036】
使用する電子線発生器は、上述したように、最小限のエネルギーで容器内面に電子雲を作用させるため、ボトル内に挿入可能な大きさの出射指を備えた小型電子出射ユニットであることが好ましい。回転設備の場合は、電子線発生器用の適当な変圧器または電源装置を電子線発生器とともに回転コンベア上で駆動させることができ、それにより高電圧の供給が容易となる。
【0037】
特に複雑な形状の飲料容器の場合であっても、電子部品と機械部品を組み合わせることにより、電子線による表面処理または滅菌処理の改良が可能である。このように、容器の三次元的な広がりにもかかわらず、最大限均一な線量分布を容器内面上で実現することができる。処理する基材または容器は、固定の放射線源に対して相対移動させ、その移動経路を上述のように照射線量強度に適合させることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る滅菌装置の概略図である。
【図2】処理ヘッドの進行プロファイルの一例を示す図である。
【図3a】中空容器内部の放射線分布の一例を示す図である。
【図3b】中空容器内部の放射線分布の別の例を示す図である。
【図4】円筒容器内部の放射線処理の一例を示す図である。
【図5】関連する放射線パラメータを説明するための概略図である。
【図6】搬送装置上に配置された複数の本発明に係る装置の概略図である。
【図7】複数の本発明に係る装置を備えた設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明に係る装置1の概略図である。装置1は、容器を処理する設備の一部を構成するものであってもよい。ここで参照符号10は、eで示される電子により滅菌される内壁10aを備える容器を示す。参照符号5は、容器10内部に導入可能な処理ヘッドを示す。ここで処理ヘッド5は、容器10の長手方向Lに固定配置され、支持体24上に配置される。電子は高真空下で加速され、電子出射窓(ここでは詳細は図示しない)より出射される。電子は空気分子に当たって散乱し、それにより容器10の内壁10aを滅菌する作用を有する電子雲が形成される。
【0040】
さらに好ましい実施形態によれば、上記装置1または処理ヘッド5は加速器が配置される内部筐体を備え、この内部筐体は外部筐体に囲まれている。内部筐体の内部は真空とすることが特に好ましく、またその中に電荷キャリア生成源および加速器を設けることが好ましい。外部筐体と内部筐体との間には、媒体、特にガス状または液状の媒体が通過可能な空間を処理ヘッド5と同じ距離に及ぶように形成することが特に好ましい。
【0041】
このガス状媒体は、特に出射窓を冷却するように作用する。この目的のため、ガス状または液状の媒体は、内部筐体に沿って処理ヘッド5まで導かれ、また出射窓より放出される。そのため、外部筐体と内部筐体との間に1つまたは複数の通路として空間を形成することが好ましく、上記装置1すなわち出射窓をたとえば半径方向にガス流が放出されるように外部筐体の下端部を構成することが特に好ましい。ガス状媒体流は、容器10の内壁10aに少なくとも直接到達することはなく、上述したように特に出射窓より放出される。
【0042】
容器10は、支持体6に配置された把持クランプ22によって保持され、支持体6は直線駆動装置4上に配置される。参照符号8は、直線駆動装置4が長手方向Lに移動可能なホルダを示す。したがって容器10もまた長手方向Lに移動する。上述したように、駆動装置4はリニアモータであることが好ましい。また、リニアモータにより電子が偏向または片側偏向しないように、容器10の下方または処理ヘッド5の上方にリニアモータを配置してもよい。クランプ22および支持体6は、電子にいかなる力も及ぼさないプラスチックで形成することができる。参照符号vは、処理ヘッド5と処理容器10の相対移動を示す。
【0043】
このように、電子線内でのボトルの相対移動が行われるため、プログラム可能な進行プロファイルにより線量分布の適合化を図ることができる。また、図1に示される装置1を用いて参照プロファイルを生成することも可能である。この目的のため、1つ以上の測定帯を容器10の内面に配置してもよい。測定帯は、評価する照射方向に向けることが好ましい。たとえば図1の左側の図に示されるように、容器10の内壁10aを4つの放射位置Pに分けることができる。
【0044】
ここで、上側の位置には容器の把持要素が配置され、他の位置は容器10の内壁10aに時計回りに分散される。上述したように、進行プロファイルの最適化の目的は、選択されたボトル内で照射される線量が多すぎたり少なすぎたりしないようにすることにある。さらに、容器10の処理時間や放射線強度はできるだけ小さく保つべきである。
【0045】
容器10の長手方向の全移動は、1秒から2秒以内に終えると有利である。処理時間とは、処理ヘッド5がボトル内に位置する時間をいう。したがって全サイクルは、内側への進行時間、処理時間、および外側への進行時間からなる。放射線は、移動中に出射してもよく、また移動を逐次停止しその停止段階で出射してもよい。
【0046】
さらに、X線を遮蔽するため、鉛などからなるシールド(図示省略)を設けることが好ましい。また、オゾンや窒素酸化物などの生成ガスを吸引により除去してもよい。
【0047】
容器10内での線量分布の開始点に到達させるため、はじめに処理ヘッド5に被せて容器10を定速移動させる。ついで同じ照射条件で、終止点の基本位置まで停止させることなく容器10を後退させる。この工程により、線量測定フィルムを用いて所定の条件下での容器10の放射線プロファイルを求めることができる。この放射線プロファイルは、保管し、後に別の容器を処理する際に基準として用いることができる。参照符号16は、容器の画像を記録する画像記録装置を示す。この画像に基づいて、容器を識別し、識別した容器に基づいて適当な進行プロファイルをロードすることができる。
【0048】
参照符号12は、容器10の長手方向Lの移動を制御する制御装置(模式的に図示)を示す。また、上記移動を制御するための進行プロファイルを記憶する記憶装置14も配置されている。この制御装置は、処理ヘッド5による電子の出射を制御することもできる。
【0049】
図2は、出射指に対する容器の相対移動プロファイルを示す。ここで、縦軸に直線位置(ミリメートル)、横軸に時間(ミリ秒)がプロットされている。この例において、全進行または移動プロファイルBは、4つの区分B1からB4からなり、ここでは対称な移動プロファイルが用いられている。各区分B1からB4はキンクを介して互いに結合しているが、上述のように必ずしもそうである必要はない。
【0050】
または、適切な速度制御により滑らかな移動とすることもできる。図2に示される図では、区分B2とB3との間で移動方向が直接逆転しているが、容器を短時間停止させ、その間電子線を出射することも可能である。参照符号dTは、容器10の滅菌が行われる時間を示す。したがってこの時間は、容器10に対する処理ヘッド5の相対移動と電子の出射がともに行われる。
【0051】
全進行プロファイルBは、ある1つの容器に対して行われた測定結果をベースとして求められるが、異なる区分について、異なる容器に対して行われた測定結果をベースとすることも考えられる。たとえば、区分B1およびB4は、容器10の上部領域での処理ヘッド5の移動を示し、区分B2およびB3は、容器10の下部領域での処理ヘッド5の移動を示している。ここで、第1の参照容器に対して行われた測定結果を区分B1およびB4のベースとし、第2の参照容器に対して行われた測定結果を区分B2およびB3のベースとすることができる。
【0052】
図3aおよび3bは、球状の内部断面を有する容器の測定構成を示す。左側の図では、処理ヘッド5またはその出射窓7が容器10の上端に配置され、図3bでは容器10の中心に配置されている。ここからわかるように、得られる放射線分布Sは、容器10の内部に対する処理ヘッド5の相対位置によって異なる。特に、図3bに示される例における放射線の経路長は、図3aに示される位置における経路長よりも短く、したがって図3bに示される実施形態の場合には、容器10の下半球に対する照射強度がより高い。
【0053】
図3aおよび3bに示される試験を行った後、容器10の内部に設けられた線量測定フィルムを取り外し評価することができる。
【0054】
図4および5は、進行プロファイルを求めるための別の試験を示す。ここからわかるように、線量分布は、プロセスパラメータとなる行程速度(v)、ボトル形状(d、β)、加速電圧、放射線電流、および処理時間に依存する。ここで速度vは、容器10の直径dおよび開口角βと関連している。行程速度が一定の場合、容器10の形状によっては均一な線量分布が得られないため、行程速度を上述のように変化させる。
【0055】
図4は、2つの異なる位置における処理ヘッド5を示す。すなわち、出射窓7が位置する各中心Z1、Z2が図4において2つの異なる位置に示されている。それに応じて、容器10の内壁10aにおいても異なる放射線分布S1、S2が見られる。図4における開始位置、すなわち処理ヘッド5の上方位置から、散乱ドームを介してボトル壁への照射が開始される。出射指が目標位置まで速度vで進行する際、散乱ドームもまた移動し、新たに照射される線量分が開始位置からの線量分に重なり合う。したがって、ボトルの内壁に照射可能な線量は、それ以前に処理ヘッド5より照射された線量によって異なる。図5の参照番号10bは、容器10の口部を示し、参照番号10cは、口部10bより下側に位置し、容器10の断面dが広がる容器10の口部領域を示す。
【0056】
放射線強度レベル、すなわち加速電圧および放射線電流は、処理するボトルと処理する参照細菌によって異なる。細菌の抵抗力が強くかつボトルの寸法が大きいほど、放射線強度を高く設定する必要がある。電子出射窓7の厚みについては、7μmから13μmの範囲の厚みを有するチタンフィルムが特に適している。このような厚みがあれば、能動空冷により、電子線の熱による影響に対して十分な安定性を確保することができる。
【0057】
さらに、チタンフィルムはその厚みが増すほど滅菌結果に対してマイナスの効果をもたらす。厚いフィルムは薄いフィルムより多くの放射線エネルギーを吸収するため、この場合、線量の照射に利用可能なエネルギーが減少する。
【0058】
図6は、回転ホイール31の概略図を示す。この回転ホイール31は、複数の本発明に係る装置1を備え、そのつど同じ高さに配置される。ただしここからわかるように、各容器10はそのつど最高位置まで上昇し、それにより処理ヘッドまたは出射指5が回転位置に応じて容器10内の異なる深さまで下降する。この全工程が行われる間、本発明に係る装置1は稼働され、それにより容器10の内壁10aが容器10の全長にわたって滅菌される。出射指5の長さは、容器10の底部でも滅菌が効果的になされるように選択される。
【0059】
図7は、本発明に係る設備の斜視図である。複数の本発明に係る装置1の上流には、容器10を搬送する搬送回転コンベア42がさらに配置される。容器10は、別の容器用滅菌装置1bを通過し、その外壁が滅菌装置1bにより滅菌される。ついで上述のように容器10の内部が滅菌される。
【0060】
参照符号44は、容器10をその長手方向(または長手軸)周りに回転させる回転板などの回転装置を示す。この回転により、容器10の外周をより広い面積にわたって滅菌することができる。また、複数の滅菌装置1bを容器10の搬送方向に沿って互いに前後に設けることも可能である。
【0061】
電子出射装置の詳細については、欧州特許出願第07007977.7号において本出願人により開示されている。上記特許出願の内容は、その全体が本出願の開示において参照により援用される。
【0062】
さらに、電子線を出射する間、容器10を(部分)真空下に置くことも可能である。この工程により、出射窓7を出射後の電子の飛距離を延長することができる。また、このような部分真空を電子出射開始前にあらかじめ設けておくことも可能である。この工程は、プリフォームの滅菌とすでに形成された容器10の滅菌のいずれにおいても考慮される。
【0063】
上記のような(部分)真空を容器10の内部に設けるため、たとえば処理ヘッド5の外周上に封止装置(図示省略)を設けてもよい。この封止装置は、処理ヘッド5に対してその長手方向に相対移動可能とされ、処理ヘッド5が容器10に進入したときに処理ヘッド5と容器10の口部10bとの間の空間を封止する。また、容器10の内部に(部分)真空を設けるため、封止装置に開口部を設け、容器10より空気を吸引することも可能である。
【0064】
また、1つの装置全体、あるいは複数の装置についても、(部分)真空とされた空洞または筐体内に配置することができる。
【0065】
上述した処理ヘッド5の空冷は、実際に電子を出射する間と照射を行わない間のいずれにおいても行うことができる。
【0066】
本出願書類において開示された特徴は、先行技術に対して単独または組み合わせで新規である限りにおいて、そのすべてが本発明に必須のものとして主張される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌する容器(10)の内部に処理ヘッド(5)を導入し、所定時間(dT)にわたり少なくとも間欠的に前記容器(10)の内部で前記処理ヘッド(5)より放射線を出射し、前記所定時間(dT)にわたり少なくとも間欠的に所定の相対移動速度(v)で前記容器(10)の長手方向(L)に前記処理ヘッド(5)に対して前記容器(10)を相対移動させる容器滅菌方法であって、
前記容器(10)の内部に位置する前記処理ヘッド(5)の前記相対移動速度(v)は、前記所定時間(dT)にわたり変化し、前記容器(10)の内部プロファイル(10a)の関数として制御されることを特徴とする容器滅菌方法。
【請求項2】
前記処理ヘッド(5)は、電荷キャリアを出射することを特徴とする請求項1に記載の容器滅菌方法。
【請求項3】
前記処理ヘッド(5)の移動は、記憶装置(14)に記憶されたデータに基づいて制御装置(12)により制御され、
前記データは、前記容器(10)の前記長手方向(L)における前記容器(10)の断面に特有であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の容器滅菌方法。
【請求項4】
前記処理ヘッド(5)の移動は、前記容器(10)の直径D(L)の関数として制御されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の容器滅菌方法。
【請求項5】
前記処理ヘッド(5)の移動は、前記容器(10)の前記長手方向(L)に対して前記容器(10)の内壁(10a)が延在する方向の角度の関数として制御されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の容器滅菌方法。
【請求項6】
前記処理ヘッド(5)の移動は、プログラムされた進行プロファイルに基づいて制御されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の容器滅菌方法。
【請求項7】
前記容器(10)は、該容器(10)の前記長手方向(L)に移動されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の容器滅菌方法。
【請求項8】
容器(10)の内部に処理ヘッド(5)を導入し、前記容器(10)の内部で前記処理ヘッド(5)が放射線を出射することにより進行プロファイルが決定される際に、
前記容器(10)は、前記放射線の出射の間、前記容器(10)の長手方向(L)に前記処理ヘッド(5)に対して前記容器が相対移動し、前記容器(10)の内壁(10a)に当たる放射線に特有の多数の特徴的なデータが記録されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の容器滅菌方法。
【請求項9】
前記処理ヘッド(5)より出射される放射線に反応する物質であって、前記放射線の強度に関する結果が得られる物質が、前記容器(10)の内壁(10a)に設けられることを特徴とする請求項8に記載の容器滅菌方法。
【請求項10】
処理ヘッド(5)が容器(10)の内部に導入され、前記容器(10)内部の前記処理ヘッド(5)が、前記容器(10)の内壁(10a)に放射線を照射し、
前記容器(10)は、前記放射線の出射の間、前記容器(10)の長手方向(L)に前記処理ヘッド(5)に対して相対移動する容器内部滅菌用進行プロファイル決定方法であって、
前記容器(10)の内壁(10a)に当たる放射線に特有の多数のデータが記録されることを特徴とする容器内部滅菌用進行プロファイル決定方法。
【請求項11】
滅菌する容器(10)の内部に導入可能に構成され、放射線を出射する放射線源を備える処理ヘッド(5)と、
所定の移動速度で前記容器(10)の長手方向(L)に前記処理ヘッド(5)に対して前記容器(10)を相対移動させる移動装置とを備える容器滅菌装置(1)であって、
前記容器(10)の内部に位置する前記処理ヘッド(5)の相対移動速度を変化させ、前記容器(10)の内部プロファイルの関数として前記相対移動速度を制御する制御装置(12)を備えることを特徴とする容器滅菌装置(1)。
【請求項12】
前記放射線源は、電荷キャリア、特に電子を出射することを特徴とする請求項11に記載の容器滅菌装置(1)。
【請求項13】
前記処理ヘッド(5)の移動に特有である進行プロファイルを記憶する記憶装置(14)を備えることを特徴とする請求項11又は12に記載の容器滅菌装置(1)。
【請求項14】
滅菌する容器(10)の画像を記録する画像記録装置(16)を備えることを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の容器滅菌装置(1)。
【請求項15】
搬送装置(31)上に互いに前後に配置された複数の処理ヘッド(5)を備えることを特徴とする請求項11から14のいずれかに記載の容器滅菌装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−58843(P2010−58843A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−191606(P2009−191606)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(508120916)クロネス アーゲー (65)
【Fターム(参考)】