説明

容積型ポンプ

【課題】可動体に伝達する推進力を低下させずに効率よく電磁式直動アクチュエータの消費電力を抑えることができる容積型ポンプを提供すること。
【解決手段】容積型ポンプ1において、電磁式直動アクチュエータ3は、ヨーク37において移動体33の直動方向(上下方向)に平行に延在する軸部371に巻回された駆動コイル38を備えている一方、移動体33は、移動方向と平行なマグネット331の磁極面331a、331bを備えたマグネット331を有している。また、移動体33の移動方向に延びているヨーク37の両端に第1突部372、第2突部373が設けられている。移動体33の推力は、倍力機構7を介してダイヤフラム12に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ室の容量を変化させるための可動体を電磁式直動アクチュエータによって駆動する容積型ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポンプ室の容積を拡大してポンプ室内に流体を吸引し、ポンプ室の容積を縮小することにより、吸引した流体をポンプ室から吐出する容積型ポンプが知られている。このような容積型ポンプは、ポンプ室の容積を変化させるためのダイヤフラム等の可動体と、可動体を往復動させる電磁式直動アクチュエータを有している(特許文献1参照)。
【0003】
かかる特許文献1に記載の容積型ポンプにおいて、電磁式直動アクチュエータは、筒状の駆動コイルと、駆動コイルの内側に挿入された磁性材料からなる移動体と、駆動コイルの軸線方向の両側に配置されたマグネットとを備えている。従って、駆動コイルへの給電が行なわれると、駆動コイルおよび移動体が電磁コイルとして機能して、電磁コイルとマグネットの吸引力または反発力によって移動体が軸線方向へ移動する。可動体は移動体に連結されており、移動体の移動によって変位しポンプ室の容積を変化させる。そして、駆動コイルへの給電が停止すると、移動体は、駆動コイルの軸線方向の両側に配置されたマグネットとの磁気的な吸引力によって、第1位置または第1位置から移動体の直動方向で離間している第2位置に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−163547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容積型ポンプには、電磁式直動アクチュエータでの消費電力を低く抑えることが求められているが、特許文献1に記載の構成では、可動体に伝達する推進力を低下させずに電磁式直動アクチュエータの消費電力を抑えることが困難である。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、可動体に伝達する推進力を低下させずに効率よく電磁式直動アクチュエータの消費電力を抑えることができる容積型ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、ポンプ室と、該ポンプ室の容積を規定する可動体と、該可動体を前記ポンプ室の容積が変化する方向に駆動する電磁式直動アクチュエータと、を有する容積型ポンプであって、前記電磁式直動アクチュエータは、アクチュエータケースと、該アクチュエータケースによって直動可能に支持されている移動体と、磁極面が前記移動体の移動方向に平行になるように前記移動体に取り付けられたマグネットと、前記移動体の移動方向に沿って延在するように前記アクチュエータケースに固定されたヨークと、前記ヨークに巻回された駆動コイルと、を有し、前記ヨークは、前記移動体が直動方向における第1位置に位置するときに前記マグネットとのギャップが最小になる第1突部と、前記直動方向において前記第1位置と異なる第2位置に前記移動体が位置するときに前記マグネットとのギャップが最小になる第2突部とを備え、前記移動体と前記可動体との間には、前記移動体の推力を倍力して前記可動体に伝達する倍力機構が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、電磁式直動アクチュエータを励磁すると、駆動コイルを流れる励磁電流の向きとマグネットの磁界の方向とが直交してローレンツ力が発生する。ここで、ローレンツ力を利用すれば、駆動コイルおよびヨークを電磁コイル(電磁石)として機能させて移動体および可動体の推力を得る場合と比較して小さな励磁電流で所望の推力を得ることができる。また、駆動コイルはヨークに巻回されているので、電磁式直動アクチュエータを励磁すると、駆動コイルおよびヨークは電磁コイル(電磁石)として機能する。ここで、ヨークは、第1位置に位置するときにマグネットとのギャップが最小になる第1突部と、第2位置に移動体が位置するときにマグネットとのギャップが最小になる第2突部とを備えている。このため、電磁コイルとマグネットとの間に電磁的な吸引力や電磁的な反発力が発生する。この結果、ローレンツ力と、電磁的な吸引力または電磁的な反発力とを可動体の推力として利用することができるので、駆動コイルに供給する励磁電流を小さくできる。また、移動体の推力は、倍力機構を介して可動体に伝達され、ポンプ室の容積を変化させる。このため、移動体に付与する推力が比較的小さくても、可動体を変位させることができるので、効率よく電磁式直動アクチュエータでの消費電力を低く抑えることができるとともに、電磁式直動アクチュエータの小型化を図ることができる。
【0009】
本発明において、前記倍力機構は、支点を中心に揺動可能な揺動部材を備えたてこである構成を採用することができる。かかる構成によれば、倍力機構を構成する要素が少なく済むので、容積型ポンプの小型化や低コスト化に適している。
【0010】
本発明において、前記第1位置では、前記ポンプ室の容積が最小となり、前記第2位置では、前記ポンプ室の容積が最大となる。かかる構成によれば、容積型ポンプを効率良く駆動することができる。
【0011】
本発明において、流体入口および前記ポンプ室に連通する流入側流路に設けられたアクティブバルブと、前記ポンプ室および流体出口に連通する流出側流路に設けられたパッシブバルブと、を有している構成を採用することができる。かかる構成によれば、ポンプ室からの流体の供給および停止をアクティブバルブおよびパッシブバルブによって制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、電磁式直動アクチュエータを励磁した際のローレンツ力と、電磁石としての機能、および倍力機構を利用して可動体を駆動し、ポンプ室の容積を変化させる。このため、電磁式直動アクチュエータでの消費電力を低く抑えることができるとともに、電磁式直動アクチュエータの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した容積型ポンプの外観斜視図である。
【図2】図1に示す容積型ポンプの縦断面図である。
【図3】図1に示す容積型ポンプの分解斜視図である。
【図4】本発明を適用した容積型ポンプの倍力機構の説明図である。
【図5】図4に示す倍力機構の縦断面図である。
【図6】図1に示す容積型ポンプにおいて逆止弁(パッシブバルブ)を設けた弁室周の弁室周辺の断面図である。
【図7】図2に示すアクティブバルブ周辺の断面図である。
【図8】本発明を適用した容積型ポンプの倍力機構の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら、本発明を適用した容積型ポンプを説明する。
【0015】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した容積型ポンプの外観斜視図である。図2は、図1に示す容積型ポンプの縦断面図である。なお、図2では、倍力機構周辺の構成を模式的に表してある。
【0016】
図1に示すように、容積型ポンプ1は、ポンプユニット2と、ポンプユニット2の下方に並列に配置された電磁式直動アクチュエータ3と、電磁式直動アクチュエータ3に並列するように設けられたアクティブバルブ4とを有している。なお、以下の説明では、位置関係が分かりやすいように、電磁式直動アクチュエータ3およびアクティブバルブ4が並んでいる方向を装置幅方向(図1では左右方向として示す)とし、この装置幅方向および上下方向と直交する方向を装置前後方向とする。従って、電磁式直動アクチュエータ3は装置幅方向の左側に配置されており、アクティブバルブ4は装置幅方向の右側に配置されていることになる。
【0017】
ポンプユニット2の左側部分には上方に突出する流出管5が設けられており、流出管5の上端開口は流体出口5aとなっている。アクティブバルブ4の下方には、流入管6が設けられており、流入管6の下端開口は流体入口6aとなっている。電磁式直動アクチュエータ3およびアクティブバルブ4は駆動制御部(図示せず)によって駆動制御される。
【0018】
図2に示すように、ポンプユニット2の内部にはポンプ室8が形成されている。流体入口6aとポンプ室8の間には流入側流路9が形成されており、流入側流路9には、この流入側流路9を開閉するアクティブバルブ4が配置されている。ポンプ室8と流体出口5aの間には流出側流路10が形成されている。流出側流路10には流体の逆流を防止するための逆止弁11が配置されている。
【0019】
ポンプ室8の底面はダイヤフラム(可動体)12によって規定されており、電磁式直動アクチュエータ3によってダイヤフラム12を往復動させることによりポンプ室8の容積が変化する。すなわち、容積型ポンプ1は、アクティブバルブ4を開けた状態でポンプ室8の容積を拡大することによって流体入口6aからポンプ室8に流体を吸引し、アクティブバルブ4を閉めた状態でポンプ室8の容積を縮小することによってポンプ室8に吸引した流体を流体出口5aから吐出する。
【0020】
(ポンプユニット2の構成)
図3は、図1に示す容積型ポンプの分解斜視図である。図2および図3を参照して、ポンプユニット2を説明する。ポンプユニット2は、上側ハウジング21と、上側ハウジング21の下方に配置された下側ハウジング22を有している。
【0021】
上側ハウジング21は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂などから形成されている。流出管5は、上側ハウジング21の上端面の左側部分から上方に突出している。上側ハウジング21の下端面の左側部分には、上方に窪む円形の第1凹部211が設けられている(図2参照)。第1凹部211の天井面の中央部分には流出管5に連通する第1流路212の下端開口212aが露出している。
【0022】
下側ハウジング22は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂などから形成されている。上端面の左側部分には上側ハウジング21の第1凹部211と嵌合する円形の上側突出部221が形成されている。上側突出部221の中央部分には、下方に窪む円形の第2凹部222が形成されている。上側突出部221は第1凹部211に嵌め込まれており、上側ハウジング21の第1凹部211と下側ハウジング22の第2凹部222によって流出管5と同軸に弁室13が形成されている。上側突出部221の外周面と第1凹部211の内周面との間にはOリング14が配置されている。弁室13内には逆止弁11(パッシブバルブ)が構成されている。
【0023】
下側ハウジング22の左側部分の下面には、円形の下側突出部223が形成されている。下側突出部223の中心には、上方に窪む円形の第3凹部224が設けられている。第3凹部224の天井面224aは中心部分に向かって上方に傾斜するテーパー面となっており、中心部分には、弁室13に連通している第2流路225の下端開口225aが露出している。第2流路225の上端開口225bは弁室13の円形底面13aの中央部分に露出している。第3凹部224の天井面224aおよび内周側面は、ポンプ室8の天井面および内周面を規定している。ポンプ室8、第2流路225、弁室13、第1流路212、および流出管5は同軸上に形成されており、第2流路225、弁室13、第1流路212、流出管5によって流出側流路10が構成されている。
【0024】
下側突出部223の下方にはポンプ室8の底面を規定するダイヤフラム12が配置されている。ダイヤフラム12は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等からなるゴム製の弾性体であり、上方から見たときに円形の平面形状を備えている。ダイヤフラム12は、中央部分と外周縁部分が厚肉に形成されており、中央部分と外周縁部分との間には、上方に膨らむように湾曲する一定厚さの連結膜部分を備えている。ダイヤフラム12の中央部分の下側部分には、電磁式直動アクチュエータ3を接続する接続部12aが設けられている。
【0025】
電磁式直動アクチュエータ3は、下側突出部223の外周側を下側ハウジング22に取り付けられている。すなわち、電磁式直動アクチュエータ3が取り付けられると、ダイヤフラム12は、その外周縁部分が、下側突出部223の円環状下端面と、電磁式直動アクチュエータ3の側との間に挟まれた状態となる。なお、本実施形態では、電磁式直動アクチュエータ3は、下側突出部223の外周側を、同軸度を確保して下側ハウジング22に取り付けられている。
【0026】
下側ハウジング22の右側部分の下面には、上方に窪む円形の第4凹部226が形成されている。第4凹部226は下側から、扁平な大径部226aと、大径部分よりも小径の小径部226bを備えている。第4凹部226にはアクティブバルブ4の上端側部分がOリング15を介して挿入されている。
【0027】
アクティブバルブ4を第4凹部226に挿入した状態では小径部226bの上端部分226cには空間が形成されるようになっており、この上端部分226cとポンプ室8の間には、これらの間を連通させる第3流路227が形成されている。第3流路227の右端開口は小径部226bの上端部分226cの内周側面に露出しており、第3流路227の左端開口は、ポンプ室8の天井面および第2流路225の下端部分に露出している。
【0028】
(電磁式直動アクチュエータの構成)
図1〜図3を参照して電磁式直動アクチュエータ3を説明する。図1に示すように、電磁式直動アクチュエータ3は、全体として直方体をしているアクチュエータケース30を有している。アクチュエータケース30は、図2および図3に示すように、下端が開口となっている箱型の上側ケース31と、上側ケース31の下端の開口を閉鎖するように取り付けられている下側ケース32を備えている。上側ケース31および下側ケース32の内部には、アクチュエータケース30によって上下方向に直動可能に支持された移動体33と、アクチュエータケース30に固定された固定体34とが配置されている。
【0029】
本形態において、移動体33は、図4および図5を参照して後述する倍力機構を介してダイヤフラム12の接続部12aに機構的に接続されており、移動体33が上下方向に往復移動すると、ダイヤフラム12は上下方向に往復動してポンプ室8の容積を変化させる。固定体34は、装置幅方向において移動体33の左側に配置されている第1固定体35と、右側に配置されている第2固定体36を備えている。
【0030】
移動体33は、側面がこの移動体33の移動方向と平行になるように配置された直方体形状のマグネット331を備えている。マグネット331は2極着磁されており、装置幅方向を向いている左右の側面が異なる極に着磁された磁極面331a、331bとなっている。本実施形態では、磁極面331aがS極に着磁され、磁極面331bがN極に着磁されている(図3参照)。また、移動体33は、マグネット331の磁極面331a、331bを除く外周面部分を保持しているマグネットホルダ332を備えている。
【0031】
マグネットホルダ332は、マグネット331の上下左右前後の位置を規定し固定する。具体的には、前後の側面を装置前後方向から保持している前後の縦枠部332aと、前後の縦枠部332aの上端部を連結している上側枠部332bと、前後の縦枠部332aの下端部を連結している下側枠部332cを備えている。前後の縦枠部332aには、それぞれ、磁極面331a、331bと平行に突出するガイド突部333が設けられている。各ガイド突部333は直方体形状をしており、上下方向に所定の長さ寸法を備えている。上側枠部332bには、ダイヤフラム12に推力を出力する出力部334が上方に突出するように設けられている。下側枠部332cには、下方に突出するガイド軸335が設けられている。なお、本実施形態では、ガイド突部333は、回転防止としての機能を有している。
【0032】
第1固定体35および第2固定体36は各々、ヨーク37、およびヨーク37に巻き回されている駆動コイル38を備えている。第1固定体35は、その駆動コイル38が移動体33の磁極面331aと一定のギャップを開けて対向するように配置されており、第2固定体36は、その駆動コイル38が磁極面331bと一定のギャップを開けて対向するように配置されている。
【0033】
ヨーク37はそれぞれ、移動体33の直動方向(上下方向)に平行に延在する軸部371と、軸部371の上端部分から内側に突出している第1突部372と、軸部371の下端部分から内側に突出している第2突部373とを備えている。
【0034】
駆動コイル38は、ヨーク37における第1突部372と第2突部373との間で軸部371の周りに巻回されている。このため、駆動コイル38は、移動体33の移動方向(上下方向)と直交する方向に巻き回されている。また、駆動コイル38は、移動体33の移動方向と直交する平面による断面形状が略長方形となっており、断面形状の一方の長辺となっている外周面部分38aがマグネット331の各磁極面331a、331bと対向している。
【0035】
ここで、移動体33のマグネット331の装置前後方向の幅寸法は、外周面部分38aの装置前後方向の幅寸法よりも短く設定されている。また、移動体33のマグネット331の上下方向の長さ寸法は、各ヨーク37における第1突部372と第2突部373との間の長さ寸法よりも短い長さ寸法とされている。マグネット331の長さ寸法は、移動体33の上下方向における移動範囲のうち、所定の範囲内で移動体33が移動する際は、マグネット331と第1突部372、第2突部373との間で磁気的な吸引力が働かない、または磁気的な吸引力の影響が小さい領域を有するようになっている。
【0036】
さらに、各ヨーク37の下端部分は下側ケース32によって保持されており、各ヨーク37の上端部分は、後述する倍力機構7のホルダ70を介してアクチュエータケース30に支持されている。これにより、第1固定体35の駆動コイル38と第2固定体36の駆動コイル38は、移動体33の移動方向に沿って一定の間隔で維持されている。また、ヨーク37において、第1突部372および第2突部373の移動体33側の端は、駆動コイル38の外周面部分38aよりも移動体33の側に位置しており、軸部371から移動体33の側に突出する第1突部372の突出量と第2突部373の突出量は同一になっている。
【0037】
下側ケース32は、扁平な直方体形状をしており、上端面にヨーク37の保持部となる一対の凹部322が形成されている。装置幅方向における一対の凹部322の間には装置前後方向に延びる溝323が形成されており、溝323の中央部分には円形の貫通孔324が形成されている。貫通孔324にはマグネットホルダ332のガイド軸335が挿入されている。装置幅方向における一対の凹部322の外側には上方に突出する一対の係合突起325が形成されている。
【0038】
上側ケース31は、矩形の上板311と、上板311の四方の縁から下方に延びる4枚の側板312〜315を備えている。上板311には、ダイヤフラム12が内側に位置する貫通孔316が形成されている。下側ハウジング22に電磁式直動アクチュエータ3が取り付けられた状態では、後述する倍力機構7に用いたホルダ70と、下側ハウジング22の下側突出部223の円環状下端面との間にダイヤフラム12の周縁部分が挟み込まれた状態となる。
【0039】
装置幅方向で平行に延びている2枚の側板312、314には、上下方向に延びる係合凹部317が形成されている。上側ケース31が下側ケース32に被せられると、一対の係合突起325が側板312、314の係合凹部317と係合して上側ケース31を下側ケース32に固定する。
【0040】
装置前後方向で平行に延びている2枚の側板313、315には、装置幅方向の中央部分の下端縁から一定の幅で上方に延びるガイド溝318が形成されている。ガイド溝318は、装置幅方向において第1固定体35と第2固定体36の中央に位置している。上側ケース31が下側ケース32に被せられる際には、上側ケース31の前後のガイド溝318に、移動体33の前後のガイド突部333が挿入される。ここで、ガイド突部333およびガイド溝318は、移動体33を、各磁極面331a、331bと各駆動コイル38の間のギャップを一定に維持した状態で上下方向に案内するガイド機構40を構成しており、移動体33は、ガイド機構40によって、ポンプ室8、第2流路225、弁室13、第1流路212および流出管5の軸線上を案内される。
【0041】
(第1位置)
各ガイド溝318の上端縁318aは、移動体33の移動範囲の上限を規定している。すなわち、移動体33が上昇位置よりも上方に移動しようとすると、各ガイド溝318の上端縁318aに各ガイド突部333が当接して、その移動を阻止する。かかる上昇位置(第1位置)では、移動体33のマグネット331の上端面331cは、各ヨーク37の第1突部372の上端面よりも下方に位置している。また、移動体33が上昇位置に位置した状態では、ダイヤフラム12は、ポンプ室8の容積を最小の第1容積としている。なお、移動体33の各ガイド突部333が上側ケース31のガイド溝318の上端縁318aに当接することにより、移動体33の上昇位置を規定するように構成することもできる。すなわち、上端縁318aを、移動体33の移動範囲の上限を規定する移動体位置決め部としての機能を備えるようにしてもよい。
【0042】
(第2位置)
また、下側ケース32の上端面32aは、移動体33の移動範囲の下限を規定している。すなわち、移動体33は下降位置(第2位置)よりも下方に移動しようとすると、各ガイド突部333が下側ケース32の上端面32aに当接して、その移動を阻止する。下降位置では、移動体33のマグネット331の下端面331dは、各ヨーク37の第2突部373の下端面よりも上方に位置している。また、移動体33が下降位置に位置した状態では、ダイヤフラム12は、ポンプ室8の容積を最大の第2容積に拡大させている。なお、移動体33の各ガイド突部333が下側ケース32の上端面32aに当接することにより、移動体33の下降位置を規定するように構成することもできる。すなわち、上端面32aは、上述した上端縁318aと対をなし、移動体33の移動範囲の下限を規定する移動体位置決め部としての機能を備えるようにしてもよい。
【0043】
また、移動体33が上昇位置と下降位置との間を移動する間、マグネットホルダ332から下方に延びているガイド軸335が貫通孔324に挿入された状態が維持される。これにより、移動体33は移動方向に対して傾斜することなく、その姿勢が維持された状態で直動する。
【0044】
(電磁式直動アクチュエータの動作)
かかる構成の電磁式直動アクチュエータ3において、駆動コイル38への給電が行なわれていない状態で、マグネット331と第1突部372との磁気的な吸引力、またはマグネット331と第2突部373との磁気的な吸引力によって移動体33は上昇位置または下降位置に選択的に保持される。この状態から、移動体33を移動させる際には、駆動コイル38への給電を行なう。この結果、フレミングの左手の法則により、駆動コイル38とマグネット331の磁界との間に働くローレンツ力が、移動体33を移動させる力として働く。ここで、ヨークは、移動体33が直動方向における上昇位置(第1位置)に位置するときにマグネットとのギャップが最小になる第1突部372と、直動方向において下降位置(第2位置)に移動体33が位置するときにマグネットとのギャップが最小になる第2突部373とを備えている。また、アンペールの右ネジの法則により、駆動コイル38への給電によって、駆動コイル38およびヨーク37は電磁コイル(電磁石)として機能する。すなわち、移動体33の左側に配置されている第1固定体35は、上側をS極とし、下側をN極とする電磁コイルとして機能する。移動体33の右側に配置されている第2固定体36は、上側をN極とし、下側をS極とする電磁コイルとして機能する。この結果、移動体33のマグネット331と、第1固定体35および第2固定体36の間には、上側において電磁的な反発力が発生し、下側において、電磁的な吸引力が発生する。かかる力は、移動体33を下に向かって移動させるための推力となる。かかる動作の際、ヨーク37の第1突部372は、マグネット331の移動範囲より上側に位置し、ヨーク37の第2突部373は、マグネット331の移動範囲より下側に位置する。従って、ヨーク37の第1突部372は、移動体33が直動方向における第1位置に位置するときにマグネット331とのギャップが最小となる。また、ヨーク37の第2突部373は、移動体33が直動方向における第2位置に位置するときにマグネット331とのギャップが最小となる。
【0045】
(倍力機構7の構成)
図4は、本発明を適用した容積型ポンプ1の倍力機構の説明図であり、図4(a)、(b)、(c)は、倍力機構の斜視図、倍力機構の分解斜視図、および倍力機構をさらに細かく分解したときの分解斜視図である。図5は、図4に示す倍力機構の縦断面図である。
【0046】
図3に示すアクチュエータケース30の上板311と、電磁式直動アクチュエータ3との間には、図4に示す倍力機構7が設けられており、かかる倍力機構7は、移動体33の推力を増幅させてダイヤフラム12に伝達する。
【0047】
より具体的には、図4に示すように、アクチュエータケース30の上板311と、電磁式直動アクチュエータ3との間にはホルダ70が固定されており、ホルダ70は、ダイヤフラム12が設けられる開口部703が形成された上板部701と、上板部701の対向する端部から下方に延在する左右一対の側板部702と、側板部702同士を連結する連結板部704とを備えている。連結板部704の下端側は矩形の開口部709になっている。
【0048】
一対の側板部702では、各々の下端部から内側に向けて屈曲した底板部705が設けられている。かかる一対の底板部705は、先端縁同士が離間しており、底板部705の間に移動体33の出力部334が位置する。底板部705には開口部705aが形成されており、かかる開口部709に重なる位置にヨーク37の第1突部372が位置することになる。
【0049】
側板部702には、前後方向の中間位置に、側板部702の上下方向の略中央付近から下方に延在する溝707が形成されており、溝707は、底板部705まで連続して形成されている。また、側板部702には、溝707より後方に、左右方向に延在する支軸71の端部を保持する穴706が形成されており、支軸71は、穴706によって水平に保持されている。
【0050】
移動体33の上端部(出力部334)には、前方が開放端になっている穴337が左右方向に貫通しており、かかる穴337には、支軸71より短い寸法で支軸71と平行に延在する駆動側の連結軸73が十分なクリアランスをもって貫通している。
【0051】
ダイヤフラム12の下面側では、軸状の従動部材120の上端部が連結されており、従動部材120の下端部は、支軸71と連結軸73との間に位置している。従動部材120の下端部には穴120aが左右方向に貫通しており、穴120aには、支軸71および連結軸73と平行に延在する従動側の連結軸72が嵌っている。ここで、連結軸72の両端部は、溝707内に嵌っている。このため、従動部材120および連結軸72は上下方向に移動可能である。
【0052】
このように構成した状態で、支軸71、従動側の連結軸72、および駆動側の連結軸73は、従動部材120および移動体33から左右両側に突出しており、支軸71、連結軸72、および連結軸73は、揺動板75によって機構的に連結されている。より具体的には、揺動板75には、左右方向の中央部分に従動部材120および移動体33が位置する切り欠き状の開口部750が形成されている。また、揺動板75において、開口部750を左右両側で挟む支持板部755には、支軸71が嵌る穴751、連結軸72が嵌まる穴752、および連結軸73が嵌まる穴753が形成されている。これらの穴751、752、753のうち、穴752は、前後方向に延びた長穴752になっている。ここで、支軸71は、両端が揺動板75から左右両側に突出してホルダ70の穴706に嵌っており、連結軸72は、両端が揺動板75から左右両側に突出してホルダ70の溝707に嵌っている。なお、連結軸73は、両端が揺動板75から左右両側へは突出していない。
【0053】
このように構成した倍力機構7は、図5に示すように、支軸71、連結軸72および連結軸73によって支点、作用点および力点が構成された「てこ」として機能する。より具体的には、移動体33が上下方向に直動すると、連結軸73も上下方向に直動するので、揺動板75は支軸71の軸線周りに揺動する。その結果、連結軸72も上下方向に移動するので、従動部材130が上下方向に直動し、ダイヤフラム12が上下方向に移動する。
【0054】
その際、電磁式直動アクチュエータ3の推力をF1、ダイヤフラム12に加わる力をF2とすると、以下の式
F2=(F1・R・(cosθ)3)/r
R=支点(支軸71)から作用点(連結軸72)までの距離
r′=支点(支軸71)から力点(連結軸73)までの距離
r=支点(支軸71)から従動部材120までの距離
θ=支点と力点とを結ぶ線と、支点から従動部材120に延びる
垂線とが成す角度 θ=0のとき、r=r′
が成り立ち、電磁式直動アクチュエータ3の推力を増幅してダイヤフラム12に加わることになる。
【0055】
(逆止弁11の構成)
図6は、図1に示す容積型ポンプ1において逆止弁(パッシブバルブ)を設けた弁室周辺の断面図である。図6に示すように、逆止弁11は、第2流路225の上端開口225bが形成されている弁座111と、この弁座111に流体の流通方向の下流側から当接して上端開口225bを塞いでいる弁体112と、弁体112と弁室13の円形天井面13bとの間に挿入され、弁体112を所定の付勢力で弁座111に付勢している付勢部材を備えている。本実施形態では、付勢部材は圧縮コイルバネ113であり、弁座111は弁室13の円形底面13aである。
【0056】
弁体112は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等のゴム製の弾性材料からなり、弁座111に対向している円形の平板形状の閉鎖部112aと、この閉鎖部112aの下面から下方に向けて突出する円環状突部112bとを備えている。円環状突部112bは閉鎖部112aと同軸上に形成されており、弁座111において、第2流路225の上端開口225bの周りに当接している。円環状突部112bは、閉鎖部112aの下面の外周縁から外側に向かって下方に傾斜するように形成されており、閉鎖部112aから離れるに従って厚さ寸法が減少するように先細りになっている。
【0057】
また、弁体112は、閉鎖部112aの弁座111とは反対側に位置する上面に、圧縮コイルバネ113の当接位置を位置決めするための位置決め部112cを備えている。位置決め部112cは圧縮コイルバネ113の下端開口113aの内径に対応する外径を備える円柱形状の突部であり、円環状突部112bと同軸上に形成されている。
【0058】
圧縮コイルバネ113は、上方に向かって内径の寸法が増加している。下端開口113aの内径は、第2流路225の上端開口225bの開口径よりも大きく、位置決め部112cを挿入可能な大きさに設定されている。位置決め部112cに圧縮コイルバネ113の下端開口113aを挿入した状態で逆止弁11を弁室13内に配置すると、圧縮コイルバネ113は、上端の円形端部が弁室13の円形天井面13bの第1流路212の下端開口212aの周りに当接し、下端の円形端部が閉鎖部112aの上面に当接し、圧縮された状態となる。これにより、圧縮コイルバネ113は、弁体112を弁座111に向けて付勢する。なお、圧縮コイルバネ113は、下端の円形端部が、閉鎖部112aの上面において円環状突部112bと対応する位置またはその近傍に当接するように配置することが好ましい。
【0059】
逆止弁11は、ポンプ室8の容積がダイヤフラム12によって縮小されることによりポンプ室8が高圧になった場合等に、流出側流路10において圧縮コイルバネ113による所定の付勢力以上の所定圧力が流出方向にかかると、第2流路225の上端開口225bを開き、流出側流路10を開状態とする。また、流出側流路10に流出方向とは反対方向に圧力がかかると、第2流路225の上端開口225bを閉じ、流出側流路10を閉状態とする。
【0060】
(アクティブバルブ4の構成)
次に、図2、図3および図7を参照してアクティブバルブ4を詳細に説明する。図7は、図1に示すアクティブバルブ周辺の断面図である。図3に示すように、アクティブバルブ4は、円筒形状の胴部41と、胴部41から上方に同軸で延びているオリフィス構成部42と、胴部41から下方に同軸で延びている流入管6を備えている。
【0061】
オリフィス構成部42は胴部41よりも小径であり、流入管6はオリフィス構成部42よりも小径である。流入管6は容積型ポンプ1の流入管6を兼ねるものであり、下流端が流体入口6aとなっている。図2に示すように、アクティブバルブ4は、オリフィス構成部42が下側ハウジング22の第4凹部226の小径部226bに挿入され、胴部41の上端部分が大径部226aに挿入された状態で下側ハウジング22に取り付けられている。
【0062】
図7に示すように、オリフィス構成部42は、円柱形状部分421と、この円柱形状部分421の下端の外周側に形成された円環状のフランジ部分422を備えている。円柱形状部分421には、その中心軸に沿って上下方向に貫通するオリフィス423が形成されている。オリフィス423の下端開口423aは円柱形状部分421の下端面に露出している。また、円柱形状部分421の下端面には、オリフィス423の下端開口423aの周りに円環状凹部424が形成されており、これにより、オリフィス423の下端開口423aの周縁は環状突部となっている。環状突部はオリフィス423の下端開口423aを開閉する弁体43の弁座44となる。
【0063】
胴部41は、内側に、流入管6とオリフィス423とを連通させる流路45を備えている。流路45は、オリフィス423および流入管6と同軸上に設けられている。アクティブバルブ4が下側ハウジング22に固定されると、第3流路227、第4凹部226の上端部分226cおよびアクティブバルブ4によって、ポンプ室8から流体入口6aに至る流入側流路9が構成される。流路45内には軸線方向に往復移動可能な状態で弁体43が挿入されている。弁体43はオリフィス423の流路45の側の下端開口423aを開閉することによって流入側流路9を開閉する。
【0064】
弁体43は、円柱形状をしている。弁体43はステンレス製のパイプ431と、パイプ431の内側に上下方向に配列された円柱状の4つのマグネット432、隣り合うマグネット432との間に各々配置された3枚の円板状の磁性板433、上端および下端にそれぞれ配置された2枚の円盤状の磁性板434、上端の磁性板434の上に配置されたステンレス製の蓋板435、下端の磁性板434の下に配置されたステンレス製の底板436を備えている。なお、パイプ431、蓋板435、底板436として樹脂製のものを用いることもできる。蓋板435の上面には、円形のゴムシート437が接着等の方法で取り付けられている。ここで、隣り合うマグネット432は、互いに同一の極を相手方のマグネットの方に向けている。より詳細には、上端のマグネット432は上がS極、下がN極となるように配置されており、その下方に隣接配置されているマグネット432は上がN極、下がS極となるように配置されており、さらにその下方に配置されているマグネット432は上がS極、下がN極となるように配置されており、下端のマグネット432は上がN極、下がS極となるように配置されている。この結果、弁体43では、磁性板433が位置する個所に磁力線が集中している。
【0065】
流路45は、弁体43を駆動するための駆動コイル46を巻き回しているコイルボビン47の内側に形成されている。コイルボビン47の外周側には円筒形のヨーク48が配置されている。
【0066】
コイルボビン47は樹脂製であり、コイルボビン47の上端部分にはオリフィス構成部42を取り付けるための円環状の係合凹部471が形成されている。係合凹部471には、ゴムパッキン49を介してオリフィス構成部42のフランジ部分422が挿入されて固定される。オリフィス構成部42の円柱形状部分421の外周側には円環状の押さえ板50が上方から嵌め込まれており、この押さえ板50がコイルボビン47の上端面およびヨーク48の上端面に固定されることにより、オリフィス構成部42はコイルボビン47およびヨーク48に固定されている。押さえ板50は磁性材料から形成されている。なお、押さえ板50が磁性材料から形成されることで、押さえ板50は、弁体43に搭載されているマグネット432との間で磁気的な吸引力を発生することができるようになっている。
【0067】
また、コイルボビン47は、上下方向に延びる筒状胴部472と、筒状胴部472の外周面で拡径する6つのフランジ部473を備えている。コイルボビン47の筒状胴部472および6つのフランジ部473によって囲まれた5つの空間は、駆動コイル46が巻回される5つの巻線部となっている。
【0068】
コイルボビン47に巻回された5つの駆動コイル46は、励磁電流の向きを逆にするために、隣り合う駆動コイル46同士の巻回方向が逆である。また、5つの駆動コイル46は、例えば、直列に電気的に接続される。或いは、軸線方向の内側に位置する3つの駆動コイル46を並列に電気的に接続し、それらの接続部分に対して、軸線方向の両側の駆動コイル46を直列に電気的に接続した構成を採用することもできる。また、本例では、上端および下端の駆動コイル46の上下方向の寸法は、その間に位置している3つの駆動コイル46の上下方向の寸法の1/2としてある。弁体43において、上端および下端のマグネット432の上下方向の寸法は、その間の2つのマグネット432の上下方向の寸法の1/2としてある。この結果、弁体43が弁座44に当接して、オリフィス423の下端開口423aを閉鎖している状態では、磁性板433および磁性板434は、いずれも上下方向において駆動コイル46の中央位置に位置している。
【0069】
ここで、弁体43の外径寸法は、コイルボビン47の筒状胴部472の内径寸法よりもわずかだけ小さく、弁体43がコイルボビン47の筒状胴部472の内側の空間内に挿入された状態では、弁体43の外周側面とコイルボビン47の筒状胴部472の内周面との間を流体が流れる。
【0070】
かかるアクティブバルブ4の動作を説明する。アクティブバルブ4は駆動制御部によって駆動コイル46への給電が制御されることにより、駆動制御される。
【0071】
より具体的には、駆動コイル46への給電が行なわれていない状態では、弁体43は、弁体43のマグネット432と押さえ板50との磁気的な吸引力によって閉鎖位置に保持されている。閉鎖位置では、弁体43はコイルボビン47の内側の流路45を上端まで移動しており、弁体43の上端面にあるゴムシート437が弁座44に当接し、オリフィス423の下端開口423aを塞いでいる。これにより流入側流路9は閉状態となる。また、弁体43の磁性板433および磁性板434は、いずれも上下方向において駆動コイル46の中央位置に位置している。
【0072】
ここで、弁体43は、オリフィス423の下端開口423aが設けられている弁座44よりも流体の流通方向の上流側に位置しており、オリフィス423と同軸に形成されている流路45の中を流体の流通方向に移動するように構成されている。このため、流体入口6aからアクティブバルブ4の中へ流れ込む流体の流体圧(背圧)が弁体43を閉鎖位置に向かって移動させる方向に力を働かせている。
【0073】
次に、流入側流路9を開状態とする際には、駆動コイル46への給電を行なう。アクティブバルブ4では、マグネット432の外周側に筒状に巻き回された駆動コイル46が配置されているので、給電によって駆動コイル46を流れる励磁電流の向きとマグネット432による磁界の向きが直交する。この結果、駆動コイル46への給電が行なわれると、マグネット432の磁束と駆動コイル46との間に働くローレンツ力が弁体43を閉鎖位置から下方に移動させる力として働く。ここで、駆動コイル46への給電の開始時点では、弁体43の磁性板433および磁性板434は、いずれも上下方向において駆動コイル46の中央位置に位置しており、駆動コイルと鎖交する磁界を効率よく形成しているので、大きな推力が発生する。従って、弁体43は、押さえ板50との間の磁気的な吸引力および流体入口6aからアクティブバルブ4内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力に抗して下方の開放位置に移動する。
【0074】
弁体43が開放位置に移動すると、弁体43が弁座44から流体の流通方向の上流側に離れ、ゴムシート437がオリフィス423の下端開口423aから離間する。これにより、流入側流路9は開状態となる。開放位置では、弁体43は、その下端部がコイルボビン47の内部に当接し、或いは当接せずにバランスして停止した開き位置に至る。かかる開放位置では、流体入口6aから流入管6(流路45)を介して流入した流体は、弁体43の外周面とコイルボビン47の筒状胴部472との間に流れ込み、下端開口423aを介して、オリフィス423を通過し、ポンプ室8へ向かう。
【0075】
また、流入側流路9を閉状態とする際には、駆動コイル46への給電を停止する。駆動コイル46への給電を停止すると、押さえ板50との間の磁気的な吸引力および流体入口6aからアクティブバルブ4内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力により、弁体43は閉鎖位置に移動し、弁体43は弁座44に当接し、上端のゴムシート437でオリフィス423の下端開口423aを塞いだ状態に戻る。従って、流入側流路9は閉状態となる。
【0076】
なお、流入側流路9を閉状態とする際には、弁体43を閉じ位置から開き位置へ移動させる場合と反対方向の励磁電流を駆動コイル46へ供給するようにしてもよい。このようにすれば、弁体43は、弁体43のマグネット432と駆動コイル46との間に発生するローレンツ力、弁体43と押さえ板50との間の磁気的な吸引力および流体入口6aからアクティブバルブ4内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力によって上方に移動する。弁体43が閉じ位置に至った後には、駆動コイル46への給電を停止すれば、弁体43は閉鎖位置に保持される。
【0077】
(容積型ポンプの動作)
次に、容積型ポンプ1の動作を説明する。容積型ポンプ1の電磁式直動アクチュエータ3とアクティブバルブ4とは、駆動制御部によって同期して駆動制御される。
【0078】
より具体的には、電磁式直動アクチュエータ3の駆動コイル38およびアクティブバルブ4の駆動コイル46に給電されていない状態では、アクティブバルブ4の弁体43は閉鎖位置に保持されており、アクティブバルブ4は流入側流路9を閉状態としている。また、電磁式直動アクチュエータ3の移動体33は、上昇位置に保持されており、ダイヤフラム12はポンプ室8の容積を最小の第1容積としている。逆止弁11は、圧縮コイルバネ113の付勢力によって第2流路225の上端開口225bを塞ぎ、流出側流路10を閉状態としている。
【0079】
ポンプ室8内への流体の吸引が行なわれる際には、アクティブバルブ4の駆動コイル46への給電によって弁体43が閉鎖位置から開放位置へ駆動され、流入側流路9が開状態とされる。これと並行して、電磁式直動アクチュエータ3の駆動コイル38へ第1方向の給電が行なわれる。すなわち、第1方向の励磁電流が駆動コイル38に供給され、移動体33が上昇位置から下降位置へ駆動される。この結果、ポンプ室8の容積は最大の第2容積に拡大する。
【0080】
移動体33が下降してダイヤフラム12が下方に変位すると、ポンプ室8には負圧が発生するので、流体はポンプ室8内に吸い込まれる。ポンプ室8内に負圧が発生した状態では、逆止弁11は第2流路225の上端開口225bを閉鎖し、流出側流路10を閉状態としている。
【0081】
次に、ポンプ室8からの流体の吐出が行なわれる際には、アクティブバルブ4の駆動コイル46への給電が停止される。この結果、弁体43は開放位置から閉鎖位置に上昇して、流入側流路9が閉状態となる。これと並行して、電磁式直動アクチュエータ3の駆動コイル38への給電が行なわれる。すなわち、流体の吸引時とは逆の第2方向の励磁電流が駆動コイル38に供給され、移動体33が下降位置から上昇位置へ駆動される。この結果、ポンプ室8の容積は最小の第1容積に縮小する。
【0082】
ここで、ポンプ室8の容積が縮小されるとポンプ室8は高圧となるので、流出側流路10では、圧縮コイルバネ113による弁体112の付勢力と対応する所定圧力以上の力が流出方向にかかる。この結果、流体は、弁体112を流出方向に移動させて、第2流路225の上端開口225bから流出し、流体出口5aから吐出される。
【0083】
その後、容積型ポンプ1が待機状態となると、アクティブバルブ4の弁体43は閉鎖位置に保持され、アクティブバルブ4は流入側流路9を閉状態とする。また、電磁式直動アクチュエータ3の移動体33は上昇位置に保持され、ダイヤフラム12は、ポンプ室8の容積を第1容積とする。逆止弁11は、圧縮コイルバネ113の付勢力によって第2流路225の上端開口225bを塞ぎ、流出側流路10を閉状態とする。
【0084】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の容積型ポンプ1において、電磁式直動アクチュエータ3は、ヨーク37において移動体33の直動方向(上下方向)に平行に延在する軸部371に巻回された駆動コイル38を備えている一方、移動体33は、移動方向と平行なマグネット331の磁極面331a、331bを備えたマグネット331を有している。このため、駆動コイル38への給電を行なって電磁式直動アクチュエータ3を励磁すると、駆動コイル38を流れる励磁電流の向きと、マグネット331の磁界の方向とが直交して、ローレンツ力が発生する。また、駆動コイル38はヨーク37に巻き回されているので、駆動コイル38への給電を行なうと、駆動コイル38およびヨーク37は電磁コイル(電磁石)として機能し、電磁コイルとマグネット331との間に、電磁的な吸引力および電磁的な反発力が発生する。また、移動体33の移動方向に延びているヨーク37の両端に第1突部372、第2突部373が設けられているので、直動する移動体33がこれら第1突部372、第2突部373のいずれかに接近すると、マグネット331と第1突部372、第2突部373との間に磁気的な吸引力が発生する。すなわち、容積型ポンプ1では、ローレンツ力と、電磁的な吸引力および電磁的な反発力と、磁気的な吸引力とをダイヤフラム12の推力とすることができる。この結果、これら3つの力を用いて推力を得ることができるので、容積型ポンプ1によれば、ポンプ室8の容積を変化させるための可動体を効率よく駆動できる。よって、駆動コイル38に供給する励磁電流を抑えることができる。
【0085】
また、駆動コイル38への給電を停止して、電磁式直動アクチュエータ3を消磁状態とすると、マグネット331と第1突部372または第2突部373との磁気的な吸引力によって移動体33は上昇位置または下降位置に選択的に保持される。従って、駆動コイル38への給電を行なわなくても、外部から加わる振動等により移動体33が移動してしまうことを防止できる。この結果、待機状態における電磁式直動アクチュエータ3の消費電力を抑えることができるので、容積型ポンプ1の消費電力を抑えることができる。
【0086】
また、本形態では、移動体33の推力は、倍力機構7を介してダイヤフラム12(可動体)に伝達され、ポンプ室8の容積を変化させる。このため、移動体33に付与する推力が比較的小さくても、ダイヤフラム12を変位させることができるので、電磁式直動アクチュエータ3での消費電力を低く抑えることができるとともに、電磁式直動アクチュエータ3の小型化を図ることができる。
【0087】
また、本形態において、ポンプ室8と流体入口6aの間に配置されたアクティブバルブ4は、弁体43が弁座44よりも流体の流通方向の上流側に位置している。また、弁体43は、流体の流通方向の上流側から弁座44に当接して下端開口423aを閉鎖する閉鎖位置と、閉鎖位置よりも流通方向の上流側に離れて下端開口423aを開放する開放位置の間を移動する。この結果、流体入口6aからアクティブバルブ4内へ流れ込む流体の流体圧に起因する力は、弁体43を閉鎖位置に向かって移動させる方向に働くので、流体入口6aの側の圧力が上昇すると、流体の流体圧に起因する力によって弁体43は閉鎖位置に付勢される。よって、流入側流路9は開かない。従って、アクティブバルブ4を駆動していないにもかかわらず、流体が流体入口6aからポンプ室8を経由して流体出口5aへ流通してしまうことを回避できる。
【0088】
(倍率機構7の変形例)
図8は、本発明を適用した容積型ポンプ1の倍力機構7の変形例を示す説明図である。上記実施の形態では、支軸71、従動側の連結軸72および駆動側の連結軸73を機構的に連結するにあたって、揺動板75の厚さを利用して穴751、752、753を形成した。但し、図8(a)に示すように、コの字形状の平面形状を有する薄い板材からなる揺動板75を用い、揺動板75の端部を筒状に曲げて支軸71および連結軸73の端部を機構的に連結してもよい。また、連結軸72の端部を保持するにあたっては、揺動板75のコの字形状の本体部分759と、揺動板75を折り曲げた部分758との間に連結軸72の端部を緩く挿入した構造を採用してもよい。また、支軸71および連結軸72を支持するにあたって、揺動板75を折り曲げて筒部756、757が構成されている。
【0089】
また、倍力機構としては、てこを利用した倍力機構7に代えて、図8(b)に示すように、支点770を中心に揺動可能な揺動板77に小径扇形歯車771と大径扇形歯車772とを設け、小径扇形歯車771と従動部材120との間でラック−ピニオン機構を構成し、大径扇形歯車772と移動体33との間でラック−ピニオン機構を構成してもよい。
【0090】
(容積型ポンプの他の構成例)
ポンプ室8の容積を変化させるための可動体としては、ダイヤフラム12以外のものを用いることができる。例えば、シリンダのように、ポンプ室8の底面を移動体33の移動に伴って昇降させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0091】
3・・電磁式直動アクチュエータ
4・・アクティブバルブ
5a・・流体出口
6a・・流体入口
7・・倍力機構
8・・ポンプ室
9・・流入側流路
10・・流出側流路
11・・逆止弁(パッシブバルブ)
12・・ダイヤフラム(ポンプ用の可動体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室と、該ポンプ室の容積を規定する可動体と、該可動体を前記ポンプ室の容積が変化する方向に駆動する電磁式直動アクチュエータと、を有する容積型ポンプであって、
前記電磁式直動アクチュエータは、
アクチュエータケースと、
該アクチュエータケースによって直動可能に支持されている移動体と、
磁極面が前記移動体の移動方向に平行になるように前記移動体に取り付けられたマグネットと、
前記移動体の移動方向に沿って延在するように前記アクチュエータケースに固定されたヨークと、
前記ヨークに巻回された駆動コイルと、
を有し、
前記ヨークは、前記移動体が直動方向における第1位置に位置するときに前記マグネットとのギャップが最小になる第1突部と、前記直動方向において前記第1位置と異なる第2位置に前記移動体が位置するときに前記マグネットとのギャップが最小になる第2突部とを備え、
前記移動体と前記可動体との間には、前記移動体の推力を倍力して前記可動体に伝達する倍力機構が設けられていることを特徴とする容積型ポンプ。
【請求項2】
前記倍力機構は、支点を中心に揺動可能な揺動部材を備えたてこであることを特徴とする請求項1に記載の容積型ポンプ。
【請求項3】
前記第1位置では、前記ポンプ室の容積が最小となり、
前記第2位置では、前記ポンプ室の容積が最大となることを特徴とする請求項1または2に記載の容積型ポンプ。
【請求項4】
流体入口および前記ポンプ室に連通する流入側流路に設けられたアクティブバルブと、
前記ポンプ室および流体出口に連通する流出側流路に設けられたパッシブバルブと、
を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の容積型ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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