説明

容量性自発光素子を用いた表示装置及びその駆動方法

【課題】容量性自発光素子の特性に適したサブフィールド駆動を用い、安定した精度の良い階調表示が得られる表示装置を提供する。
【解決手段】複数本の走査電極5及びデータ電極6と、両電極間に配置された容量性の自発光層4とを備え、各走査電極に走査電圧が順次供給され、各データ電極に表示信号データに応じたデータ電圧が供給される。電極交差部の発光層が各々2次元配列の画素を形成する。1フレーム期間を等時間間隔の複数のサブフィールドに分割し、各サブフィールドでの発光輝度の組み合わせにより階調が表現されるように発光輝度の重み付けが設定される。走査電圧を、各サブフィールド毎にその重み付けに対応した電圧波形に調整し、データ電圧により、表示信号データに応じて選択的に各データ電極をオン状態にする。走査電圧とデータ電圧の電位差に基づいて、発光層に、重み付けに応じた輝度で発光する電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば無機EL(エレクトロルミネッセンス)素子のような、容量性自発光素子により構成された画素をマトリクス状に配列して表示パネルを構成し、各画素を選択駆動して画像の表示を行う自発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無機EL素子は、蛍光体層及び誘電体層を含む発光層を一対の電極間に挟んだ構造を有し、一対の電極間に電圧パルスを印加することにより発光する。無機EL表示装置の表示パネルは、このような無機EL素子をマトリクス状に配列して構成される。すなわち、ガラス等の基板上に、複数本のストライプ状電極を互いに平行に例えば列方向に配列してデータ電極とし、データ電極に直交する行方向に複数本のストライプ状電極を互いに平行に配列して走査電極とする。データ電極と走査電極の間に発光層を介在させ、両電極の交差部において、発光層をデータ電極と両電極で挟んだ構造により無機EL素子を形成することにより、多数の表示画素が2次元配列されたパッシブマトリクス型の表示パネルが構成される。
【0003】
ところで無機EL素子は、印加電圧の大きさに応じて発光輝度が大きくなるが、電圧の変化に対する輝度の変化の傾きが極めて大きい。従って、中間調表示を行うために電圧階調法を用いた場合、狭い範囲の電圧に階調を割り当てなければならない。そのため、駆動回路の特性のばらつき等によって、駆動パルスの振幅が僅かでも変化すると、輝度が大きく変化して精度の良い階調表示が得られない。
【0004】
これを解決する中間調表示方式の1つとして、サブフィールド駆動が知られている(例えば特許文献1を参照)。時間軸変調方式の一種であるサブフィールド駆動では、所定の期間(例えば、動画の場合には1画像の表示単位である1フレーム)を複数のサブフィールドに分割し、表示すべき階調に応じたサブフィールドの組み合わせで画素が表示駆動される。表示される階調は、1フレームに占める画素の駆動期間の割合によって決まり、この割合は、サブフィールドの組み合わせによって決定される。この方式では、電圧階調法のように、無機EL素子に対する印加電圧を表示階調数分だけ用意する必要がないので、データ電極駆動用ドライバの回路規模を縮小できる。また、D/A変換回路やオペアンプ等の特性のばらつき、或いは、各種の配線抵抗の不均一性等に起因した表示品質の低下を抑制できるという利点もある。
【特許文献1】特開2004−37495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等に記載の従来のサブフィールド駆動では、各サブフィールドの重み付けを、各サブフィールドでの発光駆動期間の長さに対応させている。すなわち、駆動期間の異なる複数のサブフィールドの組み合わせにより、階調を表現する。
【0006】
一方、無機EL素子は容量性の素子であるため、本質的にパルス幅階調法には適していない。すなわち、発光層に矩形波状の駆動電圧を印加すると、発光に寄与する電流は、電圧の立ち上がり直後に急峻なピークをもって立ち上がり、コンデンサへの充電電流と同様の挙動を示す。電流が流れる時間は数μ秒という短い時間であり、電流が流れた後に印加される電圧は発光には寄与しない。従って、中間調表示を行うためにパルス幅を制御する場合、電流が流れた後のパルス幅を制御しても、階調間に輝度差を得ることができない。パルス幅の制御によって十分な輝度差を有する階調表示を得るためには、充電電流が流れる数μ秒の時間に多段階のパルス幅を設定する必要がある。そのため、駆動回路の応答速度やパルス幅の制御精度等が表示特性に影響し、パルス幅が僅かでも変化すると、輝度が大きく変化して精度の良い階調表示が得られない。
【0007】
以上のような問題は、無機EL素子に限らず、容量性自発光素子を用いた表示装置に共通した問題である。
【0008】
従って、本発明は、容量性自発光素子の特性に適したサブフィールド駆動を用い、安定した精度の良い階調表示を得ることが可能な容量性自発光素子を用いた表示装置、及びその駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の容量性自発光素子を用いた表示装置は、複数本の走査電極と、前記走査電極に交差する複数本のデータ電極と、前記走査電極と前記データ電極の間に配置された容量性の自発光層と、各々の前記走査電極に走査電圧を順次供給する走査側駆動回路と、各々の前記データ電極に表示信号データに応じてデータ電圧をそれぞれ供給するデータ側駆動回路と、外部からの入力信号に応じて前記走査側駆動回路及び前記データ側駆動回路を制御する駆動制御回路とを備え、前記走査電極と前記データ電極の各交差部に位置する前記発光層により形成された複数個の画素がマトリクス配列される。そして、1フレーム期間を等時間間隔の複数のサブフィールドに分割して、各サブフィールドでの発光輝度の組み合わせにより階調が表現されるように各サブフィールドでの発光輝度の重み付けが設定されており、前記走査側駆動回路は前記走査電圧を、各前記サブフィールド毎に前記重み付けに対応した電圧波形に調整して前記走査電極に供給し、前記データ側駆動回路は前記データ電圧として、前記表示信号データに応じて各前記サブフィールド毎に選択的に各前記データ電極をオン状態にするオン電圧を供給し、前記走査電圧が供給された前記走査電極と前記オン電圧が供給された前記データ電極との間の前記発光層に、前記走査電圧と前記オン電圧の電位差に基づき前記重み付けに応じた発光輝度が得られる電圧が印加され、前記オン電圧が供給されない前記データ電極と前記走査電極との間の前記発光層に印加される電圧は、発光の閾値を超えない大きさに設定されたことを特徴とする。なお、発光の閾値を超えない大きさに設定された、とは、発光電流を流さないようにスイッチされる構成も含むことを意味する。
【0010】
本発明の容量性自発光素子を用いた表示装置の駆動方法は、複数本の走査電極と、前記走査電極に交差する複数本のデータ電極と、前記走査電極と前記データ電極の間に配置された容量性の自発光層とを備え、前記走査電極と前記データ電極の各交差部に位置する前記発光層により形成された複数個の画素がマトリクス配列された表示装置の駆動方法であって、1フレーム期間を等時間間隔の複数のサブフィールドに分割して、各サブフィールドでの発光輝度の組み合わせにより階調が表現されるように各サブフィールドでの発光輝度の重み付けを設定し、前記走査電極には、各前記サブフィールド毎に前記重み付けに対応した電圧波形に調整した走査電圧を順次供給し、各前記データ電極には、前記表示信号データに応じて各前記サブフィールド毎に選択的に当該データ電極をオン状態にするオン電圧を供給して、前記走査電圧が供給された前記走査電極と前記オン電圧が供給された前記データ電極との間の前記発光層に、前記走査電圧と前記オン電圧の電位差に基づき前記重み付けに応じた発光輝度が得られる電圧が印加され、前記オン電圧が供給されない前記データ電極と前記走査電極との間の前記発光層に印加される電圧は、発光の閾値を超えない大きさとなるように設定することを特徴とする。なお、発光の閾値を超えない大きさに設定する、とは、発光電流を流さないようにスイッチする構成も含むことを意味する。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、容量性自発光素子の特徴である、応答速度が速くインパルスでの輝度を出力する特性を活かし、等時間間隔のサブフィールドにより駆動が容易で、安定した精度の良い階調表示を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の表示装置において、前記走査電圧は、各前記サブフィールド毎の前記重み付けに対応した振幅の大きさを有する構成とすることができる。
【0013】
また、前記走査側駆動回路は前記走査電圧として、1ラインの表示期間の繰り返し周波数よりも高い周波数の交流波形を生成し、その交流波形の振幅を各前記サブフィールドの前記重み付けに対応させた大きさに変化させて前記走査電極に供給し、前記データ側駆動回路は前記データ電圧として、前記走査電圧の交流波形と同一周波数で逆相の交流波形を生成して、前記データ電極に供給する構成としてもよい。
【0014】
また、前記走査側駆動回路は前記走査電圧として、1ラインの表示期間の繰り返し周波数よりも高い周波数の交流波形を生成し、その交流波形の周波数を各前記サブフィールドの前記重み付けに対応させた大きさに変化させて前記走査電極に供給し、前記データ側駆動回路は前記データ電圧として、前記走査電圧の交流波形と同一周波数で逆相の交流波形を生成して、前記データ電極に供給する構成としてもよい。
【0015】
また、前記発光層が、誘電体層及び蛍光体層を含む無機EL発光層である構成とすることができる。
【0016】
本発明の表示装置の駆動方法において、前記走査電圧は、各前記サブフィールド毎の前記重み付けに対応した振幅の大きさを有する構成とすることができる。
【0017】
また、前記走査電圧として、1ラインの表示期間の繰り返し周波数よりも高い周波数の交流波形を生成し、その交流波形の振幅を各前記サブフィールドの前記重み付けに対応させた大きさに変化させて前記走査電極に供給し、前記データ電圧として、前記走査電圧の交流波形と同一周波数で逆相の交流波形を生成して、前記データ電極に供給する構成としてもよい。
【0018】
また、前記走査電圧として、1ラインの表示期間の繰り返し周波数よりも高い周波数の交流波形を生成し、その交流波形の周波数を各前記サブフィールドの前記重み付けに対応させた大きさに変化させて前記走査電極に供給し、前記データ電圧として、前記走査電圧の交流波形と同一周波数で逆相の交流波形を生成して、前記データ電極に供給する構成としてもよい。
【0019】
また、前記発光層が、誘電体層及び蛍光体層を含む無機EL発光層である構成としてもよい。
【0020】
以下、本発明の実施の形態における容量性自発光素子を用いた表示装置について、図面を参照して具体的に説明する。以下の説明では、無機EL表示素子を用いた表示装置を例として説明するが、以下に記載される構成等は、他の容量性自発光素子を用いた表示装置にも同様に適用可能である。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における無機EL表示装置の概略構成を示すブロック図である。この無機EL表示装置は、表示領域を形成する無機ELパネル1と、無機ELパネル1を駆動するための、走査側駆動回路2及びデータ側駆動回路3を有する。
【0022】
無機ELパネル1は、絶縁性基板(図示せず)上に無機EL発光層4を挟んで形成された、線状の複数本の走査電極5と、走査電極5と交差する複数本のデータ電極6を有する。無機EL発光層4は周知の構造を有し、図示しないが例えば、蛍光体層と、その少なくとも一方の面に形成された誘電体膜とから形成される。各走査電極5とデータ電極6の交差部が各画素を構成し、複数の画素が2次元配列されたパッシブマトリクス型の表示パネルである。
【0023】
走査電極5に接続された走査側駆動回路2は、走査電圧を順次供給する。走査側駆動回路2は、走査電圧として階調電圧を発生する階調電圧生成回路7と、各走査電極5に対して階調電圧生成回路7を選択的に接続するためのスイッチ回路8を有する。スイッチ回路8は、走査制御回路9により切り替えが制御されて順次オンとなり、それにより階調電圧生成回路7から各走査電極5に対して順次、階調電圧からなる走査電圧が供給される。データ電極6に接続されデータ側駆動回路3は、電圧生成回路10とデータ制御回路11を有し、電圧生成回路10が発生するデータ電圧を、表示信号データに応じてデータ制御回路11を介して選択的に各データ電極6に供給する。階調電圧生成回路7が発生する階調電圧、及び電圧生成回路10が発生するデータ電圧についての説明は後述する。
【0024】
階調電圧生成回路7、走査制御回路9、電圧生成回路10、及びデータ制御回路11は、駆動制御回路12から供給を受ける信号により動作する。駆動制御回路12には、外部から垂直同期信号Vs、水平同期信号Hs、データ転送クロック信号CLK、表示信号データD等が入力される。駆動制御回路12は、それらの信号に基づき、それぞれ必要な信号を生成して、走査側駆動回路2、及びデータ側駆動回路3に供給する。走査制御回路9、データ制御回路3、及び駆動制御回路12は、基本的には周知の回路と同様に構成することができるので、具体的な説明は省略する。
【0025】
本発明においては、図2に示すように、所定の表示期間、通常は1フレーム期間を、等時間間隔の複数のサブフィールドSF1〜SF5に分割して、各サブフィールドの表示信号データの組み合わせにより表示輝度の階調が決定されるように構成する。走査電圧、すなわち階調電圧生成回路7が発生する階調電圧は、各サブフィールド毎に、その重み付けに対応した輝度を与える波形に調整されて走査電極5に供給される。例えば図2に示すように、サブフィールドSF1〜SF5について、各々輝度比が1:2:4:8:16になるように階調電圧波形が生成される。各サブフィールドに応じた、階調電圧生成回路7が生成する階調電圧波形の切り換え、および走査制御回路9による各サブフィールド内でのスイッチ回路8の切り換えのタイミング等は、駆動制御回路12から供給される信号に基づいて制御される。
【0026】
データ側駆動回路3の電圧生成回路10が生成するデータ電圧は、データ電極6をオン状態にするオン電圧であり、表示信号データに応じてデータ制御回路11により選択的にデータ電極6に印加される。データ制御回路11による制御は、各サブフィールドSF1〜SF5の各表示ライン毎に切り換えられる。オン電圧からなるデータ電圧が供給された画素、すなわち、走査電圧として階調電圧が供給された走査電極5と、オン電圧が供給されたデータ電極6の交差部の無機EL発光層4には、走査電圧とオン電圧の電位差に基づき発光の閾値を超える電圧が印加される。データ電極6にオン電圧が印加されない画素では、無機EL発光層4に閾値を超える電圧が印加されないため、発光しない。このようにして、各サブフィールド毎に、それぞれの重み付けに応じた発光輝度の線順次走査が行われる。
【0027】
図3に、サブフィールドSF1〜SF5における階調電圧波形の一例を示す。この階調電圧は、1ラインの表示期間の繰り返し周波数よりも高い周波数(図示の都合上、図ではより低周波に描かれている)の交流波形である。周波数はサブフィールドSF1〜SF5において同一であるが、振幅が、各サブフィールドにおける輝度の重み付けに応じた大きさに設定される。このような交流波形にするのは、以下の理由による。
【0028】
すなわち、無機EL素子は容量性の素子であるため、発光層に駆動電圧を印加すると、発光に寄与する電流は、電圧の立ち上がり直後に急峻なピークをもって立ち上がり、コンデンサへの充電電流と同様の挙動を示す。電流が流れる時間は数μ秒という短い時間であり、電流が流れた後に印加される電圧は発光には寄与しない。すなわち、駆動電圧として直流電圧を印加したのでは、連続した発光を得ることができない。従って、無機EL表示装置においては、いわゆるフレーム(またはフィールド。以下単にフレームという。)反転駆動により、フレーム毎に発光層に印加する電圧の極性を反転させる駆動方法を用いる。これに対して、本実施の形態のような交流電圧で駆動することにより、各サブフィールド内で反転駆動を行うことができる。しかもそのようにすれば、後述するように、共振回路を用いた簡素な回路構成とすることができる。
【0029】
図3のような階調電圧からなる走査電圧を走査電極5に供給するとともに、データ電極6には、データ電圧として、走査電圧の交流波形と同一周波数で逆相の交流波形を、表示信号データに応じて印加する。この場合、データ電圧の振幅は、全てのサブフィールドについて一定でよい。あるいは、データ電圧の振幅を、サブフィールド毎に異ならせて、走査電極5に供給する走査電圧との組み合わせにより、各サブフィールドの階調を決定する構成とすることもできる。
【0030】
交流の階調電圧からなる走査電圧、あるいは交流のデータ電圧を発生するために、例えば図4に示すような共振回路の構成を用いることができる。この共振回路は、電源13と接地電位間に直列に接続された、第1コイル14とスイッチング素子15を含む。第1コイル14とスイッチング素子15の接続点に、第1キャパシタ16の一方の端子が接続されている。第1キャパシタ16の他方の端子は接地されている。第2コイル17と第2キャパシタ18が直列に接続されて、第1キャパシタ16に並列に接続されている。スイッチング素子15には水平同期信号Hsに基づいて作成された水平走査ライン同期信号Hdが入力される。第1キャパシタ16と第2コイル17により発生する共振で得られる交流電圧が、第1キャパシタ16と第2コイル17の接続点からスイッチ回路8に供給される。
【0031】
図4の共振回路の動作は、図5に示すとおりである。図5(a)は、スイッチング素子15に入力される水平走査ライン同期信号Hdを示す。水平走査ライン同期信号Hdは、外部から供給される水平同期信号Hsに基づいて作成され、表示走査の1水平ラインに対応する同期信号である。図5(b)は、出力される交流電圧波形を示す。信号Hdがローレベルの期間はスイッチング素子15がオフとなり、第1キャパシタ16と第2コイル17からなる共振部に電力が供給され、交流電圧が出力される。信号Hdがハイレベルの期間はスイッチング素子15がオンとなり、共振部に電力が供給されないため、交流電圧の出力が停止する。
【0032】
図示されるように、この共振回路が出力する電圧波形の周波数は、水平走査ライン同期信号Hdの周波数、すなわち1ラインの表示期間の繰り返し周波数よりも高い。従って、水平走査期間内に複数個の交流波形が含まれる。実用的には、1kHz〜100kHzの範囲の周波数に設定すればよい。また、走査電極5に供給される走査電圧は、図5(b)に示すようにサブフィールドの重み付けに応じて振幅が変化するが、データ電極6に供給されるデータ電圧は、図5(c)に示すように、サブフィールドが変わっても一定である。また、図5(c)に示すデータ電圧は、図5(b)に示す走査電圧に対して逆相になっている。
【0033】
例えば、図4の共振回路において、電源13の電圧をスイッチング素子等で変調すれば、電源変調を行うことができ、それにより各画素の無機EL発光層4の発光輝度を、各サブフィールドの重み付けに従って変化させることができる。
【0034】
以上のように、図4の共振回路を用いることにより、正極性電源だけで正と負の両極性の駆動電圧を生成できるので、回路の構成が簡素になり、装置の小型化、低コスト化に有利である。また、階調電圧生成回路7と電圧生成回路10に同一構成の共振回路を用いれば、生成される交流電圧のDC成分の非対象性を相殺し、無機EL発光層4に印加されるDC電圧を低減することができる。従って、無機EL発光層を寿命を長く維持するために有利である。
【0035】
図4の共振回路において、例えば、電源電圧を35Vとし、信号Hdが30μsで、90kHz、300Vp−0の交流電圧波形を生成する場合は、第1コイル14のインダクタンス値は6mH、第2コイル17のインダクタンス値は0.5mH、第1キャパシタ16の容量値は6600pF、第2キャパシタ18の容量値は220nFとすればよい。また、信号Hdが10msで、1kHz、300Vp−0の交流電圧波形を生成する場合は、第1コイル14のインダクタンス値は30mH、第2コイル17のインダクタンス値は3mH、第1キャパシタ16の容量値は8.5μF、第2キャパシタ18の容量値は220μFとすればよい。
【0036】
図6は、階調電圧生成回路7あるいは電圧生成回路10に用いられる共振回路の他の構成例を示す。図4に示した共振回路が2つのコイルを用いた構成であるのに対して、この共振回路は1つのコイル19を用いた構成である。電源13と接地電位間に、コイル19と、FETからなるスイッチング素子20が直列に接続される。スイッチング素子20に並列にキャパシタ21が接続される。コイル19とキャパシタ21により発生する共振で得られる交流電圧が、キャパシタ21とコイル19の接続点からスイッチ回路8に供給される。
【0037】
この共振回路の動作は、基本的に図5に示されたものと同様である。すなわち、スイッチング素子20に、図5(a)に示すような信号Hdが入力される。信号Hdがローレベルの期間はスイッチング素子20がオフとなり、キャパシタ21に電力が供給され、交流電圧が出力される。信号Hdがハイレベルの期間はスイッチング素子20がオンとなり、キャパシタ21に電力が供給されないため、交流電圧の出力が停止する。
【0038】
図4の2つのコイルを用いた共振回路は、電源に接続される第1コイル14のインダクタンス値を大きくできるので、スイッチング素子15に流れ込むDC電流を抑え、消費電力を小さくできる利点があるのに対して、図6の共振回路は、部品点数が少ない簡素な構成となり、コストを低減させることができる。
【0039】
図7に、図1におけるスイッチ回路8の構成の例を示す。このスイッチ回路8は、2つのダイオード22、23と、2つのFET24、25、およびパルストランス26により構成される。ダイオード22、23は互いに逆極性となるように直列に接続され、FET24、25がそれぞれダイオード22、23と並列に接続されている。ダイオード22、23の直列回路の両端がこのスイッチ回路の入力端27、出力端28となっている。入力端27には階調電圧生成回路7の出力が供給され、出力端28が走査電極5に接続されている。パルストランス26の一次側入力端29には、走査制御回路9から、線順次走査に対応したスイッチ制御パルスが供給される。パルストランス26の二次側は、一端がFET24、25のゲートに接続され、他端がダイオード22、23の接続点、およびFET24、24の接続点に接続されている。パルストランス26に代えて、フォトカプラを使用して構成することもできる。
【0040】
(実施の形態2)
実施の形態2における無機EL表示装置について、図8を参照して説明する。無機EL表示装置の基本的な構成は、図1の装置と同様である。図8は、本実施の形態の無機EL表示装置に駆動に際して、サブフィールドSF1〜SF5において供給される走査電圧、すなわち階調電圧波形の例を示す。この階調電圧は、1ラインの表示期間の繰り返し周波数よりも高い周波数の交流波形である。この交流波形は、振幅がサブフィールドSF1〜SF5において同一であるが、周波数が、各サブフィールドにおける輝度の重み付けに応じた高さに設定されている。例えば、サブフィールドSF1における周波数と比べて、サブフィールドSF5における周波数は16倍の高さに設定される。周波数が高いほど、1サブフィールドでの発光の頻度が高くなり、発光量が多くなる。
【0041】
このような階調電圧からなる走査電圧を階調電圧生成回路7により生成して走査電極5に供給するとともに、データ電極6には、データ電圧として、電圧生成回路10により走査電圧の交流波形と同一周波数で逆相の交流波形を、表示信号データに応じて印加する。この場合、データ電圧の振幅は、全てのサブフィールドについて一定でよい。
【0042】
階調電圧生成回路7あるいは電圧生成回路10には、実施の形態1と同様、図4、あるいは図6に示したような共振回路を用いることができる。例えば図4の共振回路において、第2キャパシタ18の容量値を可変とすれば、出力される交流電圧を容量値に応じて周波数変調することができる。
【0043】
階調電圧生成回路7により生成する交流波形の周波数は、例えば、次のように設定すればよい。線順次走査を用い、1フィールドを60Hzで120ラインとして、5サブフィールドにより構成する場合、サブフィールド周波数は、サブフィールドSF1の最低周波数36kHzから順次、72kHz、144kHz、288kHz、576kHzとする。50ラインとする場合であれば、サブフィールドSF1の最低周波数15kHzから順次、30kHz、60kHz、120kHz、240kHzとする。面順次走査の場合は、サブフィールドSF1の最低周波数1kHzから順次、2kHz、4kHz、8kHz、16kHzとする。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の表示装置は、容量性自発光素子の特性に適したサブフィールド駆動により、安定した精度の良い階調表示を得ることが可能であり、ディスプレイとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態1における容量性自発光素子を用いた表示装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態におけるサブフィールド駆動の概念を示す図
【図3】実施の形態1における各サブフィールドでの階調電圧の一例を示す波形図
【図4】図1の容量性自発光素子を用いた表示装置を構成する共振回路を示す回路図
【図5】図4の共振回路の動作を示す波形図
【図6】図1の容量性自発光素子を用いた表示装置を構成する共振回路の他の例を示す回路図
【図7】図1の容量性自発光素子を用いた表示装置を構成するスイッチ回路の例を示す回路図
【図8】実施の形態2における各サブフィールドでの階調電圧の一例を示す波形図
【符号の説明】
【0046】
1 無機ELパネル
2 走査側駆動回路
3 データ側駆動回路
4 無機EL発光層
5 走査電極
6 データ電極
7 階調電圧生成回路
8 スイッチ回路
9 走査制御回路
10 電圧生成回路
11 データ制御回路
12 駆動制御回路
13 電源
14 第1コイル
15 スイッチング素子
16 第1キャパシタ
17 第2コイル
18 第2キャパシタ
19 コイル
20 スイッチング素子
21 キャパシタ
22、23 ダイオード
24、25 FET
26 パルストランス
27 入力端
28 出力端
29 一次側入力端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の走査電極と、前記走査電極に交差する複数本のデータ電極と、前記走査電極と前記データ電極の間に配置された容量性の自発光層と、各々の前記走査電極に走査電圧を順次供給する走査側駆動回路と、各々の前記データ電極に表示信号データに応じてデータ電圧をそれぞれ供給するデータ側駆動回路と、外部からの入力信号に応じて前記走査側駆動回路及び前記データ側駆動回路を制御する駆動制御回路とを備え、前記走査電極と前記データ電極の各交差部に位置する前記発光層により形成された複数個の画素がマトリクス配列された容量性自発光素子を用いた表示装置において、
1フレーム期間を等時間間隔の複数のサブフィールドに分割して、各サブフィールドでの発光輝度の組み合わせにより階調が表現されるように各サブフィールドでの発光輝度の重み付けが設定されており、
前記走査側駆動回路は前記走査電圧を、各前記サブフィールド毎に前記重み付けに対応した電圧波形に調整して前記走査電極に供給し、
前記データ側駆動回路は前記データ電圧として、前記表示信号データに応じて各前記サブフィールド毎に選択的に各前記データ電極をオン状態にするオン電圧を供給し、
前記走査電圧が供給された前記走査電極と前記オン電圧が供給された前記データ電極との間の前記発光層に、前記走査電圧と前記オン電圧の電位差に基づき前記重み付けに応じた発光輝度が得られる電圧が印加され、前記オン電圧が供給されない前記データ電極と前記走査電極との間の前記発光層に印加される電圧は、発光の閾値を超えない大きさとなるように設定されたことを特徴とする容量性自発光素子を用いた表示装置。
【請求項2】
前記走査電圧は、各前記サブフィールド毎の前記重み付けに対応した振幅の大きさを有する請求項1に記載の容量性自発光素子を用いた表示装置。
【請求項3】
前記走査側駆動回路は前記走査電圧として、1ラインの表示期間の繰り返し周波数よりも高い周波数の交流波形を生成し、その交流波形の振幅を各前記サブフィールドの前記重み付けに対応させた大きさに変化させて前記走査電極に供給し、
前記データ側駆動回路は前記データ電圧として、前記走査電圧の交流波形と同一周波数で逆相の交流波形を生成して、前記データ電極に供給する請求項2に記載の容量性自発光素子を用いた表示装置。
【請求項4】
前記走査側駆動回路は前記走査電圧として、1ラインの表示期間の繰り返し周波数よりも高い周波数の交流波形を生成し、その交流波形の周波数を各前記サブフィールドの前記重み付けに対応した周波数に変化させて前記走査電極に供給する請求項1に記載の容量性自発光素子を用いた表示装置。
【請求項5】
前記データ側駆動回路は前記データ電圧として、前記走査電圧の交流波形と同一周波数で逆相の交流波形を生成して、前記データ電極に供給する請求項4に記載の容量性自発光素子を用いた表示装置。
【請求項6】
前記発光層が、誘電体層及び蛍光体層を含む無機EL発光層である請求項1に記載の容量性自発光素子を用いた表示装置。
【請求項7】
複数本の走査電極と、前記走査電極に交差する複数本のデータ電極と、前記走査電極と前記データ電極の間に配置された容量性の自発光層とを備え、前記走査電極と前記データ電極の各交差部に位置する前記発光層により形成された複数個の画素がマトリクス配列された表示装置の駆動方法において、
1フレーム期間を等時間間隔の複数のサブフィールドに分割して、各サブフィールドでの発光輝度の組み合わせにより階調が表現されるように各サブフィールドでの発光輝度の重み付けを設定し、
前記走査電極には、各前記サブフィールド毎に前記重み付けに対応した電圧波形に調整した走査電圧を順次供給し、
各前記データ電極には、前記表示信号データに応じて各前記サブフィールド毎に選択的に当該データ電極をオン状態にするオン電圧を供給して、
前記走査電圧が供給された前記走査電極と前記オン電圧が供給された前記データ電極との間の前記発光層に、前記走査電圧と前記オン電圧の電位差に基づき前記重み付けに応じた発光輝度が得られる電圧が印加され、前記オン電圧が供給されない前記データ電極と前記走査電極との間の前記発光層に印加される電圧は、発光の閾値を超えない大きさとなるように設定することを特徴とする容量性自発光素子を用いた表示装置の駆動方法。
【請求項8】
前記走査電圧は、各前記サブフィールド毎の前記重み付けに対応した振幅の大きさを有する請求項7に記載の容量性自発光素子を用いた表示装置の駆動方法。
【請求項9】
前記走査電圧として、1ラインの表示期間の繰り返し周波数よりも高い周波数の交流波形を生成し、その交流波形の振幅を各前記サブフィールドの前記重み付けに対応させた大きさに変化させて前記走査電極に供給し、
前記データ電圧として、前記走査電圧の交流波形と同一周波数で逆相の交流波形を生成して、前記データ電極に供給する請求項8に記載の容量性自発光素子を用いた表示装置の駆動方法。
【請求項10】
前記走査電圧として、1ラインの表示期間の繰り返し周波数よりも高い周波数の交流波形を生成し、その交流波形の周波数を各前記サブフィールドの前記重み付けに対応した周波数に変化させて前記走査電極に供給する請求項7に記載の容量性自発光素子を用いた表示装置の駆動方法。
【請求項11】
前記データ電圧として、前記走査電圧の交流波形と同一周波数で逆相の交流波形を生成して、前記データ電極に供給する請求項10に記載の容量性自発光素子を用いた表示装置の駆動方法。
【請求項12】
前記発光層が、誘電体層及び蛍光体層を含む無機EL発光層である請求項7に記載の容量性自発光素子を用いた表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−119615(P2006−119615A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268829(P2005−268829)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(503217783)松下東芝映像ディスプレイ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】