説明

容量結合式タッチパネルにおける絶縁方法

【課題】 薄膜の保護層(絶縁層)で表面が覆われたタッチパネルの絶縁性を電気的に安全なものにする。
【解決手段】 タッチパネルと電源との間に、アイソレータ,電源周波数において絶縁体のインピーダンスとなるコンデンサ,結合コイル(相互インダクタンス),AC電源の絶縁トランス等を配設する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】容量結合式タッチパネル装置及びこれを使用するシステムに関し、特に表面に薄膜の保護層を設けた容量結合式タッチパネルの絶縁方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の実用化された容量結合式タッチパネルは、パネル有効全面に均一な面抵抗体を使用するタイプの場合、“手の平効果”(段落0003で説明)を実用上無くするためにパネル表面の保護層(絶縁効果も兼ねる)の厚みを極薄の1μm以下としていた。また、その他のタイプの場合(マトリクス状電極など)、指との容量結合を強く検出するために、パネル表面の絶縁層の厚みを0.4mm以下としていた。
【0003】図5を参照して“手の平効果”を説明する。このタッチパネル42は、電気安全性のためにパネル表面に0.4mmのガラス絶縁層を設けた容量結合式の例であり、指41がパネル面43にタッチしたときの状態を図5は示している。操作者は指41でP1点にタッチしたつもりでも、実際には結合容量が、P1点と指41の先端間以外にも、他の指とP2,P3間にもあり、また手の平とP4間にも図示するように少しづつではあるが生成される。これらの余分な結合容量は実際はP2,P3,P4付近に分布する。タッチパネル装置が認識する位置は、(P1点と指先間の結合容量が10pF位にしかならないために)これらの重み付け平均した一点であるPm点を算出する。
【0004】従って、操作者の意識するタッチ点よりも、主に手の平の方向にシフトした点が検出されてしまう。このシフト現象を本出願において“手の平効果”と表現する。ここで、パネル表面の絶縁層を薄くするほど、指41の先端とP1点の容量結合が強くなり、Pm点はP1点に近づく。この理由で、現在実用化されているものは、上記の通り極薄の表面膜厚にされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】商用AC100〜200Vから電源供給されるタッチパネル装置は、電源トランスを介し、電磁結合を介し、または電源ノイズフィルタ(特にコンデンサを使用したもの)を介して、多かれ少なかれ回路に電源成分がリークしている。それがタッチパネルの面抵抗またはマトリクス電極などにも伝わっている。AC200〜250Vの場合、人体に安全な絶縁物の厚みは、約0.4mmと言われており、上記のパネル表面の保護層(絶縁層)の厚みでは充分に安全とは言い切れない。
【0006】
【課題を解決するための手段】タッチパネルと電源との間に、アイソレータ,電源周波数において絶縁体のインピーダンスとなるコンデンサ,結合コイル(相互インダクタンス),AC電源の絶縁トランス等を配設する。
【0007】
【作用】アイソレータ及び結合コイルは、信号周波数成分を伝達するが電源周波数成分及びDC成分を阻止する。また、コンデンサは、信号カップリングコンデンサとなり且つAC電源周波数及びDCにおいて絶縁体と見なせる値が存在する。AC電源の絶縁トランスは、1次巻き線と2次巻き線間がAC,DCとも絶縁されている。従って、上記手段によりAC電源周波数成分及びDC成分に対して、タッチパネルと電源間が任意の電圧において絶縁される。
【0008】
【発明の実施の形態】タッチパネルの有効全面に均一な面抵抗体を使用するタイプのタッチパネル装置またはこれを使用するシステムにおいても、その他のタイプの場合(マトリクス状パネル電極など)においても、本発明の絶縁方法はAC,DC電源に対し有効実施される。また、タッチ位置を検出する場合のみならず、指の近接または接触を検出するスイッチ機能のみのタッチパネルに対しても、本発明の絶縁方法はAC,DC電源に対し有効実施される。
【0009】
【実施例】以下本発明の詳細を添付図を参照して説明する。第1の実施例である図1は、タッチパネル装置の内の、パネル部と能動回路の一部をも含めて、1つのブロックとして絶縁する方法についての説明図である。タッチパネル2は、均一な面抵抗体の周辺に低抵抗の周囲電極を配設してあり、パネル表面が保護膜(1μm以下であり低電圧に対する絶縁膜)で覆われている。故にこのタッチパネル2は容量結合式の、人体1の指のパネル2への二次元タッチ位置を検出するためのセンサーパネルである。
【0010】タッチパネル2と信号処理回路6間は、接続コード4,・・・,4及びスイッチ5,・・・,5を介して接続されている。発振器8により、信号カップリングコンデンサ7を介し、タッチパネル2の面抵抗体が電圧振動する。人体1は接地効果を持ち合わせており、人体1の指とパネル2間に、容量結合を介して信号電流が流れる。タッチパネル2の周辺各点から検出する電流値を測定することで、タッチ位置を算出する。信号処理回路6は、能動回路をも含んでいるので、比較的シンプルなもので精度良い信号検出が出来る。これらの詳細な動作説明は、特開平11−304942号公報、特願平11−216672号などを参照されたい。
【0011】信号処理回路6と主制御回路10間は、アイソレータ9を介して接続されており、必要な信号成分を伝達するが、電源周波数成分を阻止(絶縁)する。また、コンデンサ7の絶縁性について説明する。AC100〜200Vに対する人体への安全な絶縁性の目安としては、1MΩ以上のインピーダンスといわれている。電源周波数(60Hz)において、1MΩのインピーダンスは、コンデンサの場合約2500pFである。多くの場合、電源ノイズフィルタは電源電圧を1/2に分圧し、そのグランド回路に伝達する。この場合は約500kΩのインピーダンスになる5000pFでも良いことになる。本実施例では、信号カップリングコンデンサ7(電源に対する絶縁コンデンサ)の値を2200pFとしている。信号周波数(発振器8の周波数)が200kHz以上の場合、2200pFのインピーダンスは370Ω以下であり、充分に信号を伝達する。上述の様に、参照符号3に示すブロックは、他の回路と電源周波数において絶縁されている。つまりタッチパネル2は、電源から絶縁されている。
【0012】アイソレータ9の一部にコンデンサを使用する場合には、それとコンデンサ7との合計容量が5000pF以下なら上記に示した絶縁性を得る。タッチパネルの電極構造が、マトリクス状またはその他の構造の場合でも、上記の絶縁方法を同様に利用できる。更に、タッチ位置を二次元で検出する場合に限らず、一次元で検出する場合または、指の近接または接触を検出するスイッチ機能のみのタッチパネルに対しても、上記の絶縁方法を同様に利用できる。
【0013】次に第2の実施例について説明する。図2は、コンデンサによりパネル部11を電源から絶縁する方法についての説明図である。タッチパネル12は、接続コード13,・・・,13及び信号カップリングコンデンサ14,・・・,14を介して制御部15に接続されている。コンデンサ14,・・・,14の合計容量が5000pF以下なら上記の理由で、タッチパネル12は電源に対して絶縁されている。しかしここで注意すべきことがある。均一な面抵抗体を使用する二次元タッチパネルの場合、信号カップリングコンデンサ14と制御部15の入力インピーダンスとの合成インピーダンスが10Ω程度以上になると、タッチ検出位置エラー(中央寄りになるエラー)が大きくなってくる。従って、信号周波数の下限の制約がある。本実施例(接続コード13,・・・,13が4本の時)では、10MHz以上の信号周波数で、ほぼ良好なタッチ検出位置を得た。また、指の近接または接触を検出するスイッチ機能のみのタッチパネルに対しては、100kHz以上の信号周波数で、ほぼ良好な検出を得た。
【0014】次に、第3の実施例について説明する。図3R>3は、結合コイル24,・・・,24及びコンデンサ25により、パネル部21を電源から絶縁する方法についての説明図である。ここで、結合コイル24,・・・,24はアイソレータとして機能する。発振器27の信号出力は、コンデンサ25,結合コイル24,・・・,24の1次コイル,接続コード23,・・・,23を介して、タッチパネル22を電圧振動させる。コンデンサ25は、信号カップリングコンデンサ且つ電源に対する絶縁コンデンサであることは実施例1におけるそれと同様であり、200kHz以上の信号周波数で有効に作用した。パネル部21が、電源に対して絶縁されているので、タッチパネル22も当然電源に対して絶縁されている。ここで注意すべきことは、結合コイル24,・・・,24の1次と2次巻き線間の耐圧を確保しながら結合係数を大きくし、1次側から見た入力インピーダンスを信号周波数において10Ω程度以下に精度良く揃える事である。指の近接または接触を検出するスイッチ機能のみのタッチパネルの場合、結合コイル24が1個でよいことは言うまでもない。
【0015】次に、第4の実施例について説明する。図4R>4は、絶縁トランスにより、タッチパネル装置を含めたシステム全体を、AC電源から絶縁する方法についての説明図である。本実施例は、タッチパネル31と制御部32からなるタッチパネル装置、及びパソコン等のシステム本体33をも含めた、トータルシステム30をひとまとめにして、絶縁トランス34により、AC電源から絶縁してしまう方法である。ここで注意すべきことは、信号周波数までも絶縁トランス34が阻止(絶縁)してしまうので、また、パソコン等のシステム本体33において強い接地効果が得にくいために、タッチパネル31と指間に流れる信号電流が大きく減少し、安定なタッチ検出が困難になる。本実施例では、信号周波数を300kHz以上として、システム本体及び人体の接地効果を強化して、良好なタッチ検出を得た。本体回路グランド及び人体の接地効果に関する詳細は、特願平10−321508号等を参照されたい。
【0016】より低い信号周波数でも良好なタッチ検出をするには、AC電源(の片側)とシステム回路グランドとを、2500pF以下のコンデンサを介して接続すると良い(図示せず)。これは絶縁トランス34の浮遊容量を大きくしても達成できる。2500pF以下としたのは、AC電源電圧の100%がこのコンデンサに印加されるからである。
【0017】
【発明の効果】タッチパネル表面の保護膜(絶縁膜)が如何に薄くても、本発明の方法により、タッチ検出性能をほとんど落とすことなく安全な絶縁を施すことが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】 タッチパネル装置の内の、パネル部と能動回路の一部をも含めて、1つのブロックとして絶縁する方法についての説明図
【図2】 コンデンサによりパネル部を電源から絶縁する方法についての説明図
【図3】 結合コイル及びコンデンサによりパネル部を電源から絶縁する方法についての説明図
【図4】 絶縁トランスにより、タッチパネル装置を含めたシステム全体を、AC電源から絶縁する方法についての説明図
【図5】 電気安全性のために、表面に暑さ0.4mm以上の絶縁層を配設した、容量結合式タッチパネルにおける“手の平効果”の説明図
【符号の説明】
1 人体
2 タッチパネル
3 60Hzまでの電源に対して絶縁したブロック
4 接続コード
5 スイッチ
6 信号処理回路
7 電源に対する絶縁コンデンサ(信号カップリングコンデンサ)
8 発振器
9 アイソレータ
10 タッチパネル装置の主制御回路
11 電源に対してコンデンサで絶縁したパネル部
12 タッチパネル
13 接続コード
14 電源に対する絶縁コンデンサ(信号カップリングコンデンサ)
15 タッチパネル装置の制御部
21 電源に対して結合コイルとコンデンサで絶縁したパネル部
22 タッチパネル
23 接続コード
24 結合コイル
25 コンデンサ
26 制御部
27 発振器
30 電源に対して絶縁したトータルシステム
31 タッチパネル
32 タッチパネル装置の制御部
33 パソコン等のシステム本体
34 絶縁トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に薄膜の保護層を設けた容量結合式タッチパネルの、電源に対する絶縁方法であって、前記タッチパネルと能動回路をも含めた絶縁ブロックを設け、該絶縁ブロックと他回路間を、アイソレータ及び計5000pF以下の信号カップリングコンデンサにより前記電源に対して絶縁することで、前記タッチパネルを前記電源から絶縁することを特徴とする容量結合式タッチパネルにおける絶縁方法。
【請求項2】 表面に薄膜の保護層を設けた容量結合式タッチパネルの、電源に対する絶縁方法であって、前記タッチパネルと制御部間を計5000pF以下の信号カップリングコンデンサを介して接続することにより、前記タッチパネルを前記電源から絶縁することを特徴とする容量結合式タッチパネルにおける絶縁方法。
【請求項3】 表面に薄膜の保護層を設けた容量結合式タッチパネルの、電源に対する絶縁方法であって、制御部内の発振器出力と前記タッチパネル間を、1個の5000pF以下の信号カップリングコンデンサと結合コイルの1次巻き線を介して接続し、該結合コイルの2次巻き線を前記制御部に接続することにより、前記タッチパネルを前記電源から絶縁することを特徴とする容量結合式タッチパネルにおける絶縁方法。
【請求項4】 表面に薄膜の保護層を設けた容量結合式タッチパネルの、AC電源に対する絶縁方法であって、300kHz以上の信号周波数を使用し、前記タッチパネルを含むタッチパネル装置及びパソコン等のシステム本体へ、絶縁トランスを介して前記AC電源を供給することにより、前記タッチパネルを前記AC電源から絶縁することを特徴とする容量結合式タッチパネルにおける絶縁方法。
【請求項5】 表面に薄膜の保護層を設けた容量結合式タッチパネルの、AC電源に対する絶縁方法であって、前記タッチパネルを含むタッチパネル装置及びパソコン等のシステム本体へ、絶縁トランスを介して前記AC電源を供給し、前記システム本体の回路グランドと前記AC電源との間を2500pF以下のコンデンサを介して接続することにより、前記タッチパネルを前記AC電源から絶縁することを特徴とする容量結合式タッチパネルにおける絶縁方法。

【図2】
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【図5】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2002−14771(P2002−14771A)
【公開日】平成14年1月18日(2002.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−196933(P2000−196933)
【出願日】平成12年6月29日(2000.6.29)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】