説明

寄棟状折畳式テント

【課題】天井の高い骨組構造であっても棟材が撓む恐れがなく中央支柱を高く設置することが可能な大型の寄棟状折畳式テントを提供する。
【解決手段】寄棟状折畳式テント1は柱材2間に梁材3を横架し対角線上で対向する柱材2方向には屋根リンク部材4を配設する。屋根リンク部材4を構成する棟材4aが集結するテント中央に天幕8を支承する中央支柱9の支持具10を取り付け中間部の折曲点4d間には横架材11を架設する。支持具10は上部筒体10aと受台10b及び受台支持部材10dからなり中央支柱9を安定的に立設する。各棟材4a、受台支持部材10d、中央支柱9及び横架材11は連結して立体トラス構造となるため天幕8から荷重が作用しても変形し難くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、柱材に対して連結部材を介しシザース状に動作する梁材を備える折畳式テントに関し、特に内部空間を広く確保できる大型の寄棟状折畳式テントに関する。
【背景技術】
【0002】
梁材をシザース状に折り畳む所謂ワンタッチ式のテントで、柱材の本数が6本以上となる大型テントの場合には、例えば図6に示すような骨組構造体が用いられてきた。この従来の折り畳みテント111は、6本の柱材112と、この柱材112同士を連結する6面の梁材113を有する。地表に立設する柱材112の頂部には端部ジョイント114を冠着し、その下方に上下方向に移動可能なスライドジョイント115を環装しているが、これら連結部材を構成する端部ジョイント114及びスライドジョイント115は梁材113を構成する斜材116の一端部を回動可能に支持している。
【0003】
又梁材113の中央には左右の斜材116をピン結合で連結するヒンジジョイント部117が設けられ、このヒンジジョイント部117からテント中央に向って夫々屋根リンク部材118が取付けられ、それらが集合する中心部には図示しない天幕の中央部分を支承する中央支柱119を配設する。天幕はこの骨組構造体に対して上部より取り付けられていた。
【0004】
このような梁材113及び屋根リンク部材118は連結する部分が全てピン結合となっており、同期してシザース状に動作しながら折り畳み可能な構成をとっているため、使用時には柱材112を相互に離隔すれば骨組全体が拡開する。又、収納時には柱材112を近接させれば骨組全体の収縮が可能となる。
【0005】
しかし、梁材113の中央に連結する屋根リンク部材118は、梁材113と同一高さに配置されていたため、テントの内部空間の利用が制限される欠点があった。例えば支柱高さが2.3mしかない場合には、中央支柱119の下端は2mの高さとなり、天井部が低く圧迫感を感じてしまう。そこで、テントの内部空間を広く確保し得る折畳式テントとしては例えば下記に示すような従来技術があった。
【特許文献1】登録実用新案第3058526号公報
【0006】
この折畳式テントは、図7に示すように四隅に立設する柱材22同士を連結し、シザース状に動作する4面の梁材23と、対角線上で対向する柱材22方向に配置され、テント中央に向かって集結する屋根リンク部材24を備え、各梁材23及び屋根リンク部材24は柱材22に装着する連結部材25と夫々回動可能に接続していた。
【0007】
又テント中央には屋根リンク部材24の集結点に支持具26を取り付け、これに中央支柱27を収容し、その頭部で図示しない天幕を支承していた。
【0008】
柱材22より屋根リンク部材24を跳ね出す寄棟状折畳式テント21の場合、集結する棟材24aの下面には、隅部に方杖24bが補強されているだけで、水平部材が存在しないためテントの内部空間を広く利用できる利点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、寄棟状折畳式テント21の場合、棟材24aは隅部の方杖24bのみで支持されていたため、柱材22同士の間隔が大となる大型テントの場合、棟材24aが撓んでしまう恐れがあった。
【0010】
又、中央支柱27は棟材24aの集結点を構成する筒状の支持具26に収容していたため、高さのある支柱はセットできなかった。従って、架設する天幕が平板的となり降雨時には水捌け不良により棟材24a間の天幕が垂れ下がり、この部分に水溜りを生じてしまう恐れがあった。
【0011】
このため、特に柱材の本数が6本以上となる大型テントの場合には、寄棟状折畳式テントは適用されておらず、従来の天井部の低い骨組構造体が一般的であった。
【0012】
この発明は、従来の大型の折畳式テント及び寄棟状折畳式テントが有する上記の問題点を解消すべくなされたものであり、天井の高い骨組構造であっても棟材が撓む恐れがなく、又中央支柱を高く設置することが可能で、天幕の十分な勾配を確保できる大型の寄棟状折畳式テントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この発明の寄棟状折畳式テントは、正2n角形(nは2以上の整数)の頂点位置に立設する柱材と、各柱材から隣接する柱材に対し連結部材を介してシザース状に動作する梁材と、対角線上で対向する柱材方向に配置され前記連結部材と回動可能に接続しテント中央に向かって棟材を集結する屋根リンク部材を備え、テント中央には天幕を支承する中央支柱の支持具を取り付ける寄棟状折畳式テントにおいて、前記棟材は、中間部で下方に折り畳み可能とする折曲点を設け、前記支持具は、棟材集結部に設け中央支柱を挿通する上部筒体と、中央支柱の下端を保持する受台と、各棟材の折曲点と集結部の中間位置に回動可能に取り付けられる受台支持部材を備えることを特徴とするものである。
【0014】
連結部材は、柱材の頂部に冠着する端部ジョイントと、その下方で環装し上下方向に移動可能なスライドジョイントからなり、梁材及び屋根リンク部材を回動可能に支持し、このスライドジョイントを上下動させることで、梁材及び屋根リンク部材の取付角度を変化させる。棟材は、端部ジョイントに回動可能に連結し、スライドジョイントに連結する方杖で支持される。
【0015】
上部筒体及び受台は夫々外面に複数の棟材連結部又は受台支持部材連結部を突設する。中央支柱は、棟材から吊り下げ支持される受台でその下端を保持され、中間部を上部筒体で支えられるため、立設状態が安定し棟材より突出する立上り部分を大きくすることができる。
【0016】
又、棟材集結部は、各棟材と受台支持部材及び中央支柱との組み合わせが立体トラス構造となるため荷重が作用しても変形し難くなる。
【0017】
請求項2記載の寄棟状折畳式テントの折曲点には、両側方に板体を突設する連結具を介在し、隣接する前記棟材の対向する板体間に中央部で上方に折り畳み可能な横架材を設けることを特徴とするものである。
【0018】
棟材の中間部である折曲点同士を横架材で繋ぎ補強する。棟材と横架材の組み合わせも立体トラス構造を形成する。
【発明の効果】
【0019】
この発明の寄棟状折畳式テントは、中央支柱の支持具として上部筒体、受台及び受台支持部材を設けるので、中央支柱の立設状態が安定し棟材より突出する立上り部分を大きくすることができる。従って天幕の十分な勾配が確保でき、降雨時の水捌け不良の恐れがなくなる。
【0020】
又、各棟材と受台支持部材及び中央支柱との組み合わせが立体トラス構造となるため荷重が作用しても変形し難くく、天井の高い骨組構造であっても棟材が撓む恐れがない。
【0021】
請求項2記載の寄棟状折畳式テントは、折曲点同士を横架材で繋ぎ補強するので、より強固な立体トラス構造となり、大型の折畳式テントであっても風荷重等に対抗し得る安定的な骨組構造となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次にこの発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は寄棟状折畳式テントの骨組を示す斜視図である。寄棟状折畳式テント1は、正2n角形(nは2以上の整数)、図1の場合は正六角形の頂点位置に柱材2を立設し、各柱材2から隣接する柱材2に対して梁材3が横架し、対角線上で対向する柱材2方向には屋根リンク部材4が配設されている。
【0023】
これら梁材3及び屋根リンク部材4は、柱材2に装着する連結部材5に一端部を回動可能に支持している。連結部材5は、柱頂部に冠着する端部ジョイント6と、その下方に上下方向に移動可能な状態で環装するスライドジョイント7を有する。
【0024】
梁材3は、端部ジョイント6とスライドジョイント7で夫々枢支する斜材3a,3aをピン3bにて結合し、スライドジョイント7を上下動することでシザース状に折り畳み、又引き伸ばすものである。
【0025】
屋根リンク部材4を構成する棟材4aは、端部ジョイント6に回動可能に連結し、スライドジョイント7に連結する方杖4bで支持される。この方杖4bと棟材4aは連結具4cを介して枢動可能に接続する。各棟材4aが集結するテント中央には、天幕8を支承する中央支柱9の支持具10を取り付ける。又棟材4aは、その中間部で下方に折り畳み可能とする折曲点4dを設ける。隣接する折曲点4d間には中央部で上方に折り畳み可能とする横架材11を架設する。
【0026】
次に柱材に装着する連結部材の詳細を図2に基づき説明する。図2は柱材の頭部骨組を示す斜視図である。柱材2に装着する連結部材5は、端部ジョイント6とスライドジョイント7に分かれており、夫々柱材2を収納若しくは挿通する枠部6a,7aより隣接する柱材2方向に梁支持板6b,7bを突設する。この梁支持板6b,7bは夫々一対のプレートを対向し、その間隙に梁材3を構成する斜材3aの端部を挿入し、プレート面に開設するピン孔にピン等を挿通して回動可能に支持する。
【0027】
この梁支持板6b,7bと隣接して棟材支持板6cと方杖支持板7cを夫々突設する。棟材支持板6c及び方杖支持板7cも夫々一対のプレートを対向し、その間隙に棟材4又は方杖4aの端部を挿入し、各プレート面に開設するピン孔にピン等を貫通して回動可能に支持する。
【0028】
なお、スライドジョイント7には、図3に示すように枠部7aの外面で梁支持板7b及び方杖支持板7cの下方に位置決め用のピン12が引出可能に取り付けられている。このピン12は柱材2に穿設する図示しないピン孔に挿入してスライドジョイント7の高さを固定するものである。又梁支持板7bと棟材支持板7cにおいて、各挿入するピン等の先端を受ける側の支持板は隣接する支持板と兼用されるものでもよい。
【0029】
次に棟材の折曲点の詳細を図4に基づき説明する。図4は棟材折曲点の斜視図である。棟材4aは折曲点4dにて分割されており、折曲点4dには両側方に板体13aを突設する連結具13を介在し、隣接する棟材4aの対向する板体13a間に横架材11を架設する。板体13aも一対のプレートを対向し、その間隙に横架材11の端部を挿入し、各プレート面に開設するピン孔にピン等を貫通して回動可能に支持する。横架材11も中央で分割されており、連結具11aにて上方に折畳可能に接続している。
【0030】
次に支持具の詳細を図5に基づき説明する。支持具10は、棟材4aの集結部に設けられ中央支柱9を挿通する上部筒体10aと、中央支柱9の下端を保持する受台10bと、各棟材4aの折曲点4dと上部筒体10aの中間位置に連結具10cを介して回動可能に取り付けられる受台支持部材10dを備える。
【0031】
上部筒体10a及び受台10bは夫々外面に複数の棟材連結部10e又は受台支持部材連結部10fを突設し、棟材4a又は受台支持部材10dを枢動可能に止着する。
【0032】
中央支柱9は、上方に位置する内管9aと、下方に位置する外管9bからなり、外管内部に収容するバネ体9cによって内管9aを上方に付勢している。中央支柱9は骨組構造体を折り畳んだ際に、二重管が分離することのないよう適宜長さの組合せで構成されている。内管9aの頂部に装着する丸みを持った天幕接触具9d上に天幕8を取り付けると、バネ体9cの作用により天幕8を押し上げ、その張りを強める。
【0033】
これら各棟材4aと受台支持部材10d及び中央支柱9、更には横架材11が相互に連結して立体トラス構造となるため天幕8から荷重が作用しても変形し難くなる。即ち、この骨組構造は屋根リンク部材4を補強するもので、中央支柱9に作用する荷重は、立体トラスの各部材に分散されていく。
【0034】
荷重を分散することで棟材4aの撓みを減少させ、振動の発生等も防ぎ、安定的な組立状態を維持する。
【0035】
又中央支柱9は、棟材4aから吊り下げ支持される受台10bでその下端を保持され、中間部を上部筒体10aで支えられるため、立設状態が安定し棟材4aより突出する立上り部分を大きくすることができる。このため、天幕8が各棟材4aに密着せず、外観上美しい曲線で折り畳みできるワンタッチテントを構成できる。
【0036】
梁材3及び屋根リンク部材4は連結する部分が全てピン結合となっており、スライドジョイント7を降下させると、各部材が同期してシザース状に動作しながら折畳まれる。即ち、使用時には柱材2を相互に離隔すれば骨組全体が拡開し、又収納時には柱材2を近接させれば骨組全体の収縮が可能となる。
【0037】
この寄棟状の折畳式テントは、棟材4aを用いることで空間の圧迫感を解消し、天井が高くなるばかりでなく、構造上シンプルであって、使用する材料も少なく、全体重量も軽減できる。又、屋根リンク部材4の集結部を立体トラス構造とすることにより、より強度のあるテントが最小の材料で実現可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明の寄棟状折畳式テントは、正六角形のタイプに限らず正八角形以上の中央寄棟を有する折畳式テントにも、又柱間の大きい四角形の寄棟状折畳式テントにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】寄棟状折畳式テントの骨組を示す斜視図である。
【図2】柱材の頭部骨組を示す斜視図である。
【図3】スライドジョイントの斜視図である。
【図4】棟材折曲点の斜視図である。
【図5】支持具の斜視図である。
【図6】従来の六角型折畳式テントの骨組を示す斜視図である。
【図7】従来の寄棟状折畳式テントの骨組を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 寄棟状折畳式テント
2 柱材
3 梁材
4 屋根リンク部材
4a 棟材
5 連結部材
8 天幕
9 中央支柱
10 支持具
11 横架材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正2n角形(nは2以上の整数)の頂点位置に立設する柱材と、各柱材から隣接する柱材に対し連結部材を介してシザース状に動作する梁材と、対角線上で対向する柱材方向に配置され前記連結部材と回動可能に接続しテント中央に向かって棟材を集結する屋根リンク部材を備え、テント中央には天幕を支承する中央支柱の支持具を取り付ける寄棟状折畳式テントにおいて、前記棟材は、中間部で下方に折り畳み可能とする折曲点を設け、前記支持具は、棟材集結部に設け中央支柱を挿通する上部筒体と、中央支柱の下端を保持する受台と、各棟材の折曲点と集結部の中間位置に回動可能に取り付けられる受台支持部材を備えることを特徴とする寄棟状折畳式テント。
【請求項2】
前記折曲点には、両側方に板体を突設する連結具を介在し、隣接する前記棟材の対向する板体間に中央部で上方に折り畳み可能な横架材を設けることを特徴とする請求項1記載の寄棟状折畳式テント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−177524(P2007−177524A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377682(P2005−377682)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(500066193)
【Fターム(参考)】