寄生振動を低減したトランジスタ増幅器
【課題】寄生振動、すなわちパラメータ発振を低減したトランジスタ増幅器を提供する。
【解決手段】複数のトランジスタセル15”を有するトランジスタデバイス12”は複数のフィルタ18”が設けられる。フィルタのそれぞれ1つは、入力ノード20”と、複数のトランジスタセルの制御電極17のうちの対応する1つとの間に結合されている。半導体によって、複数のトランジスタセルの共通活性領域が提供される。フィルタのそれぞれ1つは、導電層と、導電層上に配置された誘電層と、誘電層の上に配置された抵抗層と、抵抗層の第1の部分に電気的に接触するように配置され入力ノードを提供する導電電極と、抵抗層の第1の部分から離れた抵抗層の第2の部分と電気的に接触するコネクタであって、誘電体を通り第1の導体と電気的に接触するコネクタとを含む。
【解決手段】複数のトランジスタセル15”を有するトランジスタデバイス12”は複数のフィルタ18”が設けられる。フィルタのそれぞれ1つは、入力ノード20”と、複数のトランジスタセルの制御電極17のうちの対応する1つとの間に結合されている。半導体によって、複数のトランジスタセルの共通活性領域が提供される。フィルタのそれぞれ1つは、導電層と、導電層上に配置された誘電層と、誘電層の上に配置された抵抗層と、抵抗層の第1の部分に電気的に接触するように配置され入力ノードを提供する導電電極と、抵抗層の第1の部分から離れた抵抗層の第2の部分と電気的に接触するコネクタであって、誘電体を通り第1の導体と電気的に接触するコネクタとを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にトランジスタ増幅器に関し、より詳細には、寄生振動(発振)、すなわちパラメータ発振(振動)を低減したトランジスタ増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には既知のように、トランジスタ増幅器、特に高出力pHEMTおよびHBT電力増幅器は、増幅器が大信号によって駆動されるときのみに生じる振動を頻繁に有する。小信号の状況では、このような振動は通常存在しない。このような振動は、パラメータ発振と呼ばれることがある。特定の外部パラメータ(バイアス、周波数、入力駆動、および温度)の変化に依存するからである。小信号の状況では増幅器が完全に安定しているように見えるかもしれないが、その増幅器をよりハードに(激しく)駆動(ドライブ)すると、振動が現れる可能性がある。このような振動は、入力駆動、バイアス状況、および動作周波数に対して非常に変動しやすい傾向がある。図1は、電力増幅器10を示す。増幅器は、図示のように配置された複数のトランジスタデバイス12を含む。このようなタイプの増幅器10において典型的に観察される振動のいくつかを、図4ないし図7に示す。図4は、分数調波f/2および3f/2振動を示す。図5は、増幅器が約0.5dBで圧縮して駆動された時に現れた、200MHzのスプリアス振動を示す。図6および図7は、電力駆動下で困難な問題であるスプリアス振動のさらなる例を示す。さらなる例は、”Power Amplifiers:From Milliwatts to Kilowatts・・・Cool Devices with Hot Performance,”Short Course Notes of Aryeh Platzker’s section,1998 GaAs IC Symposiumにおいて見出すことができる。このような振動が存在していると、多くのワイドバンドレーダの用途では、振動のトーンが誤った信号と間違えられてしまう可能性があり、重大な問題になる可能性がある。システムが適切に作動するには、このような振動の除去が不可欠である。
【0003】
このような寄生振動を低減するのに一般的に用いる技術のひとつは、”Power Amplifiers:From Milliwatts to Kilowatts・・・Cool Devices with Hot Performance,”Short Course Notes of Steve Nelson and Aryeh Platzker’s section,1998 GaAs IC Symposiumにおいて示されている、パラレルR−Cフィルタを用いる、というものである。したがって、図1および図2を参照して、図1のトランジスタデバイス12を、図2に示すトランジスタデバイス12’等のトランジスタデバイス12と置換する。したがって、このときそれぞれのデバイスは、共通ノード16に接続されたゲート電極Gを有する、ここではそれぞれFETである複数のトランジスタセル15を含む。入力ノード20と共通ノード16との間には、フィルタ18、すなわちR−Cネットワーク、が接続されている。このようなR−Cフィルタ(すなわち、ネットワーク)18は、図2に示すようにトランジスタセル15のゲートマニホルド(すなわち、共通ノード16)上に一般的に配置されており、本質的なトランジスタデバイスからいくらか取り去られている。
【0004】
これもまた当業者には既知のように、駆動に依存する振動は、管増幅器について1920年代および30年代にまず研究された。まず、バンデルポール(Van Der Pol)は、非線形抵抗がどのようにして強制振動を持ち込みうるのかを研究した。”Forced Oscillations in a Circuit with Non-Linear Resistance(Reception with reactive Triode)”,by Balth Van Der Pol,published by The London,Edinburgh,and Dublin Philosophical Magazine and Journal of Science,series 7,vol.III,no.13,Jan 1927,pp.65-81、および、Nonlinear Oscillations,by Nicholas Minorsky,published by D.Van Nostrand Company,Princeton,NJ 1962,page 241を参照のこと。Nonlinear Oscillations,by Nicholas Minorsky,published by D.Van Nostrand Company,Princeton,NJ 1962,page 469において報告されているように、MandlestamおよびPapalexiはさらに、電子管における分数調波振動を調べた。
【0005】
何年もにわたって、大信号振動について非常に多くの著者達が調べてきた。Otward Muller and William Figel,”Stability Problems in Transistor Power Amplifiers,”Proceedings of the IEEE,Aug.1967,pp.1458-1466、W.Mumford,”Some Notes on the History of Parametric Oscillations,”Proceedings of the IRE,May 1960,pp.848-850、R.Phillips,”Parametric Oscillation in a Damped Resonant System,”IEEE Transactions on Circuit Theory,December 1963,pp.512-515、J.Manley and H.Rowe,”Some General Properties of Nonlinear Elements-Part 1.General Energy Relations,”Proceedings of the IEEE,July 1956,pp.904-913を参照されたい。
【0006】
分数調波振動(f/2、3f/2、等)は、徹底的に調べられてきており、ポンプ式(pumped)可変容量ダイオードに匹敵する多くのものを作って、pHEMTデバイスにおける現象を説明することができる。ポンプ式可変容量ダイオードは、キャパシタンスが非線形であるために分数調波成分を生じる、ということは周知である。P.Penfield,Jr.& R.Rafuse,Varactor Applications,The MIT Press,Cambridge,MA,1962も参照されたい。まず、FETのゲートは、ポンプ式可変容量ダイオードとして分析することができる。分数調波振動の主な原因は、CgsおよびCgdにおける非線形性である。ただしCgsはゲート・ソース間キャパシタンス(the gate to source capacitance)であり、Cgdはゲート・ドレイン間キャパシタンス(the gate to drain capacitance)である。J.Imbornone,M.Murphey,R.Donahue,E.Heaney,”New Insignt into Subharmonic Oscillation Mode of GaAs Power Amplifiers Under Severe Output Mismatch Condition,”1996 GaAs IC Symposium,pp.307-310も参照されたい。簡略化したFETのモデルを図8に示し、それと等価な入力インピーダンスを図9に示す。ただし、Gはゲート、Dはドレイン、Sはソース、IDSはドレイン・ソース間電流、Rgはゲート抵抗、Cgsはゲート・ソース間キャパシタンス、Cdgはドレイン・ゲート間キャパシタンス、およびCdsはドレイン・ソース間キャパシタンスである。
【0007】
図3に示す非線形キャパシタンスC(t)が、
【0008】
【数1】
【0009】
ただしtは時間、ポンプ周波数(入力駆動周波数)は2ω0である、のように変化すると仮定すると、
【0010】
【数2】
【0011】
であれば駆動周波数の半分で振動が生じる。ただし2ω0は入力信号周波数、ω0はf/2寄生振動の周波数、Rsはダイオードの直列抵抗(ゲート抵抗Rgに似ている)、Zlはω0におけるダイオードが見た負荷インピーダンス(FETのゲートから逆方向に見たインピーダンスに似ている)、C0は小信号キャパシタンス、およびC2は可変容量ダイオードのキャパシタンスの非線形成分である。この理論は、簡略化し過ぎてはいるが、pHEMT電力増幅器の挙動を定性的に記述している。低駆動(C2→0)の下では、またはRsが十分高い場合には、分数調波振動は現れない。R−Cフィルタ18(図2)を付け加えることによって、低周波数において入力抵抗が十分増大して、駆動下の振動を除去する。
【0012】
スプリアス寄生振動についての研究は少ないが、これもまたトランジスタにおける非線形性のためである。スプリアス寄生振動に対するいくらかの洞察を、Otward MullerおよびWilliam Figelによる上述の参照文献において見出すことができる。この文献において、著者らは、増幅器を、バイアス点が入力駆動によって決まる、非線形増幅器および線形増幅器の重なりと考えている。非線形増幅器によって分数調波振動が生じ、線形増幅器成分によってスプリアス振動が生じる。デバイスを激しく駆動すると、その結果負の入力インピーダンスが生じ、それによって今度は振動が生じる可能性がある。R−Cフィルタ18(図2)の抵抗によって、デバイス内の負の抵抗が相殺され、それによっていかなる振動も抑制される。
【発明の概要】
【0013】
本発明の1つの特徴によれば、複数のトランジスタセルを有するトランジスタデバイスが提供される。セルのそれぞれ1つは、半導体を通るキャリアの流れを制御する制御電極を有する。デバイスは、入力ノードを有する。複数のフィルタが設けられる。フィルタのそれぞれ1つは、入力ノードと、複数のトランジスタセルの制御電極のうちの対応する1つとの間に結合されている。
【0014】
本発明の一実施形態において、対になった制御電極が共通領域に接続され、フィルタのそれぞれ1つは、入力ノードと、共通領域のうちの対応する1つとの間に結合されている。
【0015】
本発明の他の特徴によれば、半導体によって、複数のトランジスタセルの共通活性領域が提供される。
【0016】
本発明の他の特徴によれば、フィルタのそれぞれ1つは、抵抗とコンデンサとを含み、抵抗とコンデンサとは、入力ノードと、制御電極のうちの対応する1つとの間に、並列接続されている。
【0017】
本発明のさらに他の特徴によれば、フィルタのそれぞれ1つは、導電層と、導電層上に配置された絶縁体(誘電体)と、誘電体の上に配置された抵抗層と、抵抗層の第1の部分に電気的に接触するように配置され入力ノードを提供する導電電極と、抵抗層の第1の部分から転置(ずれて配置)された抵抗層の第2の部分と電気的に接触するコネクタであって、誘電体を通り第1の導体と電気的に接触するコネクタとを含む。
【0018】
このような配置であれば、それぞれのデバイスにおける対になった制御電極、例えばゲートフィンガーに接続する、コンパクトな抵抗−コンデンサ(R−C)ネットワーク(すなわち、R−Cフィルタ)が提供される。このコンパクトなR−Cフィルタは、いくつかのモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)電力増幅器における寄生振動の除去に成功している。大きさがコンパクトなので、さらに設計を調整する必要がほとんど、または全くない状態で、現在のMMICの設計に容易に組み込むことができる。このコンパクトなR−Cフィルタは、pHEMT電力増幅器における駆動に依存する分数調波振動およびスプリアス振動を効果的に除去する。
【0019】
本発明のこれらおよびその他の特徴、および本発明自体は、以下の詳細な説明を図面とともに考慮すれば、より容易に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術による増幅器の概略図である。
【図2】従来技術による、図1の増幅器において使用するために適合されている、トランジスタデバイスの概略図である。
【図3】本発明による、図1の増幅器において使用するために適合されている、トランジスタデバイスの概略図である。
【図4】図1の増幅器において用いられるトランジスタデバイスにおける、そのようなデバイスがドレイン・ゲート間電圧(Vds)2ボルト、ゲート・ソース間電圧(Vgs)−0.562ボルト、入力電力Pin15.4dBm、および入力周波数f012GHzで動作する場合の、分数調波寄生振動を示すグラフである。
【図5】図1の増幅器において用いられるトランジスタデバイスにおける、そのようなデバイスがドレイン・ゲート間電圧(Vds)2ボルト、ゲート・ソース間電圧(Vgs)−0.507ボルト、入力電力Pin13.9dBm、および入力周波数f012GHzで動作する場合の、スプリアス寄生振動を示すグラフである。
【図6】図1の増幅器において用いられるトランジスタデバイスにおける、そのようなデバイスがドレイン・ゲート間電圧(Vds)2ボルト、ゲート・ソース間電圧(Vgs)0.525ボルト、入力電力Pin13.9dBm、および入力周波数f09.5GHzで動作する場合の、スプリアス寄生振動を示すグラフである。
【図7】図1の増幅器において用いられるトランジスタデバイスにおける、そのようなデバイスがドレイン・ゲート間電圧(Vds)2ボルト、ゲート・ソース間電圧(Vgs)−0.627ボルト、入力電力Pin13.9dBm、および入力周波数f09.5GHzで動作する場合の、スプリアス寄生振動を示すグラフである。
【図8】従来技術による、簡略FETモデル等価回路の概略図である。
【図9】従来技術による図8のFETモデルの実効入力インピーダンスの概略図である。
【図10】図3のトランジスタデバイスの概略平面図である。
【図11】図3のトランジスタデバイスの一部の組立分解図であり、そのような組立分解部分は、図10の9−9と名付けた矢印によって取り囲まれている。
【図12】図11のトランジスタデバイスの一部の概略断面図であり、そのような断面は、図11の10−10線に沿っている。
【図12A】図12Aは、図3のトランジスタデバイスが用いるR−Cフィルタの概略図である。
【図12B】図12Bは、図11のトランジスタデバイスの一部の概略断面図であり、そのような断面は、図11の10B−10B線に沿っている。
【図13】図10のトランジスタデバイスの一部の組立分解図であり、そのような組立分解部分は、図10の11−11と名付けた矢印によって取り囲まれている。
【図14】図13のトランジスタデバイスの一部の概略断面図であり、そのような断面は、図13の12−12線に沿っている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に図3を参照すると、図1の増幅器において用いるようになっている、そのような増幅器において用いるトランジスタデバイス12の代わりの、トランジスタデバイス12”を示す。トランジスタデバイス12”は、複数のトランジスタセル、ここでは8個のセル15”を含む。セル15”は、ここでは例えばガリウムヒ素半導体である半導体の活性領域において形成されている。セル15”のそれぞれ1つは、例えばセルがFETの場合にはソース領域とドレイン領域との間に配置されたゲート電極、または、セルがバイポーラトランジスタの場合にはエミッタ領域とコレクタ領域との間に配置されたベース電極である、制御電極17を含む。したがって、FETトランジスタであってもバイポーラトランジスタであっても、制御電極17(ゲートまたはベース)が、活性領域における1対の領域(ソース−ドレインまたはエミッタ−コレクタ)同士の間の活性領域においてキャリアの流れを制御する。
【0022】
トランジスタデバイス12”は、入力ノード20”を含む。制御電極17のそれぞれ1つは、R−Cフィルタ18"を通じて入力ノード20”に結合されている。ここで、制御電極17のそれぞれの対は、R−Cフィルタ18”のうちの1つを共用する。したがって、この例においては、R−Cフィルタ18”が4個ある。ここでは、トランジスタデバイス15”はFETであり、ソース電極はアースに接続され、ドレイン電極は出力ノード30に接続されている。
【0023】
次に図10ないし図14を参照すると、トランジスタデバイス12”が示されている。デバイス12”は、半絶縁性III族−V族、ここではガリウムヒ素、の基板32(図12、図12B、および図14)の上に形成される。デバイス12”は、入力ノード20”、複数(ここでは8個)のトランジスタセル15”、および、複数(ここでは4個)のR−Cフィルタ18”を含む。セル15”のそれぞれ1つは、基板32上の共通のメサ形状の活性領域34(図12、図12B、および図14)内に形成される。トランジスタセル15”のそれぞれ1つは、ここでは、ソース領域Sとドレイン領域Dとの間に配置されたフィンガー状ゲート電極17(すなわち、制御電極)を有するFETである。したがって、ゲート電極17を用いて、ソース領域Sとドレイン領域Dとの間のキャリアの流れを制御する。特に図13および図14を参照して、ソース領域Sはソース接点(コンタクト)とオーム接触しており、これらは、図12、図12B、および図14において最もはっきりと示されているように、エアブリッジ導体40によって電気的に相互接続されている、ということが注意される。図12Bおよび図14において最もはっきりと示されているように、ソース領域Sは、基板32の反対側の表面上に配置されたアース平面導体43に接続されている。
【0024】
図10、図11、および図12を参照すると、まず、R−Cフィルタ18”はそれぞれ構造が同一である、ということが注目される。その典型的なものを図11、図12、および図12Bに詳細に示す。したがって、このようなフィルタ18”は、基板32の表面上に配置された導電層40を含む。導電層40は、ここでは金である。図示のように、導電層40上に、ここでは窒化ケイ素である絶縁(誘電)層42が形成される。誘電層42の上に、ここではタンタルである抵抗層44が配置される。抵抗層44の第1の部分50に電気接続するように、ここでは金である導電プレートすなわち電極46が配置される。抵抗層44の第2の部分54には、ここでは金である電気コネクタ52が電気接触しており、抵抗層44のこのような第2の部分54は、抵抗層44の第1の部分50から離れている。抵抗層44の部分50と部分52との間の距離によって、R−Cフィルタ18”の抵抗Rが提供される。導体層40は、R−Cフィルタ18”のコンデンサCの一方のプレートすなわち電極を提供し、コンデンサCの他方のプレートは、導電プレート46および抵抗層44によって提供される。コンデンサCの誘電体は、抵抗層44とプレート40との間に配置された誘電層42によって提供される。抵抗層44の部分54は、説明するようにコネクタ52に、抵抗層44と誘電層42とを貫く導電バイア(via)62(図12)によって導電層40に、そして、コネクタ52を通じて制御電極17(図12B)の一端に、電気接続されている。したがって、導電バイア62(図12)は、抵抗層44の部分54を、導電層40が提供するコンデンサCの下側プレートに電気接続する。結果として生じるR−Cフィルタ18”を、図12Aに示す。図11、図12、および図12Aに示すように、コンデンサのプレート46は、エアブリッジ導体47によって入力ノード20”に接続されている。上述のように、R−Cフィルタ18”のそれぞれ1つは、抵抗RとコンデンサCとを含み、抵抗RとコンデンサCとは、入力ノード20”と、制御電極17(図12および図12B)のうちの対応する1つとの間に、並列接続されている。抵抗層44は、抵抗R(ここでは、例えば6オーム/sq)の抵抗層の役目も、コンデンサCの頂部プレートすなわち電極の役目もする。R−Cフィルタ18"の大きさを最小にするために、タンタルの抵抗層44は、抵抗Rを提供する抵抗層の役目も、コンデンサCの上部プレートすなわち電極の一部の役目もする。低周波数においては、フィルタ18”は抵抗Rのみしか判断しない。しかし動作周波数帯においては、コンデンサCが抵抗Rを短絡させ始め、利得が減少し過ぎることがない。
【0025】
本発明者らは、1対のゲートフィンガー17当たり10オームの抵抗が適当であることを発見した。キャパシタンスCは、容量性リアクタンスがバンドの下端における抵抗と等しくなるように選択した。本発明者らの場合であれば、1対のゲートフィンガー17当たり1.67pFを用いて、R−Cの3dBの周波数を9.5GHzに配置した。
【0026】
従来の方法を用いれば4個から8個のフィルタになるのに対し、典型的な電力増幅器においては、30個から50個のコンパクトなR−Cフィルタが並列になる。本発明者らは、従来の方法は、本発明と比較して、セル12の大きさが増大するとスプリアス振動の除去効果が少ないと考える。安定性を保証するために、従来の方法での性能は、本発明によるものよりもはるかに悪くなる。
【0027】
他の実施形態も、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内にある。例えば、それぞれのフィルタ18”は1対の制御電極17に接続されるが、フィルタ18”は1つの制御電極17のみに接続されてもよく、その場合には、図3のデバイス12”は8個のフィルタ18”を有する。
【符号の説明】
【0028】
12” トランジスタデバイス
15” トランジスタセル
17 制御電極
18” フィルタ
20” 入力ノード
40 導電層
42 誘電層
44 抵抗層
46 導電電極
50 第1の部分
52 コネクタ
54 第2の部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にトランジスタ増幅器に関し、より詳細には、寄生振動(発振)、すなわちパラメータ発振(振動)を低減したトランジスタ増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には既知のように、トランジスタ増幅器、特に高出力pHEMTおよびHBT電力増幅器は、増幅器が大信号によって駆動されるときのみに生じる振動を頻繁に有する。小信号の状況では、このような振動は通常存在しない。このような振動は、パラメータ発振と呼ばれることがある。特定の外部パラメータ(バイアス、周波数、入力駆動、および温度)の変化に依存するからである。小信号の状況では増幅器が完全に安定しているように見えるかもしれないが、その増幅器をよりハードに(激しく)駆動(ドライブ)すると、振動が現れる可能性がある。このような振動は、入力駆動、バイアス状況、および動作周波数に対して非常に変動しやすい傾向がある。図1は、電力増幅器10を示す。増幅器は、図示のように配置された複数のトランジスタデバイス12を含む。このようなタイプの増幅器10において典型的に観察される振動のいくつかを、図4ないし図7に示す。図4は、分数調波f/2および3f/2振動を示す。図5は、増幅器が約0.5dBで圧縮して駆動された時に現れた、200MHzのスプリアス振動を示す。図6および図7は、電力駆動下で困難な問題であるスプリアス振動のさらなる例を示す。さらなる例は、”Power Amplifiers:From Milliwatts to Kilowatts・・・Cool Devices with Hot Performance,”Short Course Notes of Aryeh Platzker’s section,1998 GaAs IC Symposiumにおいて見出すことができる。このような振動が存在していると、多くのワイドバンドレーダの用途では、振動のトーンが誤った信号と間違えられてしまう可能性があり、重大な問題になる可能性がある。システムが適切に作動するには、このような振動の除去が不可欠である。
【0003】
このような寄生振動を低減するのに一般的に用いる技術のひとつは、”Power Amplifiers:From Milliwatts to Kilowatts・・・Cool Devices with Hot Performance,”Short Course Notes of Steve Nelson and Aryeh Platzker’s section,1998 GaAs IC Symposiumにおいて示されている、パラレルR−Cフィルタを用いる、というものである。したがって、図1および図2を参照して、図1のトランジスタデバイス12を、図2に示すトランジスタデバイス12’等のトランジスタデバイス12と置換する。したがって、このときそれぞれのデバイスは、共通ノード16に接続されたゲート電極Gを有する、ここではそれぞれFETである複数のトランジスタセル15を含む。入力ノード20と共通ノード16との間には、フィルタ18、すなわちR−Cネットワーク、が接続されている。このようなR−Cフィルタ(すなわち、ネットワーク)18は、図2に示すようにトランジスタセル15のゲートマニホルド(すなわち、共通ノード16)上に一般的に配置されており、本質的なトランジスタデバイスからいくらか取り去られている。
【0004】
これもまた当業者には既知のように、駆動に依存する振動は、管増幅器について1920年代および30年代にまず研究された。まず、バンデルポール(Van Der Pol)は、非線形抵抗がどのようにして強制振動を持ち込みうるのかを研究した。”Forced Oscillations in a Circuit with Non-Linear Resistance(Reception with reactive Triode)”,by Balth Van Der Pol,published by The London,Edinburgh,and Dublin Philosophical Magazine and Journal of Science,series 7,vol.III,no.13,Jan 1927,pp.65-81、および、Nonlinear Oscillations,by Nicholas Minorsky,published by D.Van Nostrand Company,Princeton,NJ 1962,page 241を参照のこと。Nonlinear Oscillations,by Nicholas Minorsky,published by D.Van Nostrand Company,Princeton,NJ 1962,page 469において報告されているように、MandlestamおよびPapalexiはさらに、電子管における分数調波振動を調べた。
【0005】
何年もにわたって、大信号振動について非常に多くの著者達が調べてきた。Otward Muller and William Figel,”Stability Problems in Transistor Power Amplifiers,”Proceedings of the IEEE,Aug.1967,pp.1458-1466、W.Mumford,”Some Notes on the History of Parametric Oscillations,”Proceedings of the IRE,May 1960,pp.848-850、R.Phillips,”Parametric Oscillation in a Damped Resonant System,”IEEE Transactions on Circuit Theory,December 1963,pp.512-515、J.Manley and H.Rowe,”Some General Properties of Nonlinear Elements-Part 1.General Energy Relations,”Proceedings of the IEEE,July 1956,pp.904-913を参照されたい。
【0006】
分数調波振動(f/2、3f/2、等)は、徹底的に調べられてきており、ポンプ式(pumped)可変容量ダイオードに匹敵する多くのものを作って、pHEMTデバイスにおける現象を説明することができる。ポンプ式可変容量ダイオードは、キャパシタンスが非線形であるために分数調波成分を生じる、ということは周知である。P.Penfield,Jr.& R.Rafuse,Varactor Applications,The MIT Press,Cambridge,MA,1962も参照されたい。まず、FETのゲートは、ポンプ式可変容量ダイオードとして分析することができる。分数調波振動の主な原因は、CgsおよびCgdにおける非線形性である。ただしCgsはゲート・ソース間キャパシタンス(the gate to source capacitance)であり、Cgdはゲート・ドレイン間キャパシタンス(the gate to drain capacitance)である。J.Imbornone,M.Murphey,R.Donahue,E.Heaney,”New Insignt into Subharmonic Oscillation Mode of GaAs Power Amplifiers Under Severe Output Mismatch Condition,”1996 GaAs IC Symposium,pp.307-310も参照されたい。簡略化したFETのモデルを図8に示し、それと等価な入力インピーダンスを図9に示す。ただし、Gはゲート、Dはドレイン、Sはソース、IDSはドレイン・ソース間電流、Rgはゲート抵抗、Cgsはゲート・ソース間キャパシタンス、Cdgはドレイン・ゲート間キャパシタンス、およびCdsはドレイン・ソース間キャパシタンスである。
【0007】
図3に示す非線形キャパシタンスC(t)が、
【0008】
【数1】
【0009】
ただしtは時間、ポンプ周波数(入力駆動周波数)は2ω0である、のように変化すると仮定すると、
【0010】
【数2】
【0011】
であれば駆動周波数の半分で振動が生じる。ただし2ω0は入力信号周波数、ω0はf/2寄生振動の周波数、Rsはダイオードの直列抵抗(ゲート抵抗Rgに似ている)、Zlはω0におけるダイオードが見た負荷インピーダンス(FETのゲートから逆方向に見たインピーダンスに似ている)、C0は小信号キャパシタンス、およびC2は可変容量ダイオードのキャパシタンスの非線形成分である。この理論は、簡略化し過ぎてはいるが、pHEMT電力増幅器の挙動を定性的に記述している。低駆動(C2→0)の下では、またはRsが十分高い場合には、分数調波振動は現れない。R−Cフィルタ18(図2)を付け加えることによって、低周波数において入力抵抗が十分増大して、駆動下の振動を除去する。
【0012】
スプリアス寄生振動についての研究は少ないが、これもまたトランジスタにおける非線形性のためである。スプリアス寄生振動に対するいくらかの洞察を、Otward MullerおよびWilliam Figelによる上述の参照文献において見出すことができる。この文献において、著者らは、増幅器を、バイアス点が入力駆動によって決まる、非線形増幅器および線形増幅器の重なりと考えている。非線形増幅器によって分数調波振動が生じ、線形増幅器成分によってスプリアス振動が生じる。デバイスを激しく駆動すると、その結果負の入力インピーダンスが生じ、それによって今度は振動が生じる可能性がある。R−Cフィルタ18(図2)の抵抗によって、デバイス内の負の抵抗が相殺され、それによっていかなる振動も抑制される。
【発明の概要】
【0013】
本発明の1つの特徴によれば、複数のトランジスタセルを有するトランジスタデバイスが提供される。セルのそれぞれ1つは、半導体を通るキャリアの流れを制御する制御電極を有する。デバイスは、入力ノードを有する。複数のフィルタが設けられる。フィルタのそれぞれ1つは、入力ノードと、複数のトランジスタセルの制御電極のうちの対応する1つとの間に結合されている。
【0014】
本発明の一実施形態において、対になった制御電極が共通領域に接続され、フィルタのそれぞれ1つは、入力ノードと、共通領域のうちの対応する1つとの間に結合されている。
【0015】
本発明の他の特徴によれば、半導体によって、複数のトランジスタセルの共通活性領域が提供される。
【0016】
本発明の他の特徴によれば、フィルタのそれぞれ1つは、抵抗とコンデンサとを含み、抵抗とコンデンサとは、入力ノードと、制御電極のうちの対応する1つとの間に、並列接続されている。
【0017】
本発明のさらに他の特徴によれば、フィルタのそれぞれ1つは、導電層と、導電層上に配置された絶縁体(誘電体)と、誘電体の上に配置された抵抗層と、抵抗層の第1の部分に電気的に接触するように配置され入力ノードを提供する導電電極と、抵抗層の第1の部分から転置(ずれて配置)された抵抗層の第2の部分と電気的に接触するコネクタであって、誘電体を通り第1の導体と電気的に接触するコネクタとを含む。
【0018】
このような配置であれば、それぞれのデバイスにおける対になった制御電極、例えばゲートフィンガーに接続する、コンパクトな抵抗−コンデンサ(R−C)ネットワーク(すなわち、R−Cフィルタ)が提供される。このコンパクトなR−Cフィルタは、いくつかのモノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)電力増幅器における寄生振動の除去に成功している。大きさがコンパクトなので、さらに設計を調整する必要がほとんど、または全くない状態で、現在のMMICの設計に容易に組み込むことができる。このコンパクトなR−Cフィルタは、pHEMT電力増幅器における駆動に依存する分数調波振動およびスプリアス振動を効果的に除去する。
【0019】
本発明のこれらおよびその他の特徴、および本発明自体は、以下の詳細な説明を図面とともに考慮すれば、より容易に明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術による増幅器の概略図である。
【図2】従来技術による、図1の増幅器において使用するために適合されている、トランジスタデバイスの概略図である。
【図3】本発明による、図1の増幅器において使用するために適合されている、トランジスタデバイスの概略図である。
【図4】図1の増幅器において用いられるトランジスタデバイスにおける、そのようなデバイスがドレイン・ゲート間電圧(Vds)2ボルト、ゲート・ソース間電圧(Vgs)−0.562ボルト、入力電力Pin15.4dBm、および入力周波数f012GHzで動作する場合の、分数調波寄生振動を示すグラフである。
【図5】図1の増幅器において用いられるトランジスタデバイスにおける、そのようなデバイスがドレイン・ゲート間電圧(Vds)2ボルト、ゲート・ソース間電圧(Vgs)−0.507ボルト、入力電力Pin13.9dBm、および入力周波数f012GHzで動作する場合の、スプリアス寄生振動を示すグラフである。
【図6】図1の増幅器において用いられるトランジスタデバイスにおける、そのようなデバイスがドレイン・ゲート間電圧(Vds)2ボルト、ゲート・ソース間電圧(Vgs)0.525ボルト、入力電力Pin13.9dBm、および入力周波数f09.5GHzで動作する場合の、スプリアス寄生振動を示すグラフである。
【図7】図1の増幅器において用いられるトランジスタデバイスにおける、そのようなデバイスがドレイン・ゲート間電圧(Vds)2ボルト、ゲート・ソース間電圧(Vgs)−0.627ボルト、入力電力Pin13.9dBm、および入力周波数f09.5GHzで動作する場合の、スプリアス寄生振動を示すグラフである。
【図8】従来技術による、簡略FETモデル等価回路の概略図である。
【図9】従来技術による図8のFETモデルの実効入力インピーダンスの概略図である。
【図10】図3のトランジスタデバイスの概略平面図である。
【図11】図3のトランジスタデバイスの一部の組立分解図であり、そのような組立分解部分は、図10の9−9と名付けた矢印によって取り囲まれている。
【図12】図11のトランジスタデバイスの一部の概略断面図であり、そのような断面は、図11の10−10線に沿っている。
【図12A】図12Aは、図3のトランジスタデバイスが用いるR−Cフィルタの概略図である。
【図12B】図12Bは、図11のトランジスタデバイスの一部の概略断面図であり、そのような断面は、図11の10B−10B線に沿っている。
【図13】図10のトランジスタデバイスの一部の組立分解図であり、そのような組立分解部分は、図10の11−11と名付けた矢印によって取り囲まれている。
【図14】図13のトランジスタデバイスの一部の概略断面図であり、そのような断面は、図13の12−12線に沿っている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に図3を参照すると、図1の増幅器において用いるようになっている、そのような増幅器において用いるトランジスタデバイス12の代わりの、トランジスタデバイス12”を示す。トランジスタデバイス12”は、複数のトランジスタセル、ここでは8個のセル15”を含む。セル15”は、ここでは例えばガリウムヒ素半導体である半導体の活性領域において形成されている。セル15”のそれぞれ1つは、例えばセルがFETの場合にはソース領域とドレイン領域との間に配置されたゲート電極、または、セルがバイポーラトランジスタの場合にはエミッタ領域とコレクタ領域との間に配置されたベース電極である、制御電極17を含む。したがって、FETトランジスタであってもバイポーラトランジスタであっても、制御電極17(ゲートまたはベース)が、活性領域における1対の領域(ソース−ドレインまたはエミッタ−コレクタ)同士の間の活性領域においてキャリアの流れを制御する。
【0022】
トランジスタデバイス12”は、入力ノード20”を含む。制御電極17のそれぞれ1つは、R−Cフィルタ18"を通じて入力ノード20”に結合されている。ここで、制御電極17のそれぞれの対は、R−Cフィルタ18”のうちの1つを共用する。したがって、この例においては、R−Cフィルタ18”が4個ある。ここでは、トランジスタデバイス15”はFETであり、ソース電極はアースに接続され、ドレイン電極は出力ノード30に接続されている。
【0023】
次に図10ないし図14を参照すると、トランジスタデバイス12”が示されている。デバイス12”は、半絶縁性III族−V族、ここではガリウムヒ素、の基板32(図12、図12B、および図14)の上に形成される。デバイス12”は、入力ノード20”、複数(ここでは8個)のトランジスタセル15”、および、複数(ここでは4個)のR−Cフィルタ18”を含む。セル15”のそれぞれ1つは、基板32上の共通のメサ形状の活性領域34(図12、図12B、および図14)内に形成される。トランジスタセル15”のそれぞれ1つは、ここでは、ソース領域Sとドレイン領域Dとの間に配置されたフィンガー状ゲート電極17(すなわち、制御電極)を有するFETである。したがって、ゲート電極17を用いて、ソース領域Sとドレイン領域Dとの間のキャリアの流れを制御する。特に図13および図14を参照して、ソース領域Sはソース接点(コンタクト)とオーム接触しており、これらは、図12、図12B、および図14において最もはっきりと示されているように、エアブリッジ導体40によって電気的に相互接続されている、ということが注意される。図12Bおよび図14において最もはっきりと示されているように、ソース領域Sは、基板32の反対側の表面上に配置されたアース平面導体43に接続されている。
【0024】
図10、図11、および図12を参照すると、まず、R−Cフィルタ18”はそれぞれ構造が同一である、ということが注目される。その典型的なものを図11、図12、および図12Bに詳細に示す。したがって、このようなフィルタ18”は、基板32の表面上に配置された導電層40を含む。導電層40は、ここでは金である。図示のように、導電層40上に、ここでは窒化ケイ素である絶縁(誘電)層42が形成される。誘電層42の上に、ここではタンタルである抵抗層44が配置される。抵抗層44の第1の部分50に電気接続するように、ここでは金である導電プレートすなわち電極46が配置される。抵抗層44の第2の部分54には、ここでは金である電気コネクタ52が電気接触しており、抵抗層44のこのような第2の部分54は、抵抗層44の第1の部分50から離れている。抵抗層44の部分50と部分52との間の距離によって、R−Cフィルタ18”の抵抗Rが提供される。導体層40は、R−Cフィルタ18”のコンデンサCの一方のプレートすなわち電極を提供し、コンデンサCの他方のプレートは、導電プレート46および抵抗層44によって提供される。コンデンサCの誘電体は、抵抗層44とプレート40との間に配置された誘電層42によって提供される。抵抗層44の部分54は、説明するようにコネクタ52に、抵抗層44と誘電層42とを貫く導電バイア(via)62(図12)によって導電層40に、そして、コネクタ52を通じて制御電極17(図12B)の一端に、電気接続されている。したがって、導電バイア62(図12)は、抵抗層44の部分54を、導電層40が提供するコンデンサCの下側プレートに電気接続する。結果として生じるR−Cフィルタ18”を、図12Aに示す。図11、図12、および図12Aに示すように、コンデンサのプレート46は、エアブリッジ導体47によって入力ノード20”に接続されている。上述のように、R−Cフィルタ18”のそれぞれ1つは、抵抗RとコンデンサCとを含み、抵抗RとコンデンサCとは、入力ノード20”と、制御電極17(図12および図12B)のうちの対応する1つとの間に、並列接続されている。抵抗層44は、抵抗R(ここでは、例えば6オーム/sq)の抵抗層の役目も、コンデンサCの頂部プレートすなわち電極の役目もする。R−Cフィルタ18"の大きさを最小にするために、タンタルの抵抗層44は、抵抗Rを提供する抵抗層の役目も、コンデンサCの上部プレートすなわち電極の一部の役目もする。低周波数においては、フィルタ18”は抵抗Rのみしか判断しない。しかし動作周波数帯においては、コンデンサCが抵抗Rを短絡させ始め、利得が減少し過ぎることがない。
【0025】
本発明者らは、1対のゲートフィンガー17当たり10オームの抵抗が適当であることを発見した。キャパシタンスCは、容量性リアクタンスがバンドの下端における抵抗と等しくなるように選択した。本発明者らの場合であれば、1対のゲートフィンガー17当たり1.67pFを用いて、R−Cの3dBの周波数を9.5GHzに配置した。
【0026】
従来の方法を用いれば4個から8個のフィルタになるのに対し、典型的な電力増幅器においては、30個から50個のコンパクトなR−Cフィルタが並列になる。本発明者らは、従来の方法は、本発明と比較して、セル12の大きさが増大するとスプリアス振動の除去効果が少ないと考える。安定性を保証するために、従来の方法での性能は、本発明によるものよりもはるかに悪くなる。
【0027】
他の実施形態も、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内にある。例えば、それぞれのフィルタ18”は1対の制御電極17に接続されるが、フィルタ18”は1つの制御電極17のみに接続されてもよく、その場合には、図3のデバイス12”は8個のフィルタ18”を有する。
【符号の説明】
【0028】
12” トランジスタデバイス
15” トランジスタセル
17 制御電極
18” フィルタ
20” 入力ノード
40 導電層
42 誘電層
44 抵抗層
46 導電電極
50 第1の部分
52 コネクタ
54 第2の部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体を通るキャリアの流れを制御する制御電極をそれぞれ有する複数のトランジスタセルと、
入力ノードと、
前記入力ノードと、前記複数のトランジスタセルの前記制御電極のうちの対応する1つとの間にそれぞれ結合されている複数のフィルタと、
を備えた、トランジスタデバイス。
【請求項2】
対になった前記制御電極は共通領域に接続され、前記フィルタはそれぞれ、前記入力ノードと、前記共通領域のうちの対応する1つとの間に結合されている、請求項1記載のトランジスタデバイス。
【請求項3】
前記半導体が、前記複数のトランジスタセルの共通活性領域が提供する、請求項2記載のトランジスタデバイス。
【請求項4】
前記フィルタはそれぞれ、抵抗とコンデンサとを含み、該抵抗と該コンデンサとは、前記入力ノードと、前記制御電極のうちの対応する1つとの間に並列接続されている、請求項1記載のトランジスタデバイス。
【請求項5】
前記フィルタはそれぞれ、抵抗とコンデンサとを含み、該抵抗と該コンデンサとは、前記入力ノードと、前記共通領域のうちの対応する1つとの間に並列接続されている、請求項3記載のトランジスタデバイス。
【請求項6】
半導体と、
該半導体の活性領域において形成される複数のトランジスタセルであって、それぞれが、1対の領域の間に配置され前記活性領域を横切って延びて、前記1対の領域の間で前記活性領域を通るキャリアの流れを制御する制御電極を含む、複数のトランジスタセルと、
入力ノードと、
前記入力ノードと、前記複数のトランジスタセルの前記制御電極のうちの対応する1つとの間にそれぞれ結合されている複数のフィルタであって、該フィルタのそれぞれは、 導電層と、 該導電層上に配置された絶縁体と、 該絶縁体の上に配置された抵抗層と、 前記抵抗層の第1の部分に電気的に接触するように配置され前記入力ノードを提供する、導電電極と、 前記抵抗層の前記第1の部分から転置された前記抵抗層の第2の部分と電気的に接触するコネクタであって、前記絶縁体を通り前記第1の導体と電気的に接触するコネクタとを含む複数のフィルタと、
を備える、トランジスタデバイス。
【請求項7】
対になった前記制御電極は共通領域に接続され、前記フィルタはそれぞれ、前記入力ノードと、前記共通領域のうちの対応する1つとの間に結合されている、請求項6記載のトランジスタデバイス。
【請求項8】
前記フィルタはそれぞれ、抵抗とコンデンサとを含み、該抵抗と該コンデンサとは、前記入力ノードと、前記制御電極のうちの対応する1つとの間に並列接続されている、請求項6記載のトランジスタデバイス。
【請求項9】
前記フィルタはそれぞれ、
前記抵抗層によって提供される抵抗と、
前記導電層および前記導電電極および前記絶縁層によって提供されるコンデンサであって、前記抵抗と前記コンデンサとは、前記入力ノードと、前記制御電極のうちの対応する1つとの間に並列接続されている、コンデンサと、
を備える、請求項6記載のトランジスタデバイス。
【請求項10】
前記フィルタはそれぞれ、抵抗とコンデンサとを含み、該抵抗と該コンデンサとは、前記入力ノードと、前記共通領域のうちの対応する1つとの間に並列接続されている、請求項8記載のトランジスタデバイス。
【請求項1】
半導体を通るキャリアの流れを制御する制御電極をそれぞれ有する複数のトランジスタセルと、
入力ノードと、
前記入力ノードと、前記複数のトランジスタセルの前記制御電極のうちの対応する1つとの間にそれぞれ結合されている複数のフィルタと、
を備えた、トランジスタデバイス。
【請求項2】
対になった前記制御電極は共通領域に接続され、前記フィルタはそれぞれ、前記入力ノードと、前記共通領域のうちの対応する1つとの間に結合されている、請求項1記載のトランジスタデバイス。
【請求項3】
前記半導体が、前記複数のトランジスタセルの共通活性領域が提供する、請求項2記載のトランジスタデバイス。
【請求項4】
前記フィルタはそれぞれ、抵抗とコンデンサとを含み、該抵抗と該コンデンサとは、前記入力ノードと、前記制御電極のうちの対応する1つとの間に並列接続されている、請求項1記載のトランジスタデバイス。
【請求項5】
前記フィルタはそれぞれ、抵抗とコンデンサとを含み、該抵抗と該コンデンサとは、前記入力ノードと、前記共通領域のうちの対応する1つとの間に並列接続されている、請求項3記載のトランジスタデバイス。
【請求項6】
半導体と、
該半導体の活性領域において形成される複数のトランジスタセルであって、それぞれが、1対の領域の間に配置され前記活性領域を横切って延びて、前記1対の領域の間で前記活性領域を通るキャリアの流れを制御する制御電極を含む、複数のトランジスタセルと、
入力ノードと、
前記入力ノードと、前記複数のトランジスタセルの前記制御電極のうちの対応する1つとの間にそれぞれ結合されている複数のフィルタであって、該フィルタのそれぞれは、 導電層と、 該導電層上に配置された絶縁体と、 該絶縁体の上に配置された抵抗層と、 前記抵抗層の第1の部分に電気的に接触するように配置され前記入力ノードを提供する、導電電極と、 前記抵抗層の前記第1の部分から転置された前記抵抗層の第2の部分と電気的に接触するコネクタであって、前記絶縁体を通り前記第1の導体と電気的に接触するコネクタとを含む複数のフィルタと、
を備える、トランジスタデバイス。
【請求項7】
対になった前記制御電極は共通領域に接続され、前記フィルタはそれぞれ、前記入力ノードと、前記共通領域のうちの対応する1つとの間に結合されている、請求項6記載のトランジスタデバイス。
【請求項8】
前記フィルタはそれぞれ、抵抗とコンデンサとを含み、該抵抗と該コンデンサとは、前記入力ノードと、前記制御電極のうちの対応する1つとの間に並列接続されている、請求項6記載のトランジスタデバイス。
【請求項9】
前記フィルタはそれぞれ、
前記抵抗層によって提供される抵抗と、
前記導電層および前記導電電極および前記絶縁層によって提供されるコンデンサであって、前記抵抗と前記コンデンサとは、前記入力ノードと、前記制御電極のうちの対応する1つとの間に並列接続されている、コンデンサと、
を備える、請求項6記載のトランジスタデバイス。
【請求項10】
前記フィルタはそれぞれ、抵抗とコンデンサとを含み、該抵抗と該コンデンサとは、前記入力ノードと、前記共通領域のうちの対応する1つとの間に並列接続されている、請求項8記載のトランジスタデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−75178(P2012−75178A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266764(P2011−266764)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【分割の表示】特願2001−504069(P2001−504069)の分割
【原出願日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【分割の表示】特願2001−504069(P2001−504069)の分割
【原出願日】平成12年6月9日(2000.6.9)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】
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