説明

密度を制御した微小粒子

本発明は、水を主成分とする分散媒中に安定に分散でき、沈降又は沈殿しにくい、密度を制御した微小粒子に関する。本発明の密度を制御した微小粒子は、少なくとも1種の高分子及び少なくとも1種の充填剤を含む粒子であって、体積平均粒子径が0.01μm〜1.000μmであり、密度が0.9〜2.0である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、密度を制御した微小粒子に関する。
【背景技術】
近年、合成高分子の微小な球状粒子が各種の技術分野で求められている。また、球状粒子の表面を種々の層で被覆した複合粉体も求められている。例えば、球状樹脂粒子上に金属酸化物微粒子および/または水酸化物微粒子をメカノケミカル的にコーティングした化粧料(特開平8−59433号公報参照)が挙げられる。また、顔料をはじめとする各種微粒子を高分子粒子内部に含有させた内包型複合紛体、例えば、樹脂粒子内部に酸化チタンや酸化亜鉛微粉体を分散させた複合粒子(特開平9−30935号公報参照)、樹脂粒子内部に着色顔料を分散させた複合粒子(特開平10−231232号公報参照)等が知られている。また、熱可塑性樹脂及び少なくとも1種の充填剤から実質的になる熱可塑性樹脂組成物から略球状の微小粉体を製造する方法が開示されている(特開2001−114901号公報参照)。しかしながら、これらの複合粒子は比重が大きいため、水分散系に適用する場合、沈降や沈殿が生じやすく、不都合が生じやすい。特に生物、生体関連の技術分野では比重が1に近い微小粒子が強く望まれている。
【発明の開示】
本発明が解決しようとする課題は、水を主成分とする分散媒中に安定に分散でき、沈降又は沈殿しにくい、密度を制御した微小粒子を提供することである。
本発明の課題は以下の手段により解決された。すなわち、
項1)少なくとも1種の高分子及び少なくとも1種の充填剤を含む粒子であって、密度が0.9〜2.0であり、体積平均粒子径が0.01μm〜1,000μmであることを特徴とする微小粒子、
本発明の微小粒子の好ましい実施態様を以下に列挙する。
項2)充填剤が磁性粉体である項1)記載の微小粒子、
項3)体積平均粒子径が5μm〜1,000μmである項1)又は2)記載の微小粒子、
4)密度が0.95〜1.5である項1)〜3)いずれか1つに記載の微小粒子、
項5)表面に被覆層を有する項1)〜4)いずれか1つに記載の微小粒子、
項6)被覆層が生体親和性材料である項5)に記載の微小粒子、
項7)磁性粉末として強磁性材料を使用した項2)〜6)いずれか1つに記載の微小粒子、
項8)強磁性材料がフェライトである項7)記載の微小粒子、
項9)高分子が熱可塑性である項1)ないし8)いずれか1つに記載の微小粒子、
項10)高分子が密度1.0未満である、エチレン・酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、高圧(低密度)ポリエチレン、ポリ−1−ブテン及びポリイソブチレンよりなる群より選ばれてなる項9)に記載の微小粒子、
項11)密度が1.0以上である少なくとも1種の高分子と密度が1.0未満である少なくとも1種の高分子を含む項1)ないし10)いずれか1つに記載の微小粒子、
項12)密度が1.0以上である少なくとも1種の高分子と密度が1.0未満である中空微粒子を含有する項1)に記載の微小粒子、
項13)高分子が生分解性である項1)〜12いずれか1つに記載の微小粒子、
項14)高分子が脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸を含む。以下同じ。)である項13)に記載の微小粒子、
項15)密度1.0以上の少なくとも1種の無機材料を充填剤として含む項1)ないし14)いずれか1つに記載の微小粒子。
本発明によれば、水分散系で使用しても沈降や沈殿が起こりにくい密度を制御した微小粒子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の密度を制御した微小粒子に使用する高分子はいかなるものでもよいが、製造上の観点から、熱可塑性の樹脂が好ましい。この場合、本発明者が先に開発した微小粒子の製造方法(特開2001−114901号公報参照)に従って製造することができる。すなわち、少なくとも1種の熱可塑性樹脂及び必要に応じて選ばれた少なくとも1種の充填剤からなる組成物をこれと相溶性のない分散媒と共に組成物の融点以上に加熱混合し、微粒子として分散した後、冷却することにより体積平均粒子径が0.01μm以上1,000μm以下(0.01〜1,000μm)の球状微小粒子が容易に得られる。ここで、平均粒子径とは、体積平均をいう。
好ましい熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド類、特に各種ナイロン、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ポリエステル類、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリふっ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアセタール、ポリスルホン、アクリル酸メチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アクリルニトリル・スチレンコポリマー、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレン・アクリル酸コポリマー、エチレン・プロピレンコポリマー、ABS樹脂(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマー)、熱可塑性弾性体、例えばスチレン・ブタジエンコポリマー等が挙げられる。
本発明の密度を制御した微小粒子は種々の用途に供することができる。特に環境問題に配慮した分野または生体適合性に配慮した分野においては高分子として生分解性樹脂を使用することが好ましい。生分解性樹脂もやはり製造上の観点から熱可塑性の樹脂が好ましく、脂肪酸ポリエステル(ポリ乳酸を含む。以下同じ。)、天然原料を化学的に変成した特定の生分解性熱可塑性樹脂、微生物生産プラスチック、合成プラスチックが典型的な樹脂であるが、これらに限定されるものではない。
本発明で使用する生分解性樹脂としては脂肪族ポリエステル又は2種以上の脂肪族ポリエステルのブレンドが特に好ましい。
本発明において、「脂肪族ポリエステル」とは、分子内のすべての炭素原子が一列の鎖状につながり、分子内の炭素原子は枝分かれ構造を有していても良いが、環式構造を含まないポリエステルをいう。シクロヘキサン環等の脂肪族の環状構造を含んでいても良い。脂肪族ポリエステルは工業的な規模で生産されており、本発明の実施に好ましい脂肪族ポリエステルとしては開環重合法によるポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)及び発酵法によるポリヒドロキシブチレート/ヴァリレート共重合体(PHB/V)があげられる。
本発明の微小粒子が充填剤として磁性粒子を含む場合には、その密度は0.9〜2.0であるが、0.95〜1.5であることが好ましく、0.98〜1.3であることが特に好ましい。
充填剤の有無を問わず、水分散媒中で用いられる場合、その密度は、0.98〜1.02であることが好ましい。分散媒の密度に近い密度を有する微小粒子が好ましく、多くの場合には、1.0に等しいか又は1.01に近いことが好ましい。多くの充填剤や無機被覆層の密度は1より大きい。従って、これらの充填剤を含む微小粒子や無機被服層を有する微小粒子は、密度が1.0より小さい高分子を少なくとも1種選択することが好ましい。
一方、粒子を構成する高分子の密度が1.0未満の場合には、密度が1.0より大きい材料と組み合わせることが好ましい。
密度が1.0未満の高分子としては、ポリプロピレン(PP)、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、高圧(低密度)ポリエチレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレンなどを例示できる。
また、密度を制御するために比重が1より小さい中空微粒子を用いることができる。中空微粒子は種々の材料から選ぶことができるが、製法上の観点から、熱可塑性高分子樹脂の融点より10℃以上好ましくは300℃以上高い融点を有する材料が好ましい。そのような材料としてシリカなどの無機材料、アルキルシリカなどの有機無機ハイブリッド材料、ポリイミドなどの耐熱有機材料、さらに、フラーレンやカーボンナノチューブなどの炭素材料などを挙げることができる。この中でもシリカを用いることが好ましい。
使用できる中空粒子のサイズは本発明の微小粒子の体積平均粒子径以下であるが、好ましくは体積平均粒子径の10分の1以下である。
一方、密度が1より大きい材料としては無機材料、特に各種金属酸化物、例えばフェライト、チタニア、ジルコニア、シリカ、アルミナなどが例示できる。
本発明の微小粒子は少なくとも一部が粒子内部に包含される充填剤を含有していてもよい。この場合、充填剤の一部は、粒子表面に露出しても良い。充填剤は、機械的、電気的、磁気的、光学的、又は熱的性質を発現もしくは改良しうる性質を有するものが好ましい。充填剤は少なくとも1種の有機充填剤、無機充填剤、及びこれらの2種以上の同種又は異種の、混合物であり、高分子樹脂と混合可能な成分である。このような充填剤には、紫外線を吸収ないし散乱する物質、顔料、染料、赤外線吸収剤、電磁波ないし放射線の吸収剤、各種蛍光体が含まれる。例えば、酸化チタン(チタンホワイト)、酸化亜鉛、酸化鉄(ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、超微粒子酸化鉄)、酸化鉛、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化チタン、窒化ジルコニウム、酸化セレン、炭化珪素、窒化珪素、炭化硼素、窒化硼素、アルミン酸ストロンチウム、マンガンドープ珪酸亜鉛、セリウムドープイットリウムシリケート、希土類シリケートなどが挙げられる。また、必要に応じて2以上の異なった充填剤を併用することができる。充填剤は高分子からなる微小粒子の内部に含有させることが好ましいが、粒子表面の一部もしくは全体を被覆するようにしても良い。
本発明の微小粒子には充填剤として磁性粉末を用いることができる。磁性粉末を球状微小樹脂粒子に含有(充填)させる目的の一つは外部磁界により、微小粒子を各種化学環境下の微小領域で駆動することにより、撹拌、混合、流速制御、分離、バルブ操作などの単位操作を行なわしめることにある。このような目的に使用される磁性粉末としては、強磁性材料である必要がある。ここで、強磁性材料とは、フェロ磁性、フェリ磁性など自発磁化を有する磁性材料である。このような材料は金属、合金、金属間化合物、酸化物、金属化合物など多岐にわたる。
磁性粉末の充填量は、高分子の総量に対して1〜90重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましい。
金属材料としては遷移金属のFe、Ni、Coが代表的であるが、これらの金属との合金として、Fe−V、Fe−Cr、Fe−Ni、Fe−Co、Ni−Co、Ni−Cu、Ni−Zn、Ni−V、Ni−Cr、Ni−Mn、Co−Cr、Co−Mn、50Ni50Co−V、50Ni50Co−Cr系なども使用できる。これらのうち、飽和磁気モーメントの大きいFeや、Niを含む系が好ましく、Fe−Ni系が特に好ましい。飽和磁気モーメントの大きい材料を用いた場合、少ない充填量で上記目的を達成し、本発明の規定する密度の複合粒子が得られやすい。他の金属材料としては、希土類のGdおよびその合金が挙げられる。
金属間化合物としては、ZrFe、HfFe、FeBeの他、REFe、(RE=Sc、Y、Ce、Sn、Gd、Dy、Ho、Er、Tm)、GdCoなどが挙げられる。また、RECo(RE=Y、La、Ce、Sm)、SmCo17、Gd17、さらに、NiMn、FeCa、FeNi、NiFe、CrPt、MnPt、FePd、FePd、FePt、FePt、CoPt、CoPt、NiPtなどが挙げられる。
一方、酸化物としてはスピネル型、ガーネット型、ペロブスカイト型、マグネトプランバイト型などの結晶構造を有する磁性酸化物が使用できる。
スピネル型の例として、MFe(M=Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Zn、Li0.5Fe0.5)、FeMn、FeCo、NiCo、γ−Fe、などが挙げられる。γ−Feはマグヘマイトと呼ばれる酸化鉄である。これは顔料として知られているα−Fe(べんがら)とは異なり、比較的低密度(約3.6g/cm)で飽和磁気モーメントの大きい材料として知られており、本発明の充填剤として特に好ましい。
ガーネット型酸化物としては、希土類鉄ガーネットが使用できる。一般式RFe12で表現したとき、R=Y、Sm、Zn、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luにおいてフェリ磁性を示すことが知られている。このうち、Y、Sm、Yb、Luなどが飽和磁化が大きい点で好ましい。中でも、Yは密度が低く(5.17g/cm)特に好ましい。
マグネトプランバイト型の酸化物としては、MF1219(M=Ba、Sr、Ca、Pb、Ag0.5La0.5、Ni0.5La0.5)、MBaFe1627(M=Mn、Fe、Ni、Fe0.5Zn0.5、Mn0.5Zn0.5)、MBaFe2441(M=Co、Ni、Cu、Mg、Co0.75Fe0.25)、MBaFe1222(M=Mn、Co、Ni、Mg、Zn、Fe0.25Zn0.75)などが挙げられる。
ペロブスカイト型の酸化物としてはRFeO(R=希土類イオン)が挙げられる。
他方、金属化合物としては、ホウ化物(CoB、CoB、FeB、MnB、FeBなど)、Al化合物(FeAl、CuMnAlなど)、炭化物(FeC、FeC、MnZnC、CoMnCなど)、珪化物(FeSi、FeSi、CoMnSiなど)、窒化物(MnN、FeN、FeN、FeNiN、FPtN、Fe0.75、Mn0.75Co0.25、Mn0.50.5、Fe1−xなど)の他、リン化物、ヒ素化合物、Sb化合物、Bi化合物、硫化物、Se化合物、Te化合物、ハロゲン化合物、希土類元素なども使用できる。
その他の磁性材料は、近角聰信著「強磁性体の物理」裳華房(S58.4第4版)に記載されている。
また、このような充填剤を本発明の微小粒子に添加することができる。すなわち上記充填剤の機能を有し、かつ密度の小さい材料を密度制御剤として添加するものである。例えば、中空構造の充填剤を密度制御剤として添加できる。さらに、充填剤を比重が1.0未満の高分子中に添加する場合は、密度1.0以上の充填剤を密度制御剤として添加することができる。
本発明の微小粒子はその表面に機能材料から成る被覆層を有していてもよい。機能材料は生化学的、機械的、電気的、磁気的、光学的、又は熱的性質を発現もしくは改良しうる性質を有し、少なくとも1種の有機材料、無機材料、有機無機複合材料およびこれらの2種以上の同種又は異種材料の混合物である。機能材料には生体親和性材料、紫外線を吸収ないし散乱する物質、顔料、染料、赤外線吸収剤、電磁波ないし放射線の吸収剤、各種蛍光体が含まれる。ここで、本発明において「生体親和性材料」とは、生体への毒性を持たず、また生体反応を引き起こさない材料をいう。
例えば、生体親和性材料としてヒドロキシアパタイト、多糖類及びその誘導体、デキストラン及びその誘導体、カルボキシル基やアミノ基を有する高分子材料、及びポリオレフィンと上記官能基を有するポリマーとの共重合体などが好ましい例として挙げられる。また被覆層として使用できる無機材料として、金属酸化物、金属ホウ化物、金属珪化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等を挙げることができる。無機材料の具体例としては、Ni、Cu、Cr、Al、金、白金、銀などの金属、酸化チタン(チタンホワイト)、酸化亜鉛、酸化鉄(ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、超微粒子酸化鉄)、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化セレン、アルミン酸ストロンチウム、マンガンドープ珪酸亜鉛、セリウムドープイットリウムシリケート、希土類シリケートなどの金属酸化物、水酸化アルミニウム、窒化チタン、窒化ジルコニウム、炭化珪素、窒化珪素、炭化硼素、窒化硼素などが挙げられる。
被覆層の厚みは分子オーダー(約1nm)から数ミクロンであるが、機能材料の種類や微小粒子径、応用分野により最適な厚みを選ぶことができる。
本発明の微小粒子は、体積平均粒子径が0.01μm以上1,000μm以下であるが、好ましくは0.1μm以上500μm以下、さらに好ましくは1μm以上1,000μm以下、特に好ましくは5μm以上1,000μm以下である。
磁性粉体を含む本発明の微小粒子は、磁石による駆動や回収が容易となる体積平均粒子径が5μm以上1,000μm以下であるが、好ましくは平均粒径が10μm以上300μm以下である。
本発明の微小粒子は、その形状係数(以下、「SF」とも表記する。)が100〜150であることが好ましく、100〜140であることがより好ましく、100〜120であることが特に好ましい。なお、真球の場合、形状係数SFは100となり、100に近いほど微小粒子が真球形に近い形状を有し、大きな値になればなるほど真球から隔たった不定形状となる。

式中、MLは微小粒子の投影像の最大径を示し、Aは微小粒子の投影面積を示す。
形状係数SFは、測定対象となる微小粒子をサンプリングし、光学顕微鏡により撮影した微小粒子の投影像を画像解析装置により解析して求めることができる。微小粒子100個以上の値を平均して得られた値を形状係数SFとした。
磁性粉末を内包する微小粒子は、体積平均粒径が5〜1,000μm、好ましくは5〜300μmの範囲であって、いずれもその形状係数SFが100〜120であることが好ましく、100〜110であることがより好ましい。
本発明の微小粒子は生体関連の技術分野に使用できる。具体的には、細胞培養担体やタンパク質、DNAなどの分析用吸着剤などに使用することができる。
本発明の微小粒子を、Caイオン及び燐酸イオンを含む水溶液中に30℃以上の温度で12時間以上分散もしくは浸漬することにより、粒子表面を燐酸カルシウムからなる層で被覆することができる。
上記の水溶液中には、少なくともCaイオン及び燐酸イオン(HPO2−)を含有させることが必要である。好ましくは水溶液としてCaイオンや燐酸イオンを含有した擬似体液を用いる。
微小粒子を浸漬させる水溶液は、樹脂粒子の浸漬時に燐酸カルシウムが過飽和の状態であることが必要である。過飽和状態を実現するためには、水溶液を中性以上のpHに保つことが重要である。pHが下がると、燐酸カルシウムの溶解度が上がるため、結晶は析出しなくなる。
Caイオン濃度は1.0(mM/L)以上であることが好ましく、2.0〜7.5(mM/L)であることが更に好ましい。
燐酸イオン濃度は0.4(mM/L)以上であることが好ましく、0.8〜3.0(mM/L)であることが更に好ましい。
水溶液として擬似体液を用いる場合は、擬似体液中の各種イオン濃度(mM/L)は、Ca2+:2.5、HPO2−:1.0、Na:142、K:5.0、Mg2+:1.5、Cl:147.8、HCO:4.2、SO2−:0.5および緩衝剤(CHOH)CNHの濃度50(mM/L)からなる標準濃度のものや、これらの1〜3倍濃度の水溶液を用いることができる。
樹脂粒子の浸漬中は水溶液のpH値を7.2〜8.0、好ましくは7.4〜7.6、温度を30〜80℃、好ましくは36〜38℃、浸漬時間を12時間以上、好ましくは3〜10日に保つことで、樹脂粒子の表面に燐酸カルシウムからなる層を被覆させることができる。
本発明によれば樹脂粒子をCaイオンや燐酸イオンを含む水溶液に浸漬する工程において樹脂粒子を水溶液中に浮遊させることが好ましい。樹脂粒子を浮遊させることで粒子間のばらつきのない被覆が可能となる。浮遊させる手段としては、例えば水溶液に機械的な回転や循環の運動をあたえることで撹拌することが好ましい。また、撹拌操作を間歇的に行っても良い。
【実施例】
以下に実施例をあげるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
比重0.91のポリプロピレン(住友化学工業(株)三井住友ポリプロW−531)0.85Kgと比重3.5のフェライト(Fe、戸田工業(株)製QX440)0.15gとを、ポリエチレングリコール(三洋化成工業(株)製P20000)1.3Kgと良く混合した後、2軸型の加圧混練機中で、200℃に均一に加熱しながら混合し、フェライト内包ポリプロピレンの微小粒子に分散した。得られた混合物を約150℃に冷却した後、分散媒である水20リットルと混合してフェライト内包ポリプロピレン微小粒子の懸濁液とした。遠心分離法及びろ過法により目的とする微小粒子を分離した後、加熱乾燥して、体積平均粒子径100〜200μm、密度約0.99〜1.01の、フェライト15%を内包したほぼ真球状のポリプロピレン微小粒子を得た。形状係数SFは110であった。
【実施例2】
実施例1において、比重0.91のポリプロピレン(住友化学工業(株)三井住友ポリプロW−531)0.85Kgに替えて、比重0.93ポリエチレン酢酸ビニル(EVA)(東ソー(株)製ウルトラセン541)0.85Kgを使用する以外は同様にして、体積平均粒子径100〜200μm、比重約1.0〜1.02の、フェライト15%を内包したほぼ真球状のポリ酢酸ビニル(EVA)微小粒子を得た。形状係数は110であった。
【実施例3】
実施例1で得られたポリプロピレン微小粒子200mgを50mL試料瓶に採取し、各種イオン濃度(mM/L)がCa2+:2.5、HPO2−:1.0、Na:142、K:5.0、Mg2+:1.5、Cl:147.8、HCO:4.2、SO2−:0.5および緩衝剤(CHOH)CNH濃度50(mM/L)からなるpH7.4の水溶液40mLを加えて振とうした。これを36.5℃の恒温層中で7日間浸漬・保存した。この間、6回程度振とうし、微小粒子を水溶液中に分散・浮遊させた。7日後に試料をろ過分離して室温で乾燥した。得られた粒子は表面が約0.1μmの厚さの燐酸カルシウムで被覆されていた。この粒子を細胞培養担体とした。
比重が培養液の比重1.01に近い浮遊性を有するこの担体の表面で細胞を培養した。培養した細胞を回収するために、培養層外壁に磁石を用意し、内壁に引き寄せられた担体を、磁石を上昇させて液中から担体を引き上げ、細胞ごと担体を回収した。
【実施例4】
実施例3において、ポリプロピレン微小粒子200mgに替えてポリエチレン酢酸ビニル(EVA)微小粒子200mgを使用した以外は同様にして細胞培養担体を作成した。実施例4においても実施例3と同様にして細胞を回収することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の高分子及び少なくとも1種の充填剤を含む粒子であって、密度が0.9〜2.0であり、体積平均粒子径が0.01μm〜1,000μmであることを特徴とする微小粒子。
【請求項2】
充填剤が磁性粉体である請求項1記載の微小粒子。
【請求項3】
体積平均粒子径が5μm〜1,000μmである請求項1又は2記載の微小粒子。
【請求項4】
密度が0.95〜1.5である請求項1〜3いずれか1つに記載の微小粒子。
【請求項5】
表面に被覆層を有する請求項1〜4いずれか1つに記載の微小粒子。
【請求項6】
表面が生体親和性材料で被覆された請求項5に記載の微小粒子。
【請求項7】
磁性粉末として強磁性材料を使用した請求項2〜6いずれか1つに記載の微小粒子。
【請求項8】
強磁性材料がフェライトである請求項7記載の微小粒子。
【請求項9】
高分子が熱可塑性である請求項1ないし8いずれか1つに記載の微小粒子。
【請求項10】
高分子が密度1.0未満である、エチレン・酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン、高圧(低密度)ポリエチレン、ポリ−1−ブテン及びポリイソブチレンよりなる群より選ばれてなる請求項9に記載の微小粒子。

【国際公開番号】WO2004/067609
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504675(P2005−504675)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000394
【国際出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【特許番号】特許第3740492号(P3740492)
【特許公報発行日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(302050123)トライアル株式会社 (19)
【Fターム(参考)】