説明

寛容原性融合タンパク質による寛容性の誘発

【課題】抗原に対する寛容性を誘発するための医薬組成物を提供する。
【解決手段】個体への導入に好適なリンパ球様細胞又は造血細胞及び医薬として許容可能な賦形剤を含み、ここで、前記細胞はプロモーターに作用可能に連結された融合タンパク質をコードする核酸配列を含み、ここで、前記核酸配列はウイルスベクター又はその部分を含み、前記融合タンパク質は、以下の:(1)イムノグロブリン重鎖又は軽鎖;及び(2)前記抗原の少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドを含み、さらにここで、前記個体への前記組成物の導入により、前記個体において前記抗原に対する寛容性が誘発される、医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
自己−非自己の識別は免疫学の基礎の1つである。通常、個体は免疫系の初期の発達の間に自己成分に対する寛容性を発生する。しかしながら、この非応答状態は抗原の持続性、すなわち、寛容性の誘発が一生のプロセスであることを意味するという事実、である。 Smith, Advances in Immunology, :67 (1961) 。事実、年配の個体における寛容性の破壊は、加齢する個体群における自己免疫の出現率の増加を説明する。
【0002】
同種または異種のガンマグロブリンは、寛容原性担体分子 (一次IgG)として使用されてきている。 Scott, Immunol. Rev. , 43:241 (1979)。 IgGの異なる源はそれらの持続性および/または寛容性誘発のメカニズムにおいて変化することがあるが、はるかに、 IgG担体は大人においてハプテン、ヌクレオシドおよびペプチドに対する寛容性の誘発において最も効率的であった。 Borel, Immunological Reviews , 50:71(1980);および Scott, Cell Immunol. , 22:311 (1976)。これらの担体のそれらのすぐれた寛容原性は、それらの in vivoの持続性および IgGに化学的に結合したエピトープがmIgMをB細胞Fcレセプターと架橋させる能力のお陰である。しかしながら、 IgG担体へのエピトープの化学的架橋は、遊離アミノ基の利用可能性および添加した決定基の IgGの異なる部分への非調節のターゲティングにより制限される。
【0003】
組換え DNA技術を使用して、異種エピトープを有する分子を遺伝子操作することができる。例えば、生物学的に重要である異種オリゴペプチドのエピトープは、細菌のフラジェリン(Jennings et al., Protein Eng., :365(1989));B型肝炎の表面抗原 (Rutgerset al., Biotechnology , :1065 (1988));および免疫グロブリンの相補的決定領域(Zanetti et al., Nature, 355 :476 (1992)) において発現された。動物を免疫化しそして異種オリゴペプチドに対する免疫応答を発生する抗原として働く組換えタンパク質の能力を試験するいくつかの試みがなされてきた。しかしながら、免疫系に対して提示されたオリゴペプチドに対する寛容性の誘発および維持は証明されてきていない。抗原またはエピトープに対する寛容性を維持する能力は、エピトープの in vivo持続性を必要とする。
【0004】
したがって、安定な長く持続するエピトープに対する寛容性を誘発する方法を開発することが要求されている。寛容性が維持されるようにエピトープの in vivoの持続性を提供できるベクターを開発することが要求されている。異種エピトープを有しかつ個体において寛容性を誘発しかつそれを維持するために使用できる組換えポリペプチドをコードする組換えベクターが要求されている。
【発明の開示】
【0005】
発明の要約
本発明は、エピトープおよびそれらのエピトープを含有する抗原に対する寛容性を誘発しかつそれを維持する方法および組成物を提供する。これらの方法および組成物は、新規な寛容原性エピトープおよびこのようなエピトープを含有する抗原を同定するために有用である。これらの方法および組成物は、また、自己免疫またはアレルギー性免疫の応答に関連するエピトープおよび前記エピトープを含有する抗原を誘発しかつそれを維持するために有用である。
【0006】
組成物は発現カセットおよびベクターを包含する。発現カセットおよびベクターは形質転換された細胞を形成するために使用できる。発現カセットは、造血細胞またはリンパ球様細胞において機能的な転写および翻訳調節領域に作用可能に連鎖された融合免疫グロブリンをコードする DNA配列を含んでなる。融合免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子のN−末端の可変領域に少なくとも1つの異種寛容原性エピトープを有する。ベクターは発現カセットを含み、そして細胞を寿命を通して造血細胞またはリンパ球様細胞において発現カセットの安定な維持を提供する、すなわち、発現カセットの遺伝子の発現を提供することができるベクターである。造血細胞またはリンパ球様細胞はベクターで安定に形質転換されて、融合免疫グロブリンを発現する形質転換された細胞を提供する。
【0007】
本発明は、また、医薬組成物を包含する。医薬組成物は、薬学上許容される賦形剤と組合わせて、寛容性を誘発しおよび/または維持するために十分な量の融合免疫グロブリンを含んでなる。融合免疫グロブリンは、そのN−末端の可変領域に少なくとも1つの異種寛容原性エピトープを含む。
【0008】
本発明は、また、新規な寛容原として働くことができるエピトープまたはエピトープを含有する抗原を同定する方法を提供する。これらの方法は、融合免疫グロブリンをコードする発現カセットで細胞を安定に形質転換して、融合免疫グロブリンを産生または発現する形質転換された細胞の集団を形成することを包含する。寛容性を誘発できることが推測される抗原からの1または2以上のエピトープを有する融合免疫グロブリンを、種々の方法においてエピトープに対して寛容性を誘発する能力についてスクリーニングすることができる。融合免疫グロブリンが寛容性を誘発できるかどうかを決定する1つの方法は、寛容原量の融合免疫グロブリンを動物に投与することである。他の方法において、融合免疫グロブリンを発現する形質転換された細胞を動物に投与して、エピトープに対する寛容性を誘発および/または維持することができるかどうかを決定することができる。第3の方法において、エピトープまたはエピトープを含有する抗原はアレルギー性または自己免疫性の免疫血清またはリンパ球との反応性により同定することができる。
【0009】
本発明は、また、動物においてエピトープに対する寛容性を誘発および維持する方法を包含する。方法の1つは、融合免疫グロブリン上の異種エピトープに対する寛容性を誘発および/または維持するために十分な寛容原量の融合免疫グロブリンを投与することを包含する。他の方法において、融合免疫グロブリンを発現する形質転換された細胞を動物に投与して寛容性を誘発および維持する。他の方法において、融合免疫グロブリンを含む医薬組成物を投与して異種エピトープに対する寛容性を誘発し、次いで融合免疫グロブリンを発現する形質転換された細胞を投与して異種エピトープに対する寛容性を維持する。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、抗原に対する寛容性を誘発および維持する組成物および方法を提供する。組成物は発現カセットおよびベクターを含んでなり、それらは造血細胞またはリンパ球様細胞において機能的な転写および翻訳調節領域に作用可能に連鎖された融合免疫グロブリンをコードする DNA配列を含んでなる。融合免疫グロブリンは、免疫グロブリン鎖の可変領域のN−末端に位置する少なくとも1つの異種エピトープを有する。ベクターは、好ましくは、造血細胞の中への発現カセットの安定な組込みを提供できるベクターである。本発明は、また、ベクターで形質転換された細胞を包含する。N−末端に異種エピトープを有する融合免疫グロブリンは、エピトープおよび/またはその抗原に対する寛容性の誘発を提供する医薬組成物において使用することができる。本発明は、また、新規な寛容原性抗原およびエピトープを同定する方法、ならびに抗原に対する寛容性を誘発および維持する方法を提供する。
【0011】
本明細書おいて使用するとき、用語「抗原」は動物において免疫応答を引き出すことができる因子を意味する。
【0012】
「エピトープ」は抗原の一部分であり、この部分は免疫応答を引き出すことができ、そして抗原のその部分に対して特異的な抗体と結合する。
【0013】
「異種エピトープ」は、免疫グロブリン担体分子と通常アソシエートしないエピトープである。それは免疫グロブリン担体分子と同一ではない抗原から得られるか、または誘導される。
【0014】
「造血細胞」は、血球を形成することができる細胞であり、骨髄細胞および他の骨髄外組織のような組織からのリンパ球およびマクロファージを包含する。
【0015】
「発現カセットまたはベクター」は、染色体の中に組込まれたとき、造血細胞または他の型の細胞において安定に維持されるので、発現カセットまたはベクターは、細胞の寿命にわたって、機能的活性、すなわち、遺伝子の発現、を喪失しないで、複製されかつ子孫細胞に伝達されるか、または細胞において維持される。
【0016】
「寛容原性エピトープ」は、エピトープおよび/またはエピトープを含有する抗原に対する免疫学的非応答性を誘発することができるエピトープである。エピトープおよび/またはエピトープを含有する抗原に対する免疫学的非応答性の誘発を望んだので、寛容原性エピトープを選択する。寛容原性エピトープは、適当ならば、免疫系に提示された、免疫応答を刺激することができるエピトープとして同定することができるか、またはそれは通常免疫応答を引き出すことができない自己抗原であることができる。寛容原性エピトープはT細胞またはB細胞または双方と相互作用することができる。選択することができる適当な寛容原性エピトープは、好ましくは、自己免疫疾患またはアレルギー性反応に関連するエピトープおよび/または抗原である。
【0017】
A.発現カセットおよびベクター
本発明の発現カセットは、造血細胞またはリンパ球様細胞において機能的な転写および翻訳調節領域に作用可能に連鎖された融合免疫グロブリンをコードする DNA配列を含む。融合免疫グロブリンは、N−末端の可変領域に少なくとも1つの異種寛容原性エピトープを含む。発現カセットは、好ましくは、宿主細胞における発現カセットの安定な維持および発現を提供するベクターの中に組込まれる。宿主細胞が造血細胞である場合、ベクターは好ましくは造血細胞の染色体の中へのベクターの組込みを提供するベクターである。宿主細胞がリンパ球様細胞系である場合、ベクターが細胞の寿命にわたって発現カセットの安定な維持および発現を提供するかぎり、ベクターは非組込みベクター、例えば、プラスミドであることができる。本発明の発現カセットおよびベクターは、寛容原性因子として使用するための融合免疫グロブリンを提供するために、および/または抗原および/またはエピトープに対する寛容性の維持を提供するために有用である。
【0018】
融合免疫グロブリンをコードする DNA配列は、Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 3, J. Wiley/Greene Press (1992) に記載されているように、標準的方法を使用して得ることおよび構築することができる。免疫グロブリンをコードする DNA配列は、既知の方法、例えば、 Hebell et al., Science , 254 :102(1991) およびHuse et al., Science , 246 :1275 (1989) に記載されているように、得ることができる。簡単に述べると、重鎖および軽鎖の配列は、脾細胞から単離されたメッセンジャーRNA(mRNA)または、好ましくは、既知の特異的抗体を産生するハイブリドーマの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (RT-PCR) を使用して得ることができる。プライマーは、Fd断片(VH −CH1)を包含する可変軽鎖および重鎖の配列を増幅するように設計することができる。このようなプライマーの例は、Huse et al. 、前掲、およびBallard et al., PNAS, 83:9626 (1986) に開示されている。典型的には、このようなプライマーは増幅すべき配列の両端に制限酵素の認識配列を含むように設計される。制限エンドヌクレアーゼ認識配列は当業者に知られており、そしてベクターの中に特定の位置において容易にクローニングされるように選択される。
【0019】
免疫グロブリンの軽鎖および重鎖をコードする DNA配列は、介在する配列の DNAが除去されており、かつ完全に機能的な免疫グロブリンが DNA配列によりコードされるように、cDNA配列であることが好ましい。免疫グロブリン分子をコードする DNA配列は、Fc断片をもつ重鎖および軽鎖の両方を有する完全な免疫グロブリンをコードすることができるか、または免疫グロブリンの一部分、例えば、 Fab断片、F(ab)2断片、または重鎖のみをコードすることができる。重鎖をコードする DNA配列に対する修飾を行うことができ、そして軽鎖を供給して免疫グロブリンを形成できるB細胞系の細胞において重鎖をコードする DNA配列が発現されるとき、前記修飾は融合免疫グロブリン分子をなお生ずることができる。 DNA配列は分泌されたまたは膜の形態の免疫グロブリン分子をコードすることができる。
【0020】
ニトロフェニルに対して特異的な抗体の重鎖をコードする DNA配列の適当な例は、 Hebell et al.、前掲、に記載されている。IgG1またはIgG2(マウス)は、寛容性を誘発する担体分子として好ましい。 DNA配列は好ましくは免疫グロブリンのIgG1またはIgG2型の重鎖をコードする。
【0021】
抗原の少なくとも1つの寛容原性エピトープをコードする DNA配列は、標準的方法により得ることができそして調製することができる。エピトープが15〜20アミノ酸の小さいペプチドである場合、そのエピトープをコードするヌクレオチド配列を自動化 DNA合成により合成することができる。 DNA配列が抗原のすべてまたは一部分をコードする(すなわち、多数のエピトープをコードする)場合、その抗原をコードする DNA配列は発表された方法を使用して単離し、そしてサブクローニングすることができる。いくつかの抗原のすべてまたは一部分をコードする DNA配列は、また、データベース、例えば、遺伝子バンクをサーチすることによって同定することができる。このようなデータベースにおいて、または刊行物の参照により、配列がいったん同定されると、抗原のすべてまたは一部分をコードする DNA配列は、自動化合成によるか、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR) により得ることができる。例えば、ブタクサの花粉の抗原Eをコードする DNA配列は Rafner et al., J. Biol. Chem., 266 :1229 (1991) ;およびKuo et al., Molecular Immunol., 30:1077 (1993) に開示された。抗原Eのエピトープは、また、Olson, J. Immunol. , 136 :2109 (1986) ;および Bond et al., J. Immunol. , 146 :3380 (1991) に記載されているようにして同定された。抗原Eの1または2以上のエピトープをコードする DNA配列は、Kuo et al,、前掲、に記載されているように標準的方法により得ることができる。
【0022】
適当な抗原は、エピトープおよび/またはエピトープを含有する抗原に対する免疫学的非応答性を誘発および維持することが望ましいものである。このような抗原は、花粉、ブタクサ、ホコリダニ (dustmites)、および他の既知のアレルゲンを包含する。適当な抗原は、また、自己抗原、例えば、凝固因子VIII、アセチルコリンレセプター、コラーゲン、ミエリン塩基性タンパク質、チログロブリン、および組織適合性抗原を包含する。適当な抗原は、また、λ−CIリプレッサータンパク質からのエピトープを包含する。これらの抗原の多数のアミノ酸配列ならびにこれらの抗原のエピトープは当業者に知られている。好ましい抗原はブタクサの抗原および凝固因子VIIIを包含する。適当な抗原をコードする DNA配列は、本明細書に記載するようにそして発表された方法に従い得、そして調製することができる。
【0023】
抗原の少なくとも1つをコードする DNA配列を得、そして調製する前に、エピトープおよび/または抗原を選択する。エピトープおよび/または抗原は単一のエピトープであるか、または多数のエピトープを含有する抗原のすべてまたは一部分であることができる。エピトープはT細胞と相互作用するもの、またはB細胞と相互作用するもの、T細胞および/またはB細胞と相互作用するものであることができる。
【0024】
エピトープおよび/または1または2以上のエピトープの選択は下記の基準に基づいてなすことができる。エピトープをまずペプチドまたはエピトープを含有する抗原、好ましくはアレルギー性応答または自己免疫性応答に関連する抗原、に対する寛容性を誘発する能力について選択する。第2に、大きいおよび複合体の抗原に対する寛容性を望む場合、2以上のエピトープを選択して融合免疫グロブリンの中に組合わせることができる。好ましくは、抗原全体を融合免疫グロブリンの中に含めることができる。第3に、B細胞および/またはT細胞の寛容性を望む場合、複数のエピトープを選択することができる。B細胞ではなくT細胞により認識されるか、またはその逆のある種のエピトープは当業者に知られている。第4に、抗原に対するアレルギー性応答または自己免疫性応答を有する個体からの免疫血清またはリンパ球との反応性に基づいて、エピトープを選択することができる。例えば、免疫優性であるか、または強い自己抗体応答を刺激することが知られているエピトープを選択して、融合免疫グロブリンの中に含まれる抗原の一部分がエピトープを含むようにすることができる。第5に、抗原上のエピトープについて知られている情報がほとんどあるいはまったく存在しない場合、抗原全体を融合免疫グロブリンの中に含めることが望ましいことがある。
【0025】
エピトープをコードする DNA配列は、約5〜6アミノ酸のエピトープまたは約 100,000ダルトンまでの分子量を有する抗原を含むことができる。好ましい大きさの範囲は約9アミノ酸〜約50,000ダルトンである。例えば、T細胞により認識されるエピトープは約9アミノ酸を含むコンセンサス配列を有する。エピトープの最小大きさは約5〜6アミノ酸である。融合タンパク質において提示されることができる抗原の最大大きさは、抗原および免疫グロブリン担体分子の双方のフォールディングを可能とする大きさである。好ましい抗原は、約40,000ダルトンの分子量を有する凝固因子VIIIのA2断片である。
【0026】
いったんエピトープを選択しそしてそのエピトープをコードする DNA配列が得られると、エピトープをコードする DNA配列を免疫グロブリンをコードする DNA配列と組合わせて、融合免疫グロブリンをコードする DNA配列を形成する。エピトープをコードする DNA配列は好ましくはインフレームおよび適切な向きにおいて重鎖のN−末端の可変領域において免疫グロブリンをコードする DNA配列と組合わせる。エピトープをコードする DNA配列の組合わせの位置は、融合免疫グロブリンにおけるエピトープの所望の位置に依存して変化することができる。エピトープが抗原全体または抗原の大きい部分(すなわち、約25,000〜約100,000 ダルトンの分子量を有する)である場合、融合免疫グロブリン上のエピトープの位置は、それが免疫グロブリン担体分子ならびに抗原または抗原の一部分の双方のフォールディングを可能とするような位置である。抗原および/または抗原の一部分がエピトープであるとき、それは好ましくはN−末端の第1のフレームワーク領域におけるアミノ酸において重鎖のアミノ末端で免疫グロブリンと融合される。より小さいエピトープ(すなわち、約5〜30アミノ酸を含有するもの)は第1のN−末端のフレームワーク領域に位置するか、またはエピトープが免疫グロブリン分子の外側表面上において暴露されたままであるかぎり、免疫グロブリン鎖の可変部分上の他の領域内に位置することができる。好ましくは、小さいエピトープは、また、重鎖の第1のN−末端のフレームワーク領域のアミノ酸において免疫グロブリンと結合することができる。
【0027】
必要に応じて、少なくとも1つの異種寛容原性エピトープをコードする DNA配列は、 DNA配列の一方または双方の末端にフランキング DNA配列を含むことができる。これらのフランキング DNA配列は、制限エンドヌクレアーゼ認識配列を含むことができ、および/または2つの DNA配列を結合すべき位置に免疫グロブリン配列の一部分をコードする DNA配列を含むことができる。例えば、免疫グロブリン分子の重鎖の第1のN−末端のフレームワーク領域において結合されているエピトープをコードする DNA配列は、そのエピトープをコードする DNA配列の一方または双方の末端における第1のフレームワーク領域の最初の5アミノ酸をコードするフランキング DNA配列を含むことができる。フランキング DNA配列は、また、制限酵素のための認識配列を含むことができる。フランキング DNA配列は好ましくは約3〜約21ヌクレオチドの長さである。フランキング DNA配列が免疫グロブリンのアミノ酸配列の一部分をコードするとき、その配列はエピトープの DNA配列と免疫グロブリン配列との組合わせ点の位置において選択される。免疫グロブリンのアミノ酸の一部分をコードするフランキング DNA配列は、エピトープおよび/または抗原および融合点における免疫グロブリンの双方の適切なフォールディングを促進するアミノ酸を融合免疫グロブリンの中に提供することができる。フランキング DNA配列は、また、エピトープをコードする DNA配列が免疫グロブリンをコードする DNA配列とインフレームおよび適切な向きにおいて組合わせられることを保証することができる。
【0028】
免疫グロブリンおよびエピトープをコードする DNA配列は、標準的サブクローニング方法を使用して組合わせられる。2つの DNA配列の組合わせは、ある種の制限酵素認識配列を有するフランキング DNA配列をもつエピトープをコードする DNA配列を形成することによって、促進することができる。当業者はこれらのフランキング配列により、エピトープをコードする DNA配列を融合免疫グロブリンをコードする DNA配列と組合わせる位置を選択することができ、そして配列をインフレームおよび適切な向きにおいて確実に組合わせることができる。免疫グロブリンおよびエピトープをコードする DNA配列を組合わせるとき、それらは融合免疫グロブリンまたは免疫グロブリン分子の融合重鎖をコードする DNA配列を形成する。
【0029】
遺伝暗号の縮重のために、免疫グロブリンと、同一のアミノ酸配列を有するエピトープとをコードする多数の DNA配列が存在することを理解すべきである。この組の配列は有限の組であり、そしてエピトープおよび免疫グロブリンのアミノ酸配列に基づいて決定することができる。免疫グロブリン分子と、同一のアミノ酸配列をもつエピトープとをコードするオールタネイト DNA配列が考えられ、そして本発明の範囲内に包含される。
【0030】
次いで、融合免疫グロブリンをコードする DNA配列を造血細胞またはリンパ球様細胞において機能的な転写および翻訳調節領域と組合わせることができる。融合免疫グロブリンをコードする DNA配列の発現のために重要な調節領域はプロモーターを包含する。適当なプロモーターは造血細胞またはリンパ球様細胞において機能することができるものである。プロモーターは、好ましくは、融合免疫グロブリンをコードする DNA配列の構成的発現を提供する。プロモーターは、好ましくは、寛容性を誘発および/または維持する量の融合免疫グロブリンを提供する。プロモーターの適当な例は、β−アクチンプロモーター、SV40プロモーター、およびLTR RSウイルスのプロモーターを包含する。
【0031】
他の転写および翻訳調節領域は、エンハンサー配列および転写停止配列およびポリアデニル化配列を含む。エンハンサー配列はプロモーター配列と組合わせることができ、そして通常プロモーター配列内にまたはそれらに隣接して見出される。ある種のエンハンサー配列、例えば、SV40からのものは多数の哺乳動物細胞において活性であり、そして相同性または異種のプロモーターから 1,000倍までの転写の刺激を提供する。ポリアデニル化配列はコーディング配列から下流に見出され、そしてmRNAの適切な形成を提供する。ポリアデニル化配列はSV40から得ることができる。転写停止配列は数 100ヌクレオチド内のポリアデニル化配列から下流に見出される。
【0032】
これらの転写および翻訳調節領域は商業的に入手可能なベクターにいて入手可能である。融合免疫グロブリンまたは融合重鎖をコードする DNA配列は、転写および翻訳調節領域を有するベクターの中にサブクローニングして発現カセットを形成することによって、これらの調節配列と組合わせることができる。
【0033】
ベクターは造血細胞またはリンパ球様細胞において安定な維持および/または遺伝子の発現を提供する能力について選択することができる。ベクターが細胞の寿命にわたって融合免疫グロブリンの発現を提供できる場合、ベクターは細胞において安定に維持される。安定な維持は真核細胞、好ましくはリンパ球様細胞のような細胞、におけるプラスミドの維持および発現を包含することができる。その場合において、発現カセットを含むプラスミドは自律的に複製されないか、または染色体の中に組込まれるようにならない。細胞、例えば、リンパ球様細胞の寿命はマウスにおいて約14〜60日であるか、またはヒトにおいて数年であることができる。発現カセットを含有するプラスミドベクターは、また、リンパ球様細胞系、例えば、 J558L細胞において、複製されることなく、維持されることができる。
【0034】
ベクターは、また、宿主細胞、例えば、造血細胞の染色体の中への発現カセットの組込みを提供するように選択することができる。動物の骨髄からの造血細胞において、ベクターは細胞の混合集団の中に導入され、それらのいくつかは分裂する細胞でありそしていくつかはまだ分裂を開始していない。ベクターを染色体の中に組込み、次いで染色体とともに複製させ、子孫細胞に転移させることができる。感染した細胞を動物の中に導入するか、またはin vitroで培養した後約1〜12週において、細胞集団において遺伝子の発現を検出することができる場合、ベクターは安定に組込まれている。
【0035】
適当なベクターはプラスミド、例えば、pSNR1, pEMBL, pBR322,pRSA101, pUC118, pUC119, pBluescript、および pCombを包含する(Barbas et al., PNAS, 88:7978 (1991))。適当なベクターは、また、ウイルスのベクター、例えば、バキュロウイルスおよびレトロウイルスのベクター、例えば、MBAEベクターを包含する(Chamberset al., PNAS, 89:1026 (1992))。造血細胞のための好ましいベクターはMBAEベクターである。
【0036】
融合重鎖をコードする DNA配列を有するプラスミドベクターを含有する細菌株は、大腸菌 (E.coli) DH5α(pQ3. EZ)と表示された。この細菌株はプラスミドpQ3. EZ を有し、このプラスミドはニトロフェニルに対して特異的な抗体の重鎖のN−末端の第1フレームワーク領域において結合されたλ−CIリプレッサータンパク質からの12−26アミノ酸のエピトープを有する融合重鎖をコードする。この細菌株はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション (American Type Culture Collection) 米国マリイランド州ロックビレ)に1994年2月7日に受託され、そして受託番号 69555を与えられた。
【0037】
好ましいバージョンにおいて、エピトープ、例えば、λ−CIリプレッサータンパク質からの12−26エピトープをコードする DNA配列を、免疫グロブリンの可変領域をコードする DNA配列と、重鎖の第1のN−末端のフレームワーク領域において組合わせて、融合重鎖をコードする DNA配列を形成する。融合重鎖をコードする DNA配列をMBAEレトロウイルスのベクターにおいてβ−アクチンプロモーターと組合わせる。好ましくは、このベクターを使用して骨髄細胞を形質転換するか、または軽鎖を産生できる他のB細胞系の細胞を形質転換する。軽鎖は融合重鎖と結合して融合免疫グロブリンを形成する。また、軽鎖をコードする DNA配列を、融合重鎖をコードするものと同一のベクターの中に含めて、融合免疫グロブリンの発現を提供することができるであろう。
【0038】
B.形質転換された細胞
融合免疫グロブリンをコードする発現カセットを含有するベクターを使用して細胞を形質転換する。形質転換された細胞を新規な寛容原性エピトープを同定する方法において使用し、そして融合免疫グロブリンを生成する。形質転換された細胞を、また、動物の中に導入して、形質転換された細胞により発現された異種エピトープに対する寛容性を誘発および維持するか、または異種エピトープを含有する抗原に対する寛容性を誘発および維持することができる。
【0039】
形質転換に適当な細胞は、造血細胞、リンパ球様細胞、およびリンパ球様細胞系を包含する。細胞は骨髄細胞、リンパ球様細胞、および J558Lリンパ球様細胞を包含する。宿主細胞は、好ましくは、免疫グロブリン分子を形成しそしてそれを分泌できるものである。形質転換された細胞集団は好ましくはB細胞系の細胞を包含し、そして軽鎖を内因的に合成するものである。動物に投与される形質転換された細胞は好ましくは同系であるか、または同一の組織適合性を共有して注射された細胞の拒絶を回避する。スクリーニングアッセイのために、細菌宿主細胞、例えば、大腸菌 (E.coli) などは適当であることがある。
【0040】
ベクターは当業者に知られている種々の方法、例えば、リン酸カルシウム仲介トランスフェクション、ポリブレン仲介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、およびリポソーム仲介トランスフェクションを使用して細胞の中に導入することができる。
いったん発現カセットが細胞の中に導入されると、ベクター上に存在する選択可能なマーカー遺伝子の存在を検出することによって、形質転換された細胞を最初に選択することができる。形質転換された細胞が骨髄細胞またはリンパ球様細胞である場合、選択は使用することができない。次いで、形質転換された細胞を、融合免疫グロブリンをコードする発現カセットの存在および/または発現についてスクリーニングすることができる。形質転換された細胞は、1または2以上の技術、例えば、サザンブロット、ノザンブロット、逆転写PCR 、ウェスタンブロット、 ELISA、および免疫蛍光を使用して、発現カセットの存在についてスクリーニングすることができる。検出可能に標識された DNAプローブをサザンブロットおよび/またはノザンブロットにおいて使用できる。約50〜100 ヌクレオチドのプローブが高いストリンジェンシイの条件下にハイブリダイゼーションするように、プローブはエピトープまたは抗原の一部分をコードするヌクレオチド配列に対して十分に相補的である。逆転写PCR のためのプライマーは、以前に記載されたように、免疫グロブリン分子の可変重鎖および軽鎖をコードするcDNA配列を増幅するように設計することができる。
【0041】
融合免疫グロブリンが発現されている形質転換された細胞は、また、ウェスタンブロット、 ELISA、または免疫蛍光を使用して検出することができる。発現される融合免疫グロブリンの量は、定量的ウェスタンブロットを使用して検出することができる。
【0042】
特定の宿主細胞の型において産生されそして特定のプロモーター/エンハンサー配列を有する融合免疫グロブリンの量は、定量的ウェスタンブロットを使用して評価することができる。融合免疫グロブリンの最大量の構成的発現を提供するプロモーター/エンハンサー配列は、同一量の時間にわたって同一型の宿主細胞において産生された融合免疫グロブリンの量を比較することによって決定することができる。寛容性を誘発および/または維持するために十分な量を提供するプロモーター/エンハンサーを選択できる。寛容性を誘発する融合免疫グロブリンの量は本明細書において記載する因子に従い変化することがあり、そして標準的方法を使用して決定することができる。
【0043】
C.医薬組成物
本発明は、また、薬学上許容される賦形剤の中に寛容原量の融合免疫グロブリンを含む医薬組成物を提供する。融合免疫グロブリンは、そのN−末端の可変領域上に少なくとも1つの異種寛容原性エピトープを有する。好ましくは、異種寛容原性エピトープを重鎖の第1のN−末端のフレームワーク領域に隣接した免疫グロブリンと組合わせる。融合免疫グロブリンを、寛容原性エピトープまたは前記エピトープを含有する抗原に対する寛容性を動物において誘発するために有効な量において、薬学上許容される賦形剤と組合わせる。医薬組成物を動物に投与して、寛容原性エピトープに対する寛容性を誘発および/または維持するために動物に投与することができる。1または2以上のエピトープに対する寛容性の誘発は、動物のアレルギーまたは自己免疫疾患の症状を最小とすることができる。
【0044】
融合免疫グロブリンは形質転換された細胞から標準的方法により単離することができる。融合免疫グロブリンは、標準的方法に従いプロテインAまたは他のアフィニティーカラムを通過させることによって、細胞上清から単離することができる。
【0045】
適当な寛容原性エピトープはアレルギー性応答または自己免疫性応答に関連するエピトープである。寛容原性エピトープは、エピトープおよび/またはエピトープを含有する抗原に対する免疫学的非応答性を生ずるような方法において投与できるものである。エピトープが免疫優性応答を刺激するものである場合、そのエピトープに対する寛容性は、また、そのエピトープを含有する抗原に対して寛容性を生ずることができる。特定の例は、ブタクサの花粉の抗原Eまたは抗原K、ホコリダニ抗原、異種組織適合性抗原、凝固因子VIII、アセチルコリンレセプター、ミエリン塩基性タンパク質、およびチログロブリンを包含する。融合免疫グロブリンは単一の寛容原性エピトープまたは多数の寛容原性エピトープを含有することができる。好ましくは、寛容原性エピトープはアレルギー性応答または自己免疫性応答において免疫優性であるエピトープである。
【0046】
動物において寛容性を誘発するために有効な融合免疫グロブリンの量は因子に依存するが、当業者により標準的投与量応答方法を使用して容易に決定することができる。因子は、治療すべき動物の大きさ、エピトープの数および型、寛容性の型、動物の年齢、投与のルートおよび回数、および所望の寛容性の期間を包含する。
【0047】
動物の年齢は、エピトープの有効寛容原量の決定において重要な因子であることができる。新生児または乳児の動物は、エピトープに対する寛容性を誘発するために大人が要求する融合免疫グロブリンの投与量より約 100〜1000倍より少ない静脈内に投与される融合免疫グロブリンの単一の投与量を必要とするであろう。
【0048】
融合免疫グロブリンの寛容原量は、また、動物の大きさに依存し、低い寛容性の場合を除外して、保護的免疫応答を引き出すために動物に与えられた抗原および/またはエピトープの量より、典型的には約10〜100 倍より高い (B細胞の寛容性について)。単位質量当たりの抗原の寛容原量は、動物に静脈内に単一の投与量として投与されるエピトープまたは抗原に対して高い投与量の寛容性を誘発するために、典型的には約1〜40mg/kg体重である。低い投与量の寛容性は、また、ある場合において観察され、そして腹腔内または静脈内に1週の間隔で生理食塩水中のサブマイクログラムの量の多数回(>4)の投与後に、得ることができる。
【0049】
融合免疫グロブリンの寛容原量を変化することができる他の因子は、融合免疫グロブリンが2以上のエピトープを含むかどうか、およびそれらのエピトープが免疫優性かどうかである。融合免疫グロブリンが多数のエピトープを有する場合、それらのいくつかは免疫優性であり、動物に静脈内に単一の投与量で投与するとき、約10倍低い投与量の融合免疫グロブリンは寛容性を誘発することができる。
【0050】
融合免疫グロブリンの寛容原量は、また、T細胞またはB細胞の寛容性を望むかどうかに依存して変化させることができる。典型的には、T細胞の寛容性は、同一のエピトープまたは抗原に対するB細胞についてより約10〜100 倍少ない抗原またはエピトープの投与量を必要とする。
【0051】
他の因子は動物の循環における融合免疫グロブリンの持続性である。いっそうゆっくり代謝した抗原は、より長い期間、典型的には寛容性の維持の約2〜10倍大きい時間の寛容性の維持を提供する。エピトープまたは抗原の異化速度は、同種または異種の担体免疫グロブリンの半減期ならびに1または2以上のエピトープの特質に依存する。同種または異種の免疫グロブリンの半減期速度は約7〜21日である(マウス)。修飾されたまたは異常なアミノ酸、例えば、Dアミノ酸を有するエピトープならびに複合体の抗原またはエピトープは、他の型のエピトープのように急速に分解しないことがある。
【0052】
投与のモードは、また、必要な融合免疫グロブリンの寛容原量に影響を与えることがある。通常の場合において、静脈内投与は寛容性の誘発に好ましいルートである。抗原を投与する回数は、また、投与当たり要求される融合免疫グロブリンの量に影響を与えることがある。
【0053】
融合免疫グロブリン上の特定の異種寛容原性エピトープについて有効な寛容原量は、 in vivoまたはin vitroの投与量応答アッセイを実施することによって決定することができる。in vitro投与量応答アッセイは、例えば、標準的リンパ球増殖アッセイを使用することによって実施することができる。例えば、アレルギー性または自己免疫性動物からのリンパ球を異なる投与量の融合免疫グロブリンと組合わせ、そして増殖を測定することができる。
【0054】
in vivo 投与量応答アッセイは、賦形剤中の異なる投与量の融合免疫グロブリンを動物に投与することによって実施することができる。異種寛容原性エピトープに対する免疫応答の欠如は、異種寛容原性エピトープに対する特異的抗体の応答または融合免疫グロブリンの対抗投与量に対するリンパ球の増殖を測定することによって、決定することができる。
【0055】
免疫学的非応答性の減少を測定することによって、寛容性の誘発を評価する。免疫学的非応答性を測定する方法は、 in vivoまたはin vitroの抗原の提示および対抗により実施することができ、そしてこの分野において知られている。例えば、エピトープおよび/または抗原に対して特異的な抗体の量、ならびにエピトープまたは融合免疫グロブリンを使用する対抗に応答するリンパ球の増殖を測定することができる。寛容性が誘発されたことを示す免疫学的応答性の減少は、抗原またはリンパ球の応答性の約2〜100 倍、典型的には約20〜100 倍の減少である。減少の範囲は、免疫学的応答性の測定に使用されるアッセイの感度に依存して変化することがある。例えば、抗体産生細胞の数の減少は抗体の量の減少より感受性であることは知られている。減少の範囲は、また、エピトープが免疫優性エピトープである場合、変化することがある。免疫優性エピトープに対する応答性の2倍の変化は、有意なレベルのエピトープおよび/またはエピトープを含有する抗原に対する寛容性を生ずることができる。
【0056】
単一の投与量の融合免疫グロブリンは寛容性を誘発することができる。ある場合において、マウスにおける単一の投与量により誘発された寛容性は約2カ月〜約6カ月持続することができる。しかしながら、動物において維持すべき寛容性について、多数の投与量が典型的には要求される。動物の寿命を通じて少なくとも単一の投与量の融合免疫グロブリンにより誘発された時間の間、寛容性の維持を望むことができる。
【0057】
寛容原量の融合免疫グロブリンを生理的賦形剤、例えば、生理食塩水、緩衝化生理食塩水および不完全フロインドアジュバントと組合わせる。融合免疫グロブリンは種々のルート、例えば、腹腔内、経口、および静脈内により投与できるが、好ましくは静脈内ルートにより投与される。アレルゲンまたは自己抗原に対する寛容性を誘発するために処置できる動物は、マウス、ヒト、ラット、ウサギ、およびモルモットを包含する。
【0058】
D.寛容原として働くことができるエピトープを同定する方法
本発明は、また、寛容原性エピトープとして働くことができるエピトープを同定する方法を提供する。新規なエピトープの同定は、自己免疫性応答およびアレルギー性免疫応答の診断および治療において有用であることがある。1つの方法は、宿主細胞における転写および翻訳調節領域に作用可能に連鎖された融合免疫グロブリンをコードする DNA配列を含むベクターを準備する工程を包含する。融合免疫グロブリンはN−末端の可変領域に少なくとも1つの異種寛容原性エピトープを有する。エピトープは寛容性を誘発することができることが推測されるものであることができる。細胞は以前に記載されたようにベクターで安定に形質転換される。融合免疫グロブリンを発現する形質転換された細胞または単離された融合免疫グロブリンを、アレルギー性または自己免疫性動物からの免疫血清またはリンパ球と免疫反応する能力について分析する。自己免疫性またはアレルギー性の動物についての免疫血清またはリンパ球との反応性により同定された融合免疫グロブリンに対する寛容性の誘発は、当業者に知られているin vitroまたは in vivoにより評価することができる。例えば、免疫血清と反応しおよび/またはリンパ球の増殖を刺激することができる融合免疫グロブリンを動物に投与し、そして寛容性の誘発および維持を本明細書おいて記載するように評価することができる。
【0059】
他の方法において、形質転換された造血細胞またはリンパ球様細胞を動物の中に導入し、そして前述したようにエピトープに対する特定の免疫学的応答性を評価するアッセイを使用して、異種エピトープに対する寛容性の誘発および維持を決定することができる。
【0060】
いくつかのエピトープおよび抗原は免疫応答を引き出すことが知られている。いくつかのエピトープおよび抗原は、アレルギー性応答または自己免疫性応答に関連する免疫優性免疫応答を引き出すことが知られている。免疫応答を引き出すエピトープは、融合免疫グロブリンにおいて提示されたとき、寛容性を誘発することができるか、または誘発することができない。アレルギー性応答または自己免疫性応答に関連することが知られているいくつかの抗原のエピトープは、同定されてきていない。本発明の方法は、融合免疫グロブリンにおいて提示されたとき、免疫応答を引き出すことが知られているエピトープが寛容性を誘発することができるかどうかを決定するために、または抗原の新規な寛容原性エピトープを同定するために利用することができる。
【0061】
1つの方法において、造血細胞またはリンパ球様細胞において機能的な転写および翻訳調節領域に作用可能に連鎖された融合免疫グロブリンをコードする DNA配列を含んでなるベクターを、造血細胞またはリンパ球様細胞の中に形質転換する。融合免疫グロブリンは、免疫応答を引き出すことが知られているエピトープまたは新規な寛容原性エピトープを含むことができる。プロモーター/エンハンサー配列は、好ましくは、エピトープに対する反応を in vivoまたはin vitroで誘発するために十分なレベルにおいて、造血細胞またはリンパ球様細胞における融合免疫グロブリンの発現を提供する。このようなプロモーターを、前述したように、同定し、in vitroアッセイスクリーニングすることができる。動物において寛容性を誘発することができる融合免疫グロブリンの量は、標準的投与量応答法を使用して決定することができる。
【0062】
形質転換された細胞を動物に導入することができる。形質転換された造血細胞を動物の中に導入するとき、好ましくは動物は形質転換された細胞の導入前に照射されて内因性造血細胞が破壊されている。形質転換された細胞を腹腔内または静脈内の注射により動物に投与する。次いで約2〜20日後に、動物をエピトープに対する寛容性の誘発について分析する。寛容性は、異種寛容原性エピトープに対する特異的抗体の応答またはリンパ球増殖の応答を測定することによって、検出することができる。約2〜100 倍、好ましくは10〜100 倍のエピトープに対する特異的抗体またはリンパ球増殖の応答の減少は、エピトープに対する寛容性を示す。
【0063】
好ましくは、寛容原性エピトープを同定するスクリーニングアッセイは、形質転換された細胞は他の遺伝的に同一のマウス由来の同系マウス細胞であるか、またはヒト造血細胞またはリンパ球様細胞であることができる。例えば、スクリーニングアッセイはベクターで形質転換されたヒト骨髄組織を使用して実施することができる。次いで、ヒト骨髄組織を免疫不全マウス、例えば、SCID−SCIDマウスに Chambers et al.、前掲、に記載されている方法に従い投与することができる。エピトープに対する特異的抗体の応答またはリンパ球増殖の応答を検査することによって、SCID−SCIDマウスにおいて寛容性を評価することができる。
【0064】
本発明の他の方法は、新規な寛容原、好ましくは自己免疫またはアレルギー性免疫の応答に関連するものについてのスクリーニングを提供する。この方法において、アレルギー性応答または自己免疫性応答に関連する抗体のエピトープを、免疫血清と免疫反応する能力、またはアレルギー性応答または自己免疫性応答を有する動物からのリンパ球の増殖を刺激する能力についてスクリーニングする。例えば、複合体の抗原、例えば、凝固因子VIIIの一部分をコードする異なるcDNA配列を抗体のN−末端の可変領域をコードする DNA配列と組合わせて、凝固因子VIII由来の異なるエピトープをもつ融合免疫グロブリンをコードするcDNA配列のライブラリーを形成する。複数のエピトープをコードする DNA配列は、ランダムに発生させることができるか、またはオーバーラップする線状アミノ酸配列をコードするように選択することができるか、または DNA配列によりコードされるアミノ酸が凝固因子VIII分子の表面上に発現される(第3構造に基づく)可能性に基づいて選択することができる。抗原の異なる部分をコードするcDNA配列を、前述したように、免疫グロブリンのN−末端の可変領域、好ましくは重鎖の第1のN−末端のフレームワーク領域、におけるcDNA配列と組合わせることができる。
【0065】
ファージミドベクター系、例えば、 pCombを使用して、前述したように組合わせた抗原の異なる部分をコードするcDNA配列を有する抗体の重鎖および軽鎖のcDNAライブラリーを発生させることができる。 Barbas et al., PNAS, 88:7978 (1991) に記載されているように、制限酵素の消化および結合の標準的方法を使用して、これらのcDNA配列を有するようにファージミドベクターを構築することができる。 Barbas et al.、前掲、に記載されているアッセイに類似するパニングおよび/またはフィルターのウェスタンブロットアッセイにおいて、ファージミドのライブラリーをアレルギー性または自己免疫性動物からの免疫血清との免疫反応性についてスクリーニングすることができる。
【0066】
簡単に述べると、抗原由来の少なくとも1つの異種エピトープをもつ Fab断片を有するファージミドベクターを大腸菌 (E.coli) 株の中に形質転換する。大腸菌 (E.coli) 株を抗生物質の存在下に増殖させて、ファージミドベクターを有する株について選択する。ファージを単離し、次いで、 Barbas et al.、前掲、に記載されているように、アレルギー性または自己免疫性動物からの免疫血清でコーティングされた細胞への結合についてスクリーニングすることができる。溶離用緩衝液を使用して、付着性ファージを溶離する。溶離されたファージを大腸菌 (E.coli) 細胞の中に転移させ、そしてアレルギー性または自己免疫性動物からの免疫血清を使用してフィルターのウェスタンブロット型アッセイを使用して、異種エピトープをもつ Fab断片を有するファージミドの存在について、コロニーを検査することができる。
【0067】
陽性クローンからのファージミドDNA を単離し、そして造血細胞またはリンパ球様細胞を形質転換するために使用できるベクターの中に、融合Fab をコードする DNA配列をサブクローニングすることができる。 Fab断片よりむしろ融合免疫グロブリンを形質転換された細胞が産生するように、ベクターは追加の DNA配列を含有することができる。記載したように同定された陽性クローンからのアレルギー性または自己免疫性動物からの免疫血清と反応する異種エピトープを有する融合免疫グロブリンを単離し、そしてin vitroまたは in vivoにおいて寛容性を誘発する能力について試験することができる。また、このようなベクターを有する形質転換された細胞を動物の中に導入し、そして本明細書おいて記載するように in vivoの寛容性の誘発を決定することができる。
【0068】
いったん寛容性を誘発することができる新規なエピトープおよび/または融合免疫グロブリンが同定されると、それらは医薬組成物およびエピトープに対して動物を寛容性とする方法において使用することができる。また、自己免疫またはアレルギー性免疫の応答に関連する新規な寛容原性エピトープの同定を標準的診断アッセイにおいて使用して、自己免疫またはアレルギー性免疫の応答の存在を評価するか、または治療の有効性をモニターすることができる。
【0069】
E.動物をエピトープに対する寛容性とする方法
本発明は、また、動物においてエピトープに対する寛容性を誘発および維持する方法を提供する。1つの方法において、融合免疫グロブリンを含む医薬組成物を前述したように動物に投与する。他の方法おいて、融合免疫グロブリンを産生する形質転換された造血細胞またはリンパ球様細胞を動物の中に導入することによって、寛容性を動物において誘発および維持することができる。いかなる方法においても本発明を限定しないで、形質転換された細胞による invivoにおいて異種エピトープを有する融合免疫グロブリンの持続的産生は、融合免疫グロブリンの医薬組成物を使用するときと同様によく、またはそれよりよく、寛容性の維持を可能とすることができると信じられる。
【0070】
1つの方法において、造血細胞またはリンパ球様細胞において安定に維持できる融合免疫グロブリンをコードするベクターが提供される。融合免疫グロブリンは少なくとも1つの異種寛容原性エピトープを有する。造血細胞またはリンパ球様細胞、例えば、末梢血細胞を、ポリブレンを使用してベクター、例えば、MBAEで形質転換する。形質転換された細胞は典型的には選択されず、そして造血細胞またはリンパ球様細胞の全体の集団を動物に投与する。抗体を使用して融合免疫グロブリンの存在を検出するか、またはRT-PCRまたはノザンブロットを使用して融合免疫グロブリンのmRNAの発現を検出することによって、形質転換された細胞を融合免疫グロブリンの in vivoまたはin vitroにおける産生について評価することができる。好ましくは、動物において異種エピトープに対する寛容性を誘発および維持するために十分なレベルにおける融合免疫グロブリンの産生について、形質転換された細胞の集団をin vitroで分析する。
【0071】
寛容性を誘発および/または維持するために十分なレベルにおいて融合免疫グロブリンが産生されるように調製された形質転換された細胞の集団を、動物の中に導入する。動物の中に導入される細胞の量は、寛容性を誘発し、好ましくは寛容性を維持するために十分なレベルにおいて融合免疫グロブリンの産生を提供する量である。前述のようにアッセイを用いて、異種エピトープに対する寛容原の誘発及び維持について動物をモニターする。ある場合において、形質転換された細胞の集団の中への導入の前に、内因性造血細胞またはリンパ球様細胞を破壊するために十分に動物を照射する。免疫学的応答性、例えば、リンパ球の増殖または抗体の応答、の約2〜100 倍の減少が見られる場合、動物はエピトープに対する寛容性であると考えられる。少なくとも寛容原性医薬組成物の単一の動脈内注射で寛容性の状態が誘発されると同じ長さで、寛容性の状態が維持される場合、寛容性は維持されると考えられる。マウスにおいて、寛容原量の融合免疫グロブリンの1回の注射は約2〜20日間および約2カ月〜6カ月程度に長く寛容性を生ずることができる。寛容性は動物の寿命を通じて維持することができる。
【0072】
適当な形質転換された細胞は、マウスまたはヒトからの骨髄細胞およびリンパ球様細胞を包含する。適当な動物は、免疫不全マウス、例えば、SCID−SCIDマウスを包含するマウスの近交系を包含する。ヒトの質転換された細胞を使用するエピトープに対する寛容性の誘発および維持は、SCID−SCIDマウスに投与されたヒトの形質転換された細胞におけるエピトープに対する寛容性の発生により評価することができる。他の形質転換された動物細胞、例えば、ウシの形質転換された細胞を、また、SCID−SCIDマウスにおける寛容性の誘発について評価することができる。
【0073】
他の方法において、寛容原量の融合免疫グロブリンを使用して寛容性を誘発することができ、そして同一の融合免疫グロブリンを発現する形質転換された造血細胞またはリンパ球系細胞の投与により、寛容性を維持することができる。この方法において、寛容原量の融合免疫グロブリンを単一の投与量として本明細書に記載するように投与することができる。ある状態の免疫学的非応答性が得られた後、融合免疫グロブリンを発現する形質転換された造血細胞またはリンパ球系細胞を動物に投与することができる。本発明の限定を意味しないが、形質転換された造血細胞またはリンパ球系細胞はエピトープに対する寛容性の維持を生ずるであろう。寛容性を誘発するよりむしろ維持するために形質転換された細胞を使用するとき発現するために必要な融合免疫グロブリンの量は、寛容性を誘発および維持するために要求される量より少ないことがある。典型的には、寛容性を誘発するよりむしろ維持するために、約10〜100 倍少ない融合免疫グロブリンまたは抗原の投与が要求される。
【実施例】
【0074】
実施例I
融合免疫グロブリンp12−26組換え構築物の調製
バクテリオファージλcIタンパク質の残基12−26を含んでなるエピトープに対する寛容性を研究した。なぜなら、このエピトープはT細胞およびB細胞の両方により認識されることができ、そしてH−2d マウスにおけるこのタンパク質の主要な免疫優性エピトープであるからである。このエピトープはN−末端にそのエピトープを有するマウスIgG の融合タンパク質において発現された。同種IgG1は寛容原性担体であることが知られているので、融合タンパク質のために選択した。同種免疫グロブリン(特にIgG)は、B細胞のFcレセプターを架橋し、循環において持続する能力をもち、ならびに「固有の免疫原性」、すなわち、可溶性の形態で免疫応答を引き出す可能性、を欠如するので、効率よい寛容原性担体をつくるようである。λcIリプレッサータンパク質の12−26エピトープを含有する免疫グロブリンIgG の融合ポリペプチドをコードする DNA構築物は、プラスミドpSNR−1を修飾することによって得られた。(第1図参照。)
【0075】
λcIリプレッサータンパク質の主要な免疫優性ペプチド(残基1−102)は、Nature, 343 :381 (1990)に記載されているように、残基12−26において見出される。このペプチド断片をコードする DNA配列は、標準的自動化法により合成された。12−26エピトープをコードする合成オリゴヌクレオチドの断片は、下記の配列 (配列NO:1) を有する:
5′CTG GAG GAC GCG CGG CGG CTG AAG GCG ATA TAC GAG AAG AAG AAG 3′
3′GAC CTC CTG CGC GCC GCC GAC TTC CGC TAT ATG CTC TTC TTC CCT 5′
この断片によりコードされる対応するアミノ酸配列は、下記の通りである:
Leu-Glu-Asp-Ala-Arg-Arg-Leu-Lys-Ala-Ile-Tyr-Glu-Lys-Lys-Lys
(配列NO:2)
【0076】
プラスミドpSNR−1は、4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニルに対して特異的なネズミ免疫グロブリンからの可変重鎖ドメイン(VH)および重鎖一定領域1−3(CH1−3)をコードする DNA配列を包含するプラスミドである。プラスミドpSNR−1は、Ballard et al., PNAS, 83:9626 (1986) に記載されているようにして構築した。pSNR−1プラスミドは、ダグラス・フィアロン (Douglas Fearon) (Johns Hopkins、マリイランド州バルチモア) から入手した。12−26エピトープをコードする DNA配列を種々の重鎖の中に導入するために、プラスミドpSNRを後述するように操作した。VHのコーディング配列、 118bpの DNA配列、プロモーター要素をコードするVHコーディング配列に対する5′上流のプロモーター要素、および3′下流のイントロンおよび IgHエンハンサー配列を含むpSNR−1プラスミドの1.3kbpの領域を、標準的方法を使用してサブクローニングした。この配列は制限酵素部位 BamHIと EcoRIとの間において定められ、そして BamHIおよび EcoRI制限エンドヌクレアーゼを使用してプラスミドpBS(Stratagene) の中にサブクローニングした。単一切断したPstI部分的消化断片を単離する条件下に、Current Protocols in Molecular Biology、前掲、に記載されているように、 pBH/VHをPstIで消化した。
【0077】
12−26エピトープを修飾し、次いで免疫グロブリンのVH領域の中に、その領域の適切なフォールディングを提供する位置において、挿入した。12−26エピトープをコードする合成 DNA配列の3′末端に、VHコーディング配列のフレームワーク領域(FRI) の最初の5アミノ酸のコーディング配列を付加することによって、12−26エピトープをコードする DNA配列を修飾した。この修飾は適切なフォールディングを可能とし、そして免疫グロブリン分子の第3構造における最小の崩壊を生ずるように選択した。エピトープの挿入が分子を破壊しないようである部位であると思われるIg分子の領域は、Ig分子のアミノ酸配列ならびに第3構造を分析することによって決定することができる。Ig鎖上のN−末端および CDR領域は、好ましくは、エピトープを挿入して第3構造の最小の破壊を生ずることができる領域である。N−末端領域における挿入は、より大きいポリペプチド≧10kDa の挿入を可能とする。
【0078】
ポリメラーゼ連鎖反応により、VHの第1フレームワーク領域の最初の5アミノ酸の配列を含む修飾された12−26配列を得た。H−1dフラジェリン遺伝子を含有するプラスミドpPX1647 (P. Brey博士、Praxis−Lederle Corp.), pUC119の誘導プラスミドの BamHI/ClaI部位の中に、合成の45塩基対の DNA配列をクローニングすることによって、12−26エピトープをコードする45塩基対のヌクレオチド配列を含有するプラスミドを構築した。 PCR技術および2つのプライマーを使用して、修飾された12−26配列を増幅した。
【0079】
これらのプライマーをOS−1およびOS−2と表示した。プライマーOS−1は、PstI部位のコーディング配列および12−26配列の最初の5アミノ酸のコーディング配列を含有する。OS−1の配列(配列NO:3)は下記の通りである:
5′TGATCTACTG CAGCTGGAGG ACGCGCGGCG G 3′
プライマーOS−2はPstI部位のコーディング配列に対して相補的であり、そしてVHの第1フレームワーク領域の最初の5アミノ酸および12−26配列の最後の6アミノ酸のコーディング配列に対して相補的である。OS−2の配列(配列NO:4)は下記の通りである:
5′CGACCTCCTG CAGTTGGACC TGCTTCTTCT TCTCGTATAT 3′
PCR 法の82bpの産物、すなわち、修飾された12−26配列は、標準的方法を使用して高篩アガロースにより単離された。
【0080】
82塩基対の PCR断片をPstIで消化して、FR1の最初の5アミノ酸を含む修飾された12−26エピトープをコードする65bpの断片を生成した。65bpの断片をプラスミドpBS の中にpST1部位においてサブクローニングした。サブクローニングは、修飾された12−26配列をPstIで消化することによって実施した。修飾された12−26のPstI断片を含有する選択されたプラスミドを配列決定して、その断片の存在を適切な向きにおいて確証した。修飾された12−26配列を含有するプラスミドを pBS/12−26と呼び、配列決定して構造を確証した。
【0081】
pBS /12−26からの修飾された12−26断片を pBS/VHの中にサブクローニングした。最初に pBS/VHをPstIで部分的に消化してVH領域をPstI部位 (この部位はVHの第1フレームワークのアミノ酸4および5のコーディング配列に位置する)において切断することによって、サブクローニングを実施した。 pBS/12−26をPstIで完全に消化した。結合後、P32標識12−26オリゴヌクレオチドをプローブとして使用する細菌コロニーのフィルターハイブリダイゼーションにより、VHの第1フレームワーク領域の最初の5アミノ酸のコーディング配列後に挿入された修飾された12−26を含有するプラスミドを選択した。生ずるVH融合配列は下記の通りである:L-FRI-12-26-FRI(L=リーダー配列; FRI=VHの第1フレームワーク領域の最初の5アミノ酸)。二本鎖の配列決定を実施して、適切な部位の挿入ならびに向きを確証した。これらのプラスミドを pBS/VH/12−26と表示する。
【0082】
プラスミドの中のVH/12−26組換え配列の存在を、 DNA配列決定法により評価した。修飾された12−26インサートを取り囲みかつ含むVII DNA配列(配列NO:5)は、下記の通りである:
CAG GTC CAA CTG CAG CTG GAG GAC GCG CGG CGG CTG AAG GCG
L E D A R R L K A
ATA TAC GAG AAG AAG AAG CAG GTC CAA CTG CAG
I Y E K K K
【0083】
pBS /VH/12−26からの修飾された12−26/VH組換え体を、プラスミドpSV2−neo の中に BamHI/ECORI 部位においてサブクローニングした。pSV2−neo プラスミドをpSNR(Al Bothwell博士、 YaleUniversity、コネチカット州ニューヘブン) から誘導し、そしてIgG1重鎖の中に挿入されたVH (NP結合) を含有する。pSNR−1から誘導され、α1 鎖の一定領域1−3(CH1−3)を含有する8.5kbpの EcoRI断片を、また、pSV2−neo の中にサブクローニングした。CH1−3コーディング配列を含む、プラスミドpSNR−1の EcoRI部位の間の8.5kbpの領域の欠失は、Current Protocols in Molecular Biology, Vol.1:Supplement 3. 1. 3, John Wiley & Sons (1989)に開示されているような標準的技術を使用して実施した。完全なプラスミドは、可変重鎖のN−末端の第1フレームワーク領域に挿入された12−26エピトープをコードする65塩基対の配列をもつ可変重鎖をコードする配列、および(CH1−3) 一定領域1−3をコードする配列を含有する。修飾された可変領域の配列の向きおよび一定領域を、Current Protocols in Molecular Biology、前掲、に記載されているように、サザン制限分析により評価した。有望な組換え体をアンピシリンにより選択し、そして大規模のプラスミドの調製物を標準的方法により成長させた。
【0084】
実施例II
融合免疫グロブリンp12−26組換え構築物の発現
VH/12−26融合およびIgG1のCH1−3の両方のコーディング配列を含有する組換えプラスミドを宿主細胞の中に導入し、そして融合タンパク質の発現を検出した。形質転換および発現の検出を、Current Protocols in Molecular Biology、前掲、に記載されているように、標準的方法により実施した。
【0085】
12−26IgG1 DNA構築物(Q3)ならびに調節pSNR構築物(P6)を、λ軽鎖のみを合成する J558L骨髄腫細胞の中にエレクトロポレーションした。安定な組込み体を抗生物質G418の存在において成長について選択した。ウェスタンブロットおよび ELISAにより細胞培養の上清を分析することによって、12−26IgG1融合タンパク質を発現するトランスフェクトーマを同定した。
【0086】
ローラーボトル中において大量培養において無血清培地(5%の FCSを含むRPMI−1640)中で、トランスフェクトーマを高い密度に成長させた。無血清トランスフェクトーマの上清からの精製は、pH8におけるプロテインAセファローズとの結合、pH4における溶離、ならびに抗マウス IgGアフィニティーカラムとの結合により、首尾よく達成された。
【0087】
選択されたクローンから精製された上清を、標準的方法によりウェスタンブロットおよび ELISAで12−26エピトープの発現について分析した。(第2図および第3図参照。)ウェスタンブロッティングのために、試料を10% SDS−PAGE上で電気泳動させた。ゲルをニトロセルロースに移し、抗マウスIgG(左のレーン) または抗12−26モノクローナル抗体B3.11 (右のレーン) +二次試薬としてアルカリ性ホスファターゼ複合抗体でプロービングした。結果を第2図に示す。12−26IgG1構築物(Q3)を含有するトランスフェクトーマからの細胞培養物のみは、マウスIgG に対して特異的な抗体 (左のレーン) および12−26エピトープに対して特異的な抗体 (右のレーン) と反応した。
【0088】
ELISA 競合阻害アッセイのために、前もって抗体価測定モノクローナル抗体B3.11を増加する量の12−26ペプチド、またはウサギガンマグロブリンに化学的に結合した12−26ペプチド(RGG/12−26)、または12−26IgG1 (Q3) と混合した。固定化12−26ペプチドに結合する混合物の能力を標準的方法により決定した。第3図に示す結果が示すように、12−26IgG 融合タンパク質は、溶液中の12−26ペプチドと比較して、12−26ペプチドに対するモノクローナル抗体の結合を効率よく阻害することができた。
【0089】
競合阻害ELISA の研究は、これらの融合免疫グロブリンが、遊離合成ペプチドまたはウサギIgG に化学的に複合化した12−26と、モノクローナル抗体抗12−26B3.11への結合について効率よく競合することができることを示す。さらに、12−26IgG は、 CFA中に乳化したとき、12−26エピトープについて免疫原性である (データは示されていない) 。これが示唆するように、挿入されたペプチドは、自己 IgG分子に関してさえ、生理学的に関係する方法においてプロセシングされかつ提示されることができる。実験は、また、12−26融合免疫グロブリンがH−2d 制限12−26特異T細胞ハイブリドーマ(9C127)においてIL−2の産生 (CTLLアッセイにより測定) を刺激することができることを示す (データは示されていない)。
【0090】
実施例III
マウスにおける12−26IgG 融合タンパク質による寛容性の誘発
生理食塩水中の、または不完全フロインドアジュバント(IFA) 中に乳化された12−26ペプチドの高い投与量で静脈内的または腹腔内的に動物を前処置すると、完全フロインドアジュバント(CFA) 中のペプチドで引き続いて免疫化したとき、Tヘルパー細胞の寛容性を誘発することができる。Scherer et al., Symp. on Quant. Biol. , Cold Spring Harbor, NY, 54:497 (1989)。12−26エピトープに対する寛容性の誘発はT細胞増殖アッセイにおいて確証された。しかしながら、ペプチドで処置した動物はB細胞のレベルにおいて寛容性ではない。すなわち、12−26フラジェリン(「担体エピトープ」を提供する)で対抗したとき、応答は減少しなかった(下記を参照)。これは、ペプチドの対抗による減少がB細胞ではなく、T細胞の寛容性であったことを示す。
【0091】
12−26IgG1融合タンパク質がB細胞の寛容性を誘発することができるかどうかを決定するために、下記の実験を実施した。マウス脾細胞をin vitroでRPMI−1640+5% FCS中で18時間培養した。次いで、マウス脾細胞を増加する濃度の12−26ペプチド、ウサギガンマグロブリンと12−26との化学的複合体(RGG−12−26)、または12−26IgG1(Q3)とインキュベートした。18時間において、これらの脾細胞を洗浄し、次いでリポ多糖類(マイトジェンの刺激、示されていない)または12−26ペプチドを含有するサルモネラ・フラジェリン(Salmonella flagellin) のA29融合タンパク質で対抗した。12−26エピトープを含有するサルモネラ・フラジェリン融合タンパク質は、前に in vivoおよびin vitroの両方において免疫原性であることが示された (データは示されていない) 。寛容性の誘発の対照として、脾細胞をin vitroにおいて非応答性を誘発することが以前に示されているウサギ抗免疫グロブリンで処理した。G. Warneret al., J. Immunol. , 146 :2185 (1991) 。抗Igの効果は各グラフの右端に白抜き円として示されている。細胞の応答性を ELISAにより測定した。結果は第4図として示されている(A29融合タンパク質および12−26ペプチドの対抗)。
【0092】
結果が示すように、脾細胞をA29融合タンパク質で対抗したとき、、12−26IgG1融合タンパク質(Q3.13) 、または化学的複合体(RGG−12−26)の双方はマイクログラムのレベルにおいて寛容性であった。対照的に、遊離ペプチドはB細胞の応答性をいかなる投与量においても阻害しない。したがって、これらの結果は12−26IgG1融合タンパク質がin vitroでB細胞において寛容性を誘発することができることを示す。同様な結果が in vivoにおいて下記のようにして得られた。
【0093】
12−26−IgG 融合タンパク質を in vivoの寛容性の誘発について試験した。生理食塩水中の1mgの12−26−IgG 融合タンパク質、12−26−IgG または遊離ペプチドをCAF1マウスに注射した。対照のマウスに生理食塩水中の PBSを与えた。これらのマウスからの脾細胞を10日後in vitroにおいて12−26−フラジェリン融合タンパク質で対抗した。第4図について記載するように、対抗後4日に ELISAアッセイにより、12−26に対する応答性を測定した。結果を第5図に示す。
【0094】
結果が示すように、12−26−IgG 融合タンパク質ならびに化学的複合体(RGG−12−26)は in vivoおよびin vitroにおいて寛容性を誘発することができる。第4図および第5図を参照のこと。
【0095】
実施例IV
12−26IgG1融合タンパク質をコードする DNA配列を含有するレトロウイルスのベクターの構築
Kang et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 87:9803 (1990) に記載されているように、ネズミモロニーロウイルスの構築物が調製された。
【0096】
レトロウイルスのベクターMBAEは、Hozumi博士から入手するか、または Kang et al.、前掲、に記載されているように調製することができる。簡単に述べると、モロニーネズミ白血病の長い末端の反復およびG418耐性をコードする noe遺伝子を含有するレトロウイルスのベクターを、β−アクチンプロモーターおよびエンハンサーの配列の挿入により修飾した。β−アクチンプロモーターおよびエンハンサーの配列を neo遺伝子から下流においてクローニングした。次いで、HindIII および SalIでサブクローニングすることによって異種遺伝子をβ−アクチンプロモーターから下流に挿入することができる。
【0097】
MBAEの中にサブクローニングされた DNA配列を、12−26−IgGH鎖を含有するトランスフェクトーマQ3からの PCR増幅逆転写RNA から誘導した。Q3トランスフェクトーマは実施例IIに記載するように調製した。Q3トランスフェクトーマからの DNAを収穫し、そしてCurrent Protocols in Molecular Biology、前掲、に記載されているように、標準的 PCR反応において逆転写酵素とインキュベートしてcDNA分子を形成した。cDNA分子は下記のプライマーを使用して増幅した:
H5′プライマー(配列NO:6):
5′TGG ACT AAG TCG ACA CCA TGG GAT GCA GC
pep3′プライマー(配列NO:7):
5′GGC AAC AGA AGC TTT CAC TTC TTC TTC TCG TAT 3′
1つのこのようなcDNAは、リーダー配列をコードする DNA配列および可変重鎖遺伝子からの12−26エピトープおよび後続する停止コドンを含む。停止コドンは12−26(プライマー中)の最後のアミノ酸をコードする DNA配列の末端において PCRプライマーの中に設計してペプチドミニ遺伝子を構築した。
【0098】
リーダー配列をコードする DNA配列および12−26エピトープおよび後続する停止コドンをコードする配列を pBluescriptの中にサブクローニングし、次いでMBAEベクターの中にサブクローニングした。サブクローニングは、第7図に示すように、 SalIおよびHindIII を使用して実施して、β−アクチンプロモーターおよびエンハンサー配列から下流にペプチドのミニ遺伝子を挿入した。
【0099】
組換えMBAEベクターは、N. Hozumi(カナダ国トロント) から入手可能なφ−2細胞系の中へのリポフェクションによりトランスフェクションした。トランスフェクションされた細胞系をRPMI5% FCS中で 0.8mg/mlの粗G418の存在下に増殖させた。G418耐性クローンを制限希釈法により単離し、そしてウイルス価を NIH 3T3細胞について 0.8mg/mlのG418 (粗製重量) の存在下に決定した。ペプチドのミニ遺伝子構築物について、105 〜106 CFU/mlの力価をもつ1つのトランスフェクションされたψ−2クローン (MBAE pEP19) を引き続く遺伝子転移実験のために選択した。ヘルパーウイルスの存在を、Current Protocols in Molecular Biology、前掲、に記載されているように、標準的方法 (「感染の水平の広がり」法) によりアッセイし、そして検出されなかった。ウイルス産生系統を各個々の実験のために新しく融解した。
【0100】
ATCCから入手可能なA20.2J B細胞リンパ腫細胞を発現されたウイルスで感染させ、そしてペプチドをウェスタンブロットにより検出した。第6A図参照。A20.2J B細胞リンパ腫細胞の感染後、細胞をG418中で増殖させ、 200μlの上清をウェスタンブロッティングにより分析した。レトロウイルスの12−26ミニ遺伝子で感染した4つのψ−2/A20.2Jクローンからの上清をスロットブロットし、そして12−26エピトープに対して特異的なモノクローナル抗体B3.11と反応させた。第6A図において見られるように、ペプチドは感染したリンパ腫細胞において発現された。
【0101】
A20.2J感染細胞はペプチドを産生ばかりでなく、かつまたそれを12−26反応性T細胞ハイブリドーマに提示する。簡単に述べると、感染したA20.2J細胞からの力価決定体積の上清を12−26反応性T細胞のクローン(T32)と24〜48時間インキュベートした。12−26反応性T細胞のクローンは、Tom Briner博士および M. Gefter博士 (Massachusetts Institute of Techonology、マサチュセッツ州ケンブリッジ) から入手した。T細胞のクローンの応答性は、 3H−チミジンの組込みおよび標準的IL−2アッセイにより測定した。結果を第6B図に示す。結果が示すように、このペプチドは12−26反応性T細胞のクローンに提示することができるので、A20細胞はそれを有する。これらのクローンによるIL−2の産生をまた測定し、そして結果は12−26ペプチドが感染した細胞により産生され、分泌されることを示す。
【0102】
実施例V
トランスフェクションされた骨髄細胞を有するマウスの調製
12−26エピトープをコードするウイルスのベクターMBAE12−26でトランスフェクションされた骨髄細胞を有するマウス(第7図)を調製した。Balb/cマウスからの骨髄子孫を、 Chambers et al.,Proc. Natl. Acad. Sci., 89:1026 (1992) に記載されているように、MBAE12−26ベクターで感染させた。骨髄の収穫前に、骨髄ドナーのBalb/cマウスを 150mg/kgの5−フルオロウラシルで3〜4日間静脈内処置した。分画した骨髄細胞を氷上に保持し、次いで完全 RPM1+15%FC5および10単位/mlのIL−3中で洗浄した。次いで、骨髄細胞を約80%のコンフルエント層の照射(2000ラド)したψ−2パッケージング系統と同時培養した。付着性ψ−2ウイルス産生系統との同時培養を37℃において48時間下記のようにして実施した:
下記の成分を含有する10mlの培地中の5×106 骨髄細胞/6ウェル:
− 15% FCS
− 6μg/mlのポリブレン
− 100単位/mlのIL−6
− 200単位/mlのIL−3
【0103】
非付着性骨髄細胞を48時間後に収穫し、洗浄し、 HEPES緩衝化イーグル培地中に再懸濁させた。同系受容体Balb/cマウスを 900ラドで致死的に照射し、照射したマウスに 400μlの体積の4×106 細胞を静脈内注射した。受容体より通常を移植前の1〜2週に酸性化水上で開始してグラム陰性感染を防止し、オートクレーブ処理したケージ中でオートクレーブ処理した食物、敷き料(bedding)、および抗生物質を補充した酸性化水で維持した。
【0104】
2週後、受容体マウスからのリンパ球を尾の採血から収穫し、RT−PCR により12−26配列の存在について検査した。感染リンパ球およびψ−2MBAE12−26含有細胞系の両方において、約 100塩基対の断片が検出された。第8図参照。
【0105】
簡単に述べると、2週において動物から、または感染した〔ψ?〕−2パッケージング系統から、採った末梢血細胞からの RNAを逆転写した。VH (配列NO:6)およびpep(配列NO:7) プライマーを使用して、12−26エピトープをコードする DNA配列を増幅した。増幅された生成物をアガロースゲル電気泳動により分離し、12−26エピトープをコードする DNA配列を含有する生成物をサザンブロットにより検出した。12−26コーディング配列の検出に使用したプローブは下記の通りである (配列NO:8):
5 -TGATCTACTG CAGCTGGAGG ACGCGCGGCG G-3′
Current Protocols 、前掲、に記載されているように、標準的条件下にハイブリダイゼーションを実施した。12−26エピトープの発現を示した12−26プローブへの末梢血細胞において検出された断片のハイブリダイゼーションは、投与後2週において細胞の中で起こった。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1A】IgG1のN−末端にλ−CIリプレッサータンパク質の12−26エピトープを含む融合免疫グロブリンをコードするネズミDNA 構築物の調製方法:(A)実施例1に記載するように修飾された、γ1H鎖のゲノム配列を含有するプラスミドpSNRの地図。
【図1B】IgG1のN−末端にλ−CIリプレッサータンパク質の12−26エピトープを含む融合免疫グロブリンをコードするネズミDNA 構築物の調製方法:(B)重鎖の可変領域をコードする DNA配列と組合わせた12−26エピトープをコードする DNA配列を示す制限地図および配列。
【図2】12−26−IgG 融合タンパク質上の異種エピトープの検出。12−26−IgG1構築物(Q3)、ならびに対照pSNR構築物(P6)を、λ軽鎖のみを合成する J558L細胞の中にエレクトロポレーションした。組換えIgG を形質転換された細胞の全部の上清から、抗マウス IgG−セファローズまたはプロテインA−セファローズのカラムで精製した。ウェスタンブロッティング:試料を10% SDS−PAGE上で電気泳動させた。ゲルをニトロセルロースに移し、抗マウスIgG(左のレーン) または抗12−26モノクローナル抗体B3.11 (右のレーン) +第2試薬としてアルカリ性ホスファターゼ複合抗体でプロービングした。
【図3】ELISA 阻害曲線。前もって抗体価測定したモノクローナル抗体B3.11を増加する量の12−26ペプチド、ウサギガンマグロブリンの化学結合した12−26ペプチド(RGG/12−26) 、またはQ3(組換え融合タンパク質12−26IgG1) と混合した。
【図4】in vitroで決定した12−26−IgG 融合タンパク質による寛容性の誘発。脾細胞を増加する量の12−26ペプチドまたは12−26−IgG 融合タンパク質(Q3.13) または12−26−ウサギガンマグロブリン(RGG) 複合体と18時間培養した。次いで細胞を洗浄し、12−26エピトープ (12−26−ファジェリン(fagellin)) を含有する抗原で対抗し、そして ELISAアッセイを第4日の上清について実施した。
【図5】12−26−IgG を使用する in vivo寛容性の誘発。Balb/Cマウスに寛容原投与量の対照IgG(P6)を1mg/マウス〔充填した棒〕、12−26ペプチドを100 μg/マウス〔白抜き棒〕、ウサギガンマグロブリンに化学結合した12−26の化学複合体(12−26−RGG)を1mg/マウス〔しまのある (stripped) 棒〕および融合免疫グロブリン(Q3.13)を1mg/マウス〔ダッシュと点の棒〕においてを注射した。7日後、第4図に記載するように12−26エピトープを含有する抗原を使用するin vitroの対抗に対する応答性について、脾細胞を評価した。
【図6A】MBAE−12−26ベクターで感染したA20.2J細胞からの上清における12−26ペプチドの発現を示すウェスタンブロット。上清をニトロセルロース上にスロットブロットし、抗12−26モノクローナル抗体B3.11でプロービングした。MBpepA, MBpepB, MBpepC、およびMBpepDは、MBAE−12−26ベクターをコードする12−26ペプチドを産生する個々に感染したA20.2Jクローンを表す。
【図6B】MBAE−12−26ベクターで感染したA20細胞からの上清または対照上清とのインキュベーションに応答するT細胞抗12−26−IgGTH1クローンの増殖を示す。
【図7】12−26エピトープをコードする DNA配列を含有するMBAEレトロウイルスのベクターの構築を示す。
【図8】照射した受容体における成熟後におけるMBAE−12−26感染した骨髄細胞からの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(PCR) 生成物から調製されたcDNAのサザンブロットを示す。感染した骨髄細胞の受容後2週のマウスから、末梢血細胞を得た。 RNAを逆転写し、そしてVH および12−26プライマーを使用して PCRを実施した。12−26エピトープをコードする DNA配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドプローブを使用して、ゲルをプロービングした。実験は、骨髄の移植後2週において、末梢血細胞からの RNAのRT-PCRに基づく12−26エピトープをコードするmRNAの発現を証明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原に対する寛容性を誘発するための医薬組成物であって、個体への導入に好適なリンパ球様細胞又は造血細胞及び医薬として許容可能な賦形剤を含み、ここで、前記細胞はプロモーターに作用可能に連結された融合タンパク質をコードする核酸配列を含み、ここで、前記核酸配列はウイルスベクター又はその部分を含み、前記融合タンパク質は、以下の:(1)イムノグロブリン重鎖又は軽鎖;及び(2)前記抗原の少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドを含み、そしてここで、前記個体への導入によって、前記組成物が前記抗原に対する寛容性を前記個体において誘発する、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記ウイルスベクターが、以下の:レトロウイルスベクター及びバキュロウイルスベクターから成る群から選ばれる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記核酸配列の2以上のコピーが存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記イムノグロブリンがIgGである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記融合タンパク質が、前記重鎖のN-末端可変領域を含み、かつ該N-末端可変領域の第1フレームワーク領域に隣接して挿入された前記ポリペプチドを有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記細胞が前記個体と同系である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記細胞が骨髄細胞である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記細胞がB細胞である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物を対象に投与することを含む、前記対象において抗原に対する寛容性を誘発する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、ここで、前記融合タンパク質がλCIリプレッサータンパク質のアミノ酸12〜26のアミノ酸配列を含む寛容原性エピトープを含み、さらにここで、該寛容原性エピトープが、可変重鎖のN-末端の第1フレームワーク領域に挿入される、前記方法。
【請求項11】
前記ベクターがレトロウイルスベクターである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記形質転換された造血細胞を前記動物中に導入する前に、該動物を十分に照射して、内因性の造血細胞を破壊することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
寛容原性エピトープを同定するための方法であって、以下のステップ:
(a)造血細胞又はリンパ球様細胞中で安定に維持されることのできるベクターを提供し、ここで、該ベクターは、該造血細胞又はリンパ球様細胞中で機能的な転写及び翻訳制御領域に作用可能に連結された融合イムノグロブリンをコードするDNA配列を含み、さらにここで、該融合イムノグロブリンは、少なくとも1つの異種性エピトープをN−末端可変領域に含み;
(b)動物由来の造血細胞又はリンパ球様細胞の集団を前記ベクターで安定に形質転換して、形質転換細胞集団を形成し;
(c)前記形質転換細胞を動物に導入し;そして
(d)前記動物が上記異種性エピトープに対して寛容性であるかを決定することによって、該異種性エピトープが新規寛容原であるかを同定する、
を含む、前記方法。
【請求項14】
寛容原性エピトープを同定するための方法であって、以下のステップ:
(a)宿主細胞中で安定に維持されることのできるベクターを提供し、ここで、該ベクターは、前記宿主細胞中で機能的な転写及び翻訳制御領域に作用可能に連結された融合イムノグロブリンをコードするDNA配列を含み、さらにここで、該融合イムノグロブリンは、少なくとも1つの異種性エピトープを前記イムノグロブリンのN−末端可変領域において有し;
(b)宿主細胞集団を前記ベクターで安定に形質転換して、形質転換細胞集団を形成し、前記融合イムノグロブリンを産生させ;そして
(c)前記異種性エピトープが自己免疫性応答又はアレルギー性免疫応答に関連するかを決定することによって、前記融合イムノグロブリン上の前記異種性エピトープが寛容原性エピトープであるかを同定する、
を含む、前記方法。
【請求項15】
前記宿主細胞が、E.コリである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ベクターが、ファージミドベクターである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記宿主細胞がJ558L細胞である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記融合イムノグロブリン上の前記異種性エピトープが寛容原性エピトープであるかを同定する前記ステップが、前記融合イムノグロブリンが自己免疫性又はアレルギー性の動物からの免疫血清と免疫反応するかを決定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記融合イムノグロブリン上の前記異種性エピトープが寛容原性エピトープであるかを同定する前記ステップが、前記融合イムノグロブリンが自己免疫性又はアレルギー性の動物からのリンパ球様細胞の増殖を刺激するかを決定することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記融合イムノグロブリンが動物において前記エピトープに対する寛容性を誘発するかを決定することによって、前記異種性エピトープが寛容原性エピトープであることを確認することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
対象に投与することを含む、該対象において寛容性を誘発する方法。
【請求項22】
対象において抗原に対する寛容性を誘発するための方法であって、プロモーターに作用可能に連結された融合タンパク質をコードする核酸配列を前記対象に投与することを含み、ここで、前記核酸配列がウイルスベクター又はその部分を含み、前記融合タンパク質が、以下の:(1)イムノグロブリン重鎖又は軽鎖;及び(2)前記抗原の少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドを含み、そしてここで、前記対象への導入によって、前記組成物が前記抗原に対する寛容性を前記対象において誘発する、前記方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、ここで、前記融合タンパク質がλCIリプレッサータンパク質のアミノ酸12〜26のアミノ酸配列を含む寛容原性エピトープを含み、さらにここで、該寛容原性エピトープが、可変重鎖のN-末端の第1フレームワーク領域に挿入される、前記方法。
【請求項24】
前記ベクターがレトロウイルスベクターである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
対象において抗原に対する寛容性を誘発するための方法であって、該対象に融合タンパク質を含む組成物を投与することを含み、ここで、該融合タンパク質は以下の:(1)イムノグロブリン重鎖又は軽鎖;及び(2)前記抗原の少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドを含み、さらにここで、前記対象への導入によって、前記組成物が前記抗原に対する寛容性を前記対象において誘発する、前記方法。
【請求項26】
前記イムノグロブリン軽鎖又は重鎖が、IgGアイソタイプである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、ここで、前記融合タンパク質がλCIリプレッサータンパク質のアミノ酸12〜26のアミノ酸配列を含む寛容原性エピトープを有し、さらにここで、該寛容原性エピトープが、可変重鎖のN-末端の第1フレームワーク領域に挿入される、前記方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−1709(P2008−1709A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187377(P2007−187377)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【分割の表示】特願平7−521334の分割
【原出願日】平成7年2月10日(1995.2.10)
【出願人】(500255007)アメリカン ナショナル レッド クロス (5)
【Fターム(参考)】