対物レンズ、レンズ製造方法、光学ドライブ装置
【課題】SIL(Solid Immersion Lens)を用いた対物レンズよりも実効的な開口数NAの向上を図り、高記録密度化を達成する。
【解決手段】対物レンズとして、超半球形状又は半球形状のSILを備えると共に、当該SILの対物側に面した一部の領域に、誘電率が正である第1の薄膜と誘電率が負である第2の薄膜との交互積層が当該SILの上記対物側の外部に設定した所定の基準点を中心とする半径Riによる球面の形状に沿って上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われて成るハイパーレンズ部を一体的に形成する。上記ハイパーレンズ部によれば、SIL部によって得られるNA>1(NA:開口数)の光を伝播することができ、なお且つ、上記SIL部で生成されるNA>1の光による極小スポットを、上記半径Riと上記半径Roとの比率に応じた分だけ縮小化できる。
【解決手段】対物レンズとして、超半球形状又は半球形状のSILを備えると共に、当該SILの対物側に面した一部の領域に、誘電率が正である第1の薄膜と誘電率が負である第2の薄膜との交互積層が当該SILの上記対物側の外部に設定した所定の基準点を中心とする半径Riによる球面の形状に沿って上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われて成るハイパーレンズ部を一体的に形成する。上記ハイパーレンズ部によれば、SIL部によって得られるNA>1(NA:開口数)の光を伝播することができ、なお且つ、上記SIL部で生成されるNA>1の光による極小スポットを、上記半径Riと上記半径Roとの比率に応じた分だけ縮小化できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソリッドイマージョンレンズを備える対物レンズと、上記ソリッドイマージョンレンズの製造方法とに関する。また、上記対物レンズを備えて光記録媒体に対する情報記録又は上記光記録媒体に記録された情報の再生を行う光学ドライブ装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2010−33688号公報
【特許文献2】特開2009−134780号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により情報の記録及び/又は記録情報の再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスク記録媒体(単に光ディスクとも表記する)が広く普及している。
【0004】
これらの光ディスクにおいては、徐々に記録再生光の短波長化・対物レンズの高開口数(NA)化が図られてきており、それによって記録再生のための集光スポットサイズの縮小化が実現され、大記録容量化・高記録密度化が達成されてきた。
【0005】
但し、これら従来の光ディスクでは、対物レンズと光ディスクとの間の媒質が空気であるため、集光スポットのサイズ(径)を左右する開口数NAを「1」より大とすることができないことが知られている。
具体的に、光ディスク上に対物レンズを介して照射される光のスポットのサイズは、当該対物レンズの開口数をNAobj、光の波長をλとおくと、およそ
λ/NAobj
で与えられるものである。
このとき、開口数NAobjは、対物レンズと光ディスクとの間に介在する媒質の屈折率をnA、対物レンズの周辺光線の入射角度をθとしたとき、
NAobj=nA×sinθ
で表されるものとなる。
この式を参照して理解されるように、媒質が空気(nA=1)である限り、NAobj>1とすることはできない。
【0006】
そこで、例えば上記特許文献1や特許文献2などに開示されるような、近接場光(エバネッセント光)を利用してNAobj>1を実現する記録再生方式(ニアフィールド記録再生方式)が提案されている。
【0007】
周知のようにニアフィールド記録再生方式では、光ディスクに対して近接場光を照射して情報の記録/再生を行うようにされるが、このとき、光ディスクに対し近接場光を照射するための対物レンズとしては、ソリッドイマージョンレンズ(Solid Immersion Lens、以下SILと略称する)が用いられる(例えば特許文献1、特許文献2を参照)。
【0008】
図12は、SILを用いた従来のニアフィールド光学系について説明するための図である。
なお、この図12では、SILとして超半球状のSIL(超半球SIL)を用いた例を示している。具体的に、この場合の超半球SILは、対物側(つまり記録/再生対象とする記録媒体と対向する側)の形状が平面形状とされ、それ以外の部分が超半球状とされている。
【0009】
この場合の対物レンズは、上記超半球SILを先玉レンズとして有する2群レンズとして構成される。図示されるように、後玉レンズとしては、両面非球面レンズが用いられている。
【0010】
ここで、図12に示す構成による対物レンズの実効的な開口数NAは、入射光の入射角度をθi、超半球SILの構成材料の屈折率をnSILとすると、
NA=nSIL2×sinθi
で表される。
この式より、図12に示す対物レンズの構成とすれば、実効的な開口数NAは、SILの屈折率nSILを「1」よりも高く(空気の屈折率よりも高く)設定することで、「1」より大にできることが分かる。
従来において、SILの屈折率としては例えばnSIL=2程度が設定され、これにより実効的な開口数NAとして1.8程度が実現されている。
【0011】
ここで、ニアフィールド光学系としては、上記のような超半球SILを用いる構成のみでなく、半球状のSIL(半球状SIL)を用いたものであってもよい。
図12に示す超半球SILに代えて半球状SILを用いた対物レンズとした場合、その実効的な開口数NAは、
NA=nSIL×sinθi
となる。この式より、半球状SILを用いた場合も、SILの構成材料としてnSIL>1の高屈折率材料を用いることで、NA>1を実現可能であることが分かる。
【0012】
このとき、先の超半球SILの場合の式と比較すると、超半球状の場合と半球状の場合とでSILの構成材料(屈折率)を同一とするときには、超半球SILを用いる場合の方が、実効的なNAをより高く設定できることが分かる。
【0013】
なお確認のため述べておくと、SILにより生成されるNA>1の光(近接場光)を記録媒体に伝播(照射)して記録再生を行うためには、SILの対物面と記録媒体とを非常に近接させて配置する必要がある。このときのSILの対物面と記録媒体(記録面)との間隔は、ギャップと呼ばれている。
ニアフィールド記録再生方式において、ギャップの値としては、少なくとも光の波長の1/4程度以下に抑えることが要請される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のようにして、半球状や超半球状によるSILを備えた対物レンズを用いることで、開口数NAを「1」より大に設定することができ、その結果、スポット径を従来の光ディスクシステムでの限界を超えて縮小化できる。つまりその分、記録密度の向上、ひいては大記録容量化が図られる。
【0015】
ここで、高記録密度化や大記録容量化については、その程度が大であることに越したことはなく、さらなる向上が要請されていると言うことができる。
【0016】
本発明はこのような点に鑑み為されたもので、従来のSILを用いた対物レンズとする場合よりも実効的な開口数NAの向上を図り、さらなる高記録密度化、大記録容量化を達成することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる課題の解決のため、本発明では、対物レンズとして以下のように構成することとした。
つまり、本発明の対物レンズは、超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを備えるものである。
そして、上記ソリッドイマージョンレンズが、その対物側に面した一部の領域に、誘電率が正である第1の薄膜と誘電率が負である第2の薄膜との交互積層が当該ソリッドイマージョンレンズの上記対物側の外部に設定した所定の基準点を中心とする半径Riによる球面の形状に沿って上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われて成るハイパーレンズ部が一体的に形成されているものである。
【0018】
また、本発明では、本発明の対物レンズが備えるソリッドイマージョンレンズの製造方法として、以下の第1、第2の方法を提案する。
つまり、第1のレンズ製造方法は、超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズの対物側の面に、所定の半径Roによる球面の一部と同形状の凹部を形成する凹部形成工程と、上記凹部形成工程により形成した上記凹部に対して、誘電率が正の第1の薄膜と誘電率が負の第2の薄膜とを上記凹部の形状に沿って交互に積層する積層工程とを有するものである。
【0019】
また、第2のレンズ製造方法は、以下の通りとなる。
つまり、所定の半径Riによる球面の一部と同じ表面形状を有する凸部が形成された基板における上記凸部を対象として、誘電率が正の第1の薄膜と誘電率が負の第2の薄膜とを上記凸部の形状に沿って交互に積層する積層工程を有する。
また、超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズの対物側の面と、上記基板の上記第1及び第2の薄膜が交互積層された側の面とを対向させた状態で、上記ソリッドイマージョンレンズと上記基板とを高屈折率接着材料により接着する接着工程を有する。
また、上記接着工程により接着した上記基板を剥離する基板剥離工程を有するものである。
【0020】
また、本発明では光学ドライブ装置として以下のように構成することとした。
すなわち、超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを備えると共に、上記ソリッドイマージョンレンズの対物側に面した一部の領域に、誘電率が正である第1の薄膜と誘電率が負である第2の薄膜との交互積層が当該ソリッドイマージョンレンズの上記対物側の外部に設定した所定の基準点を中心とする半径Riによる球面の形状に沿って上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われて成るハイパーレンズ部が一体的に形成されている対物レンズを備える。
また、上記対物レンズを介して光記録媒体に対する光照射を行うことで、上記光記録媒体に対する情報の記録又は上記光記録媒体の記録情報の再生を行う記録/再生部を備えるようにした。
【0021】
ここで、後述もするように、誘電率が正の薄膜と負の薄膜とを交互に積層したハイパーレンズ部は、ソリッドイマージョンレンズ部(上記ソリッドイマージョンレンズにおけるハイパーレンズ部以外の部分)によって得られるNA>1(NA:開口数)の光を伝播することができる。
なお且つ、上記の形状によるハイパーレンズ部によれば、ソリッドイマージョンレンズ部で生成されるNA>1の光による極小スポットを、上記半径Riと上記半径Roとの比率に応じた分だけ縮小化することができる。
このように、上記ハイパーレンズ部によれば、ソリッドイマージョンレンズ部によって生成されるNA>1の光で実現される極小光スポットをさらに縮小化しつつ、これを伝播して上記光記録媒体に照射されるようにできる。
この結果、本発明の対物レンズによれば、従来のソリッドイマージョンレンズを用いた場合よりも小さなスポット径での記録を実現できる。
また、上記の形状によるハイパーレンズ部は、対物側からの戻り光について、その光束を上記半径Riと上記半径Roとの比率に応じた分だけ拡大化することもできる。つまりハイパーレンズ部は、光束を可逆的に縮小/拡大化できるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の対物レンズによれば、従来のソリッドイマージョンレンズ(SIL)を用いた場合よりも小さなスポット径での記録を実現できる。つまりこの結果、従来のSILを用いた対物レンズとする場合よりも高記録密度化、大記録容量化が図られる。
【0023】
また、本発明の対物レンズにおいて、ハイパーレンズ部は、光束を可逆的に縮小/拡大化することができるので、本発明の対物レンズを用いて極小スポットにより記録したマーク(情報)について、これを適正に読み出すことができる。
これにより、従来の光ディスクシステムの場合と同様に、記録再生時で共通の光学系を用いるシステムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態の対物レンズについて説明するための図である。
【図2】ハイパーレンズ部の拡大断面図である。
【図3】ハイパーレンズを別体で設けた対物レンズの構成を示した図である。
【図4】実施の形態の対物レンズが奏する効果を実証するための具体的な計算結果を示した図である。
【図5】実施の形態のレンズ製造方法のうちの第1の製造方法について説明するための図である。
【図6】実施の形態のレンズ製造方法のうちの第2の製造方法について説明するための図である。
【図7】実施の形態の光学ドライブ装置の主に光学ピックアップの内部構成を示した図である。
【図8】実施の形態で記録再生の対象とする光記録媒体の断面構造を示した図である。
【図9】実施の形態の光学ドライブ装置の全体的な内部構成を示した図である。
【図10】実施の形態の対物レンズを用いた場合の視野範囲について説明するための図である。
【図11】ギャップ長と対物レンズからの戻り光量との関係について説明するための図である。
【図12】ソリッドイマージョンレンズを用いたニアフィールド光学系について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行う。
<1.実施の形態の対物レンズ>
<2.製造方法>
[2-1.第1の製造方法]
[2-2.第2の製造方法]
<3.ドライブ装置>
[3-1.光学ピックアップの構成]
[3-2.ドライブ装置全体の内部構成]
<4.変形例>
【0026】
<1.実施の形態の対物レンズ>
図1は、本発明の対物レンズの一実施形態である対物レンズOLの構成について説明するための図である。
なおこの図1では、対物レンズOLの断面を示している。
また図1では、対物レンズOLに対する入射光Liとその光軸axsも併せて示している。
【0027】
図示するように本実施の形態の対物レンズOLは、後玉レンズL1と先玉レンズL2とを有する2群レンズとされる。
この場合、後玉レンズL1としては両面非球面レンズが用いられる。
後玉レンズL1は、入射光Liに基づく収束光を先玉レンズL2に対し入射する。
【0028】
先玉レンズL2は、SIL部(SIL:Solid Immersion Lens:ソリッドイマージョンレンズ)L2aに対し、ハイパーレンズ部L2bが一体的に形成されたレンズとなる。換言すれば、先玉レンズL2は、ソリッドイマージョンレンズの一部に対してハイパーレンズ部L2bが形成されたものとも言うことができる。
本例の場合、先玉レンズL2に用いるSIL(SIL部L2a)は、図のように超半球形状を有するSILとされる。具体的に本例のSIL部L2aは、その対物側の面が平面とされた超半球状のSILとされる。
【0029】
なお確認のため述べておくと、「対物側」とは、対物レンズによる光照射の対象とする物体の側を意味するものである。本例の対物レンズOLは、光記録媒体に対する記録/再生システムに適用されるので、対物側と言ったときは、光記録媒体の記録面と向き合う側を意味するものとなる。
【0030】
ソリッドイマージョンレンズとしてのSIL部L2aは、少なくとも屈折率が1より大となる高屈折率材料で構成されており、後玉レンズL1からの入射光に基づき、開口数NA>1による近接場光(エバネッセント光)を生成する。
そして、先玉レンズL2において、ハイパーレンズ部L2bは、図のようにSIL部L2aにおける対物側に面する部分に形成されている。このような構成により、ハイパーレンズ部L2bには、SIL部L2aが生成した近接場光が入射されるようになっている。
図のようにハイパーレンズ部L2bは、その全体的な形状として、略半球状の形状を有する。
【0031】
図2は、ハイパーレンズ部L2bの拡大断面図である。
図のようにハイパーレンズ部L2bは、複数の薄膜を積層した構造を有する。
具体的に、ハイパーレンズ部L2bは、誘電率εが正(ε>0)となる第1の薄膜と、誘電率εが負(ε<0)となる第2の薄膜とを交互に積層して形成されたものとなる。
【0032】
ここで、誘電率εが負の材料は、プラズモニック材料(Plasmonic Material)とも呼ばれる。プラズモニック材料の例としては、例えばCu、Ag、Au、Alなどを挙げることができる。
また、誘電率εが正の材料としては、例えばSiO2、SiN、C、ガラス、ポリマー、金属酸化物(Metal Oxide)、GaNを挙げることができる。
ここで、誘電率εは、使用する光の波長λに応じて変化するものである。従って第1の薄膜、第2の薄膜の材料は、所期の誘電率εが得られるべく、波長λに応じて選定すればよい。
本例の場合、第1の薄膜の材料としてAl2O3を、また第2の薄膜の材料としてAgをそれぞれ選定するものとしている(後述もするように本例の場合、波長λ=405nmを前提としている)。
【0033】
図2において、第1の薄膜と第2の薄膜との積層は、ハイパーレンズ部L2bの対物側の外部(つまり先玉レンズL2の対物側の外部と同じ)に設定した所定の基準点Prを中心とする半径Riによる球面に沿って、上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われている。このとき、第1の薄膜と第2の薄膜との積層は球面を基準に行われるので、各薄膜の積層は、図のようにドーム状に行われるものとなる。結果、ハイパーレンズ部L2bの断面形状としては、図のように年輪のような形状になる。
【0034】
なお確認のため述べておくと、前述のようにハイパーレンズ部L2bは、その全体的な形状としては略半円形状を有するものであり、従ってその対物側の面形状は、上記半径Riによる球面の形状を有する部分以外は、平面形状とされる。このようにハイパーレンズ部L2bの対物側の面をほぼ平面形状としているのは、当該ハイパーレンズ部L2bが一体形成されたSIL部L2aの対物側の面形状が平面形状とされていることに対応させるためである。
【0035】
ここで、第1の薄膜と第2の薄膜とを積層した合計の層数は、3〜100000とされればよい。具体的に、本例の場合は34層としている。
また、各薄膜の膜厚は4nm〜40nmとされればよく、本例の場合、第1,第2の薄膜とも10nmを設定している。
【0036】
上記のようにハイパーレンズ部L2bは、ε>0による第1の薄膜とε<0による第2の薄膜とを交互に積層した構造を有する。このような構造により、ハイパーレンズ部L2bにおいては、薄膜の積層方向に平行な方向おいて、NA>1の光(近接場光)を伝播することができる。つまりこのことで、SIL部L2aが生成したNA>1の光を伝播して、対物側に出射することができる。
また、上記により説明したハイパーレンズ部L2bの積層構造によれば、半径Roの球面側から入射した光を半径Riの球面側より出射する際に、光の光束(つまり光のスポット径)を、上記半径Riと半径Roとの比率(Ro/Ri)に応じた分だけ縮小化することができる。
【0037】
これらの作用により、上記ハイパーレンズ部L2bによっては、SIL部L2aによって生成されるNA>1の光で実現される極小光スポットをさらに縮小化することができ、なお且つ、これを伝播して光記録媒体に対して照射することができる。
この結果、本実施の形態の対物レンズOLによれば、従来のソリッドイマージョンレンズを用いた対物レンズとする場合よりも小さなスポット径での記録を実現できる。つまりその分、従来よりも高記録密度化が図られ、大記録容量化が図られるものである。
【0038】
また、図2に示す構造を有するハイパーレンズ部L2bによれば、対物側からの戻り光について、その光束を上記半径Riと上記半径Roとの比率に応じた分だけ拡大化することもできる。つまりハイパーレンズ部L2bは、光束を可逆的に縮小/拡大化することができるものである。
このような可逆的縮小/拡大化が可能なハイパーレンズ部L2bを有する対物レンズOLによれば、当該対物レンズOLを用いて極小スポットにより記録したマーク(情報)について、その読み出しについても適正に行うことができる。
つまりこの結果、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などの従来の光ディスクシステムの場合と同様に、共通の光学系を用いた記録再生を実現することができる。換言すれば、記録時と再生時とで、それぞれ異なる光学系を用いるといった複雑な構成を採らずに済むものとできる。
【0039】
ところで、本実施の形態では、ハイパーレンズ部L2bをSIL部L2aに対して一体的に形成するものとしているが、上記で説明したようなハイパーレンズ部L2bによるスポット径のさらなる縮小化作用、及び可逆的な縮小/拡大化作用を得るとしたときには、例えば図3に示されるように、従来と同様のSILとした先玉レンズL2’と、ハイパーレンズ部L2bと同様の構造を有するハイパーレンズL2b’とを、別体に設けた構成とすることも考えられ得る。
しかしながら、このようにSILとしての先玉レンズL2’とハイパーレンズ部L2b’とを別体で設けた場合には、先玉レンズL2’とハイパーレンズL2b’とが接する点以外の領域での媒質が空気とされるため、先玉レンズL2’からハイパーレンズL2b’への光の入射の際に、光の反射ロスが生じてしまう。このとき、SILとしての先玉レンズL2’及びハイパーレンズL2としては共に高屈折率材料で構成されるため、このような反射によるロスは非常に大きなものとなる。
【0040】
本実施の形態のようにハイパーレンズ部L2bをSILに一体的に形成する構成とすれば、かかる問題の発生を効果的に回避することができ、光の利用効率を格段に高めることができる。
【0041】
図4は、上記により説明した実施の形態の対物レンズOLが奏する効果を実証するための具体的な計算結果を示している。
この図4では、BDシステム、従来SILのシステム、及び実施の形態(図中実施例1、実施例2)の対物レンズOLを用いたシステムの別ごとに、波長λ(nm)、後玉NA(NAb)、先玉屈折率(n)、縮小/拡大倍率(Ro/Ri)、実効NA、スポット径を表すλ/NA(nm)、作動距離(記録媒体との距離:ギャップ)、プリグルーブ形態、トラックピッチTp(nm)、変調方式、チャンネルの各条件を示すと共に、最短マーク長(nm)、ビット長(nm/bit)、記録密度(Gbpsi)、及び記録容量(GB)についての計算結果を示している。
なお図4において、「従来SIL」のシステムとは、先の図12に示した超半球状のソリッドイマージョンレンズを用いたシステムを指す。
また図4において、「チャンネル」は、採用するPR(Partial Response)のクラスの別を表したものである。
また、「記録容量」は、12cmディスクとした場合の記録容量を指す。
ここで、実施の形態のシステムとして、実施例1と実施例2のシステムの差は、主に後玉レンズL1のNAの差と、先玉レンズL2の屈折率nの差となる。
【0042】
なお、この図4に示される以外の条件として、実施例1のシステムでは、図1に示した後玉レンズL1の厚さ(光軸axsに平行な方向の長さ)T_L1、SIL部L2aの厚さT_L2、SIL部L2aの半径R、及び後玉レンズL1と先玉レンズL2との間のスペース(後玉レンズL1の対物側面の頂点からSIL部L2aの超半球面の頂点までの距離)T_sを、以下のように設定した。
T_L1=1.7mm
T_L2=0.7124mm
R=0.45mm
T_s=0.1556mm
また、後玉レンズL1への入射光Liは平行光とし、その径φは2.1mmとした。
【0043】
図4において、先ず波長λについては、BD、従来SIL、実施例1,2の各場合で共通のλ=405nmである。
また、後玉NAについては、BDの場合は対物レンズのNAであり0.85である。また、従来SIL、実施例1、実施例2の場合は、共に後玉レンズL1のNAであり、従来SIL及び実施例1の場合が0.43で同値であり、また実施例2の場合は0.37である。
【0044】
また、先玉レンズの屈折率nについては、BDの場合は該当無し、従来SIL及び実施例1の場合が共通でn=2.075となる。また実施例2の場合、n=2.36である。
【0045】
縮小/拡大倍率(Ro/Ri)については、実施例1、2が該当し、図のように共に6.58である。
なお本例の場合、半径Ri=120nm、半径Ro=790nmを設定するものとしており、その結果がRo/Ri=6.58となる。
【0046】
実効NAは、対物レンズの実効的な開口数NAであり、BDの場合は0.85、従来SILの場合は1.84となる。これに対し、実施例1の場合は12.1、実施例2の場合が13.7となる。
なお確認のため述べておくと、従来SIL(超半球状SIL)の場合における対物レンズの実効NAは、先に示した通り、
NA=nSIL2×sinθi
で求まる。
これに対し、実施例1、2の場合における対物レンズOLの実効NAは、
NA=n2×NAb×(Ro/Ri)
で計算されるものとなる。
【0047】
スポット径は、BDの場合が476nm、従来SILの場合が220nmとなる。これに対し、実施例1の場合は33nm、実施例2の場合には30nmとなる。
このようにして実施の形態の対物レンズOLによれば、従来SILの場合よりもスポット径の大幅な縮小化が図られる。
【0048】
また、作動距離は、BDの場合が0.3mmである。また、従来SIL及び実施例1,2としてのニアフィールド記録再生方式の場合、作動距離(つまりギャップG)は20nmとなる。
また、プリグルーブ形態は、各場合とも連続蛇行溝(ウォブリンググルーブ)で共通である。
【0049】
トラックピッチTpについては、BDの場合が320nm、従来SILの場合が160nmとされる。
そして、実施例1,2の場合は、前述のようにスポット径の縮小化が図られることで、トラックピッチTpは従来SILの場合よりも狭い24nmとなる。
【0050】
変調方式については、各場合とも1−7pp変調方式で共通である。
また、チャンネルについては、BDの場合は該当無し(PRML復号無し)としており、また従来SIL及び実施例1の場合は共にPR(1,2,2,1)を採用している。また実施例2ではPR(1,2,2,2,1)を採用している。
【0051】
最短マーク長は、BDの場合が149nm、従来SILの場合が66.5nmとなる。
これに対し、実施例1の場合の最短マーク長は10.1nm、実施例2の場合の最短マーク長は8.4nmにまで縮小化できる。
【0052】
ビット長については、BDの場合が112nm/bit、従来SILの場合が50nm/bitとなる。
これに対し、実施例1の場合は7.6nm/bit、実施例2の場合は6.2nm/bitと、従来SILの場合よりも大幅に短縮化される。
【0053】
記録密度については、BDの場合が18Gbpsi、従来SILの場合でも81Gbpsiである。これに対し、実施例1の場合には3510Gbpsi、実施例2の場合には4290Gbpsiとなる。
この結果より、実施の形態によれば、従来SILの場合よりも記録密度を数十倍向上できることが分かる。
【0054】
また、記録容量に関しては、BDの場合が25GB、従来SILの場合でも112GBである。これに対し実施例1、実施例2の場合、記録容量はそれぞれ4850GB、5930GBまで増大化する。
この結果からも理解されるように、実施の形態によれば、記録容量についても、従来SILの場合との比較で数十倍程度向上することができる。
【0055】
<2.製造方法>
[2-1.第1の製造方法]
続いて、上記により説明した実施の形態としての対物レンズOLが備える先玉レンズL2の製造方法について説明する。
以下では、先玉レンズL2の製造方法について、図5に示す第1の製造方法と、図6に示す第2の製造方法とを説明する。
【0056】
先ず、図5により第1の製造方法について説明する。
第1の製造方法は、SILの対物側の面にハイパーレンズ部L2bを形成するための凹部を形成しておき、当該凹部にドーム状の積層を行うことで、先玉レンズL2を製造するものである。
【0057】
具体的に、第1の製造方法では、図5(a)に示す凹部形成工程として、超半球状のSILが有する平面部に、ハイパーレンズ部L2bを形成するための略半球面の凹部を形成する。つまり、図1に示される形状によるSIL部L2aを生成することと同義である。
先の説明からも理解されるように、上記凹部は、その形状が、所定の基準点Prを中心とする球面の一部と同形状となるように形成する。
ここで、上記凹部を形成するための具体的な手法としては、例えば下記の参考文献1に記載されるようなHFエッチング(HF:フッ化水素)やCF4エッチングを挙げることができる。
参考文献1・・・特開平8−1810号公報
【0058】
図5(a)に示す凹部形成工程により凹部を形成した後は、図5(b)に示す積層工程により、上記凹部に対してε>0による第1の薄膜と、ε<0による第2の薄膜とを交互に複数層積層する。
先の説明からも理解されるように、各薄膜の積層は、上記凹部としての球面形状に沿っていわばドーム状に行う。このようなドーム状の積層を行った結果、最後に積層した薄膜の対物側の面形状が、予め上記基準点Prを中心として設定した所定の半径Riの球面と同形状となるようにする。所望の拡大/縮小率(Ro/Ri)を得るためである。
なお、第1、第2の薄膜を積層するための具体的な手法としては、例えばスパッタリングや蒸着(例えば電子ビーム蒸着等)を挙げることができる。
またこの図5(b)では図示の都合上、薄膜の積層数は3としている。なおこの点については以下の図6の場合も同様である。
【0059】
[2-2.第2の製造方法]
続いて、図6により第2の製造方法について説明する。
第2の製造方法は、略半球状の凸部が形成された基板を用いてハイパーレンズ部L2bを形成し、該基板とSILとを接着後、上記基板を剥離することで先玉レンズL2を生成するものである。
【0060】
先ず、第2の製造方法では、図6(a)に示されるような略半球状の凸部を有する基板BSを生成する。この基板BSにおける上記凸部は、所定の基準点Prを中心とする半径Riによる球面の一部(略半球面部分)と同じ表面形状を有するように形成する。
基板BSとしては、例えば石英基板を用いる。
上記凸部を有する基板BSを生成するにあたっては、例えば下記の参考文献2などに開示されるRIE(リアクティブ・イオン・ドライ・エッチング)を用いたマイクロレンズアレイの製造方法を応用することができる。
参考文献2・・・特許第3617846号公報
【0061】
そして、第2の製造方法では、上記基板BSにおける上記凸部に対し、ε>0による第1の薄膜と、ε<0による第2の薄膜とを交互に複数層積層する。この場合も、先の図2に示したドーム状の積層が実現されるように、各薄膜の積層は、上記凸部としての球面形状に沿って行う。このような積層を行った結果、最後に積層した薄膜の対物側の面形状が、予め上記基準点Prを中心として設定した所定の半径Roの球面と同形状となるようにする。
【0062】
上記による薄膜の積層工程を行った後は、図6(b)に示される接着工程により、基板BSの上記凸部が形成された面と、超半球状のソリッドイマージョンレンズHblの対物側の面(平面部)とを対向させた状態で、これらソリッドイマージョンレンズHblと基板BSとを高屈折率接着材料ssにより接着する。
具体的に本例の場合、高屈折率接着材料ssとしては高屈折率レジンを用いるものとし、基板BSの上記凸部が形成された面とソリッドイマージョンレンズHblの対物側の面とを対向させた状態で当該高屈折率レジンを充填後、紫外線硬化処理を施すことで、ソリッドイマージョンレンズHblと基板BSとを接着する。
【0063】
ここで、高屈折率接着材料ssの屈折率は、ソリッドイマージョンレンズHblとの屈折率差に起因した反射ロスの抑制を図るべく、当該ソリッドイマージョンレンズHblの屈折率により近い値とされることが望ましく、さらに言えば同値とされることが最も好ましい。
【0064】
上記接着工程によってソリッドイマージョンレンズHblと基板BSとを接着した後は、図6(c)に示す剥離工程によって基板BSのみを剥離する。
これにより、対物側の一部にハイパーレンズ部L2bが形成された先玉レンズL2が生成される。
【0065】
<3.ドライブ装置>
[3-1.光学ピックアップの構成]
図7は、対物レンズOLを備えて構成される実施の形態としての光学ドライブ装置の主に光学ピックアップ(光学ピックアップOP)の内部構成を示した図である。
先ず、図7には、実施の形態の光学ドライブ装置が記録再生対象とする光ディスクDが示されている。
光ディスクDは、円盤状の光記録媒体であり、光の照射により情報の記録及び記録情報の再生が行われる。
【0066】
図8は、光ディスクDの断面構造を示している。
図示するように光ディスクDには、カバー層Lc、記録層Lr、基板Lbが同順で形成されている。光学ドライブ装置が備える対物レンズOLからの出射光は、カバー層Lc側から入射することになる。
【0067】
カバー層Lcは、記録層Lrの保護のために設けられる。
記録層Lrは、記録パワーによるレーザ光の照射に応じて記録マークが形成される記録膜と、反射膜とを備えて構成される。この場合、上記記録膜としては、相変化材料で構成されている。
【0068】
記録層Lrには、案内溝の形成に伴う図のような凹凸の断面形状が与えられている。
具体的に、この場合は基板Lb上に案内溝が形成されており、当該基板Lbの上記案内溝が形成された面側に対して記録層Lrが形成されることで、記録層Lrに凹凸の断面形状が与えられている。
本例の場合、案内溝としてはウォブリンググルーブが形成され、グルーブの蛇行周期の情報によりディスク上の絶対位置を表す絶対位置情報(半径位置情報や回転角度情報)の記録が行われている。
ここで、案内溝は、スパイラル状(又は同心円状であってもよい)に形成されている。
【0069】
説明を図7に戻す。
図7において、光ディスクDは、図中のスピンドルモータ(SPM)30により回転駆動される。このようにスピンドルモータ30により回転駆動される光ディスクDに対して、光学ピックアップOPによる情報記録・記録情報の再生のための光照射が行われる。
【0070】
光学ピックアップOP内には、記録層Lrに対する情報記録及び記録層Lrの記録情報についての再生を行うためのレーザ光である録再用レーザ光についての光学系と、対物レンズOLと光ディスクDとの間のギャップGを保つためのギャップ長サーボを行うためのレーザ光であるギャップサーボ用レーザ光についての光学系とが設けられる。
先に挙げた特許文献1にも記載されるように、録再用レーザ光とギャップサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯の異なるレーザ光を用いる。本例の場合、録再用レーザ光の波長は405nm程度、ギャップサーボ用レーザ光の波長は650nm程度を設定しているとする。
【0071】
先ず、録再用レーザ光の光学系において、録再用レーザ1より出射された録再用レーザ光は、コリメーションレンズ2を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ3に入射する。偏光ビームスプリッタ3は、このように録再用レーザ1側から入射した録再用レーザ光については透過するように構成されている。
【0072】
上記偏光ビームスプリッタ3を透過した録再用レーザ光は、固定レンズ5、可動レンズ6、及びレンズ駆動部7を備えて成るフォーカス機構4に入射する。このフォーカス機構4は、録再用レーザ光の焦点位置を調整するために設けられる。
フォーカス機構4において、固定レンズ5は、光源である録再用レーザ1に近い側に配置され、可動レンズ6は録再用レーザ1から遠い側に配置される。レンズ駆動部7は可動レンズ6を録再用レーザ光の光軸に平行な方向に駆動する。
後述もするように、レンズ駆動部7は、図9に示すフォーカスドライバ33からのフォーカスドライブ信号FDにより駆動制御される。
【0073】
フォーカス機構4における固定レンズ5及び可動レンズ6を介した録再用レーザ光は、1/4波長板8を介してダイクロイックプリズム9に入射する。
ダイクロイックプリズム9は、その選択反射面が、録再用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されている。従って上記のようにして入射した録再用レーザ光は、ダイクロイックプリズム9にて反射される。
【0074】
ダイクロイックプリズム9で反射された録再用レーザ光は、図示するようにして対物レンズOLを介して光ディスクDに対して照射される。
【0075】
ここで、対物レンズOLに対しては、当該対物レンズOLをトラッキング方向(光ディスクDの半径方向)に変位させるためのトラッキング方向アクチュエータ10と、光軸方向(フォーカス方向)に変位させるための光軸方向アクチュエータ11とが設けられる。
本例の場合、これらトラッキング方向アクチュエータ10、光軸方向アクチュエータ11としては共にピエゾアクチュエータが用いられる。
そしてこの場合、対物レンズOLは、トラッキング方向アクチュエータ10に保持され、このように対物レンズOLを保持するトラッキング方向アクチュエータ10が、光軸方向アクチュエータ11によって保持されている。これにより、これらトラッキング方向アクチュエータ10、光軸方向アクチュエータ11を駆動することで、対物レンズOLをトラッキング方向及び光軸方向に変位させることができるようにされている。
なお、逆に光軸方向アクチュエータ11が対物レンズOLを保持し、光軸方向アクチュエータ11をトラッキング方向アクチュエータ10が保持する構成としても同様の作用が得られることは言うまでもない。
【0076】
トラッキング方向アクチュエータ10は、図9に示す第1トラッキングドライバ39からの第1トラッキングドライブ信号TD-1に基づき駆動される。
また光軸方向アクチュエータ11は、図9に示す第1光軸方向ドライバ47からの第1光軸方向ドライブ信号GD-1に基づき駆動される。
【0077】
説明を戻す。
再生時においては、前述のようにして光ディスクDに対して録再用レーザ光が照射されることに応じて、記録層Lrからの反射光が得られる。このように得られた録再用レーザ光の反射光は、対物レンズOLを介してダイクロイックプリズム9に導かれ、当該ダイクロイックプリズム9にて反射される。
ダイクロイックプリズム9で反射された録再用レーザ光の反射光は、1/4波長板8→フォーカス機構4(可動レンズ6→固定レンズ5)を介した後、偏光ビームスプリッタ3に入射する。
【0078】
ここで、このように偏光ビームスプリッタ3に入射する録再用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板8による作用と記録層Lrでの反射時の作用とにより、録再用レーザ1側から偏光ビームスプリッタ3に入射した録再用レーザ光(往路光)とはその偏光方向が90度異なるようにされる。この結果、上記のようにして入射した録再用レーザ光の反射光は、偏光ビームスプリッタ3にて反射される。
【0079】
このように偏光ビームスプリッタ3にて反射された録再用レーザ光の反射光は、シリンドリカルレンズ12→集光レンズ13を介して録再光用受光部14の受光面上に集光する。
録再光用受光部14は、複数の受光素子を備えて成り、これら受光素子が非点収差法によるフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号(プッシュプル信号)、RF信号(再生信号)の生成が可能となるように配置されている。
ここでは、録再光用受光部14が備えるそれぞれの受光素子による受光信号について、それらを包括して受光信号D_rpと表記している。
【0080】
また、図7に示す光学ピックアップOPにおいて、ギャップサーボ用レーザ光の光学系には、ギャップサーボ用レーザ15、コリメーションレンズ16、偏光ビームスプリッタ17、1/4波長板18、集光レンズ19、及びギャップサーボ用受光部20が設けられている。
【0081】
ギャップサーボ用レーザ15より出射されたギャップサーボ用レーザ光は、コリメーションレンズ16を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ17に入射する。偏光ビームスプリッタ17は、このようにギャップサーボ用レーザ15側から入射したギャップサーボ用レーザ光(往路光)は透過するように構成される。
【0082】
偏光ビームスプリッタ17を透過したギャップサーボ用レーザ光は、1/4波長板18を介してダイクロイックプリズム9に入射する。
先に述べたように、ダイクロイックプリズム9は、録再用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されているため、ギャップサーボ用レーザ光はダイクロイックプリズム9を透過し、対物レンズOLに入射する。
【0083】
ここで、後述もするように、ギャップ長が過大な状態(近接場結合が生じず対物レンズOLにより生成される光が光ディスクDに伝播しない状態)では、ギャップサーボ用レーザ光は対物レンズOLの端面(ハイパーレンズ部L2bの端面)にて全反射され、戻り光量は最大となる。一方、ギャップ長が適切な状態(近接場結合状態)では、その分、対物レンズOL端面での反射光量は減少し、戻り光量も減少することとなる。
ギャップ長サーボは、このようなギャップ長に相関した対物レンズOL端面からのギャップサーボ用レーザ光の反射光の光量変動を利用して行われるものである。
【0084】
対物レンズOL端面からのギャップサーボ用レーザ光の反射光(復路光)は、ダイクロイックプリズム9を透過した後、1/4波長板18を介して偏光ビームスプリッタ17に入射する。
【0085】
このように偏光ビームスプリッタ17に入射した復路光としてのギャップサーボ用レーザ光の反射光は、1/4波長板18の作用と対物レンズOLでの反射時の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90度異なるものとされ、従って復路光としてのギャップサーボ用レーザ光の反射光は偏光ビームスプリッタ17にて反射される。
【0086】
偏光ビームスプリッタ17にて反射されたギャップサーボ用レーザ光の反射光は、集光レンズ19を介してギャップサーボ光用受光部20の受光面上に集光する。
本例の場合、ギャップサーボ用受光部20は複数の受光素子を備えて構成される。ギャップサーボ用受光部20が有する複数の受光素子による受光信号については、これらを包括して受光信号D_svと表記する。
【0087】
[3-2.ドライブ装置の全体的な内部構成]
図9は、実施の形態の光学ドライブ装置の全体的な内部構成を示している。
なお図9において、光学ピックアップOPの内部構成については、先の図7に示した構成のうち録再用レーザ1、レンズ駆動部7、トラッキング方向アクチュエータ10、光軸方向アクチュエータ11のみを抽出して示している。
また図9においては、スピンドルモータ30の図示は省略している。
【0088】
先ず、光学ドライブ装置には、記録処理部52が設けられる。
記録処理部52に対しては、光ディスクDに記録すべきデータ(記録データ)が入力される。記録処理部52は、入力された記録データに対して例えばエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化を施すなどして、光ディスクDに実際に記録される例えば「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。
記録処理部52は、上記記録変調データ列に応じた記録パルス信号を生成し、該記録パルス信号に基づき光学ピックアップOP内の録再用レーザ1を発光駆動する。
【0089】
また光学ドライブ装置には、光ディスクDに記録された情報を再生するための構成として、マトリクス回路31、及び再生処理部53が設けられる。
マトリクス回路31は、先の図7に示した録再光用受光部14からの受光信号D_rpに基づいて必要な信号を生成する。
具体的に、マトリクス回路31は、上記受光信号D_rpとしての複数の受光素子からの受光信号に基づき、RF信号(再生信号)、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEを生成する。RF信号としては和信号を生成し、フォーカスエラー信号FEは非点収差法に対応した演算により生成する。またトラッキングエラー信号TEとしてはプッシュプル信号を生成する。
なお、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEの生成手法については上記に限定されるべきものでなく、他の手法を採ることもできる。例えばトラッキングエラー信号TEについてはDPP法(差動プッシュプル法)により生成することもできる。
【0090】
マトリクス回路31により生成されたRF信号は、再生処理部34に供給される。
再生処理部34は、RF信号について、記録変調符号の復号化やエラー訂正処理など上述した記録データを復元するための再生処理を行い、上記記録データを再生した再生データを得る。
【0091】
また、光学ドライブ装置において、フォーカスサーボ回路32、フォーカスドライバ33、トラッキングサーボ回路34、第1トラッキングドライバ39、第2トラッキングドライバ40、及びスライド移送・偏芯追従機構50は、録再用レーザ光についてのフォーカスサーボ、トラッキングサーボ、及び光学ピックアップOP全体のスライドサーボを実現するために設けられる。
【0092】
先ず、フォーカスサーボ回路32には、マトリクス回路31により生成されたフォーカスエラー信号FEが入力される。
フォーカスサーボ回路32は、フォーカスエラー信号FEに対しサーボ演算(位相補償やループゲイン付与)を行ってフォーカスサーボ信号FSを生成する。
フォーカスドライバ33はフォーカスサーボ回路33から入力されたフォーカスサーボ信号FSに基づくフォーカスドライブ信号FDを生成し、当該フォーカスドライブ信号FDにより光学ピックアップOP内のレンズ駆動部7を駆動する。
これにより、録再用レーザ光の焦点が記録層Lrに一致するように制御される。
【0093】
スライド移送・偏芯追従機構50は、光学ピックアップOP全体をトラッキング方向に変位可能に保持する。
このスライド移送・偏芯追従機構50は、例えばCDやDVDなどの従来の光ディスクシステムに設けられるスレッド機構が備えるモータよりも高速な応答性を有する動力部を備えて構成され、光学ピックアップOPを、シーク時のスライド移送のために変位させるのみでなく、トラッキングサーボがオンの状態においてディスク偏芯に伴い生じるレンズシフトの抑制のためにも変位させる。
本例の場合、スライド移送・偏芯追従機構50はリニアモータを備え、当該リニアモータによる駆動力を光学ピックアップOPをトラッキング方向に変位可能に保持する機構部に与えるように構成されている。
【0094】
ここで、本実施の形態の光学ドライブ装置において、上記のように光学ピックアップOP全体をディスク偏芯にも追従させるように駆動するものとしているのは、以下のような事情による。
【0095】
図10は、実施の形態の対物レンズOLを用いた場合の視野範囲について説明するための図である。
図10(a)は、対物レンズOLに形成されるハイパーレンズ部L2bと光ディスクDとの配置関係(光軸方向での配置関係)を示しており、図10(b)は、図10(a)におけるハイパーレンズ部L2bの対物側の面(つまり対物レンズOLの対物側端面)と光ディスクDとの間のギャップGの部分の拡大図を示している。
【0096】
図10(a)を参照して理解されるように、対物レンズOLの視野範囲(視野全幅)は、ハイパーレンズ部L2bの対物側に形成された、半径Riによる球面の形状を有する部分(以下、この部分を対物側球面部分と称する)の全幅と一致する。
【0097】
そして、図10(b)を参照して分かるように、上記のような対物側球面部分の全幅としての対物レンズOLの視野全幅は、ハイパーレンズ部L2bの対物側に形成された平面部と対物側球面部分の頂点位置との光軸方向における距離をαとおいたとき、当該αと、半径Riとを用いて算出することができる。
具体的には、図10(b)に示されるような半径Ri、「Ri−α」、視野半幅aで形成される三角形を想定し、半径Riと距離αとから上記視野半幅aを求めることで算出できる。
ここで、半径Riを先に述べた120nmとし、距離α=5nmとすると、この場合の視野全幅は、視野半幅a=34nmより68nmとなる。
【0098】
このようにハイパーレンズ部L2bを備える対物レンズOLを用いるシステムでは、BDシステムや従来SILのシステムとの比較で、視野範囲が比較的狭いものとなる。
この点に鑑み、実施の形態の光学ドライブ装置では、光学ピックアップOPをディスク偏芯成分に追従させるものとしている。
【0099】
説明を図9に戻す。
トラッキングサーボ回路34に対しては、マトリクス回路31で生成されたトラッキングエラー信号TEが入力される。
トラッキングサーボ回路34内には、図中のハイパスフィルタ(HPF)35とサーボフィルタ36とによる第1のトラッキングサーボ信号生成系と、ローパスフィルタ(LPF)37とサーボフィルタ38とによる第2のトラッキングサーボ信号生成系とが形成される。
第1のトラッキングサーボ信号生成系が対物レンズOLを保持するトラッキング方向アクチュエータ10側に対応するものとなり、第2のトラッキングサーボ信号生成系が光学ピックアップOPを保持するスライド移送・偏芯追従機構50側に対応するものとなる。
【0100】
トラッキングサーボ回路34内において、トラッキングエラー信号TEは、ハイパスフィルタ35とローパスフィルタ37とに分岐して入力される。
ハイパスフィルタ35は、トラッキングエラー信号TEの所定のカットオフ周波数以上の成分を抽出してサーボフィルタ36に出力する。
サーボフィルタ36は、ハイパスフィルタ35の出力信号についてサーボ演算を行って第1のトラッキングサーボ信号TS-1を生成する。
また、ローパスフィルタ37はトラッキングエラー信号TEの所定のカットオフ周波数以下の成分を抽出してサーボフィルタ38に出力する。
サーボフィルタ38はローパスフィルタ37の出力信号についてサーボ演算を行って第2のトラッキングサーボ信号TS-2を生成する。
【0101】
第1トラッキングドライバ39は、第1のトラッキングサーボ信号TS-1に基づき生成した第1のトラッキングドライブ信号TD-1によってトラッキング方向アクチュエータ10を駆動する。
【0102】
また第2トラッキングドライバ40は、第2のトラッキングサーボ信号TS-2に基づき生成した第2のトラッキングドライブ信号TD-2によってスライド移送・偏芯追従機構50を駆動する。
【0103】
なお、図示による説明は省略するが、トラッキングサーボ回路34は、例えば光学ドライブ装置の全体制御を行う制御部より目標アドレスが指示されることに応じて、トラッキングサーボループをオフとして、第1トラッキングドライバ39や第2トラッキングドライバ40にトラックジャンプやシーク移動のための指示信号を与えるように構成されている。
【0104】
ここで、トラッキングサーボ回路34において、ローパスフィルタ37のカットオフ周波数は、ディスク偏芯周期(ディスク偏芯に伴い光スポット位置とトラック位置との位置関係が変化する周期)以上の周波数に設定される。これにより、スライド移送・偏芯追従機構50が、光学ピックアップOPをディスク偏芯に追従させるように駆動することができる。
つまりこの結果、ディスク偏芯に伴う対物レンズOLのレンズシフトの量を大幅に抑えることができ、録再用レーザ光が図10に示した視野範囲(視野全幅)から外れないようにすることができる。換言すれば、ディスク偏芯に依って録再用レーザ光が視野範囲から外れて記録/再生を行うことができなくなってしまうといった事態の発生を防止することができるものである。
【0105】
また、光学ドライブ装置には、ギャップ長サーボを実現するための構成として、信号生成回路41、ギャップ長サーボ回路42、第1光軸方向ドライバ47、第2光軸方向ドライバ48、引込制御部49、及び面振れ追従機構51が設けられている。
【0106】
先ず、面振れ追従機構51は、光学ピックアップOPを保持するスライド移送・偏芯追従機構50を、光軸方向(フォーカス方向)に変位可能に保持する。
本例の場合、当該面振れ追従機構51もリニアモータを備えて成り、比較的高速な応答性を有するようにされている。面振れ追従機構51は、当該リニアモータの動力によりスライド移送・偏芯追従機構50を光軸方向に駆動し、これによって光学ピックアップOPを光軸方向に変位させる。
なお、当該面振れ追従機構51とスライド移送・偏芯追従機構50との位置関係についても、先のトラッキング方向アクチュエータ10と光軸方向アクチュエータ11との関係と同様に、それらの関係を入れ替えたとしても得られる作用は同様となる。
【0107】
信号生成回路41は、図7に示したギャップサーボ用受光部D_sv(複数の受光素子からの受光信号)に基づき、ギャップ長サーボにおけるエラー信号として機能する信号を生成する。具体的には、和信号(全光量信号)sumを生成する。
【0108】
ここで、図11は、ギャップ長と対物レンズOLからの戻り光量(ハイパーレンズ部L2bの対物側端面からの戻り光量)との関係について説明するための図である。
なおこの図11では一例として、シリコン(Si)ディスクを用いた場合におけるギャップ長と戻り光量との関係を示しているが、本例のように相変化材料による記録層Lrとする場合においてもこの図11とほぼ同様の関係が得られる。
【0109】
この図11に示されるように、対物レンズOLからの戻り光量は、ギャップ長が過大で近接場結合が生じない領域では最大値となる。
これに対し、およそ波長の1/4程度となるギャップ長=50nm近傍以下の領域では、近接場結合の作用により、戻り光量はギャップ長が短くなるに連れて徐々に減少していくものとなる。
【0110】
ここで、近接場結合による作用を優先するのであれば、ギャップ長は短いほど有利となるが、ギャップ長を短くすると対物レンズOLと光ディスクDとの衝突や摩擦が問題となる。このため、ギャップ長としては近接場結合が生じる範囲内で光ディスクDとの間隔が或る程度空けられるようにして設定される。
この点を踏まえ、本例においては、ギャップ長(ギャップG)を先に例示したようにG=20nmに設定している。
【0111】
図11において、例えばこのようにギャップG=20nmとする場合の戻り光量の目標値は、およそ0.08程度となっている。
ギャップ長サーボを行うにあたっては、予めギャップGの値から戻り光量についての目標値を求めておく。ギャップ長サーボは、検出した戻り光量がこのように予め求めておいた目標値で一定となるようにして行われる。
【0112】
説明を図9に戻す。
信号生成回路41により生成された和信号sumは、ギャップ長サーボ回路42と共に引込制御部49に入力される。
【0113】
ギャップ長サーボ回路42には、ハイパスフィルタ43とサーボフィルタ44とによる第1のギャップ長サーボ信号生成系と、ローパスフィルタ45とサーボフィルタ46とによる第2のギャップ長サーボ信号生成系とが形成される。
第1のギャップ長サーボ信号生成系は光軸方向アクチュエータ11に対応するものとなり、第2のギャップ長サーボ信号生成系が面振れ追従機構51に対応する。
【0114】
ハイパスフィルタ43は、和信号sumを入力し、当該和信号sumの所定のカットオフ周波数以上の成分を抽出してサーボフィルタ44に出力する。
サーボフィルタ44は、ハイパスフィルタ43の出力信号についてサーボ演算を行って第1のギャップ長サーボ信号GS-1を生成する。
また、ローパスフィルタ45は、和信号sumを入力し、当該和信号sumの所定のカットオフ周波数以下の成分を抽出してサーボフィルタ46に出力する。
サーボフィルタ46はローパスフィルタ46の出力信号についてサーボ演算を行って第2のギャップ長サーボ信号GS-2を生成する。
【0115】
ここで、ギャップ長サーボ回路42には、ギャップGに基づいて予め求められた和信号sumについての目標値(つまりギャップGのときの和信号sumの値)が設定されており、サーボフィルタ44、46のそれぞれは、上記サーボ演算により、和信号sumの値を当該目標値とするためのギャップ長サーボ信号GS-1、GS-2をそれぞれ生成する。
【0116】
第1光軸方向ドライバ47は、第1のギャップ長サーボ信号GS-1に基づいて生成した第1の光軸方向ドライブ信号GD-1によって光軸方向アクチュエータ11を駆動する。
【0117】
また第2光軸方向ドライバ48は、第2のギャップ長サーボ信号GS-2に基づいて生成した第2の光軸方向ドライブ信号GD-2によって面振れ追従機構51を駆動する。
【0118】
ここで、上記により説明したギャップ長サーボ回路42において、ローパスフィルタ45のカットオフ周波数は、ディスクの面振れ周期以上の周波数に設定される。これにより、面振れ追従機構51によって光学ピックアップOPをディスク面振れに追従させるように変位させることができる。
このように光学ピックアップOP全体が面振れに追従するように駆動されることで、対物レンズOLの光ディスクDへの衝突の防止を図ることができる。
【0119】
引込制御部49は、ギャップ長サーボの引き込み制御を行うために設けられる。
この引込制御部49には、予めギャップGに基づいて求められた和信号sumについての目標値(ギャップGのときの和信号sumの値)が設定されている。引込制御部49は、このように設定された和信号sumの目標値に基づき、以下のようにしてギャップ長サーボの引き込み制御を行う。
先ずは、ギャップ長サーボがオフの状態において、信号生成回路41から入力される和信号sumの値と上記目標値との差分を計算する。そして、この差分の値が予め設定された引き込み範囲内の値であるか否かを判定し、引き込み範囲内でないとした場合は上記差分に応じた引き込み用波形(差分を減少させる方向に和信号sumを変化させるための信号)を生成し、これを第1光軸方向ドライバ47、第2光軸方向ドライバ48に与える。これにより、和信号sumの値が引き込み範囲内に収まるように制御することができる。
そして、上記差分の値が上記引き込み範囲内に入ったとした場合は、ギャップ長サーボ回路42にサーボループ(第1及び第2のギャップ長サーボ信号生成系の双方)をオンとするように指示を行う。これにより、引き込み制御が完了となる。
【0120】
以上で説明した光学ドライブ装置によれば、対物レンズOLを用いて光ディスクDに対し従来よりも高記録密度な記録を行うことができ、光ディスクDの大記録容量化を図ることができる。また同時に、対物レンズOLを用いて高記録密度で記録された情報の再生を行うことができる。
【0121】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としては上記により説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、これまでの説明では、ハイパーレンズ部L2bの全体的な形状を略半球状(半球に満たない形状)とする場合を例示したが、半球状とすることもできる。
【0122】
また、SIL部L2aとして、超半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを用いる場合を例示したが、半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを用いることもできる。
【0123】
また、これまでの説明では、記録再生の対象とする光記録媒体が相変化材料による記録層を有するものとされる場合を例示したが、本発明は、相変化材料以外で構成された記録層を有する光記録媒体とする場合にも好適に適用することができる。
また本発明は、例えば下記の参考文献3に開示されるような、いわゆるビットパターンドメディアによる光記録媒体とする場合にも好適に適用できる。
参考文献3・・・特開2006−73087号公報
【0124】
また、これまでの説明では、本発明の対物レンズを、光記録媒体についての記録/再生を行うシステムが有する対物レンズに適用する場合を例示したが、本発明の対物レンズは、例えば光学顕微鏡における対物レンズなど、光記録媒体の記録/システム以外の他の用途にも好適に適用できるものである。
【符号の説明】
【0125】
OL 対物レンズ、L1 後玉レンズ、L2 先玉レンズ、L2a SIL部、L2b ハイパーレンズ部、BS 基板、ss 高屈折率接着材料、Hbl ソリッドイマージョンレンズ、1 録再用レーザ、2,16 コリメーションレンズ、3,17 偏光ビームスプリッタ、4 フォーカス機構、5 固定レンズ、6 可動レンズ、7 レンズ駆動部、8,18 1/4波長板、9 ダイクロイックプリズム、10 トラッキング方向アクチュエータ、11 光軸方向アクチュエータ、12 シリンドリカルレンズ、13,19 集光レンズ、14 録再光用受光部、15 ギャップサーボ用レーザ、20 ギャップサーボ用受光部、31 マトリクス回路、32 フォーカスサーボ回路、33 フォーカスドライバ、34 トラッキングサーボ回路、35,43 ハイパスフィルタ、36,38,44,46 サーボフィルタ、37,45 ローパスフィルタ、39 第1トラッキングドライバ、40 第2トラッキングドライバ、41 信号生成回路、42 ギャップ長サーボ回路、47 第1光軸方向ドライバ、48 第2光軸方向ドライバ、50 スライド移送・偏芯追従機構、51 面振れ追従機構、52 記録処理部、53 再生処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソリッドイマージョンレンズを備える対物レンズと、上記ソリッドイマージョンレンズの製造方法とに関する。また、上記対物レンズを備えて光記録媒体に対する情報記録又は上記光記録媒体に記録された情報の再生を行う光学ドライブ装置に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2010−33688号公報
【特許文献2】特開2009−134780号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により情報の記録及び/又は記録情報の再生が行われる光記録媒体として、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる光ディスク記録媒体(単に光ディスクとも表記する)が広く普及している。
【0004】
これらの光ディスクにおいては、徐々に記録再生光の短波長化・対物レンズの高開口数(NA)化が図られてきており、それによって記録再生のための集光スポットサイズの縮小化が実現され、大記録容量化・高記録密度化が達成されてきた。
【0005】
但し、これら従来の光ディスクでは、対物レンズと光ディスクとの間の媒質が空気であるため、集光スポットのサイズ(径)を左右する開口数NAを「1」より大とすることができないことが知られている。
具体的に、光ディスク上に対物レンズを介して照射される光のスポットのサイズは、当該対物レンズの開口数をNAobj、光の波長をλとおくと、およそ
λ/NAobj
で与えられるものである。
このとき、開口数NAobjは、対物レンズと光ディスクとの間に介在する媒質の屈折率をnA、対物レンズの周辺光線の入射角度をθとしたとき、
NAobj=nA×sinθ
で表されるものとなる。
この式を参照して理解されるように、媒質が空気(nA=1)である限り、NAobj>1とすることはできない。
【0006】
そこで、例えば上記特許文献1や特許文献2などに開示されるような、近接場光(エバネッセント光)を利用してNAobj>1を実現する記録再生方式(ニアフィールド記録再生方式)が提案されている。
【0007】
周知のようにニアフィールド記録再生方式では、光ディスクに対して近接場光を照射して情報の記録/再生を行うようにされるが、このとき、光ディスクに対し近接場光を照射するための対物レンズとしては、ソリッドイマージョンレンズ(Solid Immersion Lens、以下SILと略称する)が用いられる(例えば特許文献1、特許文献2を参照)。
【0008】
図12は、SILを用いた従来のニアフィールド光学系について説明するための図である。
なお、この図12では、SILとして超半球状のSIL(超半球SIL)を用いた例を示している。具体的に、この場合の超半球SILは、対物側(つまり記録/再生対象とする記録媒体と対向する側)の形状が平面形状とされ、それ以外の部分が超半球状とされている。
【0009】
この場合の対物レンズは、上記超半球SILを先玉レンズとして有する2群レンズとして構成される。図示されるように、後玉レンズとしては、両面非球面レンズが用いられている。
【0010】
ここで、図12に示す構成による対物レンズの実効的な開口数NAは、入射光の入射角度をθi、超半球SILの構成材料の屈折率をnSILとすると、
NA=nSIL2×sinθi
で表される。
この式より、図12に示す対物レンズの構成とすれば、実効的な開口数NAは、SILの屈折率nSILを「1」よりも高く(空気の屈折率よりも高く)設定することで、「1」より大にできることが分かる。
従来において、SILの屈折率としては例えばnSIL=2程度が設定され、これにより実効的な開口数NAとして1.8程度が実現されている。
【0011】
ここで、ニアフィールド光学系としては、上記のような超半球SILを用いる構成のみでなく、半球状のSIL(半球状SIL)を用いたものであってもよい。
図12に示す超半球SILに代えて半球状SILを用いた対物レンズとした場合、その実効的な開口数NAは、
NA=nSIL×sinθi
となる。この式より、半球状SILを用いた場合も、SILの構成材料としてnSIL>1の高屈折率材料を用いることで、NA>1を実現可能であることが分かる。
【0012】
このとき、先の超半球SILの場合の式と比較すると、超半球状の場合と半球状の場合とでSILの構成材料(屈折率)を同一とするときには、超半球SILを用いる場合の方が、実効的なNAをより高く設定できることが分かる。
【0013】
なお確認のため述べておくと、SILにより生成されるNA>1の光(近接場光)を記録媒体に伝播(照射)して記録再生を行うためには、SILの対物面と記録媒体とを非常に近接させて配置する必要がある。このときのSILの対物面と記録媒体(記録面)との間隔は、ギャップと呼ばれている。
ニアフィールド記録再生方式において、ギャップの値としては、少なくとも光の波長の1/4程度以下に抑えることが要請される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のようにして、半球状や超半球状によるSILを備えた対物レンズを用いることで、開口数NAを「1」より大に設定することができ、その結果、スポット径を従来の光ディスクシステムでの限界を超えて縮小化できる。つまりその分、記録密度の向上、ひいては大記録容量化が図られる。
【0015】
ここで、高記録密度化や大記録容量化については、その程度が大であることに越したことはなく、さらなる向上が要請されていると言うことができる。
【0016】
本発明はこのような点に鑑み為されたもので、従来のSILを用いた対物レンズとする場合よりも実効的な開口数NAの向上を図り、さらなる高記録密度化、大記録容量化を達成することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる課題の解決のため、本発明では、対物レンズとして以下のように構成することとした。
つまり、本発明の対物レンズは、超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを備えるものである。
そして、上記ソリッドイマージョンレンズが、その対物側に面した一部の領域に、誘電率が正である第1の薄膜と誘電率が負である第2の薄膜との交互積層が当該ソリッドイマージョンレンズの上記対物側の外部に設定した所定の基準点を中心とする半径Riによる球面の形状に沿って上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われて成るハイパーレンズ部が一体的に形成されているものである。
【0018】
また、本発明では、本発明の対物レンズが備えるソリッドイマージョンレンズの製造方法として、以下の第1、第2の方法を提案する。
つまり、第1のレンズ製造方法は、超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズの対物側の面に、所定の半径Roによる球面の一部と同形状の凹部を形成する凹部形成工程と、上記凹部形成工程により形成した上記凹部に対して、誘電率が正の第1の薄膜と誘電率が負の第2の薄膜とを上記凹部の形状に沿って交互に積層する積層工程とを有するものである。
【0019】
また、第2のレンズ製造方法は、以下の通りとなる。
つまり、所定の半径Riによる球面の一部と同じ表面形状を有する凸部が形成された基板における上記凸部を対象として、誘電率が正の第1の薄膜と誘電率が負の第2の薄膜とを上記凸部の形状に沿って交互に積層する積層工程を有する。
また、超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズの対物側の面と、上記基板の上記第1及び第2の薄膜が交互積層された側の面とを対向させた状態で、上記ソリッドイマージョンレンズと上記基板とを高屈折率接着材料により接着する接着工程を有する。
また、上記接着工程により接着した上記基板を剥離する基板剥離工程を有するものである。
【0020】
また、本発明では光学ドライブ装置として以下のように構成することとした。
すなわち、超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを備えると共に、上記ソリッドイマージョンレンズの対物側に面した一部の領域に、誘電率が正である第1の薄膜と誘電率が負である第2の薄膜との交互積層が当該ソリッドイマージョンレンズの上記対物側の外部に設定した所定の基準点を中心とする半径Riによる球面の形状に沿って上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われて成るハイパーレンズ部が一体的に形成されている対物レンズを備える。
また、上記対物レンズを介して光記録媒体に対する光照射を行うことで、上記光記録媒体に対する情報の記録又は上記光記録媒体の記録情報の再生を行う記録/再生部を備えるようにした。
【0021】
ここで、後述もするように、誘電率が正の薄膜と負の薄膜とを交互に積層したハイパーレンズ部は、ソリッドイマージョンレンズ部(上記ソリッドイマージョンレンズにおけるハイパーレンズ部以外の部分)によって得られるNA>1(NA:開口数)の光を伝播することができる。
なお且つ、上記の形状によるハイパーレンズ部によれば、ソリッドイマージョンレンズ部で生成されるNA>1の光による極小スポットを、上記半径Riと上記半径Roとの比率に応じた分だけ縮小化することができる。
このように、上記ハイパーレンズ部によれば、ソリッドイマージョンレンズ部によって生成されるNA>1の光で実現される極小光スポットをさらに縮小化しつつ、これを伝播して上記光記録媒体に照射されるようにできる。
この結果、本発明の対物レンズによれば、従来のソリッドイマージョンレンズを用いた場合よりも小さなスポット径での記録を実現できる。
また、上記の形状によるハイパーレンズ部は、対物側からの戻り光について、その光束を上記半径Riと上記半径Roとの比率に応じた分だけ拡大化することもできる。つまりハイパーレンズ部は、光束を可逆的に縮小/拡大化できるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の対物レンズによれば、従来のソリッドイマージョンレンズ(SIL)を用いた場合よりも小さなスポット径での記録を実現できる。つまりこの結果、従来のSILを用いた対物レンズとする場合よりも高記録密度化、大記録容量化が図られる。
【0023】
また、本発明の対物レンズにおいて、ハイパーレンズ部は、光束を可逆的に縮小/拡大化することができるので、本発明の対物レンズを用いて極小スポットにより記録したマーク(情報)について、これを適正に読み出すことができる。
これにより、従来の光ディスクシステムの場合と同様に、記録再生時で共通の光学系を用いるシステムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態の対物レンズについて説明するための図である。
【図2】ハイパーレンズ部の拡大断面図である。
【図3】ハイパーレンズを別体で設けた対物レンズの構成を示した図である。
【図4】実施の形態の対物レンズが奏する効果を実証するための具体的な計算結果を示した図である。
【図5】実施の形態のレンズ製造方法のうちの第1の製造方法について説明するための図である。
【図6】実施の形態のレンズ製造方法のうちの第2の製造方法について説明するための図である。
【図7】実施の形態の光学ドライブ装置の主に光学ピックアップの内部構成を示した図である。
【図8】実施の形態で記録再生の対象とする光記録媒体の断面構造を示した図である。
【図9】実施の形態の光学ドライブ装置の全体的な内部構成を示した図である。
【図10】実施の形態の対物レンズを用いた場合の視野範囲について説明するための図である。
【図11】ギャップ長と対物レンズからの戻り光量との関係について説明するための図である。
【図12】ソリッドイマージョンレンズを用いたニアフィールド光学系について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行う。
<1.実施の形態の対物レンズ>
<2.製造方法>
[2-1.第1の製造方法]
[2-2.第2の製造方法]
<3.ドライブ装置>
[3-1.光学ピックアップの構成]
[3-2.ドライブ装置全体の内部構成]
<4.変形例>
【0026】
<1.実施の形態の対物レンズ>
図1は、本発明の対物レンズの一実施形態である対物レンズOLの構成について説明するための図である。
なおこの図1では、対物レンズOLの断面を示している。
また図1では、対物レンズOLに対する入射光Liとその光軸axsも併せて示している。
【0027】
図示するように本実施の形態の対物レンズOLは、後玉レンズL1と先玉レンズL2とを有する2群レンズとされる。
この場合、後玉レンズL1としては両面非球面レンズが用いられる。
後玉レンズL1は、入射光Liに基づく収束光を先玉レンズL2に対し入射する。
【0028】
先玉レンズL2は、SIL部(SIL:Solid Immersion Lens:ソリッドイマージョンレンズ)L2aに対し、ハイパーレンズ部L2bが一体的に形成されたレンズとなる。換言すれば、先玉レンズL2は、ソリッドイマージョンレンズの一部に対してハイパーレンズ部L2bが形成されたものとも言うことができる。
本例の場合、先玉レンズL2に用いるSIL(SIL部L2a)は、図のように超半球形状を有するSILとされる。具体的に本例のSIL部L2aは、その対物側の面が平面とされた超半球状のSILとされる。
【0029】
なお確認のため述べておくと、「対物側」とは、対物レンズによる光照射の対象とする物体の側を意味するものである。本例の対物レンズOLは、光記録媒体に対する記録/再生システムに適用されるので、対物側と言ったときは、光記録媒体の記録面と向き合う側を意味するものとなる。
【0030】
ソリッドイマージョンレンズとしてのSIL部L2aは、少なくとも屈折率が1より大となる高屈折率材料で構成されており、後玉レンズL1からの入射光に基づき、開口数NA>1による近接場光(エバネッセント光)を生成する。
そして、先玉レンズL2において、ハイパーレンズ部L2bは、図のようにSIL部L2aにおける対物側に面する部分に形成されている。このような構成により、ハイパーレンズ部L2bには、SIL部L2aが生成した近接場光が入射されるようになっている。
図のようにハイパーレンズ部L2bは、その全体的な形状として、略半球状の形状を有する。
【0031】
図2は、ハイパーレンズ部L2bの拡大断面図である。
図のようにハイパーレンズ部L2bは、複数の薄膜を積層した構造を有する。
具体的に、ハイパーレンズ部L2bは、誘電率εが正(ε>0)となる第1の薄膜と、誘電率εが負(ε<0)となる第2の薄膜とを交互に積層して形成されたものとなる。
【0032】
ここで、誘電率εが負の材料は、プラズモニック材料(Plasmonic Material)とも呼ばれる。プラズモニック材料の例としては、例えばCu、Ag、Au、Alなどを挙げることができる。
また、誘電率εが正の材料としては、例えばSiO2、SiN、C、ガラス、ポリマー、金属酸化物(Metal Oxide)、GaNを挙げることができる。
ここで、誘電率εは、使用する光の波長λに応じて変化するものである。従って第1の薄膜、第2の薄膜の材料は、所期の誘電率εが得られるべく、波長λに応じて選定すればよい。
本例の場合、第1の薄膜の材料としてAl2O3を、また第2の薄膜の材料としてAgをそれぞれ選定するものとしている(後述もするように本例の場合、波長λ=405nmを前提としている)。
【0033】
図2において、第1の薄膜と第2の薄膜との積層は、ハイパーレンズ部L2bの対物側の外部(つまり先玉レンズL2の対物側の外部と同じ)に設定した所定の基準点Prを中心とする半径Riによる球面に沿って、上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われている。このとき、第1の薄膜と第2の薄膜との積層は球面を基準に行われるので、各薄膜の積層は、図のようにドーム状に行われるものとなる。結果、ハイパーレンズ部L2bの断面形状としては、図のように年輪のような形状になる。
【0034】
なお確認のため述べておくと、前述のようにハイパーレンズ部L2bは、その全体的な形状としては略半円形状を有するものであり、従ってその対物側の面形状は、上記半径Riによる球面の形状を有する部分以外は、平面形状とされる。このようにハイパーレンズ部L2bの対物側の面をほぼ平面形状としているのは、当該ハイパーレンズ部L2bが一体形成されたSIL部L2aの対物側の面形状が平面形状とされていることに対応させるためである。
【0035】
ここで、第1の薄膜と第2の薄膜とを積層した合計の層数は、3〜100000とされればよい。具体的に、本例の場合は34層としている。
また、各薄膜の膜厚は4nm〜40nmとされればよく、本例の場合、第1,第2の薄膜とも10nmを設定している。
【0036】
上記のようにハイパーレンズ部L2bは、ε>0による第1の薄膜とε<0による第2の薄膜とを交互に積層した構造を有する。このような構造により、ハイパーレンズ部L2bにおいては、薄膜の積層方向に平行な方向おいて、NA>1の光(近接場光)を伝播することができる。つまりこのことで、SIL部L2aが生成したNA>1の光を伝播して、対物側に出射することができる。
また、上記により説明したハイパーレンズ部L2bの積層構造によれば、半径Roの球面側から入射した光を半径Riの球面側より出射する際に、光の光束(つまり光のスポット径)を、上記半径Riと半径Roとの比率(Ro/Ri)に応じた分だけ縮小化することができる。
【0037】
これらの作用により、上記ハイパーレンズ部L2bによっては、SIL部L2aによって生成されるNA>1の光で実現される極小光スポットをさらに縮小化することができ、なお且つ、これを伝播して光記録媒体に対して照射することができる。
この結果、本実施の形態の対物レンズOLによれば、従来のソリッドイマージョンレンズを用いた対物レンズとする場合よりも小さなスポット径での記録を実現できる。つまりその分、従来よりも高記録密度化が図られ、大記録容量化が図られるものである。
【0038】
また、図2に示す構造を有するハイパーレンズ部L2bによれば、対物側からの戻り光について、その光束を上記半径Riと上記半径Roとの比率に応じた分だけ拡大化することもできる。つまりハイパーレンズ部L2bは、光束を可逆的に縮小/拡大化することができるものである。
このような可逆的縮小/拡大化が可能なハイパーレンズ部L2bを有する対物レンズOLによれば、当該対物レンズOLを用いて極小スポットにより記録したマーク(情報)について、その読み出しについても適正に行うことができる。
つまりこの結果、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などの従来の光ディスクシステムの場合と同様に、共通の光学系を用いた記録再生を実現することができる。換言すれば、記録時と再生時とで、それぞれ異なる光学系を用いるといった複雑な構成を採らずに済むものとできる。
【0039】
ところで、本実施の形態では、ハイパーレンズ部L2bをSIL部L2aに対して一体的に形成するものとしているが、上記で説明したようなハイパーレンズ部L2bによるスポット径のさらなる縮小化作用、及び可逆的な縮小/拡大化作用を得るとしたときには、例えば図3に示されるように、従来と同様のSILとした先玉レンズL2’と、ハイパーレンズ部L2bと同様の構造を有するハイパーレンズL2b’とを、別体に設けた構成とすることも考えられ得る。
しかしながら、このようにSILとしての先玉レンズL2’とハイパーレンズ部L2b’とを別体で設けた場合には、先玉レンズL2’とハイパーレンズL2b’とが接する点以外の領域での媒質が空気とされるため、先玉レンズL2’からハイパーレンズL2b’への光の入射の際に、光の反射ロスが生じてしまう。このとき、SILとしての先玉レンズL2’及びハイパーレンズL2としては共に高屈折率材料で構成されるため、このような反射によるロスは非常に大きなものとなる。
【0040】
本実施の形態のようにハイパーレンズ部L2bをSILに一体的に形成する構成とすれば、かかる問題の発生を効果的に回避することができ、光の利用効率を格段に高めることができる。
【0041】
図4は、上記により説明した実施の形態の対物レンズOLが奏する効果を実証するための具体的な計算結果を示している。
この図4では、BDシステム、従来SILのシステム、及び実施の形態(図中実施例1、実施例2)の対物レンズOLを用いたシステムの別ごとに、波長λ(nm)、後玉NA(NAb)、先玉屈折率(n)、縮小/拡大倍率(Ro/Ri)、実効NA、スポット径を表すλ/NA(nm)、作動距離(記録媒体との距離:ギャップ)、プリグルーブ形態、トラックピッチTp(nm)、変調方式、チャンネルの各条件を示すと共に、最短マーク長(nm)、ビット長(nm/bit)、記録密度(Gbpsi)、及び記録容量(GB)についての計算結果を示している。
なお図4において、「従来SIL」のシステムとは、先の図12に示した超半球状のソリッドイマージョンレンズを用いたシステムを指す。
また図4において、「チャンネル」は、採用するPR(Partial Response)のクラスの別を表したものである。
また、「記録容量」は、12cmディスクとした場合の記録容量を指す。
ここで、実施の形態のシステムとして、実施例1と実施例2のシステムの差は、主に後玉レンズL1のNAの差と、先玉レンズL2の屈折率nの差となる。
【0042】
なお、この図4に示される以外の条件として、実施例1のシステムでは、図1に示した後玉レンズL1の厚さ(光軸axsに平行な方向の長さ)T_L1、SIL部L2aの厚さT_L2、SIL部L2aの半径R、及び後玉レンズL1と先玉レンズL2との間のスペース(後玉レンズL1の対物側面の頂点からSIL部L2aの超半球面の頂点までの距離)T_sを、以下のように設定した。
T_L1=1.7mm
T_L2=0.7124mm
R=0.45mm
T_s=0.1556mm
また、後玉レンズL1への入射光Liは平行光とし、その径φは2.1mmとした。
【0043】
図4において、先ず波長λについては、BD、従来SIL、実施例1,2の各場合で共通のλ=405nmである。
また、後玉NAについては、BDの場合は対物レンズのNAであり0.85である。また、従来SIL、実施例1、実施例2の場合は、共に後玉レンズL1のNAであり、従来SIL及び実施例1の場合が0.43で同値であり、また実施例2の場合は0.37である。
【0044】
また、先玉レンズの屈折率nについては、BDの場合は該当無し、従来SIL及び実施例1の場合が共通でn=2.075となる。また実施例2の場合、n=2.36である。
【0045】
縮小/拡大倍率(Ro/Ri)については、実施例1、2が該当し、図のように共に6.58である。
なお本例の場合、半径Ri=120nm、半径Ro=790nmを設定するものとしており、その結果がRo/Ri=6.58となる。
【0046】
実効NAは、対物レンズの実効的な開口数NAであり、BDの場合は0.85、従来SILの場合は1.84となる。これに対し、実施例1の場合は12.1、実施例2の場合が13.7となる。
なお確認のため述べておくと、従来SIL(超半球状SIL)の場合における対物レンズの実効NAは、先に示した通り、
NA=nSIL2×sinθi
で求まる。
これに対し、実施例1、2の場合における対物レンズOLの実効NAは、
NA=n2×NAb×(Ro/Ri)
で計算されるものとなる。
【0047】
スポット径は、BDの場合が476nm、従来SILの場合が220nmとなる。これに対し、実施例1の場合は33nm、実施例2の場合には30nmとなる。
このようにして実施の形態の対物レンズOLによれば、従来SILの場合よりもスポット径の大幅な縮小化が図られる。
【0048】
また、作動距離は、BDの場合が0.3mmである。また、従来SIL及び実施例1,2としてのニアフィールド記録再生方式の場合、作動距離(つまりギャップG)は20nmとなる。
また、プリグルーブ形態は、各場合とも連続蛇行溝(ウォブリンググルーブ)で共通である。
【0049】
トラックピッチTpについては、BDの場合が320nm、従来SILの場合が160nmとされる。
そして、実施例1,2の場合は、前述のようにスポット径の縮小化が図られることで、トラックピッチTpは従来SILの場合よりも狭い24nmとなる。
【0050】
変調方式については、各場合とも1−7pp変調方式で共通である。
また、チャンネルについては、BDの場合は該当無し(PRML復号無し)としており、また従来SIL及び実施例1の場合は共にPR(1,2,2,1)を採用している。また実施例2ではPR(1,2,2,2,1)を採用している。
【0051】
最短マーク長は、BDの場合が149nm、従来SILの場合が66.5nmとなる。
これに対し、実施例1の場合の最短マーク長は10.1nm、実施例2の場合の最短マーク長は8.4nmにまで縮小化できる。
【0052】
ビット長については、BDの場合が112nm/bit、従来SILの場合が50nm/bitとなる。
これに対し、実施例1の場合は7.6nm/bit、実施例2の場合は6.2nm/bitと、従来SILの場合よりも大幅に短縮化される。
【0053】
記録密度については、BDの場合が18Gbpsi、従来SILの場合でも81Gbpsiである。これに対し、実施例1の場合には3510Gbpsi、実施例2の場合には4290Gbpsiとなる。
この結果より、実施の形態によれば、従来SILの場合よりも記録密度を数十倍向上できることが分かる。
【0054】
また、記録容量に関しては、BDの場合が25GB、従来SILの場合でも112GBである。これに対し実施例1、実施例2の場合、記録容量はそれぞれ4850GB、5930GBまで増大化する。
この結果からも理解されるように、実施の形態によれば、記録容量についても、従来SILの場合との比較で数十倍程度向上することができる。
【0055】
<2.製造方法>
[2-1.第1の製造方法]
続いて、上記により説明した実施の形態としての対物レンズOLが備える先玉レンズL2の製造方法について説明する。
以下では、先玉レンズL2の製造方法について、図5に示す第1の製造方法と、図6に示す第2の製造方法とを説明する。
【0056】
先ず、図5により第1の製造方法について説明する。
第1の製造方法は、SILの対物側の面にハイパーレンズ部L2bを形成するための凹部を形成しておき、当該凹部にドーム状の積層を行うことで、先玉レンズL2を製造するものである。
【0057】
具体的に、第1の製造方法では、図5(a)に示す凹部形成工程として、超半球状のSILが有する平面部に、ハイパーレンズ部L2bを形成するための略半球面の凹部を形成する。つまり、図1に示される形状によるSIL部L2aを生成することと同義である。
先の説明からも理解されるように、上記凹部は、その形状が、所定の基準点Prを中心とする球面の一部と同形状となるように形成する。
ここで、上記凹部を形成するための具体的な手法としては、例えば下記の参考文献1に記載されるようなHFエッチング(HF:フッ化水素)やCF4エッチングを挙げることができる。
参考文献1・・・特開平8−1810号公報
【0058】
図5(a)に示す凹部形成工程により凹部を形成した後は、図5(b)に示す積層工程により、上記凹部に対してε>0による第1の薄膜と、ε<0による第2の薄膜とを交互に複数層積層する。
先の説明からも理解されるように、各薄膜の積層は、上記凹部としての球面形状に沿っていわばドーム状に行う。このようなドーム状の積層を行った結果、最後に積層した薄膜の対物側の面形状が、予め上記基準点Prを中心として設定した所定の半径Riの球面と同形状となるようにする。所望の拡大/縮小率(Ro/Ri)を得るためである。
なお、第1、第2の薄膜を積層するための具体的な手法としては、例えばスパッタリングや蒸着(例えば電子ビーム蒸着等)を挙げることができる。
またこの図5(b)では図示の都合上、薄膜の積層数は3としている。なおこの点については以下の図6の場合も同様である。
【0059】
[2-2.第2の製造方法]
続いて、図6により第2の製造方法について説明する。
第2の製造方法は、略半球状の凸部が形成された基板を用いてハイパーレンズ部L2bを形成し、該基板とSILとを接着後、上記基板を剥離することで先玉レンズL2を生成するものである。
【0060】
先ず、第2の製造方法では、図6(a)に示されるような略半球状の凸部を有する基板BSを生成する。この基板BSにおける上記凸部は、所定の基準点Prを中心とする半径Riによる球面の一部(略半球面部分)と同じ表面形状を有するように形成する。
基板BSとしては、例えば石英基板を用いる。
上記凸部を有する基板BSを生成するにあたっては、例えば下記の参考文献2などに開示されるRIE(リアクティブ・イオン・ドライ・エッチング)を用いたマイクロレンズアレイの製造方法を応用することができる。
参考文献2・・・特許第3617846号公報
【0061】
そして、第2の製造方法では、上記基板BSにおける上記凸部に対し、ε>0による第1の薄膜と、ε<0による第2の薄膜とを交互に複数層積層する。この場合も、先の図2に示したドーム状の積層が実現されるように、各薄膜の積層は、上記凸部としての球面形状に沿って行う。このような積層を行った結果、最後に積層した薄膜の対物側の面形状が、予め上記基準点Prを中心として設定した所定の半径Roの球面と同形状となるようにする。
【0062】
上記による薄膜の積層工程を行った後は、図6(b)に示される接着工程により、基板BSの上記凸部が形成された面と、超半球状のソリッドイマージョンレンズHblの対物側の面(平面部)とを対向させた状態で、これらソリッドイマージョンレンズHblと基板BSとを高屈折率接着材料ssにより接着する。
具体的に本例の場合、高屈折率接着材料ssとしては高屈折率レジンを用いるものとし、基板BSの上記凸部が形成された面とソリッドイマージョンレンズHblの対物側の面とを対向させた状態で当該高屈折率レジンを充填後、紫外線硬化処理を施すことで、ソリッドイマージョンレンズHblと基板BSとを接着する。
【0063】
ここで、高屈折率接着材料ssの屈折率は、ソリッドイマージョンレンズHblとの屈折率差に起因した反射ロスの抑制を図るべく、当該ソリッドイマージョンレンズHblの屈折率により近い値とされることが望ましく、さらに言えば同値とされることが最も好ましい。
【0064】
上記接着工程によってソリッドイマージョンレンズHblと基板BSとを接着した後は、図6(c)に示す剥離工程によって基板BSのみを剥離する。
これにより、対物側の一部にハイパーレンズ部L2bが形成された先玉レンズL2が生成される。
【0065】
<3.ドライブ装置>
[3-1.光学ピックアップの構成]
図7は、対物レンズOLを備えて構成される実施の形態としての光学ドライブ装置の主に光学ピックアップ(光学ピックアップOP)の内部構成を示した図である。
先ず、図7には、実施の形態の光学ドライブ装置が記録再生対象とする光ディスクDが示されている。
光ディスクDは、円盤状の光記録媒体であり、光の照射により情報の記録及び記録情報の再生が行われる。
【0066】
図8は、光ディスクDの断面構造を示している。
図示するように光ディスクDには、カバー層Lc、記録層Lr、基板Lbが同順で形成されている。光学ドライブ装置が備える対物レンズOLからの出射光は、カバー層Lc側から入射することになる。
【0067】
カバー層Lcは、記録層Lrの保護のために設けられる。
記録層Lrは、記録パワーによるレーザ光の照射に応じて記録マークが形成される記録膜と、反射膜とを備えて構成される。この場合、上記記録膜としては、相変化材料で構成されている。
【0068】
記録層Lrには、案内溝の形成に伴う図のような凹凸の断面形状が与えられている。
具体的に、この場合は基板Lb上に案内溝が形成されており、当該基板Lbの上記案内溝が形成された面側に対して記録層Lrが形成されることで、記録層Lrに凹凸の断面形状が与えられている。
本例の場合、案内溝としてはウォブリンググルーブが形成され、グルーブの蛇行周期の情報によりディスク上の絶対位置を表す絶対位置情報(半径位置情報や回転角度情報)の記録が行われている。
ここで、案内溝は、スパイラル状(又は同心円状であってもよい)に形成されている。
【0069】
説明を図7に戻す。
図7において、光ディスクDは、図中のスピンドルモータ(SPM)30により回転駆動される。このようにスピンドルモータ30により回転駆動される光ディスクDに対して、光学ピックアップOPによる情報記録・記録情報の再生のための光照射が行われる。
【0070】
光学ピックアップOP内には、記録層Lrに対する情報記録及び記録層Lrの記録情報についての再生を行うためのレーザ光である録再用レーザ光についての光学系と、対物レンズOLと光ディスクDとの間のギャップGを保つためのギャップ長サーボを行うためのレーザ光であるギャップサーボ用レーザ光についての光学系とが設けられる。
先に挙げた特許文献1にも記載されるように、録再用レーザ光とギャップサーボ用レーザ光とはそれぞれ波長帯の異なるレーザ光を用いる。本例の場合、録再用レーザ光の波長は405nm程度、ギャップサーボ用レーザ光の波長は650nm程度を設定しているとする。
【0071】
先ず、録再用レーザ光の光学系において、録再用レーザ1より出射された録再用レーザ光は、コリメーションレンズ2を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ3に入射する。偏光ビームスプリッタ3は、このように録再用レーザ1側から入射した録再用レーザ光については透過するように構成されている。
【0072】
上記偏光ビームスプリッタ3を透過した録再用レーザ光は、固定レンズ5、可動レンズ6、及びレンズ駆動部7を備えて成るフォーカス機構4に入射する。このフォーカス機構4は、録再用レーザ光の焦点位置を調整するために設けられる。
フォーカス機構4において、固定レンズ5は、光源である録再用レーザ1に近い側に配置され、可動レンズ6は録再用レーザ1から遠い側に配置される。レンズ駆動部7は可動レンズ6を録再用レーザ光の光軸に平行な方向に駆動する。
後述もするように、レンズ駆動部7は、図9に示すフォーカスドライバ33からのフォーカスドライブ信号FDにより駆動制御される。
【0073】
フォーカス機構4における固定レンズ5及び可動レンズ6を介した録再用レーザ光は、1/4波長板8を介してダイクロイックプリズム9に入射する。
ダイクロイックプリズム9は、その選択反射面が、録再用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されている。従って上記のようにして入射した録再用レーザ光は、ダイクロイックプリズム9にて反射される。
【0074】
ダイクロイックプリズム9で反射された録再用レーザ光は、図示するようにして対物レンズOLを介して光ディスクDに対して照射される。
【0075】
ここで、対物レンズOLに対しては、当該対物レンズOLをトラッキング方向(光ディスクDの半径方向)に変位させるためのトラッキング方向アクチュエータ10と、光軸方向(フォーカス方向)に変位させるための光軸方向アクチュエータ11とが設けられる。
本例の場合、これらトラッキング方向アクチュエータ10、光軸方向アクチュエータ11としては共にピエゾアクチュエータが用いられる。
そしてこの場合、対物レンズOLは、トラッキング方向アクチュエータ10に保持され、このように対物レンズOLを保持するトラッキング方向アクチュエータ10が、光軸方向アクチュエータ11によって保持されている。これにより、これらトラッキング方向アクチュエータ10、光軸方向アクチュエータ11を駆動することで、対物レンズOLをトラッキング方向及び光軸方向に変位させることができるようにされている。
なお、逆に光軸方向アクチュエータ11が対物レンズOLを保持し、光軸方向アクチュエータ11をトラッキング方向アクチュエータ10が保持する構成としても同様の作用が得られることは言うまでもない。
【0076】
トラッキング方向アクチュエータ10は、図9に示す第1トラッキングドライバ39からの第1トラッキングドライブ信号TD-1に基づき駆動される。
また光軸方向アクチュエータ11は、図9に示す第1光軸方向ドライバ47からの第1光軸方向ドライブ信号GD-1に基づき駆動される。
【0077】
説明を戻す。
再生時においては、前述のようにして光ディスクDに対して録再用レーザ光が照射されることに応じて、記録層Lrからの反射光が得られる。このように得られた録再用レーザ光の反射光は、対物レンズOLを介してダイクロイックプリズム9に導かれ、当該ダイクロイックプリズム9にて反射される。
ダイクロイックプリズム9で反射された録再用レーザ光の反射光は、1/4波長板8→フォーカス機構4(可動レンズ6→固定レンズ5)を介した後、偏光ビームスプリッタ3に入射する。
【0078】
ここで、このように偏光ビームスプリッタ3に入射する録再用レーザ光の反射光(復路光)は、1/4波長板8による作用と記録層Lrでの反射時の作用とにより、録再用レーザ1側から偏光ビームスプリッタ3に入射した録再用レーザ光(往路光)とはその偏光方向が90度異なるようにされる。この結果、上記のようにして入射した録再用レーザ光の反射光は、偏光ビームスプリッタ3にて反射される。
【0079】
このように偏光ビームスプリッタ3にて反射された録再用レーザ光の反射光は、シリンドリカルレンズ12→集光レンズ13を介して録再光用受光部14の受光面上に集光する。
録再光用受光部14は、複数の受光素子を備えて成り、これら受光素子が非点収差法によるフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号(プッシュプル信号)、RF信号(再生信号)の生成が可能となるように配置されている。
ここでは、録再光用受光部14が備えるそれぞれの受光素子による受光信号について、それらを包括して受光信号D_rpと表記している。
【0080】
また、図7に示す光学ピックアップOPにおいて、ギャップサーボ用レーザ光の光学系には、ギャップサーボ用レーザ15、コリメーションレンズ16、偏光ビームスプリッタ17、1/4波長板18、集光レンズ19、及びギャップサーボ用受光部20が設けられている。
【0081】
ギャップサーボ用レーザ15より出射されたギャップサーボ用レーザ光は、コリメーションレンズ16を介して平行光となるようにされた後、偏光ビームスプリッタ17に入射する。偏光ビームスプリッタ17は、このようにギャップサーボ用レーザ15側から入射したギャップサーボ用レーザ光(往路光)は透過するように構成される。
【0082】
偏光ビームスプリッタ17を透過したギャップサーボ用レーザ光は、1/4波長板18を介してダイクロイックプリズム9に入射する。
先に述べたように、ダイクロイックプリズム9は、録再用レーザ光と同波長帯の光は反射し、それ以外の波長による光は透過するように構成されているため、ギャップサーボ用レーザ光はダイクロイックプリズム9を透過し、対物レンズOLに入射する。
【0083】
ここで、後述もするように、ギャップ長が過大な状態(近接場結合が生じず対物レンズOLにより生成される光が光ディスクDに伝播しない状態)では、ギャップサーボ用レーザ光は対物レンズOLの端面(ハイパーレンズ部L2bの端面)にて全反射され、戻り光量は最大となる。一方、ギャップ長が適切な状態(近接場結合状態)では、その分、対物レンズOL端面での反射光量は減少し、戻り光量も減少することとなる。
ギャップ長サーボは、このようなギャップ長に相関した対物レンズOL端面からのギャップサーボ用レーザ光の反射光の光量変動を利用して行われるものである。
【0084】
対物レンズOL端面からのギャップサーボ用レーザ光の反射光(復路光)は、ダイクロイックプリズム9を透過した後、1/4波長板18を介して偏光ビームスプリッタ17に入射する。
【0085】
このように偏光ビームスプリッタ17に入射した復路光としてのギャップサーボ用レーザ光の反射光は、1/4波長板18の作用と対物レンズOLでの反射時の作用とにより、往路光とはその偏光方向が90度異なるものとされ、従って復路光としてのギャップサーボ用レーザ光の反射光は偏光ビームスプリッタ17にて反射される。
【0086】
偏光ビームスプリッタ17にて反射されたギャップサーボ用レーザ光の反射光は、集光レンズ19を介してギャップサーボ光用受光部20の受光面上に集光する。
本例の場合、ギャップサーボ用受光部20は複数の受光素子を備えて構成される。ギャップサーボ用受光部20が有する複数の受光素子による受光信号については、これらを包括して受光信号D_svと表記する。
【0087】
[3-2.ドライブ装置の全体的な内部構成]
図9は、実施の形態の光学ドライブ装置の全体的な内部構成を示している。
なお図9において、光学ピックアップOPの内部構成については、先の図7に示した構成のうち録再用レーザ1、レンズ駆動部7、トラッキング方向アクチュエータ10、光軸方向アクチュエータ11のみを抽出して示している。
また図9においては、スピンドルモータ30の図示は省略している。
【0088】
先ず、光学ドライブ装置には、記録処理部52が設けられる。
記録処理部52に対しては、光ディスクDに記録すべきデータ(記録データ)が入力される。記録処理部52は、入力された記録データに対して例えばエラー訂正符号の付加や所定の記録変調符号化を施すなどして、光ディスクDに実際に記録される例えば「0」「1」の2値データ列である記録変調データ列を得る。
記録処理部52は、上記記録変調データ列に応じた記録パルス信号を生成し、該記録パルス信号に基づき光学ピックアップOP内の録再用レーザ1を発光駆動する。
【0089】
また光学ドライブ装置には、光ディスクDに記録された情報を再生するための構成として、マトリクス回路31、及び再生処理部53が設けられる。
マトリクス回路31は、先の図7に示した録再光用受光部14からの受光信号D_rpに基づいて必要な信号を生成する。
具体的に、マトリクス回路31は、上記受光信号D_rpとしての複数の受光素子からの受光信号に基づき、RF信号(再生信号)、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEを生成する。RF信号としては和信号を生成し、フォーカスエラー信号FEは非点収差法に対応した演算により生成する。またトラッキングエラー信号TEとしてはプッシュプル信号を生成する。
なお、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEの生成手法については上記に限定されるべきものでなく、他の手法を採ることもできる。例えばトラッキングエラー信号TEについてはDPP法(差動プッシュプル法)により生成することもできる。
【0090】
マトリクス回路31により生成されたRF信号は、再生処理部34に供給される。
再生処理部34は、RF信号について、記録変調符号の復号化やエラー訂正処理など上述した記録データを復元するための再生処理を行い、上記記録データを再生した再生データを得る。
【0091】
また、光学ドライブ装置において、フォーカスサーボ回路32、フォーカスドライバ33、トラッキングサーボ回路34、第1トラッキングドライバ39、第2トラッキングドライバ40、及びスライド移送・偏芯追従機構50は、録再用レーザ光についてのフォーカスサーボ、トラッキングサーボ、及び光学ピックアップOP全体のスライドサーボを実現するために設けられる。
【0092】
先ず、フォーカスサーボ回路32には、マトリクス回路31により生成されたフォーカスエラー信号FEが入力される。
フォーカスサーボ回路32は、フォーカスエラー信号FEに対しサーボ演算(位相補償やループゲイン付与)を行ってフォーカスサーボ信号FSを生成する。
フォーカスドライバ33はフォーカスサーボ回路33から入力されたフォーカスサーボ信号FSに基づくフォーカスドライブ信号FDを生成し、当該フォーカスドライブ信号FDにより光学ピックアップOP内のレンズ駆動部7を駆動する。
これにより、録再用レーザ光の焦点が記録層Lrに一致するように制御される。
【0093】
スライド移送・偏芯追従機構50は、光学ピックアップOP全体をトラッキング方向に変位可能に保持する。
このスライド移送・偏芯追従機構50は、例えばCDやDVDなどの従来の光ディスクシステムに設けられるスレッド機構が備えるモータよりも高速な応答性を有する動力部を備えて構成され、光学ピックアップOPを、シーク時のスライド移送のために変位させるのみでなく、トラッキングサーボがオンの状態においてディスク偏芯に伴い生じるレンズシフトの抑制のためにも変位させる。
本例の場合、スライド移送・偏芯追従機構50はリニアモータを備え、当該リニアモータによる駆動力を光学ピックアップOPをトラッキング方向に変位可能に保持する機構部に与えるように構成されている。
【0094】
ここで、本実施の形態の光学ドライブ装置において、上記のように光学ピックアップOP全体をディスク偏芯にも追従させるように駆動するものとしているのは、以下のような事情による。
【0095】
図10は、実施の形態の対物レンズOLを用いた場合の視野範囲について説明するための図である。
図10(a)は、対物レンズOLに形成されるハイパーレンズ部L2bと光ディスクDとの配置関係(光軸方向での配置関係)を示しており、図10(b)は、図10(a)におけるハイパーレンズ部L2bの対物側の面(つまり対物レンズOLの対物側端面)と光ディスクDとの間のギャップGの部分の拡大図を示している。
【0096】
図10(a)を参照して理解されるように、対物レンズOLの視野範囲(視野全幅)は、ハイパーレンズ部L2bの対物側に形成された、半径Riによる球面の形状を有する部分(以下、この部分を対物側球面部分と称する)の全幅と一致する。
【0097】
そして、図10(b)を参照して分かるように、上記のような対物側球面部分の全幅としての対物レンズOLの視野全幅は、ハイパーレンズ部L2bの対物側に形成された平面部と対物側球面部分の頂点位置との光軸方向における距離をαとおいたとき、当該αと、半径Riとを用いて算出することができる。
具体的には、図10(b)に示されるような半径Ri、「Ri−α」、視野半幅aで形成される三角形を想定し、半径Riと距離αとから上記視野半幅aを求めることで算出できる。
ここで、半径Riを先に述べた120nmとし、距離α=5nmとすると、この場合の視野全幅は、視野半幅a=34nmより68nmとなる。
【0098】
このようにハイパーレンズ部L2bを備える対物レンズOLを用いるシステムでは、BDシステムや従来SILのシステムとの比較で、視野範囲が比較的狭いものとなる。
この点に鑑み、実施の形態の光学ドライブ装置では、光学ピックアップOPをディスク偏芯成分に追従させるものとしている。
【0099】
説明を図9に戻す。
トラッキングサーボ回路34に対しては、マトリクス回路31で生成されたトラッキングエラー信号TEが入力される。
トラッキングサーボ回路34内には、図中のハイパスフィルタ(HPF)35とサーボフィルタ36とによる第1のトラッキングサーボ信号生成系と、ローパスフィルタ(LPF)37とサーボフィルタ38とによる第2のトラッキングサーボ信号生成系とが形成される。
第1のトラッキングサーボ信号生成系が対物レンズOLを保持するトラッキング方向アクチュエータ10側に対応するものとなり、第2のトラッキングサーボ信号生成系が光学ピックアップOPを保持するスライド移送・偏芯追従機構50側に対応するものとなる。
【0100】
トラッキングサーボ回路34内において、トラッキングエラー信号TEは、ハイパスフィルタ35とローパスフィルタ37とに分岐して入力される。
ハイパスフィルタ35は、トラッキングエラー信号TEの所定のカットオフ周波数以上の成分を抽出してサーボフィルタ36に出力する。
サーボフィルタ36は、ハイパスフィルタ35の出力信号についてサーボ演算を行って第1のトラッキングサーボ信号TS-1を生成する。
また、ローパスフィルタ37はトラッキングエラー信号TEの所定のカットオフ周波数以下の成分を抽出してサーボフィルタ38に出力する。
サーボフィルタ38はローパスフィルタ37の出力信号についてサーボ演算を行って第2のトラッキングサーボ信号TS-2を生成する。
【0101】
第1トラッキングドライバ39は、第1のトラッキングサーボ信号TS-1に基づき生成した第1のトラッキングドライブ信号TD-1によってトラッキング方向アクチュエータ10を駆動する。
【0102】
また第2トラッキングドライバ40は、第2のトラッキングサーボ信号TS-2に基づき生成した第2のトラッキングドライブ信号TD-2によってスライド移送・偏芯追従機構50を駆動する。
【0103】
なお、図示による説明は省略するが、トラッキングサーボ回路34は、例えば光学ドライブ装置の全体制御を行う制御部より目標アドレスが指示されることに応じて、トラッキングサーボループをオフとして、第1トラッキングドライバ39や第2トラッキングドライバ40にトラックジャンプやシーク移動のための指示信号を与えるように構成されている。
【0104】
ここで、トラッキングサーボ回路34において、ローパスフィルタ37のカットオフ周波数は、ディスク偏芯周期(ディスク偏芯に伴い光スポット位置とトラック位置との位置関係が変化する周期)以上の周波数に設定される。これにより、スライド移送・偏芯追従機構50が、光学ピックアップOPをディスク偏芯に追従させるように駆動することができる。
つまりこの結果、ディスク偏芯に伴う対物レンズOLのレンズシフトの量を大幅に抑えることができ、録再用レーザ光が図10に示した視野範囲(視野全幅)から外れないようにすることができる。換言すれば、ディスク偏芯に依って録再用レーザ光が視野範囲から外れて記録/再生を行うことができなくなってしまうといった事態の発生を防止することができるものである。
【0105】
また、光学ドライブ装置には、ギャップ長サーボを実現するための構成として、信号生成回路41、ギャップ長サーボ回路42、第1光軸方向ドライバ47、第2光軸方向ドライバ48、引込制御部49、及び面振れ追従機構51が設けられている。
【0106】
先ず、面振れ追従機構51は、光学ピックアップOPを保持するスライド移送・偏芯追従機構50を、光軸方向(フォーカス方向)に変位可能に保持する。
本例の場合、当該面振れ追従機構51もリニアモータを備えて成り、比較的高速な応答性を有するようにされている。面振れ追従機構51は、当該リニアモータの動力によりスライド移送・偏芯追従機構50を光軸方向に駆動し、これによって光学ピックアップOPを光軸方向に変位させる。
なお、当該面振れ追従機構51とスライド移送・偏芯追従機構50との位置関係についても、先のトラッキング方向アクチュエータ10と光軸方向アクチュエータ11との関係と同様に、それらの関係を入れ替えたとしても得られる作用は同様となる。
【0107】
信号生成回路41は、図7に示したギャップサーボ用受光部D_sv(複数の受光素子からの受光信号)に基づき、ギャップ長サーボにおけるエラー信号として機能する信号を生成する。具体的には、和信号(全光量信号)sumを生成する。
【0108】
ここで、図11は、ギャップ長と対物レンズOLからの戻り光量(ハイパーレンズ部L2bの対物側端面からの戻り光量)との関係について説明するための図である。
なおこの図11では一例として、シリコン(Si)ディスクを用いた場合におけるギャップ長と戻り光量との関係を示しているが、本例のように相変化材料による記録層Lrとする場合においてもこの図11とほぼ同様の関係が得られる。
【0109】
この図11に示されるように、対物レンズOLからの戻り光量は、ギャップ長が過大で近接場結合が生じない領域では最大値となる。
これに対し、およそ波長の1/4程度となるギャップ長=50nm近傍以下の領域では、近接場結合の作用により、戻り光量はギャップ長が短くなるに連れて徐々に減少していくものとなる。
【0110】
ここで、近接場結合による作用を優先するのであれば、ギャップ長は短いほど有利となるが、ギャップ長を短くすると対物レンズOLと光ディスクDとの衝突や摩擦が問題となる。このため、ギャップ長としては近接場結合が生じる範囲内で光ディスクDとの間隔が或る程度空けられるようにして設定される。
この点を踏まえ、本例においては、ギャップ長(ギャップG)を先に例示したようにG=20nmに設定している。
【0111】
図11において、例えばこのようにギャップG=20nmとする場合の戻り光量の目標値は、およそ0.08程度となっている。
ギャップ長サーボを行うにあたっては、予めギャップGの値から戻り光量についての目標値を求めておく。ギャップ長サーボは、検出した戻り光量がこのように予め求めておいた目標値で一定となるようにして行われる。
【0112】
説明を図9に戻す。
信号生成回路41により生成された和信号sumは、ギャップ長サーボ回路42と共に引込制御部49に入力される。
【0113】
ギャップ長サーボ回路42には、ハイパスフィルタ43とサーボフィルタ44とによる第1のギャップ長サーボ信号生成系と、ローパスフィルタ45とサーボフィルタ46とによる第2のギャップ長サーボ信号生成系とが形成される。
第1のギャップ長サーボ信号生成系は光軸方向アクチュエータ11に対応するものとなり、第2のギャップ長サーボ信号生成系が面振れ追従機構51に対応する。
【0114】
ハイパスフィルタ43は、和信号sumを入力し、当該和信号sumの所定のカットオフ周波数以上の成分を抽出してサーボフィルタ44に出力する。
サーボフィルタ44は、ハイパスフィルタ43の出力信号についてサーボ演算を行って第1のギャップ長サーボ信号GS-1を生成する。
また、ローパスフィルタ45は、和信号sumを入力し、当該和信号sumの所定のカットオフ周波数以下の成分を抽出してサーボフィルタ46に出力する。
サーボフィルタ46はローパスフィルタ46の出力信号についてサーボ演算を行って第2のギャップ長サーボ信号GS-2を生成する。
【0115】
ここで、ギャップ長サーボ回路42には、ギャップGに基づいて予め求められた和信号sumについての目標値(つまりギャップGのときの和信号sumの値)が設定されており、サーボフィルタ44、46のそれぞれは、上記サーボ演算により、和信号sumの値を当該目標値とするためのギャップ長サーボ信号GS-1、GS-2をそれぞれ生成する。
【0116】
第1光軸方向ドライバ47は、第1のギャップ長サーボ信号GS-1に基づいて生成した第1の光軸方向ドライブ信号GD-1によって光軸方向アクチュエータ11を駆動する。
【0117】
また第2光軸方向ドライバ48は、第2のギャップ長サーボ信号GS-2に基づいて生成した第2の光軸方向ドライブ信号GD-2によって面振れ追従機構51を駆動する。
【0118】
ここで、上記により説明したギャップ長サーボ回路42において、ローパスフィルタ45のカットオフ周波数は、ディスクの面振れ周期以上の周波数に設定される。これにより、面振れ追従機構51によって光学ピックアップOPをディスク面振れに追従させるように変位させることができる。
このように光学ピックアップOP全体が面振れに追従するように駆動されることで、対物レンズOLの光ディスクDへの衝突の防止を図ることができる。
【0119】
引込制御部49は、ギャップ長サーボの引き込み制御を行うために設けられる。
この引込制御部49には、予めギャップGに基づいて求められた和信号sumについての目標値(ギャップGのときの和信号sumの値)が設定されている。引込制御部49は、このように設定された和信号sumの目標値に基づき、以下のようにしてギャップ長サーボの引き込み制御を行う。
先ずは、ギャップ長サーボがオフの状態において、信号生成回路41から入力される和信号sumの値と上記目標値との差分を計算する。そして、この差分の値が予め設定された引き込み範囲内の値であるか否かを判定し、引き込み範囲内でないとした場合は上記差分に応じた引き込み用波形(差分を減少させる方向に和信号sumを変化させるための信号)を生成し、これを第1光軸方向ドライバ47、第2光軸方向ドライバ48に与える。これにより、和信号sumの値が引き込み範囲内に収まるように制御することができる。
そして、上記差分の値が上記引き込み範囲内に入ったとした場合は、ギャップ長サーボ回路42にサーボループ(第1及び第2のギャップ長サーボ信号生成系の双方)をオンとするように指示を行う。これにより、引き込み制御が完了となる。
【0120】
以上で説明した光学ドライブ装置によれば、対物レンズOLを用いて光ディスクDに対し従来よりも高記録密度な記録を行うことができ、光ディスクDの大記録容量化を図ることができる。また同時に、対物レンズOLを用いて高記録密度で記録された情報の再生を行うことができる。
【0121】
<4.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としては上記により説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、これまでの説明では、ハイパーレンズ部L2bの全体的な形状を略半球状(半球に満たない形状)とする場合を例示したが、半球状とすることもできる。
【0122】
また、SIL部L2aとして、超半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを用いる場合を例示したが、半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを用いることもできる。
【0123】
また、これまでの説明では、記録再生の対象とする光記録媒体が相変化材料による記録層を有するものとされる場合を例示したが、本発明は、相変化材料以外で構成された記録層を有する光記録媒体とする場合にも好適に適用することができる。
また本発明は、例えば下記の参考文献3に開示されるような、いわゆるビットパターンドメディアによる光記録媒体とする場合にも好適に適用できる。
参考文献3・・・特開2006−73087号公報
【0124】
また、これまでの説明では、本発明の対物レンズを、光記録媒体についての記録/再生を行うシステムが有する対物レンズに適用する場合を例示したが、本発明の対物レンズは、例えば光学顕微鏡における対物レンズなど、光記録媒体の記録/システム以外の他の用途にも好適に適用できるものである。
【符号の説明】
【0125】
OL 対物レンズ、L1 後玉レンズ、L2 先玉レンズ、L2a SIL部、L2b ハイパーレンズ部、BS 基板、ss 高屈折率接着材料、Hbl ソリッドイマージョンレンズ、1 録再用レーザ、2,16 コリメーションレンズ、3,17 偏光ビームスプリッタ、4 フォーカス機構、5 固定レンズ、6 可動レンズ、7 レンズ駆動部、8,18 1/4波長板、9 ダイクロイックプリズム、10 トラッキング方向アクチュエータ、11 光軸方向アクチュエータ、12 シリンドリカルレンズ、13,19 集光レンズ、14 録再光用受光部、15 ギャップサーボ用レーザ、20 ギャップサーボ用受光部、31 マトリクス回路、32 フォーカスサーボ回路、33 フォーカスドライバ、34 トラッキングサーボ回路、35,43 ハイパスフィルタ、36,38,44,46 サーボフィルタ、37,45 ローパスフィルタ、39 第1トラッキングドライバ、40 第2トラッキングドライバ、41 信号生成回路、42 ギャップ長サーボ回路、47 第1光軸方向ドライバ、48 第2光軸方向ドライバ、50 スライド移送・偏芯追従機構、51 面振れ追従機構、52 記録処理部、53 再生処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを備えると共に、
上記ソリッドイマージョンレンズの対物側に面した一部の領域に、誘電率が正である第1の薄膜と誘電率が負である第2の薄膜との交互積層が当該ソリッドイマージョンレンズの上記対物側の外部に設定した所定の基準点を中心とする半径Riによる球面の形状に沿って上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われて成るハイパーレンズ部が一体的に形成されている
対物レンズ。
【請求項2】
上記第1の薄膜は、SiO2、SiN、C、ガラス、ポリマー、Metal Oxide(金属酸化物)、GaNの何れかで構成される請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項3】
上記第2の薄膜は、Cu、Ag、Au、Alの何れかで構成される請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項4】
上記第1の薄膜はAl2O3で構成され、上記第2の薄膜はAgで構成される請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項5】
上記ソリッドイマージョンレンズの上記対物側の面とは逆側の面に収束光を入射する後玉レンズを備える
請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項6】
超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズの対物側の面に、所定の半径Roによる球面の一部と同形状の凹部を形成する凹部形成工程と、
上記凹部形成工程により形成した上記凹部に対して、誘電率が正の第1の薄膜と誘電率が負の第2の薄膜とを上記凹部の形状に沿って交互に積層する積層工程と
を有するレンズ製造方法。
【請求項7】
所定の半径Riによる球面の一部と同じ表面形状を有する凸部が形成された基板における上記凸部を対象として、誘電率が正の第1の薄膜と誘電率が負の第2の薄膜とを上記凸部の形状に沿って交互に積層する積層工程と、
超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズの対物側の面と、上記基板の上記第1及び第2の薄膜が交互積層された側の面とを対向させた状態で、上記ソリッドイマージョンレンズと上記基板とを高屈折率接着材料により接着する接着工程と、
上記接着工程により接着した上記基板を剥離する基板剥離工程と
を有するレンズ製造方法。
【請求項8】
超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを備えると共に、上記ソリッドイマージョンレンズの対物側に面した一部の領域に、誘電率が正である第1の薄膜と誘電率が負である第2の薄膜との交互積層が当該ソリッドイマージョンレンズの上記対物側の外部に設定した所定の基準点を中心とする半径Riによる球面の形状に沿って上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われて成るハイパーレンズ部が一体的に形成されている対物レンズと、
上記対物レンズを介して光記録媒体に対する光照射を行うことで、上記光記録媒体に対する情報の記録又は上記光記録媒体の記録情報の再生を行う記録/再生部と
を有する光学ドライブ装置。
【請求項1】
超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを備えると共に、
上記ソリッドイマージョンレンズの対物側に面した一部の領域に、誘電率が正である第1の薄膜と誘電率が負である第2の薄膜との交互積層が当該ソリッドイマージョンレンズの上記対物側の外部に設定した所定の基準点を中心とする半径Riによる球面の形状に沿って上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われて成るハイパーレンズ部が一体的に形成されている
対物レンズ。
【請求項2】
上記第1の薄膜は、SiO2、SiN、C、ガラス、ポリマー、Metal Oxide(金属酸化物)、GaNの何れかで構成される請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項3】
上記第2の薄膜は、Cu、Ag、Au、Alの何れかで構成される請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項4】
上記第1の薄膜はAl2O3で構成され、上記第2の薄膜はAgで構成される請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項5】
上記ソリッドイマージョンレンズの上記対物側の面とは逆側の面に収束光を入射する後玉レンズを備える
請求項1に記載の対物レンズ。
【請求項6】
超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズの対物側の面に、所定の半径Roによる球面の一部と同形状の凹部を形成する凹部形成工程と、
上記凹部形成工程により形成した上記凹部に対して、誘電率が正の第1の薄膜と誘電率が負の第2の薄膜とを上記凹部の形状に沿って交互に積層する積層工程と
を有するレンズ製造方法。
【請求項7】
所定の半径Riによる球面の一部と同じ表面形状を有する凸部が形成された基板における上記凸部を対象として、誘電率が正の第1の薄膜と誘電率が負の第2の薄膜とを上記凸部の形状に沿って交互に積層する積層工程と、
超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズの対物側の面と、上記基板の上記第1及び第2の薄膜が交互積層された側の面とを対向させた状態で、上記ソリッドイマージョンレンズと上記基板とを高屈折率接着材料により接着する接着工程と、
上記接着工程により接着した上記基板を剥離する基板剥離工程と
を有するレンズ製造方法。
【請求項8】
超半球形状又は半球形状を有するソリッドイマージョンレンズを備えると共に、上記ソリッドイマージョンレンズの対物側に面した一部の領域に、誘電率が正である第1の薄膜と誘電率が負である第2の薄膜との交互積層が当該ソリッドイマージョンレンズの上記対物側の外部に設定した所定の基準点を中心とする半径Riによる球面の形状に沿って上記基準点Prを中心とする半径Ro(Ro>Ri)による球面の範囲まで行われて成るハイパーレンズ部が一体的に形成されている対物レンズと、
上記対物レンズを介して光記録媒体に対する光照射を行うことで、上記光記録媒体に対する情報の記録又は上記光記録媒体の記録情報の再生を行う記録/再生部と
を有する光学ドライブ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−48774(P2012−48774A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187992(P2010−187992)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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