説明

封止用ホットメルト樹脂組成物及び電子部品装置

【課題】複雑な形状を有する電気電子部品用として好適な、電気絶縁性、熱伝導性、長期信頼性、生産性等に優れた封止用ホットメルト樹脂組成物及びそれを用いた電子部品装置を提供する。
【解決手段】(A)ポリオレフィン樹脂を40〜55質量%、(B)高分子量ポリプロピレンを2〜4質量%、(C)接着付与剤を10〜30質量%、(D)ポリオレフィン系ワックスを2〜12質量%、(E)充填材を20〜35質量%含む封止用ホットメルト樹脂組成物。(A)成分の重量平均分子量が、20,000〜80,000である、前記の封止用ホットメルト樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用ホットメルト樹脂組成物及びそれを用いた電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、電化製品等の分野において使用されている、電子基盤、コネクター、LED等の電気電子部品は、信頼性のある性能・機能を発揮するために、熱、埃、水分等から保護される必要があり、その目的を達成する為に外部との電気絶縁性は必須とされる。特に電気絶縁体となる樹脂(封止材)等を、回路基板等複雑な形状を有する部品に封止する時は、その形状に追随できなければならず、その為に被覆時の樹脂粘度を下げるのが一般的になっている。
【0003】
これまで上記封止材として、反応性の液状樹脂、例えば2液のエポキシ樹脂等が一般的に使用されてきた(例えば特許文献1,2参照)。これは、主剤と硬化剤をある一定の割合に混合して、低い粘度でモールディングし、加熱することで硬化反応を促進させ、完全に固化させるものである。モールディングの封止方法としては、エポキシ樹脂に浸漬して引き上げるディッピング、枠の中に流し込む注型、表面に盛るようにして封止するポッティング等がある。しかしこの方法では、2液の混合比率を精密に調整する必要があり、また混合後は使用可能期間が短い等の問題点がある。また、硬化のための養生期間を必要とするので、生産性が低いという問題もある。さらに、硬化による樹脂収縮による応力が、例えば電気電子部品と導線を接合するハンダ部分等の物理的強度の弱いところに集中して、その部分が剥離するという問題もあった。
【0004】
そのような問題点を含みながら使用されてきた2液エポキシ樹脂に代わるモールディング用樹脂として、ホットメルト樹脂が挙げられる。ホットメルト樹脂は、加温溶融させるだけでモールディング時の粘度を下げることができ、冷却、固化して性能を発現するので、生産性が大幅に向上する。加えて、一般に熱可塑の樹脂を使用するので、製品としての寿命を終えた後も、加熱して樹脂を溶融除去することで、部材のリサイクルが容易に可能となる。
【0005】
封止材用としては種々の素材への高い接着性を発現するポリアミド系やポリエステル系のホットメルト樹脂が提案されている(例えば特許文献3、4参照)。ポリアミド系ホットメルト樹脂は粘度が低く、低圧での注入が可能なため、汎用の金型が使用できる利点があり、また、収縮性が低く、優れた接着性を有するため、リード線やケーブル等との接着性を向上させ、防水性と電気絶縁性を得ることができる。
【0006】
しかし、ポリアミド系ホットメルト樹脂は、吸湿性が高いため、外部から徐々に吸湿することで重要な特性である電気絶縁性が経時で低下したり、封止物が腐食する場合がある。さらに熱安定性が悪く、加熱中、溶融表面に皮貼りや炭化物が発生するため、成形物の品質低下を招きやすく、色調変化も大きい等の問題を有している。一方ポリエステル系は、加水分解しやすいため高温高湿下での長期耐久性に問題があり、絶縁性が低下する。
【0007】
そこで、連続して加熱使用する際にも、色調変化、炭化物の発生が少なく、しかも電気部品等への電気絶縁性、熱伝導性、長期信頼性、耐加水分解性、生産性等の種々の性能を併せ持ったホットメルト樹脂組成物が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−68012号公報
【特許文献2】特開2000−239349号公報
【特許文献3】特開2002−356552号公報
【特許文献4】特許第4534115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、複雑な形状を有する電気電子部品用として好適な、電気絶縁性、熱伝導性、長期信頼性、生産性等に優れた封止用ホットメルト樹脂組成物及びそれを用いた電子部品装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決すべく鋭意検討を行い、その結果、主成分としてオレフィン樹脂を用いることによって、加熱使用時の炭化物の発生を抑制し、かつ封止による電気部品への防水性を向上させることができること、また、特定量の接着付与剤を用いることで、電気部品への接着性が向上すること、充填材成分を特定量用いることで封止材(封止用ホットメルト樹脂組成物)の硬度や収縮率の低減を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に関する。
(1) ポリオレフィン樹脂を40〜55質量%、(B)高分子量ポリプロピレンを2〜4質量%、(C)接着付与剤を10〜30質量%、(D)ポリオレフィン系ワックスを2〜12質量%、(E)充填材を20〜35質量%含む封止用ホットメルト樹脂組成物。
(2) (A)成分の重量平均分子量が、20,000〜80,000である、(1)に記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
(3) (C)成分が、テルペン系樹脂、又は、脂肪族系石油樹脂である、(1)または(2)に記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
(4) (D)成分が、融点が120〜170℃のポリプロピレン系ワックスである、(1)から(3)のいずれかに記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
(5) (E)成分が、水酸化アルミニウムの金属水和物、又は、水酸化マグネシウムの金属水和物である、(1)から(4)のいずれかに記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
(6) 軟化点が125〜160℃である、(1)から(5)のいずれかに記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
(7) 溶融粘度が、180℃において、3,000〜15,000mPa・sである、(1)から(6)のいずれかに記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
(8) (1)から(7)のいずれかに記載の封止用ホットメルト樹脂組成物で封止された電子部品を備えた電子部品装置。
【発明の効果】
【0012】
複雑な形状を有する電気電子部品用として好適な、電気絶縁性、熱伝導性、長期信頼性、生産性等に優れた封止用ホットメルト樹脂組成物及びそれを用いた電子部品装置を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0014】
本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物で使用するポリオレフィン樹脂(A)としては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−酢ビ共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。その中で、接着強度、耐久性を得るためには、結晶性が低い、もしくは非晶性のものが好ましく、通常、ホットメルト樹脂組成物に使用されるものであれば特別な制約はない。
【0015】
市販品としては、「ベストプラスト703」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製商品名:重量平均分子量34,000)、「ベストプラスト708」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製商品名:重量平均分子量75,000)、「ベストプラスト792」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製商品名:重量平均分子量118,000)、「ベストプラスト308」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製商品名:重量平均分子量49,000)、「ベストプラスト408」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製商品名:重量平均分子量48,000)、「レクスタックRT2780」(米国レキセン社製商品名、ブテン−1共重合体)、「レクスタックRT2585」「レクスタックRT2315」(米国レキセン社製商品名、プロピレン−エチレン共重合体等が挙げられる。
【0016】
(A)ポリオレフィン樹脂としては、重量平均分子量が、通常、10,000〜150,000であり、20,000〜80,000であることが好ましく、30,000〜80,000であることがより好ましい。重量平均分子量が20,000未満の場合、ホットメルト樹脂組成物の耐熱性が低下するおそれがあり、また80,000を超える場合は粘度の増大により成形性が低下するおそれがある。
【0017】
本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物中の(A)ポリオレフィン樹脂の含有率は、40〜55質量%であり、40〜50質量%であることが好ましい。(A)オレフィン樹脂の含有率が40質量%未満の場合、溶融混練時に充填材成分を混練し難くなるおそれがあり、55質量%を超える場合、基材に対する接着性の低下のおそれがある。
【0018】
本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物で使用する(B)高分子量ポリプロピレンとしては、通常、重量平均分子量が、100,000〜200,000のポリプロピレンであれば、特に制限はない。なお、分子量分布は、一般的に、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定される。
【0019】
市販品としては、「ノバテックFX4FB、ノバテックPP、ウィンテック、ニューコン、ニューストレン、ニューフォーマー、ファンクスター」(日本ポリケム株式会社製商品名)、「アドマー、タフマー」(三井化学株式会社製商品名)、「プライムポリプロ、モストロン−L、プライムモールド−E、ポリファイン、プライムTPO」(株式会社プライムポリマー製商品名)、「サンアロマー」(サンアロマー株式会社製商品名)、「フローブレン」(住友精化株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0020】
本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物中の(B)高分子量ポリプロピレンの含有率は、2〜4質量%であり、2.5〜3.5質量%であることが好ましい。(B)高分子量ポリプロピレンの含有率が、2質量%未満の場合、ホットメルト樹脂組成物の耐加水分解性や樹脂硬度の低下のおそれがあり、4質量%を超える場合、流動性の低下による成形性低下等のおそれがある。
【0021】
本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物で使用される(C)接着付与剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族混合型石油樹脂、フェノール変性脂肪族/芳香族混合型石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、水素化石油樹脂等の石油系樹脂;ロジン酸、不均化ロジン酸、水添ロジン酸、ロジン酸のグリセリンエステル、ロジン酸のペンタエリスリトールエステル等のロジン酸エステル系樹脂;テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、芳香族変性水添テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂(テルペンフェノール系樹脂)、アルキルフェノール変性テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;スチレン樹脂;キシレン樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂等のキシレン系樹脂;ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等のフェノール系樹脂等を挙げることができる。これらの接着付与剤は、単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0022】
また、初期接着性、表面タック低減を改善するために、高軟化点の樹脂や結晶化度の高い樹脂等を使用することが好ましく、特に、基材に対する接着性の点から、テルペンフェノール系樹脂、テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂が好ましい。
【0023】
市販品としては、「マルカレッツS110A」(脂肪族系石油樹脂、丸善石油化学株式会社製)、「YSポリスターT−145」(テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製商品名)、「クリアロンP125」(水添テルペン樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製商品名)、「クリアロンP150」(水添テルペン樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製商品名)、「アルコンP140」(脂環式系水添石油樹脂、荒川化学株式会社製商品名)、「アルコンSM10」(部分水添石油樹脂、荒川化学株式会社製商品名)、「アイマーブS100」(部分水添石油樹脂、出光興産株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0024】
本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物中の(C)接着付与剤の含有率は、10〜30質量%であり、12〜28質量%であることが好ましい。(C)接着付与剤の含有率が、10質量%未満の場合、基材に対する接着性が低下するおそれがあり、30質量%を超える場合、耐加水分解性の低下のおそれがある。
【0025】
本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物で使用する(D)ポリオレフィン系ワックスとしては、通常、重量平均分子量が20,000以下であり、180℃での溶融粘度が500mPa・s以下であれば特に問題はない。なお溶融粘度は通常、B型回転粘度計等により測定可能である。市販品としては、「ビスコール550P、660P」(三洋化成工業株式会社製商品名)、「ハイワックス200P、NP055、NP105」(三井化学株式会社製商品名)等を挙げることができる。ポリオレフィン系ワックスは、融点が120℃以上、好ましくは120〜170℃、さらに融点が130〜160℃の結晶性ワックスがより好ましく、これらのポリオレフィン系ワックスは、単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。さらに、ポリオレフィン系ワックスとしては、ポリプロピレン系ワックス、ポリエチレン系ワックス等があり、特に融点が120〜170℃のポリプロピレン系ワックスが好ましい。融点が120℃未満の場合、樹脂組成物自体の表面にタックが生じ、融点が170℃を超える場合、アプリケーション時の流動性低下による作業性が低下する。融点が120〜170℃のポリプロピレン系ワックスとしては、具体的にはビスコール660P(三洋化成工業株式会社製商品名)が挙げられる。
【0026】
本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物で使用される(E)充填材成分としては、特に限定されないが、充填材成分は、電気絶縁性、吸湿性、線膨張係数低減、熱伝導性向上及び強度向上の効果があり、たとえば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維等が挙げられる。さらに、電気絶縁性、熱伝導性、難燃効果のある充填材成分としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、その金属水和物、複合金属水酸化物、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。
【0027】
これらの充填材成分は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、電気絶縁性、熱伝導性、難燃性の向上低減の観点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムの金属水和物が好ましい。
【0028】
ホウ酸亜鉛としては「FB−290、FB−500」(U.S.Borax社製商品名)、「FRZ−500C」(水澤化学工業株式会社製商品名)等が、モリブデン酸亜鉛としては「KEMGARD911B、911C、1100」(Sherwin−Williams社製商品名)等が各々市販品として入手可能である。また、水酸化アルミニウムの金属水和物としては、「B73」(日本軽金属株式会社製商品名)、「C−31」(住友化学株式会社製商品名)、水酸化マグネシウムの金属水和物としては、「マグラックスST1」(新鉱工業株式会社製商品名:ステアリン酸1%処理品)、「キスマ1」(協和化学工業株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0029】
充填材成分の含有率は、電気絶縁性、熱伝導性、流動性、難燃性、成形性、吸湿性、線膨張係数低減、強度向上の観点から、封止用ホットメルト樹脂組成物に対して20〜35質量%であり、好ましくは20〜30質量%である。20質量%未満の場合、熱伝導性や電気絶縁性の低下のおそれがあり、35質量%を超える場合、流動性低下による成形性の低下のおそれがある。
【0030】
さらに、本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物には、必要に応じて、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩等の離型剤、カップリング剤、シリコーンオイルやシリコーンゴム粉末等の応力緩和剤、カーボンブラック等の顔料または染料、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、界面活性剤、ノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤等を適量配合しても良い。
【0031】
酸化防止剤(老化防止剤)としては、フェノール系、有機イオウ系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、有機リン系ヒンダートフェノール系、アミン系等が挙げられる。例えば、フェノール系酸化防止剤としてペンタエリトリイルテトラキス−3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(SONGNOX1010、SONGWON IND.製商品名)及びn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(SONGNOX1076、SONGWON IND.製商品名)と、リン系酸化防止剤としてトリス(2,4−ジ−ターシャリーブチルフェニル)ホスファイト(SONGNOX1680、SONGWON IND.製商品名)等がある。酸化防止剤(老化防止剤)の含有率は、封止用ホットメルト樹脂組成物に対して好ましくは0.1〜2質量%であり、より好ましくは0.5〜1質量%である。0.1質量%未満の場合、ホットメルト樹脂組成物の加熱溶融時に熱劣化するおそれがある。
【0032】
本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機、らいかい機、プラネタリミキサ等によって混合又は溶融混練し、必要に応じて脱泡する方法等を挙げることができる。
【0033】
本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物は、軟化点が125〜160℃であることが好ましく、130〜150℃であることがより好ましい。封止用ホットメルト樹脂組成物の軟化点が、125℃未満の場合、耐熱性、耐加水分解性の特性が不十分であり、160℃を超える場合、ホットメルト樹脂組成物混練時の作業性低下が生じるおそれがある。
【0034】
本発明の封止用ホットメルト樹脂組成物は、溶融粘度が、180℃において、3,000〜15,000mPa・sであることが好ましく、4,000〜13,000mPa・sであることがより好ましい。封止用ホットメルト樹脂組成物の溶融粘度が、3,000mPa・s未満の場合、耐加水分解性の低下のおそれがあり、15,000mPa・sを超える場合、高粘度による作業性の低下のおそれがある。
【0035】
本発明の電子部品装置は、前記の封止用ホットメルト樹脂組成物で封止された電子部品を備えたものである。本発明になる封止用ホットメルト樹脂組成物を用いることで、電気・電子部品装置に防湿絶縁処理が施され、電気・電子部品外部からの湿気や水の浸入を防ぎ、電子部品の絶縁性の低下を防ぐ効果が得られる。これらの電気・電子部品としては、特に限定されるものではないが、ICやLSI等の集積回路や、トランジスタ、コンデンサ、コイル、センサー、抵抗、リレー、トランス等が挙げられ、またこれらの部品をプリント配線板に実装した基板や、コネクターや、はんだ付け等その接続部も含まれる。
【0036】
本発明になる封止用ホットメルト樹脂組成物を用いて防湿絶縁処理される電子部品装置の製造法としては、例えば封止用ホットメルト樹脂組成物を加熱、溶融させた状態で上記電気・電子部品の防湿絶縁処理が必要な部分に塗布するか、上記電気・電子部品を成形型の中に入れ、封止用ホットメルト樹脂組成物を加熱、溶融させた状態で型内に注入してするなどして、実質的に封止用ホットメルト樹脂で電気・電子部品を覆ったのちに放冷により固化させればよい。また、封止用ホットメルト樹脂組成物の熱劣化をできるだけ生じさせずに、電子部品を封止する為には、160〜180℃で速やかに溶融させることが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明にかかる実施例および比較例について説明するが、本発明は該実施例により何ら制限されるものではない。
【0038】
(実施例1)
窒素導入口を備えた加熱ニーダーを170〜200℃に加温し、(A)ポリオレフィン樹脂として「ベストプラスト703」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製商品名:重量平均分子量34,000)59質量部、(B)高分子量ポリプロピレンとして「ノバテックFX4FB」(日本ポリケム株式会社製商品名)4質量部、(C)接着付与剤(テルペンフェノール系樹脂)として「YSポリスターT−145」(ヤスハラケミカル株式会社製商品名、軟化点145℃)27質量部、(D)ポリオレフィン系ワックス成分として「ビスコール660P」(三洋化成工業株式会社製商品名、軟化点145℃)15質量部、(E)充填材成分として「マグラックスST1」(新鉱工業株式会社製商品名:ステアリン酸1%処理品、水酸化マグネシウムの金属水和物)35質量部、老化防止剤として「SONGNOX1010」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部、「SONGNOX1680」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部を投入し、均一に溶融混練することにより、本発明のホットメルト樹脂組成物を得た。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様の加熱ニーダーに、(A)ポリオレフィン樹脂として「ベストプラスト708」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製商品名:重量平均分子量75,000)59質量部、(B)高分子量ポリプロピレンとして「ノバテックFX4FB」(日本ポリケム株式会社製商品名)4質量部、(C)接着付与剤(脂肪族系石油樹脂)として「マルカレッツS110A」(丸善石油化学株式会社製商品名)20質量部、(C)接着付与剤(テルペンフェノール系樹脂)として「YSポリスターT−145」(ヤスハラケミカル株式会社製商品名)18質量部、(D)ポリオレフィン系ワックス成分として「ビスコール660P」(三洋化成工業株式会社製商品名)4質量部、(E)充填材成分として「マグラックスST1」(新鉱工業株式会社製商品名)35質量部、老化防止剤として「SONGNOX1010」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部、「SONGNOX1680」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部を投入し、均一に溶融混練することにより、本発明のホットメルト樹脂組成物を得た。
【0040】
(実施例3)
実施例1と同様の加熱ニーダーに、(A)ポリオレフィン樹脂として「ベストプラスト708」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製商品名)59質量部、(B)高分子量ポリプロピレンとして「ノバテックFX4FB」(日本ポリケム株式会社製商品名)4質量部、(C)接着付与剤(テルペンフェノール系樹脂)として「YSポリスターT−145」(ヤスハラケミカル株式会社製商品名)27質量部、(D)ポリオレフィン系ワックス成分として「ビスコール660P」(三洋化成工業株式会社製商品名)15質量部、(E)充填材成分として「マグラックスST1」(新鉱工業株式会社製商品名)35質量部、老化防止剤として「SONGNOX1010」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部、「SONGNOX1680」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部を投入し、均一に溶融混練することにより、本発明のホットメルト樹脂組成物を得た。
【0041】
(実施例4)
実施例1と同様の加熱ニーダーに、(A)ポリオレフィン樹脂として「ベストプラスト703」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製商品名)69質量部、(B)高分子量ポリプロピレンとして「ノバテックFX4FB」(日本ポリケム株式会社製商品名)4.6質量部、(C)接着付与剤(テルペンフェノール系樹脂)として「YSポリスターT−145」(ヤスハラケミカル株式会社製商品名)20質量部、(D)ポリオレフィン系ワックス成分として「ビスコール660P」(三洋化成工業株式会社製商品名)11質量部、(E)充填材成分として「マグラックスST1」(新鉱工業株式会社製商品名)35質量部、老化防止剤として「SONGNOX1010」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部、「SONGNOX1680」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部を投入し、均一に溶融混練することにより、本発明のホットメルト樹脂組成物を得た。
【0042】
(比較例1)
実施例1と同様の加熱ニーダーに、(A)ポリオレフィン樹脂として「ベストプラスト792」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製商品名:重量平均分子量118,000)15質量部、「レクスタックRT2780」(米国レキセン社製商品名:重量平均分子量96,000)35質量部、(B)高分子量ポリプロピレンとして「ノバテックFX4FB」(日本ポリケム株式会社製商品名)5質量部、(C)接着付与剤(テルペンフェノール系樹脂)として「YSポリスターT−145」(ヤスハラケミカル株式会社製商品名)22質量部、(D)ポリオレフィン系ワックス成分として「ビスコール660P」(三洋化成工業株式会社製商品名)28質量部、老化防止剤として「SONGNOX1010」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部、「SONGNOX1680」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部を投入し、均一に溶融混練することにより、(E)充填材成分を含まないホットメルト樹脂組成物を得た。
【0043】
(比較例2)
実施例1と同様の加熱ニーダーに、(A)ポリオレフィン樹脂として「ベストプラスト792」(エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製商品名)15質量部、「レクスタックRT2780」(米国レキセン社製商品名)35質量部、(B)高分子量ポリプロピレンとして「ノバテックFX4FB」(日本ポリケム株式会社製商品名)5質量部、(C)接着付与剤(テルペンフェノール系樹脂)として「YSポリスターT−145」(ヤスハラケミカル株式会社製商品名)22質量部、(D)ポリオレフィン系ワックス成分として「ビスコール660P」(三洋化成工業株式会社製商品名)28質量部、(E)充填材成分として「マグラックスST1」(新鉱工業株式会社製商品名)106質量部、老化防止剤として「SONGNOX1010」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部、「SONGNOX1680」(SONGWON IND.製商品名)0.3質量部を投入し、均一に溶融混練することにより、(E)充填材成分を50重量%含むホットメルト樹脂組成物を得た。
【0044】
実施例および比較例において得られたホットメルト樹脂組成物の特性については、以下の方法にて測定、評価した。結果を表1に示した。
[溶融粘度]
東機産業製B型少量粘度計(測定部分:TV−20、ヒーター部分:VTB−250)を用いて、回転数50rpm、ローター:THH−24の条件下で、ホットメルト樹脂組成物15gをセットし、180℃で10分養生後、10分間回転した後の値を、溶融粘度として測定した。
[軟化点]
JIS K2425に準拠し、メイテック社製環球式自動軟化点試験器ASP−M4で軟化点を測定した。軟化点試験に使用するホットメルト樹脂組成物は予め180℃で溶解し、軟化点試験用リング内に流し込み、固化したものを1日空冷したのち使用した。
[熱伝導率]
130℃に加熱したプレス機に、離型紙で挟んだホットメルト樹脂組成物をセットし、加圧プレスすることで1mm厚のシートを作製した。作製したシートを用いて京都電子工業製QTM−500で熱伝導率を測定した。
[絶縁破壊電圧]
130℃に加熱したプレス機に離型紙で挟んだホットメルト樹脂組成物をセットし、加圧プレスすることで1mm厚のシートを作製した。100mm×100mmサイズのシートを5枚作製し、ASTM D149に準拠して、ヤマヨ試験器製絶縁破壊試験装置YST−243−100RHOを用いて23℃シリコーン油中で絶縁破壊電圧を測定した。
[耐熱性]
ホットメルト樹脂組成物を121℃乾燥機中で48時間養生し、樹脂組成物の変形状態を観察した。なお、変化なしとは、ホットメルト樹脂組成物が熱により溶解、変形、流動がない状態であり、具体的には養生前と形状が変化していない状態である。
○;養生前と変化(溶解)なし
△;一部溶解の痕跡あり
×;溶解の痕跡あり(形状の変化が顕著)
[耐加水分解性]
ホットメルト樹脂組成物を、不飽和水蒸気中、121℃、2気圧下で48時間養生し、樹脂組成物の変形状態を観察した。なお、変化なしとは、ホットメルト樹脂組成物が熱・水により溶解、変形、流動がない状態であり、具体的には養生前と形状が変化していない状態である。
○;養生前と変化(溶解)なし
×;溶解の痕跡あり(形状の変化が顕著)
[成形性]
ホットメルト樹脂組成物をアルミカートリッジに封入し、ファスト製カートリッジ式ホットメルトガンHP−10K/SPを用いて、180℃加熱条件下、ファスト製モールディング金型にモールディングを行い、金型から成形品を取出す際に形状欠損がないか、成形品の外観を観察した。形状欠損がない場合を、成形性良好とした。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示したように、(E)充填材成分を含まない、比較例1のホットメルト樹脂組成物は、耐加水分解性に劣っており、また、(E)充填材成分を50質量%含む、比較例2のホットメルト樹脂組成物は、溶融粘度も大きく、成形性に問題があることがわかる。それに対し、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分を、特定量含む、実施例1〜4の本発明のホットメルト樹脂組成物は、耐熱性、耐加水分解性、成形性いずれも優れていることがわかる。
本発明により、複雑な形状を有し、かつ電気電子部品用の封止用オレフィン系樹脂あるいは樹脂組成物として、電子部品、電気部品等への絶縁破壊電圧、熱伝導率の特性を併せ持ち、また溶融粘度、軟化点の性能から成形性に優れ、耐熱性、耐加水分解性の性能から長期信頼性が良好であるホットメルト組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオレフィン樹脂を40〜55質量%、(B)高分子量ポリプロピレンを2〜4質量%、(C)接着付与剤を10〜30質量%、(D)ポリオレフィン系ワックスを2〜12質量%、(E)充填材を20〜35質量%含む封止用ホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分の重量平均分子量が、20,000〜80,000である、請求項1に記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
(C)成分が、テルペン系樹脂、又は、脂肪族系石油樹脂である、請求項1又は2に記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
【請求項4】
(D)成分が、融点が120〜170℃のポリプロピレン系ワックスである、請求項1から3のいずれかに記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
【請求項5】
(E)成分が、水酸化アルミニウムの金属水和物、又は、水酸化マグネシウムの金属水和物である、請求項1から4のいずれかに記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
【請求項6】
軟化点が125〜160℃である、請求項1から5のいずれかに記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
【請求項7】
溶融粘度が180℃において、3,000〜15,000mPa・sである、請求項1から6のいずれかに記載の封止用ホットメルト樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の封止用ホットメルト樹脂組成物で封止された電子部品を備えた電子部品装置。

【公開番号】特開2012−188490(P2012−188490A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51398(P2011−51398)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】