説明

専用テーブル付き孔版印刷装置

【課題】孔版印刷装置において、印刷終了後、非使用状態が長く続いても次回の使用が容易になるように、インキは空気中で放置しても決して固化乾燥しないようなものが使われる。しかし、印刷直後の印刷物はインキが紙に浸透し切れないため、画像面をこすれば指汚れなどが生ずる。印刷物のインキ乾燥がもっと早くても、長期非使用状態後の再使用に支障を来さない新規な方法が求められている。
【解決手段】印刷終了した版胴はそのままに放置せず、印刷ドラムユニットを専用テーブルに設けた密閉型の印刷ドラム専用収納スペースに収納するよう、印刷装置本体の表示部に表示する。そのまま放置した場合は所定時間経過後自動クリーニングする。専用テーブルにはドラムユニットの収納期間をチェックする機能を持たせ、所定の期間が過ぎたらクリーニングを行うよう表示を行う。クリーニングが行われなければ次の印刷を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は孔版印刷装置に関し、詳しくは、非使用時の印刷ドラムのインキ固化防止対策に関する。
【背景技術】
【0002】
製版された孔版原紙を外周に巻き付け装着され、自身の中心軸線周りに回転駆動される円筒状版胴と、該円筒状版胴内に設けられて円筒状版胴内面にインキを供給するインキ供給装置と、給紙された印刷用紙を前記版胴外周面に押圧する印圧装置を有して、孔版原紙の穿孔製版部を通過したインキを印刷用紙上に転移させることで印刷画像を形成する方式の孔版印刷装置はすでによく知られている。
【0003】
こうした孔版印刷装置に用いられているインキは、空気中で放置しても決して固化乾燥することがないようなものが用いられる。具体的には油中水型(W/O型)エマルジョン構造のインキが用いられる。つまり水相が油相中に均一に分散した状態である。印刷機内部のインキが直接に大気と接触していても、インキの成分が変性したり硬化したりするのを防止できる構造であり保存安定性を有している。
これは孔版印刷装置が、特別な清掃動作もしないで使い終えたままで、長期間印刷装置を非使用状態で放置していても、再使用時に特別な熟練操作をしないですぐに印刷ができることが求められているためである。たとえば学校で先生が印刷機を使用するが、夏休みに入って1〜2ヶ月間使用しないでそのまま放置しても、再使用時には何の問題もなく以前同様に印刷使用可能であることが求められる。内部のインキが硬化せずにそして紙の上に転移したら紙の繊維間への浸透とインキ中の水相の蒸発によって擬似的な乾燥を作るようになっている。しかしあくまでも化学的反応による乾燥や定着ではないので、乾燥は不十分であった。つまり印刷画像を指でこすれば指はインキで汚れてしまうのである。
【0004】
それゆえに、孔版印刷装置による印刷物では、その画像インキ乾燥速度が遅くて印刷物の取り出しやそろえ操作時に手指が汚れてしまうとか、インキが定着していないので印刷物に追加記載したりすると手が黒く汚れてしまうとか、コート紙のように浸透性が悪い用紙の場合には印刷ができないとか、ベタの多い画像を印刷した場合排紙トレイ上で積載時に画像面インキがその上の用紙裏面を汚す裏うつりという不具合が起こるとかの問題があった。
【0005】
そこで孔版印刷の印刷物画像の乾燥性を向上させるために、これまでにも多数の提案がされてきた。たとえば紫外線硬化型インキに変更して印刷後に印刷物に紫外線を照射して硬化させる方法が最も効果的である(例えば、特許文献1、特許文献2 参照。)。
また印刷物の画像面をヒーターや遠赤外線等で加熱してインキ中の水相蒸発を促進させる方法や、印刷物の画像面インキに高周波を当ててインキ内部の反応を促進させる方法も提案されてきた(例えば、特許文献3、特許文献4 参照。)。
【0006】
空気中に放置することで、または時間が経過することで、インキ中の溶剤成分が気化する作用を利用して乾燥させるとか、空気中の酸素と反応して硬化する成分を含むインキとか、用紙に転移して薄膜になったインキ内部の硬化反応促進作用や内部樹脂成分の硬化作用を発揮させる方式のインキを使用する方法が知られている。これはたとえばヨウ素価を持つ樹脂(酸化重合形態)を含有する(例えば、特許文献5 参照。)。または、水性のインキを使用する方法は、水溶性高分子化合物を含有するもので、即時性はないが時間経過で完全に乾燥が進むことを期待できる方法である(例えば、特許文献6 参照。)。
【0007】
紫外線硬化型インキに変更して印刷後に印刷物に紫外線を照射して硬化させる方法は、紫外線硬化型インキ自体の安全性や匂いの問題や紫外線照射ランプの安全性とオゾン発生の問題があり、更にインキ自体が高価になり紫外線照射装置も高価なものが必要になるという問題点を有している。
印刷物の画像面をヒーターや遠赤外線等で加熱してインキ中の水相蒸発を促進させる方法は、高速印刷なので非常に大きな熱容量の装置が必要になり、用紙自体が保有している水分を蒸発させることに熱が消費されてしまい効果的なインキの乾燥が期待できないという問題点や高熱で用紙がカールする問題も有している。
高粘度インキや粉体インキを用いて印刷時には加熱等で一時的に軟化低粘度化させて印刷する方法は、インキの安定的な供給が困難で、加熱処理部によるインキの軟化が不安定になり安定した乾燥硬化を得ることは難しい。印刷物の上に粉末を塗布する方法も一時的な裏うつり防止程度の効果しか期待できない。
【0008】
インキ中の溶剤成分が気化することで樹脂成分が顔料と一体になって硬化するというようなインキを使用する方法、または水性成分が蒸発することで樹脂成分が顔料と一体になって硬化するというようなインキを使用する方法は、印刷物の乾燥性定着性確保の上で効果が大きく最大の特徴として特別の定着装置を必要としないこと、またインキ自体のコストアップが小さいことが挙げられる。
しかし非使用放置によって、印刷ドラムの円筒状版胴を構成する多孔質金属薄板やスクリーンメッシュが、インキの固化で目詰まりを起こしてしまうことが明らかである。これはインキが広がって表面積を大にする部分では、空気に触れた部分から容易にインキ中の水分や溶剤の蒸発が起こるので、早期に乾燥してしまうためである。たとえば用途がなくて1週間印刷機を使用しないでおき、1週間後に印刷しようとしてもインキが版胴で目詰まりを起こしてしまい、画像が薄くなるとか出なくなるといった不具合が発生してしまう。こうなると版胴部の清掃が必要になり多大な時間と労力とコストがかかってしまう問題がある。
【0009】
【特許文献1】実公平4−35188号公報
【特許文献2】特開平5−64878号公報
【特許文献3】特開2001−71617号公報
【特許文献4】特開2001−150784号公報
【特許文献5】特開2004−149810号公報
【特許文献6】特開2001−302955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、孔版印刷における印刷物画像の乾燥定着に非常に効果が大きいインキを用いても、長時間放置によって円筒状版胴を構成する多孔質円筒状薄板やスクリーンメッシュが、インキの固化により目詰まりを起こして画像が出なくなってしまうことのないようにできる、インキの固化防止対策を施した新規な孔版印刷装置とその専用テーブルを提供することを目的としている。
【0011】
定着性を向上させたインキを試作してそれを用いて印刷ドラム版胴目詰まりに関する確認実験を実施した結果、我々は新しい事実を発見した。印刷終了後印刷ドラムをそのまま外部に出して放置した場合、1週間放置後の確認では版胴が保有しているインキにおいて異常なほどの高粘度化が起こって、新しい製版原紙を装着して印刷を開始したが全く画像が出ることはなく、1000枚ほど印刷したところで不十分な画像が出始めたという状態であった。しかし同じ条件の印刷ドラムを使用して密閉空間のボックス内に保管したところ、1週間後でも最初の数枚を除けば画像が出ることが確認できた。これは版胴が保有するインキ表面が次々と新しい空気に触れれば蒸発乾燥が進むが、空気の移動がなく蒸発しにくい環境であれば乾燥の速度が遅くなることを意味している。
しかし定着性を向上させたインキを用いた場合には、それなりの操作や保管扱いをしてもらわないと結果的には版胴目詰まりが発生することを防止できない。そこで確実に操作や扱いをしていただくための工夫が必要になる。そして誤操作がないようにする工夫も必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明では、孔版印刷装置載置用の専用テーブル付き孔版印刷装置であって、前記専用テーブルは前記孔版印刷装置から取り外された印刷ドラムユニット(以下単にユニットという)を収納できる印刷ドラム収納スペース(以下単に収納スペースという)を少なくとも1個有し、該収納スペースは前記ユニットを出し入れ可能な開閉部を有し、該開閉部を閉じたとき、前記収納スペースは気密が保持され、実質的に密閉空間を形成し、前記収納スペースに前記ユニットが収納され、前記開閉部が閉状態になったことを検知する少なくとも1個のセンサとを有し、前記孔版印刷装置は警告表示を行うことのできる表示部と、計時装置を備えた制御装置とを有し、該制御装置は、前記ユニットが前記収納スペースに収納され、且つ、前記開閉部が閉状態になった時点から計時を行い、予め定めた第1の所定の時間が経過しても前記センサが作動している場合には前記表示部においてインキ固化の危険性を知らせる表示、もしくは、インキ固化を防ぐための作業を指示する表示を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記表示は前記収納スペースに収納されている前記ユニットを取り出して印刷装置本体に装着し、印刷ドラムクリーニングモードを実行してから再び前記収納スペースに収納するように指示する表示であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記表示が行われた場合、予め定めた第2の所定の時間内であれば、そのまま次の製版または印刷の動作を許可し、前記第2の所定時間を超えた場合は、印刷ドラムクリーニングモードが実行された場合に、次の製版または印刷の動作を許可することを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記制御装置は、前記ユニットが印刷工程終了後は、前記表示部に、ドラムユニットを抜き出して専用テーブルに収納するように促す表示を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記制御装置は、前記ユニットが印刷工程終了後、予め定めて第3の所定時間が経過しても継続して印刷装置本体に装着されたままであると判断したときは、警告表示を行うとともに液晶表示に再度同様の表示を行うことを特徴とする。
請求項6に記載の発明では、請求項4または5に記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記制御装置は、前記ユニットが印刷工程終了後、予め定めた第4の所定時間が経過しても継続して印刷装置本体に装着されたままであると判断したときは、クリーニングを行うよう前記表示部に表示し、クリーニングが終了するまでは次の製版、もしくは印刷を禁止することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明では、請求項4ないし7のいずれか1つに記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記制御装置は、前記ユニットが印刷工程終了後、予め定めた第5の所定時間が経過しても継続して印刷装置本体に装着されたままであると判断したときは、自動的にドラムクリーニングモードを実行することを特徴とする。
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記専用テーブルは、計時装置を備えた制御装置と、表示装置とを有し、該表示装置は、前記印刷装置本体が有する前記表示部に表示する内容と同様な表示を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、孔版印刷装置において、乾燥が早く定着性の良いインキを用いても、印刷ドラムの非使用時にも比較的乾燥しにくく、クリーニング回数を少なくすることのできるドラム収納方法を提供することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の実施例である孔版製版印刷装置および専用テーブルの全体概略図である。
同図において、符号1は孔版印刷装置、2は孔版印刷装置を支持する専用テーブルをそれぞれ示す。その他の符号は説明中に随時引用する。
孔版印刷装置1において、3は原稿画像を読み取るためのスキャナ部であり、その上面には開閉可能な圧板4を有し、更に複数枚の原稿を自動的に順次送るためのADF部5を有している。6は製版給版装置であり、この中ではロール状に巻かれた孔版原紙7がプラテンローラ8によってサーマルヘッド9に押し付けられ穿孔製版されながら搬送されるようになっている。
そして印刷ドラム10の外周面に設けられた原紙先端クランパ11にその先端をクランプ係止されて、製版済み孔版原紙は印刷ドラム10の外周に巻き付けられ、所定長さでカッター12により切断される。13は使用済み孔版原紙を印刷ドラム10の外周から剥離して搬送収納する排版装置である。排版装置13には孔版原紙を剥離して搬送するための排版ローラ14、15とその版を押し込む圧縮板16と収納する排版収納箱17が設けられている。
【0018】
印刷用紙20は給紙台21上から、給紙コロ22で搬送力を付与され分離コロ23と分離パッド24で順次1枚ずつに分離されて、更に後流の一対のレジストローラ25、26でタイミングを合わせて印刷部に送り込まれる。
27は印刷ドラム10に印刷用紙20を押し当てて画像形成を行うプレスローラであり、プレスローラ27は別の駆動源によって押し圧動作が制御されるようになっている。28は印刷ドラム10から印刷済み用紙を剥離する剥離爪であり、29は印刷ドラム10で印刷された用紙を吸引搬送する搬送ベルト装置である。こうして印刷ドラム10によって画像形成された印刷用紙は、搬送ベルト装置29で搬送されて排出され排紙トレイ30上に積載される。
【0019】
図2は本発明の印刷ドラムを示す図である。
ここで印刷ドラム10はユニットになっていて、孔版印刷装置1からフロント方向に引き出して着脱できるようになっている。
印刷ドラムユニット31(以下単にユニット31という)を構成するのは、円筒状版胴32と、その内部に設けられたインキ供給装置としてのインキローラ33、ドクターローラ34、インキだまり35、そしてインキだまり35にインキを供給するインキポンプ36およびインキ容器37と、円筒状版胴32を回転可能に保持して他の部品類も保持するドラムユニットフレーム38とからなる。円筒状版胴32の外周には製版済みの孔版原紙40がその先端をクランパ11で係止されてインキの粘着で巻き付け装着されている。
ドラムユニットフレーム38の一部は円筒状版胴32の回転軸線に並行に設けられたレール状部材38aと38bを形成している。
孔版印刷装置1には、レール状部材38aと38bを案内してユニット31を孔版印刷装置1に挿入するための固定ガイドレール39aと39bが設けられている。ユニット31を挿入すれば図示しないロック機構によって、その押し込み方向位置が正確に位置決めされるようになっている。
【0020】
円筒状版胴32は、部分拡大図に示すように、印刷画像範囲に多数のインキ通過用孔が設けられた円筒状金属体41とその外周に装着された1〜2層のメッシュスクリーン42からなり、その外周面に製版された孔版原紙40がインキの粘着力によって巻き付け装着されるようになっている。
円筒状版胴32の内部に設けられたインキ供給装置は、インキ供給ローラ33と、それと平行にわずかのスキマを設けて設けられたドクターローラ34と、これら二つのローラで形成されたインキだまり35とインキだまり35のインキ量を検出するセンサ43とからなる。インキだまり35のインキはインキ供給ローラ33の回転によって、円筒状版胴32内面に供給されるようになっている。
インキポンプ36は、着脱可能であるインキ容器37内のインキを吸引して、インキ吐出管44からインキだまり35にインキを滴下させる働きをする。通常の印刷可能状態においては、円筒状金属体41の内面側は一定厚さのインキ膜45に覆われており、更に円筒状金属体41の穴部とメッシュスクリーン42も所定量のインキを常に保持している。
【0021】
専用テーブル2には、印刷ドラム収納スペース(以下単に収納スペースという)50aと50bが設けられている。収納スペース50aと50bには、孔版印刷装置1における固定ガイドレール39aと39bと同じように、テーブル用固定ガイドレール51aと51bがそれぞれに2箇所設けられている。こうしてユニット31はそのレール状部材38aと38bを利用して、専用テーブル2の収納スペース50aと50bに挿入して保管できるようになっている。なおこの図では収納スペース50aと50bのフロント側開閉部を省略してある。なお収納スペース50aと50bの空間は、ユニット31を収納した時に極力空きスペースがなくなるようにその形状を工夫してある。たとえば下方はドラムに合わせて断面が円筒形になっている。その最下部に仮想線で示すように、小さな水槽Waを設けておき、水槽Waに若干の水を張っておくと、密閉空間内の水蒸気圧が常時ほぼ100%となって、インキからの水分蒸発が抑制されるので好ましい。
【0022】
図3は専用テーブルを上から見た断面図である。
ここで収納スペース50aにはユニット31が収納された状態になっている。収納スペース50aの入口には開閉部として回転中心52aを基準に回転開閉動作可能な前ドアカバー53aが取っ手54aを有して設けられている。前ドアカバー53aを閉じた時には図示しない手段によりロックされるものとし、閉じた状態ではほぼ気密状態を保つことができる密閉空間を形成するように、入口の周囲にはゴムパッキン55aが全周囲に設けられている。56aはユニット31が収納された状態にあるかどうかを検出するためのセンサである。専用テーブルは計時装置を備えた制御装置72(図6参照)を有しており、ユニット31が収納スペースに収納されたときセンサ56aはオンからオフに変化することによって、作動状態になったことを認識する。勿論、オン・オフを逆に設定することもできる。57aは前ドアカバー53aが確実に閉じられているかどうかを検出するためのセンサである。同制御装置は、前ドアカバー53aが閉じられているときセンサ57aは閉状態を検知する。
【0023】
センサ56aとセンサ57aの2個のセンサの代わりに、同図の点線で示すセンサ57a’1個を用いることもできる。このセンサはユニット31が入っていて、なおかつ前ドアカバー53aが閉じられなければ作動しない配置になっている。すなわち、センサ57a’は前ドアカバー53aに取り付けられており、ドアを閉じたときセンサ57a’がユニットの一部に当接して閉状態になったことを検知する。センサ57’が例えばマイクロスイッチのようなもので構成されているときは、ドアを閉じたとき、オンからオフに変化することで閉状態になったと判断する。あるいはその逆に、オフからオンに変化することで閉状態になったと判断するように設定することもできる。
52aから57a(もしくは57a’)までの部品構成と同様なものが、収納スペース50b側にも設けられている。なお前ドアカバー53aと53bとは開閉方向が逆になっている。
前ドアカバー53bには斜め上方から確認できるように設けられた表示装置58が設けられており、必要に応じて本体側の表示部と同様な警告等を表示することができる。
なお、開閉部の形式は両開きドア方式に限定するものではない。ユニット31の出し入れが容易で、密閉空間を作りやすい方式であれば他の方式、例えば引き戸方式でも構わない。
【0024】
以上のような構成によれば、収納スペースを実質的に密閉空間とすることができ、空間をほぼ気密状態に保つことができるので、ユニットを所定時間以上使用しない場合に、そのすぐ下にある収納スペースに収納保管することによって、密閉空間の効果でインキの蒸発乾燥をある程度防止することが可能になり、放置時のインキ乾燥による版胴部目詰まりを防止することができる。したがって、孔版印刷における印刷物画像の乾燥定着に非常に効果が大きい定着向上型インキを用いることが可能になり、紫外線硬化型のような特別インキを使用せず安価な従来型に近い孔版印刷インキを使用しながらも、印刷画像の乾燥性が良好で時間経過とともに完全に定着した印刷画像を得ることができるようになる。
【0025】
図4は専用テーブルの前ドアカバーに設けられた表示装置を示す図である。
2個の黄色点灯ランプ59aと59bおよび2個の赤色点灯ランプ60aと60bと液晶表示部61を有しており、例えば左側の収納スペース50aにユニット31が収納されたことをセンサ56aが検知して、前ドアカバー53aが確実に閉じられていることをセンサ57aが検知すれば、そこから時間経過を計測した結果第1の所定時間、例えば1週間を経過したら左側の黄色点灯ランプ59aを点灯させるとともに、液晶表示部61で「左側のドラムユニットを抜き出して印刷装置でクリーニングモードを実施してください」と表示する。それでもこの操作が行われない場合には、最初から第2の所定時間、例えば2週間を経過した時点で右側の赤色点灯ランプ60aを点灯させるとともに、液晶表示部61で「右側のドラムユニットを抜き出して印刷装置でクリーニングモードを実施しないとインキが固化します」と表示する。これは右側の収納スペース50bの場合にも同様で黄色点灯ランプ59bまたは赤色点灯ランプ60bを点灯させる。
第1、第2の所定時間は、使用するインキの特性と、収納スペースの気密性能等によって具体的な値を定めればよい。
【0026】
収納スペースが1個のみの場合であれば、ユニットが専用テーブル内に収納されて所定時間を過ぎてもそれが取り出されない場合の警告表示は、「専用テーブルの印刷ドラム専用収納スペースに収納されているユニットを取り出して印刷装置本体に装着し、印刷ドラムクリーニングモードを実行してから再び専用テーブルの印刷ドラム専用収納スペースに収納する」ように指示する表示であってもよい。これにより、警告表示があってもユニットを抜き出してそのまま再び装着することを繰り返した場合に、版胴保有インキが乾燥固着してしまい大きなトラブルになってしまうことを防止することができる。
ユニットを抜き出して印刷装置でクリーニングモードを実施した場合には、その後そのユニットを用いて印刷動作をしなくとも再び収納スペース50aまたは50bに収納することで保管することができ、そこから再び時間計測が開始されることになる。
なお、第2の所定時間が過ぎて警告表示を出した後も、引き続きそのユニットがクリーニングされない場合は、印刷装置本体の製版・印刷キーの作動を禁止して、前記の表示を繰り返すことで、次の印刷に掛かる前に、必ず対応するユニットのクリーニングが実行されるようにすると良い。
【0027】
以上のような構成によれば、ユニットが所定時間を過ぎてもそれが取り出されないことを検出した場合、すなわち、検知センサ56aと検知センサ57aが共に作動状態であるときには、いかに密閉空間とは言ってもユニットを長期間放置してしまえば版胴保有インキの高粘度化による版胴目詰りが発生してしまうので、所定時間以上使用しない場合にそれを検出して操作者に警告を表示することで、操作を忘れてインキを固着させてしまうといったトラブルの発生を未然に防止することができる。
【0028】
図5は孔版印刷装置の操作表示部を示す図である。
ここでも黄色点灯ランプ63と赤色点灯ランプ64と液晶表示部65を有しており、孔版印刷装置1に特定のユニット31が装着されて所定の印刷が行われそれが終了してもユニット31が取り出されないことを、図示しないユニット装着検出センサ66が検出した場合には、直ちに液晶表示部65で「ドラムユニットを抜き出して専用テーブルに収納してください」と表示する。もちろん、ユニット装着検出センサ66が、ドラムユニットが抜かれたことを検出した場合には、直ちに表示を消す。
定着性を向上させたインキを使用する場合には印刷ジョブが終了の度に必ずドラムユニットを専用テーブルに保管するように警告表示させることで、ドラムユニットを印刷装置内にそのままにしておいて忘れて長期間放置してしまい、版胴保有インキの高粘度化による版胴目詰りを発生させてしまう、またはインキを固着させてしまうといったトラブルが発生することを未然に防止することができる。
【0029】
印刷終了からの経過時間を、図示しない孔版印刷装置1の制御装置67の計時装置が計測していて、第3の所定時間として例えば15分を経過してもドラムユニットが抜かれないことを検出センサ66が検出した場合には、警告表示灯としての黄色点灯ランプ63を点灯させるとともに、液晶表示部65で「ドラムユニットを抜き出して専用テーブルに収納してください」の表示を継続する。注意喚起のため、黄色点灯ランプ63を点滅させても良いし、液晶表示を点滅させても良い。もちろん、15分以内に同じユニット装着状態のまま次の印刷動作または製版動作が実施された場合には、この警告表示はクリアされる。
【0030】
最後の印刷動作が終了してから第4の所定時間として例えば24時間が経過してもそのままである場合には、制御装置67が、孔版印刷機の製版操作または印刷操作を禁止し、製版スタートキー68または印刷スタートキー69を押すと黄色点灯ランプ63が点灯するとともに、液晶表示部65で「クリーニングモードを実施した後でないと製版・印刷操作ができません」と表示する。制御装置67はそのように動作と表示を制御する。所定時間を過ぎた場合には印刷ドラムクリーニングモードを実行してからでないと次の製版または印刷の動作スタートが可能にならないようにすることで、比較的短い間隔で印刷装置を使い続ける場合には特別な操作をしなくてもいいようにして操作者の負担を減らし、しかしながら時間間隔があいてしまってそのままでは最初から画像が出にくくなりそうな場合には必ずクリーニング操作をしないと製版印刷ができないようにすることで、版胴目詰りのトラブル発生を未然に防止するとともに、トラブルを発生させずに使い続けることが可能になる。
操作表示部62にはクリーニングモードキー70が設けられており、予め設定されたクリーニング動作を実施する。この動作実施によって制御装置67は製版または印刷動作の禁止を解除し、製版スタートキーなどの動作を許可する。その結果、製版スタートキー68が操作可能になると同時に時間経過のデータがクリアされて再び0から計測が開始される。
【0031】
もしもそれでもクリーニング操作が行われない場合には、24時間経過時点から赤色点灯ランプ64を点灯させるとともに、液晶表示部65で「クリーニングモードを実施してください」の表示を継続する。更にそこから第5の所定時間として例えば48時間経過時点で孔版印刷装置1の制御装置67は、電源が供給されている限り自動的に前記予め設定されたクリーニング動作を実施するように動作を制御する。
警告表示があっても、ユニットを抜き出してドラムクリーニングモードを実行することが忘れられた場合には、装置は自動的にドラムクリーニングモードを実行することによって、長期間の放置で版胴保有インキが乾燥固着してしまい大きなトラブルになってしまうことを未然に防止することができる。
第1、第2、第3の所定時間は使用するインキの特性に合わせて具体的な時間を定めればよい。
【0032】
次にクリーニングモードの動作を説明する。
まずは装着されているユニットの版胴から使用済みの原紙を剥して排版部に搬送しここに圧縮収納する。次にユニットの版胴に製版動作を実施しない未製版の原紙を搬送、給版してその外周に巻き付け装着する。この後円筒状版胴を所定回転だけ回転駆動させながらプレスローラの押圧をONにすることで、版胴を構成する円筒状金属体41の穴部とメッシュスクリーン42を強制的にインキ通過させて、未製版の原紙内面に向けて十分な量のインキを供給するという動作を実施する。その後この未製版の原紙を版胴から剥して排版部に搬送し圧縮収納する。そして再びユニットの版胴に製版動作を実施しない未製版の原紙を搬送、給版してその外周に巻き付け装着する。こうして版胴の保有している目詰まりしやすくなったインキを原紙とともに排版排出させて、版胴を目詰まりしにくい状態にするのがクリーニングモードの動作である。
【0033】
図6は孔版印刷装置および専用テーブルの動作制御と表示に関するブロック図である。
前記実施例では専用テーブルに計時装置を備えた制御装置72を有して更に専用テーブルの表示装置58によって、所定時間以上ドラムユニットが専用テーブル内に収納されたまま取り出されない場合の警告表示を実施したが、専用テーブルには特別な制御装置72および表示装置58を有することなく、その制御を全て孔版印刷装置の制御装置67が実施して、表示については孔版印刷装置の操作パネルにおける表示部を利用することも可能である。そのためには、印刷装置本体と専用テーブルを任意の方法で電気的に接続して、必要な情報の授受が行えるようにしておく必要がある。それによって、ドラムユニット収納検知センサ56a、56bおよびドアカバー開閉検知センサ57a、57bの情報は直接孔版印刷装置の制御装置67がこれを処理することになる。
【0034】
本構成によれば、ユニットが装着収納されて以降所定時間を過ぎてもそれが取り出されないことを、孔版印刷装置本体の制御装置67が判断した場合には、孔版印刷装置の表示部において警告表示をするようにしたので、専用テーブルは表示装置を必要としなくなり低価格化ができ、操作者にとって下の方にあって見難い場所の表示装置ではなく操作時に必ず確認する孔版印刷装置の表示部で警告表示を見るので、いかに警告表示があってもそれを見落としていてユニットを長期間放置してしまい、版胴保有インキの高粘度化による版胴目詰りを発生させてしまうとか、インキを固着させてしまうといったトラブルの発生を未然に防止することができる。
【0035】
図7aないし図7cは孔版印刷装置の制御装置のフローチャートである。
同フローチャートは3枚で一連の流れを示している。同図において、四角の枠に囲まれた符号は、同じ符号同士相互に連結していることを示す。
同図に示した所定時間はすべて一例として示したものである。
【0036】
本発明の印刷装置で使用する定着性向上インキについて補足しておく。
デジタル孔版印刷装置用のインキとしては従来から油中水型エマルジョンインキが使用されているが、通常はその中に常温で硬化するような性質の樹脂を含有していない。しかしその乾燥性定着性を向上させる方法としては、油相成分にアルキド樹脂やロジン変性フェノール等の樹脂を入れる方法や、水相成分に各種の水溶性樹脂や樹脂エマルジョンラテックスを入れるといった方法が採用できる。しかしこうした樹脂を入れると版胴部で放置によって目詰まりを起こしてしまう。
【0037】
ユニットが専用テーブル内に収納されて所定時間を過ぎてもそれが取り出されない場合の警告表示をした場合、制御装置は、そこから所定時間内に専用テーブルに収納されているユニットが取り出されたことを検出し、次に所定時間内に孔版印刷装置にドラムユニットが装着されてクリーニングモードキーが押され、クリーニングモードが終了後にドラムユニットが抜かれて再び専用テーブル内に収納されたことを検出した場合、またはクリーニングモードが終了後に同じドラムで製版動作が実施された場合には正常に操作が行われたと判断する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例である孔版製版印刷装置及び専用テーブルの全体概略図である。
【図2】本発明の印刷ドラムを示す図である。
【図3】専用テーブルを上から見た断面の図である。
【図4】専用テーブルの前ドアカバーに設けられた表示装置を示す図である。
【図5】孔版印刷装置の操作表示部を示す図である。
【図6】孔版印刷装置および専用テーブルの動作制御と表示に関するブロック図である。
【図7a】孔版印刷装置の制御装置のフローチャートその1である。
【図7b】孔版印刷装置の制御装置のフローチャートその2である。
【図7c】孔版印刷装置の制御装置のフローチャートその3である。
【符号の説明】
【0039】
1 孔版製版印刷装置
2 専用テーブル
10 印刷ドラム
31 印刷ドラムユニット
38 レール状部材
39 固定ガイドレール
50 印刷ドラム専用収納スペース
51 テーブル用固定ガイドレール
59、63 黄色点灯ランプ
60、64 赤色点灯ランプ
61、65 液晶表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔版印刷装置載置用の専用テーブル付き孔版印刷装置であって、前記専用テーブルは前記孔版印刷装置から取り外された印刷ドラムユニット(以下単にユニットという)を収納できる印刷ドラム収納スペース(以下単に収納スペースという)を少なくとも1個有し、該収納スペースは前記ユニットを出し入れ可能な開閉部を有し、該開閉部を閉じたとき、前記収納スペースは気密が保持され、実質的に密閉空間を形成し、前記収納スペースに前記ユニットが収納され、前記開閉部が閉状態になったことを検知する少なくとも1個のセンサとを有し、前記孔版印刷装置は警告表示を行うことのできる表示部と、計時装置を備えた制御装置とを有し、該制御装置は、前記ユニットが前記収納スペースに収納され、且つ、前記開閉部が閉状態になった時点から計時を行い、予め定めた第1の所定の時間が経過しても前記センサが作動している場合には前記表示部においてインキ固化の危険性を知らせる表示、もしくは、インキ固化を防ぐための作業を指示する表示を行うことを特徴とする専用テーブル付き孔版印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記表示は前記収納スペースに収納されている前記ユニットを取り出して印刷装置本体に装着し、印刷ドラムクリーニングモードを実行してから再び前記収納スペースに収納するように指示する表示であることを特徴とする専用テーブル付き孔版印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記表示が行われた場合、予め定めた第2の所定の時間内であれば、そのまま次の製版または印刷の動作を許可し、前記第2の所定時間を超えた場合は、印刷ドラムクリーニングモードが実行された場合に、次の製版または印刷の動作を許可することを特徴とする専用テーブル付き孔版印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記制御装置は、前記ユニットが印刷工程終了後は、前記表示部に、ドラムユニットを抜き出して専用テーブルに収納するように促す表示を行うことを特徴とする専用テーブル付き孔版印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記制御装置は、前記ユニットが印刷工程終了後、予め定めて第3の所定時間が経過しても継続して印刷装置本体に装着されたままであると判断したときは、警告表示を行うとともに液晶表示に再度同様の表示を行うことを特徴とする専用テーブル付き孔版印刷装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記制御装置は、前記ユニットが印刷工程終了後、予め定めた第4の所定時間が経過しても継続して印刷装置本体に装着されたままであると判断したときは、クリーニングを行うよう前記表示部に表示し、クリーニングが終了するまでは次の製版、もしくは印刷を禁止することを特徴とする専用テーブル付き孔版印刷装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1つに記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記制御装置は、前記ユニットが印刷工程終了後、予め定めた第5の所定時間が経過しても継続して印刷装置本体に装着されたままであると判断したときは、自動的にドラムクリーニングモードを実行することを特徴とする専用テーブル付き孔版印刷装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の専用テーブル付き孔版印刷装置において、前記専用テーブルは、計時装置を備えた制御装置と、表示装置とを有し、該表示装置は、前記印刷装置本体が有する前記表示部に表示する内容と同様な表示を行うことを特徴とする専用テーブル付き孔版印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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