射出成形品の製造装置及び製造方法
【課題】射出成形品の貫通孔における開口面積の大きい側の開口部に、バリが形成されるようにすること。
【解決手段】型閉じ及び型開きが可能であり且つ型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間が内部に形成される第一金型12及び第二金型14のうち第一金型12に形成され、且つ先端面18aの面積が第二金型14とつながる位置における断面積よりも大きい柱状の貫通孔形成用突出部18の先端面18aを、型閉じ状態で第二金型14と面接触させた状態で、成形空間内へ溶融樹脂を射出充填し、この射出充填した溶融樹脂が硬化した後に、型開き状態で、硬化した溶融樹脂を先端面18a側から無理抜きして、硬化した溶融樹脂を貫通孔形成用突出部18から取り外して、硬化した溶融樹脂からなる射出成形品を形成する。
【解決手段】型閉じ及び型開きが可能であり且つ型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間が内部に形成される第一金型12及び第二金型14のうち第一金型12に形成され、且つ先端面18aの面積が第二金型14とつながる位置における断面積よりも大きい柱状の貫通孔形成用突出部18の先端面18aを、型閉じ状態で第二金型14と面接触させた状態で、成形空間内へ溶融樹脂を射出充填し、この射出充填した溶融樹脂が硬化した後に、型開き状態で、硬化した溶融樹脂を先端面18a側から無理抜きして、硬化した溶融樹脂を貫通孔形成用突出部18から取り外して、硬化した溶融樹脂からなる射出成形品を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スキャナー等に用いられる接触型イメージセンサーモジュールが備える、射出成形品の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、スキャナーに用いられる接触型イメージセンサーモジュール(CISM:Contact Image Sensor Module、以降の文中では、「CISM」と記載する場合がある)は、複数箇所の貫通孔(アパーチャ)を有する部品(アパーチャアレイ)を備えている。ここで、アパーチャとは、レンズアレイ(複数のレンズをアレイ状に配列したもの)の一部を形成するレンズの絞りを設定するための貫通孔である。
【0003】
このような、貫通孔を有する部品の製造方法としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。
特許文献1に開示されている製造方法は、一対の金型の一方のうち貫通孔に対応する部分に、貫通孔の少なくとも一部分に対応する棒状部材が、他方の金型へ向かう方向に付勢状態で突設されている成形装置を用いる方法である。具体的には、一方の金型が有する成形用凹部に溶融樹脂を供給した後、一対の金型を型閉じ状態としてプレス成形することにより、貫通孔を有する部品を製造する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7‐266354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている製造方法では、一対の金型を型閉じ状態とし、さらに、貫通孔を形成するための棒状部材が他方の金型へ付勢された状態で溶融樹脂を硬化させて、貫通孔を有する部品を形成している。すなわち、特許文献1に開示されている製造方法では、型閉じ状態において、棒状部材と他方の金型との接触部分に、金型の分割線(パーティングライン)が形成されている。
このため、成形装置の継続的な使用等により、棒状部材や、型閉じ状態で棒状部材と対向する部分に磨耗等が生じると、棒状部材と他方の金型とが対向する部分に、隙間が形成される可能性がある。
【0006】
そして、貫通孔を有する部品を製造する際に、上記の隙間へ溶融樹脂が侵入して硬化すると、上述した金型の分割線にバリ(余分な突出部分)が形成されるため、貫通孔の周辺にバリが形成されることとなる。
ここで、貫通孔の両端側は、レンズと対向する側の開口部と、この開口部と反対側の開口部、すなわち、CISMの外部へ向けて開口している側の開口部により形成されている。また、外部へ向けて開口している側の開口部は、レンズの絞りを設定するために、レンズと対向する側の開口部よりも内径が小さい。
【0007】
したがって、貫通孔の周辺に形成されるバリのうち、特に、外部へ向けて開口している側の開口部に形成されるバリは、CISMの外部からレンズへ入射する入射光の光路を妨げる。このため、外部へ向けて開口している側の開口部にバリが形成された貫通孔を有する部品を備えたCISMでは、入射光量が低下することになる。
本発明の課題は、射出成形品の貫通孔における開口面積の大きい側の開口部に、バリが形成されるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る射出成形品(例えば、図1の射出成形品1)の製造装置(例えば、図2の射出成形用金型10)は、
型閉じ及び型開きが可能であり且つ前記型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間(例えば、図3の成形空間20)が内部に形成される一組の金型(例えば、図2の第一金型12及び第二金型14)を備え、前記一組の金型のうち一方の金型(例えば、図2の第一金型12)は、前記型閉じ状態で他方の金型(例えば、図2の第二金型14)と先端面(例えば、図2の先端面18a)が面接触する柱状の貫通孔形成用突出部(例えば、図2の貫通孔形成用突出部18)を備え、前記貫通孔形成用突出部の前記先端面の面積は、前記他方の金型とつながる位置における前記貫通孔形成用突出部の断面積よりも大きいことを特徴としている。
【0009】
このような構成により、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部の先端面と他方の金型とが対向する部分に、一方の金型と他方の金型との分割線を形成することが可能となる。
これにより、射出成形品が、型閉じ状態において、貫通孔形成用突出部の先端面と他方の金型とが対向する部分に隙間が形成された状態で製造された場合であっても、射出成形品に発生するバリの形成箇所を、貫通孔のうち、貫通孔形成用突出部の先端面と対応する部分のみに規定することが可能となる。
このため、貫通孔のうち、貫通孔形成用突出部の先端面と対応する部分以外にバリが形成されることを防止することが可能となり、射出成形品の貫通孔における開口面積の大きい側の開口部に、バリが形成されるようにすることが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る射出成形品の製造方法は、
型閉じ及び型開きが可能であり且つ前記型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間が内部に形成される一組の金型のうち一方の金型に形成され、且つ先端面の面積が他方の金型とつながる位置における断面積よりも大きい柱状の貫通孔形成用突出部の前記先端面を前記型閉じ状態で前記他方の金型と面接触させた状態で、前記成形空間内へ前記溶融樹脂を射出充填する樹脂射出工程と、前記樹脂射出工程において前記成形空間内へ射出充填した前記溶融樹脂が硬化した後に、前記硬化した溶融樹脂を前記型開き状態で前記先端面側から無理抜きして、前記硬化した溶融樹脂を前記貫通孔形成用突出部から取り外す無理抜き工程と、を有することを特徴としている。
【0011】
このような構成により、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部の先端面と他方の金型とが対向する部分に、一方の金型と他方の金型との分割線を形成した状態で、射出成形品を製造することが可能となる。
これにより、射出成形品が、型閉じ状態において、貫通孔形成用突出部の先端面と他方の金型とが対向する部分に隙間が形成された状態で製造された場合であっても、射出成形品に発生するバリの形成箇所を、貫通孔のうち、貫通孔形成用突出部の先端面と対応する部分のみに規定することが可能となる。
このため、貫通孔のうち、貫通孔形成用突出部の先端面と対応する部分以外にバリが形成されることを防止することが可能となり、射出成形品の貫通孔における開口面積の大きい側の開口部に、バリが形成されるようにすることが可能となる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る射出成形品の製造方法は、
前記樹脂射出工程では、硬化した状態で前記先端面側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有する溶融樹脂を前記成形空間内へ射出充填することを特徴としている。
このような構成により、射出成形品を製造する際に、無理抜き工程において、成形空間内で硬化した溶融樹脂を、貫通孔形成用突出部の先端面側から無理抜きしても、硬化した溶融樹脂から形成される射出成形品に生じる損傷を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】射出成形品の概略構成を示す図であり、射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図2】射出成形用金型の概略構成を示す断面図である。
【図3】樹脂射出工程における第一金型と第二金型の状態を示す断面図である。
【図4】欠損している射出成形用金型を用いて形成した射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図5】第一の比較対象とする射出成形用金型の概略構成を示す断面図である。
【図6】欠損している射出成形用金型を用いて形成した射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図7】第二の比較対象とする射出成形用金型の概略構成を示す断面図である。
【図8】欠損している射出成形用金型を用いて形成した射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図9】第一実施形態の変形例を示す図である。
【図10】第一実施形態の変形例を示す図である。
【図11】第一実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明に係る射出成形品の製造装置及び製造方法の実施の形態(実施形態)を説明する。
(第一実施形態)
(構成)
まず、図1を用いて、第一実施形態における、射出成形品の構成について説明する。
図1は、射出成形品の概略構成を示す図であり、射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
図1中に示すように、射出成形品1は、複数個のレンズ2の上面(図1中では、レンズ2の上側の面)側に配置される部品であり、板厚方向(図1中では、上下方向。以降の文中でも同様)に貫通する複数箇所の貫通孔4を有している。なお、図1中には、射出成形品1が有する複数箇所の貫通孔4のうち一箇所における、射出成形品1の断面図を示している。
【0015】
第一実施形態では、一例として、射出成形品1を、上述したCISMを形成する部品とした場合について説明する。すなわち、第一実施形態の射出成形品1は、複数個のレンズ2に対応する複数箇所の貫通孔4(アパーチャ)を有する開口板(アパーチャアレイ)である。
【0016】
また、射出成形品1は、後述する射出成形用金型を用いて成形されており、その材料として、例えば、ゴムやエラストマー等、軟質の樹脂材料を用いている。ここで、「軟質の樹脂材料」とは、溶融している状態から硬化した状態へと変化した後に、後述する無理抜き工程において、破断等の損傷を生じることなく弾性変形して、後述する貫通孔形成用突出部から取り外すことが可能な樹脂材料である。また、「軟質の樹脂材料」とは、例えば、硬化した状態における曲げ弾性率が、1900〜3600[MPa]程度となる材料である。
なお、第一実施形態では、一例として、射出成形品1の材料である樹脂材料を、射出成形法で製造可能な、エラストマー樹脂とした場合を説明する。
【0017】
また、射出成形品1のうち、図1中に示す部分である、貫通孔4を有する部分の厚さ(図1中では、上下方向の長さ)は、例えば、1.0[mm]以下に設定されている。なお、第一実施形態では、一例として、射出成形品1のうち貫通孔4を有する部分の厚さを、1.0[mm]に設定した場合を説明する。
貫通孔4の両端は、内径が異なる、二箇所の開口部6a,6bで形成されている。
二箇所の開口部6a,6bのうち一方の開口部6aは、射出成形品1のうち、レンズ2と対向する側と反対の面に開口し、CISMの外部へ向けて開口している。なお、以降の説明では、開口部6aを、「小径開口部6a」と記載する場合がある。
【0018】
一方、二箇所の開口部6a,6bのうち他方の開口部6bは、射出成形品1のうち、レンズ2と対向する側の面に開口している。なお、以降の説明では、開口部6bを、「大径開口部6b」と記載する場合がある。
小径開口部6aの内径Id1は、大径開口部6bの内径Id2未満である。また、小径開口部6aの内径Id1は、レンズ2の絞りを設定した値とするための内径に設定されており、例えば、0.5〜1.0[mm]程度に設定されている。
なお、第一実施形態では、一例として、小径開口部6aを、内径が0.5[mm]程度の円形に形成した場合を説明する。これに伴い、第一実施形態では、一例として、大径開口部6bを、内径が1.0[mm]程度の円形に形成した場合を説明する。
【0019】
また、第一実施形態では、一例として、小径開口部6aの中心と大径開口部6bの中心が、射出成形品1の板厚方向から見て重なっている場合について説明する。
以上により、第一実施形態では、貫通孔4の、射出成形品1の板厚方向と直交する方向(図1中では、紙面と直交する方向)から見た形状が、上底の長さ(先端側の外径)よりも下底の長さ(基端側の外径)が短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が対称な斜辺を形成する台形となっている。すなわち、第一実施形態では、貫通孔4が、貫通孔4の、射出成形品1の板厚方向と直交する方向から見て、貫通孔4の内径面を形成する二本の直線が、共に、単一及び同一のテーパーを有している。
【0020】
ここで、貫通孔4の内径面を形成する直線の傾斜(テーパー)は、例えば、レンズ2の絞りが設計した値となるように設定されている。なお、第一実施形態では、一例として、貫通孔4の内径面を形成する直線の傾斜を、0°以上10°以下の範囲内とした場合を説明する。
なお、図1中に示すレンズ2は、レンズアレイ8を構成する複数のレンズの一つであり、その一部が、貫通孔4内に配置されている。また、レンズアレイ8は、複数のレンズ2をアレイ状に配列(第一実施形態では、複数のレンズ2を直列に配列した状態)して形成されている。
【0021】
(射出成形品1の製造装置)
以下、図1を参照しつつ、図2を用いて、射出成形品1の製造装置について説明する。
射出成形品1(アパーチャアレイ)を製造する装置(射出成形品1の製造装置)としては、例えば、図2中に示すような射出成形用金型10を用いる。なお、図2は、射出成形用金型10の概略構成を示す断面図である。
【0022】
(射出成形用金型10の構成)
以下、射出成形用金型10の概略構成について説明する。
射出成形用金型10は、第一金型12と、第二金型14を備えている。
第一金型12と第二金型14は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型であり、射出成形品1を製造する際には、型閉じ状態で内部に形成される成形空間内に、射出成形品1の材料である溶融樹脂を射出充填する。なお、図2中には、型開き状態の第一金型12及び第二金型14を示している。
【0023】
第一金型12は、射出成形品1の板厚方向(図2中では、上下方向)へ移動可能な可動金型であり、平板部16と、貫通孔形成用突出部18を備えている。
平板部16は、板状に形成されており、第二金型14と対向する面が平坦面で形成されている。
貫通孔形成用突出部18は、第二金型14へ向けて突出する柱状に形成されており、平板部16のうち、第二金型14と対向する面上に設けられて、平板部16と一体に形成されている。なお、第一実施形態では、一例として、貫通孔形成用突出部18を、円柱状に形成した場合を説明する。
【0024】
また、貫通孔形成用突出部18の軸方向への長さ(図2中では、上下方向への長さ)は、第一金型12及び第二金型14を型閉じ状態とした場合に、成形空間内において、第二金型14と貫通孔形成用突出部18の先端面18aが接触する長さに設定されている。ここで、貫通孔形成用突出部18の先端面18aは、平坦面で形成されている。
また、貫通孔形成用突出部18は、先端面18aの面積が、第二金型14とつながる位置における貫通孔形成用突出部18の断面積よりも大きくなるように形成されている。
【0025】
ここで、貫通孔形成用突出部18の先端面18aの面積は、大径開口部6bの内径Id2に対応する値に設定されている。第一実施形態では、上述したように、大径開口部6bの内径Id2を1.0[mm]程度としているため、貫通孔形成用突出部18の先端面18aの面積は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aにおける外径Od1が1.0[mm]程度となる値に設定する。
貫通孔形成用突出部18の基端部18bは、平板部16のうち第二金型14と対向する面上に設けられている。
【0026】
また、第二金型14側から見た貫通孔形成用突出部18の基端部18bの断面積は、小径開口部6aの内径Id1に対応する値に設定されている。第一実施形態では、上述したように、小径開口部6aの内径Id1を0.5[mm]程度としているため、貫通孔形成用突出部18の基端部18bにおける断面積は、貫通孔形成用突出部18の基端部18bにおける外径Od2が0.5[mm]程度となる値に設定する。
【0027】
また、第一実施形態では、上述したように、小径開口部6aの中心と大径開口部6bの中心が、射出成形品1の板厚方向から見て重なっているため、貫通孔形成用突出部18は、先端面18aの中心と基端部18bにおける断面の中心とが、射出成形品1の板厚方向から見て重なっている。これに加え、貫通孔4の内径面を形成する二本の直線が、貫通孔4の、射出成形品1の板厚方向と直交する方向から見て、共に、単一及び同一のテーパーを有している。
【0028】
以上により、第一実施形態では、貫通孔形成用突出部18が、貫通孔形成用突出部18の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図2中では、紙面と直交する方向)から見た形状が、上底の長さ(先端側の外径)よりも下底の長さ(基端側の外径)が短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が対称な斜辺を形成する台形となるように形成されている。すなわち、第一実施形態では、貫通孔形成用突出部18の外径面が、貫通孔形成用突出部18の径方向から見て、二本の直線で形成されており、これら二本の直線が、共に、貫通孔4の内径面に対応する単一及び同一のテーパーを有している。
【0029】
第二金型14は、固定金型であり、溶融樹脂が通過可能な形状に形成された樹脂通路(図示せず)を備えている。なお、樹脂通路は、第一金型12に設けてもよい。
また、第二金型14の第一金型12と対抗する面は、平坦面に形成されている。
さらに、第二金型14のうち、第一金型12及び第二金型14を型閉じ状態とした場合に、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと接触する部分は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと同様、平坦面で形成されている。
【0030】
(射出成形品1の製造方法)
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、射出成形品1の製造方法について説明する。
射出成形品1の製造方法は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aを、型閉じ状態で第二金型14と面接触させた状態で、成形空間内へ溶融樹脂を射出充填する樹脂射出工程を有している。
これに加え、射出成形品1の製造方法は、樹脂射出工程において成形空間内へ射出充填した溶融樹脂が硬化した後に、硬化した溶融樹脂を、型開き状態で先端面18a側から無理抜きして、硬化した溶融樹脂を貫通孔形成用突出部18から取り外す無理抜き工程を有している。
【0031】
(樹脂射出工程)
以下、樹脂射出工程について説明する。
樹脂射出工程では、まず、型開き状態において、第一金型12を移動させ、図3中に示すように、第一金型12と第二金型14とを接触させて第一金型12及び第二金型14を型閉じ状態とし、第一金型12と第二金型14との間に成形空間(キャビティ)20を形成する。なお、図3は、樹脂射出工程における第一金型12と第二金型14の状態を示す断面図である。
【0032】
このとき、第二金型14のうち、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと対向する平坦面を、同じく平坦面で形成されている貫通孔形成用突出部18の先端面18aと面接触させる。
したがって、第一実施形態では、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に、第一金型12と第二金型14との分割線(パーティングライン)が形成されている。また、第一金型12と第二金型14との分割線は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと平行である。
【0033】
そして、上記のように、第一金型12と第二金型14を型閉じ状態とし、第二金型14と貫通孔形成用突出部18の先端面18aとを面接触させた状態で、樹脂通路を介して、成形空間20内へ溶融樹脂を射出充填して、樹脂射出工程を終了する。
ここで、第一実施形態では、溶融樹脂を、硬化した状態で、樹脂射出工程の後工程である無理抜き工程において、破断等の損傷を生じることなく弾性変形して、貫通孔形成用突出部18から取り外すことが可能な軟質の樹脂材料を用いている。
すなわち、第一実施形態では、樹脂射出工程において、硬化した状態で貫通孔形成用突出部18の先端面18a側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有する溶融樹脂を、成形空間20内へ射出充填する。
【0034】
(無理抜き工程)
以下、無理抜き工程について説明する。
樹脂射出工程において成形空間20内へ射出充填した溶融樹脂が硬化した後、第一金型12を移動させて第二金型14から離間させて、第一金型12及び第二金型14を型開き状態とする。
そして、成形空間20内で硬化した溶融樹脂を、貫通孔形成用突出部18の先端面18a側から無理抜きして、硬化した溶融樹脂から形成される射出成形品1を、貫通孔形成用突出部18から取り外し、無理抜き工程の製造を終了する。なお、成形空間20内で硬化した溶融樹脂の、貫通孔形成用突出部18の先端面18a側からの無理抜きは、例えば、第一金型12の構成を、第二金型14側へ突出して成形空間20内へ移動可能なエジェクターピンを備える構成とし、このエジェクターピンを駆動させることにより行う。
【0035】
このとき、樹脂射出工程において成形空間20内へ射出充填した溶融樹脂は、硬化した状態で貫通孔形成用突出部18の先端面18a側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有している。
このため、成形空間20内で硬化した溶融樹脂を、貫通孔形成用突出部18の先端面18a側から無理抜きしても、硬化した溶融樹脂から形成される射出成形品1に生じる損傷を低減可能な状態で、設計した形状の貫通孔4を有する射出成形品1が形成される。
【0036】
(射出成形用金型10が欠損している場合)
以下、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、射出成形用金型10が欠損している状態で、上述した製造方法により形成した射出成形品1について説明する。
射出成形用金型10の継続的な使用等により、貫通孔形成用突出部18の先端面18aや、第二金型14のうち貫通孔形成用突出部18の先端面18aに磨耗等が生じて、この磨耗した部分が欠損すると、型閉じ状態において、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に隙間が形成される。なお、以下の説明は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aのうち、貫通孔形成用突出部18の外径面の一部と連続する部分に磨耗が生じ、この磨耗部分が欠損した場合を前提として記載する。
【0037】
型閉じ状態において、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に隙間が形成された状態で、上述した樹脂射出工程を行うと、成形空間20内と、上記の隙間内へ、溶融樹脂が射出充填される。
ここで、第一実施形態では、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に、第一金型12と第二金型14との分割線が形成されており、この分割線は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと平行である。
【0038】
このため、成形空間20内及び上記の隙間内へ射出充填された溶融樹脂が硬化し、上述した無理抜き工程を行って、硬化した溶融樹脂を貫通孔形成用突出部18の先端面18a側から無理抜きして、貫通孔形成用突出部18から取り外した射出成形品1には、図4中に示すように、貫通孔4のうち、大径開口部6bから貫通孔4の中心側へ向けて、貫通孔4の径方向へ延在する形状のバリ22が形成されることとなる。なお、図4は、欠損している射出成形用金型10を用いて形成した射出成形品1の一部を板厚方向に切った断面図である。また、図4中に示す射出成形品1の部分は、図1中に示した射出成形品1の部分に対応しており、図2及び図3中に示した射出成形用金型10から取り出した後に、上下方向へ逆転させた状態を示している。
【0039】
ここで、射出成形用金型10を用いて射出成形品1を製造する、射出成形品1の製造ラインでは、例えば、製造後の射出成形品1に対する検査(各種センサー等を用いた形状の検査)により、バリ22が形成されている射出成形品1が発見された場合には、例えば、製造ラインの稼動を停止して、射出成形用金型10の状態(形状)を点検する。
この場合、射出成形品1に形成されているバリ22の形状寸法が、レンズ2の絞りが設計した値となる程度の許容可能な形状寸法であれば、バリ22が形成されている射出成形品1であっても、破棄することなく使用可能であるため、射出成形品1の製造に関して、コストの増加及び歩留りの低下を抑制することが可能となる。
【0040】
(動作)
次に、図1から図4を参照して、射出成形品1の動作を説明する。
上述したように、第一実施形態の射出成形品1は、スキャナーに用いられるCISMを形成する部品であり、複数個のレンズ2に対応する複数箇所の貫通孔4を有する開口板である。
したがって、スキャナーの使用時、すなわち、紙面に印刷された文字等を読み取る際に、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光は、小径開口部6aから貫通孔4を通過して、レンズ2へ入射することとなる。
【0041】
ここで、第一実施形態の射出成形用金型10(射出成形品1の製造装置)では、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に、第一金型12と第二金型14との分割線が形成されている。すなわち、第一実施形態の射出成形用金型10では、第一金型12と第二金型14との分割線が、貫通孔形成用突出部18のうち、大径開口部6bに対応する部分に形成されている。
【0042】
このため、射出成形品1が、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に隙間が形成された状態の射出成形用金型10で製造された場合であっても、射出成形品1に発生するバリ22の形成箇所を、貫通孔4のうち、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと対応する部分である、大径開口部6bのみに規定することが可能となる。すなわち、第一実施形態では、射出成形品1の貫通孔4における、開口面積の大きい側の大径開口部6bに、バリ22が形成されるようにすることが可能となる。
【0043】
したがって、第一実施形態では、貫通孔4のうち、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと対応する部分以外、特に、大径開口部6bよりも開口面積の小さい小径開口部6aに、バリが形成されることが防止されているため、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光の光路を妨げる要因の発生を抑制することが可能となる。
以上により、第一実施形態では、射出成形品1が、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に隙間が形成された状態の射出成形用金型10で製造された場合であっても、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光の量(入射光量)が低下することを抑制可能となる。
【0044】
また、第一実施形態では、樹脂射出工程において成形空間20内へ射出充填する溶融樹脂を、硬化した状態で貫通孔形成用突出部18の先端面18a側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有する溶融樹脂としている。
このため、射出成形品1を製造する際に、無理抜き工程において、成形空間20内で硬化した溶融樹脂を、貫通孔形成用突出部18の先端面18a側から無理抜きしても、硬化した溶融樹脂から形成される射出成形品1に生じる損傷を低減可能な状態で、レンズ2の絞りを設計した値とするための、設計した形状の貫通孔4を有する射出成形品1を形成することが可能となる。
【0045】
(第一実施形態の射出成形用金型10及び射出成形品1と、第一実施形態と構成の異なる射出成形用金型及び射出成形品との比較)
ここで、図1から図4を参照しつつ、図5から図8を用いて、第一実施形態の射出成形用金型10と分割線の異なる射出成形用金型と、この射出成形用金型を用いて製造した射出成形品とを、二つ例示して、第一実施形態の射出成形用金型10及び射出成形品1と比較する。
【0046】
I.第一の比較対象
比較対象とする第一の射出成形用金型としては、例えば、図5中に示すように、貫通孔形成用突出部18の構成が、先端面18aの面積が、第二金型14とつながる位置における貫通孔形成用突出部18の断面積未満となるように形成されている射出成形用金型10aを例示する。なお、図5は、第一の比較対象とする射出成形用金型10aの概略構成を示す断面図である。また、図5中では、第一実施形態の射出成形用金型10と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
【0047】
この射出成形用金型10aでは、第一実施形態の射出成形用金型10と異なり、第一金型12と第二金型14との分割線が、貫通孔形成用突出部18のうち、小径開口部6aに対応する部分に形成されている。
このため、射出成形用金型10aの状態が、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14との接触部分に隙間が形成された状態である場合、例えば、図6中に示すように、射出成形用金型10aを用いて製造した射出成形品1aは、射出成形品1aに発生するバリ22aの形成箇所が、小径開口部6aとなる。なお、図6は、欠損している射出成形用金型10aを用いて形成した射出成形品1aの一部を板厚方向に切った断面図である。また、図6中に示す射出成形品1aの部分は、図1中に示した射出成形品1の部分に対応しているため、図6中では、第一実施形態の射出成形品1と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
【0048】
II.第二の比較対象
比較対象とする第二の射出成形用金型としては、例えば、図7中に示すように、貫通孔形成用突出部18の構成が、先端面18aの面積が、第二金型14とつながる位置における貫通孔形成用突出部18の断面積未満となるように形成されている射出成形用金型10bを例示する。なお、図7は、第二の比較対象とする射出成形用金型10bの概略構成を示す断面図である。また、図7中では、第一実施形態の射出成形用金型10と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
【0049】
ここで、射出成形用金型10bでは、貫通孔形成用突出部18が、台形断面部24と、方形断面部26から形成されている。なお、台形断面部24及び方形断面部26は、平板部16と一体に形成されている。
台形断面部24は、貫通孔形成用突出部18の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図7中では、紙面と直交する方向)から見た断面の形状が、上底の長さよりも下底の長さが短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が対称な斜辺を形成する台形となっている。
【0050】
方形断面部26は、貫通孔形成用突出部18の径方向から見た断面の形状が、上底と下底の長さが等しく、上底と下底とを結ぶ二本の直線が同一の長さで平行をなしている方形となっている。
これに加え、方形断面部26は、型閉じ状態において、第二金型14に設けられた方形断面部配置孔28内に挿入される。なお、方形断面部配置孔28は、方形断面部26と嵌合する形状に形成されており、断面が円形の凹部である。すなわち、方形断面部配置孔28の内径は、方形断面部26の外径と等しい。
【0051】
ここで、方形断面部26が方形断面部配置孔28内に挿入された状態では、台形断面部24のみが、成形空間20内において、貫通孔4に対応する部分を形成する。
この射出成形用金型10bでは、第一実施形態の射出成形用金型10と異なり、第一金型12と第二金型14との分割線が、貫通孔形成用突出部18のうち、小径開口部6aに対応する部分に形成されているとともに、この分割線は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと垂直をなす状態で、方形断面部配置孔28内に形成されている。
【0052】
このため、射出成形用金型10bの状態が、第一金型12と第二金型14との接触部分、具体的には、方形断面部26の外径面と方形断面部配置孔28の内径面に隙間が形成された状態である場合、例えば、図8中に示すように、射出成形用金型10bを用いて製造した射出成形品1bは、射出成形品1bに発生するバリ22bの形成箇所が、小径開口部6aとなる。これに加え、バリ22bの形状が、CISMの外部へ向けて延在する形状となる。なお、図8は、欠損している射出成形用金型10bを用いて形成した射出成形品1bの一部を板厚方向に切った断面図である。また、図8中に示す射出成形品1bの部分は、図1中に示した射出成形品1の部分に対応しているため、図8中では、第一実施形態の射出成形品1と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
【0053】
III.比較結果
上述したように、第一実施形態の射出成形用金型10及び射出成形品1は、第一及び第二の比較対象と比較して、射出成形品1の貫通孔4における、開口面積の大きい側の大径開口部6bに、バリ22が形成されるようにすることが可能であり、小径開口部6aにバリが形成されることを防止可能であるため、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光の光路を妨げる要因の発生を抑制することが可能となる。
【0054】
(変形例)
第一実施形態においては、貫通孔形成用突出部18の構成を、貫通孔形成用突出部18の径方向から見た形状が、台形となる構成としたが、貫通孔形成用突出部18の構成は、これに限定するものではない。
すなわち、貫通孔形成用突出部18の構成を、例えば、図9中に示すように、方形断面部26と台形断面部24から形成されている構成としてもよい。なお、図9は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0055】
ここで、方形断面部26は、貫通孔形成用突出部18の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図9中では、紙面と直交する方向)から見た形状が、上底と下底の長さ(基端部18bの外径)が等しく、上底と下底とを結ぶ二本の直線が同一の長さで平行をなしている方形となっている。また、方形断面部26は、平板部16のうち、第二金型14と対向する面上に設けられて、平板部16と一体に形成されている。
【0056】
また、台形断面部24は、貫通孔形成用突出部18の径方向から見た形状が、上底の長さ(先端面18aの外径)よりも下底の長さが短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が同一の長さ及び傾斜である台形となっており、方形断面部26の第二金型14と対向する面上に設けられて、方形断面部26と一体に形成されている。
すなわち、図9中に示す貫通孔形成用突出部18は、貫通孔形成用突出部18の外径面を形成する線が、傾斜(テーパー)を有する直線と、貫通孔形成用突出部18の軸方向(図9中では、上下方向)と平行な直線とを連続させた屈曲線で形成されている。
【0057】
このような構成の貫通孔形成用突出部18を備える射出成形用金型10を用いて形成した射出成形品1は、例えば、図10中に示すように、貫通孔4の構成が、貫通孔4の内径面を形成する線が、貫通孔4の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図10中では、紙面と直交する方向)から見て、傾斜(テーパー)を有する直線と、射出成形品1の板厚方向(図10中では、上下方向)と平行な直線とを連続させた屈曲線で形成されることとなる。なお、図10は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0058】
また、第一実施形態においては、貫通孔4の構成を、貫通孔4の内径面を形成する二本の直線が、貫通孔4の径方向から見て、共に、単一及び同一のテーパーを有している構成とした。これに伴い、貫通孔形成用突出部18の構成を、貫通孔形成用突出部18の外径面を形成する二本の直線が、貫通孔形成用突出部18の径方向から見て、互いに同一の長さ及び傾斜となっており、貫通孔4の内径面に対応する単一及び同一のテーパーを有している構成とした。しかしながら、貫通孔4及び貫通孔形成用突出部18の構成は、これらに限定するものではない。
【0059】
すなわち、貫通孔形成用突出部18の構成を、例えば、図11中に示すように、貫通孔形成用突出部18の外径面が、傾斜(テーパー)の異なる直線を連続させた屈曲線(二段テーパー)で形成されている構成とすることにより、貫通孔形成用突出部18の外径面を形成する線が、貫通孔形成用突出部18の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図11中では、紙面と直交する方向)から見て、二種類のテーパーを有している構成としてもよい。なお、図11は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0060】
また、第一実施形態においては、貫通孔形成用突出部18を、円柱状に形成したが、これに限定するものではなく、貫通孔形成用突出部18を、第二金型14側から見た断面形状が多角形である角柱状に形成してもよい。
また、第一実施形態においては、射出成形品1を、複数個のレンズ2に対応する複数箇所の貫通孔4を有する開口板としたが、射出成形品1は、これに限定するものではなく、例えば、インク等の流体を通過させる貫通孔を有するノズル等に適用してもよい。
【0061】
また、第一実施形態においては、樹脂射出工程において成形空間20内へ射出充填する溶融樹脂を、硬化した状態で貫通孔形成用突出部18の先端面18a側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有する溶融樹脂としたが、これに限定するものではない。すなわち、樹脂射出工程において成形空間20内へ射出充填する溶融樹脂を、上記の曲げ弾性率を有していない溶融樹脂としてもよい。この場合、例えば、貫通孔形成用突出部18の外径面を形成する直線が有するテーパーを、0°以上5°以下の範囲内程度とする。
【符号の説明】
【0062】
1 射出成形品、1a 第一の比較対象とする射出成形用金型10aを用いて製造した射出成形品、1b 第二の比較対象とする射出成形用金型10bを用いて製造した射出成形品、2 レンズ、4 貫通孔、6a 開口部(小径開口部)、6b 開口部(大径開口部)、8 レンズアレイ、10 射出成形用金型、10a 第一の比較対象とする射出成形用金型、10b 第二の比較対象とする射出成形用金型、12 第一金型、14 第二金型、16 平板部、18 貫通孔形成用突出部、18a 先端面、18b 基端部、20 成形空間、22 バリ、22a 射出成形品1aに発生するバリ、22b 射出成形品1bに発生するバリ、24 台形断面部、26 方形断面部、28 方形断面部配置孔、Id1 開口部(小径開口部)6aの内径、Id2 開口部(大径開口部)6bの内径、Od1 貫通孔形成用突出部18の先端面18aにおける外径、Od2 貫通孔形成用突出部18の基端部18bにおける外径
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スキャナー等に用いられる接触型イメージセンサーモジュールが備える、射出成形品の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、スキャナーに用いられる接触型イメージセンサーモジュール(CISM:Contact Image Sensor Module、以降の文中では、「CISM」と記載する場合がある)は、複数箇所の貫通孔(アパーチャ)を有する部品(アパーチャアレイ)を備えている。ここで、アパーチャとは、レンズアレイ(複数のレンズをアレイ状に配列したもの)の一部を形成するレンズの絞りを設定するための貫通孔である。
【0003】
このような、貫通孔を有する部品の製造方法としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。
特許文献1に開示されている製造方法は、一対の金型の一方のうち貫通孔に対応する部分に、貫通孔の少なくとも一部分に対応する棒状部材が、他方の金型へ向かう方向に付勢状態で突設されている成形装置を用いる方法である。具体的には、一方の金型が有する成形用凹部に溶融樹脂を供給した後、一対の金型を型閉じ状態としてプレス成形することにより、貫通孔を有する部品を製造する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7‐266354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている製造方法では、一対の金型を型閉じ状態とし、さらに、貫通孔を形成するための棒状部材が他方の金型へ付勢された状態で溶融樹脂を硬化させて、貫通孔を有する部品を形成している。すなわち、特許文献1に開示されている製造方法では、型閉じ状態において、棒状部材と他方の金型との接触部分に、金型の分割線(パーティングライン)が形成されている。
このため、成形装置の継続的な使用等により、棒状部材や、型閉じ状態で棒状部材と対向する部分に磨耗等が生じると、棒状部材と他方の金型とが対向する部分に、隙間が形成される可能性がある。
【0006】
そして、貫通孔を有する部品を製造する際に、上記の隙間へ溶融樹脂が侵入して硬化すると、上述した金型の分割線にバリ(余分な突出部分)が形成されるため、貫通孔の周辺にバリが形成されることとなる。
ここで、貫通孔の両端側は、レンズと対向する側の開口部と、この開口部と反対側の開口部、すなわち、CISMの外部へ向けて開口している側の開口部により形成されている。また、外部へ向けて開口している側の開口部は、レンズの絞りを設定するために、レンズと対向する側の開口部よりも内径が小さい。
【0007】
したがって、貫通孔の周辺に形成されるバリのうち、特に、外部へ向けて開口している側の開口部に形成されるバリは、CISMの外部からレンズへ入射する入射光の光路を妨げる。このため、外部へ向けて開口している側の開口部にバリが形成された貫通孔を有する部品を備えたCISMでは、入射光量が低下することになる。
本発明の課題は、射出成形品の貫通孔における開口面積の大きい側の開口部に、バリが形成されるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る射出成形品(例えば、図1の射出成形品1)の製造装置(例えば、図2の射出成形用金型10)は、
型閉じ及び型開きが可能であり且つ前記型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間(例えば、図3の成形空間20)が内部に形成される一組の金型(例えば、図2の第一金型12及び第二金型14)を備え、前記一組の金型のうち一方の金型(例えば、図2の第一金型12)は、前記型閉じ状態で他方の金型(例えば、図2の第二金型14)と先端面(例えば、図2の先端面18a)が面接触する柱状の貫通孔形成用突出部(例えば、図2の貫通孔形成用突出部18)を備え、前記貫通孔形成用突出部の前記先端面の面積は、前記他方の金型とつながる位置における前記貫通孔形成用突出部の断面積よりも大きいことを特徴としている。
【0009】
このような構成により、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部の先端面と他方の金型とが対向する部分に、一方の金型と他方の金型との分割線を形成することが可能となる。
これにより、射出成形品が、型閉じ状態において、貫通孔形成用突出部の先端面と他方の金型とが対向する部分に隙間が形成された状態で製造された場合であっても、射出成形品に発生するバリの形成箇所を、貫通孔のうち、貫通孔形成用突出部の先端面と対応する部分のみに規定することが可能となる。
このため、貫通孔のうち、貫通孔形成用突出部の先端面と対応する部分以外にバリが形成されることを防止することが可能となり、射出成形品の貫通孔における開口面積の大きい側の開口部に、バリが形成されるようにすることが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る射出成形品の製造方法は、
型閉じ及び型開きが可能であり且つ前記型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間が内部に形成される一組の金型のうち一方の金型に形成され、且つ先端面の面積が他方の金型とつながる位置における断面積よりも大きい柱状の貫通孔形成用突出部の前記先端面を前記型閉じ状態で前記他方の金型と面接触させた状態で、前記成形空間内へ前記溶融樹脂を射出充填する樹脂射出工程と、前記樹脂射出工程において前記成形空間内へ射出充填した前記溶融樹脂が硬化した後に、前記硬化した溶融樹脂を前記型開き状態で前記先端面側から無理抜きして、前記硬化した溶融樹脂を前記貫通孔形成用突出部から取り外す無理抜き工程と、を有することを特徴としている。
【0011】
このような構成により、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部の先端面と他方の金型とが対向する部分に、一方の金型と他方の金型との分割線を形成した状態で、射出成形品を製造することが可能となる。
これにより、射出成形品が、型閉じ状態において、貫通孔形成用突出部の先端面と他方の金型とが対向する部分に隙間が形成された状態で製造された場合であっても、射出成形品に発生するバリの形成箇所を、貫通孔のうち、貫通孔形成用突出部の先端面と対応する部分のみに規定することが可能となる。
このため、貫通孔のうち、貫通孔形成用突出部の先端面と対応する部分以外にバリが形成されることを防止することが可能となり、射出成形品の貫通孔における開口面積の大きい側の開口部に、バリが形成されるようにすることが可能となる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る射出成形品の製造方法は、
前記樹脂射出工程では、硬化した状態で前記先端面側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有する溶融樹脂を前記成形空間内へ射出充填することを特徴としている。
このような構成により、射出成形品を製造する際に、無理抜き工程において、成形空間内で硬化した溶融樹脂を、貫通孔形成用突出部の先端面側から無理抜きしても、硬化した溶融樹脂から形成される射出成形品に生じる損傷を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】射出成形品の概略構成を示す図であり、射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図2】射出成形用金型の概略構成を示す断面図である。
【図3】樹脂射出工程における第一金型と第二金型の状態を示す断面図である。
【図4】欠損している射出成形用金型を用いて形成した射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図5】第一の比較対象とする射出成形用金型の概略構成を示す断面図である。
【図6】欠損している射出成形用金型を用いて形成した射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図7】第二の比較対象とする射出成形用金型の概略構成を示す断面図である。
【図8】欠損している射出成形用金型を用いて形成した射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
【図9】第一実施形態の変形例を示す図である。
【図10】第一実施形態の変形例を示す図である。
【図11】第一実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明に係る射出成形品の製造装置及び製造方法の実施の形態(実施形態)を説明する。
(第一実施形態)
(構成)
まず、図1を用いて、第一実施形態における、射出成形品の構成について説明する。
図1は、射出成形品の概略構成を示す図であり、射出成形品の一部を板厚方向に切った断面図である。
図1中に示すように、射出成形品1は、複数個のレンズ2の上面(図1中では、レンズ2の上側の面)側に配置される部品であり、板厚方向(図1中では、上下方向。以降の文中でも同様)に貫通する複数箇所の貫通孔4を有している。なお、図1中には、射出成形品1が有する複数箇所の貫通孔4のうち一箇所における、射出成形品1の断面図を示している。
【0015】
第一実施形態では、一例として、射出成形品1を、上述したCISMを形成する部品とした場合について説明する。すなわち、第一実施形態の射出成形品1は、複数個のレンズ2に対応する複数箇所の貫通孔4(アパーチャ)を有する開口板(アパーチャアレイ)である。
【0016】
また、射出成形品1は、後述する射出成形用金型を用いて成形されており、その材料として、例えば、ゴムやエラストマー等、軟質の樹脂材料を用いている。ここで、「軟質の樹脂材料」とは、溶融している状態から硬化した状態へと変化した後に、後述する無理抜き工程において、破断等の損傷を生じることなく弾性変形して、後述する貫通孔形成用突出部から取り外すことが可能な樹脂材料である。また、「軟質の樹脂材料」とは、例えば、硬化した状態における曲げ弾性率が、1900〜3600[MPa]程度となる材料である。
なお、第一実施形態では、一例として、射出成形品1の材料である樹脂材料を、射出成形法で製造可能な、エラストマー樹脂とした場合を説明する。
【0017】
また、射出成形品1のうち、図1中に示す部分である、貫通孔4を有する部分の厚さ(図1中では、上下方向の長さ)は、例えば、1.0[mm]以下に設定されている。なお、第一実施形態では、一例として、射出成形品1のうち貫通孔4を有する部分の厚さを、1.0[mm]に設定した場合を説明する。
貫通孔4の両端は、内径が異なる、二箇所の開口部6a,6bで形成されている。
二箇所の開口部6a,6bのうち一方の開口部6aは、射出成形品1のうち、レンズ2と対向する側と反対の面に開口し、CISMの外部へ向けて開口している。なお、以降の説明では、開口部6aを、「小径開口部6a」と記載する場合がある。
【0018】
一方、二箇所の開口部6a,6bのうち他方の開口部6bは、射出成形品1のうち、レンズ2と対向する側の面に開口している。なお、以降の説明では、開口部6bを、「大径開口部6b」と記載する場合がある。
小径開口部6aの内径Id1は、大径開口部6bの内径Id2未満である。また、小径開口部6aの内径Id1は、レンズ2の絞りを設定した値とするための内径に設定されており、例えば、0.5〜1.0[mm]程度に設定されている。
なお、第一実施形態では、一例として、小径開口部6aを、内径が0.5[mm]程度の円形に形成した場合を説明する。これに伴い、第一実施形態では、一例として、大径開口部6bを、内径が1.0[mm]程度の円形に形成した場合を説明する。
【0019】
また、第一実施形態では、一例として、小径開口部6aの中心と大径開口部6bの中心が、射出成形品1の板厚方向から見て重なっている場合について説明する。
以上により、第一実施形態では、貫通孔4の、射出成形品1の板厚方向と直交する方向(図1中では、紙面と直交する方向)から見た形状が、上底の長さ(先端側の外径)よりも下底の長さ(基端側の外径)が短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が対称な斜辺を形成する台形となっている。すなわち、第一実施形態では、貫通孔4が、貫通孔4の、射出成形品1の板厚方向と直交する方向から見て、貫通孔4の内径面を形成する二本の直線が、共に、単一及び同一のテーパーを有している。
【0020】
ここで、貫通孔4の内径面を形成する直線の傾斜(テーパー)は、例えば、レンズ2の絞りが設計した値となるように設定されている。なお、第一実施形態では、一例として、貫通孔4の内径面を形成する直線の傾斜を、0°以上10°以下の範囲内とした場合を説明する。
なお、図1中に示すレンズ2は、レンズアレイ8を構成する複数のレンズの一つであり、その一部が、貫通孔4内に配置されている。また、レンズアレイ8は、複数のレンズ2をアレイ状に配列(第一実施形態では、複数のレンズ2を直列に配列した状態)して形成されている。
【0021】
(射出成形品1の製造装置)
以下、図1を参照しつつ、図2を用いて、射出成形品1の製造装置について説明する。
射出成形品1(アパーチャアレイ)を製造する装置(射出成形品1の製造装置)としては、例えば、図2中に示すような射出成形用金型10を用いる。なお、図2は、射出成形用金型10の概略構成を示す断面図である。
【0022】
(射出成形用金型10の構成)
以下、射出成形用金型10の概略構成について説明する。
射出成形用金型10は、第一金型12と、第二金型14を備えている。
第一金型12と第二金型14は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型であり、射出成形品1を製造する際には、型閉じ状態で内部に形成される成形空間内に、射出成形品1の材料である溶融樹脂を射出充填する。なお、図2中には、型開き状態の第一金型12及び第二金型14を示している。
【0023】
第一金型12は、射出成形品1の板厚方向(図2中では、上下方向)へ移動可能な可動金型であり、平板部16と、貫通孔形成用突出部18を備えている。
平板部16は、板状に形成されており、第二金型14と対向する面が平坦面で形成されている。
貫通孔形成用突出部18は、第二金型14へ向けて突出する柱状に形成されており、平板部16のうち、第二金型14と対向する面上に設けられて、平板部16と一体に形成されている。なお、第一実施形態では、一例として、貫通孔形成用突出部18を、円柱状に形成した場合を説明する。
【0024】
また、貫通孔形成用突出部18の軸方向への長さ(図2中では、上下方向への長さ)は、第一金型12及び第二金型14を型閉じ状態とした場合に、成形空間内において、第二金型14と貫通孔形成用突出部18の先端面18aが接触する長さに設定されている。ここで、貫通孔形成用突出部18の先端面18aは、平坦面で形成されている。
また、貫通孔形成用突出部18は、先端面18aの面積が、第二金型14とつながる位置における貫通孔形成用突出部18の断面積よりも大きくなるように形成されている。
【0025】
ここで、貫通孔形成用突出部18の先端面18aの面積は、大径開口部6bの内径Id2に対応する値に設定されている。第一実施形態では、上述したように、大径開口部6bの内径Id2を1.0[mm]程度としているため、貫通孔形成用突出部18の先端面18aの面積は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aにおける外径Od1が1.0[mm]程度となる値に設定する。
貫通孔形成用突出部18の基端部18bは、平板部16のうち第二金型14と対向する面上に設けられている。
【0026】
また、第二金型14側から見た貫通孔形成用突出部18の基端部18bの断面積は、小径開口部6aの内径Id1に対応する値に設定されている。第一実施形態では、上述したように、小径開口部6aの内径Id1を0.5[mm]程度としているため、貫通孔形成用突出部18の基端部18bにおける断面積は、貫通孔形成用突出部18の基端部18bにおける外径Od2が0.5[mm]程度となる値に設定する。
【0027】
また、第一実施形態では、上述したように、小径開口部6aの中心と大径開口部6bの中心が、射出成形品1の板厚方向から見て重なっているため、貫通孔形成用突出部18は、先端面18aの中心と基端部18bにおける断面の中心とが、射出成形品1の板厚方向から見て重なっている。これに加え、貫通孔4の内径面を形成する二本の直線が、貫通孔4の、射出成形品1の板厚方向と直交する方向から見て、共に、単一及び同一のテーパーを有している。
【0028】
以上により、第一実施形態では、貫通孔形成用突出部18が、貫通孔形成用突出部18の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図2中では、紙面と直交する方向)から見た形状が、上底の長さ(先端側の外径)よりも下底の長さ(基端側の外径)が短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が対称な斜辺を形成する台形となるように形成されている。すなわち、第一実施形態では、貫通孔形成用突出部18の外径面が、貫通孔形成用突出部18の径方向から見て、二本の直線で形成されており、これら二本の直線が、共に、貫通孔4の内径面に対応する単一及び同一のテーパーを有している。
【0029】
第二金型14は、固定金型であり、溶融樹脂が通過可能な形状に形成された樹脂通路(図示せず)を備えている。なお、樹脂通路は、第一金型12に設けてもよい。
また、第二金型14の第一金型12と対抗する面は、平坦面に形成されている。
さらに、第二金型14のうち、第一金型12及び第二金型14を型閉じ状態とした場合に、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと接触する部分は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと同様、平坦面で形成されている。
【0030】
(射出成形品1の製造方法)
以下、図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、射出成形品1の製造方法について説明する。
射出成形品1の製造方法は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aを、型閉じ状態で第二金型14と面接触させた状態で、成形空間内へ溶融樹脂を射出充填する樹脂射出工程を有している。
これに加え、射出成形品1の製造方法は、樹脂射出工程において成形空間内へ射出充填した溶融樹脂が硬化した後に、硬化した溶融樹脂を、型開き状態で先端面18a側から無理抜きして、硬化した溶融樹脂を貫通孔形成用突出部18から取り外す無理抜き工程を有している。
【0031】
(樹脂射出工程)
以下、樹脂射出工程について説明する。
樹脂射出工程では、まず、型開き状態において、第一金型12を移動させ、図3中に示すように、第一金型12と第二金型14とを接触させて第一金型12及び第二金型14を型閉じ状態とし、第一金型12と第二金型14との間に成形空間(キャビティ)20を形成する。なお、図3は、樹脂射出工程における第一金型12と第二金型14の状態を示す断面図である。
【0032】
このとき、第二金型14のうち、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと対向する平坦面を、同じく平坦面で形成されている貫通孔形成用突出部18の先端面18aと面接触させる。
したがって、第一実施形態では、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に、第一金型12と第二金型14との分割線(パーティングライン)が形成されている。また、第一金型12と第二金型14との分割線は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと平行である。
【0033】
そして、上記のように、第一金型12と第二金型14を型閉じ状態とし、第二金型14と貫通孔形成用突出部18の先端面18aとを面接触させた状態で、樹脂通路を介して、成形空間20内へ溶融樹脂を射出充填して、樹脂射出工程を終了する。
ここで、第一実施形態では、溶融樹脂を、硬化した状態で、樹脂射出工程の後工程である無理抜き工程において、破断等の損傷を生じることなく弾性変形して、貫通孔形成用突出部18から取り外すことが可能な軟質の樹脂材料を用いている。
すなわち、第一実施形態では、樹脂射出工程において、硬化した状態で貫通孔形成用突出部18の先端面18a側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有する溶融樹脂を、成形空間20内へ射出充填する。
【0034】
(無理抜き工程)
以下、無理抜き工程について説明する。
樹脂射出工程において成形空間20内へ射出充填した溶融樹脂が硬化した後、第一金型12を移動させて第二金型14から離間させて、第一金型12及び第二金型14を型開き状態とする。
そして、成形空間20内で硬化した溶融樹脂を、貫通孔形成用突出部18の先端面18a側から無理抜きして、硬化した溶融樹脂から形成される射出成形品1を、貫通孔形成用突出部18から取り外し、無理抜き工程の製造を終了する。なお、成形空間20内で硬化した溶融樹脂の、貫通孔形成用突出部18の先端面18a側からの無理抜きは、例えば、第一金型12の構成を、第二金型14側へ突出して成形空間20内へ移動可能なエジェクターピンを備える構成とし、このエジェクターピンを駆動させることにより行う。
【0035】
このとき、樹脂射出工程において成形空間20内へ射出充填した溶融樹脂は、硬化した状態で貫通孔形成用突出部18の先端面18a側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有している。
このため、成形空間20内で硬化した溶融樹脂を、貫通孔形成用突出部18の先端面18a側から無理抜きしても、硬化した溶融樹脂から形成される射出成形品1に生じる損傷を低減可能な状態で、設計した形状の貫通孔4を有する射出成形品1が形成される。
【0036】
(射出成形用金型10が欠損している場合)
以下、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、射出成形用金型10が欠損している状態で、上述した製造方法により形成した射出成形品1について説明する。
射出成形用金型10の継続的な使用等により、貫通孔形成用突出部18の先端面18aや、第二金型14のうち貫通孔形成用突出部18の先端面18aに磨耗等が生じて、この磨耗した部分が欠損すると、型閉じ状態において、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に隙間が形成される。なお、以下の説明は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aのうち、貫通孔形成用突出部18の外径面の一部と連続する部分に磨耗が生じ、この磨耗部分が欠損した場合を前提として記載する。
【0037】
型閉じ状態において、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に隙間が形成された状態で、上述した樹脂射出工程を行うと、成形空間20内と、上記の隙間内へ、溶融樹脂が射出充填される。
ここで、第一実施形態では、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に、第一金型12と第二金型14との分割線が形成されており、この分割線は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと平行である。
【0038】
このため、成形空間20内及び上記の隙間内へ射出充填された溶融樹脂が硬化し、上述した無理抜き工程を行って、硬化した溶融樹脂を貫通孔形成用突出部18の先端面18a側から無理抜きして、貫通孔形成用突出部18から取り外した射出成形品1には、図4中に示すように、貫通孔4のうち、大径開口部6bから貫通孔4の中心側へ向けて、貫通孔4の径方向へ延在する形状のバリ22が形成されることとなる。なお、図4は、欠損している射出成形用金型10を用いて形成した射出成形品1の一部を板厚方向に切った断面図である。また、図4中に示す射出成形品1の部分は、図1中に示した射出成形品1の部分に対応しており、図2及び図3中に示した射出成形用金型10から取り出した後に、上下方向へ逆転させた状態を示している。
【0039】
ここで、射出成形用金型10を用いて射出成形品1を製造する、射出成形品1の製造ラインでは、例えば、製造後の射出成形品1に対する検査(各種センサー等を用いた形状の検査)により、バリ22が形成されている射出成形品1が発見された場合には、例えば、製造ラインの稼動を停止して、射出成形用金型10の状態(形状)を点検する。
この場合、射出成形品1に形成されているバリ22の形状寸法が、レンズ2の絞りが設計した値となる程度の許容可能な形状寸法であれば、バリ22が形成されている射出成形品1であっても、破棄することなく使用可能であるため、射出成形品1の製造に関して、コストの増加及び歩留りの低下を抑制することが可能となる。
【0040】
(動作)
次に、図1から図4を参照して、射出成形品1の動作を説明する。
上述したように、第一実施形態の射出成形品1は、スキャナーに用いられるCISMを形成する部品であり、複数個のレンズ2に対応する複数箇所の貫通孔4を有する開口板である。
したがって、スキャナーの使用時、すなわち、紙面に印刷された文字等を読み取る際に、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光は、小径開口部6aから貫通孔4を通過して、レンズ2へ入射することとなる。
【0041】
ここで、第一実施形態の射出成形用金型10(射出成形品1の製造装置)では、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に、第一金型12と第二金型14との分割線が形成されている。すなわち、第一実施形態の射出成形用金型10では、第一金型12と第二金型14との分割線が、貫通孔形成用突出部18のうち、大径開口部6bに対応する部分に形成されている。
【0042】
このため、射出成形品1が、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に隙間が形成された状態の射出成形用金型10で製造された場合であっても、射出成形品1に発生するバリ22の形成箇所を、貫通孔4のうち、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと対応する部分である、大径開口部6bのみに規定することが可能となる。すなわち、第一実施形態では、射出成形品1の貫通孔4における、開口面積の大きい側の大径開口部6bに、バリ22が形成されるようにすることが可能となる。
【0043】
したがって、第一実施形態では、貫通孔4のうち、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと対応する部分以外、特に、大径開口部6bよりも開口面積の小さい小径開口部6aに、バリが形成されることが防止されているため、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光の光路を妨げる要因の発生を抑制することが可能となる。
以上により、第一実施形態では、射出成形品1が、型閉じ状態において貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14とが対向する部分に隙間が形成された状態の射出成形用金型10で製造された場合であっても、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光の量(入射光量)が低下することを抑制可能となる。
【0044】
また、第一実施形態では、樹脂射出工程において成形空間20内へ射出充填する溶融樹脂を、硬化した状態で貫通孔形成用突出部18の先端面18a側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有する溶融樹脂としている。
このため、射出成形品1を製造する際に、無理抜き工程において、成形空間20内で硬化した溶融樹脂を、貫通孔形成用突出部18の先端面18a側から無理抜きしても、硬化した溶融樹脂から形成される射出成形品1に生じる損傷を低減可能な状態で、レンズ2の絞りを設計した値とするための、設計した形状の貫通孔4を有する射出成形品1を形成することが可能となる。
【0045】
(第一実施形態の射出成形用金型10及び射出成形品1と、第一実施形態と構成の異なる射出成形用金型及び射出成形品との比較)
ここで、図1から図4を参照しつつ、図5から図8を用いて、第一実施形態の射出成形用金型10と分割線の異なる射出成形用金型と、この射出成形用金型を用いて製造した射出成形品とを、二つ例示して、第一実施形態の射出成形用金型10及び射出成形品1と比較する。
【0046】
I.第一の比較対象
比較対象とする第一の射出成形用金型としては、例えば、図5中に示すように、貫通孔形成用突出部18の構成が、先端面18aの面積が、第二金型14とつながる位置における貫通孔形成用突出部18の断面積未満となるように形成されている射出成形用金型10aを例示する。なお、図5は、第一の比較対象とする射出成形用金型10aの概略構成を示す断面図である。また、図5中では、第一実施形態の射出成形用金型10と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
【0047】
この射出成形用金型10aでは、第一実施形態の射出成形用金型10と異なり、第一金型12と第二金型14との分割線が、貫通孔形成用突出部18のうち、小径開口部6aに対応する部分に形成されている。
このため、射出成形用金型10aの状態が、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと第二金型14との接触部分に隙間が形成された状態である場合、例えば、図6中に示すように、射出成形用金型10aを用いて製造した射出成形品1aは、射出成形品1aに発生するバリ22aの形成箇所が、小径開口部6aとなる。なお、図6は、欠損している射出成形用金型10aを用いて形成した射出成形品1aの一部を板厚方向に切った断面図である。また、図6中に示す射出成形品1aの部分は、図1中に示した射出成形品1の部分に対応しているため、図6中では、第一実施形態の射出成形品1と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
【0048】
II.第二の比較対象
比較対象とする第二の射出成形用金型としては、例えば、図7中に示すように、貫通孔形成用突出部18の構成が、先端面18aの面積が、第二金型14とつながる位置における貫通孔形成用突出部18の断面積未満となるように形成されている射出成形用金型10bを例示する。なお、図7は、第二の比較対象とする射出成形用金型10bの概略構成を示す断面図である。また、図7中では、第一実施形態の射出成形用金型10と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
【0049】
ここで、射出成形用金型10bでは、貫通孔形成用突出部18が、台形断面部24と、方形断面部26から形成されている。なお、台形断面部24及び方形断面部26は、平板部16と一体に形成されている。
台形断面部24は、貫通孔形成用突出部18の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図7中では、紙面と直交する方向)から見た断面の形状が、上底の長さよりも下底の長さが短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が対称な斜辺を形成する台形となっている。
【0050】
方形断面部26は、貫通孔形成用突出部18の径方向から見た断面の形状が、上底と下底の長さが等しく、上底と下底とを結ぶ二本の直線が同一の長さで平行をなしている方形となっている。
これに加え、方形断面部26は、型閉じ状態において、第二金型14に設けられた方形断面部配置孔28内に挿入される。なお、方形断面部配置孔28は、方形断面部26と嵌合する形状に形成されており、断面が円形の凹部である。すなわち、方形断面部配置孔28の内径は、方形断面部26の外径と等しい。
【0051】
ここで、方形断面部26が方形断面部配置孔28内に挿入された状態では、台形断面部24のみが、成形空間20内において、貫通孔4に対応する部分を形成する。
この射出成形用金型10bでは、第一実施形態の射出成形用金型10と異なり、第一金型12と第二金型14との分割線が、貫通孔形成用突出部18のうち、小径開口部6aに対応する部分に形成されているとともに、この分割線は、貫通孔形成用突出部18の先端面18aと垂直をなす状態で、方形断面部配置孔28内に形成されている。
【0052】
このため、射出成形用金型10bの状態が、第一金型12と第二金型14との接触部分、具体的には、方形断面部26の外径面と方形断面部配置孔28の内径面に隙間が形成された状態である場合、例えば、図8中に示すように、射出成形用金型10bを用いて製造した射出成形品1bは、射出成形品1bに発生するバリ22bの形成箇所が、小径開口部6aとなる。これに加え、バリ22bの形状が、CISMの外部へ向けて延在する形状となる。なお、図8は、欠損している射出成形用金型10bを用いて形成した射出成形品1bの一部を板厚方向に切った断面図である。また、図8中に示す射出成形品1bの部分は、図1中に示した射出成形品1の部分に対応しているため、図8中では、第一実施形態の射出成形品1と同様の構成に、同一の符号を付して示している。
【0053】
III.比較結果
上述したように、第一実施形態の射出成形用金型10及び射出成形品1は、第一及び第二の比較対象と比較して、射出成形品1の貫通孔4における、開口面積の大きい側の大径開口部6bに、バリ22が形成されるようにすることが可能であり、小径開口部6aにバリが形成されることを防止可能であるため、CISMの外部からレンズ2へ入射する入射光の光路を妨げる要因の発生を抑制することが可能となる。
【0054】
(変形例)
第一実施形態においては、貫通孔形成用突出部18の構成を、貫通孔形成用突出部18の径方向から見た形状が、台形となる構成としたが、貫通孔形成用突出部18の構成は、これに限定するものではない。
すなわち、貫通孔形成用突出部18の構成を、例えば、図9中に示すように、方形断面部26と台形断面部24から形成されている構成としてもよい。なお、図9は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0055】
ここで、方形断面部26は、貫通孔形成用突出部18の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図9中では、紙面と直交する方向)から見た形状が、上底と下底の長さ(基端部18bの外径)が等しく、上底と下底とを結ぶ二本の直線が同一の長さで平行をなしている方形となっている。また、方形断面部26は、平板部16のうち、第二金型14と対向する面上に設けられて、平板部16と一体に形成されている。
【0056】
また、台形断面部24は、貫通孔形成用突出部18の径方向から見た形状が、上底の長さ(先端面18aの外径)よりも下底の長さが短く、上底と下底とを結ぶ二本の直線が同一の長さ及び傾斜である台形となっており、方形断面部26の第二金型14と対向する面上に設けられて、方形断面部26と一体に形成されている。
すなわち、図9中に示す貫通孔形成用突出部18は、貫通孔形成用突出部18の外径面を形成する線が、傾斜(テーパー)を有する直線と、貫通孔形成用突出部18の軸方向(図9中では、上下方向)と平行な直線とを連続させた屈曲線で形成されている。
【0057】
このような構成の貫通孔形成用突出部18を備える射出成形用金型10を用いて形成した射出成形品1は、例えば、図10中に示すように、貫通孔4の構成が、貫通孔4の内径面を形成する線が、貫通孔4の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図10中では、紙面と直交する方向)から見て、傾斜(テーパー)を有する直線と、射出成形品1の板厚方向(図10中では、上下方向)と平行な直線とを連続させた屈曲線で形成されることとなる。なお、図10は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0058】
また、第一実施形態においては、貫通孔4の構成を、貫通孔4の内径面を形成する二本の直線が、貫通孔4の径方向から見て、共に、単一及び同一のテーパーを有している構成とした。これに伴い、貫通孔形成用突出部18の構成を、貫通孔形成用突出部18の外径面を形成する二本の直線が、貫通孔形成用突出部18の径方向から見て、互いに同一の長さ及び傾斜となっており、貫通孔4の内径面に対応する単一及び同一のテーパーを有している構成とした。しかしながら、貫通孔4及び貫通孔形成用突出部18の構成は、これらに限定するものではない。
【0059】
すなわち、貫通孔形成用突出部18の構成を、例えば、図11中に示すように、貫通孔形成用突出部18の外径面が、傾斜(テーパー)の異なる直線を連続させた屈曲線(二段テーパー)で形成されている構成とすることにより、貫通孔形成用突出部18の外径面を形成する線が、貫通孔形成用突出部18の径方向(射出成形品1の板厚方向と直交する方向。図11中では、紙面と直交する方向)から見て、二種類のテーパーを有している構成としてもよい。なお、図11は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0060】
また、第一実施形態においては、貫通孔形成用突出部18を、円柱状に形成したが、これに限定するものではなく、貫通孔形成用突出部18を、第二金型14側から見た断面形状が多角形である角柱状に形成してもよい。
また、第一実施形態においては、射出成形品1を、複数個のレンズ2に対応する複数箇所の貫通孔4を有する開口板としたが、射出成形品1は、これに限定するものではなく、例えば、インク等の流体を通過させる貫通孔を有するノズル等に適用してもよい。
【0061】
また、第一実施形態においては、樹脂射出工程において成形空間20内へ射出充填する溶融樹脂を、硬化した状態で貫通孔形成用突出部18の先端面18a側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有する溶融樹脂としたが、これに限定するものではない。すなわち、樹脂射出工程において成形空間20内へ射出充填する溶融樹脂を、上記の曲げ弾性率を有していない溶融樹脂としてもよい。この場合、例えば、貫通孔形成用突出部18の外径面を形成する直線が有するテーパーを、0°以上5°以下の範囲内程度とする。
【符号の説明】
【0062】
1 射出成形品、1a 第一の比較対象とする射出成形用金型10aを用いて製造した射出成形品、1b 第二の比較対象とする射出成形用金型10bを用いて製造した射出成形品、2 レンズ、4 貫通孔、6a 開口部(小径開口部)、6b 開口部(大径開口部)、8 レンズアレイ、10 射出成形用金型、10a 第一の比較対象とする射出成形用金型、10b 第二の比較対象とする射出成形用金型、12 第一金型、14 第二金型、16 平板部、18 貫通孔形成用突出部、18a 先端面、18b 基端部、20 成形空間、22 バリ、22a 射出成形品1aに発生するバリ、22b 射出成形品1bに発生するバリ、24 台形断面部、26 方形断面部、28 方形断面部配置孔、Id1 開口部(小径開口部)6aの内径、Id2 開口部(大径開口部)6bの内径、Od1 貫通孔形成用突出部18の先端面18aにおける外径、Od2 貫通孔形成用突出部18の基端部18bにおける外径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型閉じ及び型開きが可能であり且つ前記型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間が内部に形成される一組の金型を備え、
前記一組の金型のうち一方の金型は、前記型閉じ状態で他方の金型と先端面が面接触する柱状の貫通孔形成用突出部を備え、
前記貫通孔形成用突出部の前記先端面の面積は、前記他方の金型とつながる位置における前記貫通孔形成用突出部の断面積よりも大きいことを特徴とする射出成形品の製造装置。
【請求項2】
型閉じ及び型開きが可能であり且つ前記型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間が内部に形成される一組の金型のうち一方の金型に形成され、且つ先端面の面積が他方の金型とつながる位置における断面積よりも大きい柱状の貫通孔形成用突出部の前記先端面を前記型閉じ状態で前記他方の金型と面接触させた状態で、前記成形空間内へ前記溶融樹脂を射出充填する樹脂射出工程と、
前記樹脂射出工程において前記成形空間内へ射出充填した前記溶融樹脂が硬化した後に、前記硬化した溶融樹脂を前記型開き状態で前記先端面側から無理抜きして、前記硬化した溶融樹脂を前記貫通孔形成用突出部から取り外す無理抜き工程と、を有することを特徴とする射出成形品の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂射出工程では、硬化した状態で前記先端面側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有する溶融樹脂を前記成形空間内へ射出充填することを特徴とする請求項2に記載した射出成形品の製造方法。
【請求項1】
型閉じ及び型開きが可能であり且つ前記型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間が内部に形成される一組の金型を備え、
前記一組の金型のうち一方の金型は、前記型閉じ状態で他方の金型と先端面が面接触する柱状の貫通孔形成用突出部を備え、
前記貫通孔形成用突出部の前記先端面の面積は、前記他方の金型とつながる位置における前記貫通孔形成用突出部の断面積よりも大きいことを特徴とする射出成形品の製造装置。
【請求項2】
型閉じ及び型開きが可能であり且つ前記型閉じ状態で溶融樹脂が射出充填される成形空間が内部に形成される一組の金型のうち一方の金型に形成され、且つ先端面の面積が他方の金型とつながる位置における断面積よりも大きい柱状の貫通孔形成用突出部の前記先端面を前記型閉じ状態で前記他方の金型と面接触させた状態で、前記成形空間内へ前記溶融樹脂を射出充填する樹脂射出工程と、
前記樹脂射出工程において前記成形空間内へ射出充填した前記溶融樹脂が硬化した後に、前記硬化した溶融樹脂を前記型開き状態で前記先端面側から無理抜きして、前記硬化した溶融樹脂を前記貫通孔形成用突出部から取り外す無理抜き工程と、を有することを特徴とする射出成形品の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂射出工程では、硬化した状態で前記先端面側からの無理抜きが可能な曲げ弾性率を有する溶融樹脂を前記成形空間内へ射出充填することを特徴とする請求項2に記載した射出成形品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−196806(P2012−196806A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61192(P2011−61192)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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