説明

射出成形方法、射出成形品及び射出成形金型

【課題】高い面精度が要求される高品質要求面と、高品質要求面よりも要求される面精度が低い面とを有する射出成形品において、高品質要求面に発生するヒケを要求される面精度が低い面よりも抑制すること。
【解決手段】可動入れ子6を含む固定側金型2と可動側金型4との間に形成されている成形空間へ射出された溶融樹脂Rの表面を可動入れ子6と接触した状態で冷却して固化させ、可動入れ子6と接触した状態で表面が固化した溶融樹脂Rが内部の固化を完了する前に可動入れ子6を移動させて、溶融樹脂Rと可動入れ子6とを離間させた状態で、溶融樹脂Rを冷却して内部の固化を完了させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光学プリズム等、高い面精度が要求される高品質要求面を有する射出成形品と、その射出成形品を製造する射出成形金型及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、光学プリズムのような、高い面精度(平面度)を要求される高品質要求面を有する射出成形品を製造する射出成形方法としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。
特許文献1に開示されている射出成形方法は、成形空間内に射出充填した溶融樹脂が流動可能な時間内で、型開きの途中、または、型開き後に、溶融樹脂を更に射出する。その後、型閉じ状態とした後に金型を僅かに開いて、射出成形品の表面と金型との間に隙間を設けて一定時間保持し、さらに、射出成形品の表面側の溶融樹脂が流動可能な時間内で、型閉じ状態とする方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000‐108185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている射出成形方法では、金型キャビティ内に射出充填した溶融樹脂が流動可能な時間内で、金型全体を開閉しているため、高い面精度が要求される高品質要求面に発生するヒケを、他の面よりも抑制することは困難である。
本発明の課題は、高い面精度が要求される高品質要求面と、この高品質要求面よりも要求される面精度が低い面とを有する射出成形品において、高品質要求面に発生するヒケを、要求される面精度が低い面よりも抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る射出成形方法は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型(例えば、図1の固定側金型2と可動側金型4)のうち少なくとも一方に取り付けられている可動入れ子(例えば、図1の可動入れ子6)を含む前記一組の金型間に前記型閉じ状態において形成されている成形空間へ、溶融樹脂(例えば、図2の溶融樹脂R)を射出する射出工程と、前記射出工程において前記成形空間へ射出された前記溶融樹脂の表面を前記可動入れ子と接触した状態で冷却して固化させる一次冷却工程と、前記一次冷却工程で前記可動入れ子と接触した状態で表面が固化した前記溶融樹脂(例えば、図3の溶融樹脂R)が内部の固化を完了する前に可動入れ子を移動させて、前記溶融樹脂と前記可動入れ子とを離間させる入れ子離間工程と、前記入れ子離間工程で前記溶融樹脂と前記可動入れ子とを離間させた状態で、前記溶融樹脂を冷却して内部の固化を完了させる二次冷却工程と、を有することを特徴としている。
【0006】
このような構成により、入れ子離間工程で可動入れ子を移動させると、二次冷却工程において、表面が固化した溶融樹脂のうち、内部の固化が完了するまで可動入れ子と離間させた部分における金型との熱交換による冷却が、その他の部分における金型との熱交換による冷却よりも阻害されることとなる。
【0007】
これにより、表面が固化した溶融樹脂の内部における固化の進行は、可動入れ子以外の成形空間形成部と接触している表面に近い部分よりも、可動入れ子と離間させた表面に近い部分で遅くなる。
このため、内部の固化が進行する際に表面が固化した溶融樹脂に発生する収縮を、可動入れ子と離間させた表面に近い部分に集中して発生させることが可能となり、内部の固化が進行する溶融樹脂のうち、可動入れ子以外の成形空間形成部と接触している表面に発生するヒケを抑制することが可能となる。
【0008】
また、本発明の一態様に係る射出成形方法は、前記入れ子離間工程では、前記可動入れ子を離間させても前記成形空間へ射出された形状が保持される状態まで表面が固化した前記溶融樹脂が内部の固化を完了する前に、前記可動入れ子を移動させることを特徴としている。
このような構成により、表面が固化した溶融樹脂が内部の固化を完了する前に、入れ子離間工程で可動入れ子を移動させて、内部の固化が完了する前の溶融樹脂と可動入れ子とを離間させても、成形空間へ射出されて表面が固化した溶融樹脂の形状が保持されることとなる。
これにより、内部の固化が進行する溶融樹脂のうち、可動入れ子以外の成形空間形成部と接触している表面に発生するヒケを抑制することが可能となるとともに、内部の固化が完了した溶融樹脂により形成される射出成形品の形状変化を抑制することが可能となる。
【0009】
本発明の一態様に係る射出成形品(例えば、図4の射出成形品P)は、固化した溶融樹脂により形成され、高品質要求面(例えば、図4の高品質要求面P1)と、当該高品質要求面よりも面精度が低い高品質非要求面(例えば、図4の高品質非要求面P2)と、を有し、前記高品質要求面の最大厚みに対する前記溶融樹脂の固化に伴う収縮量をS1とし、前記高品質非要求面の最大厚みに対する前記溶融樹脂の固化に伴う収縮量をS2とした場合に、S1≦S2/2の条件式が成立していることを特徴としている。
【0010】
このような構成により、高い面精度が要求される高品質要求面に形成されたシンクマークの窪み量を、高品質要求面よりも要求される面精度が低い高品質非要求面に形成されたシンクマークの窪み量の半分以下とすることが可能となる。
これにより、射出成形品全体に対し、溶融樹脂の固化により発生するヒケを高品質非要求面に集中して発生させることにより、高品質要求面に発生するヒケを抑制することが可能となる。
このため、高品質要求面に要求される面精度の低下を抑制することが可能となり、射出成形品に要求される品質の低下を抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る射出成形金型(例えば、図1の射出成形金型1)は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型のうち少なくとも一方に取り付けられている可動入れ子と、前記型閉じ状態において前記可動入れ子を含む前記一組の金型間に形成され、且つ溶融樹脂が射出される成形空間を形成する成形空間形成部(例えば、図1の、固定側開口部12の内壁面、可動側金型4のうち固定側開口部12と対向する面、可動入れ子6の斜面)と、前記成形空間へ射出されて前記可動入れ子と接触した状態で表面が固化した前記溶融樹脂が内部の固化を完了する前に可動入れ子を移動させて、内部の固化が完了する前の前記溶融樹脂と前記可動入れ子とを離間させる入れ子駆動部(例えば、図1の入れ子駆動部8)と、を備えることを特徴としている。
【0012】
このような構成により、入れ子駆動部により可動入れ子を移動させると、表面が固化した溶融樹脂のうち、内部の固化が完了するまで可動入れ子と離間させた部分における金型との熱交換による冷却が、その他の部分における金型との熱交換による冷却よりも阻害されることとなる。
これにより、表面が固化した溶融樹脂の内部における固化の進行は、可動入れ子以外の成形空間形成部と接触している表面に近い部分よりも、可動入れ子と離間させた表面に近い部分で遅くなる。
このため、内部の固化が進行する際に表面が固化した溶融樹脂に発生する収縮を、可動入れ子と離間させた表面に近い部分に集中して発生させることが可能となり、内部の固化が進行する溶融樹脂のうち、可動入れ子以外の成形空間形成部と接触している表面に発生するヒケを抑制することが可能となる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る射出成形金型は、前記入れ子駆動部は、前記可動入れ子を離間させても前記成形空間へ射出された形状が保持される状態まで表面が固化した前記溶融樹脂が内部の固化を完了する前に、前記可動入れ子を移動させることを特徴としている。
このような構成により、表面が固化した溶融樹脂が内部の固化を完了する前に、入れ子駆動部により可動入れ子を移動させて、内部の固化が完了する前の溶融樹脂と可動入れ子とを離間させても、成形空間へ射出されて表面が固化した溶融樹脂の形状が保持されることとなる。
これにより、内部の固化が進行する溶融樹脂のうち、可動入れ子以外の成形空間形成部と接触している表面に発生するヒケを抑制することが可能となるとともに、内部の固化が完了した溶融樹脂により形成される射出成形品の形状変化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】射出成形金型の概略構成を示す図である。
【図2】射出工程において溶融樹脂を成形空間へ射出した状態の、射出成形金型の概略構成を示す図である。
【図3】入れ子離間工程において、表面が固化した溶融樹脂から可動入れ子を離間させた状態の、射出成形金型の概略構成を示す図である。
【図4】取り出し工程において固定側金型と可動側金型を型開き状態とした状態の、射出成形金型の概略構成を示す図である。
【図5】射出成形品の構成を示す図である。
【図6】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【図7】本発明の第一実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明に係る射出成形品と、射出成形金型及び射出成形方法の実施の形態(実施形態)を説明する。
(第一実施形態)
(構成)
まず、図1を用いて、第一実施形態における、射出成形金型の構成について説明する。
図1は、射出成形金型1の概略構成を示す図であり、射出成形金型1の断面図である。
図1中に示す射出成形金型1は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型が、型閉じ状態である場合において、一組の金型間に形成される成形空間(キャビティ)内に溶融樹脂を射出し、この射出した溶融樹脂を固化させて射出成形品を製造する装置である。なお、成形空間に関する説明は、後述する。
【0016】
ここで、第一実施形態では、一例として、射出成形品が、光の透過性を有しており、断面形状が正三角形または略正三角形であるプリズム形状である場合について説明する。これは、例えば、印刷機(プリンター)が備えるインクカートリッジに設けた、インク残量を検出するために光を透過させる部品である。
このため、第一実施形態では、溶融樹脂材料として、透明な樹脂を用いる場合について説明する。なお、射出成形品及び溶融樹脂材料の構成は、上記の構成に限定するものではない。
【0017】
ここで、溶融樹脂材料としては、例えば、ABS(Acrylonitrile・Butadiene・Styrene 共重合合成樹脂)、PS(polystyrene)、AS(Acrylonitrile・Stylene 共重合化合物)、PMMA(Poly Methyl Methacrylate)、PC(Polycarbonate)、環状オレフィン系等の樹脂を用いることが可能である。
【0018】
また、上記のように、射出成形品を、光を透過させる部品とする場合、この射出成形品には、少なくとも光の入射面や出射面を形成する面(機能面)が、所望の形状からの変化度合いが少ない面であることが要求される。これは、例えば、射出成形品の面(機能面)に、所望の形状として平面が設定されている場合に、この面(機能面)には、凹凸や表面粗さ等の変化度合いが少ない面であることが要求されることを意味している。
したがって、第一実施形態では、射出成形品を、固化した溶融樹脂により形成され、高い面精度を要求される機能面である高品質要求面と、高品質要求面よりも面精度が低い高品質非要求面を有する光学プリズムとした場合を説明する。
【0019】
射出成形金型1は、図1中に示すように、上述した一組の金型として、固定側金型2と、可動側金型4を備えている。これに加え、射出成形金型1は、可動入れ子6と、入れ子駆動部8と、入れ子駆動制御部10を備えている。なお、図1中では、型閉じ状態の射出成形金型1を示している。
固定側金型2は、ボルト等を用いて、射出成形金型1を保持するための固定盤(図示せず)に取り付けられており、その内部に、固定側開口部12と、入れ子変位用空隙部14と、樹脂通路(図示せず)が設けられている。
固定側開口部12は、溶融樹脂を充填する空間であり、固定側金型2のうち、可動側金型4と対向する面(図1中では、下側の面)に開口している。
【0020】
入れ子変位用空隙部14は、可動入れ子6を内部に配置可能な空間であるとともに、内部に配置した可動入れ子6を移動可能な空間であり、固定側開口部12と連続している。
樹脂通路は、溶融樹脂が移動可能に形成されている。また、樹脂通路の一端側は、固定側開口部12に開口しており、樹脂通路の他端側は、図外の樹脂射出装置に連通している。
樹脂射出装置は、射出成形品の容積・形状等に応じて、溶融樹脂材料(固形樹脂材料等)を計量・可塑化し、この計量・可塑化した溶融樹脂を、樹脂通路へ射出する装置である。
【0021】
また、固定側金型2は、固定側開口部12内へ突出可能なエジェクターピン(図示せず)を有している。このエジェクターピンは、固定側開口部12内に突出していない状態が通常の状態である。
なお、エジェクターピンを駆動させるための具体的な構成例としては、例えば、エジェクターピン及び公知のリターンピンが設けられた上側板材と、エジェクターピン及びリターンピンを押さえて固定するための下側板材を備えた構成がある。この場合、射出成形金型1が有する公知のエジェクター装置により、固定側開口部12内へエジェクターピンを突出させ、固定側開口部12内で固化させた射出成形品を取り出すこととなる。
【0022】
可動側金型4は、図外の駆動機構に連結されており、駆動機構が発生する駆動力を用いて、上下方向(図1中における上下方向)へ移動可能に形成されている。なお、駆動機構とは、例えば、モーターの回転運動を用いた機械式のものや、油等の液体に圧力を加えた液圧式のものがある。
可動入れ子6は、一つの斜面を有する単体の柱状に形成されており、斜面が固定側開口部12と対向している状態で、入れ子変位用空隙部14内へ移動可能に配置されている。ここで、入れ子変位用空隙部14内における可動入れ子6の移動方向は、可動側金型4へ近づく方向及び可動側金型4から離れる方向である。なお、第一実施形態では、一例として、射出成形金型1の構成を、可動入れ子6を一つのみ備えた構成とする。
【0023】
ここで、第一実施形態では、上述したように、射出成形品の構成を、高品質要求面と高品質非要求面を有し、断面形状が正三角形または略正三角形であるプリズム形状としている。
このため、第一実施形態では、固定側金型2と、可動側金型4と、可動入れ子6を、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型、すなわち、固定側金型2と可動側金型4が型閉じ状態である場合において、固定側開口部12の内壁面と、可動側金型4のうち固定側開口部12と対向する面と、可動入れ子6のうち固定側開口部12と対向する面との間に形成される成形空間が、断面形状が正三角形または略正三角形であるプリズム形状に対応するように形成する。
【0024】
すなわち、第一実施形態では、固定側開口部12の内壁面と、可動側金型4のうち固定側開口部12と対向する面と、可動入れ子6の斜面が、成形空間を形成する成形空間形成部を構成している。したがって、第一実施形態の射出成形金型1は、型閉じ状態において可動入れ子6を含む固定側金型2と可動側金型4との間に形成され、溶融樹脂が射出される成形空間を形成する成形空間形成部を備えている。
【0025】
ここで、第一実施形態では、射出成形品が有する面のうち、成形空間内において可動側金型4と対向する面を、所望の形状として平面が設定されており、凹凸や表面粗さ等の変化度合いが少なく、高い面精度を要求される機能面である高品質要求面とする。これに加え、第一実施形態では、射出成形品が有する面のうち、成形空間内において可動入れ子6と対向する面を、高品質要求面よりも面精度が低い高品質非要求面とする。
【0026】
なお、第一実施形態では、一例として、可動入れ子6の斜面を、平坦面で形成した場合について説明する。
入れ子駆動部8は、例えば、エアシリンダー、油圧シリンダー、モーター等を用いて形成されており、固定側金型2に内蔵されている。なお、入れ子駆動部8の構成は、固定側金型2の外面に取り付けられている構成としてもよい。
【0027】
また、入れ子駆動部8は、入れ子変位用空隙部14内へ移動可能に配置されて、可動入れ子6と連結されている入れ子変位部材16を有している。ここで、入れ子変位用空隙部14内における入れ子変位部材16の移動方向は、可動側金型4へ近づく方向及び可動側金型4から離れる方向である。
また、入れ子駆動部8は、入れ子駆動制御部10から入力された指令値に応じて入れ子変位部材16を移動させて、入れ子変位用空隙部14内で可動入れ子6を移動させる。ここで、入れ子変位部材16を移動させる制御、すなわち、入れ子変位用空隙部14内で可動入れ子6を移動させる制御(移動タイミング、移動速度、移動量等の制御)に伴う処理(演算等)は、入れ子駆動制御部10により行う。
【0028】
入れ子駆動制御部10は、例えば、PC(Personal Computer)を用いて形成されており、溶融樹脂が冷却されて固化する度合いに応じて、入れ子変位用空隙部14内における可動入れ子6の移動タイミング等を算出する。そして、この算出した値を、指令値として入れ子駆動部8へ出力する。
ここで、入れ子駆動制御部10には、予め、溶融樹脂材料の物性(ガラス転移点等)や射出成形品の形状寸法(肉厚等)に応じた、溶融樹脂が冷却されて固化する度合いを記憶させておく。
【0029】
また、溶融樹脂が冷却されて固化する度合いとは、具体的に、成形空間へ射出された溶融樹脂の表面が固化するまでに要する表面固化時間と、成形空間へ射出された溶融樹脂が内部の固化を完了するまでに要する固化完了時間である。
ここで、第一実施形態では、表面固化時間を、可動入れ子6を移動させて成形空間へ射出された溶融樹脂から離間させても、成形空間へ射出された形状が保持される状態まで、成形空間へ射出された溶融樹脂の表面が固化する時間である。
これに加え、入れ子駆動制御部10は、成形空間へ溶融樹脂を射出する前に、成形空間へ射出される溶融樹脂が可動入れ子6と接触するように、可動入れ子6の移動タイミング等を算出する。
【0030】
さらに、入れ子駆動制御部10は、記憶させてある表面固化時間及び固化完了時間に応じ、成形空間へ射出されて可動入れ子6と接触した状態で表面が固化した溶融樹脂が内部の固化を完了する前に、可動入れ子6を移動させて、内部の固化が完了する前の溶融樹脂と可動入れ子6とを離間させるように、可動入れ子6の移動タイミング等を算出する。
したがって、入れ子駆動制御部10から指令値の入力を受けた入れ子駆動部8は、成形空間へ射出されて可動入れ子6と接触した状態で表面が固化した溶融樹脂が内部の固化を完了する前に、可動入れ子6を移動させて、内部の固化が完了する前の溶融樹脂と可動入れ子6とを離間させる。
また、第一実施形態では、入れ子駆動制御部10から指令値の入力を受けた入れ子駆動部8は、可動入れ子6を離間させても成形空間へ射出された形状が保持される状態まで表面が固化した溶融樹脂が内部の固化を完了する前に、可動入れ子6を移動させる。
【0031】
(射出成形方法)
次に、図1を参照しつつ、図2から図4を用いて、上述した構成の射出成形金型1を用いて、射出成形品を製造する工程について説明する。
第一実施形態では、射出成形品を製造する際に、射出工程と、保圧工程と、一次冷却工程と、入れ子離間工程と、二次冷却工程と、取り出し工程を含む、射出成形方法を用いる。
【0032】
(射出工程、保圧工程及び一次冷却工程)
以下、射出工程、保圧工程及び一次冷却工程における射出成形金型1の動作を説明する。なお、以下の説明は、型閉じ及び型開きが可能な一組の金型、すなわち、固定側金型2と可動側金型4が型開き状態である状態を前提とする。
射出工程では、まず、可動側金型4を固定側金型2側へ移動させて、可動側金型4と固定側金型2とを接触させ、図1中に示すように、固定側金型2と可動側金型4を型閉じ状態とする。
【0033】
このとき、入れ子駆動制御部10は、可動入れ子6の位置が、成形空間が射出成形品に応じた形状となる位置となるように、可動入れ子6の移動量を算出する。そして、入れ子駆動制御部10は、算出した移動量を指令値として入れ子駆動部8へ出力して、入れ子駆動部8により可動入れ子6を移動させ、成形空間の形状を、射出成形品に応じた形状とする。
【0034】
可動側金型4及び可動入れ子6を移動させて、成形空間を射出成形品に応じた形状とした後、図2中に示すように、計量・可塑化した溶融樹脂Rを成形空間へ射出して、射出工程を終了し、保圧工程へ移行する。なお、図2は、射出工程において溶融樹脂を成形空間へ射出した状態の、射出成形金型1の概略構成を示す図であり、射出成形金型1の断面図である。
【0035】
保圧工程では、可動側金型4及び可動入れ子6の位置を保持して、成形空間において、射出工程で射出した溶融樹脂Rを保圧し、保圧工程を終了した後、一次冷却工程へ移行する。
一次冷却工程では、上記の射出・保圧工程において成形空間へ射出された溶融樹脂Rの表面を、可動入れ子6と接触した状態で、固定側金型2及び可動側金型4との熱交換作用により冷却して固化させる。
【0036】
(入れ子離間工程)
以下、入れ子離間工程における射出成形金型1の動作を説明する。
入れ子離間工程では、一次冷却工程で可動入れ子6と接触した状態で表面が固化した溶融樹脂Rが内部の固化を完了する前に可動入れ子6を移動させて、溶融樹脂Rと可動入れ子6とを離間させる。
具体的には、入れ子離間工程において、入れ子駆動制御部10は、記憶している表面固化時間及び固化完了時間に応じて、成形空間へ射出されて表面が固化した溶融樹脂Rが内部の固化を完了する前に可動入れ子6を移動させて、内部の固化が完了する前の溶融樹脂Rと可動入れ子6とを離間させるように、可動入れ子6の移動タイミング等を算出する。
【0037】
入れ子駆動制御部10が算出した値が、指令値として入れ子駆動部8へ出力されると、入れ子駆動部8は、入力された指令値に応じて入れ子変位部材16を移動させて、入れ子変位用空隙部14内で、可動側金型4から離れる方向へ可動入れ子6を移動させる。
このため、図3中に示すように、一次冷却工程で表面が固化した状態の溶融樹脂Rのうち、可動入れ子6と接触して表面が固化した部分、すなわち、一次冷却工程で固化した状態の溶融樹脂Rのうち、射出成形品の高品質非要求面となる面から、接触していた可動入れ子6が離間する。なお、図3は、入れ子離間工程において、表面が固化した溶融樹脂Rから可動入れ子6を離間させた状態の、射出成形金型1の概略構成を示す図であり、射出成形金型1の断面図である。
【0038】
また、第一実施形態では、入れ子離間工程において、可動入れ子6を離間させても成形空間へ射出された形状が保持される状態まで表面が固化した溶融樹脂Rが内部の固化を完了する前に、可動入れ子6を移動させる。
一次冷却工程で表面が固化し且つ内部の固化が完了する前の溶融樹脂Rと可動入れ子6とを離間させた後、可動入れ子6の位置を保持して入れ子離間工程を終了し、二次冷却工程へ移行する。
【0039】
(二次冷却工程)
以下、二次冷却工程における射出成形金型1の動作を説明する。
二次冷却工程では、固定側金型2と可動側金型4を型閉じ状態とし、さらに、入れ子離間工程において、表面が固化し且つ内部の固化が完了する前の溶融樹脂Rと可動入れ子6とを離間させた位置に保持した状態を、表面が固化した溶融樹脂Rに対し、内部の固化が完了するまで保持する。
このとき、表面が固化した溶融樹脂Rには、内部の固化が進行する際に発生する収縮により、ヒケが発生する。
【0040】
ここで、上記の入れ子離間工程では、表面が固化し且つ内部の固化が完了する前の溶融樹脂Rのうち、射出成形品の高品質非要求面となる面から、接触していた可動入れ子6を離間させている。
このため、二次冷却工程において、表面が固化した溶融樹脂のうち、内部の固化が完了するまで可動入れ子6と離間させた部分、すなわち、射出成形品の高品質非要求面となる面における金型との熱交換による冷却は、その他の部分、すなわち、射出成形品の高品質要求面となる面における金型(可動側金型4)との熱交換による冷却よりも阻害されることとなる。
【0041】
これにより、表面が固化した溶融樹脂Rの内部における固化の進行は、可動入れ子6以外の成形空間形成部と接触している表面に近い部分、すなわち、射出成形品の高品質要求面となる面に近い部分よりも、可動入れ子6と離間させた表面に近い部分、すなわち、射出成形品の高品質非要求面となる面に近い部分で遅くなる。
したがって、内部の固化が進行する際に表面が固化した溶融樹脂Rに発生する収縮を、可動入れ子6と離間させた表面に近い部分、すなわち、射出成形品の高品質非要求面となる面に近い部分に集中して発生させることが可能となる。
【0042】
以上により、内部の固化が進行する溶融樹脂Rのうち、可動入れ子6以外の成形空間形成部と接触している表面、すなわち、射出成形品の高品質要求面に発生するヒケを抑制することが可能となるため、高品質要求面に発生するヒケを、高品質非要求面に発生するヒケよりも抑制することが可能となる。
ここで、射出成形の条件(成形条件)を固定した場合、ヒケ量のバラつきは、射出成形品の収縮率に換算すると、±0.01[%]程度である。
【0043】
以上により、表面が固化した溶融樹脂Rの内部の固化が完了して射出成形品が形成されると、高品質要求面に形成されたシンクマーク(ひけマーク)の窪み量が、高品質非要求面に形成されたシンクマークの窪み量よりも小さい状態の射出成形品が形成される。射出成形品が形成されると、二次冷却工程を終了して、取り出し工程へ移行する。
すなわち、固化した溶融樹脂Rにより形成された射出成形品の高品質非要求面は、形成されたシンクマークの窪み量が、高品質要求面に形成されたシンクマークの窪み量よりも大きいため、高品質非要求面の面精度は、高品質要求面の面精度よりも低くなる。
ここで、上記の「シンクマーク(ひけマーク)」とは、射出成形品の表面に形成された浅い窪みであり、成形空間内に射出された溶融樹脂が冷却されるに従って生じる局部的な内部収縮により、射出成形品の表面が窪むことで形成される部位である。
【0044】
(取り出し工程)
以下、取り出し工程における射出成形金型1の動作を説明する。
取り出し工程では、まず、型閉じ状態の固定側金型2及び可動側金型4に対し、可動側金型4を固定側金型2から離れる方向へ移動させて、図4中に示すように、可動側金型4と固定側金型2とを離間させ、固定側金型2と可動側金型4を型開き状態とする。なお、図4は、取り出し工程において固定側金型2と可動側金型4を型開き状態とした状態の、射出成形金型1の概略構成を示す図であり、射出成形金型1の断面図である。
【0045】
そして、固定側金型2と可動側金型4を型開き状態とした後、固定側開口部12内へエジェクターピンを突出させて、固定側開口部12内(成形空間内)で固化させた射出成形品Pを取り出して、射出成形品Pの製造を終了する。なお、図4中では、射出成形品Pの高品質要求面を、符号「P1」を付して示し、射出成形品Pの高品質非要求面を、符号「P2」を付して示している。
【0046】
以上により、第一実施形態の射出成形方法であれば、表面が固化した溶融樹脂Rが内部の固化を完了する前に、入れ子離間工程で可動入れ子6を移動させて、内部の固化が完了する前の溶融樹脂Rと可動入れ子6とを離間させても、成形空間へ射出されて表面が固化した溶融樹脂Rの形状が保持されることとなる。
これにより、内部の固化が進行する溶融樹脂Rのうち、高品質要求面P1に発生するヒケを抑制することが可能となるとともに、内部の固化が完了した溶融樹脂Rにより形成される射出成形品Pの形状変化を抑制することが可能となる。
【0047】
(射出成形品Pの構成)
次に、図1から図4を参照しつつ、図5を用いて、上述した構成の射出成形金型1及び射出成形方法を用いて製造した射出成形品Pの構成について説明する。
図5は、射出成形品Pの構成を示す図である。
上述したように、射出成形品Pは、表面及び内部の固化が完了した溶融樹脂Rにより形成されており、図5中に示すように、高品質要求面P1と、高品質要求面P1よりも面精度が低い高品質非要求面P2を有している。
【0048】
ここで、高品質要求面P1の最大厚みに対する溶融樹脂Rの固化に伴う収縮量をS1とし、高品質非要求面P2の最大厚みに対する溶融樹脂Rの固化に伴う収縮量をS2とした場合には、以下の条件式(1)が成立している。
S1≦S2/2 … (1)
なお、図5中に示すように、高品質要求面P1の最大厚みは、高品質要求面P1から射出成形品P内に延びる垂線L1の最大長さに対応しており、高品質非要求面P2の最大厚みは、高品質非要求面P2から射出成形品P内に延びる垂線L2の最大長さに対応している。
【0049】
上述したように、第一実施形態の射出成形品Pでは、高品質要求面P1に形成されたシンクマークの窪み量を、高品質要求面P1よりも要求される面精度が低い高品質非要求面P2に形成されたシンクマークの窪み量の半分以下とすることが可能となる。
これにより、射出成形品P全体に対し、溶融樹脂Rの固化により発生するヒケを高品質非要求面P2に集中して発生させることにより、高品質要求面P1に発生するヒケを抑制することが可能となる。
このため、高品質要求面P1に要求される面精度の低下を抑制することが可能となり、光学プリズムに要求される平面度等、射出成形品Pに要求される品質の低下を抑制することが可能となる。
【0050】
また、上述したように、第一実施形態の射出成形金型1であれば、入れ子駆動部8により可動入れ子6を移動させると、表面が固化した溶融樹脂Rのうち、内部の固化が完了するまで可動入れ子6と離間させた部分における金型との熱交換による冷却が、その他の部分における金型との熱交換による冷却よりも阻害されることとなる。
これにより、表面が固化した溶融樹脂Rの内部における固化の進行は、可動入れ子6以外の成形空間形成部と接触している表面に近い部分、すなわち、射出成形品の高品質要求面となる面に近い部分よりも、可動入れ子6と離間させた表面に近い部分、すなわち、射出成形品の高品質非要求面となる面に近い部分で遅くなる。
【0051】
したがって、内部の固化が進行する際に表面が固化した溶融樹脂Rに発生する収縮を、可動入れ子6と離間させた表面に近い部分、すなわち、射出成形品Pの高品質非要求面P2となる面に近い部分に集中して発生させることが可能となる。
以上により、内部の固化が進行する溶融樹脂Rのうち、可動入れ子6以外の成形空間形成部と接触している表面、すなわち、射出成形品Pの高品質要求面P1に発生するヒケを抑制することが可能となるため、高品質要求面P1に発生するヒケを、高品質非要求面P2に発生するヒケよりも抑制することが可能となる。
【0052】
また、第一実施形態の射出成形金型1であれば、表面が固化した溶融樹脂Rが内部の固化を完了する前に、入れ子駆動部8により可動入れ子6を移動させて、内部の固化が完了する前の溶融樹脂Rと可動入れ子6とを離間させても、成形空間へ射出されて表面が固化した溶融樹脂Rの形状が保持されることとなる。
これにより、内部の固化が進行する溶融樹脂Rのうち、射出成形品Pの高品質要求面P1に発生するヒケを抑制することが可能となるとともに、内部の固化が完了した溶融樹脂Rにより形成される射出成形品Pの形状変化を抑制することが可能となる。
【0053】
また、第一実施形態の射出成形金型1であれば、入れ子駆動部8により可動入れ子6を移動させることにより、射出成形品Pの高品質要求面P1に発生するヒケを抑制することが可能となる。
このため、例えば、可動入れ子6内に温度調節部(ヒーター等)を内蔵し、射出成形品Pの高品質非要求面P2となる面の冷却を阻害可能とした場合と比較して、射出成形金型1の構成を、簡略化することが可能となる。
【0054】
これに加え、可動入れ子6内に温度調節部等の構成を内蔵しないため、射出成形品Pが小さい部品であっても、射出成形品Pの高品質要求面P1に発生するヒケを抑制することが可能となる。
また、可動入れ子6の移動タイミング等、可動入れ子6の移動状態を制御することにより、射出成形品Pの高品質要求面P1に発生するヒケを抑制することが可能となるため、制御に要する処理が少なく、射出成形金型1の構成を、簡略化することが可能となる。
【0055】
(変形例)
以下、第一実施形態の変形例を列挙する。
第一実施形態においては、可動入れ子6の構成を、可動入れ子6のうち固定側開口部12と対向する面(斜面)が、高品質非要求面全体と対向する構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図6中に示すように、可動入れ子6の構成を、可動入れ子6のうち固定側開口部12と対向する面が、高品質非要求面の一部のみと対向する構成としてもよい。なお、図6は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0056】
この場合、例えば、図6中に示すように、可動入れ子6の構成を、可動入れ子6のうち固定側開口部12と対向する面が、高品質非要求面の中心及びその周辺部分と対向する構成とする。これは、高品質非要求面の中心及びその周辺部分は、高品質非要求面の外周側と比較して、表面が固化した後に内部の固化が進行する溶融樹脂Rに発生する収縮量が大きいためである。
【0057】
また、第一実施形態においては、可動入れ子6のうち固定側開口部12と対向する面を、平坦面で形成したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図7中に示すように、可動入れ子6のうち固定側開口部12と対向する面を、中央部が最も窪んで連続する湾曲面18で形成してもよい。なお、図7は、第一実施形態の変形例を示す図である。
【0058】
この場合、例えば、図7中に示すように、固定側金型2の構成を、固定側開口部12が設けられていない構成とし、可動側金型4の構成を、可動側開口部20と、樹脂通路(図示せず)が設けられている構成とする。また、可動入れ子6のうち固定側開口部12と対向する面を、湾曲面18のような凹部で形成する場合、成形空間へ射出された溶融樹脂Rは、成形空間内において湾曲面18と接触する形状となるため、高品質非要求面の形状は、平坦面よりも可動入れ子6側へ膨らんだ(突出した)形状となる。このため、二次冷却工程において内部の固化が進行して溶融樹脂Rに発生する収縮が、高品質非要求面となる面に近い部分に集中して発生しても、収縮した高品質非要求面の状態は、平坦面に近づくこととなる。
【0059】
また、第一実施形態においては、射出成形金型1の構成を、可動入れ子6を一つのみ備えた構成としたが、これに限定するものではなく、射出成形品Pの構成が、複数の高品質非要求面を有している構成である場合には、射出成形金型1の構成を、可動入れ子6を複数備えた構成としてもよい。この場合、射出成形金型1の構成を、複数の可動入れ子6に対して、入れ子駆動部8及び入れ子駆動制御部10を個別に備えている構成、すなわち、入れ子駆動部8及び入れ子駆動制御部10を複数備えている構成としてもよい。
【0060】
上記のように、射出成形品Pの構成が、複数の高品質非要求面を有している構成である場合、例えば、高品質要求面が一面のみである場合は、複数の高品質非要求面において、これらの高品質非要求面となる面に近い部分に集中して、内部の固化が進行する溶融樹脂Rの収縮を発生させることが可能となる。このため、高品質要求面となる面に発生するヒケを、さらに抑制することが可能となる。
【0061】
また、第一実施形態においては、固定側金型2に可動入れ子6が取り付けられている構成としたが、これに限定するものではなく、可動側金型4に可動入れ子6が取り付けられている構成としてもよい。また、固定側金型2及び可動側金型4に、それぞれ、可動入れ子6が取り付けられている構成としてもよい。
また、第一実施形態においては、可動入れ子6の一つの面のみが、固定側開口部12と対向している構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、射出成形品Pの構成が、隣り合う二つの高品質非要求面を有している構成である場合には、可動入れ子6のうち隣り合う二つの面が、固定側開口部12と対向している構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 射出成形金型、2 固定側金型、4 可動側金型、6 可動入れ子、8 入れ子駆動部、10 入れ子駆動制御部、12 固定側開口部、14 入れ子変位用空隙部、16 入れ子変位部材、18 湾曲面、20 可動側開口部、R 溶融樹脂、P 射出成形品、P1 高品質要求面、P2 高品質非要求面、L1 高品質要求面から射出成形品内に延びる垂線、L2 高品質非要求面から射出成形品内に延びる垂線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型閉じ及び型開きが可能な一組の金型のうち少なくとも一方に取り付けられている可動入れ子を含む前記一組の金型間に前記型閉じ状態において形成されている成形空間へ、溶融樹脂を射出する射出工程と、
前記射出工程において前記成形空間へ射出された前記溶融樹脂の表面を前記可動入れ子と接触した状態で冷却して固化させる一次冷却工程と、
前記一次冷却工程で前記可動入れ子と接触した状態で表面が固化した前記溶融樹脂が内部の固化を完了する前に可動入れ子を移動させて、前記溶融樹脂と前記可動入れ子とを離間させる入れ子離間工程と、
前記入れ子離間工程で前記溶融樹脂と前記可動入れ子とを離間させた状態で、前記溶融樹脂を冷却して内部の固化を完了させる二次冷却工程と、を有することを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
前記入れ子離間工程では、前記可動入れ子を離間させても前記成形空間へ射出された形状が保持される状態まで表面が固化した前記溶融樹脂が内部の固化を完了する前に、前記可動入れ子を移動させることを特徴とする請求項1に記載した射出成形方法。
【請求項3】
固化した溶融樹脂により形成され、高品質要求面と、当該高品質要求面よりも面精度が低い高品質非要求面と、を有し、
前記高品質要求面の最大厚みに対する前記溶融樹脂の固化に伴う収縮量をS1とし、前記高品質非要求面の最大厚みに対する前記溶融樹脂の固化に伴う収縮量をS2とした場合に、S1≦S2/2の条件式が成立していることを特徴とする射出成形品。
【請求項4】
型閉じ及び型開きが可能な一組の金型のうち少なくとも一方に取り付けられている可動入れ子と、
前記型閉じ状態において前記可動入れ子を含む前記一組の金型間に形成され、且つ溶融樹脂が射出される成形空間を形成する成形空間形成部と、
前記成形空間へ射出されて前記可動入れ子と接触した状態で表面が固化した前記溶融樹脂が内部の固化を完了する前に可動入れ子を移動させて、内部の固化が完了する前の前記溶融樹脂と前記可動入れ子とを、前記溶融樹脂の内部の固化が完了するまで離間させる入れ子駆動部と、を備えることを特徴とする射出成形金型。
【請求項5】
前記入れ子駆動部は、前記可動入れ子を離間させても前記成形空間へ射出された形状が保持される状態まで表面が固化した前記溶融樹脂が内部の固化を完了する前に、前記可動入れ子を移動させることを特徴とする請求項4に記載した射出成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−250508(P2012−250508A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126687(P2011−126687)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】