説明

射出成形方法

【課題】 複数のインサート部品が互いに当接した状態で樹脂と一体化されるインサート射出成形において、インサート部品の位置精度を高めながら、複数のインサート部品の当接状態を確実なものとし、インサート部品の間に射出した樹脂が侵入しないようにする。
【解決手段】 複数のインサート部品が樹脂の射出成形により一体化されたインサート成形方法において、インサート部品1,2が並ぶ方向にインサート部品を押圧挟持できるように、成形金型に対しスライド可能に設けられた一対の挟持部材31,41により、複数のインサート部品1,2を互いに当接状態となるように挟持する挟持工程を設け、挟持工程において、前記一対の挟持部材31,41が、インサート部品を挟持した状態を維持しながらそれぞれスライド可能とされつつ、それぞれの挟持部材31、41が弾性部材33、43によってインサート部品1,2に向けて付勢されるように押圧挟持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック材料やゴム材料を溶融状態で金型内部のキャビティに射出・充填して、金型内で樹脂を固化させて樹脂成形品を成形する射出成形方法において、金型内にインサート部品をインサートして樹脂と一体化した樹脂成形品を製造するいわゆるインサート成形方法に関するものである。特に、本発明は、複数のインサート部品が樹脂に一体化された樹脂成形品を成形する射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
あらかじめ形成された種々のインサート部品を射出成形によって樹脂成形品に一体化するインサート成形は、種々のインサート部品や種々の樹脂材料について行われるに至っている。これらインサート成形品では、軸受けやシャフト部材などといったインサート部品を樹脂成形部に対して精度良く取り付ける必要がある場合がある。
そのようなインサート部品の取付け精度を考慮した樹脂成形品を製造するためには、射出成形金型内でインサート部品を所定の位置に精度良く保持して射出成形を行う必要があり、インサート部品の保持機構として種々の機構が考案されるに至っている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一方の金型に設けられた穴に、軸状のインサート部品を挿入して保持するとともに、穴の底面にインサート部品の端面を当接させつつ、他方の金型に設けられバネによって付勢された挟持部材でインサート部品の他方の端面を押圧して、インサート部品を軸方向に正確に位置決めすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−235012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、インサート成形技術が普及するとともに、樹脂成形品中に複数のインサート部品を特定の様態で一体化する必要が生ずるに至った。
例えば、電気浸透流ポンプに使用される部品では、多孔質のセラミック製インサート部品Iと、金属製の電極Pを、両者が互いに接触端面Sで接触状態となるように、パイプ状の樹脂成形部R中にインサート成形して樹脂成形品とする必要がある(図8)。
【0006】
このような製品は、例えば図9に示したように、セラミック製インサート部品Iと、金属製の電極Pを、互いに接触状態となるように金型に設けられた挟持部材AC,BCにより挟持固定して、金型のキャビティに樹脂を射出して成形することができる。この場合、インサート部品の軸方向の位置を規定するのは、インサート部品を保持した際に位置が固定される挟持部材ACであり、インサート部品を保持した際にも金型に対してスライド可能に設けられバネで付勢された保持部材BCは、インサート部品I,Pの寸法誤差を許容しながら確実に保持する役割を果たす。
【0007】
しかしながら、こうした部品においては、接触端面Sのスライド軸方向の位置を正確に規定する必要がある場合があり、その場合には、図9のように、挟持部材の端面位置によりインサート部品I,Pの位置を規定するようにしたのでは、インサート部品I、Pの精度によって、接触端面Sの位置精度が左右されてしまい、期待する接触端面Sの位置精度が得られないことがあり、製造工程における歩留まりの低下を招くことがある。
【0008】
また、成形する樹脂成形品の使用目的によっては、複数のインサート部品を互いに密着するようにインサート成形を行い、インサート部品の間に射出した樹脂が侵入しないようにすることが必要な場合もある。
【0009】
したがって、本発明の目的は、複数のインサート部品が互いに当接した状態で樹脂と一体化されるインサート射出成形において、インサート部品の位置精度を高めることにある。
また、本発明の他の目的は、複数のインサート部品の当接状態を確実なものとし、インサート部品の間に射出した樹脂が侵入しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者は、鋭意検討の結果、一対の挟持部材を複数のインサート部品を挟持した状態のままで挟持方向にスライド可能として、さらに、それぞれの挟持部材を弾性部材によってインサート部品の方向に付勢すると、インサート部品の位置精度を向上できることを知見し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、複数のインサート部品が樹脂の射出成形により一体化された樹脂成形品の射出成形方法であって、インサート部品が並ぶ方向にインサート部品を押圧挟持できるように、成形金型に対し所定の方向にスライド可能に設けられた一対の挟持部材により、複数のインサート部品を互いに当接状態となるように挟持する挟持工程を有するとともに、挟持工程において、前記一対の挟持部材が、インサート部品を挟持した状態を維持しながら前記所定方向にそれぞれスライド可能とされつつ、それぞれの挟持部材が弾性部材によってインサート部品に向けて付勢されてインサート部品を押圧挟持することを特徴とする射出成形方法である。
【0012】
また、本発明においては、さらに、挟持工程において、一対の挟持部材により複数のインサート部品を挟持した状態で、成形金型の前記所定方向にスライドしない部分に対していずれかのインサート部品の一部を前記所定方向に当接させるようにしてもよい(請求項2)。また、さらに、いずれか一方の挟持部材を付勢する力により、インサート部品の一部と成形金型の挟持方向にスライドしない部分との当接を押圧状態とするようにしてもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のインサート部品が互いに当接した状態で樹脂と一体化されるインサート射出成形において、インサート部品の位置精度、特にインサート部品が当接する当接面の位置精度を高めることができる。
【0014】
また、さらに、請求項2や請求項3に記載したように、挟持工程において、一対の挟持部材により複数のインサート部品を挟持した状態で、成形金型の前記所定方向にスライドしない部分に対していずれかのインサート部品の一部を前記所定方向に当接させたり、弾性部材の付勢する力で押圧するようにした場合には、インサート部品の位置精度をさらに高めることができる。また、このような方法で位置精度をより高めた場合であっても、複数のインサート部品の当接状態を確実なものとし、インサート部品の間に射出した樹脂が侵入してしまうことを抑制できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の射出成形方法により製造される樹脂成形品の断面図。
【図2】本発明の射出成形方法において使用される金型の断面構造を示す模式図。
【図3】本発明の射出成形方法における型開き状態を示す模式図。
【図4】本発明の射出成形方法におけるインサート部品セット工程の状態を示す模式図。
【図5】本発明の射出成形方法におけるインサート部品挟持工程の状態を示す模式図。
【図6】本発明の射出成形方法における型閉じ工程の状態を示す模式図。
【図7】本発明の射出成形方法の第2の実施形態を示す模式図。
【図8】電気浸透流ポンプの構成部品の構造を示す断面図。
【図9】電気浸透流ポンプの構成部品製造するための従来の製造方法における金型断面構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の一例を、電気浸透流ポンプ用の部品を例として説明する。
図1は本発明の射出成形方法により製造される樹脂成形品Aの形態を示す断面図である。
樹脂成形品Aは、全体が円筒状のパイプ状に形成されたポリプロピレン樹脂製の樹脂成形部Qの内側に、あらかじめ円筒状に形成された多孔質のセラミック製インサート部品1と、角棒状の金属製電極部品2とをインサート部品としてインサート成形により一体化した部品である。
【0017】
樹脂成形品Aは、電気浸透流ポンプに組み込まれて使用に供される。電気浸透流ポンプとは、特開2006−22807号公報などに開示されている液体用ポンプであり、液体中にセラミック製多孔質体をはさんで電極を設け、直流電圧を印加すると液体に電気浸透流と呼ばれると呼ばれる流れが生ずる現象を基本原理とするポンプである。樹脂成形品Aには、セラミック製多孔質体と一方の電極が一体化されている。
【0018】
セラミック製インサート部品1と角棒状の金属製電極部品2とは、互いに密着するように当接して、それぞれ樹脂成形部Qと一体化されており、電極部品2の一端は、樹脂成形部Qを貫通して、樹脂成形品Aの外周面から外側に突出している。
樹脂成形品Aにおいては、セラミック製インサート部品1と角棒状の金属製電極部品2が当接する当接面Sの成形品軸方向(m方向)の位置を正確に規定する必要がある。
【0019】
上記樹脂成形品Aを本発明の射出成形方法によって製造するための、射出成形金型の構造を説明する。図2は金型の断面構造を示す模式図であり、型閉じした状態を示している。図中には、インサート部品1と電極2が配置される位置を点線で示している。
【0020】
射出成形金型は、上下方向に2分割して型開きされるキャビティ型5,6と、一方のキャビティ型6に対し左右方向に進退可能に取り付けられるコア型3,4を主要な部材として構成されている。点線で示したインサート部品1,2は、左右方向に互いに当接するように並べられた状態で、コア型3,4の端面の間に挟持されて金型内の所定位置に保持される。すなわち本実施形態においては、コア型3,4(特に後述するコア型先端部31,41)がインサート部品1,2を保持する挟持部材を兼ねている。また、インサート部品1,2が当接する方向とコア型がスライドする方向が略一致するようにされており、コア型3,4は、インサート部品1,2が並ぶ方向にスライドして、インサート部品1,2の当接面Sが圧接され密着するように押圧挟持することができる。
【0021】
キャビティ型5,6の内周面とコア型3,4の外周面とインサート部品1,2によりキャビティCが構成され、キャビティCに溶融状態の樹脂を射出して、樹脂成形品Aを得ることができる。
【0022】
それぞれのコア型3,4は、コア型本体部32,42とコア型先端部31,41とに分割された分割コア型であり、それぞれのコア型本体部32,42は、インサート部品を挟持する方向(以下挟持方向と呼ぶ)にスライド可能とするスライド機構(図示省略)によって一方のキャビティ型6に取り付けられており、コア型先端部31,41は、コア型本体部32,42に対し挟持方向にスライド可能となるように取り付けられるとともに、インサート部品を挟持した状態で、バネ部材33,43によりコア型先端部31,41がインサート部品に向けて付勢されるようになっている。
【0023】
インサート部品1,2を挟持するためにコア型3,4やコア型本体部32,42をスライドさせるためのスライド機構としては、スライドピン機構や油圧機構など公知のスライド機構が採用でき、インサート部品の配置・挟持と型閉じの各工程の順序などに応じて、適宜選択すればよい。
【0024】
セラミック製インサート部品1に当接するコア先端部31の端面31Tは、インサート部品1の端面と密着すべく平坦な面とされている。また、セラミック製インサート部品1と電極2に当接するコア先端部41の端面41Tは、インサート部品1の端面と密着すべく平坦な面とされるとともに、電極2の断面形状と合致するような角溝が形成され、角溝内に電極を収容保持するようにされている。
【0025】
さらに、コア型3,4がスライド可能に取り付けられた側のキャビ型6には、電極部材2の末端部分を収蔵可能な凹部61が設けられており、凹部61には、電極部材2がセラミック製インサート部品1に当接する側端面に対して、挟持方向に当接可能な当接面62が設けられている。
【0026】
本発明の射出成形方法を説明する。
本発明の射出成形方法は、型開き工程、インサート部品セット工程、インサート部品挟持工程、型閉じ工程、射出工程、固化取出し工程を順次行うものであるが、インサート部品セット工程とインサート部品挟持工程と型閉じ工程は、同時並行的に行っても良い。
【0027】
(型開き工程)
図3には、射出成形金型を型開きした状態の模式図を示す。キャビティ型5,6は互いに離間するように型開きされ、コア型3,4もキャビティから遠ざかるように後退位置に後退している。
【0028】
(インサート部品セット工程)(図4)
型開きした状態の金型にインサート部品1,2を所定位置にセットする。部品が所定位置に配置されるように、適宜、樹脂成形品の半径方向に進退可能な仮保持機構(図中に点線で示す)や仮保持治具(図示せず)などを利用することが好ましい。
【0029】
(インサート部品挟持工程)
本工程において、コア型3,4をキャビティ内部に向かって前進させて、インサート部品1,2を挟持する。図5には、インサート部材を挟持した状態を示す。
インサート部品1,2は互いに当接した状態でコア型先端部31、41の間に挟持される。コア型3,4が前進すると、まずコア型先端部31,41がインサート部品1,2に当接する状態となり、さらにコア型本体部32,42を前進させると、コア型先端部31,41とコア型本体部32,42の間のバネ33,43が縮められて、インサート部品1,2はコア型先端部31,41の間で押圧挟持される。
この押圧挟持状態において、コア型先端部31,41はバネ33,43によってインサート部品に向かってそれぞれ付勢されており、かつ、コア型先端部31,41とインサート部品1,2とは、バネ33,43が許容する範囲で一体に挟持方向にスライド可能となっている。
【0030】
さらに、本実施形態においては、
インサート部品1,2が挟持された状態で、一方のインサート部品である電極2の側面2aがキャビティ型6の凹部61の当接面62に当接するようにされている。この当接状態を確実なものとするために、コア型先端部31、41とコア型本体部32,42の間に設けられたバネ33,43の仕様を調整して、電極2の側面2aがキャビティ型の凹部の当接面62に押圧されるようにすることが好ましい。
【0031】
インサート部品セット工程で仮保持機構や治具を使用した場合には、インサート部品の挟持固定が完了したこの時点で仮保持機構を後退させたり治具を外したりしても良い。
【0032】
(型閉じ工程)
インサート部品を挟持した状態で金型5,6の型閉じを行い、樹脂を射出するキャビティCを形成する。図6には、型閉じした状態を示す。型閉じと挟持部材(コア型先端部)31,41の挟持のタイミングは、特に限定されるものでなく、型閉じ工程と挟持工程を同時進行させても良い。
【0033】
(射出工程)
金型内部に形成されたキャビティCにゲート51から液状(射出する樹脂が熱可塑性樹脂であれば溶融状態)の樹脂の射出を行い、キャビティCに樹脂を充填する。樹脂としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂やゴムなどが使用できる。
【0034】
(固化取出し工程)
その後、射出した樹脂が熱可塑性樹脂であれば樹脂を冷却し、あるいは熱硬化性樹脂やゴムであれば樹脂を架橋反応させて、射出した樹脂を固化する。樹脂が固化した後に、金型5,6を型開きして、さらにコア型3,4を後退させて、樹脂成形品Aの取り出しを行う。以上の製造方法により、樹脂成形品Aが得られる。
【0035】
本発明の効果を説明する。
本発明の射出成形方法によれば、インサート部品1,2の挟持工程において、一対の挟持部材(コア型先端部)31,41が、インサート部品1,2を挟持した状態を維持しながら挟持方向にそれぞれスライド可能とされており、さらに、それぞれの挟持部材31,41が弾性部材(本実施形態においてはバネ33,43)によってインサート部品1,2に向けて付勢されるようにインサート部品を押圧挟持することにより、挟持部材とインサート部品1,2は、バネ33,43によりセンタリングされるようになる。そのため、個々のインサート部品1,2に寸法精度のばらつきがあっても、それら誤差が互いに打ち消されて、インサート部品同士の当接面Sの挟持方向位置(本実施形態ではパイプ状樹脂成形品のパイプ軸方向の位置)が所望する許容範囲に入りやすくなり、樹脂成形品の製造の歩留まりを向上させることができる。
【0036】
それぞれのインサート部品1,2を、インサート射出成形に供する前に、挟持方向の寸法誤差の大小によって階層的に分別して、インサート品1,2を、寸法誤差がプラスのもの同士、あるいは、寸法誤差がマイナスのもの同士、寸法誤差のレベルが近いもの同士を組み合わせてやれば、より効果的に寸法誤差を互いに打ち消して、インサート部品1,2同士の当接面Sの挟持方向位置を正確に制御することができる。
【0037】
また、それぞれインサート部品に向けて付勢された挟持部材31,41によって複数のインサート部品が当接面Sが圧接される方向に押圧挟持された状態で挟持され、射出工程に供されるため、インサート部品1,2の間の当接状態が確実に密着状態に維持されて、インサート部品間の隙間に射出した樹脂が侵入して成形不良となることを、防止できる。
【0038】
さらに、本実施形態に示したように、挟持工程において、一対の挟持部材31,41により複数のインサート部品1,2を挟持した状態で、金型6に設けられた凹部61の当接面62に対して電極2の側端面2aを挟持方向に直接当接させるようにすれば、インサート部品1,2の挟持方向(特にインサート部品間の当接面S)の位置決めをより正確に行うことができる。この場合、インサート部品間の当接面Sと電極2の側端面2aとが同一の面となるようにすることが、配置の精度を高める上で特に好ましい。
【0039】
この位置決め効果は、電極2の側端面2aを凹部61の当接面62に当接させる実施形態に限定して得られるものではなく、より一般化して、いずれかのインサート部材の一部分を、成形金型の挟持方向にスライドしない部分に対し、挟持方向に当接するようにしてやれば得られる効果であることは明らかである。さらに、電極2の側端面2aと金型6の当接面62の当接を、挟持部材41に働く付勢力を利用して、押圧状態とすれば、さらに正確な位置決め効果が期待できる。
【0040】
又、本発明では、一対の挟持部材が押圧挟持状態を維持しながら挟持方向にスライド可能に設けられているので、いずれかのインサート部材の一部分を、成形金型の挟持方向にスライドしない部分に対し、挟持方向に当接するようにした場合であっても、インサート部材間の当接状態を良好に維持することができ、この部分に射出した樹脂が侵入するような成形不良が発生することを防止できる。
【0041】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその説明を省略する。
【0042】
図7には、本発明の第2実施形態における金型構造の模式図を示し、図7は、インサート部品1’、2’を挟持した状態で金型を閉じた状態を示している。
本実施の形態においては、コア型先端部31,41とコア型本体部32,42との間にはゴム部材35,45が弾性部材としてバネの代わりに設けられている。このように、コア型先端部31,41とコア型本体部32,42との間に設けられる弾性部材はバネ以外でも良く、ゴムや密閉された気体など、変位に応じて反力を生じさせる弾性部材であればよい。また、コア型先端部31,41とコア型本体部32,42との間に設けられる弾性部材に加えて、油圧や液圧、空気圧などを併用して、コア型先端部31,41がインサート部品1’、2’を押圧する付勢力を増加させることも好ましい実施の形態である。
【0043】
また、本実施形態においては、インサート部材1’、2’はともに、コア型先端部31,41により挟持されて保持、固定されており、キャビティ型5,6の部分とは接触することなく保持される。このように、第1の実施形態におけるような電極2と凹部61との接触はなくすこともできる。本実施形態においても、インサート部材1’、2’の当接面Sを所望する位置に配置でき、製造の歩留まりを向上できる。
【0044】
また、本発明は、金型の型開きの方向や、インサート部材を挟持する方向を変更して実施することもできる。例えば、上記実施形態においては金型の型開き方向を上下方向としてその説明を行っているが、これを左右方向としてもよく、インサート部材を挟持する方向も、上記実施形態の説明では左右方向としているが、これも、上下方向として実施できることは明らかである。
【0045】
また、上記実施形態の説明では、金型の一方(6)に挟持部材(3)(4)がともに設けられている形態について説明したが、一対の挟持部材は、型開きする金型の一方と他方にそれぞれ分けて設けることもできる。例えば、金型を上下方向に型開き可能に構成し、下側の金型に、一方の挟持部材(例えば図2のコア型先端部31とバネ部材33とコア型本体部32とで構成されるような挟持部材3)を上下方向にスライド可能なように設けるとともに、上側の金型に、他方の挟持部材(例えば図2のコア型先端部41とバネ部材43とコア型本体部42とで構成されるような挟持部材4)を上下方向にスライド可能に設けて、これら一対の挟持部材により、インサート部品を上下方向に並べた状態で、上下方向に押圧挟持して保持して、本発明の射出成形方法を実施することもできる。
【0046】
上記実施形態においては、インサート部品が2つである例を示したが、インサート部品は3つあるいはそれ以上であっても良い。なお、インサート部品の材質も特に限定されないが、セラミック、合成樹脂、金属などの材質のインサート部品が使用できる。
【0047】
上記実施形態においては、樹脂成形品Aの樹脂成形部Qがパイプ状である例について説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、樹脂成形部の外側に複数のインサート部品が当接状態で一体化されるような樹脂成形品に対しても適用可能であることは明らかであり、その場合は、挟持部材はコア型と併用されるものではなくなるが、上記実施形態と同様の形態を有する挟持機構を設ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、複数のインサート部品を当接する状態に一体化した樹脂成形品を射出成形により成形するインサート射出成形において、インサート部品の位置精度を高めることができるとともに、インサート部品を互いに密着させて、その間に樹脂が入り込まないようにすることができる。本発明の射出成形方法により製造される樹脂成形品は、例えば、電気浸透流ポンプの構成部品などとして使用することができ、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0049】
A 樹脂成形品
1 セラミック製インサート(第1インサート部品)
2 電極部材(第2インサート部品)
S インサートの当接面
Q 樹脂成形部
3 コア型
31 コア型先端部
32 コア型本体部
33 バネ
4 コア型
41 コア型先端部
42 コア型本体部
43 バネ
5 キャビティ型
51 ゲート
6 キャビティ型
61 凹部
62 当接面
C キャビティ
35,45 ゴム部材
I インサート部品
P 電極
R 樹脂成形部
AC コア型
BC コア型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインサート部品が樹脂の射出成形により一体化された樹脂成形品の射出成形方法であって、
インサート部品が並ぶ方向にインサート部品を押圧挟持できるように、成形金型に対し所定の方向にスライド可能に設けられた一対の挟持部材により、複数のインサート部品を互いに当接状態となるように挟持する挟持工程を有するとともに、
挟持工程において、前記一対の挟持部材が、インサート部品を挟持した状態を維持しながら前記所定方向にそれぞれスライド可能とされつつ、それぞれの挟持部材が弾性部材によってインサート部品に向けて付勢されてインサート部品を押圧挟持する
ことを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
挟持工程において、一対の挟持部材により複数のインサート部品を挟持した状態で、成形金型の前記所定方向にスライドしない部分に対していずれかのインサート部品の一部を前記所定方向に当接させることを特徴とする請求項1に記載の射出成形方法。
【請求項3】
いずれか一方の挟持部材を付勢する力により、インサート部品の一部と成形金型の挟持方向にスライドしない部分との当接を押圧状態とすることを特徴とする請求項2に記載の射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−25554(P2011−25554A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174339(P2009−174339)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】