説明

射出成形機および射出成形方法

【課題】金型装置の構成を簡略化できる射出成形機および射出成形方法を提供すること。
【解決手段】樹脂を発泡成形する射出成形機10において、第1の型板32と第2の型板44の型締めにより形成されるキャビティC1に対しガスを供給する給気機構70と、給気機構70により大気圧よりも高い気圧に加圧されたキャビティC1に発泡性樹脂を射出する射出装置50と、発泡性樹脂の射出中または射出後、キャビティC1内のガスを大気に放出するガス放出機構80とを有し、ガス放出機構80は、第1の型板または第2の型板44に貫通形成される貫通孔47の内壁面47aと、貫通孔47に挿入される金型部材61の外周面61aとの間に形成される隙間G1を介して、キャビティC1内のガスを大気に放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機および射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形方法として、ガスカウンタープレッシャ法(GCP法)が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。GCP法は、金型装置内のキャビティに対しガスを供給し、所定の気圧に加圧されたキャビティ内に発泡性樹脂を射出し、射出中または射出後にキャビティ内を排気する方法である。この方法によれば、表面に発泡痕がほとんどなく、内部が発泡した成形品が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−239916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の射出成形機は、ガスを排気するため、専用配管を有するので、金型装置の構成が複雑であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、金型装置の構成を簡略化できる射出成形機および射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するため、本発明は、樹脂を発泡成形する射出成形機において、
第1の型板と第2の型板の型締めにより形成されるキャビティに対しガスを供給する給気機構と、
前記給気機構により大気圧よりも高い気圧に加圧された前記キャビティに発泡性樹脂を射出する射出装置と、
前記発泡性樹脂の射出中または射出後、前記キャビティ内のガスを大気に放出するガス放出機構とを有し、
前記ガス放出機構は、前記第1または第2の型板に貫通形成される貫通孔の内壁面と、前記貫通孔に挿入される金型部材の外周面との間に形成される隙間を介して、前記キャビティ内のガスを大気に放出する射出成形機を提供する。
【0007】
また、本発明は、樹脂を発泡成形する射出成形方法において、
第1の型板と第2の型板を型締めすることによりキャビティを形成する型締め工程と、
前記キャビティに対しガスを供給し、前記キャビティの気圧を大気圧よりも高い気圧に加圧するガス供給工程と、
前記ガス供給工程後、前記キャビティに発泡性樹脂を射出する射出工程と、
前記発泡性樹脂の射出中または射出後、前記キャビティ内のガスを大気に放出するガス放出工程とを有し、
前記ガス放出工程において、前記第1または第2の型板に貫通形成される貫通孔の内壁面と、前記貫通孔に挿入される金型部材の外周面との間に形成される隙間を介して、前記キャビティ内のガスを大気に放出する射出成形方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金型装置の構成を簡略化できる射出成形機および射出成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態における射出成形機の断面図(1)
【図2】本発明の第1の実施形態における射出成形機の断面図(2)
【図3】本発明の第1の実施形態における射出成形機の断面図(3)
【図4】本発明の第1の実施形態における射出成形機の断面図(4)
【図5】本発明の第1の実施形態における射出成形機の断面図(5)
【図6】本発明の第1の実施形態における射出成形機の断面図(6)
【図7】図2の要部を拡大して示す断面図
【図8】図4の要部を拡大して示す断面図
【図9】本発明の第1の実施形態の変形例における射出成形機の断面図(1)
【図10】本発明の第1の実施形態の変形例における射出成形機の断面図(2)
【図11】本発明の第1の実施形態の別の変形例における射出成形機の断面図(1)
【図12】本発明の第1の実施形態の別の変形例における射出成形機の断面図(2)
【図13】本発明の第2の実施形態における射出成形機の断面図(1)
【図14】本発明の第2の実施形態における射出成形機の断面図(2)
【図15】本発明の第2の実施形態における射出成形機の断面図(3)
【図16】本発明の第2の実施形態における射出成形機の断面図(4)
【図17】本発明の第2の実施形態における射出成形機の断面図(5)
【図18】本発明の第2の実施形態における射出成形機の断面図(6)
【図19】図14の要部を拡大して示す断面図
【図20】本発明の第3の実施形態における射出成形機の断面図(1)
【図21】本発明の第3の実施形態における射出成形機の断面図(2)
【図22】本発明の第3の実施形態における射出成形機の断面図(3)
【図23】本発明の第3の実施形態における射出成形機の断面図(4)
【図24】本発明の第3の実施形態における射出成形機の断面図(5)
【図25】本発明の第3の実施形態における射出成形機の断面図(6)
【図26】図21の要部を拡大して示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一のまたは対応する構成については同一のまたは対応する符号を付して説明を省略する。また、各図面において、固定プラテンまたは可動プラテンと一体化された部品の断面を点模様で表す。また、各図面において、矢印X1方向は可動金型の固定金型に対する接近方向、矢印X2方向は可動金型の固定金型に対する離間方向を表す。なお、説明の便宜上、射出成形機において、固定金型側を前方、可動金型側を後方として説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1〜図6は、本発明の第1の実施形態における射出成形機の断面図である。図1は型閉じ工程における断面図、図2は型締め工程後のガス供給工程における断面図、図3は射出工程における断面図、図4はガス放出工程における断面図、図5は型開き工程における断面図、図6は成形品の押出工程における断面図である。図7は図2の要部を拡大して示す断面図、図8は図4の要部を拡大して示す断面図である。
【0012】
射出成形機10は、図1に示すように、金型装置20、射出装置50、エジェクタ装置60、給排気機構70、およびガス放出機構80を有する。射出装置50は、型締め状態の金型装置20内のキャビティC1(図2参照)に発泡性樹脂を射出する。射出中における発泡性樹脂の発泡を抑えるため、給排気機構70はキャビティC1に対し予めガスを供給し、キャビティC1の気圧を大気圧よりも高い気圧に加圧する。発泡性樹脂の射出中、または射出後、給排気機構70およびガス放出機構80がキャビティC1内のガスを気圧差によって大気に放出する。このとき、発泡性樹脂が発泡し、表面に発泡痕がほとんどなく、内部が発泡した成形品M1(図5参照)が得られる。その後、エジェクタ装置60が、型開き状態の金型装置20から成形品M1を押し出す。以下、各構成について説明する。
【0013】
金型装置20は、第1の金型としての固定金型30、第2の金型としての可動金型40を有している。固定金型30は、固定側取付板13を介して、固定プラテン11に取り付けられ、可動金型40は、可動側取付板14を介して、可動プラテン12に取り付けられる。可動プラテン12にはトグル機構などが接続されている。固定プラテン11、可動プラテン12、固定側取付板13、可動側取付板14、およびトグル機構などにより、型締装置が構成される。
【0014】
型締装置の駆動用モータが正方向に回転することによって、図1に示すように、可動プラテン12が矢印X1方向に前進させられ、可動金型40が固定金型30に接近し、金型装置20の型閉じが行われる。このとき、駆動用モータは回転数制御される。金型装置20の型閉じ後、駆動用モータの正方向の回転をトルク制御することにより、図2に示すように、金型装置20の型締めが行われる。型締時に、固定金型30と可動金型40との間にキャビティC1が形成される。また、駆動用モータが逆方向に回転することによって、図5に示すように、可動プラテン12が矢印X2方向に後退させられ、可動金型40が固定金型30から離間し、金型装置20の型開きが行われる。なお、型締装置は、一般的な構成であってよい。駆動用モータの代わりに、液体圧シリンダが用いられてもよく、この場合、駆動用モータの回転運動を直線運動に変換して、可動プラテン12に伝達させるボールネジ機構などが不要となる。
【0015】
固定金型30は、図1に示すように、固定側取付板13に支持される固定側型板32を有する。固定側型板32および固定側取付板13を貫通するスプルーブッシュ33は、発泡性樹脂の供給路としてのスプルーS1を有している。スプルーブッシュ33は、固定側取付板13にボルトなどで固定されており、劣化時に交換可能となっている。
【0016】
固定金型30には、スプルーブッシュ33の外側を取り囲むように配置されるシール部材34〜36(図2参照)が取り付けられている。シール部材34〜36は、環状に形成され、例えばOリングなどで構成される。シール部材34は、固定側型板32と固定側取付板13との間に形成される隙間をシールする。シール部材35は、固定側取付板13とスプルーブッシュ33との間に形成される隙間をシールする。シール部材36は、金型装置20の型締め時に、固定側型板32と可動側型板44との間に形成される隙間をシールする。
【0017】
可動金型40は、図1に示すように、可動側取付板14側から順次、スペーサブロック42、受け板43、および可動側型板44を一体的に有する。可動側型板44と固定側型板32が接触させられ、型締めされることにより、キャビティC1が形成される。
【0018】
可動側型板44の固定側型板32と接触する面(パーティング面)には、キャビティC1を構成する凹部45、凹部45に隣設される溝部46が形成されている。溝部46の深さは、溝部46への発泡性樹脂の侵入を防止するため、凹部45の深さよりも浅く設定される。
【0019】
可動側取付板14と受け板43との間には、スペーサブロック42によって包囲された空間R1が形成されている。空間R1は、エジェクタ装置60およびガス放出機構80の後述の動作のために形成される。
【0020】
可動側型板44および受け板43には、エジェクタピン61が移動可能に挿通されるエジェクタピン孔47が貫通形成されている。エジェクタピン孔47は複数形成されてよい。エジェクタピン孔47の内径はエジェクタピン61の外径よりも僅かに大きい。
【0021】
可動金型40には、可動側型板44と受け板43の間に形成される隙間をシールするシール部材48(図2参照)が取り付けられている。シール部材48は、環状に形成され、複数のエジェクタピン孔47の外側を取り囲むように配置される。
【0022】
射出装置50は、図3に示すように、スプルーブッシュ33に押し付けられ、スプルーS1を介して、キャビティC1に、所定量の発泡性樹脂を射出する。発泡性樹脂は、例えば、加熱溶融された樹脂と、発泡剤としての発泡性ガスとを混練してなる。発泡性ガスは、臨界状態で樹脂と混練される。発泡性ガスとしては、特に限定されないが、例えば二酸化炭素、窒素、または空気などが用いられる。なお、射出装置50は、発泡性樹脂を射出するノズル孔を開閉するニードル弁機構を内部に備えてもよい。
【0023】
エジェクタ装置60は、図6に示すように、金型装置20の型開き後、キャビティC1内で成形された成形品M1を可動側型板44から押し出す。エジェクタ装置60は、可動側型板44に対し移動可能なエジェクタピン61、エジェクタピン61と一体的に移動可能なエジェクタプレート62、エジェクタプレート62を後方から押すエジェクタロッド63を有する。
【0024】
エジェクタプレート62は、空間R1内に配置され、後述の流体圧シリンダ84(詳細には、シリンダ本体84a)によって矢印X1、X2方向に進退可能に支持されている。エジェクタプレート62は、バネなどの付勢部材によって後退方向(矢印X2方向)に付勢されている。
【0025】
図6に示すように、エジェクタロッド63の前進に伴い、エジェクタプレート62は、後方から押され、バネの付勢力に抗して前進させられる。よって、エジェクタピン61が可動側型板44に対し前進させられ、可動側型板44から成形品M1を押し出す。
【0026】
その後、図1に示すように、エジェクタロッド63の後退に伴い、エジェクタプレート62は、バネの付勢力によって、後退させられ、可動側取付板14に接触して停止する。このとき、エジェクタピン61の先端面61bは、凹部45の内底面45aと略面一になり、型締め時にキャビティC1の壁面の一部を形成する。
【0027】
給排気機構70は、図1に示すように、キャビティC1に対しガスを給排気するための給排気管71を有している。給排気管71は、溝部46を介して、キャビティC1を構成する凹部45に接続されている。給排気管71の途中には、開閉弁72、ガス圧力計73などが設けられている。
【0028】
給排気機構70は、図2に示すように、金型装置20の型締め後であって、射出装置50による発泡性樹脂の射出前に、キャビティC1に対しガスを供給し、キャビティC1内の気圧を大気圧よりも高い気圧に加圧する。キャビティC1内の気圧は、射出装置50内における発泡性ガスの気圧と同程度に設定され、例えば3〜14.5MPaに設定される。
【0029】
ガス放出機構80は、図4に示すように、射出装置50による発泡性樹脂の射出中または射出後、キャビティC1内のガスを気圧差によって大気に放出する。このとき、発泡性樹脂が発泡し、表面に発泡痕がほとんどなく、内部が発泡した成形品M1(図5参照)が得られる。
【0030】
ガス放出機構80と共に、給排気機構70がキャビティC1内のガスを気圧差によって大気に放出してもよい。放出速度が速くなるので、残留ガスに起因する微小凹凸の発生が抑えられ、外観品質の良好な成形品M1が得られる。
【0031】
ガス放出機構80は、エジェクタピン孔47の内壁面47aと、エジェクタピン61の外周面61aとの間に形成される隙間G1(図8参照)を介して、キャビティC1内のガスを気圧差によって大気に放出する。キャビティC1内のガスは、隙間G1を通り、空間R1に放出された後、空間R1を囲むスペーサブロック42と受け板43との間に形成される隙間などから大気に放出される。
【0032】
このように、本実施形態では、ガス放出路として、他の目的で形成された既存の隙間G1を利用しているので、金型装置20の構成を簡略化することができる。よって、金型装置20の設計が容易であり、金型装置20のコスト削減が可能である。また、金型装置20の小型化が可能である。
【0033】
また、本実施形態では、ガス放出路を形成するエジェクタピン61の先端面61b(図1参照)が、キャビティC1の壁面の一部を形成しているので、キャビティC1内のガスが速やかに大気に放出される。
【0034】
ガス放出機構80は、隙間G1(図7、図8参照)を含むガス放出路を開閉する開閉機構を有する。この開閉機構は、図4に示すように、第1および第2のフェルール81、82、シールプレート83、および流体圧シリンダ84などで構成される。
【0035】
第1および第2のフェルール81、82は、それぞれ、環状に形成され、中心部にエジェクタピン61が挿通される孔を有する。第1および第2のフェルール81、82の内径は、エジェクタピン61の外径よりも僅かに大きい。第1および第2のフェルール81、82は、複数のエジェクタピン61に対応して複数設けられている。
【0036】
シールプレート83は、空間R1内に配置され、矢印X1、X2方向に移動可能となっている。シールプレート83には、エジェクタピン61が移動可能に挿通される挿通孔が貫通形成されている。
【0037】
流体圧シリンダ84は、油圧シリンダまたは空気圧シリンダなどで構成され、図2に示すように、シリンダ本体84aと、シリンダ本体84aから突出するロッド84bとを有する。流体圧シリンダ84は、図4に示すように、後端部(例えば、シリンダ本体84a)にて可動側取付板14に連結され、前端部(例えば、ロッド84b)にてシールプレート83に連結される。液体圧シリンダ84の伸縮に伴い、シールプレート83、ひいては第1および第2のフェルール81、82が矢印X1、X2方向に進退し、受け板43に対し接離する。
【0038】
図2に示すように、流体圧シリンダ84が伸びることにより、シールプレート83と受け板43の間に、第1および第2のフェルール81、82が挟み込まれ、軸方向に圧縮される。このとき、図7に示すように、第1のフェルール81の外面81aがエジェクタピン孔47の内壁面47aに押し付けられる。また、このとき、第1のフェルール81が第2のフェルール82を径方向内方に締め付けるので、第2のフェルール82の内周面82aがエジェクタピン61の外周面61aに押し付けられる。その結果、隙間G1を含むガス放出路が閉塞される。
【0039】
また、図4に示すように、流体圧シリンダ84が縮むことにより、シールプレート83が後退し、第1および第2のフェルール81、82に対する軸方向の圧縮が解除される。よって、図8に示すように、第2のフェルール82は弾性復元し、第2のフェルール82の内周面82aがエジェクタピン61の外周面61aから離間する。また、隙間G1と空間R1との間の気圧差によって、第1のフェルール81の外面81aがエジェクタピン孔47の内壁面47aから離れる。その結果、隙間G1を含むガス放出路が開放される。
【0040】
このようにして、ガス放出機構80は、隙間G1を含むガス放出路を開閉する。
【0041】
次に、図1〜図6を再度参照して、上記構成とした射出成形機10の動作(射出成形方法)について説明する。下記の各種動作は、CPUや記録媒体、タイマーなどを含むコンピュータで構成される制御装置によって制御される。
【0042】
まず、図1に示すように、可動プラテン12は型締装置によって矢印X1方向に前進させられ、可動金型40が固定金型30に接近し、金型装置20の型閉じが行われる。可動側型板44と固定側型板32が接触すると、リミットスイッチが作動し、タイマーが時間の計測を開始する。
【0043】
また、図1および図7に示すように、ガス放出機構80が、隙間G1を含むガス放出路を閉塞する。この工程は、給排気機構70によるガスの供給前に行われ、後述の金型装置20の型締め後に行われてもよい。
【0044】
次いで、図2に示すように、可動側型板44が固定側型板32に押し付けられ、金型装置20の型締めが行われる。可動側型板44と固定側型板32の型締めにより、キャビティC1が形成される。
【0045】
続いて、給排気機構70がキャビティC1内にガスを供給し、キャビティC1内が大気圧よりも高い気圧に加圧される。キャビティC1の加圧は、タイマーの計測時間が所定の設定時間T1に達した時に開始される。このとき、ガス放出機構80は、隙間G1を含むガス放出路を閉塞している。
【0046】
次いで、図3に示すように、射出装置50が発泡性樹脂を射出し、発泡性樹脂がスプルーS1を通りキャビティC1に注入される。発泡性樹脂の射出は、タイマーの計測時間が所定の設定時間T2(T2>T1)に達した時に開始される。発泡性樹脂の射出の開始から所定時間の間、給排気機構70はキャビティC1内の気圧を一定に保つ。
【0047】
その後、図4に示すように、発泡性樹脂の射出が終了すると、ガス放出機構80が、隙間G1を含むガス放出路を開放し、キャビティC1内のガスを気圧差によって大気に放出する。キャビティC1内のガスは、隙間G1を通って、空間R1に放出された後、空間R1を包囲するスペーサブロック42と、受け板43との間に形成される隙間などから大気に放出される。このとき、ガス放出機構80と共に、給排気機構70がキャビティC1内のガスを気圧差によって大気に放出する。ガスの放出は、タイマーの計測時間が所定の設定時間T3(T3>T2)に達した時に開始される。キャビティC1内の気圧が大気圧に戻ることにより、キャビティC1内において発泡性樹脂が発泡し、表面に発泡痕がほとんどなく、内部が発泡した成形品M1が得られる。なお、ガスの放出は、発泡性樹脂の射出の途中で開始されてもよい。
【0048】
次いで、図5に示すように、可動プラテン12が型締装置によって矢印X2方向に後退させられ、可動金型40が固定金型30から離間し、金型装置20の型開きが行われる。金型装置20の型開きによって、キャビティC1の容積を実質的に増やし、発泡性樹脂を発泡させてもよい。
【0049】
最後に、図6に示すように、エジェクタ装置60が可動側型板44から成形品M1を押し出す。具体的には、エジェクタロッド63の前進によって、エジェクタプレート62が後方から押され、バネの付勢力に抗して矢印X1方向に前進させられる。よって、エジェクタピン61が可動側型板44に対し前進させられ、可動側型板44から成形品M1を押し出す。このようにして、成形品M1が得られる。
【0050】
[第1の実施形態の変形例]
図9および図10は、本発明の第1の実施形態における射出成形機の変形例の断面図である。図9は型締め工程後のガス供給工程における断面図、図10はガス放出工程における断面図である。なお、本変形例の射出成形機110において、ガス放出機構以外の構成は、上記実施形態の射出成形機10と同様であるので、説明を省略する。
【0051】
本変形例のガス放出機構180は、隙間G1(図7、図8参照)を含むガス放出路を開閉する開閉機構として、シールプレート181、シール部材182、183、および流体圧シリンダ184を有する。
【0052】
シールプレート181は、空間R1内に配置され、矢印X1、X2方向に移動可能となっている。シールプレート181には、エジェクタピン61が移動可能に挿通される挿通孔が貫通形成されている。
【0053】
シール部材182は、環状に形成され、エジェクタピン61の外周を囲むように、シールプレート181に固定される。シール部材182は、シールプレート181とエジェクタピン61との間に形成される隙間をシールする。シール部材182は、複数のエジェクタピン61に対応して複数設けられる。
【0054】
シール部材183は、環状に形成され、複数のエジェクタピン61の外側を取り囲むように、受け板43(または、シールプレート181)に固定される。受け板43とシールプレート181がシール部材183を介し接触、離間することにより、隙間G1を含むガス放出路が開閉される。
【0055】
流体圧シリンダ184は、後端部にて可動側取付板14に連結され、前端部にてシールプレート181に連結されている。流体圧シリンダ184の伸縮によって、シールプレート181が進退する。
【0056】
図9に示すように、流体圧シリンダ184が伸びることにより、シールプレート181が矢印X1方向に前進させられ、シール部材183を介して、受け板43に接触するので、隙間G1を含むガス放出路が閉塞される。
【0057】
図10に示すように、流体圧シリンダ184が縮むことにより、シールプレート181が矢印X2方向に後退させられ、シール部材183から離間されるので、隙間G1を含むガス放出路が開放される。
【0058】
このようにして、ガス放出機構180は、隙間G1を含むガス放出路を開閉する。
【0059】
[第1の実施形態の別の変形例]
図11および図12は、本発明の第1の実施形態における射出成形機の変形例の断面図である。図11は型締め工程後のガス供給工程における断面図、図12はガス放出工程における断面図である。なお、本変形例の射出成形機210において、ガス放出機構以外の構成は、上記実施形態の射出成形機10と同様であるので、説明を省略する。
【0060】
本変形例のガス放出機構280は、隙間G1(図7、図8参照)を含むガス放出路を開閉する開閉機構として、第1および第2のフェルール81、82、シールプレート83、および流体圧シリンダ84に加えて、シール部材281を有する。
【0061】
シール部材281は、環状に形成され、複数のエジェクタピン61の外側を取り囲むように、受け板43(またはシールプレート83)に固定される。受け板43とシールプレート83がシール部材281を介し接触、離間することにより、隙間G1を含むガス放出路が開閉される。
【0062】
本変形例のガス放出機構280は、シール部材281を有するので、第1のフェルール81が劣化した場合に、キャビティC1と大気とを遮断することができる。
【0063】
[第2の実施形態]
図13〜図18は、本発明の第2の実施形態における射出成形機の断面図である。図13は型閉じ工程における断面図、図14は型締め工程後のガス供給工程における断面図、図15は射出工程における断面図、図16はガス放出工程における断面図、図17は型開き工程における断面図、図18は成形品の押出工程における断面図である。図19は図14の要部を拡大して示す断面図である。
【0064】
射出成形機310は、図13に示すように、金型装置320、射出装置50、エジェクタ装置360、および給排気機構70を有する。また、射出成形機310は、第1および第2のガス放出機構380、390を有し、固定金型330と可動金型340の両側に、キャビティC2内のガスを大気に放出するガス放出路を有する。
【0065】
金型装置320は、第1の金型としての固定金型330、第2の金型としての可動金型340を有している。固定金型330は、固定側取付板13を介して、固定プラテン11に取り付けられ、可動金型340は、可動側取付板14を介して、可動プラテン12に取り付けられる。可動プラテン12が矢印X1、X2方向に進退することによって、金型装置320の型閉じ(図13参照)、型締め(図14参照)、型開き(図17参照)が行われる。金型装置320の型締め時に、固定金型330と可動金型340との間には、キャビティC2(図14参照)が複数形成される。複数のキャビティC2は、ランナーRUを介し、スプルーS2に連通している。
【0066】
固定金型330は、図13に示すように、固定側取付板13側から順次、固定側スペーサブロック332、および固定側型板333を一体的に有する。固定側取付板13と固定側型板333との間には、固定側スペーサブロック332によって包囲された空間R2が形成されている。空間R2は、第2のガス放出機構390の後述の動作のために形成される。
【0067】
固定側取付板13および固定側型板333を貫通するスプルーブッシュ334は、発泡性樹脂の供給路としてのスプルーS2を有している。スプルーブッシュ334は、固定側取付板13にボルトなどで固定されており、劣化時に交換可能となっている。
【0068】
固定金型330には、スプルーブッシュ334と固定側型板333との間に形成される隙間をシールするシール部材335(図14参照)が取り付けられている。シール部材335は、環状に形成され、スプルーブッシュ334の外側を取り囲むように配置される。
【0069】
同様に、固定金型330には、金型装置320の型締め時に固定側型板333と可動側型板344の間に形成される隙間をシールするシール部材336(図14参照)が取り付けられている。シール部材336は、環状に形成され、後述の複数のキャビティピン孔337の外側を取り囲むように配置される。
【0070】
固定金型330は、図13に示すように、キャビティC2の壁面の一部を形成する入れ子としてのキャビティピン338を有する。キャビティピン338は、複数のキャビティC2に対応して複数設けられている。
【0071】
キャビティピン338は、固定側型板333に貫通形成されるキャビティピン孔337に挿入される。キャビティピン孔337の内径は、キャビティピン338の外径よりも僅かに大きい。キャビティピン孔337は、複数のキャビティピン338に対応して複数形成される。キャビティピン338は、固定側型板333にボルトなどで固定されており、劣化時に交換可能となっている。
【0072】
可動金型340は、図13に示すように、可動側取付板14側から順次、スペーサブロック42、受け板43、および可動側型板344を一体的に有する。可動側型板344と固定側型板333とが接触させられ、型締めされることにより、複数のキャビティC2が形成される。複数のキャビティC2は、図14に示すように、ランナーRUを介し、スプルーS2に連通している。
【0073】
可動側型板344の固定側型板333と接触する面(パーティング面)には、複数のキャビティC2の一部を構成する複数の凹部345、一の凹部345に隣設される溝部346、ランナーRUを構成する凹部347が形成されている。溝部346の深さは、発泡性樹脂の侵入を防止するため、凹部345の深さよりも浅く設定される。複数の凹部345は、凹部347でつながっている。
【0074】
可動側型板344および受け板43には、エジェクタピン361、362が移動可能に挿通されるエジェクタピン孔348、349が貫通形成されている。エジェクタピン孔348、349の内径はエジェクタピン361、362の外径よりも僅かに大きい。
【0075】
可動金型340には、可動側型板344と受け板43の間に形成される隙間をシールするシール部材SE(図14参照)が取り付けられている。シール部材SEは、環状に形成され、エジェクタピン孔348、349の外側を取り囲むように配置される。
【0076】
エジェクタ装置360は、図18に示すように、金型装置320の型開きが行われた後、複数のキャビティC2内で成形された複数の成形品M2、およびランナーRU内で固化した樹脂を可動側型板344から押し出す。エジェクタ装置360は、可動側型板344に対し移動可能なエジェクタピン361、362、エジェクタピン361、362と一体的に移動可能なエジェクタプレート363、エジェクタプレート363を後方から押すエジェクタロッド364を有する。
【0077】
エジェクタプレート363は、空間R1内に配置され、流体圧シリンダ84によって矢印X1、X2方向に進退可能に支持されている。エジェクタプレート363は、バネなどの付勢部材によって後退方向(矢印X2方向)に付勢されている。
【0078】
図18に示すように、エジェクタロッド364の前進に伴い、エジェクタプレート363は、後方から押され、バネの付勢力に抗して矢印X1方向に前進させられる。よって、エジェクタピン361が可動側型板344に対し前進させられ、キャビティC2内で成形された成形品M2を可動側型板344から押し出す。同様に、エジェクタピン362は、ランナーRU内で固化した樹脂を可動側型板344から押し出す。
【0079】
その後、図13に示すように、エジェクタロッド364の後退に伴い、エジェクタプレート363は、バネの付勢力によって矢印X2方向に後退させられ、可動側取付板14に接触して停止する。このとき、エジェクタピン361の先端面361bは、凹部345の内底面345aと略面一になり、型締め時にキャビティC2の壁面の一部を形成する。一方、エジェクタピン362の先端面362bは、凹部347の内底面347aと略面一になり、型締め時にランナーRUの壁面の一部を形成する。
【0080】
第1および第2のガス放出機構380、390は、図16に示すように、射出装置50による発泡性樹脂の射出中または射出後、キャビティC2内のガスを大気に放出する。このとき、発泡性樹脂が発泡し、表面に発泡痕がほとんどなく、内部が発泡した成形品M2(図18参照)が得られる。
【0081】
第1および第2のガス放出機構380、390と共に、給排気機構70がキャビティC2内のガスを気圧差によって大気に放出してもよい。放出速度が速くなるので、残留ガスに起因する微小凹凸の発生が抑えられ、外観品質の良好な成形品M2が得られる。
【0082】
第1のガス放出機構380は、図16に示すように、隙間G2、G3(図19参照)を介して、キャビティC2内のガスを気圧差によって大気に放出する。隙間G2は、エジェクタピン孔348の内壁面348aと、エジェクタピン361の外周面361aとの間に形成される。隙間G3は、エジェクタピン孔349の内壁面349aと、エジェクタピン362の外周面362aとの間に形成される。キャビティC2内のガスは、隙間G2、G3を通り、空間R1に放出された後、空間R1を囲むスペーサブロック42と受け板43との間に形成される隙間などから大気に放出される。
【0083】
このように、本実施形態も、第1の実施形態と同様に、ガス放出路として、他の目的で形成された既存の隙間G2、G3を利用しているので、金型装置320の構成を簡略化することができる。よって、金型装置320の設計が容易であり、金型装置320のコスト削減が可能である。また、金型装置320の小型化が可能である。
【0084】
また、本実施形態では、ガス放出路を形成するエジェクタピン361の先端面361bが、キャビティC2の壁面の一部を形成しているので、キャビティC2内のガスが速やかに大気に放出される。
【0085】
第1のガス放出機構380は、隙間G2、G3(図19参照)を含むガス放出路を開閉する開閉機構を有する。この開閉機構は、図16に示すように、第1および第2のフェルール81、82、シールプレート83、液体圧シリンダ84などで構成される。
【0086】
第1および第2のフェルール81、82は、それぞれ、環状に形成され、中心部にエジェクタピン361、362が挿通される孔を有する。第1および第2のフェルール81、82の内径は、エジェクタピン361、362の外径よりも僅かに大きい。第1および第2のフェルール81、82は、エジェクタピン361、362に対応して複数設けられている。
【0087】
シールプレート83は、空間R1内に配置され、矢印X1、X2方向に移動可能となっている。シールプレート83には、エジェクタピン361、362が移動可能に挿通される挿通孔が貫通形成されている。
【0088】
この開閉機構では、液体圧シリンダ84の伸縮に伴い、シールプレート83、ひいては第1および第2のフェルール81、82が矢印X1、X2方向に進退し、受け板43に対し接離する。よって、第1の実施形態と同様に、隙間G2、G3を含むガス放出路が開閉される。
【0089】
第2のガス放出機構390は、図16に示すように、隙間G4(図19参照)を介して、キャビティC2内のガスを気圧差によって大気に放出する。隙間G4は、キャビティピン孔337の内壁面337aと、キャビティピン338の外周面338aとの間に形成される。キャビティC2内のガスは、隙間G4を通り、空間R2に放出された後、空間R2を囲む固定側スペーサブロック332と固定側型板333との間に形成される隙間などから大気に放出される。
【0090】
このように、本実施形態では、可動金型340側と固定金型330側の両側に、ガス放出路が設けられているので、放出速度が速くなる。
【0091】
また、本実施形態では、ガス放出路を形成するキャビティピン338の後端面338b(図19参照)が、キャビティC2の壁面の一部を形成しているので、キャビティC2内のガスが速やかに大気に放出される。
【0092】
第2のガス放出機構390は、隙間G4(図19参照)を含むガス放出路を開閉する開閉機構を有する。この開閉機構は、図16に示すように、シールプレート391、シール部材392、393、および流体圧シリンダ394などで構成される。
【0093】
シールプレート391は、空間R2内に配置され、矢印X1、X2方向に移動可能となっている。シールプレート391には、スプルーブッシュ334を挿通させる貫通孔が形成されている。
【0094】
シール部材392は、環状に形成され、スプルーブッシュ334の外側を取り囲むように配置され、且つ、複数のキャビティピン338の内側に配置される。シール部材393は、環状に形成され、複数のキャビティピン338の外側を取り囲むように配置される。
【0095】
シール部材392、393は、シールプレート391(または、固定側型板333)に固定される。シールプレート391と固定側型板333がシール部材392、393を介して、接触、離間することにより、隙間G4を含むガス放出路が開閉される。
【0096】
流体圧シリンダ394は、前端部にて固定側取付板13に連結され、後端部にてシールプレート391に連結されている。流体圧シリンダ394の伸縮によって、シールプレート391が進退させられる。
【0097】
図14に示すように、流体圧シリンダ394が伸びることにより、シールプレート391が矢印X2方向に後退させられ、シール部材392、393を介して、固定側型板333に接触され、隙間G4を含むガス放出路が閉塞される。
【0098】
図16に示すように、流体圧シリンダ394が縮むことにより、シールプレート391が矢印X1方向に前進させられ、シール部材392、393が固定側型板333から離間される。よって、隙間G4を含むガス放出路が開放される。
【0099】
なお、本実施形態の射出成形機310の動作(射出成形方法)は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0100】
なお、本実施形態の射出成形機310は、第1および第2のガス放出機構380、390の両方を有するとしたが、いずれか片方のみを有してもよい。
【0101】
[第3の実施形態]
図20〜図25は、本発明の一実施形態における射出成形機の断面図である。図20は型閉じ工程における断面図、図21は型締め工程後のガス供給工程における断面図、図22は射出工程における断面図、図23はガス放出工程における断面図、図24は型開き工程における断面図、図25は成形品の押出工程における断面図である。図26は、図21の要部を拡大して示す断面図である。
【0102】
射出成形機410は、図20に示すように、金型装置420、射出装置50、エジェクタ装置460、給排気機構70、およびガス放出機構480を有する。本実施形態のガス放出機構480は、金型装置420内のキャビティC3(図21参照)の容積を変化させる役割を果たす。
【0103】
金型装置420は、第1の金型としての固定金型30、第2の金型としての可動金型440を有している。固定金型30は、固定側取付板13を介して、固定プラテン11に取り付けられ、可動金型440は、可動側取付板14を介して、可動プラテン12に取り付けられる。可動プラテン12が進退することによって、金型装置420の型閉じ(図20参照)、型締め(図21参照)、型開き(図24参照)が行われる。
【0104】
可動金型440は、図20に示すように、可動側取付板14側から順次、スペーサブロック442、受け板443、および可動側型板444を一体的に有する。可動側型板444と固定側型板32が接触し、型締めされることにより、キャビティC3が形成される。
【0105】
可動側型板444の固定側型板32と接触する面(パーティング面)には、キャビティC3の一部を構成する凹部445、凹部445に隣設される溝部446が形成されている。溝部446の深さは、溝部446への発泡性樹脂の侵入を防止するため、凹部445の深さよりも浅く設定される。
【0106】
受け板443と可動側取付板14との間には、スペーサブロック442によって包囲された空間R3が形成されている。空間R3は、エジェクタ装置460およびガス放出機構480の後述の動作のために形成される。
【0107】
可動側型板444および受け板443には、エジェクタピン461が移動可能に挿通されるエジェクタピン孔447が貫通形成されている。エジェクタピン孔447は複数形成されてよい。エジェクタピン孔447の内径はエジェクタピン461の外径よりも僅かに大きい。
【0108】
可動金型440は、キャビティC3の容積を変化させるスライドコア448を有している。スライドコア448は、本体部448a(図22参照)と、頭部448b(図22参照)とを一体的に有している。本体部448aは、可動側型板444および受け板443に貫通形成されるガイド孔449に移動可能に挿入されている。頭部448bは、ガイド孔449よりも大きく、ガイド孔449の外側に配置され、具体的には、空間R3に配置されている。
【0109】
可動金型440には、可動側型板444と受け板443の間に形成される隙間をシールするシール部材SE(図21参照)が取り付けられている。シール部材SEは、環状に形成され、複数のエジェクタピン孔447、およびガイド孔449の外側を取り囲むように配置される。
【0110】
エジェクタ装置460は、図25に示すように、金型装置420の型開き後、キャビティC3内で成形された成形品M3を可動側型板444から押し出す。エジェクタ装置460は、複数のエジェクタピン孔447に対応して複数設けられている。
【0111】
エジェクタ装置460は、可動側型板444に対し移動可能なエジェクタピン461、エジェクタピン461と一体的に移動可能なエジェクタプレート462、エジェクタプレート462を後方から押すエジェクタロッド463を有する。
【0112】
エジェクタプレート462は、空間R3内に配置され、流体圧シリンダ84によって矢印X1、X2方向に進退可能に支持されている。エジェクタプレート462は、バネなどの付勢部材によって後退方向(矢印X2方向)に付勢されている。
【0113】
図25に示すように、エジェクタロッド463の前進に伴い、エジェクタプレート462は、後方から押され、バネの付勢力に抗して矢印X1方向に前進させられる。よって、エジェクタピン461は、可動側型板444に対し前進させられ、可動側型板444から成形品M3を押し出す。
【0114】
その後、図20に示すように、エジェクタロッド463の後退に伴い、エジェクタプレート462は、バネの付勢力によって矢印X2方向に後退させられ、可動側取付板14に接触して停止する。このとき、エジェクタピン461の先端面461bは、凹部445の内底面445aと略面一になり、型締め時にキャビティC3の壁面の一部を形成する。
【0115】
ガス放出機構480は、射出装置50による発泡性樹脂の射出中または射出後、キャビティC3内のガスを大気に放出する。このとき、発泡性樹脂が発泡し、表面に発泡痕がほとんどなく、内部が発泡した成形品M3(図24参照)が得られる。
【0116】
ガス放出機構480と共に、給排気機構70がキャビティC3内のガスを気圧差によって大気に放出してもよい。放出速度が速くなるので、残留ガスに起因する微小凹凸の発生が抑えられ、外観品質の良好な成形品M3が得られる。
【0117】
ガス放出機構480は、図23に示すように、隙間G5、G6(図26参照)を介して、キャビティC3内のガスを気圧差によって大気に放出する。隙間G5は、エジェクタピン孔447の内壁面447aと、エジェクタピン461の外周面461aとの間に形成される。また、隙間G6は、ガイド孔449の内壁面449aと、スライドコア448の本体部448aの外周面448cとの間に形成される。キャビティC3内のガスは、隙間G5、G6を通り、空間R3に放出された後、空間R3を囲むスペーサブロック442と受け板443との間に形成される隙間などから大気に放出される。
【0118】
このように、本実施形態も、第1の実施形態と同様に、ガス放出路として、他の目的で形成された既存の隙間G5、G6を利用しているので、金型装置420の構成を簡略化することができる。よって、金型装置420の設計が容易であり、金型装置420のコスト削減が可能である。また、金型装置420の小型化が可能である。
【0119】
また、本実施形態では、ガス放出路を形成するエジェクタピン461が、キャビティC3の壁面の一部を形成しているので、キャビティC3内のガスが速やかに大気に放出される。
【0120】
同様に、ガス放出路を形成するスライドコア448の本体部448aが、キャビティC3の壁面の一部を形成しているので、キャビティC3内のガスが速やかに大気に放出される。
【0121】
ガス放出機構480は、隙間G5(図26参照)を含むガス放出路を開閉する開閉機構を有する。この開閉機構は、図23に示すように、第1および第2のフェルール81、82、シールプレート483、および流体圧シリンダ84などで構成される。
【0122】
第1および第2のフェルール81、82は、それぞれ、環状に形成され、中心部にエジェクタピン461が挿通される孔を有する。第1および第2のフェルール81、82の内径は、エジェクタピン461の外径よりも僅かに大きい。第1および第2のフェルール81、82は、複数のエジェクタピン461に対応して複数設けられている。
【0123】
シールプレート483には、エジェクタピン461が移動可能に挿通される挿通孔、および、スライドコア448の頭部448b(図22参照)が移動可能に挿通される挿通孔が貫通形成されている。
【0124】
この開閉機構では、液体圧シリンダ84の伸縮に伴い、シールプレート483、ひいては第1および第2のフェルール81、82が矢印X1、X2方向に進退し、受け板443に対し接離する。よって、第1の実施形態と同様に、隙間G5を含むガス放出路が開閉される。
【0125】
また、ガス放出機構480は、隙間G6(図26参照)を含むガス放出路を開閉する開閉機構を有する。この開閉機構は、図23に示すように、シール部材486、流体圧シリンダ487などで構成される。
【0126】
シール部材486は、環状に形成され、スライドコア448の本体部448aの外側を囲むように配置され、頭部448b(または、受け板443)に固定されている。
【0127】
シール部材486を介して、受け板443と頭部448bが接触、離間することにより、隙間G6を含むガス放出路が開閉される。
【0128】
流体圧シリンダ487は、後端部にて可動側取付板14に連結され、前端部にて頭部448bに連結される。流体圧シリンダ487の伸縮によって、頭部448bが進退する。
【0129】
図21に示すように、流体圧シリンダ487が伸びることにより、頭部448bが矢印X1方向に前進させられ、シール部材486を介して、受け板443に接触され、隙間G6を含むガス放出路が閉塞される。
【0130】
図23に示すように、流体圧シリンダ487が縮むことにより、頭部448bが矢印X2方向に後退させられ、シール部材486が受け板443から離間され、隙間G6を含むガス放出路が開放される。
【0131】
このとき、キャビティC3の容積が増大し、発泡性樹脂が膨らむので、成形品M3をより軽量化することができる。
【0132】
なお、本実施形態の射出成形機410の動作(射出成形方法)は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0133】
以上、本発明の第1〜第3の実施形態および変形例について説明したが、本発明は、上記の実施形態および変形例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上記の実施形態に種々の変形や置換を加えることができる。
【0134】
例えば、上記の給排気機構70は、キャビティC1〜C3に対しガスを給排気するが、キャビティC1〜C3にガスを供給する機能を有していればよく、キャビティC1〜C3からガスを排気する機能を有していなくてもよい。
【0135】
また、上記の可動金型40、340、440は、可動側型板44、344、444を補強する受け板43を有するが、有しなくてもよい。受け板43がない場合、ガス放出機構80〜480は、受け板43の代わりに、可動側型板44、344、444に対しシールプレート83、181、483を接離させることで、ガス放出路を開閉させる。
【0136】
また、上記のシールプレート83、181、391、483などを移動させる駆動源は、液体圧シリンダであるが、例えばボールネジ機構などでもよく、特に限定されない。
【符号の説明】
【0137】
10 射出成形機
20 金型装置
30 固定金型(第1の金型)
32 固定側型板(第1の型板)
40 可動金型(第2の金型)
44 可動側型板(第2の型板)
47 エジェクタピン孔
47a 内壁面
60 エジェクタ装置
61 エジェクタピン
61a 外周面
61b 先端面
70 給排気機構
80 ガス放出機構
338 キャビティピン(入れ子)
338a 外周面
448 スライドコア
448a 本体部
448c 本体部の外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を発泡成形する射出成形機において、
第1の型板と第2の型板の型締めにより形成されるキャビティに対しガスを供給する給気機構と、
前記給気機構により大気圧よりも高い気圧に加圧された前記キャビティに発泡性樹脂を射出する射出装置と、
前記発泡性樹脂の射出中または射出後、前記キャビティ内のガスを大気に放出するガス放出機構とを有し、
前記ガス放出機構は、前記第1または第2の型板に貫通形成される貫通孔の内壁面と、前記貫通孔に挿入される金型部材の外周面との間に形成される隙間を介して、前記キャビティ内のガスを大気に放出する射出成形機。
【請求項2】
前記ガス放出機構は、前記隙間を含むガス放出路を開閉する開閉機構を有する請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記金型部材は、前記キャビティの壁面の一部を形成する部材である請求項1または2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記金型部材は、前記貫通孔に移動可能に挿通され、前記キャビティ内で成形された成形品を、前記第1または第2の型板から押し出すエジェクタピンである請求項3に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記金型部材は、前記貫通孔に対し固定され、前記キャビティの壁面の一部を形成する入れ子である請求項3に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記金型部材は、前記貫通孔に移動可能に挿入され、前記キャビティの容積を変化させるスライドコアの本体部である請求項3に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記給気機構は、前記ガス放出機構と共に、前記発泡性樹脂の射出中または射出後、前記キャビティ内のガスを大気に放出する請求項1〜6のいずれか一項に記載の射出成形機。
【請求項8】
樹脂を発泡成形する射出成形方法において、
第1の型板と第2の型板を型締めすることによりキャビティを形成する型締め工程と、
前記キャビティに対しガスを供給し、前記キャビティの気圧を大気圧よりも高い気圧に加圧するガス供給工程と、
前記ガス供給工程後、前記キャビティに発泡性樹脂を射出する射出工程と、
前記発泡性樹脂の射出中または射出後、前記キャビティ内のガスを大気に放出するガス放出工程とを有し、
前記ガス放出工程において、前記第1または第2の型板に貫通形成される貫通孔の内壁面と、前記貫通孔に挿入される金型部材の外周面との間に形成される隙間を介して、前記キャビティ内のガスを大気に放出する射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−224068(P2012−224068A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96415(P2011−96415)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】