説明

射出成形機の加熱筒冷却機構

【課題】高温に加熱された加熱筒を効率的に且つ早期に冷却可能な射出成形機の加熱筒冷却機構を提供する。
【解決手段】先端10aに射出ノズル6が設けられ、後端10bを前後に進退可能な射出ユニット5に繋げて支持された加熱筒本体10と、加熱筒本体10の外周に設けられたヒーター11とを備えてなる加熱筒7を冷却するための射出成形機の加熱筒冷却機構Bであって、加熱筒7の外周側に設けられ、中空部に流通した冷却水で加熱筒7を冷却する冷却水ジャケット21を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の加熱筒冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機は、一方の金型を保持する固定盤に対し他方の金型を保持する可動盤を進退させて一対の金型の開閉、型締を行なう型締装置と、型締した一対の金型のキャビティー内に例えば溶融樹脂などの成形材料を射出する射出装置とを備えて構成されている。また、射出装置は、先端に成形材料を射出する射出ノズルを備えた加熱筒と、加熱筒の後端が繋がってこれを支持した状態で、進退可能に設けられた射出ユニットとを備えて構成されている。
【0003】
さらに、加熱筒は、例えばホッパを介してその内部に固形の成形材料が供給される加熱筒本体と、加熱筒本体やこの加熱筒本体の先端に取り付けた射出ノズルの外周を覆うように設けられたヒーターとを備えている。そして、この加熱筒では、ヒーターによって加熱筒本体及び射出ノズルが例えば数百℃の高温に加熱され、供給した固形の成形材料を、加熱筒本体内に進退可能で且つ軸線回りに回転可能に挿通したスクリューで撹拌しつつ溶融させる。このように溶融した成形材料は、射出ユニットの前進によって金型に当接した射出ノズルからスクリューの前進とともに射出され、一対の金型のキャビティー内に充填される。
【0004】
一方、例えば高温で溶融する成形材料から溶融温度が低い成形材料への切換時や加熱筒等のメンテナンス時には、加熱筒を冷却する(低温化させる)必要がある。このとき、高温に加熱された加熱筒を自然放熱で冷却させると、所望の温度に冷却されるまでに非常に多くの時間を要し、生産効率を著しく低下させる。このため、例えば特許文献1に開示された射出成形機では、ブロアやエアーノズルなどの送風装置を具備して、成形材料の切換時やメンテナンス時に加熱筒の外周側に空気を吹付けることで、加熱筒の冷却を効率的に行なうようにしている。
【特許文献1】実開平2−41922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されるように、ブロアやエアーノズルなどの送風装置を用いて加熱筒の冷却を行う場合においても、高温に加熱された加熱筒の冷却効率が低く、所望の温度に冷却されるまでにやはり多くの時間を要し、生産性を向上させる点から、より効率的で早期に冷却可能な対策が強く求められていた。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑み、高温に加熱された加熱筒を効率的に且つ早期に冷却可能な射出成形機の加熱筒冷却機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0008】
本発明の射出成形機の加熱筒冷却機構は、先端に射出ノズルが設けられ、後端を前後に進退可能な射出ユニットに繋げて支持された加熱筒本体と、該加熱筒本体の外周に設けられたヒーターとを備えてなる加熱筒を冷却するための射出成形機の加熱筒冷却機構であって、前記加熱筒の外周側に設けられ、中空部に流通した冷却水で前記加熱筒を冷却する冷却水ジャケットを備えることを特徴とする。
【0009】
この発明においては、空気よりも比熱、熱伝導率が大きく格段に熱容量が大きい冷却水を冷媒として用いることにより、高温に加熱した加熱筒を効率的に且つ早期に冷却することができる。
【0010】
また、本発明の射出成形機の加熱筒冷却機構においては、前記加熱筒の外周側に冷却空気を吹付ける送風機構を備えることが望ましい。
【0011】
この発明においては、冷却水と空気(冷却空気)を冷媒として併用することによって、高温に加熱した加熱筒をさらに効率的に且つ早期に冷却することができる。
【0012】
さらに、本発明の射出成形機の加熱筒冷却機構においては、前記冷却水ジャケットに前記冷却水を供給するととともに、前記加熱筒が所望の温度に冷却された後に、前記冷却水ジャケットの中空部に空気を供給して該中空部内の前記冷却水を外部に排出させる冷却水給排機構を備えることがより望ましい。
【0013】
この発明においては、加熱筒が所望の温度に冷却された後に、冷却水ジャケット中に残った冷却水を外部に除去することができる。これにより、射出成形作業を再開し、再度加熱筒を加熱させた際に、冷却水ジャケット内に残った冷却水が蒸発しその蒸気圧によって冷却水ジャケットなどに破損が生じることを確実に防止できる。
【0014】
また、本発明の射出成形機の加熱筒冷却機構においては、前記ヒーターが前記加熱筒の軸線方向に隙間をあけて複数並設されており、前記冷却水ジャケットが少なくとも前記隙間に配置されていることがさらに望ましい。
【0015】
この発明においては、ヒーターが加熱筒の軸線方向に隙間をあけて複数並設されて、この隙間に露出した加熱筒本体を直接的に冷却水ジャケットで冷却することができる。これにより、加熱筒本体の冷却を効率的に行なうことができる。
【0016】
さらに、本発明の射出成形機の加熱筒冷却機構においては、前記冷却水ジャケットが前記軸線方向に複数並設されるとともに、前記軸線方向に隣り合う前記冷却水ジャケット同士が互いの前記中空部を連通させる連通管を介して連結されていることが望ましい。
【0017】
この発明においては、軸線方向に隣り合う冷却水ジャケットが連結管を通じて連結されているため、1つの冷却水ジャケットに供給した冷却水を他の冷却水ジャケットに流通させることができる。これにより、熱容量が大きい冷却水を順次加熱筒から熱を吸熱しつつ長く加熱筒の外周に沿って流通させることができるため、より効率的に加熱筒を冷却することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の射出成形機の加熱筒冷却機構によれば、例えば高温で溶融する成形材料から溶融温度が低い成形材料への切換時や加熱筒等のメンテナンス時に、加熱筒を確実に効率的に且つ早期に所望の温度に冷却することができるため、成形材料の切換やメンテナンスを早期に行なって射出成形機の運転を停止する時間を短縮することができる。これにより、生産性の向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図1から図5を参照し、本発明の第1実施形態に係る射出成形機の加熱筒冷却機構について説明する。本実施形態は、例えば高温で溶融する成形材料から溶融温度が低い成形材料への切換時や加熱筒等のメンテナンス時に、加熱筒を効率的に且つ早期に所望の温度に冷却することが可能な射出成形機の加熱筒冷却機構に関するものである。
【0020】
本実施形態の射出成形機Aは、いわゆる横型射出成形機であって、図1に示すように、上下方向に立設された固定盤1と、固定盤1を挟んで一方の側(すなわち、固定盤1の水平方向を向く一面1a側)に設けられた射出装置2と、固定盤1を挟んで他方の側(すなわち、固定盤1の水平方向を向く他面1b側)に設けられた図示せぬ型締装置とを備えて構成されている。なお、固定盤1は、型締装置の一部を構成している。固定盤1は、下端1cをマシンボディ3に繋げて固設され、上下方向略中央に一面1aから他面1bに貫通するノズル挿通口1dが形成されている。また、固定盤1の他面1b側には、上下方向略中央に金型保持部1eが設けられており、この金型保持部1eに固定側金型K1が取り付けられている。この固定側金型K1には、型締装置の可動盤が固定盤1に対して前後に(水平方向に)進退することによって、可動盤に保持された可動側金型K2が型締あるいは型開される。
【0021】
また、射出装置2は、射出ユニット5と、この射出ユニット5を固定盤1に対して前後に(水平方向に)進退させるための例えばネジ機構などを有する図示せぬ進退駆動機構とを備えて構成されている。射出ユニット5には、先端に射出ノズル6を備え、軸線O1方向を水平方向に向けて配設された加熱筒7がその後端を繋げて設けられている。このように射出ユニット5に設けられた加熱筒7は、進退駆動機構の駆動によって射出ユニット5とともに軸線O1方向(水平方向)に進退する。
【0022】
ここで、本実施形態の加熱筒7は、図2に示すように、略円筒状の加熱筒本体10と、加熱筒本体10の外周及び射出ノズル6の外周を覆うように設けられた複数のヒーター(ヒーターバンド)11とを備えて構成されている。加熱筒本体10の外周に取り付けられた複数のヒーター11は、加熱筒本体10の射出ノズル6が繋がる先端10a側から射出ユニット5に繋がる後端10b側までの間に軸線O1方向に所定の間隔(隙間H)をあけて並設されている。
【0023】
また、加熱筒7は、図2及び図3に示すように、複数の加熱部に区画され、本実施形態では、軸線O1方向先端10a側(射出ノズル6の後端側)から後端10b側に向けて順に第1加熱部12、第2加熱部13、第3加熱部14、第4加熱部15、第5加熱部16に区画されている。第1加熱部12は、射出ノズル6の後端側のヒーター11(11a)が設けられた範囲、第2加熱部13は、射出ノズル6の後端側ヒーター11aと軸線O1方向に隣り合う加熱筒本体10の先端10a側の1つのヒーター11(11b)が設けられた範囲、第3加熱部14は、第2加熱部13の軸線O1方向後端10b側に隣り合うヒーター11(本実施形態では4つのヒーター11c)が設けられた範囲、第4加熱部15は、第3加熱部14の軸線O1方向後端10b側に隣り合うヒーター11(本実施形態では4つのヒーター11d)が設けられた範囲、第5加熱部16は、第4加熱部15の軸線O1方向後端10b側に隣り合う1つのヒーター11(11e)が設けられた範囲とされている。
【0024】
さらに、加熱筒7には、図3に示すように、複数の温度センサ20が取り付けられ、本実施形態では、6つの温度センサ20が取り付けられている。このうち2つの温度センサ20a、20bは、射出ノズル6の先端側と後端側にそれぞれ1つずつ取り付けられている。また、第2加熱部13、第3加熱部14、第4加熱部15、第5加熱部16のそれぞれの軸線O1方向略中央に、これら加熱部13、14、15、16の温度をそれぞれ検出可能に温度センサ20c〜20fが1つずつ取り付けられている。なお、第1加熱部12と第2加熱部13と第5加熱部16に設けられた温度センサ20b、20c、20f(20)は、各加熱部12、13、16のヒーター11a、11b、11e(11)の軸線O1方向略中央に、第3加熱部14と第4加熱部15に設けられた温度センサ20d、20e(20)は、軸線O1方向に隣り合うヒーター11c、11dの隙間H部分に取り付けられている。
【0025】
また、本実施形態の加熱筒7には、図3及び図4に示すように、例えば成形材料の切換時やメンテナンス時に、高温の加熱筒7(加熱筒本体10及びヒーター11)を冷却するための加熱筒冷却機構Bが取り付けられている。本実施形態において、加熱筒冷却機構Bは、第3加熱部14と第4加熱部15にそれぞれ取り付けられ、各加熱部14、15を冷却する第1水冷機構B1と第2水冷機構B2とを備えている。また、これら第1及び第2水冷機構B1、B2は、軸線O1方向に隣り合うヒーター11c、11dの隙間Hにそれぞれ配置された複数の冷却水ジャケット21を備えている。さらに、各冷却水ジャケット21は、平面視略C字状の板状に形成され、且つ中空構造で形成された上下一対の上部冷却水ジャケット22と下部冷却水ジャケット23とを備えて構成されている。
【0026】
そして、上部冷却水ジャケット22は、隙間Hに露出した加熱筒本体10の上方側の外周面(加熱筒7の外周側)に凹円弧状の内側縁端部22aを接触させるとともに外側縁端部22bを加熱筒7の軸線O1直交方向外側(上方側)に突出させて設けられている。また、下部冷却水ジャケット23は、加熱筒本体10の下方側の外周面(加熱筒7の外周側)に凹円弧状の内側縁端部23aを接触させるとともに外側縁端部23bを軸線O1直交方向外側(下方側)に突出させて設けられている。さらに、第1水冷機構B1と第2水冷機構B2は、それぞれ、軸線O1方向に隣り合う冷却水ジャケット21の上部冷却水ジャケット22同士が、第1連通管(連通管)24で連結され、互いの上端側の中空部同士がこの第1連通管24を介して連通されている。さらに、軸線O1方向に隣り合う冷却水ジャケット21の下部冷却水ジャケット23同士も、第2連通管(連通管)25で連結され、互いの下端側の中空部同士がこの第2連通管25を介して連通されている。また、各冷却水ジャケット21には、一対の上部冷却水ジャケット22と下部冷却水ジャケット23の中空部を連通させる略U字状の第3連通管26が取り付けられている。この第3連通管26は、一端が上部冷却水ジャケット22の下端側に、他端が下部冷却水ジャケット23の上端側に連結されて、加熱筒7の先端10a側に隣り合うヒーター11c、11d(11)の軸線O1方向中央付近まで突設されている。
【0027】
さらに、第1及び第2水冷機構B1、B2のそれぞれの最後方側(加熱筒7の軸線O1方向後端10b側)に設けられた各冷却水ジャケット21には、上部冷却水ジャケット22の中空部と連通するように一端が上部冷却水ジャケット22の上端側に繋がり、他端が軸線O1方向後端10b側に向けて延びる排水管27と、下部冷却水ジャケット23の中空部と連通するように一端が下部冷却水ジャケット23の下端側に繋がり、他端が軸線O1方向後端10b側に向けて延びる給水管28とが取り付けられている。
【0028】
また、第1水冷機構B1と第2水冷機構B2には、図5に示すように、それぞれ、給水管28に冷却水Wを供給するとともに、第2及び第3連通管25、26を通じて各冷却水ジャケット(各冷却水ジャケット21の中空部)21に冷却水Wを供給するための冷却水供給機構30と、給水管28に空気Sを供給するとともに、第2及び第3連通管25、26を通じて各冷却水ジャケット(各冷却水ジャケット21の中空部)21に空気Sを流通させて、各冷却水ジャケット21内の冷却水Wを第1連通管24及び排水管27を通じて外部に排出するための冷却水除去機構31とが繋げられている。なお、これら冷却水供給機構30と冷却水除去機構31が本実施形態の冷却水給排機構を構成している。
【0029】
本実施形態において、冷却水供給機構30は、冷却水Wを貯留した貯水槽32と、一端が給水管28に繋がる第1配管33と、第1配管33の他端が繋げられ、この第1配管33を介して貯水槽32内の冷却水Wを供給管28に送水する例えばポンプなどの送水手段34と、第1配管33を開閉する例えば電磁弁などの第1切換弁35と、一端が排水管27に、他端が貯水槽32に繋がって、排水管27から排出された冷却水Wを貯水槽32に回収するための第2配管36と、第2配管36を開閉する例えば電磁弁などの第2切換弁37とを備えて構成されている。なお、冷却水供給機構30は、必ずしも上記構成に限定されるものではなく、例えば水道水の蛇口に第1配管33の他端を繋げて水道水(冷却水W)を蛇口から直接的に給水管28に送るようにしたり、第2配管36を流れる排水Wを貯水槽32に回収させることなく側溝などの外部に排出するようにしてもよい。また、送水手段34や蛇口と第1切換弁35との間に熱交換器などを介装し、給水管28に供給する冷却水Wの温度を調整するようにしてもよい。
【0030】
一方、冷却水除去機構31は、例えばコンプレッサーなどの空気供給手段38と、一端が第1配管33の第1切換弁35よりも供給管28側に繋がり第1配管33を分岐するように設けられ、他端が空気供給手段38に繋がる第3配管39と、第3配管39を開閉する例えば電磁弁などの第3切換弁40と、一端が第2配管36の第2切換弁37よりも排水管27側に繋がり第2配管36を分岐するように設けられ、他端が例えば側溝などの外部に配置された第4配管41と、第4配管41を開閉する例えば電磁弁などの第4切換弁42とを備えて構成されている。また、本実施形態においては、冷却水供給機構30の送水手段34と第1切換弁35と第2切換弁37と、冷却水除去機構31の空気供給手段38と第3切換弁40と第4切換弁42と、各温度センサ20とに、それぞれ図示せぬ制御装置が接続されている。そして、例えば制御装置のスイッチ操作や各温度センサ20の検出結果を基に、この制御装置によって、送水手段34と空気供給手段38と第1から第4切換弁35、37、40、42のそれぞれの駆動が制御される。
【0031】
また、加熱筒7は、図3から図5に示すように、冷却水ジャケット21とともに、軸線O1を挟んで上方側から上部カバー43で、下方側から下部カバー44で覆われ、すなわち、上部カバー43と下部カバー44によって、加熱筒本体10、ヒーター11、温度センサ20、冷却水ジャケット21などが被覆されて、この内部に収容されている。さらに、図2及び図3に示すように、加熱筒7の加熱筒本体10内には、後端10b側から成形材料を射出ノズル6から射出させるためのスクリュー45が挿入されている。
【0032】
ついで、上記の構成からなる射出成形機Aの加熱筒冷却機構Bによって高温の加熱筒7を冷却する方法について説明し、本実施形態の射出成形機Aの加熱筒冷却機構Bの作用及び効果について説明する。
【0033】
はじめに、上記構成からなる射出成形機Aを用いて射出成形を行なう際には、固定側金型K1と可動側金型K2を型締装置で型締した後に、射出ユニット5を前進させ、射出ノズル6を固定盤1のノズル挿通口1dを通じて固定側金型K1に所定の押付力で当接させる。このとき、加熱筒7の後端10b側に取り付けられたホッパなどから加熱筒本体10内に固形樹脂などの成形材料が投入される。そして、加熱筒7(加熱筒本体10)がヒーター11で例えば300℃を超える温度で加熱され、これとともに成形材料が加熱筒本体10内で溶融され、加熱筒本体10に挿入したスクリュー45の駆動によって射出ノズル6から射出される。これにより、型締した一対の金型K1、K2のキャビティーに溶融した成形材料が充填される。
【0034】
一方、例えば上記のような溶融温度が300℃を超える成形材料から溶融温度が250℃の成形材料に切り換える際や、加熱筒7等のメンテナンスを行なう際には、加熱筒7を冷却する必要がある。本実施形態では、例えば作業者が制御装置のスイッチ操作を行なうと、制御装置から冷却水供給機構30の送水手段34と第1切換弁35と第2切換弁37に動作指令が出され、送水手段34が駆動を開始するとともに、第1切換弁35及び第2切換弁37が第1配管33及び第2配管36を開放させる。これにより、貯水槽32内の冷却水Wが給水管28を通じて冷却水ジャケット21に供給される。このとき、供給した冷却水Wは、第2連通管25を通じて全ての冷却水ジャケット21の下部冷却水ジャケット23に送られ、冷却水ジャケット21内の空気を排水管27から排出させながら、順次、第3連通管26と上部冷却水ジャケット22と第1連通管24とに冷却水Wが流通し、この冷却水Wが供給管28から排水管27に向けて流通してゆく。ここで、本実施形態では、下方から上方に向けて冷却水Wが供給されてゆくため、冷却水ジャケット21内にエア溜まりなどが生じることなく確実に冷却水ジャケット21内を満たして冷却水Wが流通する。
【0035】
このように冷却水Wが流通するとともに、冷却水ジャケット21が低温化され、且つ冷却水ジャケット21(流通する冷却水W)に高温の加熱筒本体10やヒーター11の熱が吸熱されてゆく。このとき、従来のように加熱筒7に空気を吹付けて冷却するものと比較し、本実施形態のように空気よりも比熱、熱伝導率が大きく格段に熱容量が大きい冷却水Wを冷媒として用いることによって、高温に加熱した加熱筒7が効率的に且つ早期に冷却される。また、隣り合うヒーター11の隙間Hに露出した加熱筒本体10に上部冷却水ジャケット22や下部冷却水ジャケット23の内側縁端部22a、23aを接触させて冷却水ジャケット21が設けられ、且つ各ヒーター11c、11dが冷却水ジャケット21で挟まれているため、このような冷却水ジャケット21に流通した冷却水Wによって確実に且つ効率的に高温の加熱筒本体10の熱が吸熱されてゆく。さらに、複数の冷却水ジャケット21内に、冷却水Wが順次流通して供給されるため、すなわち、低温で熱容量の大きな冷却水Wと高温の加熱筒7との接触時間が長くなるため、この点からも確実に且つ効率的に加熱筒本体10の熱が吸熱されてゆく。
【0036】
そして、冷却水Wによって効率的に且つ早期に加熱筒7が所望の温度に冷却したことを確認した段階で、温度センサ20の検出結果を基に、制御装置から冷却水供給機構30の送水手段34と第1切換弁35と第2切換弁37に指令が出され、送水手段34の駆動が停止されるとともに、第1切換弁35及び第2切換弁37が第1配管33及び第2配管36を閉鎖させる。これとともに、制御装置から冷却水除去機構31の空気供給手段38と第3切換弁40と第4切換弁42とに動作指令が出され、空気供給手段38が駆動を開始し、第3切換弁40及び第4切換弁42が第3配管39及び第4配管41を開放させる。これにより、空気供給手段38から送られた空気Sが、供給管28を通じて冷却水ジャケット21に供給される。このとき、供給した空気Sは、第2連通管25を通じて全ての冷却水ジャケット21の下部冷却水ジャケット23に送られ、冷却水ジャケット21内の冷却水Wを排水管27から排出させながら、順次、第3連通管26と上部冷却水ジャケット22と第1連通管24とに流通してゆく。そして、順次排水管27から排出された冷却水Wが第4配管41を通じて外部に放流され、この第4配管41から冷却水Wが排出されなくなった時点、すなわち冷却水ジャケット21を流通した空気Sが第4配管41から排気されるようになった時点で、全ての冷却水ジャケット21や第1から第3連通管24、25、26内(第1水冷機構B1及び第2水冷機構B2内)に、冷却水Wが残ることなく完全に空気Sが満たされる。
【0037】
このように第1水冷機構B1と第2水冷機構B2から冷却水Wを除去することによって、射出成形を再開した際に、加熱筒7の加熱に伴って第1水冷機構B1と第2水冷機構B2の中空部内で冷却水Wが蒸発し、この蒸気圧によって冷却水ジャケット21や第1から第3連通管24、25、26などに破損が生じることが確実に防止される。
【0038】
したがって、本実施形態の射出成形機Aの加熱筒冷却機構Bにおいては、空気よりも比熱、熱伝導率が大きく格段に熱容量が大きい冷却水Wを冷媒として用いることにより、高温に加熱した加熱筒7を効率的に且つ早期に冷却することができる。
【0039】
また、加熱筒7が所望の温度に冷却された後に、冷却水給排機構(冷却水除去機構31)によって、第1水冷機構B1及び第2水冷機構B2(冷却水ジャケット21や第1から第3連通管24、25、26)中に残った冷却水Wを外部に除去することができる。これにより、射出成形作業を再開し、再度加熱筒7を加熱させた際に、第1水冷機構B1及び第2水冷機構B2内に残った冷却水Wが蒸発しその蒸気圧によって冷却水ジャケット21などに破損が生じることを確実に防止できる。
【0040】
さらに、ヒーター11が加熱筒7の軸線O1方向に隙間Hをあけて複数並設されて、この隙間Hに露出した加熱筒本体10を直接的に冷却水ジャケット21で冷却することができる。これにより、加熱筒本体10の冷却を効率的に行なうことができる。
【0041】
また、軸線O1方向に隣り合う冷却水ジャケット21が第1及び第2連結管24、25を通じて連結されているため、1つの冷却水ジャケット21に供給した冷却水Wを他の冷却水ジャケット21に流通させることができる。これにより、熱容量が大きい冷却水Wを順次加熱筒7から熱を吸熱しつつ長く加熱筒7の外周に沿って流通させることができるため、より効率的に加熱筒7を冷却することが可能になる。
【0042】
よって、本実施形態の射出成形機Aの加熱筒冷却機構Bによれば、例えば高温で溶融する成形材料から溶融温度が低い成形材料への切換時や加熱筒7等のメンテナンス時に、加熱筒7を確実に効率的に且つ早期に所望の温度に冷却することができるため、成形材料の切換やメンテナンスを早期に行なって射出成形機Aの運転を停止する時間を短縮することができ、生産性の向上を図ることが可能になる。
【0043】
なお、本発明は、上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、加熱筒冷却機構Bが、第3加熱部14と第4加熱部15にそれぞれ取り付けられた第1水冷機構B1と第2水冷機構B2とで構成されているものとしたが、例えば図6に示すように第1加熱部12と第2加熱部13との隙間Hにも第1水冷機構B1に繋がる冷却水ジャケット21を設け、第2加熱部13とともに、この冷却水ジャケット21の第3連通管26によって第1加熱部12をも冷却するように構成してもよい。
【0044】
また、これに加えて、加熱筒冷却機構Bが第1水冷機構B1と第2水冷機構B2とに区分して構成されることに限定する必要はなく、第1水冷機構B1と第2水冷機構B2を連通させるように構成し、供給管28から供給した冷却水Wを全ての冷却水ジャケット21を流通させて加熱筒7を冷却するようにしてもよい。さらに、本実施形態よりも多くの水冷機構を備えて加熱筒冷却機構Bが構成されてもよい。また、各水冷機構B1、B2に供給管28及び排水管27がそれぞれ1つずつ設けられているものとしたが、供給管28及び排水管27がそれぞれ複数設けられていてもよい。すなわち、1つの水冷機構B1、B2に対して、複数の箇所から冷却水Wを供給したり、複数の箇所から流通させた冷却水Wを排出させるようにしてもよく、このようにした場合には、より確実に冷却水Wを全体に流通させることができ、さらなる冷却効率の向上を図ることが可能である。
【0045】
さらに、本実施形態では、軸線O1方向に隣り合うヒーター11の隙間Hに冷却水ジャケット21が配置されているものとしたが、冷却水ジャケット21を、各ヒーター11を覆うように(加熱筒7を覆うように)形成して設けてもよい。また、各冷却水ジャケット21が分離した上部冷却水ジャケット22と下部冷却水ジャケット23とからなり、第3連通管26を介して互いの中空部が連通されているものとしたが、各冷却水ジャケット21は必ずしも上部と下部とに分離して形成されている必要はなく、一つの中空構造の冷却水ジャケットで構成されてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、射出成形機Aを横型射出成形機とし、その軸線O1を水平方向に向けて配置された加熱筒7に、本発明に係る加熱筒冷却機構Bを適用した例をもって説明を行なったが、本発明に係る射出成形機の加熱筒冷却機構は、竪型射出成形機の加熱筒7に適用されてもよい。この場合には、軸線O1を上下方向に配して加熱筒7が設けられるため、加熱筒7の下方側(射出ノズル6側、先端10a側)に供給管28を設け、下方側の冷却水ジャケット21から上方の冷却水ジャケット21の中空部を順次満たすように冷却水Wを供給して、下方から上方に向けて流通した冷却水Wを、加熱筒7の上方側(射出ユニット5側、後端10b側)に設けた排水管27から排出させるようにすれば、本実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0047】
さらに、本実施形態では、冷却水除去機構31の空気供給手段38が繋がる第3配管39が第1配管33に繋げられ、この第1配管33を通じて供給管28から空気Sを供給し、冷却水ジャケット21や第1から第3連通管24、25、26内の冷却水Wを、排水管27から排出させて除去し、この除去した冷却水Wを、排水管27に繋がる第2配管36及び第4配管41を通じて外部に除去するものとしたが、冷却水除去機構31は、空気供給手段38が繋がる第3配管39を第2配管36に繋げ、第4配管41を第1配管33に繋げて構成されてもよい。この場合には、空気供給手段38から送られた空気Sが排水管27から供給され、これとともに供給管28から冷却水ジャケット21や第1から第3連通管24、25、26内の冷却水Wを順次排出させて除去することができる。これにより、冷却水ジャケット21や第1から第3連通管24、25、26内の冷却水Wを上方から下方に向けて押し出すように空気Sを供給(流通)させることができるため、本実施形態のように下方から上方に向けて押し出すよりも、より確実に冷却水ジャケット21や第1から第3連通管24、25、26内の冷却水Wを除去することができる。よって、射出成形を再開した際に、加熱筒7の加熱に伴って残存した冷却水Wが蒸発し、この蒸気によって冷却水ジャケット21や第1から第3連通管24、25、26などに破損が生じることをより確実に防止できる。
【0048】
ついで、図7を参照し、本発明の第2実施形態に係る射出成形機の加熱筒冷却機構について説明する。本実施形態は、第1実施形態と同様、例えば成形材料の切換時やメンテナンス時に、加熱筒を効率的に且つ早期に所望の温度に冷却することが可能な横型射出成形機の加熱筒冷却機構に関するものである。よって、ここでは、第1実施形態に共通する構成に対して同一符号を付し、その詳細についての説明を省略する。
【0049】
本実施形態の加熱筒冷却機構Cにおいては、図6に示した第1実施形態の加熱筒冷却機構Bに対し、図7に示すように、送風機構Eを付加して構成されている。すなわち、本実施形態においては、加熱筒冷却機構Cが、第2及び第3加熱部13、14を冷却水ジャケット21と第1から第3連通管24、25、26に流通する冷却水Wで冷却する第1水冷機構B1と、第4加熱部15を冷却水ジャケット21と第1から第3連通管24、25、26に流通する冷却水Wで冷却する第2水冷機構B2とに加えて、第2加熱部13、第3加熱部14及び第4加熱部15にそれぞれ冷却空気Rを吹付けてこれらを冷却する第1空冷機構E1、第2空冷機構E2及び第3空冷機構E3からなる送風機構Eが具備されている。
【0050】
そして、第1から第3空冷機構E1、E2、E3は、それぞれブロア(送風装置)50と例えば図示せぬ多数の貫通孔を備えた整流板51とを備えて構成されている。このうち、第1空冷機構E1は、下部カバー44に形成された第1突出部44aの突出方向先端にブロア50が取り付けられており、第1突出部44aは、下部カバー44の第2加熱部13を覆っている部分のうち軸線O1方向先端10a側と後端10b側の一部を除いた部分が軸線O1直交方向外側(下方側)に突出して形成されている。また、第1突出部44aで形成される空間M1をヒーター11b側(加熱筒本体10や第1水冷機構B1の第2連通管25側)とブロア50側とに区画するように、且つ第2加熱部13のヒーター11bの外周面に対向するように、一つの整流板51が第1突出部44aに支持されて設けられている。この第1空冷機構E1においては、ブロア50から第1突出部44aの空間M1内に送気された冷却空気Rが整流板51を通過するとともに整流され、第2加熱部13のヒーター11bの下方側からその外周面に直交するように吹き付けられる。このように第2加熱部13のヒーター11bに下方側から吹付けられた冷却空気Rは、下部カバー44及び上部カバー43とヒーター11bとの間の空間を上方に向けて流通してゆき、第2加熱部13の加熱筒本体10の熱を吸熱してゆく。そして、第2加熱部13の加熱筒本体10から吸熱して温度が上昇した冷却空気Rは、第2加熱部13を覆っている部分の上部カバー43に貫通して形成された図示せぬ排気口から外部に排出される。
【0051】
第2空冷機構E2は、下部カバー44に形成された第2突出部44bの先端にブロア50が取り付けられており、第2突出部44bは、下部カバー44の第3加熱部14を覆っている部分のうち軸線O1方向先端10a側と後端10b側の一部を除いた部分が軸線O1直交方向外側に突出して形成されている。また、第2突出部44bによって形成された空間M2を、ヒーター11c側とブロア50側とに区画するように複数の整流板51(本実施形態においては4つ)が設けられている。このとき、第1空冷機構E2の複数の整流板51は、軸線O1に沿って且つ軸線O1方向に間隔をあけて設けられており、第3加熱部14の4つのヒーター11cにそれぞれ1つずつ対向するように配置されている。そして、これら複数の整流板51は、隣り合う整流板51の対向する端部同士が連結部材52を介して繋げられ、且つ軸線O1方向先端10a側と後端10b側にそれぞれ配置された2つの整流板51の端部が第2突出部44bに接続されている。これにより、複数の整流板51は、連結部材52を介して第2突出部44bに支持されている。この第2空冷機構E2においては、ブロア50から第2突出部44bの空間M2内に送気された冷却空気Rが、各整流板51で整流され、第3加熱部14の各ヒーター11cの下方側からその外周面に直交するように吹き付けられる。このとき、各ヒーター11cの軸線O1方向両側にそれぞれ冷却水ジャケット21が設けられているため、各ヒーター11cに下方側から吹付けられた冷却空気Rは、各ヒーター11cの外周面に沿って上方に流通してゆき、第3加熱部14の加熱筒本体10の熱を吸熱してゆく。そして、温度が上昇した冷却空気Rは、第3加熱部14を覆っている上部カバー43の各ヒーター11cに対応する位置にそれぞれ貫通して形成された図示せぬ排気口から外部に排出される。
【0052】
第3空冷機構E3は、下部カバー44に形成された第3突出部44cの先端にブロア50が取り付けられており、第3突出部44cは、下部カバー44の第4加熱部15を覆っている部分のうち軸線O1方向先端10a側と後端10b側の一部を除いた部分が軸線O1直交方向外側に突出して形成されている。また、第3突出部44cによって形成された空間M3を、ヒーター11d側とブロア50側とに区画するように複数の整流板50(本実施形態においては4つ)が設けられている。これら複数の整流板50は、第2空冷機構E2と同様、第4加熱部15の4つのヒーター11dにそれぞれ1つずつ対向するように配置されるとともに、連結部材52を介して第3突出部44cに支持されている。そして、この第3空冷機構E3においても、ブロア50から第3突出部44cの空間M3内に送気された冷却空気Rが、各整流板50で整流され、第4加熱部15の各ヒーター11dの下方側から吹き付けられ、各ヒーター11dの外周面に沿って上方に流通し、第4加熱部15の熱を吸熱してゆく。上方に向けて流通した冷却空気Rは、第4加熱部15を覆っている上部カバー43の各ヒーター11dに対応する位置にそれぞれ貫通して形成された図示せぬ排気口から外部に排出される。
【0053】
また、第1実施形態の制御装置と第1から第3空冷機構E1、E2、E3の各ブロア50が接続され、制御装置によって各ブロア50の駆動が制御されている。
【0054】
ついで、上記の構成からなる射出成形機Aの加熱筒冷却機構Cによって高温の加熱筒7を冷却する方法について説明し、本実施形態の射出成形機Aの加熱筒冷却機構Cの作用及び効果について説明する。
【0055】
成形材料の切換時やメンテナンス時に、例えば作業者が制御装置のスイッチ操作を行なうとともに、第1実施形態と同様、冷却水ジャケット21や第1から第3連通管24、25、26に冷却水Wが流通し、高温の加熱筒本体10の熱が吸熱されてゆく。
【0056】
また、本実施形態においては、上記のように制御装置のスイッチ操作を行なった際に、第1から第3空冷機構E1、E2、E3の各ブロア50が駆動を開始する。これにより、第2から第4加熱部13、14、15の各ヒーター11b、11c、11dに冷却空気Rが吹き付けられ、各ヒーター11b、11c、11dの外周面に沿って冷却空気Rが上方に向けて流通することで、各加熱部13、14、15の熱が吸熱されてゆく。さらに、このように供給した冷却空気Rは、第1水冷機構B1や第2水冷機構B2の冷却水ジャケット21や第1から第3連通管24、25、26にも接触する。このため、第1水冷機構B1や第2水冷機構B2を冷却する効果も得られ、これらを流通する冷却水Wを低温化させる。
【0057】
そして、制御装置に送られた各温度センサ20の検出結果を基に、所望の温度に低温化した加熱部13、14、15から、低温化した加熱部13、14、15に冷却空気Rを送気している第1から第3空冷機構E1、E2、E3のブロア50の駆動を、順次制御装置が停止させる。また、このとき、制御装置は、各温度センサ20の検出結果を基に、あるいは第1から第3空冷機構E1、E2、E3の各ブロア50の駆動状態を基に、所望の温度に低温化した加熱部12、13、14、15を冷却している第1水冷機構B1または第2水冷機構B2の冷却水Wの流通を停止させる。具体的に、例えば第4加熱部15を冷却している第3空冷機構E3のブロア50の駆動が停止するとともに、これを検出した制御装置が、同じく第4加熱部15を冷却している第2水冷機構B2の冷却水Wの供給を停止させるように、冷却水供給機構30の送水手段34の駆動を停止させ、第1切換弁35と第2切換弁37に動作指令を出して第1配管33及び第2配管36を閉鎖させる。そして、これとともに、制御装置から冷却水除去機構31の空気供給手段38と第3切換弁40と第4切換弁42とに動作指令が出され、空気供給手段38が駆動を開始し、第3切換弁40及び第4切換弁42が第3配管39及び第4配管41を開放させる。これにより、空気供給手段38から送られた空気Sで、冷却水ジャケット21や第1から第3連通管24、25、26内の冷却水Wが排出され、全ての冷却水Wが排出される所定時間を経過した段階で、制御装置が空気供給手段38の駆動を停止させ、且つ第3切換弁40に動作指令を出して第3配管39を閉鎖させる。
【0058】
このように順次所望の温度に低温化した加熱部13、14、15から、各加熱部13、14、15を冷却する第1水冷機構B1、第2水冷機構B2、第1から第3空冷機構E1、E2、E3による冷却作業を終了させてゆくことで、最終的に加熱筒7の全体が所望の温度に低温化されることになる。
【0059】
なお、例えば、型締力が850tonクラスの射出成形機Aに搭載される大型の加熱筒7を、300℃から250℃に冷却させる場合には、自然放熱で80分の時間を要する。また、第1実施形態の加熱筒冷却機構Bを適用した場合には、23分に短縮される。これに対し、本実施形態の加熱筒冷却機構Cを適用し、上記の操作で冷却を行った場合には、18分まで短縮できることが実証されている。
【0060】
したがって、本実施形態の射出成形機Aの加熱筒冷却機構Cにおいては、第1実施形態に示した加熱筒冷却機構Bよりもさらに加熱筒7を効率的に且つ早期に所望の温度に冷却することができる。よって、成形材料の切換やメンテナンスをさらに早期に行なうことができ、射出成形機Aの運転を停止する時間を大幅に短縮することができるため、さらなる生産性の向上を図ることが可能になる。
【0061】
なお、本発明に係る射出成形機の加熱筒冷却機構の第2実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態に示した変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、送風機構Eが第1空冷機構E1、第2空冷機構E2、第3空冷機構E3の3つの空冷機構E1、E2、E3で構成されているものとしたが、送風機構Eの空冷機構の数を限定する必要はない。
【0062】
また、これに関連して、送風機構Eの各空冷機構E1、E2、E3にそれぞれ1つずつ送風装置(ブロア)50が設けられているものとしたが、例えば1つの送風装置50によって複数の加熱部に冷却空気Rを送気するようにしてもよい。逆に、第1突出部44aと第2突出部44bと第3突出部44cを1つの突出部として形成し、すなわち各突出部44a、44b、44cの空間M1、M2、M3を軸線O1方向に1つの空間として連続させるように1つの突出部を形成し、この突出部の先端に1つあるいは複数の送風装置50を設けてもよい。
【0063】
さらに、本実施形態では、送風機構Eが送風装置50と整流板51と連結部材52を備えて構成されているものとしたが、少なくとも送風装置50を具備してヒーター11や加熱筒本体10を冷却空気Rで冷却できればよく、特に送風機構Eの構成を限定する必要はない。また、上部カバー43や下部カバー44を設けず、送風装置50から直接冷却空気Rをヒーター11や加熱筒本体10に吹き付けてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、送風機構Eが下部カバー44に設けられて、下方から上方に向けて冷却空気Rを流通させるものとしたが、上部カバー43に設けて上方から下方に向けて冷却空気Rを流通させてもよい。
【0065】
さらに、上部カバー43に排気口を形成して冷却空気Rを外部に排出させるものとしたが、例えば上部カバー43及び下部カバー44の外部に連通した他の隙間などから冷却空気Rを排出できる場合には、特に排気口を設ける必要はなく、排気口を設ける場合においても位置や形状を限定する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施形態に係る射出成形機を示した図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る射出成形機の加熱筒冷却機構を取り付ける加熱筒を示した図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る射出成形機の加熱筒冷却機構を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る射出成形機の加熱筒冷却機構を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る射出成形機の加熱筒冷却機構の冷却水給排機構を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る射出成形機の加熱筒冷却機構の変形例を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る射出成形機の加熱筒冷却機構を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
5 射出ユニット
6 射出ノズル
7 加熱筒
10 加熱筒本体
10a 先端
10b 後端
11 ヒーター
12 第1加熱部
13 第2加熱部
14 第3加熱部
15 第4加熱部
16 第5加熱部
20 温度センサ
21 冷却水ジャケット
22 上部冷却水ジャケット
23 下部冷却水ジャケット
24 第1連通管(連通管)
25 第2連通管(連通管)
26 第3連通管
27 排水管
28 給水管
30 冷却水供給機構(冷却水給排機構)
31 冷却水除去機構(冷却水給排機構)
43 上部カバー
44 下部カバー
45 スクリュー
50 送風装置
51 整流板
52 連結部材
A 射出成形機
B 加熱筒冷却機構
B1 第1水冷機構
B2 第2水冷機構
C 加熱筒冷却機構
E 送風機構
E1 第1空冷機構
E2 第2空冷機構
E3 第3空冷機構
H 隙間
O1 加熱筒の軸線
R 冷却空気
S 空気
W 冷却水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に射出ノズルが設けられ、後端を前後に進退可能な射出ユニットに繋げて支持された加熱筒本体と、該加熱筒本体の外周に設けられたヒーターとを備えてなる加熱筒を冷却するための射出成形機の加熱筒冷却機構であって、
前記加熱筒の外周側に設けられ、中空部に流通した冷却水で前記加熱筒を冷却する冷却水ジャケットを備えることを特徴とする射出成形機の加熱筒冷却機構。
【請求項2】
請求項1記載の射出成形機の加熱筒冷却機構において、
前記加熱筒の外周側に冷却空気を吹付ける送風機構を備えることを特徴とする加熱筒冷却機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の射出成形機の加熱筒冷却機構において、
前記冷却水ジャケットに前記冷却水を供給するととともに、前記加熱筒が所望の温度に冷却された後に、前記冷却水ジャケットの中空部に空気を供給して該中空部内の前記冷却水を外部に排出させる冷却水給排機構を備えることを特徴とする射出成形機の加熱筒冷却機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の射出成形機の加熱筒冷却機構において、
前記ヒーターが前記加熱筒の軸線方向に隙間をあけて複数並設されており、前記冷却水ジャケットが少なくとも前記隙間に配置されていることを特徴とする射出成形機の加熱筒冷却機構。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の射出成形機の加熱筒冷却機構において、
前記冷却水ジャケットが前記軸線方向に複数並設されるとともに、前記軸線方向に隣り合う前記冷却水ジャケット同士が互いの前記中空部を連通させる連通管を介して連結されていることを特徴とする射出成形機の加熱筒冷却機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−213400(P2008−213400A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57042(P2007−57042)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(303024138)株式会社ニイガタマシンテクノ (78)
【Fターム(参考)】